(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の多連方向切換弁では、モータの出力軸及びスプールの軸線が互いに一致するように同軸上に配置されているが、組立時のミスアライメント等によりモータの出力軸とスプールとの間で芯ずれが生じていることがある。このような芯ずれの状態でモータを駆動させてスプールを移動させた場合、スプールがハウジングに押し付けられながら移動する。そうすると、芯ずれが生じていない場合に比べて芯ずれが生じている場合の方がスプールの摺動抵抗が大きくなり、スプールの位置制御性が低下することになる。
【0005】
そこで本発明は、芯ずれに伴うスプールの位置制御性の低下を抑えることができるスプール弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスプール弁は、スプール孔が形成されているハウジングと、前記ハウジングのスプール孔に軸線方向に移動可能に挿通されているスプールと、前記スプールを軸線方向に移動させる電動アクチュエータと、を備え、前記電動アクチュエータは、出力軸を回転する電動モータと、直線運動可能な直動部材を有し、前記出力軸の回転運動を直動部材の直線運動に変換する直動変換機構と、前記直動部材の直線運動に応じて前記スプールを移動させるべく、前記直動部材と前記スプールとを連結する連結部材とを有し、前記連結部材は、前記直動部材の軸線に対して前記スプールの軸線が傾倒及び偏芯することのうち少なくとも一方を許容するようになっているものである。
【0007】
本発明に従えば、出力軸及びスプールの軸線が互いに或る方向に傾倒したり偏芯したりして芯ずれしている場合であっても、その方向の芯ずれを連結部材によって吸収することができる。即ち、曲げモーメントを作用させることなくスプールをスプール孔に挿入させておくことができる。これにより、始動時及び動作中においてスプールがハウジングの内周面に押し付けられることを防ぐことができる。即ち、芯ずれに伴うスプールに作用する摩擦力の増大を抑えることができ、芯ずれに伴うスプールの位置制御性の低下を抑えることができる。
【0008】
上記発明において、前記連結部材は、前記直動部材に対する前記スプールの傾倒を軸線方向に直交する全方向において許容するようになっていてもよい。
【0009】
上記構成に従えば、スプールの軸線が出力軸の軸線に対して何れの方向に傾倒していても、傾倒による芯ずれを吸収させることができる。これにより、組立時における電動アクチュエータに対するスプールの位置精度を低く抑えることができ、組立を容易にすることができる。
【0010】
上記発明において、前記連結部材は、前記直動部材に設けられるモータ側連結部と、前記スプールに設けられるスプール側連結部と、前記モータ側連結部と前記スプール側連結部との間に介在して前記モータ側連結部と前記スプール側連結部とを連結するボールとを有し、前記モータ側連結部と前記スプール側連結部とが前記ボールの中心点回りに相対的に回転するボールジョイントによって構成されていてもよい。
【0011】
上記構成に従えば、2つの連結部とボールとから成る簡単な構造のボールジョイントが連結部材に採用される。それ故、スプール弁の構造が複雑化することを抑えることができ、またスプール弁の部品点数を抑えることができる。これにより、スプール弁の製造コストを抑えることができる。
【0012】
上記発明において、前記連結部材は、前記直動部材に対する前記スプールの偏芯を軸線方向に直交する全方向において許容するようになっていてもよい。
【0013】
上記構成に従えば、スプールの軸線が出力軸の軸線に対して何れの方向に偏芯していても、偏芯による芯ずれを吸収させることができる。これにより、組立時における電動アクチュエータに対するスプールの位置精度を低く抑えることができ、組立を容易にすることができる。
【0014】
上記発明において、前記連結部材は、前記直動部材に設けられるモータ側連結部と、前記スプールに設けられるスプール側連結部と、を有し、前記モータ側連結部及び前記スプール側連結部は、互いに直交し且つ軸線方向に直交する2方向に相対変位可能に構成されていてもよい。
【0015】
上記構成に従えば、簡単な構造の連結部材に採用される。それ故、スプール弁の構造が複雑化することを抑えることができ、またスプール弁の部品点数を抑えることができる。これにより、スプール弁の製造コストを抑えることができる。
【0016】
