特許第6877476号(P6877476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877476
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】除雪車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   E01H 8/02 20060101AFI20210517BHJP
   B61D 49/00 20060101ALI20210517BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   E01H8/02
   B61D49/00 Z
   B61D15/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-43373(P2019-43373)
(22)【出願日】2019年3月11日
(65)【公開番号】特開2020-147895(P2020-147895A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】591117631
【氏名又は名称】株式会社NICHIJO
(73)【特許権者】
【識別番号】591244007
【氏名又は名称】仙建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 英樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸和
(72)【発明者】
【氏名】金田 脩佑
(72)【発明者】
【氏名】武山 ▲祐▼也
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−064543(JP,A)
【文献】 特許第6204699(JP,B2)
【文献】 特開2017−143658(JP,A)
【文献】 特開平06−064539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00−15/00
B61C 1/00−17/12
B61D 1/00−49/00
B61G 1/00−11/18
B61J 1/00−99/00
B61K 1/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を走行する車輪が設けられた車体と、支障物を通過する際に前記支障物に干渉する使用状態と前記支障物を避ける退避状態との間で移動可能な除雪部材を有し前記車体に搭載された除雪装置と、前記除雪部材を駆動するアクチュエータと、前記車体に搭載された無線通信可能な車上子とを備えた、運行方向に対して前進と後進が可能な除雪車両を制御する装置であって、
第1運行方向に関する第1情報と、前記第1運行方向とは反対向きの第2運行方向に関する第2情報とを、少なくとも1つの地上子から前記車上子を介して受信する受信部と、
前記除雪車両の前進方向を当該除雪車両が除雪作業を行う除雪方向とし、前記除雪方向前記運行方向として検知する運行方向検知部と、
前記運行方向検知部で検知された現在の運行方向に応じて、前記地上子から受信した前記第1 情報及び前記第2情報のいずれか一方を選択し、その選択された情報に基づいて前記アクチュエータを制御する除雪制御部と、を備え、
前記除雪制御部は、
前記運行方向検知部で検知される現在の運行方向が前記第1運行方向であると、前記少なくとも1つの地上子から受信した前記第1情報及び前記第2情報のうち、前記第2情報を参照せずに前記第1情報を参照して前記アクチュエータを制御し、
前記運行方向検知部で検知される現在の運行方向が前記第2運行方向であると、前記少なくとも1つの地上子から受信した前記第1情報及び前記第2情報のうち、前記第1情報を参照せずに前記第2情報を参照して前記アクチュエータを制御する、除雪車両の制御装置。
【請求項2】
前記除雪装置は、前記第1運行方向の先頭側となる前記車体の一端側に設けられた第1除雪装置と、前記第2運行方向の先頭側となる前記車体の他端側に設けられた第2除雪装置と、を含み、
前記運行方向検知部は、
前記第1除雪装置が有効で且つ前記第2除雪装置が無効であると判別されると、前記第1運行方向を現在の運行方向として検知し、
前記第2除雪装置が有効で且つ前記第1除雪装置が無効であると判別されると、前記第2運行方向を現在の運行方向として検知する、請求項1に記載の除雪車両の制御装置。
【請求項3】
前記運行方向検知部は、
前記第1除雪装置が電源オン状態又は前記第1除雪装置が非ロック状態であると、前記第1除雪装置が有効であると判別し、
前記第2除雪装置が電源オン状態又は前記第2除雪装置が非ロック状態であると、前記第2除雪装置が有効であると判別する、請求項2に記載の除雪車両の制御装置。
【請求項4】
前記除雪車両が、前記第1運行方向に向いた第1運転台と、前記第2運行方向に向いた第2運転台と、を備え、
前記運行方向検知部は、
前記第1運転台が有効で且つ前記第2運転台が無効であると判別されると、前記第1運行方向を現在の運行方向として検知し、
