特許第6877269号(P6877269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6877269あと施工アンカー構造およびあと施工アンカーの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877269
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】あと施工アンカー構造およびあと施工アンカーの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20210517BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20210517BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   E21D11/10 Z
   E04G21/12 105Z
   E04B1/41 503Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-128568(P2017-128568)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-11597(P2019-11597A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高倉 克彦
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−020295(JP,A)
【文献】 特開2015−169017(JP,A)
【文献】 特開2018−066142(JP,A)
【文献】 実開平04−135622(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−19/06
23/00−23/26
E04B 1/41
E04G 21/12
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート部材に形成された凹部と、
前記凹部に設けられたアンカー本体と、
前記凹部内に露出する複数の配力筋に横架された受材と、
前記凹部に充填された充填固化材と、を備えるあと施工アンカー構造であって、
前記アンカー本体には、前記受材と前記凹部の底面との間に配置された拡幅部が形成されており、
前記拡幅部は、前記受材への係止めが可能となるように、前記受材の幅よりも大きく張り出しており、
前記受材の端部には、前記配力筋に係止された係止部が形成されていることを特徴とする、あと施工アンカー構造。
【請求項2】
前記アンカー本体が、前記凹部の底面に植設されていることを特徴とする、請求項1に記載のあと施工アンカー構造。
【請求項3】
前記受材が、前記アンカー本体を挟む一対の棒状部材であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のあと施工アンカー構造。
【請求項4】
前記拡幅部が、板状部材からなることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のあと施工アンカー構造。
【請求項5】
前記鉄筋コンクリート部材が、トンネルの覆工であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のあと施工アンカー構造。
【請求項6】
鉄筋コンクリート部材を切削して複数の配力筋が露出する凹部を形成する切削作業と、 前記配力筋同士の間にアンカー本体を植設する植設作業と、
複数の前記配力筋に受材を横架する横架作業と、
前記凹部を充填固化材で充填する充填作業と、を備えるあと施工アンカーの施工方法であって、
前記受材の端部には係止部が形成されており、
前記横架作業では、前記配力筋と前記凹部の底面との間に前記受材の端部を挿入して前記係止部を前記配力筋に係止させるとともに、前記アンカー本体に形成された拡幅部の表面に前記受材を添設することを特徴とする、あと施工アンカーの施工方法。
【請求項7】
前記横架作業の前に、前記アンカー本体を貫通させた板状部材を当該アンカー本体に固定して前記拡幅部を形成する拡幅部形成作業をさらに備えていることを特徴とする、請求項6に記載のあと施工アンカーの施工方法。
【請求項8】
