特許第6877299号(P6877299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6877299吹付け材料、およびそれを用いた吹付け工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877299
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】吹付け材料、およびそれを用いた吹付け工法
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/08 20060101AFI20210517BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20210517BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20210517BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20210517BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20210517BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20210517BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20210517BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C04B22/08 Z
   C04B22/14 B
   C04B24/02
   C04B24/12 A
   C04B24/32 A
   C04B24/26 E
   C04B28/02
   E21D11/10 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-166474(P2017-166474)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-43793(P2019-43793A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮口 克一
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−255387(JP,A)
【文献】 特開2007−051021(JP,A)
【文献】 特開2006−083005(JP,A)
【文献】 特開平05−097484(JP,A)
【文献】 特開2016−002655(JP,A)
【文献】 特開2006−016223(JP,A)
【文献】 特開2003−292355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00−32/02
C04B40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaO/Alモル比が0.5〜3.0、ブレーン比表面積が3000cm/g以上であるカルシウムアルミネート(A)とブレーン比表面積が2500cm/g以上である硫酸塩(B)からなり、前記(A)と前記(B)の合計100質量部中、前記(A)の含有量が20〜80質量部、前記(B)の含有量が80〜20質量部である無機組成物を50質量%以上含む粉体急結剤と、アルコール類、フェノール類、グリコール類、エーテル類、アミン類及びこれらの付加化合物や誘導体の1種又は2種以上を含み、かつ、水分量が5%以下の非水系液体からなるスラリーであって、前記スラリー100質量部中、粉体急結剤の含有量が40〜80質量部、非水系液体の含有量が60〜20質量部で、前記スラリーの20℃の粘度が10Pa・s以下であることを特徴とする吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料。
【請求項2】
非水系液体がポリアルキレングリコール又はその誘導体である請求項1に記載の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料。
【請求項3】
ポリアルキレングリコール又はその誘導体の平均分子量が100〜1000である請求項2に記載の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料。
【請求項4】
分散剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を、コンクリートに混和して吹きつけることを特徴とする吹付け工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界で使用される吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料および、それを用いた吹付け工法に関する。尚、本発明のコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを総称するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をコンクリートに配合した急結コンクリートを用いた吹付工法が行われている。この工法は、通常、掘削工事現場に設置した、セメント、骨材、及び水の計量混合プラントで吹付コンクリートを調製し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤とを混合し、急結性吹付コンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。吹付け方法としては、(1)カルシウムアルミネートを基材とする粉体状の急結剤を用いる方法(特許文献1〜4)、(2)硫酸アルミニウムを主成分とする液状急結剤を用いる方法(特許文献5〜7)、(3)前記粉体状の急結剤を水でスラリー化して用いる方法(特許文献8)、(4)液体急結剤で上記粉体状の急結剤をスラリー化して用いる方法(特許文献9〜11)が知られている。
