(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、少なくとも0.1モル%、好ましくは少なくとも0.5モル%、好ましくは最大でも4.5モル%、更に有利には最大でも2.0モル%、特に有利には0.5モル%〜1.5モル%のTiO2を含有する、請求項1から13までのいずれか1項記載のガラス。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品工業における一次包装材料として使用するのに特に適しているガラスに関する。かかるガラスは、化学安定性に関して特に高い要求が課せられる。さらに、ガラス剥離が生じるべきではなく、すなわち、使用中に、包装された医薬品への異物混入につながる層がガラスから剥がれてはならない。
【0002】
しかしながら、非常に良好な化学安定性のほかに、医薬品工業における一次包装材料として適しているガラスには、更なる要求が課せられる。
【0003】
例えば、ガラスは慣用の溶融ユニットにおいて製造可能でなければならず、すなわち、溶融物の粘度は高すぎてはならず、可能な限り加工温度(粘度が104dPasである温度、VA又はT4とも呼ばれる)は1350℃の最大値を超過すべきではない。T4は、省エネルギーでの製造のために可能な限り低くあるべきである。
【0004】
さらに、ガラスは、有利には酸化ホウ素不含であるべきである。最近では、EU(欧州連合)が、ホウ酸、三酸化二ホウ素、四ホウ酸二ナトリウム(無水物)、四ホウ酸二ナトリウム十水和物及び四ホウ酸二ナトリウム五水和物を生殖毒性のグループに分類している。この結果、かかる原料を使用した製造に際しては、特定の周辺条件を遵守するか又は特定の予防措置が講じられるべきである。
【0005】
ホウ素含有原料の比較的高いコスト、適切な品質の予測され得る不足及びホウ素化合物の毒性の新しい等級付けに関する現行の議論に基づき、ホウ素不含のガラスに関心が持たれている。
【0006】
最後に、ガラスは、好ましくは化学強化可能であるべきである。化学強化に際しては、ある一定の割合のナトリウムイオンがカリウムイオンと交換されることで、より大きいカリウムイオンに基づきガラスに圧縮応力が生まれる。効果的な化学強化を可能にするために、様々な周囲条件が満たされていなければならない。
【0007】
米国特許第8753994(B2)号明細書及び独国実用新案第202012013126(U1)号明細書からは、改善された化学安定性を有しているとされるアルミノシリケートガラスが知られている。SiO
2の含有率は70モル%から78モル%の間であり、Al
2O
3の含有率は4モル%から9モル%の間であり、MgOの含有率は0モル%から7モル%の間であり、CaOの含有率は0モル%から6モル%の間である。しかしながら、これらのガラスの加水分解安定性は、実際には十分ではない。
【0008】
羅国特許出願公開第83460(A)号明細書は、70〜73質量%のSiO
2含有率、3〜6質量%のAl
2O
3含有率、3〜9質量%のCaO含有率、2質量%のBaOの部分的な添加及び11〜14質量%のNa
2O含有率を有し、部分的にK
2Oの僅かな添加を有するアルミノシリケートガラスを開示している。
【0009】
このガラスの化学安定性は十分ではない。
【0010】
欧州特許出願公開第2876092(A1)号明細書からは、SiO
2 50〜80モル%、Al
2O
3 5〜30モル%、Li
2O 0〜2モル%及びNa
2O 5〜25モル%を有する医薬品用ガラスが知られている。化学安定性に関する記載は、この文献中に見出せない。しかしながら、これは比較的不十分であると考えられる。
【0011】
国際公開第2014/196655(A1)号からは、SiO
2 69〜81モル%、Al
2O
3 4〜12モル%、B
2O
3 0〜5モル%、5〜20モル%の総アルカリ金属含有率、Li
2O 0.1〜12モル%及び0〜10モル%のMgO+CaO+SrO+BaOの総含有率を有する、更なる医薬品用ガラスが知られている。
【0012】
これらのガラスは、たしかに非常に低い加工温度を有するが、しかし十分に化学安定性であるとは見なされない。
【0013】
独国特許出願公開第102013114225(A1)号明細書からは、SiO
2 56〜70モル%、Al
2O
3 10.5〜16モル%、Na
2O 10〜15モル%及びB
2O
3、P
2O
5、K
2O、MgO、ZnO、TiO
