(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態におけるアンテナ装置1は、ルーフなど車両の上面に取り付けられ、ケース10、容量装荷素子11、容量装荷素子ホルダー12、ヘリカル素子部13、ヘリカル素子ホルダー14、接続金具15、基板16、ベース17、パッチアンテナ18、導線保護部19、及びシール部材21を備える(
図1〜
図9参照)。
【0013】
方向を説明するために、アンテナ装置1が取り付けられる車両の前後方向をx方向、x方向と垂直な左右方向をy方向、x方向とy方向に垂直な略鉛直方向をz方向として説明する。
図1において、xyz軸のそれぞれの矢印が指し示す方向をそれぞれ前方向、右方向、上方向と定義する。
【0014】
ケース10は、ヘリカル素子部13などアンテナ装置1を構成する部材を覆う部材で、アウターケース10a、インナーケース10b、パッド10cを有する。
【0015】
アウターケース10aは、電波透過性を有する合成樹脂製であり、例えば、x方向前側がx方向後側よりも低くなるように傾斜し、両側面が内側に湾曲したシャークフィン形状を有する。
【0016】
アウターケース10aは、下面が開口し、アンテナ装置1を構成する部材であって、アウターケース10a以外のもの(インナーケース10b、容量装荷素子11、ヘリカル素子部13など)を、z方向上方から覆う(
図1参照)。
【0017】
アウターケース10aには、内壁からz方向下方に突出するように、ベース17への取り付け用の係止爪(不図示)が設けられ、アウターケース10aをベース17に固定する際に、当該係止爪が、ベース17に係合する。
【0018】
インナーケース10bは、電波透過性を有する合成樹脂製であり、下面が開口し、アンテナ装置1を構成する部材であって、アウターケース10aやインナーケース10b以外のもの(容量装荷素子11、ヘリカル素子部13など)を、z方向上方から覆う(
図1、
図2参照)。
インナーケース10bは、ネジ止めなどによって、ベース17に取り付けられる。
【0019】
パッド10cは、エラストマー(Elastomer)やゴムなどで形成された環状の弾性部材であり、アウターケース10aの下端周縁部に嵌入され、若しくはベース17に取り付けられ、アウターケース10aの下端周縁部と車両との間の隙間を目隠しすると共にアウターケース10a内への水の浸入を防止する。
【0020】
容量装荷素子11は、x方向から見て下方が離れ上方が近づくように傾斜した2枚の金属板(第1金属板11a、第2金属板11b)が、下部の接続板11cで接続したものであり、当該2枚の金属板(第1金属板11a、第2金属板11b)のそれぞれは、y方向から見て全体として略三角形形状の外形を有し、一部がミアンダ状に加工されている。
第1金属板11aと第2金属板11bと接続板11cは、1枚の金属板を折り曲げるなどして形成されるが、別体をつなぎ合わせて形成される形態であってもよい。
容量装荷素子11(接続板11c)における前方で且つ下面には、z方向下方に延びるフック形状の接続点111が設けられ、当該接続点111で、ヘリカル素子部13の上部接続線132が容量装荷素子11と半田付けなどで電気的に接続される。
上部接続線132が接続点111におけるフック形状部分に掛けられることで電気的に接続される形態であってもよい。
【0021】
容量装荷素子11のy方向の対称性を保つため、第1金属板11aと第2金属板11bは、x方向から見て、第1金属板11aと第2金属板11bを接続する下部の接続板11cにおけるy方向の中心線LXを含むxz平面を挟んで対称になるように形状や位置関係が決定され、接続点111は、中心線LXを含むxz平面近傍に設けられるのが望ましい。
【0022】
また、パッチアンテナ18で受信する周波数帯において定在波が発生するのを防ぐため、上部接続線132が長くならないように、接続点111は、容量装荷素子11における前端部から後方で、且つパッチアンテナ18から一定距離以上だけ離れた位置に設けるのが望ましい。
なお、上部接続線132の長さは、パッチアンテナ18で受信する周波数における波長をλとしたときに、λ/4以下の長さにすることが望ましい。
