(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0043】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、有機層(1又は複数)にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が発光機構によって緩和するときに光が発せられる。いくつかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非放射機構、例えば、熱緩和も起こりうるが、通常は好ましくないと考えられる。
【0044】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0045】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999) (“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279,704号明細書の第5〜6欄に、より詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0046】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含みうる。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0047】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材−アノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F
4−TCNQでドープしたm−MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報に、より詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0048】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。
図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0049】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省くことができる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、または、より一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば
図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0050】
具体的には説明していない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、
図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0051】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0052】
本発明の態様にしたがって作製したデバイスは、任意選択により、さらにバリア層を含んでいてもよい。バリア層の一つの目的は、湿気、蒸気、及び/又は気体などを含む環境中の有害なものへの、障害を引き起こす曝露から保護することである。バリア層は、基板、電極の、上、下、又は隣、あるいは端部を含めたデバイスの任意のその他の部分の上に堆積させることができる。バリア層は、単層又は複数層からなることができる。バリア層は様々な公知の化学蒸着法によって形成させることができ、単一相を有する組成物並びに複数相を有する組成物を含むことができる。任意の好適な物質又は複数の物質の組み合わせをバリア層のために用いることができる。バリア層は、無機又は有機化合物あるいはその両方を含むことができる。好ましいバリア層は、米国特許第7,968,146号明細書、PCT出願番号PCT/US2007/023098号及びPCT/US2009/042829号に記載されているように、ポリマー物質と非ポリマー物質の混合物を含み、これらの文献はその全体を参照により本明細書に援用する。「混合物」と考えられるためには、バリアー層を構成する前述のポリマー及び非ポリマー物質は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積させられるべきである。ポリマー物質と非ポリマー物質の質量比は、95:5〜5:95の範囲内であってよい。ポリマー物質と非ポリマー物質は、同じ前駆体物質から作ってもよい。一つの例では、ポリマー物質と非ポリマー物質の混合物は、本質的に高分子シリコン及び無機シリコンのみからなる。
【0053】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、医療モニター、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、劇場またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0054】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0055】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0056】
一つの側面では、式I:
【化20】
を有する化合物を提供する
式Iの化合物において、Ar
1及びAr
2は独立に、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択され;XはO、S、及びSeからなる群から選択され;R
