(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877461
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】タクタイル式アセンブリ
(51)【国際特許分類】
B60N 2/005 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
B60N2/005
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-552657(P2018-552657)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公表番号】特表2019-516602(P2019-516602A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2017057778
(87)【国際公開番号】WO2017174471
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2020年2月13日
(31)【優先権主張番号】16163843.2
(32)【優先日】2016年4月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501469803
【氏名又は名称】テイジン・アラミド・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Teijin Aramid B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アネケ ファン アベマ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウター フォス
(72)【発明者】
【氏名】ヨリト デ ヨング
【審査官】
細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−521974(JP,A)
【文献】
特開2006−341839(JP,A)
【文献】
特開2009−214578(JP,A)
【文献】
特開2005−348815(JP,A)
【文献】
特表2008−513138(JP,A)
【文献】
米国特許第06682494(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00
B60R 21/00
A47C 7/02
A47C 17/00
A47C 27/14
A47C 31/02
B68G 5/00
B68G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのタクタイル式アクチュエータ(5)と、少なくとも2つの支持層(3,4)と、少なくとも1つのキャビティ(2)を有する基材層(1)とを備えた、車両座席用、または車両座席上に配置可能なカバー用のタクタイル式アセンブリであって、
前記タクタイル式アセンブリは、第1の支持層(3)上に配置されており、該第1の支持層は、前記キャビティの底部(6)に接触することなしに、前記キャビティ内に延びるように配置されており、前記アクチュエータは、前記キャビティの側壁または底部(6)に接触しないように、前記キャビティ(2)内で前記第1の支持層(3)上に配置されており、かつ前記キャビティの開口(7)は、第2の支持層(4)により覆われていることを特徴とする、車両座席用、または車両座席上に配置可能なカバー用のタクタイル式アセンブリ。
【請求項2】
前記第1の支持層(3)は、前記第2の支持層(4)よりも高い弾性を有している、請求項1記載のタクタイル式アセンブリ。
【請求項3】
前記第1の支持層(3)および/または前記第2の支持層の少なくとも1つの領域は、少なくとも1GPaのヤング係数を有している、請求項1または2記載のタクタイル式アセンブリ。
【請求項4】
前記基材層(1)は、発泡材層である、請求項1から3までのいずれか1項記載のタクタイル式アセンブリ。
【請求項5】
前記キャビティの前記開口(7)は、3cm2〜80cm2の範囲の表面積を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のタクタイル式アセンブリ。
【請求項6】