【0023】
容量装荷素子11は、x方向から見た断面が略等脚台形形状の外形を有する容量装荷素子ホルダー12に保持される。
【0024】
容量装荷素子ホルダー12における前方で且つy方向の中心には、ヘリカル素子ホルダー14の第2領域14bを嵌め込むための保持穴121が設けられ、容量装荷素子ホルダー12における後方で且つy方向の中心には、第1取り付け穴122が設けられる(
図7、
図9参照)。
第1取り付け穴122を介して、下方からネジ止め若しくはスナップ止めすることにより、容量装荷素子ホルダー12とインナーケース10bが接続される。
【0025】
ヘリカル素子部13は、導体で構成されている。ヘリカル素子部13は、波長短縮素子として機能する螺旋部(ヘリカル素子)131と、一方が螺旋部131の上端と接続され他方が容量装荷素子11の接続点111に接続された上部接続線132と、一方が螺旋部131の下端に接続され他方が接続金具15に接続された下部接続線133を有する。
螺旋部131は、容量装荷素子11を保持する容量装荷素子ホルダー12の下で、接続点111及び後述する第2取り付け穴141よりも後方で、且つ後方から見て容量装荷素子11や容量装荷素子ホルダー12のy方向の中心線LXを含むxz平面から左にずれた位置に配置される。
螺旋部131と上部接続線132と下部接続線133は、一体的に構成される形態であってもよいし、別体で構成される形態であってもよい。
【0026】
容量装荷素子11と螺旋部131が、FM波帯などの信号を受信するアンテナ素子を構成する。
【0027】
螺旋部131と容量装荷素子11との電気的な接続は、上部接続線132を介して行われる。
このため、容量装荷素子11の(y方向の中心の)直下から離れた位置に螺旋部131を配置することが可能になり、容量装荷素子11の下部の領域を有効活用出来、アンテナ装置1の設計自由度を高めることが可能になる。
螺旋部131を接続点111及び第2取り付け穴141よりも後方に配置させることにより、螺旋部131をパッチアンテナ18から離して、螺旋部131とパッチアンテナ18の電気的絶縁(アイソレーション)を確保することが可能になる。
螺旋部131を、容量装荷素子11のy方向の中心からずれた位置に配置することにより、基板16上の部材であって、アンテナアンプなど比較的z方向に長いものを、中心線LXを含むxz平面の近傍に配置しやすく出来る。
【0028】
ヘリカル素子ホルダー14は、合成樹脂製で、ヘリカル素子部13の螺旋部131や上部接続線132を保持するために使用される。
ヘリカル素子ホルダー14は、略円筒形状を有し螺旋部131が巻き付けられる第1領域(ボビン)14aと、第1領域14aよりも上部に位置し上端が容量装荷素子ホルダー12の保持穴121に挿入される第2領域14bと、第1領域14aよりも下部に位置し、前側先端部に接続金具15が取り付けられる第3領域14cを有する。
【0029】
第2領域14bにおける容量装荷素子ホルダー12の保持穴121に嵌め込まれる部分には、第2取り付け穴141が設けられる。
第2取り付け穴141を介して、下方からネジ止め若しくはスナップ止めすることにより、ヘリカル素子ホルダー14と容量装荷素子ホルダー12とインナーケース10bが接続される。
ヘリカル素子ホルダー14をインナーケース10bにネジ止め若しくはスナップ止めする部材は、導体であってもよいし、不導体であってもよい。
【0030】
従って、容量装荷素子ホルダー12は、係るネジ止め若しくはスナップ止めにより、上部では、インナーケース10bと容量装荷素子ホルダー12とに挟まれた状態で容量装荷素子11を保持し、下部では、ヘリカル素子ホルダー14に巻き付けられたヘリカル素子部13を保持する。
【0031】
第1取り付け穴122と第2取り付け穴141の2箇所で、容量装荷素子ホルダー12とインナーケース10bの固定が行われるため、1箇所で固定が行われる形態に比べて、振動などでずれにくく、固定された状態を維持しやすい。
【0032】
第2領域14bにおける第1領域14aに近い側には、後方から見て右方向に突出する第1突起143が設けられる(