【0003】
しかしながら、(1)の方法は、優れた急結力を付与できるが粉塵の発生量が多く、作業環境の改善が求められる場合がある。(2)の方法は、液状急結剤のみをコンクリートに合流混合するものであり、液体ポンプと液体急結剤を貯蔵するためのタンクを吹付けシステムに搭載するだけで済むため、システムが簡素化される。しかし、硫酸アルミニウムを主成分とする液状急結剤は、急結力が粉体状の急結剤に比べて弱く、地山からの湧水がある場合は付着性が悪くなり、はく落やリバウンドの発生が多くなるという課題がある。また、(3)および(4)の方法は、粉体状の急結剤をコンクリートと合流混合する直前で、水あるいは液体急結剤を添加してスラリー化させて混合するので、粉塵の発生量が少なく作業環境の改善に効果を発揮する技術である。しかし、液体を圧送するポンプや液体の貯蔵タンクおよび粉体状の急結剤を圧送するための添加設備を吹付け機に搭載する必要があり、システムが複雑化すること、さらに、施工中に粉体急結剤の自硬性によりスラリー化するためのノズルが固結しやすいなどの課題があり、改善が求められていた。また、液体急結剤を使用した吹付けコンクリートは、初期強度は向上するものの長期強度は急結剤を添加しないベースコンクリートよりも低下する傾向にあり、収縮も大きく、乾燥の影響を受けやすい箇所ではひび割れが発生し易かった。
【0004】
また、(5)二価の低級アルコール及び二価の低級アルコールに不活性なBET比表面積10m2/ g以上の無機微粉末を含有してなるスラリー、セメント及び水を含有するスラリー状吹付材を用いる工法も知られている(特許文献12)。しかし、BET比表面積が10m2/g以上の粒径の細かい粉末を使用するため、安定したスラリーのポンプ圧送性を得ることが難しいという課題があった。さらに、(6)カルシウムアルミネートに液状油を含有する液状急結剤の技術が知られている(特許文献13)。しかし、不飽和脂肪酸を含む液状油を使用した場合、初期強度は得られるものの、その後の強度増進が見られず、コンクリート剥離の危険性が高まるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−051351号公報
【特許文献2】特公昭56−27457号公報
【特許文献3】特開昭61−026538号公報
【特許文献4】特開昭63−210050号公報
【特許文献5】特開2005−60201号公報
【特許文献6】特開2005−89276号公報
【特許文献7】特開2008−30999号公報
【特許文献8】特開2001−55897号公報
【特許文献9】特開平05−139804号公報
【特許文献10】特開平05−097491号公報
【特許文献11】特開2007−277051号公報
【特許文献12】特開2006−083005号公報
【特許文献13】特開2006−151760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に述べた従来の吹付けコンクリート用吹付け材料は、初期の強度発現性に優れるものは粉塵発生量が多く、一方、粉塵発生量が少ないものは初期の強度発現性に劣り、両者の性能を併せ持つものはなかった。
本発明は、吹付け後の初期強度発現性が良好で、かつ、粉塵発生量が少なく、安全衛生的にも優れた吹付けコンクリート用吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決すべく検討を行なったところ、予め非水溶媒でカルシウムアルミネート系粉体急結材をスラリー化することにより、従来の液体急結剤と同様に簡素化されたシステムを使用でき、ポンプ圧送性に優れるとともに、さらに、粉塵発生抑制及びリバウンド抑制効果が得られ、かつ、カルシウムアルミネート系粉体急結材の特徴である優れた急結力が得られることを見出した。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0008】
[1] CaO/Alモル比が0.5〜3.0、ブレーン比表面積が3000cm/g以上であるカルシウムアルミネート(A)とブレーン比表面積が2500cm/g以上である硫酸塩(B)からなり、前記(A)と前記(B)の合計100質量部中、前記(A)の含有量が20〜80質量部、前記(B)の含有量が80〜20質量部である無機組成物を50質量%以上含む粉体急結剤と、アルコール類、フェノール類、グリコール類、エーテル類、アミン類及びこれらの付加化合物や誘導体の1種又は2種以上を含み、かつ、水分量が5%以下の非水系液体からなるスラリーであって、前記スラリー100質量部中、粉体急結剤の含有量が40〜80質量部、非水系液体の含有量が60〜20質量部で、前記スラリーの20℃の粘度が10Pa・s以下であることを特徴とする吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料。
[2] 非水系液体がポリアルキレングリコール又はその誘導体である[1]に記載の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料。
[3] ポリアルキレングリコール又はその誘導体の平均分子量が100〜1000である[2]に記載の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料。