前記キャビティ(2)は、0.5cm〜5cmの範囲の深さを有している、請求項1から5までのいずれか1項記載のタクタイル式アセンブリ。
【請求項7】
前記アクチュエータを制御ユニットに接続する接続部がさらに設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載のタクタイル式アセンブリ。
【請求項8】
経路誘導指示および/または警告指示を車両座席に座る乗員に伝達する、請求項1から7までのいずれか1項記載のタクタイル式アセンブリ。
【請求項9】
ソフトウェア、制御ユニットおよび請求項1から8までのいずれか1項記載のタクタイル式アセンブリを備える、タクタイル式システム。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項記載のタクタイル式アセンブリまたは請求項9記載のタクタイル式システムを備える、車両座席または車両座席カバー。
【請求項11】
前記タクタイル式アセンブリは、車両座席の座部および/または背もたれ部分に、または車両座席の座部および/または背もたれ部分内に、または車両座席カバー内に配置されている、請求項10記載の車両座席または車両座席カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両座席用のタクタイル式(触知式)アセンブリ、特にタクタイル式経路誘導アセンブリおよび/または警告アセンブリ、タクタイル式システム、ならびにタクタイル式アセンブリまたはタクタイル式システムを有する車両座席に関する。
【0002】
車両座席用のタクタイル式アセンブリは公知である。
【0003】
米国特許出願公開第2014/0008948号明細書は、車両座席用の振動警報パッチを開示している。座席は、発泡材クッションと、このクッションの表面の近傍にある少なくとも1つのモータアセンブリとを有している。このモータアセンブリは、複数の変換器セルを含んでいる。発泡材クッションは、予備成形された凹部を有しており、この凹部内に、振動警報パッチが埋め込まれている。択一的には変換器セルは、ゴムパッチ内に封入されていてもよい。
【0004】
独国特許出願公開第102013211029号明細書は、改善されたアクチュエータ固定手段を有する車のための警報システムに関する。座席は、少なくとも2つのアクチュエータを有している。これらのアクチュエータは、ケーシング内に配置されており、このケーシング自体は、このケーシングの形状に適合する詰め物の多段のキャビティ内に埋め込まれている。
【0005】
米国特許第6744370号明細書は、車両座席用のパッド内に組み込まれた振動型タクタイル式警報兼マッサージシステムに向けられている。このシステムは、モータ駆動式の複数の振動器を含む。このシステムは、座席上に配置されているか、または座席内に組み込まれていてもよい。
【0006】
しかしながら、公知のシステムはいずれも、極めて局所的かつ強いタクタイル式の報知を可能にするアクチュエータ配置を提供していない。
【0007】
本発明の目的は、特に車両座席に座る乗員に対して局所的に限定された強い信号を提供することに関して、改善されたタクタイル式アセンブリを提供することにある。1つの実施形態では、信号は、経路誘導指示の提供を可能にする形式で局所的に限定されている。好適には、タクタイル式アセンブリは、タクタイル信号を提供し、このタクタイル信号は、音響的な指示を使用することなしにユーザにターンバイターン式の経路誘導指示を提供するために十分に特定されている。
【0008】
本発明は、少なくとも1つのタクタイル式アクチュエータ(5)と、少なくとも2つの支持層と、少なくとも1つのキャビティ(2)を有する基材層(1)とを有する、車両座席用または車両座席上に配置可能なカバー用のタクタイル式アセンブリであって、タクタイル式アクチュエータ(5)は、第1の支持層(3)上に配置されており、第1の支持層(3)は、キャビティの底部(6)に接触することなしに、キャビティ(2)内に延びるように配置されており、アクチュエータ(5)は、キャビティの側壁または底部(6)と接触しないように、キャビティ(2)内で第1の支持層(3)上に配置されており、かつキャビティの開口(7)は、第2の支持層(4)により覆われている、タクタイル式アセンブリを提供することにより、上記目的を実現する。
【0009】
図1は、本発明に係るタクタイル式アセンブリの実施形態を示す横断面図である。