上記発明において、前記スプールが前記電動アクチュエータから受ける軸線方向の荷重に抗して付勢力を与える付勢機構を更に備え、前記スプールは、前記電動アクチュエータからの荷重によって中立位置から軸線方向一方及び他方に向かって移動し、前記電動アクチュエータは、前記スプールの軸線方向一端部に連結され、前記付勢機構は、前記電動アクチュエータからの荷重に対して前記スプールが前記中立位置に戻るように前記付勢力を前記スプールに与え、且つ前記スプールの軸線方向他端部側に配置されていてもよい。
【0017】
上記構成に従えば、ばね機構によってスプールを機械的に中立位置に戻すことができる。それ故、電動アクチュエータのモータの駆動を止めることによって、実際の中立位置に戻すことができ、中立位置の再現性を高めることができる。
【0018】
本発明のスプール弁は、スプール孔が形成されているハウジングと、前記ハウジングのスプール孔に軸線方向に移動可能に挿通されているスプールと、前記スプールに押圧力を与えて前記スプールを軸線方向一方に移動させる電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの押圧力に抗して軸線方向他方に前記スプールを付勢する付勢機構と、を備え、前記電動アクチュエータは、出力軸を回転する電動モータと、直線運動可能な直動部材を有し、前記出力軸の回転運動を直動部材の直線運動に変換する直動変換機構と、部分球面状に形成されている押付部を有し、前記付勢機構によって前記スプールに押し付けられている状態で前記直動部材に設けられている当接部材とを有しているものである。
【0019】
本発明に従えば、当接部材が付勢機構によってスプールに押し付けられているので、電動アクチュエータの押圧力を当接部材を介してスプールに与えてスプールを動かすことができる。また、当接部材の押付部が部分球面状に形成されているので、押付部とスプールとを点で接触させることができる。これにより、出力軸及びスプールの軸線が互いに芯ずれしている場合であっても、その芯ずれを吸収することができる。即ち、曲げモーメントを作用させることなくスプールをスプール孔に挿入させておくことができる。これにより、始動時及び動作中においてスプールがハウジングの内周面に押し付けられることを防ぐことができる。即ち、芯ずれに伴うスプールに作用する摩擦力の増大を抑えることができ、芯ずれに伴うスプールの位置制御性の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、芯ずれに伴うスプールの位置制御性の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る第1及び第2実施形態のスプール弁1,1Aについて図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するスプール弁1,1Aは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0023】
[第1実施形態]
建設機械等を含む産業機械は、アクチュエータに作動油を供給すべく油圧供給装置を備えている。アクチュエータは、供給される流量に応じた速度で駆動するようになっており、油圧供給装置は、アクチュエータに供給される作動油の流量を制御すべく、
図1に示すようなスプール弁1を有している。スプール弁1は、直動電動式のスプール弁であり、ハウジング11と、スプール12と、電動アクチュエータ13と、ばね機構14とを備えている。ハウジング11は、例えばバルブブロックであり、スプール孔11aと複数の油通路(本実施形態では、3つの油通路)11b〜11dとが形成されている。スプール孔11aは、ハウジングを貫通するように所定方向に延在しており、3つの油通路11b〜11dは、異なる位置にてスプール孔11aに夫々接続されている。また、3つの油通路11b〜11dは、図示しない油圧ポンプやアクチュエータ等に繋がっており、3つの油通路11b〜11dに作動油が流れるようになっている。このように構成されているハウジング11のスプール孔11aには、スプール12が挿通されている。
【0024】
スプール12は、その軸線方向に延在する大略円柱状の部材であり、その外径は、スプール孔11aの孔径と略一致している。また、スプール12の外周面には、複数の周溝(本実施形態では、2つの周溝12a,12b)が形成されている。各周溝12a,12bは、スプール12の外周面において周方向全周にわたって延びている。また、各周溝12a,12bは、スプール12がスプール孔11aに挿通されている状態で、3つの油通路11b〜11dに応じて配置されている。例えば、
図1のようにスプール12が中立位置にある場合において、2つの周溝12a,12bは、左右両側に位置する第1及び第3油通路11b,11dに夫々接続されている。他方、スプール12が軸線方向一方(