1及びR
2は独立にモノ、ジ、トリ、もしくはテトラ置換を表すか、又は非置換を表し;R
1、R
2、R
3、及びR
4は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0057】
一つの側面では、R
3及びR
4は独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。一つの側面では、R
3及びR
4は水素又は重水素である。
【0058】
一つの態様では、上記化合物は下記式:
【化21】
を有する。
【0059】
一つの態様では、Ar
1及びAr
2は独立に以下のものからなる群から選択される。
【化22】
【0060】
一つの態様では、Ar
1及びAr
2は独立に以下のものからなる群から選択される。
【化23】
【0061】
一つの態様では、Ar
1及びAr
2は独立に以下のものからなる群から選択される。
【化24】
【0062】
一つの態様では、XはO又はSである。一つの態様では、Ar
1及びAr
2はアリールである。
【0063】
一つの態様では、上記化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0068】
いくつかの態様では、上記化合物は、表1に示した化合物1〜化合物1183からなる群から選択される。表1中の置換基のリストは以下のとおりである。
【0070】
Ar
xの添え字「x」はその基がAr
1、Ar
2、又はAr
3であるかどうかによる。
【0116】
一つの態様では、第一のデバイスを提供する。第一のデバイスは有機発光デバイスを含み、さらに、アノード、カソード、そのアノードと発光層の間に配置された正孔注入層、その正孔注入層とその発光層の間に配置された第一の正孔輸送層、及びその第一の正孔輸送層とその発光層の間に配置された第二の正孔輸送層を含み、且つその第二の正孔輸送層は下記式:
【化30】
の化合物を含む。
【0117】
式IIの化合物において、Ar
1、Ar
2、及びAr
5は独立にアリール及びヘテロアリールからなる群から選択され;R
3及びR
4は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0118】
本明細書で用いるとおり、OLED中の正孔輸送層(HTL)は、アノードと発光層の間に配置することができる。HTLは比較的正孔伝導性であることが好ましく、これが高い作動電圧を避ける助けになる。高い正孔電導度を達成するためには、高い正孔移動性物質が用いられる。これらの物質は、通常、トリアリールアミン化合物である。これらの化合物は、最適なデバイス性能及び寿命にとっては、発光層と相性が良くないHOMO/LUMO準位及び/又は三重項エネルギーを有するかもしれない。一方で、より相性の良いHOMO/LUMO準位及び/又は三重項エネルギーをもつHTLを有するためには、正孔移動度は譲歩してもよい。
【0119】
低電圧で、より高いデバイス性能及び寿命のデバイスを達成するためには、第一の正孔輸送層に加えて、第二の正孔輸送層の導入が実証され、有効であることが示されている。第一の正孔輸送層は、正孔輸送に主として寄与する。第二の正孔輸送層は、第一の正孔輸送層と発光層の間に挟まれており、橋かけ層として機能する。第二の正孔輸送層の厚さは、作動電圧を顕著に増大させないために、小さいことが好ましい。しかし、第二の正孔輸送層から発光層への正孔注入、第二の正孔輸送層と発光層の間での電荷の閉じ込めと励起子の閉じ込めは、第二の正孔輸送層のエネルギー準位及び一重項/三重項エネルギーによって調節される。第二の正孔輸送層の厚さが薄いので、正孔移動度については比較的ほとんど懸念がない。このことが、発光層とともにうまく機能するための適切なエネルギー準位及び一重項/三重項エネルギーをもつ物質の設計における高い柔軟性を可能にしている。
【0120】
式I及び式IIの化合物が、第二の正孔輸送層における有用な物質であることが驚くべきことに発見された。式Iの化合物において、その分子の最も電子豊富な部分はN(Ar
1)(Ar
2)基である。理論に束縛されないが、この部分は正孔輸送に対して最も寄与していると考えられる。
【0121】
そのカルバゾール−N−Ar
5部分は、ずっと電子豊富ではなく、比較的利用しやすいLUMO準位とπ共役をもたらし、その物質が還元される場合にはラジカルアニオンを安定化しうる。特に、Ar
5は、本明細書に開示したように、高三重項の縮合環芳香族であることが好ましい。いくつかの態様では、Ar
5は、トリフェニレン又はヘテロ芳香族基、例えば、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、及びジベンゾセレノフェンであることができる。Ar
1、Ar
2、及びAr
5についての上述した置換パターンは、化合物に高い三重項エネルギーと顕著な電荷安定化をもたらすことができることを発見している。
【0122】
一つの態様では、上記化合物は下記式を有する。
【化31】
式中、Xは、O、S、及びSeからなる群から選択され;R
1及びR
2は独立に、モノ、ジ、トリ、もしくはテトラ置換、又は非置換を表し;R
1及びR
2は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0123】
一つの態様では、第二の正孔輸送層は、第一の正孔輸送層に隣接して配置される。「隣接して」は、第二の正孔輸送層が第一の正孔輸送層と物理的に接触していることを意味する。一つの態様では、第一の正孔輸送層は第二の正孔輸送層よりも厚い。一つの態様では、第一の正孔輸送層は下記式を有する化合物を含む。
【化32】
式中、Ar
a、Ar
b、Ar
c、及びAr
