特許第6877119号(P6877119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877119
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】集塵装置、空気清浄機
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/49 20060101AFI20210517BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20210517BHJP
   B03C 3/82 20060101ALI20210517BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20210517BHJP
【FI】
   B03C3/49
   B03C3/40 A
   B03C3/82
   F24F7/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-205158(P2016-205158)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2018-65090(P2018-65090A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大西 康之
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−031854(JP,U)
【文献】 特表昭60−501744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00 − 11/00
F24F 1/0071− 1/0076
F24F 7/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電を用いて空気中に浮遊する微粒子を第1の極性に帯電させるイオン化部と、
イオン化した微粒子を電気的に捕集する集塵部と、を備え、
前記集塵部は、
可撓性を有し、複数の湾曲部を有するように配設され、内部が前記イオン化した微粒子を含む空気の通風路となる誘電体チューブと、
放電を用いて前記誘電体チューブを前記第1の極性とは逆の第2の極性に帯電させる帯電部と、
を含み、
前記誘電体チューブは、前記通風路の上流部分において上流側と下流側とにスリットにて分割されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
前記誘電体チューブの周囲を絶縁する絶縁部を含むことを特徴とする請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記絶縁部はケース部材であり、前記誘電体チューブは該ケース部材の内部に収容されてユニット化されており、
前記誘電体チューブと前記ケース部材とが、当該集塵装置に対し着脱自在であることを特徴とする請求項2に記載の集塵装置。
【請求項4】
前記誘電体チューブは、螺旋状に配設されていることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の集塵装置。
【請求項5】
前記誘電体チューブは、つづら折り状に配設されていることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の集塵装置。
【請求項6】
請求項1からの何れか1項に記載の集塵装置を備えた空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄の分野において空気中に浮遊する微粒子を除去することができる集塵装置および空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中には塵埃をはじめとして、細菌や真菌,カビ菌,臭い原因菌,ウイルスなどの微生物、ダニの糞や死骸,花粉などのアレルギーを引き起こす物質(以下、アレル物質)、などの微粒子が浮遊している。埃などの大きな塵埃は、フィルタで捕集されるが、微細な塵埃や、微生物、アレル物質などの微粒子は、フィルタの網目を通過してしまい、フィルタでは除去できない。電気集塵技術を用いた集塵装置は、このようなフィルタの網目を通過するような微粒子を捕集することに優れている。
【0003】
