(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る耐油紙について詳説する。なお、以下で説明する基紙に配合する各材料の配合量(内添量)は、特に記載がない場合は、原料パルプの絶乾質量に対する質量割合を指す。また、耐油層形成用組成物に配合する各材料の含有率は、特に記載がない場合は、耐油層全体の質量に対する各材料の絶乾質量割合を指す。
【0013】
<耐油紙>
当該耐油紙は、基紙及びこの基紙の少なくとも一方の面に耐油層を備える。上記耐油層は、単層構造を有する。また、当該耐油層の形成に用いる耐油層形成用組成物が、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスと、カオリンと、消泡剤と、粘度調整剤とを含有する。
【0014】
[基紙]
基紙は、原料パルプを含有するスラリーを抄紙して得られる。
(原料パルプ)
基紙は、主成分として原料パルプからなるものであることが好ましい。基紙を構成する原料パルプとしては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ、これらのパルプを組み合わせたもの等を使用することができる。
【0015】
バージンパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ(MP)から、化学的に又は機械的に製造されたパルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0016】
古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0017】
(その他の添加剤)
基紙には、必要により添加剤を内添することができる。添加剤としては、例えば、填料、顔料、サイズ剤、凝結剤、消泡剤、蛍光増白剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、耐水化剤等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0018】
(抄紙)
基紙の抄紙方法は、前記の原料パルプ及び添加剤を含む原料スラリーを公知の抄紙機を用いて行うことができる。必要により、カレンダー工程を設けることもできる。
【0019】
[耐油層]
耐油層は、基紙の少なくとも一方の面に耐油層形成用組成物を塗工することで形成される。
【0020】
[耐油層形成用組成物]
当該耐油層の形成に用いる耐油層形成用組成物は、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスと、カオリンと、消泡剤と、粘度調整剤とを含有する。
【0021】
(スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(以下、SBラテックスともいう。)は、少なくともスチレンとブタジエンを共重合して得られるラテックスである。なお、ラテックスとは、高分子微粒子の水分散液であり、ラテックスにおける高分子の含有量(固形分含量)は、通常40〜70質量%程度である。
【0022】
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスのゲル含有率の下限としては92質量%であり、好ましくは93質量%であり、より好ましくは94質量%である。上記ゲル含有率の上限としては98質量%であり、好ましくは97質量%であり、より好ましくは96質量%である。上記ゲル含有率を上記範囲とすることで、耐油層の耐溶媒性が向上し、耐油性及び耐浸透性を高めることができる。
【0023】
ここで、ゲル含有量とは、一般にトルエン不溶分として、共重合体ラテックスの架橋度合いの指標として知られているものであり、本発明でのゲル含有量は、共重合体ラテックスを室温で乾燥して共重合体ラテックスフィルムを作成し、この共重合体ラテックスフィルムの約1.0gを正確に秤量し(Bg)、400ccのトルエンに入れ48時間放置した後、300メッシュの金網で濾過した後に、金網上の未溶解物を室温で乾燥後、秤量し(Ag)、トルエンゲル含有量[(A/B)×100:単位…重量%]を算出する。このゲル含有率は、共重合体ラテックスのモノマー組成比率、重合時の連鎖移動剤の種類、配合量等を調節することによって、適宜調節される。
【0024】