図1の右方向)に移動すると左側に位置する第1周溝12aが第1油通路11bと第2油通路11cとを接続し、スプール12が軸線方向他方(
図1の左方向)に移動すると右側に位置する第2周溝12bが第3油通路11dと第2油通路11cとを接続するようになっている。
【0025】
このようにスプール12は、位置を変えることによって3つの油通路11b〜11dの接続状態を切換え、また接続される油通路11b〜11dの間の開度を調整することができる。即ち、スプール12は、その位置に応じた流量及び方向に作動油の流すことができるようになっている。このような機能を有するスプール12は、その軸線方向一端部及び他端部がハウジング11から夫々突出しており、スプール12の軸線方向一端部には電動アクチュエータ13が設けられ、スプール12の軸線方向他端部にはばね機構14が設けられている。
【0026】
電動アクチュエータ13は、いわゆる直動式の電動アクチュエータであり、電力を供給することによってスプール12を軸線方向に往復運動させるようになっている。即ち、電動アクチュエータ13は、
図2に示すようにモータ側ケーシング21と、モータ22と、ボールねじ機構23と、中間部材24と、連結部材25とを有している。モータ側ケーシング21は、大略円筒状になっており、その軸線方向一方側の開口部をスプール12の軸線方向一端部に被せられている。更に、モータ側ケーシング21は、その開口部をハウジング11の軸線方向他方側の側面に当接させ、その状態でハウジング11に締結されている。このように配置されるモータ側ケーシング21は、軸線方向に延在しており、その軸線方向他方側の開口部にモータ22が取付けられている。
【0027】
モータ22は、いわゆるサーボモータであり、ステータ部22aと、ロータ部(出力軸を含む)22bとを有している。ステータ部22aは、図示しない制御装置が接続されており、その制御装置から印加される電圧に応じてロータ部22bが回転するようになっている。また、ロータ部22bは、ステータ部22aからモータ側ケーシング21内に向かって軸線方向一方に突出している。また、モータ側ケーシング21の内周面には、軸受26が設けられている。ロータ部22bは、軸受26によって回転可能に支持されて、ロータ部22bの先端(即ち、右端)にはボールねじ機構23が設けられている。
【0028】
ボールねじ機構23は、ロータ部22bの回転運動を直線運動に変換する機構であり、ねじ軸23aとナット23bとを有している。ねじ軸23aは、軸線方向に延在する棒状の部材であり、その外周面に雄ねじが形成されている。ねじ軸23aには、ねじ軸23aは、ロータ部22bと一体的に回転し、またナット23bが螺合されている。直動部材の一例であるナット23bは、ねじ軸23aを回転させることによってねじ軸23aに沿って軸線方向一方及び他方に移動するようになっている。また、ナット23bは、中間部材24に嵌合されている。
【0029】
中間部材24は、大略有底筒状に形成されており、その軸線方向他方側に開口部24aを有している。中間部材24の開口部24aには、ナット23bが嵌合されて接着されている。このように構成される中間部材24は、中間部材24の外径は、モータ側ケーシング21の内径より若干小さくなっており、ナット23bと共に軸線方向一方及び他方に移動できるようになっている。また、中間部材24は、その先端部分にねじ部24bを有しており、このねじ部24bに連結部材25が螺合されている。
【0030】
連結部材25は、中間部材24とスプール12とを連結する、即ち中間部材24を介してナット23bとスプール12とを連結する部材である。また、連結部材25は、ナット23bに対するスプール12の芯ずれを許容すべく、ナット23bに対してスプール12が軸線方向に直交する全方向(後述する第1方向及び第2方向を含む)に傾倒かつスライドできるように構成されている。更に詳細に説明すると、連結部材25は、いわゆるボールジョイントであり、モータ側連結部31と、スプール側連結部32と、ボール33とを有している(
図3も参照)。
【0031】
モータ側連結部31は、円柱部分31aと突出部分31bとを有しており、円柱部分31aは、大略円柱状に形成されており、その軸線方向一端側には、軸線に沿ってねじ孔が形成されており、このねじ孔に中間部材24のねじ部24bが螺合されている。また、円柱部分31aの軸線方向他端には突出部分31bが一体的に形成されている。突出部分31bは、大略平板状に形成されており、円柱部分31aの軸線方向他端から軸線方向一方に向かって突出している。このような形状を有するモータ側連結部31は、突出部分31bをスプール側連結部32に挿通させている。