前記第2運転台が有効で且つ前記第1 運転台が無効であると判別されると、前記第2運行方向を現在の運行方向として検知する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除雪車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支障物を通過する際に前記支障物に干渉する使用状態と前記支障物を避ける退避状態との間で前記車体に対して移動可能な除雪部材を有する除雪装置を備えた除雪車両を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軌道上に積もった雪を除雪する車両として、ロータリ装置やラッセル装置等に設けられる除雪翼を備えた除雪車両が開示されている。この除雪車両では、軌道沿いに設置された予告データデポを検知すると、軌道脇の支障物のキロ程及び予告データデポのキロ程の各情報から、支障物よりも手前の閉じ動作開始位置を算出し、その閉じ動作開始位置に車両が到達すると除雪翼を閉じ動作させる。この制御により、支障物に対する除雪翼の干渉が自動的に回避される。
【0003】
特許文献2には、上り側の線路情報と下り側の線路情報との両方を共通のデータデポに記憶させ、上り側の線路情報と下り側の線路情報とを車両進行方向に応じて選択的に読み出す構成が開示されている。この構成によれば、同一軌道上を車両が往復する場合において上りと下りとの両方でデータデポが共用されるため、データデポが有効利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6204699号公報
【特許文献2】特開平6−64543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
除雪車両の場合には、除雪状況等によって前進と後進とを交互に繰り返す往復動作をする可能性がある。もしそのような往復動作をすると、前進時に地上子から信号を読み取って上り側の情報を参照した後に、後進時にも地上子から信号を読み取って下り側の情報を参照してしまうため、運行方向が変わったと誤検知されて除雪翼が意図しない動作をする可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、除雪車両が同一軌道上を往復する場合において、除雪車両が地上子付近で前進と後進とを交互に繰り返す往復動作をしても誤動作を防止できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る除雪車両の制御装置は、軌道を走行する車輪が設けられた車体と、支障物を通過する際に前記支障物に干渉する使用状態と前記支障物を避ける退避状態との間で移動可能な除雪部材を有し前記車体に搭載された除雪装置と、前記除雪部材を駆動するアクチュエータと、前記車体に搭載された無線通信可能な車上子とを備えた除雪車両を制御する装置であって、第1運行方向に関する第1情報と、前記第1運行方向とは反対向きの第2運行方向に関する第2情報とを、少なくとも1つの地上子から前記車上子を介して受信する受信部と、前記除雪車両が除雪作業を行う方向を運行方向として検知する運行方向検知部と、前記運行方向検知部で検知された現在の運行方向に応じて、前記地上子から受信した前記第1情報及び前記第2情報のいずれか一方を選択し、その選択された情報に基づいて前記アクチュエータを制御する除雪制御部と、を備え、前記除雪制御部は、前記運行方向検知部で検知される現在の運行方向が前記第1運行方向であると、前記少なくとも1つの地上子から受信した前記第1情報及び前記第2情報のうち、前記第2情報を参照せずに前記第1情報を参照して前記アクチュエータを制御し、前記運行方向検知部で検知される現在の運行方向が前記第2運行方向であると、前記少なくとも1つの地上子から受信した前記第1情報及び前記第2情報のうち、前記第1情報を参照せずに前記第2情報を参照して前記アクチュエータを制御する。
【0008】
前記構成によれば、除雪車両の運行方向を車両移動方向(車輪回転方向、速度発生方向)から判断するのではなく、除雪車両が「除雪作業を行う方向」を運行方向として検知する。そのため、除雪車両が地上子付近で前進と後進とを交互に繰り返す往復動作をしても、運行方向(除雪方向)が変わったと誤検知されることがない。よって、除雪車両が同一軌道上を往復する場合において、除雪車両の誤動作を防止できる。
【0009】
前記除雪装置は、前記第1運行方向の先頭側となる前記車体の一端側に設けられた第1除雪装置と、前記第2運行方向の先頭側となる前記車体の他端側に設けられた第2除雪装置と、を含み、前記運行方向検知部は、前記第1除雪装置が有効で且つ前記第2除雪装置が無効であると判別されると、前記第1運行方向を現在の運行方向として検知し、前記第2除雪装置が有効で且つ前記第1除雪装置が無効であると判別されると、前記第2運行方向を現在の運行方向として検知する構成としてもよい。
【0010】
前記構成によれば、第1除雪装置/第2除雪装置の有効/無効を判別することで、除雪車両が除雪作業を行う方向を容易に検知できる。
【0011】