本発明のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスのブタジエンの含有率の下限としては45質量%であり、好ましくは46質量%であり、より好ましくは48質量%である。ブタジエンの含有率が45質量%以上であることで、クラックの発生を抑制し、耐油性を向上することができるとともに、ガラス転移温度を下がることにより、低温下でのヒートシール性を向上できる。上記ブタジエンの含有率の上限としては60質量%であり、好ましくは58質量%であり、より好ましくは55質量%である。ブタジエンの含有率が55質量%以下であることで、耐油紙表面の粘着性を抑制し、耐油紙を積み重ねた場合に耐油紙表面が互いに接着して剥離性が悪化する現象、いわゆるブロッキングが生じることによる製袋時の加工性が低下することを抑制できる。ここで、ブタジエンの含有率とは、SBラテックス中の固形分に対するブタジエンの含有率をいう。
【0025】
本発明のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの粒子径の上限としては、100nmが好ましく、90nmがより好ましい。上記粒子径の上限を上記範囲とすることで、粒子の比表面積が大きくなるため、耐油性及び耐浸透性を高めることができる。また、粒子径が小さいほど、消泡剤中のポリエーテル系成分の作用により、分散性が高まり、耐油層が均一となり、より耐油性を向上できる。一方、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの粒子径の下限としては、50nmが好ましく、80nmがより好ましい。上記粒子径の下限を上記範囲とすることでさらに比表面積が大きくなり、高アスペクト比のカオリン同士の接着性を高めることができ、耐油層からの脱落を防止できる。
【0026】
耐油層形成用組成物の全固形分に対するスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの含有率の下限としては78.0質量%であり、好ましくは80.0質量%である。上記スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの含有率が78.0質量%未満であると、十分な耐油性とヒートシール性が得られないおそれがある。一方、上記スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの含有率の上限としては、92.0質量%であり、好ましくは90質量%である。上記スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの含有率が92.0質量%を超えるとスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス粒子同士が粘着してブロッキングが発生して製袋時の加工性が低下するおそれがある。
【0027】
(カオリン)
カオリンは、内添用および表面塗工用に使用される粘土鉱物である。カオリンは、粒子径及び形状で分類すると、例えば微粒カオリン、1級カオリン、2級カオリン、デラミネートカオリン等が挙げられる。カオリンとしては、これらの中で、扁平率が高くアスペクト比が大きなデラミネートカオリンであることが好ましい。耐油層形成用組成物が上記デラミネートカオリンを含有することで、耐油層中でデラミネートカオリンが積層し、油やソース、マヨネーズ等の食品調味料の浸透を阻害するトラップ効果を発揮して、優れた耐浸透性を得ることができるとともに、耐油層表面に耐油剤が残存しやすくなる。その結果、優れた耐油性を得ることができると推察される。また、上記スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスのブタジエンの含有率が高いとヒートシール性が向上するが、耐油紙表面の粘着性が高くなり、耐油紙を積み重ねた場合に耐油紙表面の粘着性によって互いに接着する現象、いわゆるブロッキングが生じやすくなる傾向があるが、扁平率が高いカオリンが互い違いに重なり合うことで、ブタジエンの粘着性を緩和し、ブロッキングを抑制することができると考えられる。さらに、耐油層がかさ高いとヒートシール性が低下するおそれがあるが、扁平率が高いカオリンを用いることで、耐油層がかさ高くなるのを抑制することができると考えられる。
【0028】
