特許第6877151号(P6877151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877151
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】マルチ作業機
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/00 20060101AFI20210517BHJP
   A01B 49/04 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A01G13/00 303
   A01B49/04
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-5369(P2017-5369)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-113871(P2018-113871A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183967
【氏名又は名称】鋤柄農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】岸本 岳史
(72)【発明者】
【氏名】小谷 和行
(72)【発明者】
【氏名】国分寺 俊和
(72)【発明者】
【氏名】鋤柄 忠良
(72)【発明者】
【氏名】土屋 一義
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭57−037950(JP,Y2)
【文献】 特開2004−065024(JP,A)
【文献】 特開2009−291125(JP,A)
【文献】 実公平05−016888(JP,Y2)
【文献】 特開2009−106189(JP,A)
【文献】 特許第3642902(JP,B2)
【文献】 米国特許第03121973(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 49/00 − 49/06
A01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体には、耕耘を行う耕耘部と、耕耘された土を用いて畝を成形する畝成形部と、フィルムロールからマルチフィルムを繰り出して畝を被覆するように敷設するマルチフィルム敷設部と、前記機体を支持自在な接地輪とが備えられ、
前記機体の進行方向において、前方側から、前記耕耘部、前記畝成形部の順に配置され、
前記接地輪は、前記機体の進行方向で前記耕耘部よりも後方側に配置され、
前記フィルムロールは、その重心が前記機体の進行方向において前記接地輪と重複しない状態で前記接地輪よりも前方側で、かつ、前記畝成形部よりも前方側になるように配置されているマルチ作業機。
【請求項2】
前記フィルムロールの重心が前記機体の進行方向において前記耕耘部と前記畝成形部との間に位置して、前記フィルムロールが前記耕耘部及び前記畝成形部よりも上方側に配置されている請求項1に記載のマルチ作業機。
【請求項3】
機体には、耕耘を行う耕耘部と、耕耘された土を用いて畝を成形する畝成形部と、フィルムロールからマルチフィルムを繰り出して畝を被覆するように敷設するマルチフィルム敷設部と、前記機体を支持自在な接地輪とが備えられ、
前記機体の進行方向において、前方側から、前記耕耘部、前記畝成形部の順に配置され、
前記接地輪は、前記機体の進行方向で前記耕耘部よりも後方側に配置され、
前記フィルムロールは、その重心が前記機体の進行方向において前記接地輪と重複しない状態で前記接地輪よりも前方側になるように配置されており、
前記機体は、前記耕耘部を備えた前方側ユニットと、前記接地輪と前記畝成形部とを備えた後方側ユニットとに分離自在に構成され、
前記フィルムロールは、前記前方側ユニット側に支持される状態で備えられているマルチ作業機。
【請求項4】
前記マルチフィルム敷設部は、チューブロールから潅水用チューブを繰り出して畝の上面に敷設する状態で前記マルチフィルムにて畝を被覆するように敷設自在に構成され、
前記チューブロールは、前記機体の進行方向において前記耕耘部と重複する位置で、前記耕耘部と間隔を隔てて前記耕耘部の上方側に配置され、
前記フィルムロールは、前記チューブロールの下方側に入り込んだ状態で配置されている請求項1〜3の何れか1項に記載のマルチ作業機。
【請求項5】
前記耕耘部の上方側と前記畝成形部の上方側とに亘って前後方向に延びる左右一対の第1支持フレームと、それら左右一対の第1支持フレームの夫々から上方側に延設された左右一対の第2支持フレームとが備えられ、