dは独立に、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0124】
一つの態様では、式IIの化合物の三重項エネルギーは発光層の発光エネルギーよりも高い。
【0125】
一つの態様では、Ar
1、Ar
2、及びAr
5は独立に以下のものからなる群から選択される。
【化33】
【0126】
一つの態様では、Ar
1及びAr
2は独立に以下のものからなる群から選択される。
【化34】
【0127】
一つの態様では、Ar
1及びAr
2は独立に以下のものからなる群から選択される。
【化35】
【0128】
一つの態様では、第一のデバイスは第一のドーパント物質をさらに含み、第一のドーパント物質は、以下のものからなる群から選択される少なくとも一つの配位子又はその配位子が二座配位よりも多座の場合には配位子の一部を含む発光ドーパントである。
【化36】
【化37】
【0129】
上記式中、R
a、R
b、R
c、及びR
dは、モノ、ジ、トリ、もしくはテトラ置換、又は非置換を表すことができ;R
a、R
b、R
c、及びR
dは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、R
a、R
b、R
c、及びR
dのうち2つの隣接する置換基は任意選択により場合によっては結合して縮合環を形成するか又は多座配位子を形成していてもよい。
【0130】
一つの態様では、第一のデバイスは消費者製品である。一つの態様では、第一のデバイスは有機発光デバイスである。一つの態様では、第一のデバイスは発光パネルを含む。一つの態様では、有機発光デバイスを含む第一のデバイスは、さらに、アノード、カソード、そのアノードとカソードの間に配置された第一の有機層を含み、前記第一の有機層は下記式の化合物を含む。
【化38】
式Iの化合物において、Ar
1及びAr
2は独立に、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択され;Xは、O、S、及びSeからなる群から選択され;R
1及びR
2は独立に、モノ、ジ、トリ、テトラ置換、又は非置換を表し;R
1、R
2、R
3、及びR
4は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0131】
一つの態様では、第一の有機層は発光層である。一つの態様では、発光層は燐光発光層である。
【0132】
[デバイス例]
全てのOLEDデバイス例は、高真空(<10
−7Torr)熱蒸着(VTE)によって作製した。アノード電極は約800Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは10ÅのLiFとそれに続く1,000ÅのAlからなる。全てのデバイスは窒素グローブボックス(<1ppmのH
2O及びO
2)中でエポキシ樹脂で封止したガラス蓋で密封し、吸湿剤をそのパッケージ内に組み込んだ。
【0133】
表2中のデバイス例の有機積層部分は、ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)として100ÅのLG101(LG Chem社から購入した)、第一の正孔輸送層(HTL)として500ÅのNPD、50Åの第二の正孔輸送層、発光層(EML)として10%又は12%の燐光ドーパント化合物Bでドープした300Åの化合物A、ETL2として50Åの化合物A、及びETL1として450ÅのAlq
3からなる。
【0134】
第二の正孔輸送層が存在せず、第一の正孔輸送層の厚さが550Åに増大されて上記のデバイス例中の第一及び第二の正孔輸送層を合わせた厚さと同じになっていることを除いて、比較例1を同様の方法で作成した。
【0135】
上述したデバイスの成分の構造は以下のとおりである。
【化39】
【0137】
デバイス例1〜3と比較デバイス1とは、前者には第二のHTLが存在し、後者には第二のHTLが存在しないことを除いて同じである。デバイス例1〜3は、第二のHTLとして化合物113、178、及び182をそれぞれ有する。デバイス例1〜3の効率(EQE=20.7〜20.9%)は、比較デバイス1の効率(EQE=18.6%)よりも高い。デバイス例2及び3の作動寿命は顕著に長い。LT
80(初期輝度(L
0)からその初期の値の80%にまで低下するのに要する時間)は、40mA/cm
2の一定電流密度において、約420時間であり、これに対して比較デバイス例1は290時間である。理論に束縛されないが、化合物178及び182を第二のHTLとして用いたときの向上した効率及び寿命は、その高い三重項エネルギーによるもので、これが向上した励起子の閉じ込めをもたらしている可能性があり、ジベンゾチオフェン又はトリフェニレン基の存在が、高い三重項の電荷安定化基と、正孔輸送のための充分に浅いHOMO準位(化合物178のHOMO=−5.23eV、化合物182のHOMO=−5.21eV、NPDのHOMO=−5.17eV)をもたらしている可能性がある。
【0138】
正孔輸送性は、従来から用いられているトリアリールアミン化合物、例えばNPDに対して式I又は式IIの化合物において低下しているかもしれないが、
【化40】
【化41】
などの置換基をAr
1及びAr
2の位置に有する式I及び式IIの化合物は、
【化42】
などの置換基をそれらと同じ位置に有する化合物よりもより良い正孔移動性を有し、なぜなら、後者の群の置換基はHOMO準位を深くし、このことが正孔伝導性の大きな増大を引き起こす。加えて、ある厚さの第二のHTLに対するデバイス寿命は、グループ1の置換基と比較してグループ2の置換基を有する化合物について時々低下するが、この違いは第二のHTLの厚さを薄くすることによって軽減しうる。
【0139】
HOMO及びLUMO準位並びに三重項エネルギーを表3にまとめてある。第二のHTLとして化合物113を用いたデバイス例1のLT