【0032】
スプール側連結部32は、大略円柱状に形成されており、その軸線方向一端には、軸線方向一方側に延在し且つ軸線方向に直交する直交方向に貫通する挿入溝32aが形成されている。即ち、スプール側連結部32は、直交方向に垂直な断面で切断すると大略U字状に形成されている。このような形状を有するスプール側連結部32には、挿入溝32aにモータ側連結部31の突出部分31bが挿入されている。また、スプール側連結部32は、その軸線方向他方側にねじ部32bを有している。スプール12は、その軸線方向一端にねじ孔12cが形成されており、このねじ孔12cにスプール側連結部32のねじ部32bを螺合させることによってスプール側連結部32とスプール12とが連結されている。
【0033】
また、連結部材25では、モータ側連結部31の突出部分31bの中央付近に嵌合孔31cが形成されている。嵌合孔31cは、突出部分31bをその厚み方向に貫通しており、嵌合孔31cに大略球状のボール33が嵌まり込んでいる。また、スプール側連結部32の挿入溝32aもまた、嵌合孔31cに対応する箇所をボール33の形状に合わせて挿入溝32aの幅方向外側に湾曲させて形成されており、その部分にボール33を嵌められるようになっている。即ち、スプール側連結部32の挿入溝32aには、嵌合孔31cにボール33を嵌め込んだ状態で突出部分31bを挿入することができ、ボール33によってモータ側連結部31とスプール側連結部32とが係止されている。これにより、ナット23bとスプール12とが連結部材25によって連結され、ナット23bが軸線方向に移動する際にナット23bに連動させてスプール12を軸線方向一方及び他方に移動させることができる。
【0034】
また、モータ側連結部31とスプール側連結部32とをボール33によって係止することによって、連結部材25が以下のような機能を有する。即ち、モータ側連結部31とスプール側連結部32とが互いにボール33の中心点O回りに傾倒することができる。即ち、モータ側連結部31に対してスプール側連結部32が軸線L1に直交する全方向に傾倒可能に構成される。例えば、
図4(a)に示すように、スプール側連結部32は、二点鎖線で示す状態からモータ側連結部31に対して中心点Oを中心にして突出部分31bの厚み方向(即ち、第1方向)一方に傾倒することができる。また、
図4(b)に示すように、スプール側連結部32は、二点鎖線で示す状態からモータ側連結部31に対して中心点Oを中心にして軸線方向及び厚み方向に直交する方向(即ち、第2方向)一方に傾倒することができる。
【0035】
このような機能を有する連結部材25は、
図5(a)に示すようにスプール12の軸線L1がロータ部22bの軸線L2に対して傾倒するような芯ずれが生じている場合、傾倒の状態に合わせて何れの方向にもモータ側連結部31に対してスプール側連結部32を傾倒させることができる。これにより、ロータ部22bの軸線L2に対するスプール12の軸線L1の傾倒を許容することができる。
【0036】
また、連結部材25では、ボール33がモータ側連結部31及びスプール側連結部32に相対移動可能に嵌まり込んでいる。即ち、ボール33は、モータ側連結部31において嵌合孔31cが貫通する方向に相対移動し、またスプール側連結部32において挿入溝32aが貫通する方向に相対移動するようになっている。これにより、モータ側連結部31がスプール側連結部32に対して互いに直交し且つ軸線方向に直交する2つの方向(即ち、
図2において軸線方向を左右方向としたときの上下方向(第1方向)及び前後方向(第2方向))にスライドできるようになっている(
図6(a)及び(b)参照)。なお、
図6(a)では、スプール側連結部32を二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に動かれ、また
図6(b)でもまた、スプール側連結部32を二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に動かれている。これにより、
図7に示すようにスプール12の軸線L1がロータ部22bの軸線L2に対して偏芯しているような芯ずれが生じている場合、偏芯の状態に合わせて軸線方向に直交する何れの方向にもモータ側連結部31に対してスプール側連結部32をスライドさせることができる。これにより、ロータ部22bの軸線L2に対するスプール12の軸線L1の偏芯を許容することができる。
【0037】