前記運行方向検知部は、前記第1除雪装置が電源オン状態又は前記第1除雪装置が非ロック状態であると、前記第1除雪装置が有効であると判別し、前記第2除雪装置が電源オン状態又は前記第2除雪装置が非ロック状態であると、前記第2除雪装置が有効であると判別する構成としてもよい。
【0012】
前記構成によれば、除雪作業を行う方向を簡素かつ容易に判別できる。
【0013】
前記除雪車両が、前記第1運行方向に向いた第1運転台と、前記第2運行方向に向いた第2運転台と、を備え、前記運行方向検知部は、前記第1運転台が有効で且つ前記第2運転台が無効であると判別されると、前記第1運行方向を現在の運行方向として検知し、前記第2運転台が有効で且つ前記第1運転台が無効であると判別されると、前記第2運行方向を現在の運行方向として検知する構成としてもよい。
【0014】
前記構成によれば、除雪作業を行う方向を簡素かつ確実に判別できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、同一軌道上を往復する除雪車両の両運行方向で地上子を共有しても、除雪車両の誤動作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る除雪車両の側面図である。
図2図1に示す除雪車両の上方から見た平面図である。
図3図2に示す除雪車両の運転室内部の平面図である。
図4】変形例の図3相当の図面である。
図5図1に示す除雪車両と支障物と各タグとの関係を説明する概略平面図である。
図6図1に示す除雪車両の制御系統のブロック図である。
図7図6に示す制御装置のブロック図である。
図8図5に示す共有タグ上で往復動作したときの状態遷移を説明する図面である。
図9図7に示す制御装置の制御手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0018】
図1は、実施形態に係る除雪車両10の側面図である。図2は、図1に示す除雪車両10の上方から見た平面図である。図1及び2に示すように、除雪車両10は、軌道R及びその近傍に積もった雪を取り除きながら軌道R上を走行する車両である。除雪車両10は、軌道Rの延在方向に延びる車体1と、車体1を支持して軌道R上を転動する車輪Wと、車体1の長手方向一方側に設けられたロータリ装置2(第1除雪装置)と、車体1の長手方向他方側に設けられたラッセル装置3(第2除雪装置)と、を備える。車体1には、車輪Wに伝達される回転動力を発生するエンジンEが搭載されている。車体1には、オペレータが搭乗する運転室Cが設けられている。なお、車体1の長手方向両側に設ける除雪装置は、ロータリ装置及びラッセル装置に限られず、他の形態のものでもよい。
【0019】
ロータリ装置2は、ロータリ支持体20、ロータリ刃21、ロータリアクチュエータ22、一対の移動翼23(除雪部材)、一対の翼アクチュエータ24、フランジャ25(除雪部材)、フランジャアクチュエータ26及び排雪装置27を有する。ロータリ支持体20は、車体1に固定されている。ロータリ刃21、ロータリアクチュエータ22、移動翼23、翼アクチュエータ24、フランジャ25、フランジャアクチュエータ26及び排雪装置27は、ロータリ支持体20に支持されている。
【0020】
ロータリ刃21は、螺旋状の刃を有し、車幅方向(枕木方向)に延びる回転軸線周りに回転して雪を掻き込む。ロータリアクチュエータ22は、ロータリ刃21を回転駆動する。移動翼23は、平面視においてロータリ支持体20に対して角度変更可能に取り付けられることで、車体1に対して移動可能に構成されている。翼アクチュエータ24は、移動翼23を使用状態(開状態)と退避状態(閉状態)との間で動作させる。翼アクチュエータ24は、一対の移動翼23の両方を同時に動作させることも一方のみを動作させることも可能である。移動翼23は、使用状態において、車両長手方向の先端側(車両長手方向における車体1と反対側)に向かうにつれて車幅方向外側に拡がるように傾斜する。使用状態の移動翼23は、軌道Rの脇に積もった雪をロータリ刃21に向けて案内する。
【0021】
使用状態の移動翼23の車幅方向の最外端は、車体1よりも車幅方向外側に位置する。退避状態の移動翼23の車幅方向の最外端は、使用状態の移動翼23の車幅方向の最外端よりも車体中心線X寄り(車幅方向内側)に位置する。使用状態の移動翼23は、軌道Rの脇に存在する支障物Q(図3参照)を通過する際に支障物に干渉するが、退避状態の移動翼23は、支障物Qを避ける。なお、支障物Qは、例えば、駅プラットフォームやトンネル等の建設物であるが、それ以外のものでもよい。
【0022】
フランジャ25は、平面視において車体中心線X上に配置されている。フランジャ25は、ロータリ支持体20から地面に向けて下方に突出した使用状態と、使用状態から上方に退避した退避状態との間で昇降可能に設けられている。フランジャアクチュエータ26は、フランジャ25を使用状態と退避状態との間で動作させる。フランジャ25は、使用状態において軌道Rの一対のレール間に積もった雪を掻き取る。使用状態のフランジャ25は、軌道Rの一対のレール間に存在する支障物(例えば、踏切の路面)を通過する際に支障物に干渉するが、退避状態のフランジャ25は、当該支障物を避ける。ロータリ刃21が掻き込んだ雪及びフランジャ25が掻き取った雪は、ブロアによって上方に跳ね上げられ、その跳ね上げられた雪は排雪装置27(例えば、投雪筒)によって任意の方向(例えば、側方)に向けて車外に排出される。
