(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被ばく線量算出部で前記被ばく線量の総和を算出するとき、前記評価エリアの面積を変えながら前記任意の領域内を網羅的に移動させるスキャン部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の被ばく線量分布計測装置。
前記測位部で計測された移動軌跡に沿って前記評価エリアを一定間隔で移動させる処理を、前記評価エリアの面積を変えながら繰り返す評価エリア移動部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の被ばく線量分布計測装置。
前記被ばく線量算出工程で前記被ばく線量の総和を算出するとき、スキャン部が前記評価エリアの面積を変えながら前記任意の領域内を網羅的に移動させるスキャン工程をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の被ばく線量分布計測方法。
前記測位工程で計測された移動軌跡に沿って前記評価エリアを一定間隔で移動させる処理を、評価エリア移動部が前記評価エリアの面積を変えながら繰り返す評価エリア移動工程をさらに有することを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一項に記載の被ばく線量分布計測方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願の被ばく線量分布計測装置を適用した本実施形態に係る被ばく線量分布可視化装置及び方法について、図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
(構 成)
図1は本願の被ばく線量分布計測装置を適用した第1実施形態の被ばく線量分布可視化装置を示すブロック図である。
図2は第1実施形態の作用を示すフローチャートである。
図3は第1実施形態において相対位置と線量率の計測値とから被ばく線量を算出する方法を示す説明図である。
【0017】
なお、以下の各実施形態の被ばく線量分布可視化装置は、本願の被ばく線量分布計測装置を適用している。また、以下の各実施形態では、任意の領域として、例えば原子力プラント、再処理施設等の高線量の作業場所等のように被ばく線量マップが必要な監視対象領域を適用している。さらに、以下の各実施形態では、上記監視対象領域内において被ばく線量の総和を算出するための任意のエリアを評価エリアとする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の被ばく線量分布可視化装置1は、測位部2と、線量率計測部3と、情報処理部4と、を備える。
【0019】
測位部2は、原子力プラント、再処理施設等の高線量の作業場所等のように被ばく線量マップが必要な任意の領域(監視対象領域)内において、平面上の位置をある基準点に対する相対位置座標として計測する。測位部2は、一般的に慣性センサを用いたデッドレコニング(Dead Reckoning:自律航法技術)で実現される。なお、本実施形態では、これに限定されることなく、例えば複数の無線基地局からの距離情報を用いた3角測量法でも実現可能である。
【0020】
線量率計測部3は、被ばく線量マップが必要な任意の領域内の空間線量率を周期的に計測する。線量率計測部3は、計測原理に限定されるものではないものの、例えば時定数が小さいものがより好適である。そのため、シンチレーション検出器、ガイガー=ミュラー計数管等が用いられることが望ましい。ただし、線量率計測部3は、使用する環境において想定される空間線量率が計測レンジに含まれることを考慮して使用する必要がある。
【0021】
情報処理部4は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記録媒体としてのROM(Read Only Memory)、I/O(Input / Output)等を備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成された制御装置である。
【0022】
このうち、上記ROMは、電源を切断しても記憶内容を保持する必要のあるデータやプログラムを記憶する。上記RAMは、データを一時的に格納する。上記CPUは、上記ROMにインストールされているプログラムを実行することで各機能を実現する。記録媒体には、上記ROM以外に例えば、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な電子媒体を含む。
【0023】
情報処理部4は、近年では、タブレット型や、スティック型等、持ち運びが容易な形状のコンピュータが実用化されており、これらのいずれかを用いて構成することも可能である。
【0024】