【0010】
キャビティ(2)は、基材層(1)において凹部として形成されている。第1の支持層(3)は、キャビティ内に延びている。第2の支持層(4)は、キャビティの開口(7)を覆っていて、第1の支持層上に配置されている。第1の支持層(3)上にはアクチュエータ(5)が配置されている。キャビティの底部は、符号(6)で示されている。
【0011】
キャビティ内において第1の支持層と第2の支持層との間で「浮動」する、本発明のタクタイル式アクチュエータの配置により、タクタイル式アクチュエータは、キャビティを形成する基材材料により挟まれていない。車両座席が占められて圧縮されている場合でさえ、タクタイル式アクチュエータは、キャビティの底部または側壁に接触しないか、または実質的に接触せず、好適にはアクチュエータは、(第1の支持層によってすら)キャビティの底部および側壁に接触しない。このことは、座席の広い領域にわたるタクタイル信号の拡散を回避する。
【0012】
本発明に係るタクタイル式アセンブリは、車両座席内に組み込まれるか、または車両座席の上に配置され得る。したがって、車両座席の少なくとも部分的なカバーを形成する。
【0013】
第1の支持層は、天然繊維および/または合成繊維を有しているか、または天然繊維および/または合成繊維から成っている繊維布帛(textile fabric)層であってもよい。第2の支持層は、天然繊維および/または合成繊維を有しているか、または天然繊維および/または合成繊維から成っている繊維布帛層であってもよい。下記の繊維のうち1種の繊維または組み合わせが、繊維布帛層において使用され得る:ポリエステル繊維、ポリアミド繊維またはエラストマ繊維(たとえばSpandex)。択一的には、支持層のうちの一方が、フォイル、フィルム、天然皮革または人工皮革から形成されていてもよい。好適には、第1の支持層は、延伸可能な繊維布帛層であり、第2の支持層は、繊維布帛層または皮革から成っている。
【0014】
アセンブリにおいて使用されている支持層が、繊維布帛層である場合、この繊維布帛層は、編まれているか、編組されているか、織られているか、不織布であるか、縮充加工されているか、または張り合わされたウェブであってもよく、好適には、繊維布帛層は編まれている。
【0015】
1つの実施形態では、第1の支持層が、第2の支持層よりも高い弾性を有している。このことは、本発明に係るアセンブリとの関係において、第1の支持層が、第2の支持層の弾性を減じないということを意味している。好適には、第1の支持層は、複数の、好適には全ての方向において高い弾性を有しており、結果として複数の方向での延伸性が生じる。1つの実施形態では、第1の支持層および第2の支持層の弾性は組み合わせにおいて、タクタイル式アクチュエータを第1の支持層と第2の支持層との間に懸架させる。
【0016】
第1の支持層と第2の支持層とは、通常、互いに重なって配置されていて、両層の間にアクチュエータが配置されている。幾つかの実施形態では、1つまたは複数の付加的な層が、少なくとも幾つかの領域において第1の支持層と第2の支持層との間に挿入されている。第1の支持層と第2の支持層とが互いに対して直接に接触している場合、第1の支持層と第2の支持層とは、たとえば接着剤により、互いに対して取り付けられていてもよい。このことは、第1の支持層と第2の支持層との間に配置されたアクチュエータが、その位置においてより良好に位置固定されている、という利点を有している。付加的な層は、基材層と第1の支持層との間に存在していてもよく、または基材層内に組み込まれていてもよい。たとえば、座席加熱装置(たとえば加熱ワイヤを有するマットまたはパッド)を有する1つの層が、基材層と第1の支持層との間に配置されていてもよい。
【0017】
好適な実施形態では、第1の支持層および/または第2の支持層の少なくとも1つの領域が、少なくとも1GPaのヤング係数、好適には少なくとも5GPaのヤング係数、さらに好適には少なくとも10GPaのヤング係数を有している。好適には、上記領域は、アセンブリの、キャビティの開口を覆うかまたは取り囲む領域、またはキャビティの少なくとも一部である領域に位置決めされている。ヤング係数は、層(たとえば繊維布帛)の係数に関し、層に含まれる繊維の係数ではない。さらに好適には、第1の支持層および/または第2の支持層の、高いヤング係数を有する領域が、キャビティ開口の表面積と同じであり、キャビティ開口の上に配置されている。1つの実施形態では、少なくとも1GPaのヤング係数を有する第1の支持層および/または第2の支持層の領域は、キャビティ開口の表面積よりも、最大で25%、さらに好適には10%だけ大きくまたは小さく形成されている。好適には、これらの領域のヤング係数は、残りの支持層のヤング係数の少なくとも2倍高い。高い係数を有する支持層領域は、支持層内に局所的に異なる材料を組み込むことにより、または支持層を異なる形式(たとえば異なる織りパターンまたは編みパターン)で形成することによって実現されてもよい。
