(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877493
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】貯蔵タンク構造物
(51)【国際特許分類】
B65D 90/12 20060101AFI20210517BHJP
F17C 13/08 20060101ALI20210517BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
B65D90/12 Z
F17C13/08 302B
B63B25/16 F
B63B25/16 101B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-127712(P2019-127712)
(22)【出願日】2019年7月9日
(65)【公開番号】特開2020-11775(P2020-11775A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年7月9日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0081372
(32)【優先日】2018年7月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518115573
【氏名又は名称】ドンスン ファインテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGSUNG FINETEC CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム カブ ス
(72)【発明者】
【氏名】オウ サン ミン
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−341597(JP,A)
【文献】
特開2000−168887(JP,A)
【文献】
特開2006−272053(JP,A)
【文献】
特開平06−337097(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0136529(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00−90/66
F17C 1/00−13/12
B63B 1/00−69/00
B63J 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の底面に設けられ、貯蔵タンクを支持する支持部;
前記支持部の両側面に設けられる断熱材;
前記支持部の予め設定された高さに設けられ、前記支持部の高さ方向と垂直に形成される溝部;及び
前記溝部の長手方向に予め設定された長さで延びるプレート部;
を含み、
前記溝部の内部は、接着部で満たされることを特徴とし、
前記支持部の側面と前記断熱材との間には、絶縁材が設けられ、
前記絶縁材の一端部は、前記プレート部に接することを特徴とする、貯蔵タンク構造物。
【請求項2】
前記プレート部は、断面が「L」字状であり、
前記プレート部の端部は、前記溝部の内面に締結されることを特徴とする、請求項1に記載の貯蔵タンク構造物。
【請求項3】
前記絶縁材は、前記支持部の上部から、隣り合う支持部との間まで延び、ドレインホールから漏出された液化天然ガスを捕集することを特徴とする、請求項1に記載の貯蔵タンク構造物。
【請求項4】
前記断熱材の下部には、補助プレートが設けられることを特徴とする、請求項1に記載の貯蔵タンク構造物。
【請求項5】
前記溝部は、前記支持部の移送のための「L」字状の治具が挿入されて固定されるように予め設定された長さと高さを有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の貯蔵タンク構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵タンク構造物に関し、より詳しくは、液化天然ガス貯蔵タンクの支持部の側面に沿って発生し得る漏出を防止する貯蔵タンク構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
LNGのような液体貨物を海上で輸送または保管する、LNG輸送船、LNG RV、LNG FPSO、LNG FSRUなどのような海上の構造物内には、LNGを極低温状態で貯蔵するための貯蔵タンクが設けられている。
【0003】
LNG貯蔵タンクは、代表的に、独立型(Independent Type)と、メンブレン型(Membrane Type)とに大別される。代表的に、メンブレン型貯蔵タンクは、GTT NO 96、Mark III、及びCS1に分けられ、独立型貯蔵タンクは、MOSS型とSPB型とに分けられる。なお、独立型LNG貯蔵タンクには、その構造上、LNG貯蔵タンクを船舶や構造物内の船体の底面に載せることができる支持構造が求められている。
【0004】