カオリンのアスペクト比の下限としては、55であり、57が好ましい。カオリンのアスペクト比が55未満であると、十分な耐油性が得られないおそれがある。一方、上記カオリンのアスペクト比の上限としては、120であり、110が好ましく、100がより好ましい。アスペクト比が120を超えると、耐油層表面に存在するカオリンが互いに干渉し、配列が乱れる立体障害が生じることにより、耐油層における層の形成状態が悪くなり耐油性が低下するおそれがある。ここで、アスペクト比とは、JIS−Z8900−1(2008)に定義されるように、無機粒子の形状で、その長径(最長径)と厚さ(最短径)との比をいうが、薄片状フィラーの場合、粒子の直径(長径)を薄片状顔料の厚さで除したものである。アスペクト比は、例えば電子顕微鏡等で粒子を無作為に100個観察した値の平均値から算出できる。
【0029】
耐油層形成用組成物の全固形分に対するカオリンの含有率の下限としては5.0質量%が好ましく、8.0質量%がより好ましい。一方、上記カオリンの含有率の上限としては、20.0質量%が好ましく18.0質量%がより好ましい。上記カオリンの含有率が上記範囲であることで、耐油性を向上することができる。ここで「全固形分」とは、耐油層形成用組成物中の溶媒以外の成分の総和をいう。
【0030】
耐油層形成用組成物の上記カオリンに対する上記スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの含有比率(倍率)の下限としては4.5であり、4.9がより好ましい。上記含有比率が4.5未満の場合、当該耐油紙のヒートシール性が十分でないおそれがある。一方、上記含有比率の上限としては10.5であり、10.0がより好ましい。上記含有比率が10.5を超えると、当該耐油紙のブロッキングが発生しやすくなるおそれがある。
【0031】
(消泡剤)
耐油層形成用組成物がスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを50.0質量%以上含有すると増粘する傾向があり、耐油層形成用組成物中に泡が多い場合、さらに粘度が上昇して、低塗工量に調整することが困難となるおそれがある。また、耐油層形成用組成物中に泡が多い場合、乾燥工程で耐油層に微細なピンホールが生じ、油分が基紙に浸透するおそれがある。当該耐油紙が、消泡剤を含有することで、耐油層形成用組成物表面の粘度を下げて混入した気泡を消泡しやすくするとともに、気泡の界面張力を下げて微小な気泡を集めて浮上しやすい大きな気泡にすることにより、耐油層形成用組成物表面で気泡が破裂しやすくなる。
【0032】
上記消泡剤としては、イソパラフィン系成分を含有することが好ましい。上記イソパラフィン系成分の界面張力が気泡の泡膜の界面張力より低いため、泡膜内に浸透及び拡張する作用が高くなり、気泡内部から破裂させることができる
【0033】
上記消泡剤における上記イソパラフィン系成分の含有率の下限としては、20.0質量%が好ましく、30.0質量%がより好ましい。上記イソパラフィン系成分の含有率の上限としては、50.0質量%が好ましく、40.0質量%がより好ましい。上記消泡剤における上記イソパラフィン系成分の含有率が上記範囲であることで、気泡の泡膜に浸透して気泡を破裂させる効果を高めることができる。なお、イソパラフィン系成分の含有率は、消泡剤の全固形分に対するイソパラフィン系成分の含有率である。
【0034】
さらに消泡剤としては、ポリエーテル系成分を含有することが好ましい。上記ポリエーテル系成分は、自己乳化作用を奏することから、消泡効果に最適な消泡剤の粒子径に分散できる。上記消泡剤における上記ポリエーテル系成分の含有率の下限としては、20.0質量%が好ましく、30.0質量%がより好ましい。また、上記含有率の上限としては、50.0質量%が好ましく、40質量%以下がより好ましい。上記含有率が上記範囲であることで、消泡剤の粒子径を良好に調整できる。なお、ポリエーテル系成分の含有率は、消泡剤(固形分)100質量%に対しての含有量を指す。
【0035】
耐油層形成用組成物の全固形分に対する消泡剤の含有率の下限としては、好ましくは0.10質量%であり、より好ましくは0.20質量%である。上記消泡剤の含有率の上限としては、好ましくは0.60質量%であり、より好ましくは0.50質量%である。上記消泡剤の含有率が上記範囲であることで、良好な消泡効果を得ることができるとともに、耐油層にピンホール等の欠陥が発生し難くなる。
【0036】
(粘度調整剤)
粘度調整剤は、分岐ポリエステルアミドを主成分とする。分岐ポリエステルポリアミドは、分岐構造を持つ高分子鎖であって、各分岐がそれぞれポリエステルポリアミドである高分子化合物をいう。
【0037】