80は200時間であり、第二のHTLとして化合物178を用いたデバイス例1(422時間)よりも安定性は低い。化合物113と化合物178の間の違いはN(Ar
1)(Ar
2)基である。一般に、Nがジベンゾフラン又はジベンゾチオフェン基に結合している場合は、そのHOMOはより深くなり(化合物1のHOMO=−5.31eV、NPDのHOMO=−5.17eV)、且つ正孔伝導性が低下しうる。このことは、第二のHTLの正孔導電性が充分に高くない場合には、その厚さを薄く保ったとしても、より短いデバイス作動寿命をもたらしうる。
【0141】
[その他の物質との組み合わせ]
有機発光デバイス中の特定の層に有用として本明細書に記載した物質は、そのデバイス中に存在するその他の広範囲にわたる物質と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書に開示した発光ドーパントは、存在してもよい広い範囲のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いることができる。以下に記載乃至言及した物質は、本明細書に記載した化合物と組み合わせて有用でありうる物質の非限定例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の物質を特定するために文献を容易に参考にすることができる。
【0143】
本発明に用いられる正孔注入/輸送物質は特に限定されず、その化合物が通常、正孔注入/輸送物質として用いられる限り任意の化合物を用いることができる。この物質の例には以下のものが含まれるがそれらに限定されない:
フタロシアニン又はポルフィリン誘導体;芳香族アミン誘導体;インドロカルバゾール誘導体;フルオロ炭化水素を含むポリマー;導電性ドーパントを伴うポリマー;導電性ポリマー、例えば、PEDOT/PSS;ホスホン酸及びシラン誘導体などの化合物から誘導される自己組織化モノマー;金属酸化物誘導体、例えば、MoO
x;p型半導体有機化合物、例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル;金属錯体、及び架橋性化合物。
【0144】
HIL又はHTLに用いられる芳香族アミン誘導体の例には以下の構造のものが含まれるがそれらに限定されない。
【化43】
【化44】
【0145】
Ar
1〜Ar
9のそれぞれは、芳香族炭化水素環式化合物からなる群、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン;芳香族ヘテロ環化合物からなる群、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン;及び、前記の芳香族炭化水素環式基及び前記の芳香族ヘテロ環式基から選択された同じ種類又は異なる種類の基である2〜10の環状構造単位からなり、互いに直接又は少なくとも1つの酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環式基を介して結合された基、から選択される。式中、各Arは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基でさらに置換されている。
【0146】
一つの側面では、Ar
1〜Ar
9は以下のものからなる群から独立に選択される。
【化45】
【0147】
kは1〜20の整数であり;X
1〜X
8はC(CHも含めて)又はNであり;Ar
1は上で定義したものと同じ基を有する。
【0148】
HIL又はHTLに用いる金属錯体の例には以下の一般式のものが含まれるがそれらに限定されない。
【化46】
【0149】
Mは40より大きな原子量を有する金属であり;(Y
1−Y
2)は二座配位子であり、Y
1及びY
2は独立に、C、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数値であり;m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0150】
一つの側面では、(Y
1−Y
2)は2−フェニルピリジン誘導体である。
【0151】
別の側面では、(Y
1−Y
2)はカルベン配位子である。
【0152】
別の側面では、Mは、Ir、Pt、Os、及びZnから選択される。
【0153】
さらなる側面では、この金属錯体は、溶液中でFc
+/Fcカップルに対して約0.6V未満の最小酸化電位を有する。
【0155】
本発明の有機ELデバイスの発光層は、発光物質として少なくとも金属錯体を含むことが好ましく、その金属錯体をドーパント物質として用いるホスト物質を含んでいてもよい。ホスト物質の例は特に限定されず、ホストの三重項エネルギーがドーパントの三重項エネルギーよりも大きい限り、任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。後に示す表はさまざまな色を発光するデバイスに対して好ましいホスト物質を分類しているが、上記の三重項の基準を満たす限り、任意のドーパントとともに用いることができる。
【0156】
ホストとして用いられる金属錯体の例は、以下の一般式を有することが好ましい。
【化47】
【0157】
Mは金属であり;(Y
3−Y
4)は二座配位子であって、Y
3及びY
4は独立にC、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数値であり;且つ、m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0158】
一つの側面では、金属錯体は、
【化48】
である。
【0159】
(O−N)は二座配位子であり、金属をO及びN原子に配位させている。
【0160】
別の側面では、MはIr及びPtから選択される。