従来、この種の集塵装置として、放電によって空気中の微粒子を帯電するイオン化部と、電極を積層し、交互に異なる電圧を印加して電界を形成して帯電した微粒子を捕集する集塵部とを、空気の流れに沿って設ける構成が知られている。この構成を応用した例として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、一方の面に通風路となるリブを設け、他方の面に電極を設けたシートを積層して前記電極に積層毎に交互に異なる電圧を印加する集塵部が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−187739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の集塵装置の集塵部のように、積層されたシートの間を通過させる構成では、通風路の長さが短いため、空気中の微粒子を十分に捕集することはできない。また、捕集効果を上げるべく通風路を長くすると、装置自体が大型化するといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、コンパクトな構成でありながら、空気中の微粒子を効果的に捕集することができる集塵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る集塵装置は、放電を用いて空気中に浮遊する微粒子を第1の極性に帯電させるイオン化部と、イオン化した微粒子を電気的に捕集する集塵部と、を備え、前記集塵部は、可撓性を有し、複数の湾曲部を有するように配設され、内部が前記イオン化した微粒子を含む空気の通風路となる誘電体チューブと、放電を用いて前記誘電体チューブを前記第1の極性とは逆の第2の極性に帯電させる帯電部と、を含み、前記誘電体チューブは、前記通風路の上流部分において上流側と下流側とにスリットにて分割されている構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、コンパクトな構成でありながら、空気中の微粒子を効果的に捕集することができる集塵装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態に係る集塵装置が搭載された空気清浄機の概略構成を示す縦断側面図である。
図2図1に示す空気清浄機に搭載された集塵装置の構成を模式的に示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図、(c)は上面図、(d)は空気取込口のある側の側面図である。
図3図2に示す集塵装置の集塵部に配設される誘電体チューブの好ましい構成例を示す斜視図である。
図4】本実施の他の実施の一形態に係る集塵装置の構成を模式的に示すもので、図2の(b)に相当する縦断正面図である。
図5】本発明のさらに他の実施の一形態に係る集塵装置が搭載された空気清浄機の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図6図5に示す空気清浄機に搭載された集塵装置の構成を模式的に示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図、(c)は上面図、(d)は正面図、(e)は帯電部のある側の側面図である。
図7図6に示す集塵装置の集塵部に配設される誘電体チューブの好ましい構成例を示す斜視図である。
図8】本発明のさらに他の実施の一形態に係る集塵装置の構成を模式的に示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願出願人は、イオン発生方式の空気清浄機による浮遊菌の除菌効果を測定するために、空気中に浮遊する微粒子の回収を試みたが、思うように微粒子を回収することができなかった。その原因を探ったところ、回収経路に用いたシリコーンチューブの内壁に微粒子が付着していることがわかった。シリコーンチューブを除電して同様の回収を試みたところ、シリコーンチューブの内壁に付着する微粒子を減らし、回収量を上げることに成功した。このころから、帯電しやすいシリコーンチューブが電荷を帯び、逆極性の電荷を帯びた微粒子が内壁に電気的に吸着されていたことがわかった。
【0011】
本願発明は、このような体験にヒントを得たもので、シリコーンチューブなどの帯電しやすい誘電体チューブを積極的に帯電させ、微粒子を誘電体チューブの内部に導入される前に逆極性に帯電させておくことで、誘電体チューブの内壁に積極的に吸着して捕集するものである。シリコーンチューブなどの可撓性のある誘電体チューブを利用することで、自由に曲げることができるので、コンパクトな空間に、長い通風路を確保することができる。
【0012】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図1図3を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る集塵装置1が搭載された空気清浄機50の概略構成を示す縦断側面図である。但し、図1において、集塵装置1とそれ以外の部分とでは切断面が異なり、かつ、集塵装置1の断面は、模式的に示している。
