【実施例】
【0026】
以下、本発明を、実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示して、さらに詳細に説明する。
【0027】
「実験例1」
カルシウムアルミネートと硫酸塩からなる無機組成物100部中カルシウムアルミネートを50部、硫酸塩Aを50部とし、粉体急結剤とした。粉体急結剤と非水系液体Aを質量比5/5で混和してスラリー化し、吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を作製した。スラリーの粘度は全て1Pa・s以下であった。
作製した吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を用いて、プロクター貫入抵抗値、粉塵量及びポンプ圧送性を評価した。評価は環境温度20℃で実施した。結果を表1に示す。
【0028】
〈使用材料〉
カルシウムアルミネート:CaO/Al
2O
3モル比が特定の値になるように、CaO原料とAl
2O
3原料を混合、粉砕し、電気炉で溶融し、急冷したもの。
カルシウムアルミネートA:CaO/Al
2O
3モル比2.3、非晶質、ブレーン値6,500cm
2/g
カルシウムアルミネートB:CaO/Al
2O
3モル比1.7、非晶質、ブレーン値6,500cm
2/g
カルシウムアルミネートC:CaO/Al
2O
3モル比1.3、非晶質、ブレーン値6,500cm
2/g
カルシウムアルミネートD:CaO/Al
2O
3モル比0.5、非晶質、ブレーン値6,500cm
2/g
カルシウムアルミネートE:CaO/Al
2O
3モル比3.0、非晶質、ブレーン値6,500cm
2/g
カルシウムアルミネートF:CaO/Al
2O
3モル比0.3、非晶質、ブレーン値6,500cm
2/g
カルシウムアルミネートG:CaO/Al
2O
3モル比3.5、非晶質、ブレーン値6,500cm
2/g
硫酸塩A:天然無水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積4,000cm
2/g
非水系液体A:ブチルアルコール、試薬1級(和光純薬工業社製)、水分量1%以下
液体急結剤: BASFジャパン株式会社製、商品名「マスターロックSA161」
粉体急結剤:デンカ株式会社製、商品名「ナトミックTYPE-5」
セメント:普通ポルトランドセメント、デンカ株式会社製、密度3.15g/cm
3
細骨材:新潟県姫川産川砂、密度2.62g/cm
3
粗骨材:新潟県姫川産砕砂、最大粒径15mm、密度2.65g/cm
3
減水剤:ポリカルボン酸高性能減水剤、市販品
水:水道水
【0029】
〈評価方法〉
プロクター貫入抵抗(凝結性状):ASTMC 403「貫入抵抗によるコンクリートの凝結時間試験方法」に準拠。モルタルおよび吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を混合し、1分、3分、10分後の凝結性状を評価した。
C/S(セメント/砂比)=1/2.5、W/C(水/セメント比)=45%のモルタルを、減水剤を用いてSL(スランプ値)=18cmに調整し、モルタル100部に対して吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を5部添加した。
粉じん量:単位セメント量455kg/m
3,W/C=45%,及びs/a=70%のコンクリートを調製し、コンクリートポンプにより、圧送速度10m
3/h、圧送圧力0.4MPaで空気圧送した。吹付けノズルの手前に設けた混合管に、吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を、コンクリート中のセメント100部に対して10部となるように添加し、模擬トンネルに吹き付けてから5分後に、吹付け場所より5mの位置で柴田科学社製デジタル粉じん計P−5Lを用いて粉塵量の測定を行った。
ポンプ圧送性 :吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を、20℃で72時間静置後、内径2cm、長さ5mのホース内に吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料を満たし、圧送圧力0.5MPaにて圧送がスムーズにできたものを○、圧送のため圧送圧力が0.8MPa以上に上がったものを△、圧送のため圧送圧力が1.0MPa以上に上がったものを×とした。
スラリー粘度:粉体急結剤と非水系液体からなるスラリー粘度は、ブルックフィールド型(B型)粘度計で測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
CaO/Al
2O
3モル比が0.5〜3.0のカルシウムアルミネートを用いた吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0032】
「実験例2」
カルシウムアルミネートI〜Kを用いたこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
〈使用材料〉
カルシウムアルミネートI:CaO/Al
2O
3モル比1.7、非晶質、ブレーン値2,500cm
2/g
カルシウムアルミネートJ:CaO/Al
2O
3モル比1.7、非晶質、ブレーン値3,000cm
2/g
