(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877386
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】床材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20210517BHJP
E04F 15/10 20060101ALI20210517BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20210517BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
E04F15/02 A
E04F15/10
B32B5/26
B32B5/28 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-84067(P2018-84067)
(22)【出願日】2018年4月25日
(65)【公開番号】特開2019-190133(P2019-190133A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2018年4月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 mono(モノ・マガジン) 2018 3−2 No799 第7頁(発行所:株式会社ワールドフォトプレス 発行日:平成30年2月16日) [刊行物等] 田島ルーフィング デザインミーティング ザ・デニムフロア(展示日:平成30年2月20日)
(73)【特許権者】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】三好 弘幸
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−105807(JP,A)
【文献】
特開平08−197518(JP,A)
【文献】
特開平05−163824(JP,A)
【文献】
特開2006−299615(JP,A)
【文献】
特許第4042909(JP,B2)
【文献】
新商品のお知らせ 2018年2月,田島ルーフィング株式会社,2018年 1月22日,URL,https://tajima.jp/pdf/news/20180122/news_20180117145955.pdf
【文献】
床材デジタルカタログ THE DENIM FLOOR,田島ルーフィング株式会社,2018年 2月,URL,https://tajima.jp/digitalcatalog2/
【文献】
田島ルーフィング THE DENIM FLOOR 新発売,日本,インテリア情報サイト,2018年 3月13日,URL,http://www.interior-joho.com/interior/detail.php?id=4192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デニム生地を積層した床材の製造方法であって、
前記デニム生地の上面に第1樹脂コーティング層を積層し、前記デニム生地の下面に第2樹脂コーティング層を積層して、デニム層を形成する工程と、
熱ラミネートにより、ガラス不織布の下面に第2樹脂層を積層し、前記第2樹脂層の下面に基材を積層して、中間積層体を形成する工程と、
熱ラミネートにより、前記デニム層と前記中間積層体との間に第1樹脂層を積層して、前記ガラス不織布と、前記第1樹脂層と、前記第2樹脂層とからなる補強層を形成する工程と、
熱ラミネートにより、前記デニム層の下面に樹脂製の基材を積層する工程と、
を備え、
前記ガラス不織布の位置が前記床材の全体の厚みの中心よりも上方になるよう設定され、前記第1樹脂コーティング層および前記第2樹脂コーティング層は、それぞれ、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂のうちから選択された樹脂からなる、床材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デニム生地を積層した床材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デニム生地は強度及び耐久性があることから、主にジーンズや作業衣に使われているが、近年では、衣料用の他に靴、鞄や室内装飾用にも使用されている。例えば特許文献1には、デニム生地を表層に使用した床材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−336277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デニム生地をそのまま床材の表層として使用すると、歩行による繊維のほつれや破れが発生し、汚れが付着する等の不具合が生じる場合があった。また、デニム生地を塩化ビニル樹脂等に接着剤等を用いて接着する場合、接着剤が硬化するまで時間がかかるため非効率で生産性が低い。
【0005】
1つの側面では、本発明は繊維のほつれや破れが発生するのを防止された、デニム生地を積層した床材を提供することを目的とする。また、別の側面では効率的にデニム生地が積層された床材を製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、1つの形態によれば、デニム生地と、デニム生地の上面に積層される第1樹脂コーティング層と、デニム生地の下面に積層される第2樹脂コーティング層と、を有するデニム層と、デニム層の下方に積層される基材と、を備える、デニム生地を積層した床材を提供する。
【0007】