【0013】
図1に示すように、空気清浄機50は、縦に長い矩形箱形のハウジング51を備えている。ハウジング51の内部は、隔壁部材60により後面(背面)側の第1室55と前面(正面)側の縦に延びる第2室56とに分割されている。
【0014】
第1室55は、ハウジング51の後面パネル51aに開設された多数の吸込口61を介して外部に連通している。第2室56は、ハウジング51の天板51bに開設された吹出口62を介して外部に連通している。第1室55と第2室56とは、隔壁部材60の下部に設けられた連通口63を介して相互に連通している。
【0015】
第1室55の内部には、フィルタ部65、加湿フィルタユニット53、水槽54および駆動モータ70などが配置されている。第2室56の内部には、送風機52および集塵装置1などが配置されている。
【0016】
フィルタ部65は、後面パネル51aに沿って配置され、脱臭フィルタと集塵フィルタとを有する。加湿フィルタユニット53および水槽54は、吸込室55における連通口63側に、送風機52と対向して配置されている。
【0017】
加湿フィルタユニット53は、中空の円盤形をなす保持枠(図示しない)の内部に加湿フィルタ68を収納保持して構成されている。加湿フィルタ68は、レーヨン等の吸水性を有すると共に通気が可能な材料製のシートを蛇腹状に折り重ねて平板状に形成されており、保持枠の内部に収納されている。
【0018】
保持枠の外周面には、幅方向の中央部に全周に亘って歯が形成された適宜幅のリングギヤが一体に設けられている。リングギヤには、駆動モータ70の伝動歯車(図示しない)と噛合された駆動歯車71が噛合している。駆動モータ58は第1室55の内部に固定されており、駆動モータ70が駆動することで、その回転力が、伝動歯車、駆動歯車、リングギヤを介して保持枠に伝わり、加湿フィルタユニット53が回転する。
【0019】
水槽54は、矩形の深皿形をなしており、ハウジング51の底板51c上に載置されている。水槽54の上面は開口しており、加湿フィルタユニット53は、下部を水槽54の水に浸けた状態で、回転自在に支持されている。
【0020】
加湿フィルタユニット53および水槽54は、ハウジング51の底板51c上に載置された状態で、ハウジング51の側板(図示しない)の一部と共に、空気清浄機50の本体より着脱自在に構成されている。
【0021】
送風機52は、第2室56の下部に配置されている。送風機52は、羽根車57と該羽根車57を駆動する駆動モータ58とを備えている。駆動モータ58は第2室56の内部に固定されており、羽根車57は、駆動モータ58の回転軸に連結され、連通口63に対向配置されている。駆動モータ58の駆動により羽根車57が回転し、送風機52は、回転軸方向から空気を吸引し、遠心方向へ空気を送り出す。
【0022】
送風機52の動作により、図1中に白抜矢印で示すように、外部から後面パネル51aの吸込口61を経て第1室55へ空気が流入する。流入した空気は、第1室55の内部を前方向へ流れ、連通口63を経て送風機52に吸引され、スクロール(図示しない)の空気送出口59から上向きの風として第2室の上部に導出される。
【0023】
加湿機能がON状態にある場合、加湿フィルタユニット53が吸水しているので、流入した空気は、第1室55の内部を流れる間に加湿される。加湿機能がOFF状態にある場合は、加湿フィルタユニット53が乾いているため、流入した空気は、加湿されることなく第1室55の内部を通過する。
【0024】
集塵装置1は、第2室56における送風機52の上方に配置されている。送風機52の空気送出口59から送り出された空気は、集塵装置1の空気導入口10より集塵部本体4の内部に導入される。送風機52の空気送出口59と集塵装置1の空気導入口10との間には、空気送出口59から排出され空気を空気導入口10に導くガイド(図示しない)などが設けられている。
【0025】
集塵装置1は、フィルタ部65にて除去できなかった空気中の微粒子を、集塵部3にて電気的に捕集するものである。上記微粒子は、微細な塵埃、細菌や真菌,カビ菌,臭い原因菌,ウイルスなどの微生物、ダニの糞や死骸,花粉などのアレル物質、などである。集塵装置1にて微粒子が除去された空気は、集塵装置1の空気排出口11から排出され、空気清浄機50の吹出口62より外部へ放出される。
【0026】
本実施の形態においては、集塵部3は、帯電部5を除く集塵部本体4が着脱自在であり、空気清浄機50から取り出せるように構成されている。集塵部本体4は、天板51bにおける吹出口62の形成部を取り外して第2室56の上端を開放することで、外部に取り出すことができる。