情報処理部4は、機能的に測位履歴記録部5と、線量率履歴記録部6と、同期部7と、被ばく線量算出部8と、被ばく線量密度算出部9と、高被ばく線量特定部10と、地図表示部11と、を備える。
【0025】
測位履歴記録部5及び線量率履歴記録部6は、一般的に不揮発性メモリで構成される記憶部を有し、測位部2及び線量率計測部3からそれぞれ出力された計測値のログ(時系列データ)を記録する。なお、測位履歴記録部5及び線量率履歴記録部6は、測位履歴データと線量率履歴データが記録されるものであれば、ハードウェアは、内蔵型や外付け型等の形態には特に限定されない。
【0026】
同期部7は、測位履歴記録部5に記録された測位履歴データと、線量率履歴記録部6に記録された線量率履歴データとから、同一のタイミングで計測された計測値のデータの組み合わせを特定する。
【0027】
被ばく線量算出部8は、上記被ばく線量マップに包含される任意の領域内において、任意のエリア内で計測された相対位置と空間線量率を示すデータの組み合わせを用い、相対位置が計測された計測時間間隔(サンプリング周期)を空間線量率に乗じた値を被ばく線量として算出し、これらの被ばく線量の総和(合計値)を算出する。
【0028】
被ばく線量密度算出部9は、被ばく線量算出部8で算出された任意のエリア内の被ばく線量の総和を、そのエリアの面積で除すことで、単位面積当たりの被ばく線量、すなわち被ばく線量密度を算出する。
【0029】
高被ばく線量特定部10は、被ばく線量密度算出部9で算出された単位面積当たりの被ばく線量があらかじめ設定した閾値を超過することをもって高被ばく線量であると判定する。すなわち、高被ばく線量特定部10は、被ばく線量密度があらかじめ設定した閾値を超過した場合に高被ばく線量であると特定する。ここで、上記閾値は、例えば被ばく線量がこの値以上になると被計測者が危険に晒されることとなる前段階の値に設定されている。
【0030】
地図表示部11は、例えばパソコンの画面上において、作業場所等の任意の領域を表す地図上に、被ばく線量の総和を算出した任意のエリアを評価エリアとし、その被ばく線量密度の評価結果を重畳して表示し、可視化する。
【0031】
すなわち、地図表示部11は、任意の領域を表す地図上に、被ばく線量の総和を算出した任意のエリアを評価エリアとし、その平面形状及び位置を重畳して表示するとともに、その被ばく線量密度の評価結果を重畳して表示し、可視化する。地図表示部11は、ハードウェアとして上記のようにパソコンの画面に代表される表示デバイスが用いられ、プリンタのような印刷手段を具備する場合もある。
【0032】
(作 用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0033】
図2に示すように、まず測位部2によって計測が開始されると、任意の領域内において、平面上の位置をある基準点に対する相対位置座標として計測する(ステップS1)。また、線量率計測部3によって計測が開始されると、被ばく線量マップが必要な任意の領域の空間線量率を周期的に計測する(ステップS2)。なお、ステップS1,S2は、必ずしも同期して動作する必要はなく、互いに独立して動作するようにしてもよい。
【0034】
測位部2によって計測された計測値は、測位履歴記録部5に履歴情報(相対位置ログ)として記録される(ステップS3)。この履歴情報(相対位置ログ)とは、相対位置の時系列データである。また、線量率計測部3によって計測された計測値は、線量率履歴記録部6に履歴情報(線量率ログ)として記録される(ステップS4)。この履歴情報(線量率ログ)とは、空間線量率の時系列データである。
【0035】
なお、
図2に示す処理では、ステップS3とステップS4が個別の処理として示されているが、これは互いに独立した処理としてログが記録されることを示している。そのため、互いに独立してログが記録されていれば、必ずしも独立したストレージやファイル等の記録部を用意する必要はなく、同一の記録部であってもよい。
【0036】
また、測位履歴記録部5及び線量率履歴記録部6に記録される計測値には、それぞれ計測された時刻がタイムスタンプとして付加される。基準となる時刻は、情報処理部4に内蔵されている図示しない時計を用いてもよいが、測位部2及び線量率計測部3のそれぞれに時計機能を搭載するようにしてもよい。
【0037】
ただし、この場合は、測位部2と線量率計測部3の時刻の同期を取る必要がある。これらの計測処理は、地図作成処理が終了する(ステップS12)まで周期的に継続される。したがって、
図2では、測位部2及び線量率計測部3による計測処理終了の判定処理もステップS12として示している。これら計測処理のループ周期は、互いに一致していなくてもよい。
【0038】
次に、地図作成処理について説明する。
【0039】