前記横架作業では、前記配力筋に横架させた前記受材の端部に係止部材を固定することで前記係止部を形成するとともに当該係止部を前記配力筋に係止することを特徴とする、請求項6または請求項7に記載のあと施工アンカーの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あと施工アンカー構造およびあと施工アンカーの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
あと施工アンカーは、既設構造物に対して新設部材等を固定する場合に有効な技術である。例えば、既設構造物の補強工事では、あと施工アンカーを利用して補強部材を固定する場合がある。老朽化したコンクリートに対してあと施工アンカーを設置する場合等には、脱落防止効果を有するアンカー材を採用するのが望ましい。
脱落防止効果を有するアンカー材として、例えば、特許文献1には、端部にプレート状の定着部が形成された吊アンカーが開示されている。この吊アンカーでは、定着部をコンクリートの補強筋の背面側に配置している。この吊アンカーによれば、何らかの原因でコンクリートが破損した場合であっても、定着部が補強筋に係止されるため、吊アンカーの脱落を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−169017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補強筋に対してプレートを確実に係止させるためには、格子状に配筋された補強筋同士の空間よりもプレートの面積を大きくするか、プレートの長さを補強筋同士の間隔よりも十分に大きくするのが望ましい。ところが、鉄筋同士の間に形成された空間(格子の開口)よりも大きな面積を有したプレートを、あと施工により格子の背面に配設するのは困難である。また、長いプレートをあと施工により設置するためには、プレートの大きさに応じて広範囲にコンクリートを除去する必要があるが、広範囲にコンクリートを除去するには手間がかかるとともに、断面欠損による耐力低下が懸念される。
このような観点から、本発明は、コンクリート除去を最小限に抑えつつ、脱落防止効果を発現するあと施工アンカー構造とあと施工アンカーの施工方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明のあと施工アンカー構造は、鉄筋コンクリート部材を切削することにより形成された凹部と、前記凹部に設けられたアンカー本体と、前記凹部内に露出する複数の配力筋に横架された受材と、前記凹部に充填された充填固化材とを備えるものである。前記アンカー本体には、前記受材と前記凹部の底面との間に配置される拡幅部が形成されており、前記拡幅部は、前記受材への係止めが可能となるように、前記受材の幅よりも大きく張り出しており、前記受材の端部には、前記配力筋に係止された係止部が形成されている。なお、前記アンカー本体は、前記凹部の底面に植設されているのが望ましい。
かかるあと施工アンカー構造によれば、受材を介してアンカー本体が配力筋に係止されているため、何らかの原因によりアンカー本体が支持力を失った場合であっても、脱落が
防止される。また、凹部は、配力筋に横架する受材の形状に応じて形成するため、コンクリート除去を必要最小限に抑えることができる。
【0006】
前記受材が、前記アンカー本体を挟む一対の棒状部材であれば、配力筋に横架させる際に施工しやすい。棒状部材として鉄筋を使用すれば、比較的入手し易いため、材料費を抑えることができる。
また、前記拡幅部が、前記アンカー本体を貫通させた板状部材であれば、拡幅部を容易に形成することができる。
なお、前記鉄筋コンクリート部材は、例えば、トンネルの覆工であってもよい。
【0007】
また、本発明のあと施工アンカーの施工方法は、鉄筋コンクリート部材を切削して複数の配力筋が露出する凹部を形成する切削作業と、前記配力筋同士の間にアンカー本体を植設する植設作業と、複数の前記配力筋に受材を横架する横架作業と、前記凹部を充填固化材で充填する充填作業とを備えるものである。前記受材の端部には、係止部が形成されている。前記横架作業においては、前記配力筋と前記凹部の底面との間に前記受材の端部を挿入して前記係止部を前記配力筋に係止させるとともに、前記アンカー本体に形成された拡幅部の表面に前記受材を添設することを特徴とする。
かかるあと施工アンカーの施工方法によれば、受材の形状に応じた細幅の凹部を形成すればよい。こうすることで、コンクリートの除去範囲を必要最小限に抑えることができる。そのため、凹部を形成する際の手間を最小限に抑えることができる。また、受材を介してアンカー本体を配力筋に係止させるため、脱落防止効果を有するあと施工アンカーを形成することができる。