【0027】
以下、図2を用いて、集塵装置1の構成について説明する。図2は、集塵装置1の構成を模式的に示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図、(c)は上面図、(d)は空気導入口10のある側の側面図である。
【0028】
(a)〜(d)に示すように、集塵装置1は、イオン化部2と集塵部3とを備えている。イオン化部2は、放電を用いて空気中に浮遊する微粒子を第1の極性に帯電させるものである。本実施の形態においては、イオン化部2は、放電電極2aを備えるイオン発生装置である。イオン化部2は、放電電極2aが、送風機52の空気送出口59(図1参照)より排出され、空気導入口10より集塵部3の内部に取り込まれる空気に対して放電するように、空気導入口10の近傍に配設されている。イオン化部2は、空気中の微粒子を第1の極性、ここではマイナスに帯電させる。
【0029】
なお、図2の(a)〜(d)では、イオン化部2の放電電極2aとして針状の放電部を有する構成を例示するが、放電部の形状はブラシ状であっても、棒状、線状、繊維状、面状など、どのような形状であってもよい。要は、空気中の微粒子を第1の極性に帯電できるものであればよい。
【0030】
集塵部3は、イオン化部2にてイオン化された微粒子を電気的に捕集するものである。集塵部3は、集塵部本体4と帯電部5とを備える。集塵部本体4は、上述したように着脱自在であり、絶縁体からなるケース(絶縁部、ケース部材)7と、その内部に収容された誘電体チューブ6とを有し、ユニット化されている。
【0031】
ケース7は、誘電体チューブ6の周囲を絶縁する。ケース7は、第2室56の上部の形状に合う縦に長い矩形箱形に形成されている。ケース7の下部に上述した空気導入口10が形成され、ケースの天面に上述した空気排出口11が形成されている。また、ケース7の天面には、集塵部本体4の着脱を容易にするための把手13が形成されている。
【0032】
誘電体チューブ6は、可撓性を有し、複数の湾曲部を有するように配設され、内部がイオン化部2にてイオン化された微粒子を含む空気の通風路となる。誘電体チューブ6は、幾重(何重)にも巻回されている。誘電体チューブ6は、帯電部5にて、微粒子とは逆極性に帯電されることで、微粒子を電気的に引き寄せて捕集する。
【0033】
本実施の形態においては、誘電体チューブ6は、断面形状が円形をなし、ケース7の内壁に沿って螺旋状に配設(巻回して配設)されている。誘電体チューブ6の一端6aは空気導入口10に位置し、他端6bは空気排出口11に位置する。空気導入口10に位置する端部6aから入った空気が、誘電体チューブ6の内部を通って空気排出口11に位置する端部6bから排出される。
【0034】
誘電体チューブ6の内径は、2cm程度とすることが好ましい。内径が細くなり過ぎると、空気の流れの抵抗となって風量が低下し、集塵効果が低下する。内径が無駄に太くなると、螺旋状に配設した場合の誘電体チューブ6の全長が短くなってしまい、集塵効果が低下する。内径は、送風機52の風量やケース7の大きさなどを考慮して、空気の流れを阻害しない範囲で、誘電体チューブ6の全長を可能なかぎり長く確保できるように設定すればよい。
【0035】
図2の(a)(b)では、1本の誘電体チューブ6が螺旋状に配設した構成を例示しているが、図3に示すように、複数本の誘電体チューブ6を束ねて螺旋状に配設する構成とすることが好ましい。このような構成とすることで、ケース7の内部の空間を有効に利用することができる。
【0036】
本実施の形態においては、誘電体チューブ6として、シリコーンゴムからなるシリコーンチューブが用いられている。シリコーンゴムは、帯電性、可撓性、耐水性に優れる。帯電性に優れることで、帯電部5に印加する電圧を大きくする必要がない。可撓性に優れることで、容易に曲げることができ、ケース7の内壁に沿わせて巻回させるといった成形が容易に行え、自由度が高い。耐水性に優れることで、水洗いが可能となる。なお、誘電体チューブ6の材質としては、帯電性に優れ、可撓性を有するものであれば、他の材質でもよい。なお、耐水性は必須ではないが、水洗い可能とするためには、水に強い材質であることが望ましい。
【0037】
誘電体チューブ6の体積抵抗率としては、10の10〜14乗(Ω・m)であることが好ましい。体積抵抗率をこのような範囲とすることで、誘電体チューブ6の外側(外表面側)から内側(内壁面側)へと微小な電荷が移動できるようになり、誘電体チューブ6の外側から電荷を付与しながら、誘電体チューブ6の内側に必要な電荷を付与することができる。
【0038】