【0023】
ラッセル装置3は、ラッセル支持体30、固定翼31、移動翼32(除雪部材)、翼アクチュエータ33、フランジャ34(除雪部材)及びフランジャアクチュエータ35を有する。ラッセル支持体30は、車体1に固定されている。固定翼31、移動翼32、翼アクチュエータ33、フランジャ34及びフランジャアクチュエータ35は、ラッセル支持体30に支持されている。
【0024】
固定翼31は、ラッセル支持体30の車両長手方向先端に固定されている。固定翼31は、車体長手方向の車体1側(即ち、第2運行方向における後方)に向かうにつれて車幅方向外側に拡がるように傾斜し、軌道Rに積もった雪を車幅方向外方に案内する。移動翼32は、平面視においてラッセル支持体30又は固定翼31に対して角度変更可能に取り付けられることで、車体1に対して移動可能に構成されている。翼アクチュエータ33は、移動翼32を使用状態(開状態)と退避状態(閉状態)との間で動作させる。翼アクチュエータ33は、一対の移動翼32の両方を同時に動作させることも一方のみを動作させることも可能である。移動翼32は、使用状態において、車両長手方向の車体1側に向かうにつれて車幅方向外側に拡がるように傾斜する。使用状態の移動翼32は、固定翼31に案内された雪及び軌道R脇に積もった雪を車幅方向外方に案内して排雪する。
【0025】
使用状態の移動翼32の車幅方向の最外端は、車体1よりも車幅方向外側に位置する。退避状態の移動翼32の車幅方向の最外端は、使用状態の移動翼32の車幅方向の最外端よりも車体中心線X寄り(車幅方向内側)に位置する。使用状態の移動翼32は、軌道Rの脇に存在する支障物Q(図3参照)を通過する際に支障物に干渉するが、退避状態の移動翼32は、軌道Rの脇に存在する支障物Qを避ける。
【0026】
フランジャ34は、平面視において車体中心線X上に配置されている。フランジャ34は、固定翼31から地面に向けて下方に突出した使用状態と、使用状態から上方に退避した退避状態との間で昇降可能に設けられている。フランジャアクチュエータ35は、フランジャ34を使用状態と退避状態との間で動作させる。フランジャ34は、使用状態において、軌道Rの一対のレール間に積もった雪を掻き取り、固定翼31に案内する。使用状態のフランジャ34は、軌道Rの一対のレール間に存在する支障物(例えば、踏切の路面)を通過する際に支障物に干渉するが、退避状態のフランジャ34は、当該支障物を避ける。
【0027】
車体1の下部には、地面に面するように一対のアンテナ17A,17B(車上子)が設けられている。一対のアンテナ17A,17Bは、互いの車幅方向(枕木方向)の位置が同じで、かつ、車体1の長手方向(軌道方向)に互いに離間している。アンテナ17A,17Bは、除雪車両10の走行時に、地面側に設置された後述のRFIDタグ7(地上子)の真上を通過してRFIDタグ7と無線通信するように車体1に取り付けられている。
【0028】
図3は、図2に示す除雪車両10の運転室C内部の平面図である。図1及び3に示すように、運転室Cには、1つの運転台11が設けられている。運転台11には、除雪車両10の走行操作に使用されるアクセル及びブレーキを含む運転操作器41(図7参照)が設けられている。運転台11には、配電箱14が収容されている。運転室Cには、別の配電箱16も設けられており、配電箱16には、コントローラ13が収容されている。
【0029】
運転室Cには、ロータリ作業台12A及びラッセル作業台12Bが設けられている。ロータリ作業台12Aは、ロータリ装置2側に向かう第1運行方向に除雪作業を行う際にロータリ装置2を操作するために使用され、ロータリ装置2側を向いている。ラッセル作業台12Bは、ラッセル装置3側に向かう第2運行方向(第1運行方向とは逆向きの方向)に除雪作業を行う際にラッセル装置3を操作するために使用され、ラッセル装置3側を向いている。
【0030】
ロータリ作業台12Aには、ロータリ電源スイッチ37A及びロータリ側ロックスイッチ38Aが設けられている。ロータリ電源スイッチ37Aは、ロータリ装置2の電源をオン/オフするスイッチであり、オペレータに操作される。ロータリ側ロックスイッチ38Aは、ロータリ装置2を使用不可にすべく除雪部材(移動翼2、,フランジャ25)を機械的にロックするようにロック機構(図示せず)を動作させるスイッチであり、オペレータに操作される。
【0031】
ラッセル作業台12Bには、ラッセル電源スイッチ37B及びラッセル側ロックスイッチ38Bが設けられている。ラッセル電源スイッチ37Bは、ラッセル装置3の電源をオン/オフするスイッチであり、オペレータに操作される。ラッセル側ロックスイッチ38Bは、ラッセル装置3を使用不可にすべくラッセル装置3を機械的にロックするようにロック機構(図示せず)を動作させるスイッチであり、オペレータに操作される。
【0032】