【0161】
さらなる側面では、(Y
3−Y
4)はカルベン配位子である。
【0162】
ホストとして用いられる有機化合物の例は、以下のものからなる群から選択される:芳香族炭化水素環状化合物、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン;芳香族ヘテロ環状化合物からなる群、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン;並びに、前記の芳香族炭化水素環状基及び前記の芳香族ヘテロ環状基から選択される同じか又は異なる種類の基であり、且つ酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環状基のうちの少なくとも1つを介して又は直接、互いに結合されている2〜10の環状構造単位からなる群。ここで各基は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基でさらに置換されている。
【0163】
一つの側面では、ホスト化合物はその分子内に以下の基のうちの少なくとも1つを含む:
【化49】
【0164】
R
1〜R
7は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合には、それは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0166】
X
1〜X
8はC(CHも含めて)又はNから選択される。Z
1及びZ
2はNR
1、O、又はSから選択される。
【0168】
正孔阻止層(HBL)は、発光層を離れる正孔及び/又は励起子の数を減らすために用いることができる。デバイスにおけるそのような阻止層の存在は、阻止層をもたない類似のデバイスと比較して実質的に高い効率をもたらしうる。また、阻止層は、OLEDの所望の領域に発光を閉じ込めるために用いることもできる。
【0169】
一つの側面では、HBLに用いられる化合物は、上述したホストとして用いられるものと同じ分子又は同じ官能基を含む。
【0170】
別の側面では、HBLに用いられる化合物は、その分子中に以下の基のうち少なくとも1つを含む:
【化50】
【0171】
kは0〜20の整数であり;Lは補助配位子であり、mは1〜3の整数である。
【0173】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送できる物質を含むことができる。電子輸送層はその本来的性質(非ドープ)であるか、あるいはドープされていてもよい。ドーピングは導電性を高めるために用いることができる。ETL物質の例は特に限定されず、それらが電子を輸送するために通常用いられる限り、任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。
【0174】
一つの側面では、ETLに用いる化合物は、その分子内に以下の基のうち少なくとも1つを含む。
【化51】
【0175】
R
1は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合には、それは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0176】
Ar
1〜Ar
3は上述したAr類と同様の定義を有する。
【0178】
X
1〜X
8はC(CHも含めて)又はNから選択される。
【0179】
別の側面では、ETLに用いられる金属錯体には以下の一般式のものが含まれるがこれらには限定されない。
【化52】
【0180】
(O−N)又は(N−N)は二座配位子であり、金属をO,N、又はN,N原子に配位させ;Lは補助配位子であり;mは、1からその金属に結合できる配位子の最大数までの整数値である。
【0181】
OLEDデバイスの各層に用いられる任意の上述した化合物においては、その水素原子は部分的に又は完全に重水素化されていることができる。
【0182】
本明細書に開示した物質に加えて、及び/又はそれと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質をOLEDに用いてもよい。本明細書に開示した物質と組み合わせてOLEDに用いてもよい物質の非限定的な例を以下の表4に列挙している。表4には、非限定的な物質群、各群についての錯体の非限定的な例、及びその物質を開示している参考文献を挙げている。
【実施例】
【0208】
本明細書を通して用いる化学的略語は以下のとおりである:Cyはシクロへキシルであり、dbaはジベンジリデンアセトンであり、EtOAcは酢酸エチルであり、DMEはジメトキシエタンであり、dppeは1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンであり、THFはテトラヒドロフランであり、DMFはジメチルホルムアミドであり、DCMはジクロロメタンであり、S−Phosはジシクロヘキシル(2′,6′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2−イル)ホスフィンであり、Tfはトリフルオロメタンスルホネートである。特に違うように記載していない限り、特定の溶媒を脱ガスすることへの言及は、乾燥した窒素ガスで溶媒を充分に飽和させて(窒素を溶媒にバブリングすることによって)、その溶媒から気体酸素を充分に除去することをいう。
【0209】
化合物113の合成
【0210】
N−(4−ブロモフェニル)−N−フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミンの合成
【化53】
【0211】
トルエン(125 mL)を窒素ガスで15分間バブリングし、次に1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.2 g, 0.4 mmol)及びPd