前記フィルムロールは、左右一対の前記第2支持フレームに亘る状態で支持されている請求項1〜4の何れか1項に記載のマルチ作業機。
【請求項6】
前記フィルムロールの外周部に当接して前記フィルムロールに制動力を付与するブレーキ部が備えられている請求項1〜5の何れか1項に記載のマルチ作業機。
【請求項7】
前記ブレーキ部は、前記フィルムロールの外周部に当接する状態で回転自在なローラーと、そのローラーの側面部に当接して前記ローラーに制動力を付与する制動力付与部材とを備え、
前記ローラーにおいて前記フィルムロールの外周部に当接する当接部位が弾性体にて構成されている請求項6に記載のマルチ作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の進行により畝を成形してその畝を被覆するようにマルチフィルムを敷設するマルチ作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなマルチ作業機は、例えば、耕耘を行う耕耘部、耕耘された土を用いて畝を成形する畝成形部と、フィルムロールからマルチフィルムを繰り出して畝を被覆するように敷設するマルチフィルム敷設部とが備えられている(例えば、特許文献1、2参照。)。マルチ作業機は、例えば、トラクタ等の後部に昇降自在に装着されており、トラクタを走行させて機体を進行させることで、マルチ作業機が、畝を成形してその畝にマルチフィルムを敷設する作業を行う。
【0003】
特許文献1に記載のマルチ作業機における各部の配置位置については、機体の進行方向で前方側から、耕耘部、畝成形部の順に配置されている。そして、マルチ作業機の機体を支持する接地輪が畝成形部の横側部に配置されており、機体の進行方向では接地輪の配置位置が畝成形部の中央部となっている。また、フィルムロールは、機体の進行方向において、接地輪の後半部と重複する位置で且つ畝成形部の後半部の上方側に配置されている。
【0004】
特許文献2に記載のマルチ作業機における各部の配置位置については、機体の進行方向で前方側から、耕耘部、畝成形部の順に配置されている。マルチ作業機の機体を支持する接地輪が畝成形部の横側部に配置されており、機体の進行方向では接地輪の配置位置が畝成形部の後端部となっている。また、フィルムロールは、機体の進行方向において、接地輪の前半部と重複する位置で且つ畝成形部の後半部の上方側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−225706号公報
【特許文献2】特許第3727618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチ作業機を用いて作業を行うに当たり、圃場の面積が大きくなる等により、マルチフィルムの敷設対象面積が大きくなった場合に、フィルムロールにおけるマルチフィルムの巻き数を増大させて対応することが考えられる。しかしながら、フィルムロールの重量が増大することになるので、マルチフィルムの巻き数を増大させるだけではなく、機体の進行方向での重量バランスを考慮することが必要となる。
【0007】
上述のようなマルチ作業機では、耕耘部における耕耘軸を回転駆動させるための動力伝達部等が備えられ、この動力伝達部等が重量物となっていることから、マルチ作業機の重心が機体の進行方向で耕耘部付近に位置している。よって、重量が増大するフィルムロールの配置位置が耕耘部から離れた位置になると、機体の進行方向での重量バランスが崩れることになり、例えば、マルチ作業機を昇降できなくなる等の問題が発生する虞がある。
【0008】
また、マルチ作業機は耕耘部よりも後方側に位置する接地輪により支持されていることから、機体の進行方向での重量バランスを取るためには、フィルムロールと接地輪との配置位置の関係も重要となる。例えば、マルチ作業機において接地輪よりも後方側部位にかかる荷重が大きくなると、マルチ作業機の姿勢が不安定になる等の問題が発生する虞がある。また、接地輪に対して過大な荷重がかかると、接地輪が過剰に沈み込んだり、接地輪の耐久性の問題が生じる虞もある
【0009】
上記特許文献1に記載のマルチ作業機では、フィルムロールが、機体の進行方向において、接地輪の後半部と重複する位置で且つ畝成形部の後半部の上方側に配置されているので、フィルムロールの配置位置が耕耘部から離れた位置となっており、機体の進行方向での重量バランスが崩れる可能性がある。しかも、フィルムロールの配置位置が機体の進行方向で接地輪の後半部と重複する位置となっているので、接地輪又はそれよりも後方側部位にかかる荷重が大きくなり易く、それに伴う問題が生じる可能性がある。