[4] 分散剤を含有することを特徴とする請求項[1]〜[3]のいずれかに記載の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を、コンクリートに混和して吹きつけることを特徴とする吹付け工法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を使用すると、従来の液体急結剤と同様に簡素化されたシステムを使用でき、ポンプ圧送性に優れる。さらに、吹付けコンクリートの粉塵発生抑制効果、並びに、リバウンド抑制効果が良好で、かつ、カルシウムアルミネート系粉体急結材の特徴である優れた急結力(短時間強度発現性)が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料、それを用いた吹付け工法について詳細に説明する。なお、「部」、「%」は特に規定しない限り質量基準とする。
【0011】
本発明のカルシウムアルミネートとは、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaOとAlとを主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称であり、その一部に、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等が置換した、あるいは、これらが固溶した物質である。鉱物形態としては、CaO・Al(CA)、12CaO・7Al(C12)、3CaO・Al(CA)等が挙げられる。カルシウムアルミネートの粒度は、急結性や初期強度発現性の面で、ブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)3,000cm/g以上が好ましく、5,000cm/g以上がより好ましい。3,000cm/g未満では、急結性や初期強度発現性が低下する場合がある。本発明で使用するカルシウムアルミネートのCaO/Alモル比は、0.5〜3.0の範囲であり、1.5〜2.5が好ましい。当該モル比の範囲内であれば、結晶質、非晶質などの形態に関係なく使用可能である。
【0012】
本発明の硫酸塩は、強度発現性を向上するために使用する。硫酸塩としては、硫酸ナトリウムや硫酸カリウム等のアルカリ金属硫酸塩、硫酸マグネシウムや石膏等のアルカリ土類金属硫酸塩、並びに、硫酸アルミニウム等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用できる。これらの中で、スラリー化や強度発現性の点で、石膏が好ましい。本発明で使用する石膏としては、無水石膏、半水石膏及び二水石膏が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用できる。中でも、強度発現性の点で、無水石膏が好ましい。石膏の比表面積は、強度発現性の点で、ブレーン値で2500cm/g以上が好ましく、4000cm/g以上がより好ましい。2500cm/g未満だと強度発現性が低下する場合がある。
カルシウムアルミネートと硫酸塩からなる無機組成物は、無機組成物100部中、カルシウムアルミネートが20〜80部が好ましく、30〜70部がより好ましく、40〜60部が最も好ましい。カルシウムアルミネートが20部未満では、初期凝結が遅れ、地山に対する付着性が小さくなる場合があり、一方、80部を超えると長期強度発現性が低下する場合がある。
本発明の粉体急結剤は、前記無機組成物を50質量%以上含むことが好ましい。50質量%未満では、急結力が低下する場合がある。
【0013】
本発明の非水系液体としては、アルコール類、フェノール類、グリコール類、エーテル類、アミン類及びこれらの付加化合物や誘導体の1種又は2種以上が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族飽和アルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等の脂肪族不飽和アルコール、シクロペンタノールやシクロヘキサノール等の脂環式アルコール、ベンジルアルコールやシンナミルアルコール等の芳香族アルコール、フルフリルアルコール等の複素環式アルコール等が挙げられる。
【0014】
フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カルバクロール、チモール、ナフトール等の一価フェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の二価フェノール、ピロガロールやフロログルシン等の三価フェノール等が挙げられる。
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。中でも、ポリアルキレングリコール又はその誘導体の使用が好ましく、平均分子量が100〜1000であるポリアルキレングリコール又はその誘導体の使用がより好ましい。
エーテル類としては、例えば、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、アミルエーテル、イソアミルエーテル等の脂肪族単一エーテル、メチルn-アミルエーテル、エチルn-アミルエーテル、エチルイソアミルエーテル等の脂肪族混成エーテル、ビニルエーテル等の脂肪族不飽和エーテル、アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、ベンジルエーテル、ナフチルエーテル等の芳香族エーテル、ジオキサン等の環式エーテル等が挙げられる。
【0015】