【0018】
択一的には、少なくとも1GPaのヤング係数、好適には少なくとも5GPaのヤング係数、さらに好適には少なくとも10GPaのヤング係数を有する材料が、それぞれの領域において第1の支持層および/または第2の支持層に取り付けられていてもよい。択一的には、上述の領域は、残りの支持層(つまり、キャビティに近接していない支持層の部分)よりも高い密度を有する材料から形成されていてもよい。択一的には、上述の領域は、第2の支持層の周囲の部分よりも、低いヤング係数を有する材料から成っていてもよい。このことは、この領域において、第2の支持層の部分を、低いヤング係数を有する繊維布帛と置き換えることにより実現され得る。
【0019】
車両座席が皮革でカバーされている場合、択一的な実施形態が使用され得る。皮革は、通常、車両座席にわたるタクタイル信号の拡散を可能にする約0.1〜0.5GPaのヤング係数を有している。この実施形態では、少なくとも1GPaのヤング係数を有する材料の層が、第1の支持層と第2の支持層との間に配置されていて、この場合、この材料は、たとえば開口が円として形成されている場合、この実施形態のためには連続的なリングまたはセグメント化されたリングとして、キャビティの開口を少なくとも部分的に取り囲んでいる。好適には、この実施形態では、キャビティの縁部における基材層が、追加の層を収容するための小さな凹部を有しているか、または追加の層が第2の支持層に取り付けられていてもよく、キャビティの内部へ延びるように配置されている。
【0020】
この実施形態の例が
図2に示されている。
【0021】
キャビティ(2)は、基材層(1)内の凹部である。第1の支持層(3)は、キャビティ内に延びている。第2の支持層(4)は、キャビティの開口(7)を覆っていて、第1の支持層の上に配置されている。第1の支持層(3)上には、アクチュエータ(5)が配置されている。キャビティの底部は、符号(6)で示されている。第1の繊維布帛層(3)と第2の支持層(4)との間で、キャビティ(2)の縁部には、高い係数を有する材料(8)が配置されている。この実施形態では、座席を覆う皮革が、第2の支持層(4)として採用されていてもよい。
【0022】
少なくとも1GPaのヤング係数を有する材料を、本発明によるアセンブリ内に局所的に導入するこの方法は、第1の支持層および/または第2の支持層が、布帛繊維層であるか、またはフィルム、フォイルまたは合成皮革から形成されているアセンブリのためにも使用され得る。
【0023】
本発明の1つの実施形態では、基材層は、発泡材層である。発泡材は、あらゆる適切な発泡材であってもよく、たとえばポリエチレン発泡材またはポリウレタン発泡材であってもよい。発泡材層は、発泡材材料の組み合わせを有していてもよい。
【0024】
アセンブリのキャビティは、基材層内に形成されている。本明細書の関連においては、キャビティの開口は、車両座席の、座席に座る乗員に接触する表面に向かって方向付けられていて、キャビティの底部は、開口とは反対の側にあり、側壁は、開口と底部との間でキャビティの形状を規定する。キャビティの深さは、底部と開口との間の最も短い距離である。キャビティは、あらゆる形状を有していてもよく、好適にはキャビティは円形または楕円形の開口および底部を有する円筒形である。択一的には、キャビティは立方体または円錐形であってもよく、長円または方形に形成された開口および底部を有していてもよい。キャビティ開口およびキャビティの形状は、アクチュエータを快適に収容するために十分な大きさでなければならず、好適には、第1の支持層を通って、アクチュエータが側壁および/または底部に接触せず、座席乗員に対して十分に大きなタクタイル振動面積を提供するようになっている。好適な実施形態では、キャビティ開口は、3cm
2〜80cm