また、別の形態によれば、デニム生地を積層した床材の製造方法であって、デニム生地の上面に第1樹脂コーティングを積層し、デニム生地の下面に第2樹脂コーティングを積層して、デニム層を形成する工程と、熱ラミネートにより、デニム層の下面に基材を積層する工程と、を備える、床材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
開示の床材により繊維のほつれや破れの発生が防止される。また、デニム生地を積層した床材を効率的に製造する製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態のデニム生地を積層した床タイルを示す断面図である。
【
図2】第一実施形態のデニム生地を積層した床タイルの作製方法を示す図であり、(a)はデニム生地を含むデニム層を形成する工程を示す図、(b)はデニム層を基材に積層する工程を示す図である。
【
図3】第二実施形態のデニム生地を積層した床タイルを示す断面図である。
【
図4】第二実施形態のデニム生地を積層した床タイルの作製方法を示す図であり、(a)はデニム層を形成する工程を示す図、(b)はガラス不織布を含む中間積層体を形成する工程を示す図、(c)はデニム層を中間積層体に積層して床タイルを形成する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。また、以下の実施の形態において同一又は類似の要素には共通の参照符号を付けて示し、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。
【0011】
図1は、第一実施形態の床タイル1を示す断面図である。床タイル1は床材の一例である。床タイル1は、樹脂製の基材20と、樹脂製の基材20の上面に積層されたデニム層10を備える。デニム層10は、デニム生地11と、デニム生地11の上面に積層される第1樹脂コーティング層12と、デニム生地11の下面に積層される第2樹脂コーティング層13とを有する。基材20は、塩化ビニル樹脂による板状の部材である。
【0012】
デニム生地11は、10番手以上のタテ糸をインディゴによって染色し、ヨコ糸を未晒し糸(染色加工をしていない糸)で綾織りにした、素材が綿の厚地織布である。第1樹脂コーティング層12は、例えば透明なアクリル樹脂である。第1樹脂コーティング層12は、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂であってもよい。第2樹脂コーティング層は、塩化ビニル樹脂である。第2コーティング層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂であってもよい。第1樹脂コーティング層12及び第2樹脂コーティング層13を、デニム生地11にコーティングするには、
図2(a)に示すように、例えばロールコータ44を用いて行われる。従来のデニム生地を有する床タイルは、デニム生地がそのまま露出した状態で使用されるため、歩行により力が加わると繊維のほつれ等が生じる場合があった。本実施形態のデニム生地11が積層された床タイル1は、露出する表面部分に、アクリル樹脂による第1樹脂コーティング層12がコーティングされ、第1樹脂コーティング層12により、歩行者による力が加わっても繊維のほつれが生じることが防止される。
【0013】
図2(a)及び
図2(b)を用いて、
図1に示すデニム生地11が積層された床タイル1の製造方法を説明する。先ず、
図2(a)に示すように、デニム生地11の片面に第1樹脂コーティング層12として透明なアクリル樹脂を、矢印A方向に移動させロールコータ44を用いて塗布することでコーティングする。その後、第1樹脂コーティング層12が塗布されたデニム生地11を、乾燥オーブン45に通して乾燥させ、巻取機47により巻き取る。次にデニム生地11の反対の面に第2樹脂コーティング層13としての塩化ビニル樹脂を、ロールコータ44を用いて塗布する。ロールコータ44により塩化ビニル樹脂を塗布した後、デニム層10を乾燥オーブン45により加熱乾燥させる。乾燥したデニム層10は巻取機47により巻き取られる(ステップ1)。
【0014】
デニム層10を形成した後、
図2(b)に示すように、デニム層10と基材20を熱ラミネートロール40に通し、基材20の上面にデニム層10を接着する。その後、積層体50をタイル打ち抜き機46に通し、タイル状にカットして床タイル1が完成する(ステップ2)。本実施形態の床タイル1は、デニム生地11の下面に、第2樹脂コーティング層13として塩化ビニル樹脂がコーティングされているため、塩化ビニル樹脂と基材20とを熱ラミネートロール40により連続的に積層させて接着することができる。そのため、デニム生地11を有する床タイル1を効率よく製造することができる。
【0015】
図3は、第二実施形態である床タイル2を示す断面図である。床タイル2は床材の一例である。
図3に示すように、床タイル2は、
図1に示す床タイル1と同様、デニム層10と基材20とを備える。床タイル2は、デニム層10と基材20との間に強化層30を更に備える。強化層30は、ガラス不織布31と、ガラス不織布31の上面に積層される第1樹脂層32と、ガラス不織布31の下面に積層される第2樹脂層33を備える。第1樹脂層32及び第2樹脂層33は塩化ビニル樹脂により作製されるが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂により作製されてもよい。
【0016】
デニム層10と樹脂製の基材20とは線膨張率に差があるため反りが発生する場合がある。床タイル2では、ガラス不織布31を含む強化層30を、デニム層10と基材20との間に設けることにより、床タイル2の反りを防止している。
【0017】