図2に戻り、帯電部5は、放電を用いて誘電体チューブ6を前記第1の極性とは逆極性、ここではプラスに帯電させるものである。本実施の形態においては、帯電部5は、複数の放電電極5aを備えるイオン発生装置である。帯電部5は、イオン化部2と共に、空気清浄機50側に固定されている。帯電部5における複数の放電電極5aを備える棒状部分は、ケース7の底面に形成された開口14よりケース7の内部に挿入される。ケース7の内部に挿入された棒状部分は、螺旋状に配設された誘電体チューブ6の中央の空間に挿通され、複数の放電電極5aにて、中央の空間から誘電体チューブ6を帯電する。帯電部5における棒状部分を支える基台部分は、集塵部本体4が載置する台座としても機能している。帯電部5は、複数の放電電極5aを備えることで、誘電体チューブ6の全体を帯電できる。
【0039】
なお、図2の(a)(b)では、放電電極5aとして、針状の放電部を例示するが、放電電極5aは、ブラシ状であっても、棒状、線状、繊維状、面状など、どのような形状であってもよい。また、棒状部分に複数の放電電極5aを設けた構成に代えて、ワイヤ状の電極であってもよい。要は、誘電体チューブ6を第1の極性と逆極性に帯電できるものであればよい。
【0040】
このような構成の集塵装置1においては、イオン化部2が、送風機52の空気送出口59から排出され、空気導入口10から集塵部本体4の内部に導入される空気に対して放電し、空気中の微粒子をマイナスに帯電させる。空気導入口10から内部に導入された空気は、空気導入口10に位置する端部6aから誘電体チューブ6の内部に入り、空気排出口11に位置する端部6bに向かって流れる。その間、マイナスに帯電した微粒子は、プラスに帯電した誘電体チューブ6の内壁に電気的に引き寄せられて捕集され、空気排出口11からは微粒子が除去された空気が放出される。
【0041】
上記構成においては、誘電体チューブ6が螺旋状に幾重に巻回されて配設されているので、コンパクトでありながら長い通風路を確保することができ、微粒子を効果的に捕集することができる。
【0042】
また、誘電体チューブ6が、耐水性に強い材質から構成されるとともに、帯電部5とは分離して設けられているので、水洗いすることができる。しかも、集塵部本体4が着脱自在に構成されているので、誘電体チューブ6の水洗いがより簡単に実施できる。
【0043】
なお、本実施の形態においては、イオン化部2が微粒子をマイナスに帯電させ、帯電部5が誘電体チューブ6をプラスに帯電させる構成を例示したが、イオン化部2が微粒子をプラスに帯電させ、帯電部5が誘電体チューブ6をマイナスに帯電させる構成であってもよい。
【0044】
〔実施の形態2〕
本発明のその他の実施の一形態について、図4を参照して説明する。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0045】
図4は、本実施の形態の集塵装置1の構成を模式的に示すもので、図2の(b)に相当する縦断正面図である。
【0046】
図4に示すように、本実施の形態においては、誘電体チューブ6は、空気排出口11よりも空気導入口10に近い通風路の上流部分において、上流側と下流側とに分割されている。具体的には、誘電体チューブ6にスリット18が形成されており、スリット18を挟んで上流側と下流側とに分割されている。図4の例では、スリット18が2つ形成されており、これにより誘電体チューブ6は、3分割されている。
【0047】
このように構成することで、帯電部5とは逆極性のイオン化部2による帯電効果で、誘電体チューブ6におけるイオン化部2に近い上流部分が除電されたとしても、その除電の広がりをスリット18で止めて、誘電体チューブ6の全体に広がることを防ぐことができる。
【0048】
〔実施の形態3〕
本発明のその他の実施の一形態について、図5図7を参照して説明する。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態1、2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0049】
図5は、本実施の形態に係る集塵装置1Aが搭載された空気清浄機80の概略構成を模式的に示す斜視図である。図6は、集塵装置1Aの構成を模式的に示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図、(c)は上面図、(d)は正面図、(e)は帯電部5Aのある側の側面図である。
【0050】