2の範囲、好適には7cm
2〜50cm
2の範囲、さらに好適には12cm
2〜30cm
2の範囲の表面積を有している。好適には、キャビティの開口の表面積は、開口に面するアクチュエータの投影表面積よりも少なくとも50%だけ大きく、好適には、キャビティ開口の表面積は、開口に面するアクチュエータの投影表面積よりも少なくとも100%だけ大きい。
【0025】
アセンブリが座席に座る乗員により圧縮されている場合でさえも、タクタイル式アクチュエータがキャビティの底部に接触しないようにタクタイル式アクチュエータを収容するためにキャビティの深さは十分に大きくなければならない。1つの実施形態では、キャビティは0.5cm〜5cmの範囲、好適には1cm〜3cmの範囲の深さを有している。好適には、キャビティの深さは、アクチュエータの高さの少なくとも50%だけ大きく、好適にはキャビティの深さはアクチュエータの高さの少なくとも100%だけ大きい。深さは、支持層の弾性と、発泡材の密度の組み合わせに依存して選択され得る。
【0026】
アセンブリが、クッションまたは車両座席の上に配置されているカバー内に配置されている実施形態では、アセンブリは、位置固定手段、たとえば延伸可能な別個の繊維層を有しているか、または第1の支持層および第2の支持層が、車両座席への取付けを可能にするために十分に弾性である。これらの材料および基材層の他に、クッションまたはカバーは、クッションまたはカバーをより快適にするための付加的な材料を有していてもよく、たとえば付加的な発泡材層を有していてもよい。好適には、車両座席上に配置するためのアセンブリは、折り畳み可能である。このことは、アセンブリを別個の複数のセグメントに分割することにより実現され得る。このような実施形態では、支持層および/または基材層は、連続的である必要はない。好適にはアセンブリの各セグメントが少なくとも1つのアクチュエータを有している。
【0027】
アセンブリが車両座席内または座席カバーの下に組み込まれている場合、通常は車両座席の一部である部分が、本発明によるアセンブリの置換え部分として使用され得る。たとえば、タクタイル式アセンブリの基材層は、座席の詰め物の部分により形成されていてもよく、キャビティが詰め物内に切り抜かれる。たとえば、第2の支持層は、車両座席の最も外側のカバー層により形成されていてもよく、または別個の層であってもよい。択一的には、基材層とアクチュエータとを有するアセンブリは、座席をカバーする繊維層または皮革層の下で座席に組み込まれてもよい。
【0028】
車両座席が座席加熱システムを有している実施形態では、座席内に組み込まれた加熱パッドが、第1の繊維層として使用されてもよく、アクチュエータは、加熱パッド上に配置され得る。つまり、アセンブリが車両座席に組み込まれている場合、本発明によるタクタイル式アセンブリは、複数のセグメントへと分割され得る。このような実施形態では、アセンブリの1つまたは複数の層が非連続的であってもよい。
【0029】
アセンブリのタクタイル式アクチュエータは、好適には振動モータである。タクタイル式アクチュエータは、モータを取り囲むケーシングを有している。アクチュエータの運動は、主に、第2の支持層の延在方向に対して平行または垂直方向である。好適には、振動モータは、振動波の方向が第2の支持層の延在方向に対して垂直方向であるように、配置されている。アクチュエータは、偏心モータ(ERM)およびリニア・バイブレータ(LRA)から選択され得る。アクチュエータは、位置を保持するために、たとえば接着剤、縫い付けまたはベルクロ(登録商標)のようなフック・ループファスナシステムにより第1の支持層に取り付けられている。任意で、アクチュエータは、同様に接着剤、縫い付けまたはフック・ループファスナシステムにより、第2の支持層に取り付けられていてもよい。
【0030】
別の実施形態では、アクチュエータは、アクチュエータの形状に適合することを可能にする成形材料内に埋め込まれている。成形材料は、射出成形によりアクチュエータに施される。任意には、成形中に、成形材料は、まだ成形可能なうちに、アクチュエータを第1の支持層および/または第2の支持層に取り付けるために使用され得る。好適には、成形材料は、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマ樹脂、たとえばポリアミド樹脂である。これらの樹脂は、熱溶融されて、所望のように成形される。たとえば、アクチュエータを成形材料内に埋め込むことによって、アクチュエータを含む振動質量が拡大される。つまり、アクチュエータを含む振動質量の形状が所望のように適合されて、たとえば尖ってまたはスパイク状に形成され得る。成形材料は、破損に対する改善された保護を提供するために、アクチュエータのケーブル進入点をカバーすることもできる。本発明のタクタイル式アセンブリは、タクタイル信号を提供し、したがって車両座席に座っている乗員への潜在的な指示、好適には経路誘導または警報性の指示を提供することができる。