図5〜
図8参照)。第1突起143の効果については後述する。
また、第2領域14bにおける容量装荷素子ホルダー12の保持穴121に嵌め込まれる部分の下部であって、後方から見て右側部には、導線保護部19が設けられる。
【0033】
導線保護部19は、上部接続線132における少なくとも第2領域14bの側面を通る領域を保護するもので、上部接続線132を構成する導線を保持するガイド19aと、当該導線におけるガイド19aに保持された領域を覆うカバー19bとを有する。
本実施形態では、カバー19bが、上部接続線132におけるガイド19aに保持された領域をy方向外側(y方向の中心線LXを含むxz平面から離れた側)から覆う第1カバー19b1と、y方向内側(y方向の中心線LXを含むxz平面に近い側)から覆う第2カバー19b2を有する形態を説明するが、いずれか一方だけを有する形態であってもよい。
【0034】
ガイド19aは、第2領域14bの後方から見て右側部に設けられた鉤状突起で構成され、第1突起143よりも上方に配置される。
ガイド19aは、ヘリカル素子ホルダー14(第2領域14b)と一体で構成されてもよいし、別体で構成されてもよい。
【0035】
カバー19bは、第2領域14bにおけるガイド19aが設けられた領域と対向し、y方向外側と内側から当該領域を覆う。
第1カバー19b1は、容量装荷素子ホルダー12と一体で構成されてもよいし、別体で構成されていてもよい。また、第1カバー19b1は、ヘリカル素子ホルダー14と一体で構成されてもよいし、別体で第2領域14bにおけるガイド19aが設けられた領域に着脱可能な状態で取り付けられる形態であってもよい。第2カバー19b2についても同様である。
本実施形態では、容量装荷素子ホルダー12の下面から下方に突出する壁状の第1カバー19b1と第2カバー19b2が、容量装荷素子ホルダー12と一体で構成される例を示す。
容量装荷素子ホルダー12にヘリカル素子ホルダー14が取り付けられた時に、z方向から見て、第2取り付け穴141と第1カバー19b1が第2カバー19b2を挟む位置関係でこれらの部材が配置される。
【0036】
上部接続線132は、第1突起143と、導線保護部19を介して、螺旋部131の上端から接続点111に延びる。
具体的には、上部接続線132は、一回り以上巻くなどして第1突起143に引っ掛けた状態で、且つガイド19aに引っ掛けた状態で、螺旋部131の上端から接続点111に延びる。
【0037】
導線保護部19のガイド19aに引っ掛けることにより、上部接続線132は、当該ガイド19aが設けられない形態に比べて、所定の場所から外れにくい状態に出来、第2取り付け穴141の近傍から半径方向外側に外れた位置(第2取り付け穴141を通るz方向の軸とガイド19aの鉤状突起の距離だけ外れ、第2取り付け穴141近傍に位置させない位置)に上部接続線132を配置した状態を維持することが出来る。
また、上部接続線132を第2取り付け穴141近傍に位置させないことや、導線保護部19のカバー19bに覆われることにより、外部から接触しにくい状態になり、ネジ止めなどの組み立て作業時にドライバーなどの工具が上部接続線132に接触する可能性を低くすることが出来、上部接続線132の破損を防いだり、組み立て作業の効率性を上げたりすることが可能になる。
【0038】
第3領域14cにおける前方の端部には、接続金具15が取り付けられる。
【0039】
接続金具15における第3領域14cと接続する領域には、後方から見て左方向に突出する第2突起151が設けられ、当該第2突起151には、螺旋部131の下端から延びる導線(下部接続線133)が半田付けなどで電気的に接続される。
接続金具15における前端部から下方に延びる部分は、基板16に上方に突出するように設けられた挟持用導体板バネ161に挟み込まれ、当該挟持により、基板16と接続金具15とが電気的に接続される。基板16と接続金具15との接続は、挟持用導体板バネ161に限られず、電気的に接続されるものであればどのような形態でもよい。
【0040】
基板16は、アンテナ素子(容量装荷素子11、螺旋部131)の受信信号を増幅するアンテナアンプなどを実装するもので、ベース17の上部に取り付けられる。