【0008】
本発明のあと施工アンカーの施工方法では、前記横架作業の前に拡幅部形成作業を行うことが望ましい。拡幅部形成作業は、前記アンカー本体を貫通させた板状部材を当該アンカー本体に固定して前記拡幅部を形成する作業である。
また、前記横架作業では、前記配力筋に横架させた前記受材の端部に係止部材を固定することで前記係止部を形成するとともに当該係止部を前記配力筋に係止するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のあと施工アンカー構造およびあと施工アンカーの施工方法によれば、コンクリート除去を最小限に抑えつつ、脱落防止効果を発現するあと施工アンカーを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るあと施工アンカー構造を適用した覆工の補強構造の概要を示す斜視図である。
図2】第一実施形態のあと施工アンカー構造を示す斜視図である。
図3】同じくあと施工アンカー構造の断面図である。
図4】あと施工アンカーの施工方法の各作業状況を示す斜視図であって、(a)は切削作業、(b)は植設作業である。
図5】あと施工アンカーの施工方法の各作業状況を示す斜視図であって、(a)は拡幅部形成作業、(b)は横架作業である。
図6図5(b)に続く横架作業を示す斜視図である。
図7】第二実施形態のあと施工アンカー構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
本実施形態では、図1に示すように、既設トンネルTの補強を目的として覆工2に補強部材Bを設ける場合において、当該補強部材Bを固定するためのあと施工アンカー構造1について説明する。本実施形態の覆工2は、複数の鉄筋コンクリート製のセグメント(鉄筋コンクリート部材)21を組み合わせることにより構成されている。セグメント21には、図2に示すように、トンネル周方向に沿って配筋された主筋22と、トンネル軸方向に沿って配筋された配力筋23とが格子状に配筋されている。なお、主筋22および配力筋23の鉄筋径や配筋ピッチ等は限定されるものではない。
本実施形態のあと施工アンカー構造1は、覆工2(セグメント21)の凹部3を利用して形成されており、アンカー本体4と、受材5と、充填固化材6とを備えている。
【0012】
凹部3は、セグメント21を内空側から切削することにより形成された溝32である。凹部3は、隣り合う主筋22同士の間において、主筋22と略平行となるように形成されている。凹部3の幅は、主筋22同士の隙間よりも小さい。また、図3に示すように、凹部3の長さはセグメント21に配筋された配力筋23同士の間隔よりも大きく、凹部3の深さは配力筋23の被りコンクリート厚さよりも大きい。そのため、凹部3には、一対の配力筋23,23が露出しているとともに、凹部3の底面31と配力筋23との間には隙間が形成されている。
【0013】
アンカー本体4は、セグメント21に植設された棒状部材である。アンカー本体4の基端側は、凹部3の底面31からセグメント21内に埋め込まれていて、アンカー本体4の先端側は、セグメント21の表面から突出している。さらに、アンカー本体4の中間部には、拡幅部41が形成されている。
本実施形態の拡幅部41は、アンカー本体4に固定された鋼板(板状部材)からなり、凹部3の底面31に添設されている。拡幅部41は、受材5への係止が可能となるように、アンカー本体4からトンネル軸方向に張り出すように形成されている。拡幅部41は、少なくとも受材5の幅(鉄筋棒51の外径)よりも大きく張り出している。なお、拡幅部41の構成は、受材5への係止が可能であれば限定されるものではなく、例えば、アンカー本体4の中間部に形成された突起やフランジ等であってもよい。
【0014】
受材5は、図2および図3に示すように、凹部3内に露出する一対の配力筋23,23に横架されている。本実施形態の受材5は、配力筋23同士の間隔よりも長い一対の鉄筋棒51,51(棒状部材)からなる。受材5は、配力筋23よりも凹部3の底面31側に配設されている。受材5の端部は、凹部3の底面31と配力筋23との間に挿入されている。受材5を構成する一対の鉄筋棒51,51は、アンカー本体4を挟むように配設されているとともに、拡幅部41の表面(トンネル内空側の面)に添設されている。本実施形態の鉄筋棒51の端部には、係止部52が形成されている。係止部52は、鉄筋棒51に固定された係止部材53からなる。