上記分岐ポリエステルポリアミドは、例えば、無水フタル酸[1,3−イソベンゾフランジオン]、無水コハク酸[ジヒドロ−2、5−フランジオン]、無水マレイン酸[2,5−フランジオン]、無水テロラヒドロフタル酸、無水グルタル酸等の環状無水物や、ジイソプロパノルアミン[2−ヒドロキシイソプロピルアミン]、ジイソブタノールアミン等のジ[アルカノール]アミン等の単量体を重合して得ることができる。分岐ポリエステルポリアミドは、カオリン中に含まれる粒度分布がd50以下の小さい無機粒子間に介在して、その無機粒子間の凝集作用を奏すると推察される。この凝集作用により、耐油層中の見かけ上の無機粒子数が少なくなり、介在する分散水が増加して、耐油層の塗工時の粘度が低下する。そのことにより、見かけ上の無機粒子と質量が大きくなり、塗工直後に速やかに耐油層が沈み込み、基紙の細孔を塞ぎ毛細管現象による液体の沈み込みが少なくなり、耐油層が表面に留まり易く耐油性がより向上しているものと推察される。
【0038】
耐油層形成用組成物の全固形分に対する粘度調整剤の含有率の下限としては0.10質量%が好ましく、0.15質量%がより好ましい。上記粘度調整剤の含有率の上限としては、2.0質量%が好ましく、1.5質量%が好ましい。上記粘度調整剤の含有率が上記範囲であることにより、耐油層形成用組成物の塗工性が向上する。
【0039】
(変性澱粉)
耐油層形成用組成物は、バインダーとして、タピオカ澱粉由来の変性澱粉を含有することもできる。耐油層形成用組成物の全固形分に対する上記変性澱粉の含有率の下限としては、0.50質量%が好ましく、2.0質量%がより好ましい。上記変性澱粉の含有率の上限としては、6.0質量%が好ましく、5.0質量%がより好ましい。上記変性澱粉の含有率が上記範囲であることにより、耐油層形成用組成物の塗工性が向上する。
【0040】
前記タピオカ澱粉が好ましい理由として含有するアミロースとアミロペクチンとの質量比が耐油性向上に寄与していると推察される。前記アミロースとアミロペクチンとの質量比としては、10:90以上20:80以下が好ましく、15:85以上19:81以下がより好ましい。質量比が10:90未満の場合、十分なチキソ性が得られにくく、浸透性が不足し被覆性が少なくなり、耐油性が低下する可能性がある。逆に、質量比が20:80を超える場合、チキソ性は十分であるが、過度に塗料粘度が上昇し塗工性の問題が発生するおそれがある。なお、アミロペクチン及びアミロースは、ヨウ素親和力測定法[電圧滴定法]により含有質量を測定することができる。
【0041】
(その他の添加剤)
本発明の耐油層には、上記以外のその他の添加剤を配合することができる。その他の添加剤としては、例えば、水溶性高分子、接着剤、無機顔料、有機顔料、サイズ剤、消泡剤、粘度調整剤、蛍光増白剤、着色染料、着色顔料、耐水化剤、潤滑剤等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0042】
[耐油紙の物性]
(坪量)
当該耐油紙のJIS−P8124(2011)に準拠した坪量の下限としては、35.0g/m
2が好ましく、38.0g/m
2がより好ましく、40.0g/m
2がさらに好ましい。一方、上記坪量の上限としては、110.0g/m
2が好ましく、75.0g/m
2がより好ましく、55.0g/m
2がさらに好ましい。上記坪量が上記範囲内であることで、油分の浸透抑制性及び製袋加工適性をより向上することができる。
【0043】
(耐油性)
当該耐油紙の耐油性の指標であるキット値は、8以上であることが好ましい。このキット値の上限としては、10がより好ましく、12がさらに好ましい。キット値が8未満であると、耐油紙としての機能を果せない可能性がある。当該耐油紙のキット値の上限は特に限定されない。ここで、「キット値」とは、23℃、湿度50%の条件で測定した平面及び折部の耐油度(JAPAN TAPPI No.41 紙及び板紙−はつ油度試験方法−キット法によるキット値)を示し、数値が大きいほど耐油性が高い。
【0044】
(透湿度)
当該耐油紙の透湿度は、JIS−Z0208[1976]防湿包装材料の透湿度試験方法[カップ法]に準拠して、条件Bに基づいて測定した値である。当該耐油紙が製袋加工して使用される場合、上記透湿度の上限としては、3,000g/m
2・24hが好ましく、2,000g/m
2・24hがより好ましく、1,000g/m
2・24hがさらに好ましい。また、上記透湿度の下限としては、100g/m
2・24hが好ましい。上記透湿度が上記範囲であることにより、良好な耐油性を備えつつ内容物の風味や鮮度をより良好にできる。