2、SnO
2の任意の添加、及びF 0.001〜5モル%を有する化学強化ガラスが知られている。その化学組成に基づき、このガラスはおそらく十分な化学安定性を有さない。
【0014】
最後に、独国特許出願公告第102009051852(B4)号明細書からは、SiO
2 65〜72質量%、Al
2O
3 11〜17質量%、Na
2O 2〜8質量%、MgO 3〜8質量%、CaO 4〜12質量%及びZnO 0〜10質量%を有する酸化ホウ素不含の中性ガラスが知られており、ここで、CaO/MgOの質量比は1.4〜1.8であり、かつ良好な化学安定性が付与されている。
【0015】
しかしながら、これらのガラスは、良好な化学強化性に最適化されていない。そのほかに、加工温度は非常に高く現れる。さらに、結晶化挙動は、網目修飾体の低い割合に基づき問題の余地がある。
【0016】
本発明の課題は、可能な限り医薬品工業における一次包装材料として適しているように十分な化学安定性を有し、かつ慣用の溶融プラントにおいて可能な限り高すぎることのない溶融温度で製造可能である、酸化ホウ素不含のガラスを示すことにある。さらに、ガラスは可能な限り良好に化学強化可能であるべきである。
【0017】
本発明の課題は、少なくとも以下の成分(酸化物をベースとしてモル%で):
SiO
2 64〜77
Al
2O
3 5〜14
Na
2O 4〜12
CaO 1〜12
MgO 0〜14
ZrO
2 0〜2
TiO
2 0〜4.5
を含有し、ここで、
Al
2O
3/Na
2Oの比が1以上であり、
Al
2O
3/CaOの比が1.5以上であり、
SiO
2+Al
2O
3の総含有率が82モル%未満である
ガラスによって解決される。
【0018】
本発明の課題は、このようして完全に解決される。
【0019】
本出願の範囲内で組成物は、該組成物中に特定の成分が含まれているか又は該組成物が特定の成分を有する形で示される限りにおいては、これらは常に、任意の更なる成分が該組成物中に含まれていてよいと解釈されるものとする(排他的ではない組成)。
【0020】
しかしながら、本発明の更なる実施形態において示される組成物は、ガラス製造の性質上、仕方がない不可避の不純物を除いて、それぞれ示された成分のみが含まれているとも解釈されるものとする(排他的な組成)。使用される原料の純度に応じて、かかる不可避の不純物は、最大1モル%、好ましくは0.5モル%、更に好ましくは0.1モル%、又はそれどころか0.05モル%に制限される。
【0021】
本出願の範囲内で組成物は、該組成物が特定の成分から成る形で示される限りにおいては、これらの組成物は常に、示された成分のみが該組成物中に含まれており(排他的な組成)、ただし、ガラス製造の性質上、仕方がない不可避の不純物は含まれていてよいと解釈されるものとする。使用される原料の純度に応じて、かかる不可避の不純物は、最大1モル%、好ましくは0.5モル%、更に好ましくは0.1モル%、又はそれどころか0.05モル%に制限される。
【0022】
本出願の範囲内で、実施例において、特定の成分が列記されて示されている限りにおいては、これらの記載は排他的な組成と理解されるものとし、ただし、ガラス製造の性質上、仕方がない不可避の不純物は含まれていてよい。使用される原料の純度に応じて、かかる不可避の不純物は、最大1モル%、好ましくは0.5モル%、更に好ましくは0.1モル%、又はそれどころか0.05モル%に制限される。
【0023】
SiO
2の64モル%の最小含有率は、良好な化学安定性のために必要である。77モル%超のSiO
2含有率からは、加工温度があまりにも強く上昇してしまうことから、標準的な溶融ユニットにおける製造がもはや可能ではなくなる。
【0024】
Al
2O
3の最小含有率は、5モル%、有利には少なくとも9モル%、更に有利には少なくとも10.3モル%である。この最小含有率は、ガラス構造がささえられる、つまり、より良好な架橋及び非常に優れた加水分解安定性が得られるように選択される。さらに、Al
2O
3の添加が、特に6〜14のpH範囲での化学安定性を改善する。特に8〜14のpH範囲での純粋なシリケートガラスの化学安定性の欠点が大いに改善される。Al
2O
3の最大含有率は、14モル%、有利には12.5モル%である。SiO
2+Al
2O
3、及び好ましくはそれにZrO
2の総含有率の最大値は、1350℃を超えて加工温度が上昇し、ひいては結晶化傾向及び製造コストが上昇することを回避するために、82モル%未満であるべきである。