なお、本実施形態では運転台11が1つである例を示したが、運転台は2つでもよい。例えば、図4の変形例では、運転室Cに、ロータリ側運転台11A(第1運転台)及びラッセル側運転台11B(第2運転台)が設けられている。ロータリ側運転台11Aは、ロータリ装置2側に向かう第1運行方向に除雪作業を行う際にオペレータに操作され、ロータリ装置2側を向いている。ラッセル側運転台11Bは、ラッセル装置3側に向かう第2運行方向(第1運行方向とは逆向きの方向)に除雪作業を行う際にオペレータに操作され、ラッセル装置3側を向いている。その場合、運転室Cには、運転台切替スイッチ39が設けられる。運転台切替スイッチ39は、ロータリ側運転台11A又はラッセル側運転台11Bのいずれか一方を択一的に有効(即ち、操作可能)にするものであり、オペレータに操作される。
【0033】
図5は、図1に示す除雪車両10と支障物Qと各タグ7A〜C,7A’との関係を説明する概略平面図である。図5に示すように、軌道Rの一対のレール間(例えば、枕木中央)には、複数のRFIDタグ7(地上子)が互いに軌道Rの延在方向に離間して設置されている。具体的には、RFIDタグ7は、予告タグ7A,7A’、制御/解除タグ7B(共有タグ)及び解除/制御タグ7C(共有タグ)を含む。制御/解除タグ7Bは、第1運行方向において、支障物Qよりも入口側に設置されている。制御/解除タグ7Bは、後述の退避動作開始位置に設置されている。予告タグ7Aは、制御/解除タグ7Bから見て支障物Qとは反対側、即ち、制御/解除タグ7Bよりも入口側に設置されている。解除/制御タグ7Cは、第1運行方向において支障物Qの出口側に設置されている。
【0034】
予告タグ7Aは、第1運行方向において除雪車両10が予告位置に到達したことを意味する予告情報を読取可能に記憶している。当該予告情報は、第1運行方向において除雪車両10が制御/解除タグ7Bに到達するときの走行速度の上限値(即ち、制限速度)を含む。予告タグ7A’は、第2運行方向において除雪車両10が予告位置に到達したことを意味する予告情報を読取可能に記憶している。当該予告情報は、第2運行方向において除雪車両10が解除/制御タグ7Cに到達するときの走行速度の上限値(即ち、制限速度)を含む。
【0035】
制御/解除タグ7B及び解除/制御タグ7Cは、第1運行方向と第2運行方向とで共用される共用タグである。即ち、制御/解除タグ7Bは、第1運行方向における制御タグの機能と、第2運行方向における解除タグの機能とを兼ねる。解除/制御タグ7Cは、第1運行方向における解除タグの機能と、第2運行方向における制御タグの機能とを兼ねる。なお、第1運行方向における支障物Qのための予告タグ7A、及び、第2運行方向における支障物Qのための予告タグ7A’は、共用タグではなく、他の機能のタグを兼ねていない。
【0036】
制御/解除タグ7Bは、第1運行方向において除雪車両10が退避動作開始位置に到達したことを意味する制御情報(第1情報)を読取可能に記憶している。当該制御情報は、移動可能な各除雪部材(移動翼23,32及びフランジャ25,34)のうち支障物Qに干渉し得るものを強制的に使用状態から退避状態に動作させる自動退避制御を開始させることを意味する情報を含む。よって、移動可能な除雪部材が複数種類ある場合には、当該制御情報は、自動退避制御をする必要のある除雪部材の種類を示す情報を含む。更に、制御/解除タグ7Bは、第2運行方向において除雪車両10が支障物Qを通過したことを意味する解除情報(第2情報)を読取可能に記憶している。当該解除情報は、自動退避制御を解除させることを意味する情報を含む。移動可能な除雪部材が複数種類ある場合には、当該解除情報は、自動退避制御を解除させる必要のある除雪部材の種類を示す情報を含む。
【0037】
解除/制御タグ7Cは、第1運行方向において除雪車両10が支障物Qを通過したことを意味する解除情報(第1情報)を読取可能に記憶している。当該解除情報は、自動退避制御を解除させることを意味する情報を含む。移動可能な除雪部材が複数種類ある場合には、当該解除情報は、自動退避制御を解除させる必要のある除雪部材の種類を示す情報を含む。更に、解除/制御タグ7Cは、第2運行方向において除雪車両10が退避動作開始位置に到達したことを意味する制御情報(第2情報)を読取可能に記憶している。当該制御情報は、移動可能な各除雪部材(移動翼23,32及びフランジャ25,34)のうち支障物Qに干渉し得るものを強制的に使用状態から退避状態に動作させる自動退避制御を開始させることを意味する情報を含む。よって、移動可能な除雪部材が複数種類ある場合には、当該制御情報は、自動退避制御をする必要のある除雪部材の種類を示す情報を含む。
【0038】
図6は、図1に示す除雪車両10の制御系統のブロック図である。図6に示すように、除雪車両10は、制御系統として、コントローラ13、配電箱14及びアンテナ17A,17Bを備える。コントローラ13には、配電箱14、エンジンE及び各アクチュエータ22,24,33,35が電気的に接続されている。配電箱14は、一対のリーダライタ18A,18B及びコントローラ19を備える。リーダライタ18Aは、前述したアンテナ17Aに電気的に接続され、リーダライタ18Bは、前述したアンテナ17Bに電気的に接続されている。
【0039】