【0010】
上記特許文献2に記載のマルチ作業機では、フィルムロールが、機体の進行方向において接地輪の前半部と重複する位置で且つ畝成形部の後半部の上方側に配置されているので、フィルムロールの配置位置が耕耘部から離れた位置となっており、機体の進行方向での重量バランスが崩れる可能性がある。しかも、フィルムロールの配置位置が機体の進行方向で接地輪の前半部と重複する位置となっているので、接地輪にかかる荷重が大きくなり易く、それに伴う問題が生じる可能性がある。
【0011】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、フィルムロールの荷重が増大しても、機体の進行方向での重量バランスを適切なバランスに保ちながら、接地輪又はそれよりも後方側部位にかかる荷重を極力小さくすることができるマルチ作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1特徴構成は、機体には、耕耘を行う耕耘部と、耕耘された土を用いて畝を成形する畝成形部と、フィルムロールからマルチフィルムを繰り出して畝を被覆するように敷設するマルチフィルム敷設部と、前記機体を支持自在な接地輪とが備えられ、
前記機体の進行方向において、前方側から、前記耕耘部、前記畝成形部の順に配置され、
前記接地輪は、前記機体の進行方向で前記耕耘部よりも後方側に配置され、
前記フィルムロールは、その重心が前記機体の進行方向において前記接地輪と重複しない状態で前記接地輪よりも前方側になるように配置されている点にある。
【0013】
本構成によれば、機体の進行方向で耕耘部よりも後方側に配置される接地輪に対して、フィルムロールの重心を、機体の進行方向において接地輪と重複しない状態で接地輪よりも前方側とすることで、機体の進行方向において、フィルムロールの重心を耕耘部に近づけることができる。よって、フィルムロールの荷重が増大しても、機体の進行方向での重量バランスを適切なバランスに保つことができる。
【0014】
しかも、フィルムロールの重心が、機体の進行方向において接地輪と重複しない状態で接地輪よりも前方側になるので、フィルムロールの荷重がマルチ作業機において接地輪よりも前方側部位にかかることになる。これにより、フィルムロールの荷重が増大しても、接地輪又はそれよりも後方側部位にかかる荷重が大きくなり難く、接地輪にて機体を適切に支持することができる。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、前記フィルムロールは、その重心が前記機体の進行方向において前記畝成形部よりも前方側になるように配置されている点にある。
【0016】
本構成によれば、機体の進行方向で耕耘部よりも後方側に配置される畝成形部に対して、フィムルロールの重心を機体の進行方向において畝成形部よりも前方側とすることで、機体の進行方向において、フィルムロールの重心を耕耘部に近づけることができる。よって、フィルムロールの荷重が増大しても、機体の進行方向での重量バランスを適切なバランスに保つことができる。しかも、フィルムロールの荷重が畝成形部にかかり難くなり、例えば、畝成形部が過剰に沈み込んでしまい、所望の高さの畝を適切に成形できない等の問題が発生するのを防止できる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、前記フィルムロールの重心が前記機体の進行方向において前記耕耘部と前記畝成形部との間に位置して、前記フィルムロールが前記耕耘部及び前記畝成形部よりも上方側に配置されている点にある。
【0018】
本構成によれば、フィルムロールの重心を機体の進行方向において耕耘部と畝成形部との間に位置させながら、耕耘部及び畝成形部よりも上方側の空間を効果的に活用して、フィルムロールを配置することができる。これにより、フィルムロールの重心を耕耘部に近づけることができながら、他の部材と干渉することなく、フィルムロールを効率よく配置することができる。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、前記機体は、前記耕耘部を備えた前方側ユニットと、前記接地輪と前記畝成形部とを備えた後方側ユニットとに分離自在に構成され、
前記フィルムロールは、前記前方側ユニット側に支持される状態で備えられている点にある。
【0020】