このように連結部材25は、ロータ部22bの軸線L2に対するスプール12の軸線L1の芯ずれを許容することができる。これにより、スプール12に曲げモーメントを作用させることなく真直ぐな状態でスプール12をスプール孔11aに挿入させておくことができる。即ち、スプール12がハウジング11の内周面に押し付けられることを防ぐことができ、従来技術のスプール弁に比べて始動抵抗、即ち静摩擦力を抑えることができる。それ故、スプール弁1では、
図8(a)及び(b)のグラフからもわかるように、スプール12を始動させる際の始動電流を抑えることができる。なお、
図8(a)は、スプール弁1における位置指令(二点鎖線)、実績位置(実線)、及び電流(一点鎖線)の経時変化を示し、
図8(b)は、従来技術のスプール弁の位置指令(二点鎖線)、実績位置(実線)、及び電流(一点鎖線)の経時変化を示している。
【0038】
また、連結部材25では、スプール12の軸線L1がロータ部22bの軸線L2に対して傾倒している際には、
図5(b)のようにスプール12の移動に合わせてモータ側連結部31に対するスプール側連結部32の傾倒角が微調整される。これにより、スプール12を移動させる際にスプール12がハウジング11の内周面に押し付けられることを防ぐことができ、従来技術のスプール弁に比べて動摩擦力の変動を抑えることができる。それ故、スプール弁1では、
図8(a)及び(b)のグラフからもわかるように位置指令に対してスプール12の位置をより高い精度で制御することができる。また、スプール12の軸線方向他端部には、
図1に示すようなばね機構14が設けられている。
【0039】
ばね機構14は、ばね側ケーシング41と、駆動体42と、第1ばね受け部材43と、第2ばね受け部材44と、コイルばね45と、ストッパ部材46とを有している。ばね側ケーシング41は、大略有底筒状の部材であり、開口部をスプール12の軸線方向他端部に被せるようにしてハウジング11の軸線方向一方側の側面に締結されている。また、ばね側ケーシング41には、駆動体42と、第1ばね受け部材43と、第2ばね受け部材44と、コイルばね45と、ストッパ部材46とが収容されている。
【0040】
駆動体42は、大略棒状の部材であり、その先端側にねじ部42aを有している。即ち、駆動体42は、ねじ部42aをスプール12の軸線方向他端部に螺合されている。駆動体42は、スプール12と略同軸上に配置されており、スプール12から突出するように軸線方向一方に延在している。また、駆動体42は、その基端側に頭部42bを有しており、頭部42bとねじ部42aとの間の中間部42cに第1ばね受け部材43と、第2ばね受け部材44と、コイルばね45と、ストッパ部材46とが外装されている。
【0041】
第1ばね受け部材43は、大略ハット状に形成されており、本体部43aと、フランジ部43bとを有している。本体部43aは、大略有底筒状に形成されており、その軸線周りに駆動体42が挿通すべく挿通孔43cが形成されている。また、本体部43aの開口端部には、周方向全周にわたってフランジ部43bが形成されている。このような形状を有する第1ばね受け部材43は、駆動体42の中間部42cに挿通された状態でスプール12の軸線方向他端部に被せられている。また、第1ばね受け部材43は、スプール12が中立位置に位置する際、本体部43aの底部がスプール12の軸線方向他端に当接する共に、フランジ部43bがハウジング11の軸線方向一方側の側面と当接している。このように第1ばね受け部材43は、ハウジング11の側面に支持された状態で駆動体42の軸線方向一端側に外装され、また駆動体42には、第1ばね受け部材43から軸線方向一方に離れた位置に第2ばね受け部材44が外装されている。
【0042】
第2ばね受け部材44は、大略円板状に形成されており、その軸線周りに駆動体42が挿通すべく挿通孔44cが形成されている。このような形状を有する第2ばね受け部材44は、駆動体42の中間部42cに挿通され、前述の通り第1ばね受け部材44から離して配置されている。このように配置される第2ばね受け部材44の挿通孔44cは、駆動体42の頭部42bより小径に形成されており、第2ばね受け部材44が頭部42b側から外れないようになっている。このように配置される第2ばね受け部材44と第1ばね受け部材43との間には、駆動体42に外装された状態でコイルばね45が介在している。コイルばね45は、いわゆる圧縮コイルばねであり、圧縮された状態で2つのばね受け部材43,44の間に介在されている。これにより、スプール12が中立位置に位置する際、第1ばね受け部材43がスプール12の軸線方向他端及びハウジング11の軸線方向一方側の側面に押し付けられ、また第2ばね受け部材44が駆動体42の頭部42bに押し付けられる。また、ばね側ケーシング41の内周面は、軸線方向一方側の部分が残余の部分に比べて小径に形成されており、そこに段部41aが形成されている。第2ばね受け部材44の外周縁部分は、スプール12が中立位置に位置する際に段部41aに当接して支持されている。