係止部材53は、プレート(鋼板)である。係止部材53には、鉄筋棒51の端部が挿通されている。本実施形態の係止部材53は、円形のプレートであるが、係止部材53の形状は限定されるものではなく、例えば矩形であってもよい。図3に示すように、受材5は、鉄筋棒51と係止部材53との角部(係止部52)において配力筋23に係止されている。
【0015】
充填固化材6は、凹部3に充填された固化材である。本実施形態の充填固化材6は、グラウトからなる。なお、充填固化材6を構成する材料は、凹部3に充填可能な流動性を有していて、固化後に所望の強度を発現する材料であればグラウトに限定されるものではなく、例えば、モルタルやコンクリート等であってもよい。
【0016】
以下、あと施工アンカーの施工方法について説明する。
本実施形態のあと施工アンカーの施工方法は、切削作業と、植設作業と、拡幅部形成作業と、横架作業と、充填作業とを備えている。
切削作業では、図4(a)に示すように、覆工2(セグメント21)を内空側から切削して溝32(凹部3)を形成する。溝32は、覆工2の主筋22と略平行で、かつ、溝32の端部にそれぞれ配力筋23が露出するように形成する。溝32は、主筋22を傷つけることがないように、セグメント21の設計図等のデータに基づいて、主筋22同士の間を斫ることにより形成する。本実施形態では、隣り合う主筋22,22の中間付近に溝32を形成する。なお、溝32の形成個所は限定されるものではなく、主筋22同士の中間である必要もない。溝32は、受材5を配設可能な形状となるように形成する。すなわち、溝32の深さは、図3に示すように、配力筋23の背面(地山側)に受材5を挿入することが可能な深さとする。また、溝32の長さ(トンネル周方向の長さ)は、配力筋23の配筋ピッチよりも長く、溝32の両端がそれぞれ配力筋23よりもトンネル周方向に突出する長さとする。配力筋23と溝32との間の空間は、受材5の端部に係止部材53を後付けするために必要な大きさとする。また、溝32の長手方向中央部の幅(トンネル軸方向の長さ)は、受材5の幅(本実施形態では、一対の鉄筋棒51,51の外径とアンカー本体4の外径の合計)よりも大きな幅とする。
【0017】
植設作業では、図4(b)に示すように、溝32の底面31にアンカー本体4を植設する。アンカー本体4の植設方法は限定されるものではない。例えば、アンカー本体4を打設することにより植設してもよいし、溝32の底面31を削孔することにより形成されたアンカー挿入孔にアンカー本体4を挿入するとともに固化材を注入することにより植設してもよい。アンカー本体4は、溝32内に露出する一対の配力筋23,23の間(溝32の中央部)に植設する。なお、アンカー本体4の配置は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。また、本実施形態では、溝32内に1本のアンカー本体4を設けるものとするが、溝32内に複数本のアンカー本体4を配設してもよい。
【0018】
拡幅部形成作業では、図5(a)に示すように、アンカー本体4に拡幅部41を形成する。本実施形態では、鋼板をアンカー本体4に固定することにより拡幅部41を形成する。本実施形態の鋼板は、矩形状を呈していて、中央部には貫通孔が形成されている。本実施形態では、鋼板の貫通孔にアンカー本体4を挿通させた状態で、鋼板とアンカー本体4とを固定する。なお、鋼板の形状は限定されるものではなく、例えば、円形であってもよい。また、拡幅部41を構成する材料は鋼板に限定されるものではなく、例えば、ナット状の部材でもよい。この場合には、アンカー本体4に雄ネジを形成し、アンカー本体4にナット状の部材を螺着する。また、拡幅部41の形成方法は限定されるものではなく、例えば、棒状または板状の部材をアンカー本体4に溶接してもよい。さらに、拡幅部41は、底面31に当接させてもよいし、底面31との間に隙間を有していてもよい。
【0019】
横架作業では、図5(b)に示すように、一対の配力筋23,23に受材5(一対の鉄筋棒51,51)を横架する。本実施形態では、配力筋23の底面31側に鉄筋棒51の端部を挿入させた後、横方向に当該鉄筋棒51をずらしてアンカー本体4に当接させることで鉄筋棒51を一対の配力筋23,23に横架する。このとき、鉄筋棒51の中間部は、拡幅部41と重なり合う。なお、一対の鉄筋棒51,51(受材5)は、拡幅部41の表面に当接していてもよいし、拡幅部41の表面との間に隙間を有していてもよい。また、鉄筋棒51の配設方法は限定されるものではない。