本構成によれば、機体を前方側ユニットと後方側ユニットとに分離することができるので、マルチ作業機の全ての機能を発揮する状態とマルチ作業機の一部である耕耘部のみの機能を発揮する状態とに必要に応じて使い分けることができる。これにより、マルチ作業機を作業内容に応じて使い分けながら使用することができ、使い勝手のよい作業機となる。そして、フィルムロールは、耕耘部が備えられる前方側ユニットに支持される状態で備えられるので、フィルムロールの重心を耕耘部に適切に近づけることができ、フィルムロールの荷重が増大しても、機体の進行方向での重量バランスを適切なバランスに保つことができる。
【0021】
本発明の第5特徴構成は、前記マルチフィルム敷設部は、チューブロールから潅水用チューブを繰り出して畝の上面に敷設する状態で前記マルチフィルムにて畝を被覆するように敷設自在に構成され、
前記チューブロールは、前記機体の進行方向において前記耕耘部と重複する位置で、前記耕耘部と間隔を隔てて前記耕耘部の上方側に配置され、
前記フィルムロールは、前記チューブロールの下方側に入り込んだ状態で配置されている点にある。
【0022】
本構成によれば、マルチフィルム敷設部は、潅水用チューブを畝の上面に敷設する状態でマルチフィルムにて畝を被覆するように敷設するので、成形される畝に対して、マルチフィルムを敷設するだけでなく、潅水用チューブの敷設も行うことができる。そして、チューブロールは、機体の進行方向において耕耘部と重複する位置で、耕耘部と間隔を隔てて耕耘部の上方側に配置されているので、耕耘部の上方側の空間を活用してチューブロールを適切に配置することができる。しかも、フィルムロールは、チューブロールの下方側に入り込んだ状態で配置されているので、フィルムロールも、チューブロールの下方側の空間を活用して適切に配置することができる。これにより、チューブロール及びフィルムロールの夫々を配置する場合であっても、夫々の重心を耕耘部に近づけることができながら、夫々を納まりよく効率的に配置することができる。
【0023】
本発明の第6特徴構成は、前記耕耘部の上方側と前記畝成形部の上方側とに亘って前後方向に延びる左右一対の第1支持フレームと、それら左右一対の第1支持フレームの夫々から上方側に延設された左右一対の第2支持フレームとが備えられ、
前記フィルムロールは、左右一対の前記第2支持フレームに亘る状態で支持されている点にある。
【0024】
本構成によれば、左右一対の第1支持フレーム及び左右一対の第2支持フレームによって、フィルムロールを安定した姿勢で強固に支持することができる。これにより、フィルムロールからのマルチフィルムの繰り出しを適切に行うことができ、マルチフィルムの敷設作業を適切に行うことができる。
【0025】
本発明の第7特徴構成は、前記フィルムロールの外周部に当接して前記フィルムロールに制動力を付与するブレーキ部が備えられている点にある。
【0026】
本構成によれば、ブレーキ部は、フィルムロールの外周部に当接してフィルムロールに制動力を付与するので、フィルムロールに対する制動力の付与を適切に行うことができる。これにより、フィルムロールからマルチフィルムを繰り出す際に、弛み等が生じ難くなり、フィルムロールからのマルチフィルムの繰り出しを適切に行うことができる。
【0027】
本発明の第8特徴構成は、前記ブレーキ部は、前記フィルムロールの外周部に当接する状態で回転自在なローラーと、そのローラーの側面部に当接して前記ローラーに制動力を付与する制動力付与部材とを備え、
前記ローラーにおいて前記フィルムロールの外周部に当接する当接部位が弾性体にて構成されている点にある。
【0028】
本構成によれば、制動力付与部材にてローラーの側面部に当接してローラーに制動力を付与することで、フィルムロールに適切に制動力を付与することができる。しかも、ローラーにおいてフィルムロールの外周部に当接する当接部位が弾性体にて構成されているので、フィルムロールを傷付けることなく、フィルムロールに制動力を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】マルチ作業機をトラクタの後部に装着した状態での側面図
図2】マルチ作業機の側面図
図3】マルチ作業機の要部についての模式的な平面図
図4】マルチ作業機の作業状態を示す図
図5】前方側ユニットと後方側ユニットとに分離した状態での側面図
図6】前方側ユニットと後方側ユニットとの連結箇所を示す図
図7】マルチ作業機の側面図において要部の配置位置を説明するための図
図8】ブレーキ部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係るマルチ作業機の実施形態を図面に基づいて説明する。
このマルチ作業機1は、図1に示すように、トラクタ2の後部に装着自在に構成されている。トラクタ2の後部には、左右一対のロアリンク3とアッパリンク4とからなる3点リンク機構が備えられ、その3点リンク機構にマルチ作業機1が装着自在に構成されている。トラクタ2の後部には、昇降シリンダ等の油圧装置を有する昇降装置(図示省略)が備えられており、その昇降装置により3点リンク機構を昇降させることで、マルチ作業機1を昇降させるように構成されている。