2(dba)
3(0.1 g, 0.1 mmol)を添加した。その混合物を窒素ガスで15分間バブリングし、次にN−フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミン(3.2 g, 11.6 mmol)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(4.5 g, 15.9 mmol)、Na
tOBu(1.5 g, 15.6 mmol)を添加した。その混合物を窒素ガスで15分間バブリングし、12時間還流させた。冷却後、その反応混合物をセライトパッドを通して濾過し、50%CH
2Cl
2/ヘキサンで洗った。溶媒を減圧下で除去し、残留物を10〜15%のCH
2Cl
2/ヘキサンを用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、N−(4−ブロモフェニル)−N−フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミン(4.0 g, 80%収率)を白色固体として得た。
【0212】
【化54】
【0213】
N−フェニル−N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミンの合成
【0214】
1,4−ジオキサン(250 mL)中のN−(4−ブロモフェニル)−N−フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミン(8.3 g, 19.3 mmol)の溶液に、ビス(ピナコラート)ジボロン(7.6 g, 29.9 mmol)、KOAc(3.9 g, 39.8 mmol)を添加し、その溶液を窒素で15分間バブリングした。Pd(dppf)Cl
2・CH
2Cl
2(0.5 g, 0.6 mmol)を次にその溶液に添加し、その反応混合物を窒素で15分間バブリングした。得られた混合物を12時間還流させた。冷却後、H
2O(1 mL)を添加し、15分間撹拌した。反応混合物をシリカパッドを通して濾過し、75%CH
2Cl
2/ヘキサンで洗った。溶媒を減圧下で除去し、残留物を25〜40%CH
2Cl
2/ヘキサンを用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製して、N−フェニル−N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミン(5.9 g, 64%収率)を白色固体として得た。
【0215】
【化55】
【0216】
N−(4−(9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−N−フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミンの合成
【0217】
トルエン(150 mL)、水(50 mL)、及びEtOH(50 mL)中のN−フェニル−N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミン(5.9 g, 12.4 mmol)、3−ブロモカルバゾール(3.5 g, 14.2 mmol)、K
2CO
3(16.6 g, 120.0 mmol)の溶液を30分間バブリングし、Pd(PPh
3)
4(0.4 g, 0.4 mmol)を添加した。この混合物を15分間バブリングした。得られた混合物を12時間還流させた。冷やした後、その反応混合物をCH
2Cl
2で抽出し、MgSO
4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残留物を25〜50%CH
2Cl
2/ヘキサンを用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、N−(4−(9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−N−フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミン(5.8 g, 91%収率)を白色固体として得た。
【0218】
化合物113の合成
【0219】
【化56】
【0220】
キシレン(175 mL)を窒素で15分間バブリングし、次いで2−ジシクロへキシルホスフィノ−2′,6′−ジメトキシビフェニル(2.3 g, 5.6 mmol)及びPd
2(dba)
3(1.3 g, 1.4 mmol)を添加した。その混合物を再度窒素で15分間バブリングし、次に、N−(4−(9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−N−フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミン(3.4 g, 6.6 mmol)、4−ヨードジベンゾチオフェン(3.3 g, 10.6 mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(1.4 g, 14.0 mmol)を添加した。その混合物を窒素で15分間バブリングし、12時間還流させた。冷却後、その反応混合物をシリカパッドを通して濾過し、80%CH
2Cl
2/ヘキサンで洗った。溶媒を減圧下で除去し、残留物を20〜35%CH
2Cl
2/ヘキサンを用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、化合物113(2.9 g, 63%収率)を白色固体として得た。
【0221】
化合物178の合成
【0222】
ビス(4−ブロモフェニル)アミンの合成
【化57】