図5に示すように、空気清浄機80は、縦に長い矩形箱形のハウジング81を備えている。ハウジング81の内部の底部に、長い円筒状のクロスフローファン82が配設されている。クロスフローファン82は径方向より内側に取り込んだ空気を90度程回転させた径方向に吹出すものである。外部から吸込口61を経てハウジング81内部に流入した空気は、クロスフローファン82の内部に取り込まれ、図5中に白抜矢印で示すように、上向きに方向を変えて導出される。クロスフローファン82を用いることで、その軸方向に沿った広い(横に長い)幅で空気を排出することができる。集塵装置1Aは、クロスフローファン82の上部に配置されている。イオン化部2Aは、クロスフローファン82の広い空気の排出幅に合わせて、横長に形成されている。
【0051】
図6の(a)〜(e)に示すように、集塵装置1Aにおいて、集塵部3Aにおける着脱自在に構成された集塵部本体4Aは、縦に長い矩形箱形のケース7Aを有する。該ケース7Aの内部に、ケース7Aの内部の空間を埋めるように、断面形状が長穴形状の誘電体チューブ16がつづら折り状に配設(積層して配設)されている。誘電体チューブ16は、幾重(何重)にも折り返されている。誘電体チューブ16の材質にも、シリコーンゴムを用いている。
【0052】
誘電体チューブ16の下端16aは、ケース7Aに形成された空気導入口10に位置し、上端16bはケース7Aに形成された空気排出口11に位置する。空気導入口10に位置する下端16aから入った空気が、誘電体チューブ16の内部を通って空気排出口11に位置する上端16bから排出される。
【0053】
誘電体チューブ16の内部の長穴形状の空洞の高さは3〜5cm程度とすることが好ましい。空洞の高さが低くなり過ぎると、空気の流れの抵抗となって風量が低下し、集塵効果が低下する。空洞が無駄に高くなると、つづら折り状に配置した場合の誘電体チューブ16の全長が短くなってしまい、集塵効果が低下する。空洞の高さは、クロスフローファン82の風量やケース7Aの大きさなどを考慮して、空気の流れを阻害しない範囲で、誘電体チューブ16の全長を可能なかぎり長くは確保できるように設定すればよい。なお、空洞の横幅は、クロスフローファン82の幅に応じて決定すればよい。
【0054】
図6の(a)(b)では、1本の誘電体チューブ16がつづら折り状に配設されている構成を例示しているが、図7に示すように、複数本の誘電体チューブ16を積層してつづら折り状に配設する構成とすることが好ましい。このような構成とすることで、ケース7の内部の空間を有効に利用することができる。
【0055】
図6に戻り、帯電部5Aは、ケース7Aの側壁側に固定されている。帯電部5Aは、複数の放電電極5aが、(e)に示すように、ケース7Aの側壁に底面から形成された、切欠き状の開口14aよりケース7Aの内部に挿入される。ケース7Aの内部に挿入された複数の放電電極5aにて、つづら折り状に配設された誘電体チューブ16を側方より帯電する。帯電部5Aは、複数の放電電極5aを備えることで、誘電体チューブ16の全体を帯電できる。
【0056】
〔実施の形態4〕
本発明のその他の実施の一形態について、図8を参照して説明する。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態1〜3にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0057】
図8は、底面が正方形の角柱状の外形を有する集塵装置1Bの構成を模式的に示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は上面図である。図8の(a)(b)に示すように、集塵装置1Bにおいては、ケース7Bが、底面が正方形の中空の角柱状をなし、内部に誘電体チューブ6が螺旋状に配設されている。第2室56の上部の、空気清浄機の送風機52から吹出口62までの空間の形状(図1参照)が、底面が正方形の角柱状の場合には、このような集塵装置1Bを搭載すればよい。
【0058】
〔実施の形態5〕
本発明のその他の実施の一形態について説明する。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態1〜4にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0059】
前述の実施の形態1〜4にて説明した集塵装置1〜1Bでは、集塵部本体4〜4Bが着脱自在に構成されていた。これに対し、本実施の形態の集塵装置は、集塵部本体4〜4Bは取り外せない構成となっている。この場合、誘電体チューブ6、16を水洗いすることはできないが、誘電体チューブ6、16の長さを十分に長くすることで、集塵装置が搭載される空気清浄機等の電子機器の寿命まで、微粒子を捕集できる。