【0025】
本発明によるガラスは、有利には、不可避の不純物を除き酸化ホウ素不含であるので、層剥離のリスクが回避される。
【0026】
良好な化学強化性(変態温度を下回る温度でのイオン交換)を得るために、イオン交換(ナトリウムイオンをカリウムイオンと交換)後に両方のアルカリ金属酸化物について得られる混合アルカリ金属比が互いにバランスのとれた比にある場合に好ましい。好ましくは、Na
2O対K
2Oのモル比は、3:1〜5:1の範囲の一定の比にあるべきである。
【0027】
このことは、少なくともHGB 1(ISO 719に従う)までのガラスの加水分解安定性の増大を促す。さらに、化学強化ガラスは、より高い破断強さ及び引掻強さの利点をもたらす。ガラスは、イオン交換なしで、或いはまたはイオン交換をともなって、医薬品用容器のために利用することができる。
【0028】
Al
2O
3/Na
2Oの比を1以上に及びAl
2O
3/CaOの比を1.5以上に調節することによって、良好な化学安定性が、特にISO 720に従ったオートクレーブ試験での安定性に鑑みて促進される。化学強化性は、4〜12モル%の示された範囲のナトリウム含有率によって、好ましくは酸化リチウムの発生と一緒に促進される。特にAl
2O
3/Na
2Oの比は、ISO 720に従った加水分解安定性が62μg/gを下回るように選択され、これは[AlO
4-]−Na
+構造エレメントの形成によって促進される。
【0029】
さらに、Al
2O
3/CaOの比は、そのつどCa
2+イオン1個当たり2個の[AlO
4-]基が存在するように選択され、このことによってCa
2+種の移動度が低下させられて、優れた加水分解安定性が可能になる。
【0030】
本発明によるガラスにより、化学強化後に、少なくとも500MPaの最小圧縮応力(CS)が達成される。それどころか、少なくとも700MPa、少なくとも800MPa又は少なくとも900MPaの値が達成可能である。
【0031】
Na
2Oの含有率は、溶融時に低い粘度を保証するために、他方では医薬品用ガラスの製造及び通常行われる後加工工程(洗浄プロセス、化学強化)時に低い溶出挙動を保証するために、少なくとも4モル%である。Na
2O 12モル%の含有率を超過すべきではなく、それというのも、さもなければ加水分解安定性が下がるからである。
【0032】
K
2Oの含有率は0〜3モル%である。有利には0.5モル%超、特に有利には0.8モル%超が含まれている。特に有利には、K
2Oの含有率は、0.5モル%超2.5モル%未満である。K
2Oの僅かな添加が結晶化傾向を低下させ、このことは、特に管引抜き時に好ましい。
【0033】
さらに、本発明によるガラスは、TiO
2 0〜4.5モル%、有利には少なくとも0.1モル%、更に有利には少なくとも0.5モル%を含有してよい。更に有利には、TiO
2の含有率は、0.1モル%〜2.0モル%、特に有利には0.5〜1.5モル%である。
【0034】
酸化チタンTiO
2の僅かな添加が、ガラスの加水分解安定性を改善して、加工のために適した粘度の達成を促進することができる。適用目的に応じて、酸化チタンの使用は完全に省かれる。
【0035】
さらに、本発明によるガラスは、酸化ジルコニウム0.0〜2モル%を含有してよい。
【0036】
酸化ジルコニウムの添加が、ガラスの加水分解安定性を改善する。これによって、安定性は、若干高められたpH値(8〜9)でも安定化され、その際、加工温度は1350℃を超えて上昇しない。
【0037】
ZrO
2は、完全に又は部分的にTiO
2で置き換えられてよい。TiO
2の添加によって、[TiO
3]
2-及びCa
2+の構造単位が形成し、該構造単位がCa
2+イオンの移動度、ひいては溶出性も下げることで、ガラス構造は安定化されることができる。加工温度が1350℃を超えて上昇して失透傾向が高まらないように、4.5モル%の限界値を超過すべきではない。
【0038】
特に良好な化学強化性は、ZrO
2+TiO
2の総含有率が、少なくとも0.1モル%、好ましくは少なくとも0.5モル%、特に有利には少なくとも1モル%であるときにもたらされる。
【0039】
しかしながら、ZrO
2+TiO
2の総含有率は、4.5モル%を超過すべきではなく、それというのも、さもなければ結晶化傾向及び加工温度があまりにも強く上昇してしまうからである。
【0040】