地図作成処理では、まず計測処理による各計測値のログから同一のタイミングで計測されたとみなされるペアを特定する(ステップS5)。このペア特定の判断基準は、各計測値のログの記録の際に付加した時刻情報である。
【0040】
具体的には、測位履歴記録部5と線量率履歴記録部6に記録された計測値を照合し、計測された時刻が最も近い組合せをペアとする。なお、相対位置と空間線量率のサンプリング周期(例えば、1秒毎)は、必ずしも一致していないため、一度ペアとして選定された計測値が、再度別の計測値とペアを組むこともあり得る。
【0041】
次いで、評価エリアの設定を実行する(ステップS6)。この評価エリアとは、被ばく線量マップに包含される任意の領域内において、被ばく線量の総和を算出するためのエリアである。最も単純には、被ばく線量マップを等間隔の格子で区切って作成したメッシュの各マスを評価エリアとしてもよいが、本実施形態では特に限定しない。
【0042】
ステップS7の被ばく線量の算出処理は、測位部2の計測間隔の時間情報を用いる。被ばく線量の算出処理の概要を
図3に示す。
図3に示すように、被ばく線量マップに包含される任意の領域19内の評価エリア20内において、相対位置を示す第1の計測点〜第3の計測点12〜14が得られたとする。
【0043】
ここで、第2の計測点13において、ペアとして同期された空間線量率の計測値がD2[Sv/h]、第1の計測点12から第2の計測点13までの計測時間間隔(サンプリング周期)がT1[h]とすると、第2の計測点13での被ばく線量は、D2×T1[Sv]で算出される。
【0044】
同様に、空間線量率の計測値がD3[Sv/h]、第2の計測点13から第3の計測点14までの計測時間間隔がT2[h]とすると、第3の計測点14での被ばく線量は、D3×T2[Sv]で算出される。
【0045】
このように、評価エリア20内での各計測点12〜14での被ばく線量が算出されたら、それらの総和を算出する(ステップS8)。さらに、評価エリア20の面積を算出し、上記のように算出した被ばく線量の総和を面積で除す(ステップS9)。この除した値が評価エリア20内の単位面積当たりの被ばく線量、すなわち被ばく線量密度である。
【0046】
ステップS10では、あらかじめ設定した閾値とステップS9で算出された被ばく線量密度とを比較し、超過する場合には評価エリア20内での被ばく線量が高いものとして判定する。
【0047】
次いで、被ばく線量マップとして、作業場所の領域19を示すパソコン画面上の地図に評価エリア20と被ばく線量密度の評価結果(高被ばく線量エリア)を重畳して表示する(ステップS11)。この場合、高被ばく線量の評価エリアは、他の評価エリアと色分けして表示されることが望ましい。なお、この被ばく線量の地図作成処理も周期的に実行し、その動作周期は必ずしも相対位置の計測周期や空間線量率の計測周期と一致しなくてもよい。
【0048】
そして、地図作成処理を終了するかを判定し、終了する場合(ステップS12:YES)には、全体の処理を終了する。また、終了しない場合(ステップS12:NO)には、ステップS5に戻り、再び地図作成処理を実行する。
【0049】
ところで、評価エリア20を広くとると、多くのケースでその中に含まれる計測点も増加するため、見かけ上の被ばく線量の総和は高くなる。
【0050】
そこで、本実施形態のように被ばく線量の総和を評価エリア20の面積で除すことで、単位面積当たりの被ばく線量を算出することができ、計測点がまばらに点在しているケースを発見し、高被ばく線量エリアの候補から適切に除外することができる。
【0051】
また逆に、評価エリア20の面積を狭く設定したため、密集した計測点を複数のマスに分割してしまい、被ばく線量の総和が低くなってしまった場合でも、単位面積当たりの被ばく線量を算出することで、適切に高被ばく線量エリアの候補として発見することが可能となる。
【0052】
(効 果)
このように本実施形態によれば、被ばく線量の総和を評価エリア20の面積で除して単位面積当たりの被ばく線量を算出するため、評価エリア20の面積の設定条件が被ばく線量の評価結果に及ぼす影響を緩和するとともに、時間的、場所的な被ばく線量分布を正確かつ容易に計測するとともに、可視化することが可能になる。
【0053】
(第2実施形態)
(構 成)
図4は第2実施形態の被ばく線量分布可視化装置を示すブロック図である。
図5は第2実施形態の作用を示すフローチャートである。
図6は第2実施形態で作成される被ばく線量マップのイメージを示す説明図である。
【0054】
なお、本実施形態は、前記第1実施形態の変形例であって、前記第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0055】