独立型貯蔵タンクから漏出された極低温の液化天然ガスは、船舶やインナーハル(inner hull)のような周辺の部材に直接的にダメージを与える。従って、タンクに積載されている極低温の液化天然ガスの漏出を防止し得る構造、及び漏出された極低温の液化天然ガスを収集するための収集装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10−2009−013225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、貯蔵タンクの支持部に溝を形成し、アングルプレートを締結することで、貯蔵タンクの支持部の側面に沿って発生し得る極低温の液化天然ガスの漏出を防止することができる貯蔵タンク構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述のような技術的課題を解決するための本発明に係る貯蔵タンク構造物は、船体の底面に設けられ、貯蔵タンクを支持する支持部;前記支持部の両側面に設けられる断熱材;前記支持部の予め設定された高さに設けられ、前記支持部の高さ方向と垂直に形成される溝部;及び、前記溝部の長手方向に予め設定された長さで延びるプレート部;を含み、前記溝部の内部は、接着部で満たされることを特徴とする。
【0008】
前記プレート部は、断面が「L」字状であり、前記プレート部の端部は、前記溝部の内面に締結されることを特徴とする。
【0009】
前記支持部の側面と前記断熱材との間には、絶縁材が設けられ、前記絶縁材の一端部は、前記プレート部に接することを特徴とする。
【0010】
前記絶縁材は、前記支持部の上部から、隣り合う支持部との間まで延び、ドレインホールから漏出された液化天然ガスを捕集することを特徴とする。
【0011】
前記断熱材の下部には、補助プレートが設けられることを特徴とする。
【0012】
前記溝部は、前記支持部の移送のための「L」字状の治具、または、前記溝部に固定可能な形状の治具が挿入固定されるように予め設定された長さと高さとを有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溝部にプレート部を設け、その設置作業が簡単であり、溝部にセット及び固定され得る治具によって支持部の移動及び取り扱いが容易に行われる。また、支持部、断熱材、絶縁材の間を密封するための作業をさらに行う必要がなく、液化天然ガスの漏出を安定的に遮断するとともに外部からの熱浸透を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る貯蔵タンク構造物の一実施例を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る貯蔵タンク構造物の他の実施例を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る貯蔵タンク構造物の支持部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例を詳述する。なお、本発明は、種々に変形して実施することができ、後述の実施例に限定されない。また、図面において、本発明を明確に説明するため、説明と無関係な部分を省略し、明細書中、同様な部分には、同様な符号を付してある。
【0016】
以下、本発明の好適な実施例を、添付の図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1は、本発明に係る貯蔵タンク構造物の一実施例を示す断面図であり、
図2は、
図1中の「A」部の拡大断面図であり、
図3は、本発明に係る貯蔵タンク構造物の他の実施例を示す断面図であり、
図4は、本発明に係る貯蔵タンク構造物の支持部を示す概略図である。
【0018】
図1〜
図2、
図4に示されるように、本発明の一実施例に係る貯蔵タンク構造物は、支持部110、断熱材120、絶縁材130、プレート部140、補助プレート150を含む。
【0019】
支持部110は、船体20の底面に設けられ、貯蔵タンク10を支持するものである。支持部110は、船体20の底面に接する基部30と、貯蔵タンク10との間に設けられ、貯蔵タンク10の荷重を支持するとともに貯蔵タンク10の荷重を船体の底面に伝達する。
【0020】
支持部110は、木材で作ることができるが、支持部110の材質は、木材に限定されない。支持部110は、直六面体形状であることができ、円柱形状であることもできる。
【0021】
支持部110の両側には、断熱材120が密着され、断熱材120は、ポリウレタンフォームのような物質で形成することができる。支持部110の予め設定された高さには、溝部111が設けられ、溝部111には、プレート部140の端部が締結される。
【0022】
溝部111は、支持部110の予め設定された高さに設けられ、支持部110の高さの中間部分に設けることができるが、液化天然ガスの漏出を防止するため、中間部分以外の部分に溝部111を形成することができる。
【0023】
溝部111が支持部110の上部に位置する場合、漏出された液化天然ガスの移動通路が短くなることができる。
【0024】
図4を参照すると、溝部111は、支持部110の中間高さに設けられるように例示されているが、溝部111が支持部110の中間高さに設けられると、溝部111に、「L」字状、または前記溝部111に挿入固定可能な「L」字状を除く他の形状の治具180が挿入固定され、治具180に連結されたリフティングロープ(lifting rope)190により、支持部110の安定的な移送が行われるようになる。なお、本実施例において、治具180は、「L」字状として例示されているが、溝部111への安定的な挿入及び固定が可能であれば、「┐」字状、「T」字状などの形状であることができ、その形状は「L」字状に限定されない。