【0043】
このように構成されるばね機構14では、電動アクチュエータ13によってスプール12を中立位置から軸線方向一方に移動させると、それと共に第1ばね受け部材43が軸線方向一方に移動する。他方、第2ばね受け部材44は、その外周縁部分が段部41aに支持されており、移動することができずにその位置に維持される。これにより、2つのばね受け部材43,44の間が狭まってコイルばね45が圧縮され、コイルばね45は、第1ばね受け部材44及び駆動体42を介してスプール12に対して中立位置に戻す方向の付勢力を与える。即ち、コイルばね45は、電動アクチュエータ13からの押付力に抗する軸線方向他方への付勢力をスプール12に与える。
【0044】
また、電動アクチュエータ13によってスプール12を中立位置から軸線方向他方に移動させると、頭部42bによって第2ばね受け部材44が軸線方向他方に引き寄せられる。他方、第1ばね受け部材43は、フランジ部43bがハウジング11に支持されており、移動することができずにその位置に維持されている。これにより、2つのばね受け部材43,44の間が狭まってコイルばね45が圧縮され、コイルばね45は、第2ばね受け部材44及び駆動体42を介してスプール12に対して中立位置に戻す方向の付勢力を与える。即ち、コイルばね45は、電動アクチュエータ13からの押付力に抗する軸線方向一方への付勢力をスプール12に与える。
【0045】
他方、スプール12が中立位置に位置する際には、第1ばね受け部材43がハウジング11の側面に支持され、また第2ばね受け部材44がばね側ケーシング41の段部41aに支持されている。それ故、コイルばね45の付勢力がスプール12に作用しない。従って、電動アクチュエータ13からスプール12に与える押圧力をゼロにすることで、スプール12を中立位置に戻すことができる。また、ばね機構14は、前述の通りストッパ部材46を有している。
【0046】
ストッパ部材46は、コイルばね45の圧縮量が所定距離より大きくならないようにコイルばね45の圧縮を規制するようになっている。即ち、ストッパ部材46は、大略円筒状に形成されており、コイルばね45の内側に配置され且つ駆動体42に外装されている。また、ストッパ部材46は、2つのばね受け部材43,44の間に配置されている。このように配置されているストッパ部材46は、本体部43aの底部と第2ばね受け部材44との軸線方向の距離より前述する所定距離分だけ短く形成されている。これにより、スプール12が軸線方向一方及び他方に所定量以上移動することを規制することができる。
【0047】
このように構成されているスプール弁1では、制御装置からの印加電圧に応じて電動アクチュエータのモータ22が駆動し、これに応じてロータ部22b及びねじ軸23aが回転する。また、ねじ軸23aが回転することで、その回転方向及び回転数に応じた距離だけナット23bが軸線方向一方(又は他方)に移動し、それに伴ってナット23bが中間部材24及び連結部材25を介してスプール12を軸線方向一方に押す(又は他方に引っ張る)。これにより、スプール12の位置が変わり、それに応じて3つの油通路11b〜11dの接続状態及び開度が変わる。
【0048】
また、スプール弁1では、ナット23bが連結部材25を介してスプール12を押している(又は引っ張っている)ので、スプール12の軸線L1がロータ部22bの軸線L2に対して芯ずれしている場合であっても、ロータ部22bの軸線L2に対するスプール12の軸線L1の芯ずれを吸収することができる。それ故、芯ずれに伴うスプール12に作用する摩擦力の増大を抑えることができる。これにより、芯ずれに伴うスプール12の位置制御性の低下を抑えることができ、位置指令に対してスプール12の位置をより高い精度で制御することができる。即ち、スプール弁1の開度制御をより高い精度で行うことができる。また、スプール弁1では、従来技術のスプール弁に比べて静摩擦力を抑えることができるので、スプール12を始動させる際の始動電流を抑えることができる。
【0049】
また、スプール弁1では、連結部材25によってスプール12がロータ部22bに対してあらゆる方向に傾倒することができるので、スプール12の軸線L1がロータ部22bの軸線L2に対して何れの方向にずれていても芯ずれを吸収させることができる。これにより、組立時における電動アクチュエータ13に対するスプール12の位置精度を低く抑えることができる。また、連結部材25のモータ側連結部31にボール33を嵌め込んでボール33をスプール側連結部32に挿入するだけで電動アクチュエータ13とスプール12とを連結できるので、スプール弁1の組立が容易であり、また部品の交換も容易である。