図4に示すように、本実施形態の被ばく線量分布可視化装置1Aは、前記第1実施形態の構成に加え、スキャン部15が設けられている。このスキャン部15は、同期部7と被ばく線量算出部8との間に設けられている。スキャン部15は、被ばく線量の総和(合計値)を算出するための評価エリア20の設定方法に関するプログラムを実行する。具体的に、スキャン部15は、評価エリア20の面積を調整するとともに、評価エリア20の位置の調整を行う。
【0056】
(作 用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0057】
図5は、第1実施形態で示したフローチャートから被ばく線量の地図作成処理に係る部分を抜粋した図である。なお、
図5では、
図2に示す第1実施形態のフローチャートと同様の処理は、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0058】
図5に示すように、スキャン部15は、ステップS21で評価エリア20の面積を設定する。この面積設定処理では、評価エリア20を任意の平面形状及び面積とする。後述する処理では、評価エリア20を一定量移動させながら任意の領域に相当する被ばく線量地図内を網羅的に評価するため、評価エリア20の平面形状は矩形であることが合理的である。
【0059】
また、同様の理由から新たに評価エリア20を生成した際は、被ばく線量地図の角等の端部に接した場所に位置させることが望ましい。前記第1実施形態の処理と同様に、上記のように設定した評価エリア20を用いて閾値判定処理(ステップS10)まで実行した後に、評価エリア20が被ばく線量地図の終端まで到達したか、すなわち、被ばく線量地図全体を網羅的に評価したかを判定する(ステップS22)。
【0060】
被ばく線量地図の終端まで到達していない場合(ステップS22:NO)は、評価エリア20を一定量移動させて、再度ステップS7の被ばく線量算出処理を実行する。この際の移動量は、例えば画像の1ピクセル分等のように、あらかじめ設定した距離分を移動させる。
【0061】
仮に、被ばく線量地図の終端に到達した場合(ステップS22:YES)であって、全ての評価が完了していない場合(ステップS24:NO)は、再度ステップS21で評価エリア20の面積を変更して同様の処理を実行するようループする。この終了判定(ステップS24)は、ユーザが手動で指示してもよいし、あらかじめ終了条件を定めてもよい。
【0062】
以上の全ての処理が完了したら、ステップS10の閾値判定処理で高被ばく線量エリアであると評価された全ての評価エリア20を被ばく線量地図に重畳表示する。ここで、評価エリア20の面積を変えながら網羅的にスキャンして高線量エリアを探索するため、生成される被ばく線量地
図16は、
図6に示すように、様々な面積の評価エリア18が重畳した形態で表示される。
【0063】
図6において、被ばく線量地
図16上には、移動軌跡と空間線量率とのペアとなる計測点17がプロットされ、空間線量率の高いエリアや計測点が密集するエリアは、高被ばく線量エリアと判断された評価エリア18として重畳表示されている。
【0064】
ところで、上述したように単純にメッシュで区切った場合、計測点が密集するエリアを境界線が通過すると、その計測点が複数のメッシュに分割されることで、メッシュ当たりの被ばく線量が低く算出される。
【0065】
そこで、本実施形態では、評価エリア18の位置を変えながら、種々の面積に設定し、被ばく線量地
図16内を網羅的に評価することで、計測点分布の塊を適したまとまりで抽出することが可能となる。
【0066】
(効 果)
このように本実施形態によれば、評価エリア18の位置を変えながら種々の評価エリア18の面積を設定し、被ばく線量地
図16内を網羅的に評価することにより、評価エリア18の継ぎ目の位置による被ばく線量の変動を未然に防止することができる。
【0067】
(第3実施形態)
(構 成)
図7は第3実施形態の被ばく線量分布可視化装置を示すブロック図である。
図8は第3実施形態において手操作入力により評価エリアを設定する方法を示す説明図である。
図9は第3実施形態において計測点が評価エリアに含まれるかを判定するアルゴリズムを示す説明図である。
【0068】
なお、本実施形態は、前記第1実施形態の変形例であって、前記第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0069】
図7に示すように、本実施形態の被ばく線量分布可視化装置1Bは、前記第1実施形態の構成に加え、同期部7と被ばく線量算出部8との間にエリア内計測点特定部21が設けられている。このエリア内計測点特定部21は、入力部22に接続されている。
【0070】