【0031】
指示は、制御ユニットを介してソフトウェアにより供給される。制御ユニットは、タクタイル式アセンブリの少なくとも1つのアクチュエータに接続されている。制御ユニットとアクチュエータとの間、複数のアクチュエータの間、アクチュエータとアクチュエータドライバ基板との間、かつアクチュエータドライバ基板と制御ユニットとの間の接続のためには、ケーブル、ワイヤまたは延伸可能な導電性回路が使用され得る。導電性インクに基づく延伸可能な導電性材料は、米国特許出願公開第2014/318699号明細書(US2014/318699A1)に記載されている。しかしながら、別の延伸可能な導電性材料または回路(一般的にフレキシブルな導電性材料として知られている)、たとえば導体(たとえば薄い金属製フィルムまたはリボン特に銅フィルムまたはリボン、または導電性ポリマまたはゲルに基づく導体)を取り囲む封入材料に基づく延伸可能な導電性材料も使用され得る。延伸可能な導電性回路は、繊維材料の形態であってもよく、直接に第1の支持層および/または第2の支持層に取り付けられ得る。
【0032】
各個別のアクチュエータから、接続部、たとえば電気ケーブルが、第1の層および第2の層の間に部分的に延びていてもよく、次いで第1の支持層に設けられた穴またはスリットを通過してフォーム材料に形成されたスリット内へと延びる。このスリットは、ケーブルを、(たとえば基材層の縁部において)乗員座席面から離れて配置されたアクチュエータドライバ基板へと導く。各アクチュエータは、通常、個別のアクチュエータドライバ基板に接続されている。アクチュエータドライバ基板は、ワイヤを介してバストポロジーへと接続されている。つまりアクチュエータドライバ基板は、1つの共通のワイヤに接続されている。それぞれ少なくとも1つのアクチュエータおよびアクチュエータドライバ基板を有する1つまたは複数のこのようなバストポロジーは、制御ユニットに接続されている。アクチュエータドライバ基板は、基材層の下または近傍に、またはアクチュエータに隣接して配置されてもよく、たとえば成形材料によりアクチュエータに接続されている。
【0033】
したがって、1つの実施形態では、本発明によるアセンブリには、付加的に、少なくとも1つのアクチュエータをアクチュエータドライバ基板と、最終的には制御ユニットとに接続する接続部が設けられていて、接続部は、ワイヤまたは延伸可能な導電性の回路であってもよい。
【0034】
制御ユニットは、車両座席の一部であるか、または車両座席の近傍に設置されてもよい。制御ユニットは、たとえば座席の下に配置されていてもよい。
【0035】
制御ユニットは、情報、たとえば警報、経路誘導または車両ステータス情報のような情報を提供するソフトウェアから信号を受信する。ソフトウェアからの信号入力に基づいて、制御ユニットは、少なくとも1つのアクチュエータを作動させる。ソフトウェアは、車載情報システム、たとえば経路誘導システムおよび/または内部情報(たとえば、ドライバの意識ステータス)または外部情報(たとえば、差し迫った衝突)を処理する車載警告システムの一部であってもよい。制御ユニットは、(ワイヤレスまたは有線のいずれかで)ソフトウェアに接続されている。車載情報システムのソフトウェアへのワイヤレス接続が形成されている実施形態では、エネルギ源、たとえばバッテリがタクタイル式システム内に含まれる。制御ユニットは通常、ファームウェアを有する制御ハードウェアと、制御ハードウェアを自動車の情報システムに接続するための設備、たとえばブルートゥースモジュールおよび/またはUSBコネクタを有している。制御ユニットは、ソフトウェアにより提供された指示を処理し、対応する少なくとも1つのアクチュエータを駆動する。好適には、複数のアクチュエータが、空間時間的パターンで駆動され、たとえば経路誘導情報、車両のステータス情報または警報に関する特別な情報または指示を車両座席の乗員に提供する。