【0020】
鉄筋棒51の端部を配力筋23の底面31側に挿入したら、図6に示すように、鉄筋棒51の端部に係止部材53を固定する。係止部材53の中央部には貫通孔が形成されていて、当該貫通孔に鉄筋棒51の端部を貫通させるとともに、係止部材53を配力筋23に当接させた状態で係止部材53を固定する。係止部材53の固定方法は限定されるものではなく、例えば、鉄筋棒51の端部に予め雄ネジを形成するとともに、係止部材53の貫通孔の雌ネジを形成しておき、係止部材53を鉄筋棒51に螺着してもよい。または、係止部材53の貫通孔に鉄筋棒51の端部を貫通させた状態で溶接してもよい。
充填作業では、溝32(凹部3)を充填固化材6で充填する(図2参照)。
【0021】
以上、本実施形態のあと施工アンカー構造1によれば、受材5を介してアンカー本体4が配力筋23に係止されているため、何らかの原因によりアンカー本体4が支持力を失った場合であっても、脱落が防止される。
また、受材5は、一対の棒状部材(鉄筋棒51,51)により構成されているため、取り扱いやすく、配力筋23に横架させやすい。棒状部材として鉄筋棒51を使用しているため、比較的入手し易くかつ安価である。
あと施工アンカー構造1の形成個所は、主筋22同士の間で適宜設定することができるため、あと施工アンカーの設置個所の自由度が高い。
【0022】
溝32(凹部3)は、配力筋23に横架する受材5の形状に応じて形成するため、コンクリートの除去範囲を必要最小限に抑えることができる。そのため、施工時の手間を省略することができるとともに、覆工2の断面欠損を最小限に抑えることができる。また、溝32(凹部3)は、主筋22と平行に細く形成するため、断面欠損を小さくすることができる。したがって、覆工2に軸圧縮力が作用している場合であっても、安全に溝32(凹部3)を形成することができる。
拡幅部41は、アンカー本体4を挿通させることで簡易に形成することができる。また、拡幅部41として鋼板を使用しているため、比較的安価である。
【0023】
<第二実施形態>
第二実施形態のあと施工アンカー構造1は、受材5を構成する鉄筋棒51(棒状部材)の端部に係止部52が予め形成されている点で、係止部材53を後付けすることにより係止部52を形成する第一実施形態のあと施工アンカー構造1と異なっている。
本実施形態の鉄筋棒51は、図7に示すように、端部を折り曲げることによりフック状の係止部52が形成されている。なお、フック状の係止部52の形状(折り曲げる角度等)は限定されるものではない。
この他の第二実施形態のあと施工アンカー構造1の構成は、第一実施形態で示したあと施工アンカー構造1と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0024】
本実施形態のあと施工アンカー構造1によれば、係止部材53を固定する手間および係止部材53の材料費を省略することができる。
この他の第二実施形態のあと施工アンカー構造1の作用効果は、第一実施形態のあと施工アンカー構造1と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、既設トンネルTの覆工2に本発明のあと施工アンカー構造1を形成する場合について説明したが、あと施工アンカー構造1が形成される鉄筋コンクリート部材は、覆工2に限定されるものではない。
受材5は、必ずしも一対の棒状部材(一対の鉄筋棒51,51)により構成する必要はなく、配力筋23に横架が可能であれば、受材5を構成する材料は限定されない。受材5の長さを大きくすることで、3本以上の配力筋23に受材5を横架させることも可能である。このとき、凹部3は、3本以上の配力筋23が露出するように形成する。
植設作業では、拡幅部41が予め形成されたアンカー本体4を植設してもよい。なお、アンカー本体4に拡幅部41が予め形成されている場合には、拡幅部形成作業は省略する。なお、アンカー本体4は、必ずしも凹部3の底面31(躯体)に植設する必要はない。
【符号の説明】
【0026】
1 あと施工アンカー構造
2 覆工(鉄筋コンクリート部材)
21 セグメント
22 主筋
23 配力筋
3 凹部
31 底面
32 溝
4 アンカー本体
41 拡幅部
5 受材
51 鉄筋棒(棒状部材)
52 係止部
53 係止部材
6 充填固化材
B 補強部材
T 既設トンネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7