入力部22は、手操作による入力を受け付けて領域19内において任意の形状の評価エリア20を設定するためのものである。入力部22は、ハードウェアと、ドライバや評価エリア描画等のソフトウェアとで構成される。具体的には、パソコンやスマートフォンの操作インターフェイスとして用いられるデバイスであればよい。その形態は、マウスのように情報処理端末に外付けされるものや、タッチパネルのように組み込まれるものがあるが、それらの形態の制約を受けるものではない。
【0071】
エリア内計測点特定部21は、計測された相対位置のうち、入力部22で設定された評価エリア20の内部に存在する点を特定する。このエリア内計測点特定部21で特定された計測点が、被ばく線量算出部8と、その後段の構成要素で実行される処理で取り扱われるものとなる。
【0072】
(作 用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、入力部22からの操作で動作する評価エリアの設定方法について説明する。
【0073】
図8に示すように、白地
図19A上に、入力部22として例えばマウス等の入力デバイスを用いて評価エリア23が設定される。この評価エリア23は、フリーハンドで描画した評価エリア24であってもよい。すなわち、入力部22は、任意の平面形状の評価エリア23,24のデータを入力する。
【0074】
最も好適な形態では、白地
図19Aはベクタ形式で記述されている。このベクタ形式とは、コンピュータグラフィックス等において、画像を円や直線等のような解析幾何的な「図形」の集まりとして表現する形式のことである。したがって、設定される評価エリア23,24もベクタ形式で記述されることが望ましい。フリーハンドで描画した評価エリア24は、図形を短い直線の集合体と見做してベクタ化する手段等を用いて表現してもよい。
【0075】
次に、エリア内計測点特定部21の作用について説明する。
【0076】
上記と同様に
図8を用いて説明すると、評価エリア23を通過するように、計測点がプロットされている。その計測点は、評価エリア23外に存在する計測点26は白抜きで示され、評価エリア23内に存在する計測点25は斜線で示され、互いに識別可能とされている。
【0077】
評価エリア23,24の内部か外部かの判定方法の一例について
図9を用いて説明する。
【0078】
図9は
図8で説明したフリーハンドで描画した評価エリア24を示している。
図9では、この評価エリア24内の計測点25と、評価エリア24外の計測点26を例として示している。
【0079】
本実施形態では、計測点を評価するため、各計測点25,26から評価エリア24の境界線に向けて垂直に線分を引いて法線27とする。そして、この法線27と、評価エリア24の境界線との交点28を特定する。
図9に示す例では、交点28が計測点25では1つ、計測点26では2つ存在するが、条件によっては、それ以上の交点28が存在する場合もある。評価エリア24の内外の判定処理では、交点28の発生個数に基づいて判断する。
【0080】
具体的には、発生した交点28が奇数個である場合は、その計測点は評価エリア24の内部に存在すると判定し、その一方で交点28が偶数個である場合は、その計測点は評価エリア24の外部に存在すると判定される。
【0081】
(効 果)
このように本実施形態によれば、相対位置のうち、入力部22から入力された評価エリア23,24の内部に存在する点をエリア内計測点特定部21で特定することにより、利用シーンに適した形態で被ばく線量の可視化を行うことが可能となる。
【0082】
例えば、作業領域や待機領域があらかじめ明確に決められている場合、その領域でどれだけ被ばくが発生したのかを選択的に計測し、リアルタイムで確認することができる。
【0083】
これにより、例えば、空間線量率の時系列変動や作業進捗に応じた人の滞在時間を確認しながら、被ばく線量を低減するための作業指示や、その状況に応じて必要かつ十分に遮蔽、除染計画を実行することで、より効果的に被ばく線量を低減することが可能となる。
【0084】
(第4実施形態)
(構 成)
図10は第4実施形態の被ばく線量分布可視化装置を示すブロック図である。
図11は第4実施形態において移動経路に沿って評価エリアを移動させる処理を示す説明図である。
【0085】
なお、本実施形態は、前記第1実施形態の変形例であって、前記第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0086】
図10に示すように、本実施形態の被ばく線量分布可視化装置1Cは、前記第1実施形態の構成に加え、評価エリア移動部としてのトレース部30が設けられている。このトレース部30は、同期部7と被ばく線量算出部8との間に設けられている。
【0087】
トレース部30は、
図11に示すように測位部2で計測された相対位置の時系列的な変位を移動軌跡31とし、その移動軌跡31に沿って評価エリア32を一定間隔で移動させるものである。具体的には、トレース部30は、最も時刻が古い計測点(すなわち、スタート地点)から、最新の計測点(すなわち、ゴール地点)まで移動軌跡31に沿って一通り移動させたら、評価エリア32の面積を変更して同様に移動軌跡31に沿って移動させる処理を繰り返す演算処理を実行する。