【0025】
この場合、溝部111は、治具180を挿入固定するため、支持部110の高さ方向に垂直な、予め設定された長さと予め設定された高さに切り込まれる。
【0026】
図2に示されるように、プレート部140は、溝部111の長手方向に予め設定された長さで延び、液化天然ガスの漏出及びその進展を防止するためのものである。
【0027】
プレート部140は、その一端部が溝部111に挿入され、溝部111の内面に締結装置143により締結される。プレート部140は、その断面が直線状または「T」字状であることができるが、
図2のように、その断面が「L」字状であることができる。但し、プレート部140の断面は、「T」字状または「L」字状に限定されるのではない。
【0028】
断面が「L」字状であるとは、プレート部140の一端部は、90°に折り曲げられた形状を有し、プレート部140の他端部は、予め設定された長さを有するとともに直線形状を維持することを意味する。
【0029】
プレート部140が「L」字状を有することで、溝部111への締結時に結合剛性が増大し、安定的にプレート部140が溝部111の内部に固定され、また、他端部が直線形状を維持することで、その厚さを薄化し得るとともに液化天然ガスの漏出及びその進展を防止することが可能となる。
【0030】
溝部111の内部は、接着部145で満たされる。即ち、溝部111の内部のうち、プレート部140以外の部分は、接着部で満たすことができる。接着部145としては、低温用接着剤のような物質であることができる。
【0031】
絶縁材130は、支持部110の側面と断熱材120のとの間に設けられ、貯蔵タンク10に積載されている極低温貨物(液化天然ガス)の漏出の発生時に極低温貨物の移動通路となるものである。
【0032】
絶縁材130は、多孔性であり、絶縁材130の一端部は、プレート部140のプレート141に接する。
【0033】
断熱材120の下部には、補助プレート150が設けられ、補助プレート150は、締結部材151により、支持部110の予め設定された位置に締結される。
【0034】
補助プレート150は、断熱材120の下部を安定的に支持するとともに、他の経路からの液化天然ガスの漏出を未然に防止するように働く。
【0035】
補助プレート150は、プレート部140より長くなるように設けることができる。
【0036】
従来は、断熱材のうちの一部が、溝部の厚さと対応するように形成され、支持部の側面と、断熱材、絶縁材を密封するための作業をさらに行う必要があった。
【0037】
本発明によれば、溝部にプレート部を設け、その設置作業が簡単であり、支持部、断熱材、絶縁材の間を密封するための作業をさらに行う必要がなく、液化天然ガスの漏出を安定的に遮断することが可能である。
【0038】
図3は、本発明の他の実施例に係る貯蔵タンク構造物を示す概略図である。
【0039】
本発明の他の実施例に係る貯蔵タンク構造物は、本発明の一実施例に係る貯蔵タンク構造物とほぼ同様であり、以下、相違した部分を中心に説明する。
【0040】
本発明の他の実施例によれば、絶縁材130は、支持部110の上部から、隣り合う支持部110との間まで延び、ドレインホール160から漏出された液化天然ガスは、捕集部170で捕集される。ドレインホール160は、多孔性物質で形成される。ドレインホール160の一端部は、絶縁材130の少なくとも一側に連結される。即ち、本発明において、ドレインホール160とは、絶縁材130に沿って移動する漏出された液化天然ガスを捕集部170に排出するための部材を意味することができる。
【0041】
プレート部140を通過しなかった漏出された液化天然ガスは、支持部110の間に延設される絶縁材130に沿って移動され、支持部110同士の間に設けられた捕集部170で捕集される。
【0042】
ドレインホール160と捕集部170とは、各支持部110の間の中間部分に一緒になって設けられるが、プレート部140または補助プレート部150の水平延長長さに対応する部分に隣接して複数個設けることもできる。
【0043】
捕集部170は、船体の底部20に設けられるが、断熱材120の下部に隣接して配置することもできる。
【0044】
以上のような本発明の説明は、本発明を例示するためであり、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須構成要素を変形することなく種々に変形して実施することができる。それで、上述の実施例は、あくまでも例示に過ぎず、限定的なものではない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は、分散して実施することができ、同様に、分散して説明されている構成要素は、結合形態で実施することもできる。
【0045】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の意味及び範疇、並びにその均等な概念から導出される全ての変形または変更された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0046】
110 支持部
120 断熱材
130 絶縁材
140 プレート部
150 補助プレート
160 ドレインホール
170 捕集部
180 治具
190 リフティングロープ