【0036】
好適な実施形態では、制御ユニットは、オン/オフスイッチを有している。このオン/オフスイッチは、運転中に座席乗員(通常は運転手)により操作され得るように配置されている。
【0037】
したがって、本発明は、ソフトウェア、制御ユニットおよび上記で説明したいずれかの実施形態のような本発明のタクタイル式アセンブリを有するタクタイル式システムにも向けられている。
【0038】
好適には、本発明のタクタイル式アセンブリは、特別な構成で配置されている複数のタクタイル式アクチュエータを有している。好適には少なくとも2つ、さらに好適には少なくとも6つのタクタイル式アクチュエータが、車両座席内または上に配置されている。通常、タクタイル式アセンブリは、座席の座部内(またはその上部)に配置されている。択一的または付加的には、タクタイル式アクチュエータは、座席の背もたれ(特に腰部分)および/またはアームレスト内(または上)に配置されている。座席の座部内で、通常、タクタイル式アクチュエータは、座席の前部から座席の後部に向かって、座席上の足の位置にほぼ一致して延びている少なくとも2つの(多かれ少なかれ並行な)列に配置されている。
【0039】
本発明によるタクタイル式アセンブリ、タクタイル式システムおよび車両座席は、乗用車、バス、ワゴン車およびトラックを含む種々異なる車両内に配置され得る。本発明によるタクタイル式アセンブリは、たとえば経路誘導指示、警報および車両ステータス情報に関する音響に基づく運転者情報システムの代わりに、または付加的に特に、たとえば救急車、消防車、警察車両のような特別な用途の車両のために適している。特に、プレッシャーやストレスにさらされる状態では、車両の運転者が、経路誘導および/または警報のためのタクタイルインプットを受け取ると有利である。
【0040】
以下に、本発明の制限しない例示的な実施形態をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明に係るタクタイル式アセンブリの実施形態を示す横断面図である。
【0042】
実施例
以下の実施例は、自動車の座席内に組み込まれた本発明に係るタクタイル式アセンブリに関する。まず、6つの振動モータとそのハードウェアドライバとを含むモジュールが組み立てられ、次いでこのモジュールは自動車の座席内に嵌め込まれる。
【0043】
モジュールは、第1の支持層としての延伸可能な連続した繊維を可能にするベルクロを使用することにより形成されている。この第1の支持層の上に、ケーシング内に入れられた、垂直方向に振動する6つの振動モータ(7mmの直径と24mmの長さを有する円筒形モータ)が、1cmの直径を有する円形のベルクロにより取り付けられている。この円形のベルクロは、エポキシ樹脂により振動モータに取り付けられている。振動モータは、それぞれ3つのモータを有する2つの列に配置されている。列間の距離は、約23cmであり、各列内におけるモータ間の距離(中心から中心)は約8cmである。
【0044】
柔軟なワイヤが、ワインディングパターンで各振動モータから対応する各ドライバハードウェアプリント配線板(振動モータ毎に1つのドライバハードウェアプリント配線板)へと延びている。したがって、ドライバハードウェアプリント配線板は、シングルアクチュエータドライバ基板である。シングルアクチュエータドライバ基板は、ベルクロにより、第1の支持層に取り付けられており、最終的なアセンブリとして、背もたれに配置される。ドライバ基板からは、ケーシングに入れられた制御モジュール基板(制御ユニット)へとケーブルが延びている。第2の支持層は、第1の支持層に縫い付けられていて、延伸可能な薄い布帛から成っている。
【0045】
モジュールを自動車座席に組み込むために、自動車座席クッションからカバーが取り除かれる。モジュールの第2の支持層は、スプレー接着剤によりカバーの内側に接着されている。自動車座席発泡材から、振動モータの位置に合わせて円筒形の穴6が切り取られる。この穴は、5cmの直径と2cmの深さとを有している。振動モータは、その最小の寸法(7mm)が穴のなかに延びているように配置されている。モジュールを含むカバーが、元の位置に戻され、自動車座席クッションに固定される。ドライバハードウェアプリント配線板に接続された制御モジュールは、タイラップにより自動車座席キャリッジに取り付けられている。