本発明によるガラスは、好ましくは、不可避の不純物を除き酸化亜鉛を含まず、それというのも、これは医薬品用途に所望されていないからである。
【0041】
さらに、無秩序配置によって加工温度を可能な限り低く保つために、SrOが3.5モル%までガラス中に導入されてよい。そのうえ、SrOの僅かな添加が、移動度の低下による改善された溶出挙動を生む。
【0042】
酸化鉛PbOの使用は、好ましくは、毒物学上の理由から省かれる。
【0043】
実験室規模では清澄剤の添加なしに気泡及び縞模様のないガラスが得られる場合であっても、本発明によるガラスは、大規模工業的な製造のために清澄剤0.01〜2モル%、好ましくは0.1〜1.5モル%を含有してよい。
【0044】
フッ化物の添加によって、溶融物の粘度が低下させられ、このことが清澄を促進する。環境保護の理由から、可能な限りAs
2O
3又はSb
2O
3の添加は省かれるべきである。
【0045】
塩化物又はフッ化物を清澄剤として添加することによって、ガラスの耐酸性は傾向的に悪化させられる。そのほかに、塩化物の添加により、加熱ごとに塩化物が蒸発して、その後にガラス製品において凝縮する可能性がある。たしかに、フッ化物の添加により加工温度T4は下がることになるが、しかしながら、これによって化学安定性は若干悪化させられる。それに塩化物の添加によって、蒸発及び/又は凝縮の現象が現れる可能性がある。最後に、フッ化物の添加によって浴安定性(Wannenbestaendigkeit)が損なわれる可能性がある。
【0046】
この理由から、清澄剤としての塩化物及びフッ化物の添加は、最大1.5モル%の塩化物及び/又はフッ化物に制限される。
【0047】
本発明によるガラスは、特に、医薬品工業における一次包装材料として、特にびん(Flasche)、シリンジ、カートリッジ(Karpule)又はアンプルとして適している。その際、ガラスは、任意に化学強化されてよい。
【0048】
さらに、本発明によるガラスは、薄板ガラス又は極薄板ガラスとして適している。本発明によるガラスは、シートとして又は薄板若しくは超薄板の構成要素としてのいわゆるウェハとして、光学、電気光学及び電子工学の領域において高い要求が求められる用途のために用いられる。例えば、ディスプレイガラス及びタッチスクリーンガラス、カメラの液晶ガラス(Abbildungsglaeser)、半導体産業における、又はエネルギー貯蔵における、例えば薄膜バッテリー中でのガラスが挙げられる。バイオテクノロジーの用途にも本発明による平面ガラスが利用される。
【0049】
上記のあらゆる用途のために、ガラスは、加工又は適用の範囲内で、水、酸又はアルカリ液といった液状媒体に曝される。相応して、これらのガラスは化学的に不活性でなければならない。
【0050】
これは、化学強化に供されるガラスにも当てはまる。
【0051】
薄板ガラス又は極薄板ガラスは、10マイクロメートルから500マイクロメートルの間の制御された厚みで製造されることができる。
【0052】
薄板ガラス又は極薄板ガラスは、ダウンドロー法によって、オーバーフローフュージョン法によって、特殊なフローティング法によって、リドロー法によって、比較的大きい厚みのガラスの研磨によって又は比較的大きい厚みのガラスのエッチングによって製造されることができる。
【0053】
出発ガラスは、シート状又はロール状で準備してよい。出発ガラスは、好ましくは、5ナノメートル未満の表面粗さRaを有する、平滑で火炎研磨された表面を有する。例えばダウンドロー法又はオーバーフローフュージョン法による直接的な高温成形は、大量生産のために有利な方法である。それにより、5ナノメートル未満、好ましくは2ナノメートル未満、1ナノメートル未満までの表面粗さRaを有する、火炎研磨された表面が製造されることができる。
【0054】
極薄板ガラスは、ロール・ツー・ロールプロセス法での使用が理想的である。僅かな厚みによって、ガラスの柔軟性が保証される。
【0055】
極薄板ガラスは、フロート法によって安価に、非常に平滑な表面でもって製造されることもできる。しかしながら、フロート法の場合、スズ側で浮遊する結果、2つの若干異なる表面が製造される。両側のこの若干の差違が、あとの化学強化時に湾曲現象として現れて、コーティングの印刷に影響を及ぼす可能があり、それというのも、これらの両側は異なる表面エネルギーを有するからである。
【0056】
そのうえまた、多数の他の好ましい用途が更に存在する。これらに含まれるのが:
− 実験室用途及び化学プラント構造における装置用ガラスとしての、
− 特に電気工学用途用、TFT、PDP、OLEDのディスプレイ用、及び光電装置(Fotovoltaik)用の、サブストレート型基板(Substrat)、スーパーストレート型基板(Superstrat)又はカバーとしての、
− 特にランプ、ハロゲンランプ若しくは蛍光灯用の又は太陽熱利用のための、管形ガラスとしての、
− 特にランプ用の、リフレクターガラスとしての、建築用ガラスとしての、
− 特にオーブン部品、冷蔵庫部品又はレンジ部品用の、耐熱衝撃性ガラスとしての
用途である。
【0057】
当然の事ながら、前述及び後述の更に説明される本発明の特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、それぞれ示される組合せだけに限られず、他の組合せ又は単独でも使用可能である。
【0058】
例
表1a及び1bには、本発明によるガラスとともに、それらの最も重要な特性をまとめている。
【0059】
これらのガラスは、例外なく加水分解安定及び1350℃を下回る加工温度T4を示す。良好な化学強化性を、強化後の高い圧縮応力(Compressive Stress, CS)によって記録し、これは20マイクロメートルの範囲の好適な表層厚さ(Depth of Length)を伴う。
【0060】
ガラスは、慣用の原料を誘導加熱されたPt/Rh−坩堝(Pt20Rh)内で1650℃にて溶融することによって融解した。溶融時間は3時間〜4時間であった。引き続き、溶融物を均質化のために1600℃で1時間撹拌して、その後、撹拌せずにこの温度で2時間そのままにしておくことで、場合によっては存在する気泡を表面に上昇させた。溶融物を、30K/hの定義された冷却速度で冷却した。
【0061】
引き続き、ガラスを化学強化した。化学強化のプロセスに際して、表面圧縮応力(Compressive Stress: CS)が生じる。もたらされる圧縮応力ゾーン(DoL)は、化学強化に際して、典型的には10μmから50μmの間である。深さは、使用されるガラス及びプロセスに依存する。
【0062】
この応力は、小さい方の(Na+)を体積の大きいイオン(K+)で表面層において交換することによって作り出される。たいていの場合、ここで、より僅かな拡散エネルギーに基づきアルカリイオンが交換される。そうして、使用したガラスを、ガラス変形温度(Tg)より低い温度のカリウム塩浴中で強化した。カリウム塩浴については、アニオンが所定の温度範囲で安定である、通常のあらゆるカリウム塩を使用することができる。好ましくは、KNO
3が使用される。塩浴(一般にカリウム塩100%から始める)は、交換によって所望の交換深さがもはや達成されない程度にまでカリウムイオン含有量が低下したときに新たに補充する。これは一般にカリウム塩が95質量%未満の場合である。
【0063】
ガラス体は、カリウム塩100質量%〜少なくとも95質量%から成る塩浴中、好ましくは浴中で、400℃から550℃の間の、有利には450℃から500℃の間の浴温度で、特に有利には最大でも500℃で、2〜10時間、特に有利には少なくとも5時間そのままにしておいた。塩浴中でのイオン交換後、容器を浴から持ち上げて冷却する。
【0064】
【表1-1】
【0065】
【表1-2】
【0066】
本発明には属さない比較例を表2にまとめている。
【0067】
【表2】
【0068】
比較例V1及びV2の場合、SiO
2+Al
2O
3の総含有率が非常に高いことから、加工温度は1350℃の所望の限界値を超えて上昇する。さらに、比較例V2の場合、Al
2O
3/Na
2Oの比は1未満である。
【0069】
同様に、比較例V7の場合も、SiO
2+Al
2O
3の総含有率は非常に高いことから、加工温度は1350℃の所望の限界値を超えて上昇する。
【0070】
比較例V5、V6及びV8は、1未満であるAl
2O
3/CaOの低い比に基づき、不十分な加水分解安定性を示す。
【0071】
比較例V4は、Al
2O
3/Na
2Oの非常に低い比を有し、これは1未満である。それに、これは不十分な加水分解安定性につながる。
【0072】
比較例V3の場合、Al
2O
3及びZrO
2の含有率は非常に高く、このことは加水分解安定性の低下につながる。
なお、本発明は以下のとおりである。
[1]本発明は、少なくとも以下の成分(酸化物をベースとしてモル%で):