即ち、除雪車両10の走行時にアンテナ17A,17Bによって地上に設置されたRFIDタグ7から受信された無線信号は、リーダライタ18A,18Bに送られる。コントローラ19は、リーダライタ18A,18B及びコントローラ13に電気的に接続されている。コントローラ19は、RFIDタグ7からアンテナ17A、17B及びリーダライタ18A,18Bを介して信号を受信可能であると共に、コントローラ13と相互に信号を送受可能である。
【0040】
なお、図6の例では、アンテナ17A,17B及びリーダライタ18A,18Bを2つずつ設けて二重化による信頼性向上が図られているが、アンテナ及びリーダライタは1つずつの1系統のみでもよい。また、図6の例では、コントローラ13,19が2つに分散されているが、1つのコントローラに統合されていてもよい。そこで、以下の説明では、コントローラ13,19を併せて制御装置5と称することにする。
【0041】
図7は、図6に示す制御装置5のブロック図である。図7に示すように、制御装置5の入力側には、ロータリ電源スイッチ37A、ラッセル電源スイッチ37B、ロータリ側ロックスイッチ38A、ラッセル側ロックスイッチ38B、リーダライタ18A,18B、運転操作器41及び車速センサ42が電気的に接続されている。なお、運転操作器41は、オペレータが車速等を手動調節するための入力機器(例えば、アクセル操作器やブレーキ操作器等)である。車速センサ42は、除雪車両10の走行速度を検出するセンサであり、例えば、車輪Wの回転速度を検出するセンサである。
【0042】
制御装置5は、ハードウェア面において、プロセッサ、揮発性メモリ及び不揮発性メモリ等を有する。制御装置5は、機能面において、運行方向検知部51、受信部52、除雪制御部53及び車速制御部54を有する。各部51〜54は、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。
【0043】
運行方向検知部51は、除雪車両10の現在の運行方向を検知する。運行方向検知部51は、除雪車両10の運行方向として、除雪車両10が除雪作業を行う方向(「除雪方向」と称す)を検知する。「除雪方向」は、除雪車両10の移動方向(進行方向)とは同一の概念ではない。運行方向検知部51は、車速センサ42からの情報に基づいて得られる移動方向(進行方向)を検知するのではない。即ち、運行方向検知部51は、後進方向を運行方向と検知することはなく、前進方向を運行方向(除雪方向)として検知する。よって、除雪車両10が何らかの理由によって少し後進してから再び前進する動作をした場合であっても、その後進時に運行方向が変わったと誤認識することがない。
【0044】
運行方向検知部51は、除雪作業を行う方向を判別可能な車載機器のオペレータによる操作の情報に基づいて、除雪車両10の現在の運行方向を検知する。例えば、運行方向検知部51は、ロータリ装置2が有効で且つラッセル装置3が無効であると判別されると、第1運行方向を現在の運行方向として検知する一方、ラッセル装置3が有効で且つロータリ装置2が無効であると判別されると、第2運行方向を現在の運行方向として検知する。
【0045】
具体的には、運行方向検知部51は、ロータリ電源スイッチ41Aが電源オフ状態であると、ロータリ装置2が無効であると判別し、ラッセル電源スイッチ41Bが電源オフ状態であると、ラッセル装置3が無効であると判別する。また、運行方向検知部51は、ロータリ側ロックスイッチ38Aが非ロック状態であると、ロータリ装置2が有効であると判別し、ラッセル側ロックスイッチ38Bが非ロック状態であると、ラッセル装置3が有効であると判別する。なお、1つの除雪装置の複数の部分の夫々にロック機構がある場合には、運行方向検知部51は、少なくとも1つのロック機構が非ロック状態となると除雪装置が有効であると判別し、1つの除雪装置の全てのロック機構がロック状態となると除雪装置が無効であると判別する構成としてもよい。
【0046】
なお、運行方向検知部51は、運転室C内のロータリロックスイッチ42A及びラッセルロックスイッチ42Bを参照してロータリ装置2及びラッセル装置3のロック状態を判別する代わりに、ロータリ装置2及びラッセル装置3の夫々に設けられたロック検知センサを参照してロータリ装置2及びラッセル装置3のロック状態を判別する構成としてもよい。
【0047】
また、図4の変形例の場合には、前記した検知方法に加え、以下の方法によって運行方向を検知してもよい。即ち、運行方向検知部51は、ロータリ側運転台12Aが有効で且つラッセル側運転台12Bが無効であると判別されると、第1運行方向を現在の運行方向として検知する一方、ラッセル側運転台12Bが有効で且つロータリ側運転台12Aが無効であると判別されると、第2運行方向を現在の運行方向として検知する構成としてもよい。具体的には、運行方向検知部51は、運転台切替スイッチ39がロータリ側運転台11Aを有効とする側に選択されていると、第1運行方向を現在の運行方向として検知する一方、運転台切替スイッチ39がラッセル側運転台11Bを有効とする側に選択されていると、第2運行方向を現在の運行方向として検知する構成としてもよい。また、オペレータを要しない自動運転機能を有する除雪車両の場合には、車両外部から除雪作業を行う方向を入力(例えば、無線指令)し、その入力情報に基づいて除雪方向を判別する構成としてもよい。