【0050】
また、スプール弁1では、2つの連結部31,32とボール33とから成る簡単な構造のボールジョイントが連結部材25に採用されている。それ故、スプール弁1の構造が複雑化することを抑えることができ、またスプール弁1の部品点数を抑えることができる。これにより、スプール弁1の製造コストを抑えることができる。
【0051】
更に、スプール弁1では、移動させた状態からスプール12を中立位置に戻すべく、制御装置からの電流によりモータ22を駆動させてロータ部22b及びねじ軸23aを前述する方向と逆回転に回転させる。そうすると、ナット23bが軸線方向他方(又は一方)に移動し、スプール12が中立位置の方に戻される。この際、スプール12は、ばね機構14の付勢力によって中立位置の方に付勢されながら中立位置に戻る。ばね機構14は、スプール12が中立位置に戻ると、2つのばね受け部材43,44がハウジング11の側面及びばね側ケーシング41の段部41aに夫々当たり、スプール12への付勢力がゼロとなる。また、モータ22及び制御装置の故障、並びに信号線の断線等の不所望な状態になってモータ22の駆動が停止した際、ばね機構14によってスプール12が中立位置に戻されるようになる。即ち、スプール弁1では、ばね機構14によってフェールセーフを実現することができる。
【0052】
[第2実施形態]
第2実施形態のスプール弁1Aは、第1実施形態のスプール弁1と構成が類似している。従って、第2実施形態のスプール弁1Aの構成については、第1実施形態のスプール弁1と異なる点について主に説明し、同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図9に示す、第2実施形態のスプール弁1Aは、ハウジング11と、スプール12と、電動アクチュエータ13Aと、ばね機構14Aとを備えている。電動アクチュエータ13Aが
図2に示すようにモータ側ケーシング21と、モータ22と、ボールねじ機構23と、中間部材24と、当接部材25Aとを有している。当接部材25Aは、連結部31Aとボール33Aを有している。連結部31Aは、その先端部に部分球面凹部31dが形成されており、そこにボール33Aが嵌まり込んでカシメられている。これにより、当接部材25Aの先端部分に部分球面状の押付部25aが形成され、この押付部25aがスプール12の軸線方向一端部に押し付けられて当接している。また、スプール12の軸線方向他端部には、ばね機構14Aが設けられている。
【0054】
ばね機構14Aは、ばね側ケーシング41と、コイルばね45と、を有している。コイルばね45は、ばね側ケーシング41に収容されており、スプール12の軸線方向他端部とばね側ケーシング41の底部との間に介在している。このように配置されているコイルばね45は、スプール12を軸線方向他方側に付勢して、スプール12をボール33Aに押し付けている。即ち、コイルばね45は、電動アクチュエータ13Aの押付力に抗した付勢力をスプール12に与え、ボール33Aをスプール12に常時押し付けるようになっている。
【0055】
このように構成されているスプール弁1Aでは、電動アクチュエータ13Aのモータ22の駆動が停止している状態で、例えば第1油通路11bが遮断され、第2油通路11cと第3油通路11dとが接続されている。他方、制御装置から電動アクチュエータ13Aに電流が流されてモータ22が駆動すると、その電流に応じてモータ22が回転してナット23bが軸線方向一方に移動する。これにより、当接部材25Aによってスプール12が軸線方向一方に押され、スプール12が軸線方向移一方に移動する。このようにスプール12が移動することによって、3つの油通路11b〜11dの接続状態及び開度を変えることができる。
【0056】