【0031】
マルチ作業機1の機体5には、図1及び図2に示すように、耕耘を行う耕耘部6と、耕耘された土を用いて断面が台形状の畝10を成形する畝成形部7と、フィルムロール81からマルチフィルム82を繰り出して畝10を被覆するように敷設するマルチフィルム敷設部8と、機体5を支持自在な接地輪9とが備えられている。
【0032】
耕耘部6には、図2に示すように、トラクタ2(図1参照)の後部に備えられるPTO軸(図示省略)からの回転駆動力を伝達させて回転駆動される耕耘軸部61と、その耕耘軸部61の回転駆動により耕耘を行う複数の耕耘爪部62とが備えられている。耕耘軸部61及び耕耘爪部62は、マルチ作業機1の機体5における横幅方向(トラクタ2の横幅方向)の全長に亘って備えられている。そして、PTO軸の回転駆動力を耕耘軸部61に伝達する動力伝達部等(図示省略)は、伝動ケース63に収容されている。図2では図示を省略するが、耕耘部6には、耕耘爪部62の上方側及び後方側を覆うカバー74(図6参照)が備えられている。
【0033】
畝成形部7は、マルチ作業機1の機体5における横幅方向の中央部に備えられている。畝成形部7には、図3及び図7に示すように、畝の上面を成形する上面成形板71と畝の側面を成形する左右一対の側面成形板72とが備えられている。ちなみに、図3は、マルチ作業機1において、畝成形部7、接地輪9、フィルムロール81、チューブロール90等の配置位置を示す模式的な平面図である。
【0034】
上面成形板71は、機体5の進行方向に延びる板状に形成され、機体5の進行方向の後方側(図3及び図7中右側)ほど下方側に位置する傾斜姿勢で設けられている。側面成形板72は、上下方向に延びる板状に形成され、下方側ほど機体5の横幅方向の外側(図3中上方側及び下方側)に位置する傾斜姿勢で設けられている。
【0035】
畝成形部7の前方側には、耕耘部6にて耕耘された土を畝成形部7側に寄せる土寄板73が備えられている。土寄板73は、左右一対の側面成形板72の夫々における前端部から機体5の進行方向の前方側に延びる板状に形成され、平面視で機体5の進行方向の前方側ほど外側に広がる傾斜姿勢で設けられている。
【0036】
図2に戻り、マルチフィルム敷設部8には、マルチフィルム82が巻回されたフィルムロール81と、フィルムロール81から繰り出したマルチフィルム82を案内する第1中間ガイドローラ83及び第2中間ガイドローラ84と、マルチフィルム82の横幅方向の中央部を畝10の上面10aに敷設させる敷設ローラ85と、マルチフィルム82の横幅方向の両端部を踏圧して畝10の両横側部に敷設させる左右一対の踏圧輪86と、その踏圧輪86にて敷設されたマルチフィルム82の横幅方向の両端部に覆土させる左右一対の覆土輪87とが備えられている。
【0037】
第1中間ガイドローラ83及び第2中間ガイドローラ84は、マルチフィルム82の横幅方向の全長に亘る状態で備えられ、フィルムロール81から繰り出したマルチフィルム82を畝成形部7にて成形される畝10の上面10aに向けて案内するように構成されている。また、フィルムロール81と第1中間ガイドローラ83との間には、フィルムロール81から繰り出したマルチフィルム82を上方側に持ち上げ支持する持ち上げ支持部88が備えられている。マルチフィルム82は、持ち上げ支持部88、第1中間ガイドローラ83、及び、第2中間ガイドローラ84により、適切なテンションが掛けられた状態で案内されるように構成されている。
【0038】
敷設ローラ85は、図4に示すように、畝10の上面10aの横幅の全長に亘る状態で備えられ、マルチフィルム82を下方側に押圧して畝10の上面10aに敷設させるように構成されている。図4は、マルチ作業機1にてマルチフィルム82及び潅水用チューブ91を敷設する作業を行った場合に、斜め後方側から見た画像を示したものである。
【0039】
踏圧輪86は、マルチフィルム82を踏圧することで、フィルムロール81からマルチフィルム82を繰り出し自在としており、その踏圧によりマルチフィルム82を畝10の両横側部に敷設させている。覆土輪87は、機体5の進行方向で踏圧輪86と重複する状態で配置されている。機体5の進行によって、覆土輪87が畝10の両横側部に敷設されるマルチフィルム82の横幅方向の両端部に覆土させることで、畝10がマルチフィルム82にて覆われた状態が維持されている。
【0040】