【0223】
50mLのDMF中のN−ブロモコハク酸イミド(17.8 g, 0.1 mol)を、50mLのDMF中のジフェニルアミン(8.46 g, 0.05 mol)に0℃で30分かけて添加した。その反応物を室温まで温め、夜通し撹拌した。白色沈殿物を濾過し、風乾して、16gの生成物を集めた。
【0224】
ジ([1,1′−ビフェニル]−4−イル)アミンの合成
【化58】
【0225】
ビス(4−ブロモフェニル)アミン(4.0 g, 12.3 mmol)及びフェニルボロン酸(4.0 g, 32.7 mmol)を250mLのトルエン及び60mLのエタノール中で混合した。その溶液を撹拌しながら窒素で15分間バブリングした。Pd(PPh
3)
4(1.4 g, 1.23 mmol)及びK
3PO
4(13.5 g, 64 mmol)を順に添加した。その混合物を窒素下で夜通し加熱し還流させた。冷やした後、その反応混合物を濾紙を通して濾過し、次に溶媒を蒸発させた。固体を、窒素パージした熱いトルエン中に再度溶かして、その溶液がまだ熱いうちにセライト(登録商標)/シリカパッドを通して濾過した。溶媒を次に蒸発させた。その白色結晶性固体をヘキサンで洗い、風乾して3.8gの生成物を得た。
【0226】
N−([1,1′−ビフェニル]−4−イル)−N−(4−ブロモフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4−アミンの合成
【化59】
【0227】
ジ([1,1′−ビフェニル]−4−イル)アミン(3.5 g, 10.9 mmol)及び1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(6.0 g, 21.3 mmol)を300mLの無水トルエン中で混合した。その溶液を撹拌しながら15分間窒素でバブリングした。Pd(OAc)
2(36 mg, 0.16 mmol)、トリフェニルホスフィン(0.16 g, 0.6 mmol)及びナトリウムt−ブトキシド(2.0 g, 20.8 mmol)を順に添加した。その混合物を窒素下で夜通し加熱還流させた。冷やした後、その反応混合物をセライト(登録商標)/シリカパッドを通して濾過し、次に溶媒を蒸発させた。残留物を次に、溶出液としてDCM:ヘキサン(1:4,v/v)を用いるカラムクロマトグラフィーによって精製して、3.9gの生成物を得た。
【0228】
9−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−9H−カルバゾールの合成
【化60】
【0229】
カルバゾール(0.62 g, 3.67 mmol)及び4−ヨードジベンゾチオフェン(1.2 g, 3.87 mmol)を70mLの無水トルエン中で混合した。その溶液を撹拌しながら15分間窒素でバブリングした。Pd
2(dba)
3(0.16 g, 0.17 mmol)、2−ジシクロへキシルホスフィノ−2′,6′−ジメトキシビフェニル(0.24 g, 0.58 mmol)及びナトリウムt−ブトキシド(1.0 g, 10.4 mmol)を順に添加した。その混合物を窒素下で3日間加熱し還流させた。冷却後、その反応混合物をセライト(登録商標)/シリカパッドを通して濾過し、次にその溶媒を蒸発させた。次に残留物を、溶出液としてDCM:ヘキサン(1:4,v/v)を用いるカラムクロマトグラフィーによって精製して、0.64gの生成物を得た。
【0230】
3−ブロモ−9−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−9H−カルバゾールの合成
【化61】
【0231】
5mLのDMF中のN−ブロモコハク酸イミド(0.31 g, 1.74 mmol)を、50mLのDCM中の9−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−9H−カルバゾール(0.6 g, 1.72 mmol)に0℃でゆっくり添加した。その反応物を室温に温め、夜通し撹拌した。その反応混合物をDCMで抽出し、MgSO
4上で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残留物を、溶出液としてDCM:ヘキサン(1:4,v/v)を用いるカラムクロマトグラフィーによって精製して、0.45gの生成物を得た。
【0232】
9−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾールの合成
【化62】
【0233】
3−ブロモ−9−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−9H−カルバゾール(0.45 g, 1.1 mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(0.43 g, 1.4 mmol)、及びKOAc(0.31 g, 3.1 mmol)を150mLの無水1,4−ジオキサン中で混合した。その溶液を撹拌しながら15分間窒素でバブリングし、次に、Pd(dppf)Cl
2・CH
2Cl
2(26 mg, 0.03 mmol)を添加した。その混合物を窒素下で夜通し加熱還流させた。冷却後、その反応混合物をセライト(登録商標)/シリカパッドを通して濾過し、次に溶媒を蒸発させた。次に、残留物を、溶出液としてDCM:ヘキサン(3:7,v/v)を用いるカラムクロマトグラフィーによって精製して0.4gの生成物を得た。
【0234】
化合物178の合成
【化63】
【0235】