【0048】
受信部52は、RFIDタグ7からアンテナ17A,17Bを介してリーダライタ18A,18Bが読み取った信号を受信する。受信部52が予告タグ7Aから受信する信号は、第1運行方向において除雪車両10が予告位置に到達したことを意味する予告情報を含む。受信部52が制御/解除タグ7Bから受信する信号は、第1運行方向において除雪車両10が退避動作開始位置に到達したことを意味する制御情報(第1情報)と、第2運行方向において除雪車両10が支障物Qを通過したことを意味する解除情報(第2情報)との両方を含む。受信部52が解除/制御タグ7Cから受信する信号は、第1運行方向において除雪車両10が支障物Qを通過したことを意味する解除情報(第1情報)と、第2運行方向において除雪車両10が退避動作開始位置に到達したことを意味する制御情報(第2情報)との両方を含む。
【0049】
受信部52が制御/解除タグ7Bからの信号を受信したとき、除雪制御部53は、運行方向検知部51で検知された現在の運行方向が第1運行方向であると、その受信部52で受信された制御情報(第1情報)及び解除情報(第2情報)のうち制御情報を選択し、その選択された制御情報を参照することで、除雪車両10が退避動作開始位置に到達したと判断する。即ち、除雪制御部53は、受信部52が受信した解除情報を参照せず無視する。
【0050】
そして、除雪制御部53は、その制御情報が指示する種類の除雪部材、即ち支障物Qに干渉し得る除雪部材(移動翼23、フランジャ25、移動翼32及びフランジャ34から選ばれる除雪部材(移動翼23))を使用状態から退避状態に退避させるようにアクチュエータ22,24,33,35(翼アクチュエータ24)を制御する(自動退避制御)。なお、除雪制御部53は、オペレータの操作に応じて、アクチュエータ22,24,33,35を駆動し、除雪部材を使用状態と退避状態との間で動作させる手動制御も実行され得るが、自動退避制御の実行中には、手動制御は無効化される。
【0051】
受信部52が解除/制御タグ7Cからの信号を受信したとき、除雪制御部53は、運行方向検知部51で検知された現在の運行方向が第1運行方向であると、その受信部52で受信された解除情報(第1情報)及び制御情報(第2情報)のうち解除情報を選択し、その選択された解除情報を参照することで、自動退避制御を解除する。これにより、オペレータによる手動操作が優先される状態に戻ることとなる。即ち、除雪制御部53は、受信部52が受信した制御情報を参照せず無視する。
【0052】
なお、除雪制御部53は、運行方向検知部51で検知された現在の運行方向が第2運行方向であると、受信部52で受信された信号に含まれる第1情報及び第2情報のうち第2情報(制御/解除タグ7Bの解除情報、及び、解除/制御タグ7Cの制御情報)を選択し、第1情報(制御/解除タグ7Bの制御情報、及び、解除/制御タグ7Cの解除情報)を参照せず無視する。
【0053】
車速制御部54は、基本的には、オペレータによる手動操作に応じてエンジンEを制御する(手動車速制御)。しかし、受信部52が予告タグ7Aからの信号を受信したとき、車速制御部54は、運行方向検知部51で検知された現在の運行方向が第1運行方向であると、その受信部52で受信された予告情報を参照し、その後に制御/解除タグ7B(退避動作開始位置)に到達する時点の車速VSが所定の制限速度VL以下になるようにエンジンEを制御する(速度制限制御)。予告タグ7Aから制御タグ7Bまでの距離Lと制限速度VLとは、当該信号に含まれ、アンテナ17A,17Bからリーダライタ18A,18Bを介して車速制御部54に受信される。
【0054】
前記のような構成によれば、制御/解除タグ7Bが第1運行方向における制御タグと第2運行方向における解除タグとを兼ね、解除/制御タグ7Cが第1運行方向における解除タグと第2運行方向における制御タグとを兼ねるので、地上に設置するRFIDタグの数が少なくて済み、部品コスト及び設置コストが削減される。また、予告タグが解除タグを兼ねるのではなく、制御タグが解除タグを兼ねるので、支障物Qから解除タグまでの距離が長くなることが防止される。よって、除雪車両10が支障物Qを通過した後には速やかに自動退避制御を解除して移動翼23を使用状態に戻すことが可能になり、効率良く除雪作業を行うことができる。なお、制御タグを用いない場合(退避動作開始位置を演算で求める場合)や支障物Qから解除タグまでの距離が長くなってもよい場合等には、第1運行方向の予告タグに第2運行方向の解除タグを兼ねさせてもよい。
【0055】
図8は、図5に示す共有タグ7B,7C上で往復動作したときの状態遷移を説明する図面である。図9は、図7に示す制御装置5の制御手順を説明するフローチャートである。以下、適宜図8等を参照しながら図9の流れに沿って説明する。なお、制御/解除タグ7B及び解除/制御タグ7Cを共有タグ7”と一般化し、制御/解除タグ7Bの制御情報及び解除/制御タグ7Cの解除情報を第1情報とし一般化し、制御/解除タグ7Bの解除情報及び解除/制御タグ7Cの制御情報を第2情報とし一般化して説明する。