【0045】
本実施形態の耐油紙によれば、耐油性、ヒートシール性、透湿性並びに水分及び油分に対する耐浸透性に優れる。また、臭気が少ないことから食品等の包装材に好適であり、耐油層が単層であるので効率よく製造できる。
【0046】
<耐油紙の製造方法>
当該耐油紙の製造方法は、上記耐油層形成用組成物を生成する工程と、基紙の少なくとも一方の面に上記耐油層形成用組成物を塗工する工程とを有する。
【0047】
耐油層形成用組成物の塗工方法は、公知の塗工方法を採用でき、例えば2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター等の公知の塗工機を用いることができる。
【0048】
耐油層形成用組成物の片面の塗工量(固形分換算)の下限としては、3.5g/m
2が好ましく、5.0g/m
2がより好ましい。上記塗工量が上記下限を満たさないと、耐油層が十分な耐油性を有さないおそれがある。一方、この塗工量の上限としては、10.0g/m
2が好ましく、8.0g/m
2がより好ましい。一方、上記塗工量が上記上限を超えると、当該耐油紙が不必要に厚くなり過ぎるおそれがある。
【0049】
塗工した耐油層形成組成物の乾燥には、公知の乾燥装置を採用でき、例えば赤外線乾燥装置、熱風乾燥装置、接触型ドライヤー乾燥装置等を用いることができる。
【0050】
このようにして得られた耐油紙は、各種公知の仕上げ装置、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー、マットカレンダーなどを利用でき、適宜製品仕上げを施すこともできる。
【0051】
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0052】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
(基紙の製造)
先ず、広葉樹晒クラフトパルプ[LBKP]100質量%を調製して、パルプスラリーを得た。このパルプスラリーには、内添サイズ剤、カチオン化澱粉、軽質炭酸カルシウム、硫酸バンド、凝結剤、歩留剤を内添した。得られたパルプスラリーは、オントップ型長網抄紙機にて抄紙して、基紙を得た。基紙の坪量は40.0g/m
2であった。
【0054】
(耐油紙の製造)
次に、基紙の片面に、5.0g/m
2の耐油層を形成し、坪量が45.0g/m
2の耐油紙を得た。耐油層形成用組成物の組成については表1に示す通りとした。また、耐油層形成用組成物に使用した各薬剤については、以下の製品を使用した。
(1)カオリン
カオリン[A]:バリサーフHX[(株)イメリルミネラルジャパン製]
カオリン[B]:コンツァー1500[(株)イメリルミネラルジャパン製]
カオリン[C]:カオファイン[白石カルシウム(株)製]
(2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス
SBラテックス[A]:T2749N[JSR(株)製](粒子径85nm)
SBラテックス[B]:F1558.02[旭化成(株)製](粒子径90nm)
(3)消泡剤
消泡剤[A]:SNデフォーマ777[サンノプコ(株)製]
(イソパラフィン系成分35.0質量%、ポリエーテル系成分35.0質量%)
消泡剤[B]:SNデフォーマ381[サンノプコ(株)製]
(イソパラフィン系成分0質量%、ポリエーテル系成分95.0質量%)
消泡剤[C]:SNデフォーマ218[サンノプコ(株)製]
(イソパラフィン系成分90.0質量%、ポリエーテル系成分5.0質量%)
(4)粘度調整剤
ハイブレーンPX100[楠木化成(株)製]
【0055】
[実施例2〜実施例10及び比較例1〜比較例8]
上記実施例1のカオリン、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、消泡剤、粘度調整剤の含有率を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様の操作をして、実施例2〜実施例10及び比較例1〜比較例8の耐油紙を得た。なお、以下の表1中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
【0057】
以上のようにして得られた耐油紙の各種評価を行った。
【0058】
[坪量(g/m
2)]
JIS−P8142(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0059】