【0060】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る集塵装置1は、放電を用いて空気中に浮遊する微粒子を第1の極性に帯電させるイオン化部2と、イオン化した微粒子を電気的に捕集する集塵部3と、を備え、前記集塵部は、可撓性を有し、複数の湾曲部を有するように配設され、内部が前記イオン化した微粒子を含む空気の通風路となる誘電体チューブ6(16)と、放電を用いて前記誘電体チューブを前記第1の極性とは逆の第2の極性に帯電させる帯電部5と、を含んでいる。
【0061】
上記構成によれば、イオン化部にて、空気に含まれて浮遊する、微細な塵埃、細菌や真菌,カビ菌,臭い原因菌,ウイルスなどの微生物、ダニの糞や死骸,花粉などのアレルギーを引き起こす物質(以下、アレル物質)、などの微粒子が、第1の極性に帯電される。イオン化した微粒子は、空気の流れに乗って、誘電体チューブ6の内部に導かれる。誘電体チューブ6は、帯電部5にて逆極性の第2の極性に帯電されているので、イオン化した微粒子は、誘電体チューブ6を通過する間に、誘電体チューブ6の内壁に電気的に引き付けられて捕集される。
【0062】
ここで、誘電体チューブ6は、複数の湾曲部を有するように配設されているので、誘電体チューブ6の配設する空間が小さくても通風路の長さを確保することができる。その結果、コンパクトな構成でありながら、集塵効果を上げることができる。
【0063】
本発明の態様2に係る集塵装置1は、上記態様1において、前記誘電体チューブ6の周囲を絶縁する絶縁部(ケース7,7A)を含む構成であってもよい。
【0064】
上記構成によれば、誘電体チューブ6の周囲が絶縁部にて絶縁されるので、誘電体チューブ6と導電体との接触を防止して、第2の極性に帯電した状態を確実に保持することができる。
【0065】
本発明の態様3に係る集塵装置1は、上記態様2において、前記絶縁部はケース部材(ケース7)であり、前記誘電体チューブ6は該ケース部材の内部に収容されてユニット化されており、前記誘電体チューブ6と前記ケース部材とが、当該集塵装置に対して着脱自在である構成であってもよい。
【0066】
上記構成によれば、前記誘電体チューブ6と前記ケース部材とが、着脱自在であるので、誘電体チューブの清掃等を容易に行うことができる。
【0067】
本発明の態様4に係る集塵装置1は、上記態様1、2または3において、前記誘電体チューブ6は、前記通風路の上流部分において上流側と下流側とに分割されている(スリット18)構成とすることもできる。
【0068】
上記構成によれば、誘電体チューブ6が、通風路の上流部分において上流側と下流側とに分割されているので、イオン化部2による帯電の効果で通風路の上流部分が除電されたとしても、その除電の広がりを分割部分で止めて、誘電体チューブ6の全体に広がることを防ぐことができる。
【0069】
本発明の態様5に係る集塵装置1は、上記態様1、2、3または4において、前記誘電体チューブ6の材質がシリコーンゴムである構成とすることもできる。
【0070】
上記構成によれば、誘電体チューブ6の材質として、帯電性、可撓性、耐水性に優れるシリコーンゴムを用いているので、製造しやすく、かつ、水洗いも可能となる。
【0071】
本発明の態様6に係る集塵装置1は、上記態様1、2、3、4または5において、前記誘電体チューブ6は、螺旋状に配設されている構成とすることもできる。
【0072】
上記構成によれば、誘電体チューブを螺旋状に配設することで、上記態様1、2、3、4または5の集塵装置を容易に実現することができる。
【0073】
本発明の態様7に係る集塵装置1は、上記態様1、2、3、4または5において、前記誘電体チューブ16は、つづら折り状に配設されている構成とすることもできる。
【0074】
上記構成によれば、誘電体チューブ16をつづら折り状に配設することで、上記態様1、2、3、4または5の集塵装置を容易に実現することができる。
【0075】
本発明の態様8に係る空気清浄機50(80)は、上記態様1、2、3、4、5または7の集塵装置を備えた空気清浄機である。
【0076】
上記構成によれば、コンパクトな構成でありながら、集塵効果の高い集塵装置1を搭載しているので、上述した微細な塵埃、微生物、アレル物質、などの集塵効果の高い、空気清浄機を提供することができる。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0078】
50、80 空気清浄機
1、1A、1B 集塵装置
2、2A イオン化部
2a、5a 放電電極
3、3A 集塵部
4、4A 集塵部本体
5、5A 帯電部
6、16 誘電体チューブ
7、7A ケース(絶縁部、ケース部材)
10 空気導入口
11 空気排出口
18 スリット
51、81 ハウジング
52 送風機
59 空気送出口
82 クロスフローファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8