アミン類としては、例えば、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン等の脂肪族第一アミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン等の脂肪族第二アミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン等の脂肪族第三アミン、シクロペンチルアミンやシクロヘキシルアミン等の脂環式アミン、アニリン、メチルアニリン、エチルアニリン、トルイジン、ベンジルアミン等の芳香族アミン等が挙げられる。
【0016】
本発明に係る非水系液体の水分量が5%を超えると、優れた急結性能が得られない場合がある。これは、粉体急結剤と非水系液体を混練した際に、非水系液体に含まれる水分により、粉体急結剤が水和反応を起こすためである。非水系液体中の水分量は5%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0017】
本発明におけるスラリーは粉体急結剤と非水系液体からなり、粉体急結剤と非水系液体の合計100部中、粉体急結剤は40〜80部が好ましく、55〜75部がより好ましい。一方、非水系液体は20〜60部が好ましく、25〜45部がより好ましい。非水系液体が60部を超えると、材料分離を生じる場合がある。一方、非水系液体が20部未満であると、スラリーの粘性が高くなり取り扱いが困難になる場合がある。
【0018】
粉体急結剤と非水系液体からなるスラリーの20℃の粘度が10Pa・sを超えると、一般的な液体ポンプでは均一な圧送が難しくなり、品質の均一な吹付けコンクリートが得られない場合がある。液体ポンプでの時間的に均一な圧送のため、スラリーの粘度は2Pa・s以下がより好ましい。
【0019】
本発明の分散剤は、吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料に分離抵抗性を付与することが必要な場合、適宜使用することが可能である。非水系液体に適用できる分散剤として公知のあらゆるものが使用可能であるが、代表的な分散剤として、ポリカルボン酸系、ポリリン酸系、ナフタレンスルホン酸系、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられる。
さらに、本発明のスラリー状吹付け材料を用いた吹付けコンクリートは、砂や砂利等の骨材の他、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン及び凝結調整剤、ベントナイト等の粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイト等のアニオン交換体等のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0020】
本発明では、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、予めその一部、或いは全部を混合しておいても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ及びナウタミキサ等が挙げられる。
【0021】
本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料の使用量は、固形分換算でセメント100部に対して2〜15部が好ましい。使用量が2部未満では優れた凝結性状が発揮されない場合があり、一方、15部を超えると長期強度発現性が悪くなる場合がある。
本発明の吹付けコンクリートを作製する場合、水分量はセメント100部に対して30〜75部とするのが好ましい。30部未満では水分が不足して混練が十分にできない場合があり、一方、75部を超えると強度発現性を損なう場合がある。なお、配合検討に際しては、骨材、各種添加剤及び本発明のスラリー状吹付け材料に含まれる水分量も考慮する。
【0022】
本発明の吹付けコンクリートで使用するセメントは特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、および低熱等の各種ポルトランドセメントの他に、ポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ、および石灰石微粉末等を混合した各種混合セメントのいずれも使用可能であり、入手の容易さからポルトランドセメントが好ましく、普通ポルトランドセメントが最も好ましい。
【0023】
本発明の吹付けコンクリートで使用する骨材は、特に限定されるものではないが、天然に産出する骨材、人工的に製造した骨材で粒度調整されたものが使用可能である。
【0024】
本発明に関わる吹付け工法としては、一般的に行われている湿式の吹付け工法及び乾式の吹付け工法が使用可能である。湿式工法としては、コンクリートに本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を混合する方法が挙げられ、乾式工法としては、セメントと骨材に、添加剤、水及び本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を混合する方法が挙げられる。
本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料をコンクリートに混合し、吹付けコンクリートを作製する方法としては、本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料をシャワー状に添加できるシャワーリング管やY字管等を用いて、吹付け直前に混合することが好ましい。具体的には、圧送されてきたコンクリートに本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を添加し、吹付けコンクリートが吐出されるまでの時間を10秒以内にすることが好ましく、2秒以内がより好ましい。本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料をコンクリートに添加する際に、あらかじめ圧縮空気でミスト状にして添加してもよい。