(耐油性)
キットナンバー3、5、8及び12に調製した試験液を、実施例及び比較例の耐油紙の平面部と手動で折り曲げた折部に滴下し、15秒後の耐油紙への染み込みの有無を観察した。
評価基準は以下の通りとした。
◎:耐油紙の表面にピンホールがなく、裏面にも裏抜けがなく、耐油紙として適している。
○:耐油紙の表面に若干ピンホールがみられるが、裏面にも裏抜けがないため、実用に際しては問題のない範囲である。
△:耐油紙の表面にピンホールがあり、裏面に裏抜けがないが、実用に供するにはやや難がある。
×:耐油紙の裏面に裏抜けがあり、耐油紙として使用できない。
【0060】
(透湿度)
実施例及び比較例の耐油紙の透湿度については、JIS−Z0208[1976]防湿包装材料の透湿度試験方法[カップ法]に準拠して、条件Bに基づいて測定した。
【0061】
(臭気強度)
当該耐油紙を簡易ヒートプレス装置「Swing Mini Heat Press((株)クイックアート製)」に挟み、195℃、60秒の条件で加熱処理した。その後、加熱処理後プレス板を開放し、新コスモス電気(株)製ニオイセンサ「XP−329IIIR」を用いて測定器の表示値による臭気強度の判定を行った。
値が大きい程、臭気が強いことを指し、基準は以下の通りである。
○:1〜18:臭気がほとんどなく、耐油紙として適している。
△:19〜24:臭気が若干あるが、耐油紙として使用上問題のない範囲である。
×:25〜40:臭気が強く、耐油紙として使用できない。
【0062】
(24時間後の耐浸透性)
市販のソース、ケチャップ、醤油及びマーガリンを用いて、実施例及び比較例の耐油紙の耐浸透性の評価を行った。温度23.0℃、湿度50%の条件下で市販のコピー用紙上に当該耐油紙を重ね、対象となるソース、ケチャップ、醤油及びマーガリンを耐油紙面に0.1g滴下した。滴下後24時間後の耐油紙状態及び裏面への染み込み、裏抜けを目視にて確認した。
評価基準は以下の通りとした。
◎:耐油紙の裏面に裏抜けがなく、耐油紙として適している。
○:耐油紙の裏面にわずかなピンホール状の裏抜けがあるが、実用に際しては問題のない範囲である。
△:耐油紙の裏面にわずかに裏抜けがあり、実用に供するにはやや難がある。
×:耐油紙の裏面に裏抜けがあり、耐油紙として使用できない。
【0063】
(ヒートシール性)
熱傾斜試験機((株)東洋精機製作所製)を用いて、シーラー圧2kg/cm、シーラー時間1秒間、シール温度(1)150℃、(2)160℃、(3)170℃の条件下で加工後、ヒートシール部分を両手で剥離した。評価基準は以下の通りとした。
○:シール部分が材破し、ヒートシール性を有し、包装材として適している。
△:シール部分が毛羽立ち、ヒートシール性が若干弱いが、包装材として使用する際には問題のない範囲である。
×:シール部分が接着しておらず、ヒートシール性がなく包装材として使用することが困難である。
【0064】
(ブロッキング抑制性)
各実施例及び比較例について、2枚の耐油紙の耐油層を塗工した面同士を密着させ、2kgの圧着ローラーで1往復圧力を加えた後、両手で剥離させた結果を以下の基準で評価した。
○:剥離音が無く、スムーズに剥離する。
△:若干ブロッキングしているが、剥離性は問題のない範囲である。
×:ブロッキングを起こしており、剥離性に難がある。
【0065】
各実施例及び比較例の評価結果を表2及び表3に示す。
【0068】
表2及び表3に示されるように、アスペクト比が55以上120以下のカオリンと、ゲル含有率が92質量%以上98質量%以下であり、ブタジエンの含有率が45質量%以上60質量%以下であるスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを78質量%以上92質量%以下含有させた実施例1〜10の耐油紙は、耐油性、透湿性並びに水分及び油分に対する耐浸透性全てにおいて良好である。特に、アスペクト比が100のカオリン9.0質量%及びブタジエンの含有率が55質量%であるスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス90.0質量%、ゲル含有率が92質量%以上98質量%以下であり、ブタジエンの含有率が45質量%以上60質量%以下であるスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを含有させた実施例1の耐油紙は、上記全ての評価項目において良好であった。一方、比較例1〜比較例8の耐油紙は、十分な耐油性及び耐浸透性が得られなかった。