【0088】
(作 用)
次に、本実施形態の作用を
図11に従って説明する。
【0089】
図11に示すように、任意の測位部2で計測された計測値に基づいて移動軌跡31を特定する。その計測値に対する相対位置は、取得された時刻と共に記録されているため、時系列的に順を追ってその座標間を結べば簡便に取得することができる。
【0090】
次に、評価エリア32を移動軌跡31に沿って一定間隔で移動させる。この評価エリア32の位置は、例えば評価エリア32の中心点を移動軌跡31上に定める。そして、評価エリア32は、任意の形状と面積に設定する。評価エリア32の移動形態は、移動軌跡31上を一定間隔で進むように設定すればよい。なお、評価エリア32の中心は、必ずしも測位部2で計測された計測点の座標と一致する必要はない。
【0091】
(効 果)
このように本実施形態によれば、被ばく線量地図の全体を網羅するのではなく、実際に計測値を取得した場所に対してのみ被ばく線量の評価を実行するため、高被ばく線量エリアを特定するための処理時間の短縮化を図ることができる。
【0092】
特に、被計測者が被ばく線量地図上に一人しか存在しない場合や、ある特定の人物に焦点を絞って被ばく線量を評価する場合等に高い利便性が得られる。
【0093】
(第5実施形態)
(構 成)
図12は第5実施形態の被ばく線量分布可視化装置を示すブロック図である。
【0094】
なお、本実施形態は、前記第1実施形態の変形例であって、前記第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0095】
図12に示すように、本実施形態の被ばく線量分布可視化装置1Dは、送信部33及び受信部34を備える。送信部33は、測位部2及び線量率計測部3に接続されている。送信部33は、相対位置情報と無線線量率情報を無線伝送する手段であり、例えばWiFiモジュール等の無線通信用デバイスで構成される。
【0096】
受信部34は、情報処理部4内において測位履歴記録部5及び線量率履歴記録部6にそれぞれ接続されている。送信部33と受信部34とは、必ずしも相互通信しなくてもよいが、最低限として送信部33から受信部34へ通信可能である必要がある。
【0097】
送信部33から受信部34への通信手段としては、一般的に実用化されているものを用いればよく、例えばWiFi(登録商標)等が適用できる。その他、モバイルルータを用いて携帯電話網等を経由する方法も適用可能である。
【0098】
受信部34は、送信部33から送信された無線信号を受信し、測位部2及び線量率計測部3から得られた相対位置情報と空間線量率情報に再変換する無線通信用デバイスで構成されている。受信部34は、測位履歴記録部5及び線量率履歴記録部6と通信経路を有しており、受信した各種計測値の情報をそれぞれ適した図示しない記録部に格納する。
【0099】
(作 用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0100】
測位部2及び線量率計測部3で計測した相対位置情報と空間線量率情報は、送信部33を経由して情報処理部4の受信部34に送信する。受信部34は、送信部33から送信された無線信号を受信し、測位部2及び線量率計測部3から得られた相対位置情報と空間線量率情報に再変換する。受信部34は、再変換した相対位置情報と空間線量率情報を測位履歴記録部5及び線量率履歴記録部6に送出する。
【0101】
なお、送信部33と受信部34は、
図12に示すように必ずしも一対一で対応している必要はない。例えば、複数の送信部33に対して1つの受信部34で対応するか、あるいはその逆で1つの送信部33に対して複数の受信部34で対応するようにしてもよい。
【0102】
(効 果)
このように本実施形態によれば、測位部2と線量率計測部3を携帯した被験者が、情報処理部4と離れた場所にいたとしても、リアルタイムで被ばく線量マップを作成することができる。また、1台の情報処理部4で複数の被験者の情報を地図化することができるため、管理業務の効率化や情報量増加による地図精度の向上を図ることができる。
【0103】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0104】
なお、上記各実施形態では、測位履歴記録部5及び線量率履歴記録部6を設けた例について説明したが、これに限らず例えば同期部7が測位部2及び線量率計測部3で計測した相対位置情報と空間線量率情報を時系列的に記録する記録部を備えていれば、必ずしも測位履歴記録部5及び線量率履歴記録部6を設けなくてもよい。
【0105】
また、上記各実施形態の特徴を組み合わせて実施することもできる。