【0025】
本発明の吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を添加した吹付けコンクリートは、トンネル建設を代表とする地下構造物の建設時の支保部材として利用できる他、地山の法面に直接又はフレーム骨格を配置した個所に吹き付ける法面の安定化工法、各種コンクリート構造物の補修にも利用できる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を、実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示して、さらに詳細に説明する。
【0027】
「実験例1」
カルシウムアルミネートと硫酸塩からなる無機組成物100部中カルシウムアルミネートを50部、硫酸塩Aを50部とし、粉体急結剤とした。粉体急結剤と非水系液体Aを質量比5/5で混和してスラリー化し、吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を作製した。スラリーの粘度は全て1Pa・s以下であった。
作製した吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を用いて、プロクター貫入抵抗値、粉塵量及びポンプ圧送性を評価した。評価は環境温度20℃で実施した。結果を表1に示す。
【0028】
〈使用材料〉
カルシウムアルミネート:CaO/Alモル比が特定の値になるように、CaO原料とAl原料を混合、粉砕し、電気炉で溶融し、急冷したもの。
カルシウムアルミネートA:CaO/Alモル比2.3、非晶質、ブレーン値6,500cm/g
カルシウムアルミネートB:CaO/Alモル比1.7、非晶質、ブレーン値6,500cm/g
カルシウムアルミネートC:CaO/Alモル比1.3、非晶質、ブレーン値6,500cm/g
カルシウムアルミネートD:CaO/Alモル比0.5、非晶質、ブレーン値6,500cm/g
カルシウムアルミネートE:CaO/Alモル比3.0、非晶質、ブレーン値6,500cm/g
カルシウムアルミネートF:CaO/Alモル比0.3、非晶質、ブレーン値6,500cm/g
カルシウムアルミネートG:CaO/Alモル比3.5、非晶質、ブレーン値6,500cm/g
硫酸塩A:天然無水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積4,000cm/g
非水系液体A:ブチルアルコール、試薬1級(和光純薬工業社製)、水分量1%以下
液体急結剤: BASFジャパン株式会社製、商品名「マスターロックSA161」
粉体急結剤:デンカ株式会社製、商品名「ナトミックTYPE-5」
セメント:普通ポルトランドセメント、デンカ株式会社製、密度3.15g/cm
細骨材:新潟県姫川産川砂、密度2.62g/cm
粗骨材:新潟県姫川産砕砂、最大粒径15mm、密度2.65g/cm
減水剤:ポリカルボン酸高性能減水剤、市販品
水:水道水
【0029】
〈評価方法〉
プロクター貫入抵抗(凝結性状):ASTMC 403「貫入抵抗によるコンクリートの凝結時間試験方法」に準拠。モルタルおよび吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を混合し、1分、3分、10分後の凝結性状を評価した。
C/S(セメント/砂比)=1/2.5、W/C(水/セメント比)=45%のモルタルを、減水剤を用いてSL(スランプ値)=18cmに調整し、モルタル100部に対して吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を5部添加した。
粉じん量:単位セメント量455kg/m,W/C=45%,及びs/a=70%のコンクリートを調製し、コンクリートポンプにより、圧送速度10m/h、圧送圧力0.4MPaで空気圧送した。吹付けノズルの手前に設けた混合管に、吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を、コンクリート中のセメント100部に対して10部となるように添加し、模擬トンネルに吹き付けてから5分後に、吹付け場所より5mの位置で柴田科学社製デジタル粉じん計P−5Lを用いて粉塵量の測定を行った。
ポンプ圧送性 :吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を、20℃で72時間静置後、内径2cm、長さ5mのホース内に吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を満たし、圧送圧力0.5MPaにて圧送がスムーズにできたものを○、圧送のため圧送圧力が0.8MPa以上に上がったものを△、圧送のため圧送圧力が1.0MPa以上に上がったものを×とした。
スラリー粘度:粉体急結剤と非水系液体からなるスラリー粘度は、ブルックフィールド型(B型)粘度計で測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
CaO/Alモル比が0.5〜3.0のカルシウムアルミネートを用いた吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0032】
「実験例2」
カルシウムアルミネートI〜Kを用いたこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