【0041】
アンテナ素子(容量装荷素子11、螺旋部131)の前方には、衛星デジタルラジオ(SDARS: Satellite Digital Audio Radio Service)、若しくは衛星測位システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)の信号を受信するためのパッチアンテナ18が設けられ、ベース17の上部に取り付けられる。
【0042】
ベース17の下面には、エラストマー(Elastomer)やゴムやウレタンフォームなどで形成された環状の弾性部材であるシール部材21が設けられ、シール部材21によりベース17と車両のルーフとの間であって取り付け穴が設けられた領域の周囲が水密封止される。
【0043】
次に、ヘリカル素子部13の組み立て手順について説明する。
【0044】
予めヘリカル素子ホルダー14の第3領域14cには、接続金具15が取り付けられ、容量装荷素子ホルダー12には容量装荷素子11が取り付けられている。
【0045】
ヘリカル素子部13(螺旋部131、上部接続線132、下部接続線133)を構成する導線の一端が、接続金具15の第2突起151に半田付けされた状態で、第1領域14aの下端まで延ばし、第1領域14aに当該導線が螺旋状に巻き付けられる。
【0046】
巻き付け後、第1領域14aの上端から導線が第1突起143に引っ掛けられ、且つ導線保護部19のガイド19aに引っ掛けられた状態で、ヘリカル素子ホルダー14の第2領域14bの上端が、容量装荷素子ホルダー12の保持穴121に挿入される(
図7、
図8参照)。
このとき、容量装荷素子ホルダー12の下端に設けられた第1カバー19b1がガイド19aと対向し、第1カバー19b1が第1上部接続線132におけるy方向外側からガイド19aに保持された領域を覆い、第2カバー19b2がy方向内側から当該領域を覆う。
ヘリカル素子部13を構成する導線を接続点111におけるフック形状部分に掛け、当該接続点111で導線の他端が半田付けされ、残った導線が切り取られる。
【0047】
導線のうち、第2突起151と第1領域14aの下端の間が下部接続線133を構成し、第1領域14aの下端と上端の間が螺旋部131を構成し、第1領域14aの上端と接続点111の間が上部接続線132を構成する。
【0048】
その後、第1取り付け穴122、及び第2取り付け穴141を介したネジ止めなどにより、容量装荷素子ホルダー12がインナーケース10bに取り付けられる。
【0049】
これにより、インナーケース10b、容量装荷素子11、容量装荷素子ホルダー12、ヘリカル素子部13、ヘリカル素子ホルダー14、及び接続金具15が取り付けられた状態になり、パッド10cや基板16やパッチアンテナ18が取り付けられたベース17の上に、容量装荷素子11などが取り付けられたインナーケース10bが係合せしめられる。
【0050】
第1突起143に導線(上部接続線132)の一部を引っ掛けることで、導線の長さを調整出来、螺旋部131の巻き数を調整出来、導線がヘリカル素子ホルダー14の第1領域14aに巻き付けられていることにより生じる導線が巻き付けられる前の状態に戻ろうとする反力を抑え込むことが出来る。
【0051】
本実施形態では、容量装荷素子11とヘリカル素子部13の接続点111が前方に配置される例を説明したが、当該接続点111は、前方配置に限定されるものではない。
例えば、接続点111は、x方向の中間(前方と後方の間)に配置される形態(
図10参照)であってもよいし、x方向の後方に配置される形態(
図11参照)であってもよい。
接続点111がx方向の中間に配置される場合、接続点111は、後方から見て右側の金属板(第1金属板11a)の下に設けられる。
接続点111がx方向の後方に配置される場合、接続点111は、後方の接続板(不図示)若しくは金属板の一方の下に設けられる。
いずれの場合も、導線保護部19は、ヘリカル素子部13と接続点111の間に設けられる。
また、本実施形態におけるパッチアンテナ18は、平面アンテナであればどのようなものであってもよい。