N−([1,1′−ビフェニル]−4−イル)−N−(4−ブロモフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4−アミン(2.5 g, 5.25 mmol)、及び9−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール(2.64 g, 5.58 mmol)を250mLのトルエン及び30mLの脱イオン水中で混合した。その溶液を撹拌しながら15分間窒素でバブリングし、次に、Pd
2(dba)
3(0.12 g, 0.13 mmol)、2−ジシクロへキシルホスフィノ−2′,6′−ジメトキシビフェニル(0.21 g, 0.51 mmol)及びK
3PO
4(3.5 g, 16.5 mmol)を順に添加した。その混合物を夜通し窒素下で加熱還流させた。ブロモベンゼン(1 mL)をその反応混合物に添加し、その反応混合物をさらに4時間還流させた。冷却後、反応混合物をセライト(登録商標)/シリカパッドを通して濾過し、次に溶媒を蒸発させた。化合物178(2.4 g)を集め、20mLの脱気したトルエンからの再結晶によって精製した。
【0236】
化合物182
【0237】
9−(トリフェニレン−2−イル)−9H−カルバゾールの合成
【化64】
【0238】
o−キシレン(140 mL)中のPd
2(dba)
3(0.52 g, 0.57 mmol)の撹拌した溶液に、2−ジシクロへキシルホスフィノ−2′,6′−ジメトキシビフェニル(0.94 g, 2.3 mmol)を添加し、15分間窒素で脱ガスした。カルバゾール(5.33 g, 31.9 mmol)及び2−ブロモトリフェニレン(7.0 g, 22.7 mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(6.57 g, 68.3 mmol)を添加し、さらに15分間窒素で脱ガスした。その反応物を2日間還流させた。その反応混合物をシリカを通して濾過し、DCMで洗い、真空下で乾燥させた。10%DCM/ヘキサンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで、生成物として4.98gの白色固体(56%)を得た。
【0239】
3−ブロモ−9−(トリフェニレン−2−イル)−9H−カルバゾールの合成
【化65】
【0240】
DMF(24 mL)中の9−(トリフェニレン−2−イル)−9H−カルバゾール(4.7 g, 11.9 mmol)の撹拌した溶液に0℃で窒素下、DMF(24 mL)中のNBS(N−ブロモコハク酸イミド)(2.1 g, 11.9 mmol)を滴下により添加した。添加が終了した後、その反応混合物を、激しく撹拌しながら夜通し室温に温めた。その反応混合物を水から沈殿させ、固体を濾過した。その淡灰色固体を、少量のTHFに再溶解し、シリカの詰め物の上に添加し、30%DCM/ヘキサンで流し出した。濾液を真空下で乾燥させ、その白色固体をさらなる精製なしに用いた(5.5 g, 98%)。
【0241】
3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9−(トリフェニレン−2−イル)−9H−カルバゾールの合成
【化66】
【0242】
1,4−ジオキサン(90 mL)中の3−ブロモ−9−(トリフェニレン−2−イル)−9H−カルバゾール(3.0 g, 6.4 mmol)の撹拌した溶液に、ビス(ピナコラート)ジボロン(2.4 g, 9.5 mmol)及びKOAc(1.8 g, 19.1 mmol)を添加し、15分間窒素で脱ガスし、次にPd(dppf)Cl
2・CH
2Cl
2(0.14 g, 0.2 mmol)を添加し、その混合物をさらに15分間窒素で脱ガスした。その溶液を2日間還流させた。室温に冷やした後、水(1 mL)を添加し、その反応混合物を30分間撹拌した。その反応混合物をシリカを通して濾過し、真空下で乾燥させた。その固体を、20〜50%DCM/ヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーを行い、生成物として2.0gの白色固体(61 %)を得た。
【0243】
化合物182の合成
【化67】
【0244】
トルエン(29 mL)及び水(2.9 mL)中のN−([1,1′−ビフェニル]−4−イル)−N−(4−ブロモフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4−アミン(0.9 g, 1.9 mmol)の撹拌溶液に、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9−(トリフェニレン−2−イル)−9H−カルバゾール(1.0 g, 1.9 mmol)及びK
3PO
4(2.4 g, 11.3 mmol)を添加し、その混合物を15分間窒素で脱ガスし、次にPd
2(dba)
3(86 mg, 0.09 mmol)及び2−ジシクロへキシルホスフィノ−2′,6′−ジメトキシビフェニル(0.16 g, 0.38 mmol)を添加し、さらに15分間窒素で脱ガスした。その混合物を夜通し還流させた。室温まで冷やした後、その反応混合物をシリカを通して濾過し、DCMで洗い、真空下で乾燥させる。それを20〜50%DCM/ヘキサンでカラムクロマトグラフィーにかけて、化合物182として1.03gの白色固体(69%)を得た。
【0245】
本明細書に記載した様々な態様は例示の目的であり、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した多くの物質及び構造は、本発明の精神から離れることなく、その他の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体的な例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、それは当業者には明らかである。本発明が何故機能するのかについての様々な理論は限定することを意図していないことが理解される。