SiO2 64〜77
Al2O3 5〜14
Na2O 4〜12
CaO 1〜12
MgO 0〜14
ZrO2 0〜2
TiO2 0〜4.5
を含有するガラスであって、ここで、
Al2O3/Na2Oの比が1以上であり、
Al2O3/CaOの比が1.5以上であり、
SiO2+Al2O3の総含有率が82モル%未満である、ガラスである。
[2]また、本発明では、不可避の不純物を除きB2O3を含有しないことが好ましい。
[3]また、本発明では、3モル%までK2Oを含有し、ここで、好ましくは、K2Oは0.5モル%超2.5モル%未満であることが好ましい。
[4]また、本発明では、3.5モル%までSrOを含有することが好ましい。
[5]また、本発明では、さらに、少なくとも0.1モル%、好ましくは少なくとも0.5モル%のSrOを含有することが好ましい。
[6]また、本発明では、SiO2+Al2O3+ZrO2の総含有率が82モル%未満であることが好ましい。
[7]また、本発明では、Al2O3の含有率が、少なくとも9モル%、有利には少なくとも10.3モル%、更に有利には最大でも12.5モル%であることが好ましい。
[8]また、本発明では、3モル%までLi2Oを含有し、好ましくは不可避の不純物を除きLi2Oを含有しないことが好ましい。
[9]また、本発明では、不可避の不純物を除きZnOを含有しないことが好ましい。
[10]また、本発明では、酸化マグネシウムの含有率が最大でも4モル%であることが好ましい。
[11]また、本発明では、加水分解安定性がDIN ISO 719に従ってHGB 1であることが好ましい。
[12]また、本発明では、加水分解安定性がDIN ISO 720に従ってHGA 1であることが好ましい。
[13]また、本発明では、1350℃未満の加工温度T4を有することが好ましい。
[14]また、本発明では、さらに、少なくとも0.1モル%、好ましくは少なくとも0.5モル%、好ましくは最大でも4.5モル%のZrO2を含有することが好ましい。
[15]また、本発明では、さらに、少なくとも0.1モル%、好ましくは少なくとも0.5モル%、好ましくは最大でも4.5モル%、更に有利には最大でも2.0モル%、特に有利には0.5モル%〜1.5モル%のTiO2を含有することが好ましい。
[16]また、本発明では、ZrO2+TiO2の総含有率が、少なくとも0.1モル%、好ましくは少なくとも0.5モル%、特に有利には少なくとも1モル%であることが好ましい。
[17]また、本発明では、ZrO2+TiO2の総含有率が最大でも4.5モル%であることが好ましい。
[18]また、本発明では、さらに、0.01〜2モル%、好ましくは0.1〜1.5モル%の清澄剤を含有することが好ましい。
[19]また、本発明では、As2O3、Sb2O3、SnO2、CeO2、Cl-、F-及びSO42-から成る群から選択される少なくとも1種の清澄剤を含有することが好ましい。
[20]また、本発明では、As2O3、Sb2O3、Cl-、F-及びSO42-の含有率が、それぞれ最大1.5モル%であることが好ましい。
[21]また、本発明では、SnO2及びCeO2の含有率が、それぞれ最大1モル%、好ましくはそれぞれ0.01モル%未満であることが好ましい。
[22]また、本発明では、イオン交換により化学強化されたガラスより成る、少なくとも10μmの層の深さを有する圧縮応力層及び少なくとも500MPaの圧縮応力を有するガラス容器であることが好ましい。
[23]また、本発明では、圧縮応力が、少なくとも700MPa、更に有利には少なくとも800MPa、特に有利には少なくとも900MPaであるガラス容器が好ましい。
[24]また、本発明では、[1]に記載のガラスの使用であって、
− 医薬品一次包装、特にびん、シリンジ、カートリッジ又はアンプル、
− 化学強化可能なガラス、
− 特に電気工学用途用、TFT、PDP、OLEDのディスプレイ用、及び光電装置用の、サブストレート型基板、スーパーストレート型基板又はカバー、
− 特にランプ、ハロゲンランプ若しくは蛍光灯用の又は太陽熱利用のための、管形ガラス、
− 特にランプ用の、リフレクターガラス、
− 建築用ガラス、
− 特にオーブン部品、冷蔵庫部品又はレンジ部品用の、耐熱衝撃性ガラス、
− ロール・ツー・ロールプロセスを含めた数多くの特殊用途用の、10〜500マイクロメートルの厚み及び非常に平滑な若しくは火炎研磨された表面を有する薄板ガラス又は極薄板ガラスとしての、使用が好ましい。