カルシウムアルミネートK:CaO/Al
2O
3モル比1.7、非晶質、ブレーン値9,500cm
2/g
【0033】
【表2】
【0034】
ブレーン値が3000cm
2/g以上のカルシウムアルミネートを用いた吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0035】
「実験例3」
カルシウムアルミネートBと硫酸塩B〜Fを用いたこと以外は、実験例1と同様に試験を行った。結果を表3に示す。
〈使用材料〉
硫酸塩B:天然無水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積2,000cm
2/g
硫酸塩C:天然無水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積2,500cm
2/g
硫酸塩D:天然無水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積5,000cm
2/g
硫酸塩E:半水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積4,000cm
2/g
硫酸塩F:二水石膏の粉砕物,ブレーン比表面積4,000cm
2/g
【0036】
【表3】
【0037】
ブレーン値が2500cm
2/g以上の硫酸塩を用いた吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0038】
「実験例4」
硫酸塩AとカルシウムアルミネートBからなる無機組成物100部中、硫酸塩とカルシウムアルミネートBとの比率を変えたこと以外は、実験例1と同様に試験を行った。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
硫酸塩とカルシウムアルミネートからなる無機組成物100部中、カルシウムアルミネートの含有量を20〜80部とした吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0041】
「実験例5」
硫酸塩とカルシウムアルミネートからなる無機組成物100部中、カルシウムアルミネートの含有量を50部とした。無機組成物と消石灰を組み合わせて粉体急結剤とし、粉体急結剤100部中の無機組成物の含有量を種々変えたこと以外は、実験例1と同様に試験を行った。結果を表5に示す。
〈使用材料〉
消石灰:特号消石灰、600μmふるい全通
【0042】
【表5】
【0043】
硫酸塩とカルシウムアルミネートからなる無機組成物100部中、カルシウムアルミネートの含有量を50部とした無機組成物、並びに、消石灰から構成される粉体急結剤において、粉体急結剤100部中、無機組成物の含有量を50部以上とした吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0044】
「実験例6」
非水系液体の種類を表6に示すように変えたこと以外は、実験例1と同様に行った。なお,スラリーの粘度はすべて1Pa・s以下であった。結果を表6に示す。
<使用材料>
非水系液体B:フェノール類、試薬1級(和光純薬工業社製)のフェノール、水分量1%以下
非水系液体C:グリコール類、試薬1級(和光純薬工業社製)のエチレングリコール、水分量1%以下
非水系液体D:エーテル類、試薬1級(和光純薬工業社製)のブチルエーテル、水分量1%以下
非水系液体E:アミン類、試薬1級(和光純薬工業社製)のアニリン、水分量1%以下
非水系液体F:脂肪酸類、試薬1級(和光純薬工業社製)のオレイン酸、水分量1%以下
液体G:蒸留水
【0045】
【表6】
【0046】
非水系液体A〜Eを用いた吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量となっている。
【0047】
「実験例7」
非水系液体Aを用い、粉体急結剤との混合比率を種々変えて粘度を変化させたこと以外は,実験例1と同様に行った。結果を表7に示す。
【0048】
【表7】
【0049】
スラリー100部中非水系液体の含有量を20〜60部とした吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量及びポンプ圧送性となっている。
【0050】
「実験例8」
非水系液体H〜Kを用いたこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表8に示す。
<使用材料>
非水系液体H:ポリエチレングリコール、平均分子量100、水分量1%以下
非水系液体I:ポリエチレングリコール、平均分子量200、水分量1%以下
非水系液体J:ポリエチレングリコール、平均分子量400、水分量1%以下
非水系液体K:ポリエチレングリコール、平均分子量600、水分量1%以下
非水系液体L:非水系液体Hに、ポリカルボン酸アルキルアミン塩系の分散剤「製品名:ノプコスバース」(サンノプコ株式会社製)を吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料100部に対して0.5部混和したもの。
【0051】
【表8】
【0052】
非水系液体をポリアルキレングリコールとして、平均分子量を100〜1000とした吹付けコンクリート用スラリー状吹付け材料は、粉体急結剤の7割以上の短時間強度発現性を示し、液体急結剤と同等の粉塵量及びポンプ圧送性となっている。