【0056】
運行方向検知部51は、現在の運行方向が第1運行方向であるか第2運行方向であるかを検知する(ステップS1)。ここでは、現在の運行方向が第1運行方向であると仮定する。図8(A)に示すように、除雪車両10が前進してアンテナ18Aが共有タグ7”を検知すると、アンテナ18Aが共有タグ7”から信号を受信する(ステップS2:Y)。その受信された信号は、第1情報及び第2情報の両方を含む。次いで、除雪制御部53は、現在の運行方向が第1運行方向であると、第1情報及び第2情報のうち第1情報を選択して参照し(ステップS4)、除雪部材(例えば、除雪翼23)のアクチュエータを制御する(ステップS6)。
【0057】
次いで、図8(B)に示すように、アンテナ18Aが共有タグ7”を前方に通り過ぎた直後に除雪車両10が後進すると、アンテナ18Aが共有タグ7”を再び検知し、アンテナ18Aが共有タグ7”から信号を再び受信する(ステップS2:Y)。しかし、運行方向検知部51は、第1運行方向を現在の運行方向として検知したままであるので、除雪制御部53は、当該信号に含まれる第1情報及び第2情報の両情報から第2情報を選択せずに第1情報を選択して参照し(ステップS4)、除雪部材(例えば、除雪翼23)のアクチュエータを継続して制御する(ステップS6)。
【0058】
次いで、図8(C)に示すように、アンテナ18Aが共有タグ7”を後方に通り過ぎた直後に除雪車両10が再び前進すると、アンテナ18Aが共有タグ7”を再び検知し、アンテナ18Aが共有タグ7”から信号を再び受信する(ステップS2:Y)。運行方向検知部51は、第1運行方向を現在の運行方向として検知しているので、除雪制御部53は、当該信号に含まれる第1情報及び第2情報の両情報から第1情報を選択して参照し(ステップS4)、除雪部材(例えば、除雪翼23)のアクチュエータを継続して制御する(ステップS6)。
【0059】
以上のように、運行方向検知部51は、除雪車両10の運行方向を車両移動方向(即ち、車輪回転方向/速度発生方向)から判断するのではなく、除雪車両10が「除雪作業を行う方向」から運行方向を判断する。そのため、除雪車両10が共有タグ7”付近で前進と後進とを交互に繰り返す往復動作をしても、運行方向(除雪方向)が変わったと誤検知されることがない。よって、移動翼23が開閉を繰り返す等の不所望な動作の発生を防止できる。
【0060】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。例えば、前述した実施形態では、第1運行方向に関する第1情報と、第2運行方向に関する第2情報とを1つの地上子(共有タグ)に記憶させ、共有タグから車上子が読み取る信号に第1情報及び第2情報の両方が含まれる態様としていたが、そのような態様に限られない。例えば、第1運行方向に関する第1情報を第1地上子に記憶させ、第2運行方向に関する第2情報を第1地上子とは異なる第2地上子に記憶させる態様としてもよい。その場合、車両が第1運行方向に除雪作業中のとき、除雪制御部は、第1地上子から車上子を介して読み取った第1情報を参照して制御を行う一方で、第2地上子から車上子を介して読み取った第2情報は参照しない。同様に、車両が第2運行方向に除雪作業中のとき、除雪制御部は、第1地上子から車上子を介して読み取った第1情報は参照しない一方で、第2地上子から車上子を介して読み取った第2情報を参照して制御を行う。
【0061】
また、「除雪部材」は、軌道又はその近傍の除雪を行うための部材であれば、翼やフランジャ以外の形態でもよい。「地上子」は、RFIDタグに限られず、データデポ等でもよい。制御タグを廃止して予告タグ及び解除タグのみを使用してもよい。即ち、退避動作開始位置は、予告タグからの距離として予告タグに記憶され、予告タグを検知した時点から車速に基づいて走行距離をカウントし、そのカウントされる走行距離に基づいて退避動作開始位置に到達したか否かを判定する構成としてもよい。その場合、第1運行方向の予告タグを第2運行方向の解除タグを兼ねた共有タグとし、第1運行方向の解除タグを第2運行方向の予告タグを兼ねた共有タグとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 車体
5 制御装置
7 RFIDタグ
7” 共有タグ
7A,7A’ 予告タグ(地上子)
7B 制御/解除タグ(共有タグ:地上子)
7C 解除/制御タグ(共有タグ:地上子)
10 除雪車両
11A ロータリ側運転台(第1運転台)
11B ラッセル側運転台(第2運転台)
17A,17B アンテナ(車上子)
23 移動翼(除雪部材)
24 翼アクチュエータ(アクチュエータ)
25 フランジャ(除雪部材)
26 フランジャアクチュエータ(アクチュエータ)
32 移動翼(除雪部材)
33 翼アクチュエータ(アクチュエータ)
34 フランジャ(除雪部材)
35 フランジャアクチュエータ(アクチュエータ)
51 運行方向検知部
52 受信部
53 除雪制御部
54 車速制御部
Q 支障物
R 軌道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9