〈使用材料〉
カルシウムアルミネートI:CaO/Alモル比1.7、非晶質、ブレーン値2,500cm/g
カルシウムアルミネートJ:CaO/Alモル比1.7、非晶質、ブレーン値3,000cm/g
カルシウムアルミネートK:CaO/Alモル比1.7、非晶質、ブレーン値9,500cm/g
【0033】
【表2】
【0034】
ブレーン値が3000cm2/g以上のカルシウムアルミネートを用いた吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0035】
「実験例3」
カルシウムアルミネートBと硫酸塩B〜Fを用いたこと以外は、実験例1と同様に試験を行った。結果を表3に示す。
〈使用材料〉
硫酸塩B:天然無水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積2,000cm/g
硫酸塩C:天然無水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積2,500cm/g
硫酸塩D:天然無水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積5,000cm/g
硫酸塩E:半水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積4,000cm/g
硫酸塩F:二水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積4,000cm/g
【0036】
【表3】
【0037】
ブレーン値が2500cm2/g以上の硫酸塩を用いた吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0038】
「実験例4」
硫酸塩AとカルシウムアルミネートBからなる無機組成物100部中、硫酸塩とカルシウムアルミネートBとの比率を変えたこと以外は、実験例1と同様に試験を行った。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
硫酸塩とカルシウムアルミネートからなる無機組成物100部中、カルシウムアルミネートの含有量を20〜80部とした吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0041】
「実験例5」
硫酸塩とカルシウムアルミネートからなる無機組成物100部中、カルシウムアルミネートの含有量を50部とした。無機組成物と消石灰を組み合わせて粉体急結剤とし、粉体急結剤100部中の無機組成物の含有量を種々変えたこと以外は、実験例1と同様に試験を行った。結果を表5に示す。
〈使用材料〉
消石灰:特号消石灰、600μmふるい全通
【0042】
【表5】
【0043】
硫酸塩とカルシウムアルミネートからなる無機組成物100部中、カルシウムアルミネートの含有量を50部とした無機組成物、並びに、消石灰から構成される粉体急結剤において、粉体急結剤100部中、無機組成物の含有量を50部以上とした吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0044】
「実験例6」
非水系液体の種類を表6に示すように変えたこと以外は、実験例1と同様に行った。なお,スラリーの粘度はすべて1Pa・s以下であった。結果を表6に示す。
<使用材料>
非水系液体B:フェノール類、試薬1級(和光純薬工業社製)のフェノール、水分量1%以下
非水系液体C:グリコール類、試薬1級(和光純薬工業社製)のエチレングリコール、水分量1%以下
非水系液体D:エーテル類、試薬1級(和光純薬工業社製)のブチルエーテル、水分量1%以下
非水系液体E:アミン類、試薬1級(和光純薬工業社製)のアニリン、水分量1%以下
非水系液体F:脂肪酸類、試薬1級(和光純薬工業社製)のオレイン酸、水分量1%以下
液体G:蒸留水
【0045】
【表6】
【0046】
非水系液体A〜Eを用いた吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0047】
「実験例7」
非水系液体Aを用い、粉体急結剤との混合比率を種々変えて粘度を変化させたこと以外は,実験例1と同様に行った。結果を表7に示す。
【0048】
【表7】
【0049】
スラリー100部中非水系液体の含有量を20〜60部とした吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量及びポンプ圧送性となっている。
【0050】
「実験例8」
非水系液体H〜Kを用いたこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表8に示す。
<使用材料>
非水系液体H:ポリエチレングリコール、平均分子量100、水分量1%以下
非水系液体I:ポリエチレングリコール、平均分子量200、水分量1%以下
非水系液体J:ポリエチレングリコール、平均分子量400、水分量1%以下
非水系液体K:ポリエチレングリコール、平均分子量600、水分量1%以下
非水系液体L:非水系液体Hに、ポリカルボン酸アルキルアミン塩系の分散剤「製品名:ノプコスバース」(サンノプコ株式会社製)を吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料100部に対して0.5部混和したもの。
【0051】
【表8】
【0052】
非水系液体をポリアルキレングリコールとして、平均分子量を100〜1000とした吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量及びポンプ圧送性となっている。