また、スプール弁1Aでは、電動アクチュエータ13Aがボール33Aを介してスプール12を押しているので、スプール12の軸線L1がロータ部22bの軸線L2に対して芯ずれしている場合であってもボール33Aがスプール12の軸線方向一端上において位置を変えながらスプール12に当接して押し続けることができる。また、ボール33Aとスプール12とが固定されておらず且つ点で接しているので、スプール12に曲げモーメントを作用させないような状態で、スプール12をスプール孔に挿入させておくことができる。また、点接触させることによって、スプール12の軸線L1がロータ部22bの軸線L2に対して傾倒したり偏芯したりして芯ずれしている場合でも電動アクチュエータ13によってスプール12をその軸線方向に押すことができる。以上により、芯ずれに伴うスプール12に作用する摩擦力の増大を抑えることができるので、芯ずれに伴うスプールの位置制御性の低下を抑えることができ、位置指令に対してスプール12の位置をより高い精度で制御することができる。即ち、スプール弁1の開度制御をより高い精度で行うことができる。スプール弁1では、従来技術のスプール弁に比べて静摩擦力を抑えることができ、スプール12を始動させる際の始動電流を抑えることができる。
【0057】
[その他の形態について]
第1実施形態のスプール弁1では、連結部材25としてボールジョイントが採用されているが、ボールジョイントに限定されない。例えば、連結部材25としてユニバーサルジョイントを採用してもよい。また、連結部材25を以下のようなかしめ構造で構成してもよい。即ち、シューのように、モータ側連結部31の先端にボール33を一体的に形成し、またスプール側連結部32の軸線方向一端部をボール33に合わせた部分球面凹部を形成する。ボール33は部分球面凹部に挿入してカシメられ、ボール33が部分球面凹部内を回動できるようにする。これによっても、モータ側連結部31とスプール側連結部32とがボール33の中心点O回りに各変位可能に連結することができる。このように、連結部材25は、モータ側連結部31とスプール側連結部32とがその間にある中心点O回りに各変位可能な構成であればよい。また、連結部材25は、傾倒及び偏芯の何れも許容するように構成されているが、必ずしも両方を共用するような構成である必要はなく、傾倒及び偏芯のうち何れか一方だけを許容するような構成であってもよい。また、傾倒及び偏芯を許容する方向も、必ずしも軸線方向に直交する全方向である必要はなく、特定する一方向であってもよい。
【0058】
また、第1実施形態のスプール弁1では、中間部材24と連結部材25のモータ側連結部31とが別体で形成されているが、一体的に形成されていてもよい。同様に、スプール12とスプール側連結部32もまた別体で形成されているが、一体的に形成されてもいてもよい。また、連結部材25のモータ側連結部31は、必ずしも中間部材24に連結されたり一体的に形成されたりしている必要はなく、スプール12に連結されたり一体的に形成されたりしてもよい。この場合、スプール側連結部32が中間部材24に連結されたり一体的に形成されたりしてもよい。
【0059】
また、連結部材25は、必ずしも中心点O回りに全方向に各変位可能な構成でなくてもよく、
図4(a)のようにスプール側連結部32がモータ側連結部31に対して突出部分31bの厚み方向にのみ傾倒するように構成されてもよく、また
図4(b)のようにスプール側連結部32がモータ側連結部31に対して軸線方向及び厚み方向に直交する方向にのみ傾倒するような構成であってもよい。これらの構成は、ハウジング11の側面に対して電動アクチュエータ13を取付精度が一方(
図1の上下方向又は前後方向)のみに高い精度を確保できるときに特に有用である。
【0060】
更に、第1実施形態のスプール弁1では、ばね機構14がスプール12の軸線方向他端部側に配置されているが、必ずしもこの位置である必要はない。ばね機構14は、例えばスプール12の軸線方向一端部側に配置されもよい。この場合、第1ばね受け部材43がスプール12の軸線方向一端部に被せるように配置され、また第2ばね受け部材44が中間部材の先端面に当接させるように配置される。更に、2つのばね受け部材43,44の間にコイルばね45を介在させることによってばね機構14をスプール12の軸線方向一端部側に配置することができる。
【0061】
また、スプール12を中立位置に正確に戻す機構としてばね機構14を採用しているが、そのような機能を有する機構は、ばね機構14に限定されない。例えば、ディテント機構によってスプール12に所定値以上の押圧力が作用しないと中立位置から移動しないようにしてもよく、また位置センサを設けてスプール12の位置を精度良く検出し、中立位置への再現性を高めるようにしてもよい。
【0062】
更に、第1及び第2実施形態のスプール弁1では、ボールねじ機構23がロータ部22bに直接連結されているが、変速機構等を介してロータ部22bとボールねじ機構23とが接続されていてもよい。この場合、モータ22は、ボールねじ機構23と同軸上に配置されず、モータ22をボールねじ機構23と並行して配置することも可能である。更に、ボールねじ機構23に代えてすべりねじ機構及び台形ねじ機構等の直動変換機構を採用してもよい。