図2及び図4に示すように、マルチフィルム敷設部8は、畝10を覆うようにマルチフィルム82を敷設するだけでなく、チューブロール90から潅水用チューブ91を繰り出して畝10の上面10aに敷設する状態でマルチフィルム82にて畝10を被覆するように敷設自在に構成されている。マルチフィルム敷設部8には、マルチフィルム82が巻回されたフィルムロール81に加えて、潅水用チューブ91が巻回されたチューブロール90が備えられている。マルチフィルム敷設部8は、機体5の進行により、チューブロール90から潅水用チューブ91を繰り出してマルチフィルム82の下方側に案内し、敷設ローラ85によりマルチフィルム82と共に潅水用チューブ91を畝10の上面10aに敷設することで、潅水用チューブ91が上面10aに敷設された畝10を覆うようにマルチフィルム82を敷設している。
【0041】
マルチ作業機1の機体5は、図5及び図6に示すように、耕耘部6を備えた前方側ユニット11と、接地輪9と畝成形部7とを備えた後方側ユニット12とに分離自在に構成されている。前方側ユニット11の後端部には、その横幅方向の両端部に後方側ユニット12との連結箇所となる前方側連結部13が備えられ、後方側ユニット12の前端部には、その横幅方向の両端部に前方側ユニット11との連結箇所となる後方側連結部14が備えられている。そして、前方側連結部13と後方側連結部14とを連結することで、前方側ユニット11と後方側ユニット12とが一体的に連結され、前方側連結部13と後方側連結部14との連結を解除することで、前方側ユニット11と後方側ユニット12とが分離自在となっている。
【0042】
前方側連結部13は、上下方向に延びる板状体にて構成され、上方側を開放した凹状の溝部15が形成されている。後方側連結部14は、機体5の横幅方向に間隔を隔てた2枚の板状体にて構成され、2枚の板状体に亘る状態で棒状体16が備えられている。後方側連結部14における2枚の板状体の間に前方側連結部13を嵌め込み、棒状体16を溝部15に係合させ、図外の固定具等で前方側連結部13と後方側連結部14とを固定することで、前方側ユニット11と後方側ユニット12とが連結自在に構成されている。
【0043】
前方側ユニット11には、図2及び図5に示すように、機体5の横幅方向に延びる第1横機枠101と、耕耘部6の上方側と畝成形部7の上方側とに亘って機体5の進行方向(前後方向)に延びる左右一対の第1支持フレーム111と、それら左右一対の第1支持フレーム111の夫々から上方側に延設された左右一対の第2支持フレーム112と、上下方向に延びる左右一対の第3支持フレーム113が備えられている。
【0044】
第1横機枠101は、機体5の横幅方向において耕耘部6の全長に亘る状態で備えられ、伝動ケース63、耕耘爪部62を覆うカバー74(図6参照)等の耕耘部6を支持するように構成されている。第1支持フレーム111は、機体5の横幅方向の両端部に相当する位置に配置され、耕耘爪部62を覆うカバー74(図6参照)等から後方側に延設する状態で備えられている。第2支持フレーム112は、第1支持フレーム111の後方側部位から上方側に延びるように配置されており、フィルムロール81が左右一対の第2支持フレーム112に亘る状態で支持されている。第3支持フレーム113は、機体5の横幅方向の中央部において、耕耘爪部62を覆うカバー74(図6)等から上方側に延びるように配置されており、チューブロール90が左右一対の第3支持フレーム113に亘る状態で支持されている。このように、耕耘部6に加えて、チューブロール90及びフィルムロール81が前方側ユニット11側に支持される状態で備えられている。
【0045】
後方側ユニット12には、図2及び図5に示すように、機体5の横幅方向に延びる第2横機枠102と、機体5の横幅方向に延びる第3横機枠103とが備えられ、第3横機枠103は、第2横機枠102よりも後方側で且つ上方側に配置されている。そして、第2横機枠102と第3横機枠103とは、機体5の進行方向(前後方向)に延びる連結部材120にて連結されている。この連結部材120は、機体5の横幅方向の両端部に相当する位置に配置され、第2横機枠102の両端部と第3横機枠103の両端部とを連結するように構成されている。
【0046】
第2横機枠102の両端側部位の夫々には、図2及び図5に示すように、下方側に延びる第4支持フレーム114が連結され、その第4支持フレーム114にて、畝成形部7における側面成形板72、及び、接地輪9が支持されている。図示は省略するが、畝成形部7における上面成形板71も、第1中間ガイドローラ83も、第2横機枠102に連結された支持フレームにて支持されている。第2横機枠102の両端側部位の夫々には、後方側に延びる第5支持フレーム115が連結され、その第5支持フレーム115にて踏圧輪86及び覆土輪87が支持されている。ちなみに、第5支持フレーム115は、複数の支持フレームを連結して構成されており、踏圧輪86及び覆土輪87を支持する支持フレームが他の支持フレームに揺動自在に枢支連結されている。よって、例えば、踏圧輪86及び覆土輪87を使用しないとき等には、踏圧輪86及び覆土輪87を支持する支持フレームを上方側に揺動させることで、踏圧輪86及び覆土輪87を圃場よりも上方側に退避した位置に移動可能となっている、