また、本実施形態の床タイル2では、ガラス不織布31の位置が、床タイル2全体の厚みT1の中心Cより上方になるよう設定される。例えば、床タイル2の厚みT1を5mmとする場合は、デニム層10、第1樹脂層32、ガラス不織布31、第2樹脂層33、基材20の厚みを夫々、0.70、0.68、0.40、0.85、2.37mmとすることで、ガラス不織布31を床タイル2全体の厚みT1の中心Cより上方に配置することができる。デニム層10と基材20である塩化ビニル樹脂との線膨張率の差により、床タイル2では反りが生じやすくなるが、ガラス不織布31の位置が、床タイル全体の厚みT1の中心Cより上方に配置されることで、床タイル2の反りを防止することができる。
【0018】
図4(a)〜
図4(c)を用いて、第二実施形態の床タイル2の製造方法について説明する。第一実施形態の床タイル1と同様に、デニム生地11を準備し、ロールコータ44を用いてデニム生地11の片面に第1樹脂コーティング層12としてのアクリル樹脂を塗布する。アクリル樹脂が塗布されたデニム生地11を乾燥オーブン45により加熱乾燥させる。そして、デニム生地11の反対面に、第2樹脂コーティング層13として塩化ビニル樹脂を、ロールコータ44を用いて塗布する。塩化ビニル樹脂が塗布されたデニム生地11を乾燥オーブン45により加熱乾燥させ、デニム層10を巻取機47により巻き取る(ステップ1)。
【0019】
次に、
図4(b)に示すように、基材20と、第2樹脂層33としての塩化ビニル樹脂シートと、ガラス不織布31とを第1熱ラミネートロール41に通して、中間積層体34を形成する(ステップ2)。
【0020】
次に、
図4(c)に示すように、中間積層体34を加熱装置43により温めたのち、中間積層体34と、第1樹脂層32としての塩化ビニル樹脂シートと、ステップ1で作製したデニム層10とを、第2熱ラミネートロール42に通してラミネートし、積層体35を作製する。そして、積層体35をタイル打ち抜き機46に通し、タイル状にカットして床タイル2が完成する(ステップ3)。第2熱ラミネートロール42により連続的に、デニム層10、第1樹脂層32及び第2樹脂層33を基材20に積層させることができるため、デニム生地の風合いを活かした床タイル2を効率よく製造することができる。
【0021】
(実施例1)
発明者らは実際に床タイル2を製造して、本発明に係る床タイル2の有効性を実験により確認した。デニム生地11としては、カイハラ産業株式会社製の布帛2007−ACTを用意した。デニム生地11の片面に水系アクリル樹脂500g/m
2をロールコータ44で塗布し加熱乾燥させ、水系アクリル樹脂により第1樹脂コーティング層12を設けた。また、デニム生地の反対面に塩化ビニル樹脂600g/m
2を同様の方法で塗布し乾燥させて、塩化ビニル樹脂により第2樹脂コーティング層13を設けデニム層10を作製した。デニム層10のアクリル樹脂の厚みは12〜15μm、塩化ビニル樹脂の厚みは60〜90μmになるよう調整した。また、熱ラミネートロールによりガラス不織布31を積層した。また、ガラス不織布31の位置は、床タイルの全厚T1の半分以上に位置するよう基材20の厚さを調整した。
(実施例2)
デニム生地11の表面に第1樹脂コーティング層12として水系アクリル樹脂とは異なるウレタン樹脂を塗布して作製し、それ以外の条件は実施例1と同一の条件で床タイル2を作製した。
【0022】
(比較例1)
比較例1として、デニム生地11に、第1樹脂コーティング層12としての水系アクリル樹脂またはウレタン樹脂を塗布せず、他の条件は全て実施例1及び2と同一の条件で床タイルを作製した。
【0023】
(比較例2)
ガラス不織布31の位置をタイル全厚T1の中心Cより、下方に配置した場合であって、それ以外は実施例1と同一の条件で床タイルを作製した。
【0024】
作製した床タイル上を一定期間、被験者に歩行させ、実施例1及び2、比較例1及び2のデニム生地のほつれや反りについて調査した。その結果を以下に示す。
【表1】
【0025】
比較実験の結果により、本発明に係るデニム生地11を積層した床タイル2(実施例1及び2)は、生地繊維のほつれ、破れがなく、反りも発生しないことが分かる。比較例1は、タイルの反りは確認されなかったが、生地繊維のほつれが発生していた。また、比較例2は生地繊維のほつれはないものの反りが発生する場合があった。本実施形態に係る床タイル2を用いれば、デニム生地11の風合いが損なわれることなく、生地繊維のほつれ、破れが生じるのを防止すると共に、反りを防止し、汚れ付着の少ないデニム生地を積層した床タイル2を提供することができる。
なお、本発明の実施形態の参考例として、下記のものも含まれる。
[参考例]
デニム生地と、前記デニム生地の上面に積層される第1樹脂コーティング層と、
前記デニム生地の下面に積層される第2樹脂コーティング層と、を有するデニム層と、
前記デニム層の下方に積層される樹脂製の基材と、
ガラス不織布と、前記ガラス不織布の上面に積層される第1樹脂層と、前記ガラス不織布の下面に積層される第2樹脂層とを有する補強層であって、前記デニム層と前記基材との間に積層される補強層と、を備える、床材であって、
前記ガラス不織布の位置が前記床材の全体の厚みの中心よりも上方になるよう設定され、前記第1樹脂コーティング層および前記第2樹脂コーティング層は、それぞれ、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂のうちから選択された樹脂からなる、床材。
【符号の説明】
【0026】
1、2 床タイル
10 デニム層
11 デニム生地
12 第1樹脂コーティング層
13 第2樹脂コーティング層
20 基材
30 強化層
31 ガラス不織布
32 第1樹脂層
33 第2樹脂層
34 中間積層体
40 熱ラミネートロール
41 第1熱ラミネートロール
42 第2熱ラミネートロール
43 加熱装置
44 ロールコータ
45 乾燥オーブン
46 タイル打ち抜き機
47 巻取機