【0047】
第3横機枠103の中央部には、図2及び図5に示すように、後方側に延びたのち、下方側に延びる第6支持フレーム116が連結され、その第6支持フレーム116にて、第2中間ガイドローラ84及び敷設ローラ85が支持されている。
【0048】
以下、図3及び図7に基づいて、マルチ作業機1における耕耘部6、チューブロール90、フィルムロール81、畝成形部7、及び、接地輪9の配置位置について説明する。
【0049】
図7に示すように、機体5の進行方向において、前方側(図7中左側)から、耕耘部6、畝成形部7の順に配置されている。そして、接地輪9は、図3に示すように、畝成形部7の両横側部に配置されており、機体5の進行方向では、図7に示すように、接地輪9の配置位置が耕耘部6よりも後方側となっている。そして、フィルムロール81の配置位置については、図3及び図7に示すように、フィルムロール81の重心G1が、機体5の進行方向において接地輪9と重複しない状態で接地輪9よりも前方側で、且つ、機体5の進行方向において畝成形部7よりも前方側になるように配置されている。
【0050】
また、フィルムロール81の配置位置については、図7に示すように、フィルムロール81の重心G1が機体5の進行方向において耕耘部6と畝成形部7との間に位置して、フィルムロール81が耕耘部6及び畝成形部7よりも上方側に配置されている。例えば、耕耘部6の耕耘軸部61の中心と接地輪9の中心との間を、前半部P1と中間部P2と後半部P3との3つの領域に均等に区分けした場合には、フィルムロール81の重心G1が後半部P3よりも前方側となる前半部P1又は中間部P2にフィルムロール81の重心G1が位置するように、フィルムロール81が配置されている。
【0051】
フィルムロール81の配置位置を上述のような位置とすることで、マルチ作業機1において接地輪9よりも後方側部位にかかる荷重が大きくなり難く、接地輪9にてマルチ作業機1の機体5を適切に支持することができる。また、PTO軸からの回転駆動力を動力伝達部等が重量物となっていることから、マルチ作業機1の重心が耕耘部6付近となっている。そこで、フィルムロール81の配置位置を上述のような位置とすることで、機体5の進行方向において、フィルムロール81の重心を耕耘部6に近づけることができ、フィルムロール81の巻き数の増大によりフィルムロール81の荷重が増大しても、機体5の進行方向での重量バランスを適切なバランスに保つことができる。
【0052】
チューブロール90は、図3に示すように、機体5の横幅方向において中央部に配置されている。そして、チューブロール90は、図7に示すように、機体5の進行方向において耕耘部6と重複する位置で、耕耘部6と間隔を隔てて耕耘部6の上方側に配置されている。これにより、チューブロール90と耕耘部6との間に間隙が形成されていることから、フィルムロール81は、チューブロール90の下方側に入り込んだ状態で配置されている。
【0053】
このように、チューブロール90及びフィルムロール81の夫々を配置する場合であっても、チューブロール90及びフィルムロール81の夫々の重心を耕耘部6に近づけることができながら、チューブロール90及びフィルムロール81の夫々を納まりよく効率的に配置することができる。よって、チューブロール90を備えることでその荷重が増大し、更に、フィルムロール81の巻き数の増大によりフィルムロール81自体の荷重が増大しても、機体5の進行方向での重量バランスを適切なバランスに保つことができる。
【0054】
マルチ作業機1には、図2及び図8に示すように、フィルムロール81の外周部に当接してフィルムロール81に制動力を付与するブレーキ部20が備えられている。ちなみに、図8は、マルチ作業機1の右側部から見たときの要部を示す斜視図である。ブレーキ部20は、図3に示すように、機体5の横幅方向において、チューブロール90よりも右側に配置されており、中央部に配置されるチューブロール90から横側部に外れた位置に備えられている。ブレーキ部20は、図2及び図8に示すように、フィルムロール81の外周部に当接する状態で回転自在なローラー21と、そのローラー21の側面部に当接してローラー21に制動力を付与する制動力付与部材22とを備えている。
【0055】
機体5には、図2及び図8に示すように、耕耘部6の上方側から斜め後方側に延びる第7支持フレーム117が備えられ、その第7支持フレーム117の先端部(後端部)にローラー21が回転自在に支持されている。そして、ローラー21は、フィルムロール81の上方側に配置され、フィルムロール81の外周部のうち、上方側部位に当接するように構成されている。
【0056】
第7支持フレーム117の基端部(前端部)は、図8に示すように、機体5における第1支持フレーム111よりも後方側部位に対して、機体5の横幅方向に沿う軸心周りで回動自在に連結されている。そして、第7支持フレーム117とその連結箇所との間にバネ部25が配置され、第7支持フレーム117を下方側に揺動させるように付勢力が付与されている。これにより、バネ部25による付勢力によって、ローラー21をフィルムロール81の外周部に押し当てる側に力が作用するように構成されている。
【0057】
第7支持フレーム117の先端部には、ハンドル部24が延設されている。そして、作業者等がハンドル部24を持って、第7支持フレーム117を前方上方側に揺動させることで、フィルムロール81の外周部に対するローラー21の当接を解除して、フィルムロール81から離れた位置にローラー21を位置させることができるようになっている。
【0058】
制動力付与部材22は、ローラー21の側面部に当接自在な円盤状に形成されており、左右一対の制動力付与部材22がローラー21を挟み込む状態で備えられている。そして、図示は省略するが、制動力付与部材22とバネ座との間に圧縮バネを備えることで、左右一対の制動力付与部材22に挟持力を付与して、左右一対の制動力付与部材22をローラー21の側面部に押し当てるように構成されている。
【0059】
図8に示すように、ローラー21においてフィルムロール81の外周部に当接する当接部位が弾性体23にて構成されている。弾性体23は、筒状に形成されたスポンジ体又はゴム体にて構成されており、ローラー21の外周部に外嵌して備えられている。
【0060】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、フィルムロール81は、フィルムロール81の重心G1が、機体5の進行方向において接地輪9と重複しない状態で接地輪9よりも前方側で、且つ、機体5の進行方向において畝成形部7よりも前方側になるように配置すればよい。つまり、接地輪9に対してフィルムロール81の重心G1をどの程度前方側とするかは適宜変更が可能であり、また、畝成形部7に対してフィルムロール81の重心G1をどの程度前方側とするかは適宜変更が可能である。例えば、例えば、フィルムロール81の重心G1が耕耘部6と重複するように、フィルムロール81を配置することもできる。
【0061】
(2)上記実施形態では、マルチフィルム敷設部8は、畝10に対して、マルチフィルム82だけでなく、潅水用チューブ91も敷設するようにしているが、チューブロール90を省略して、マルチフィルム敷設部8は、畝10に対して、マルチフィルム82のみを敷設するように構成することもできる。この場合には、例えば、フィルムロール81を、機体5の進行方向において耕耘部6と重複する位置に配置することもできる。
【0062】
(3)上記実施形態では、マルチ作業機1の機体5を、前方側ユニット11と後方側ユニット12とに分離自在としているが、例えば、前方側ユニット11と後方側ユニット12とに分離不能として、マルチ作業機1の機体5を一体物として構成することもできる。
【0063】
(4)上記実施形態では、フィルムロール81の外周部に当接してフィルムロール81に制動力を付与するブレーキ部20を備えているが、ブレーキ部の構成については、この構成に限るものではなく、フィルムロール81に制動力を付与できるものであればよい。
【0064】
(5)上記実施形態では、マルチ作業機1をトラクタ2の後部に昇降自在に装着した例を示したが、他の牽引車の後部にマルチ作業機1を装着することもでき、マルチ作業機1を牽引するのはトラクタ2に限るものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 マルチ作業機
5 機体
6 耕耘部
7 畝成形部
8 マルチフィルム敷設部
9 接地輪
10 畝
11 前方側ユニット
12 後方側ユニット
20 ブレーキ部
21 ローラー
22 制動力付与部材
23 弾性体
81 フィルムロール
82 マルチフィルム
90 チューブロール
91 潅水用チューブ
G1 フィルムロールの重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8