(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、出来る限り広い床面積および居室空間を確保するための建替え建物の柱躯体として、既存地下外壁を利用するとともに、既存地下外壁以深においては新設地下外壁を設けて、それらの双方の地下外壁に添わせて鉄骨芯材を配置した壁柱構造である。
具体的には、既存地下外壁および新設地下外壁と接合された壁柱構造としては、新設地下外壁の壁厚さ内に設置された鉄骨芯材が略垂直方向に立設させた壁柱(第1実施形態)と、新設地下外壁の外側に鉄骨芯材を設置するとともに、地下階において、外方に傾斜した壁柱(第2実施形態)と、第1実施形態と同様に、新設地下外壁内に鉄骨芯材を設置された壁柱が、地下階において、外方に傾斜した壁柱(第3実施形態)である。
以下、添付図面を参照して、本発明による既存の地下外壁を有する建替え建物を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
(第一実施形態)
本発明の建替え建物を構成する既存地下外壁および新設地下外壁と接合された壁柱構造において、第1実施形態の新設柱は、
図1〜
図6に示すように新設地下外壁の壁厚さ内に鉄骨芯材が設置され、前記鉄骨芯材は略垂直方向に立設している。
本実施形態に係る既存の地下外壁を有する建替え建物の概略構成を示す断面図を
図1に示す。建替え建物の地下階部の構成を示す断面図を
図2に示す。建替え建物の地下階部を構成する鉄骨を示す拡大断面図を
図3に示す。
図2のA−A矢視断面図を
図4に示す。
図2のB−B矢視断面図を
図5に示す。
図2のC−C矢視断面図を
図6に示す。
【0014】
図1に示されるように、建替え建物10は、地盤G中に設けられた地下階部11Aと、地下階部11A上に設けられた地上階部12と、を備える。
図1、
図2に示されるように、地下階部11Aは、既存地下外壁(既存の地下外壁)20と、新設地下外壁21と、新設柱22と、新設梁23と、を備える。
既存地下外壁20は、建替え建物10を建てる土地に存在していた既存建物の一部を構成していたもので、既存建物の解体時に、解体せずに残置したものである。この既存地下外壁20は、土留め壁として機能するもので、鉄筋コンクリート造(RC造)により形成されている。既存地下外壁20は、既存建物(図示無し)の平面視外形形状に沿うよう形成され、この実施形態では、例えば平面視矩形状に形成されている。
【0015】
図2、
図3に示されるように、新設地下外壁21は、既存地下外壁20の内側に、既存地下外壁20よりも深い位置に形成されている。新設地下外壁21は、その上端部21tが既存地下外壁20の下端部20bの内周面に沿っている。新設地下外壁21は、所定の壁厚を有した鉄筋コンクリート造で、図示しない鉄筋とコンクリート21cとからなる。
図2〜
図4に示されるように、新設柱22は、新設地下外壁21に沿った水平方向に間隔をあけて複数本が設けられている。各新設柱22は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で、それぞれ上下方向に延びるよう設けられている。
各新設柱22の下部22bは、鉄骨24の下部24bと、図示しない鉄筋と、コンクリート26とからなる。この実施形態において、新設柱22は、その下部22bが新設地下外壁21に埋設されている。すなわち、新設柱22の下部22bにおいて、鉄骨24の下部24bが新設地下外壁21のコンクリート21c内に埋設されるとともに、新設柱22の下部22bのコンクリート26は、新設地下外壁21のコンクリート21cの一部をなしている。
【0016】
ここで、
図4に示されるように、鉄骨24の下部24bを構成する下部鉄骨芯材(第二の鉄骨芯材)31は、断面I型の鋼材により形成されている。下部鉄骨芯材31は、ウェブ31aと、ウェブ31aの両端部に直交して形成されたフランジ31f,31fとを有している。下部鉄骨芯材31は、ウェブ31aが新設地下外壁21の壁厚方向に沿い、一方のフランジ31fが新設地下外壁21に沿って建物内方を向くよう設けられている。
このようにして、新設柱22の下部22bが新設地下外壁21と一体に形成されることで、新設柱22の下部22bと新設地下外壁21とからなる下部壁柱30Aを形成している。
また、
図2に示されるように、この下部壁柱30Aの内側には、基礎床版13が形成されている。
【0017】
新設柱22の中間部(上部)22cは、新設地下外壁21の上端部21tから鉛直上方に延びている。
図2、
図3、
図5に示されるように、新設柱22の中間部22cは、鉄骨24の中間部24cと、鉄筋27と、コンクリート28と、からなる。
ここで、
図5に示されるように、鉄骨24の中間部24cを構成する中間部鉄骨芯材(第一の鉄骨芯材)32は、断面十文字状に形成されたウェブ32aと、各ウェブ32aの端部に直交して形成されたフランジ32bと、を有している。中間部鉄骨芯材32は、一方のウェブ32aを既存地下外壁20の壁厚方向に沿わせ、他方のウェブ32aを既存地下外壁20の表面に沿う方向に沿わせている。
【0018】
新設柱22は、既存地下外壁20と接合されていると共に、新設地下外壁21に添わせてH型状、またはI形状の鉄骨芯材31、32が地下最下階より地上階まで配置されており、かつ、新設柱22の鉄骨芯材量は、地下最下階に比べて、既存地下外壁20と接合される上層階側の地下階の方が多く、鉄骨芯材32、33がH型状、またはロ形状である。ここで、例えば鉄骨芯材がH型状であるとは、H型状の鋼材を例えば十字状に組み合わせたものを含む。
新設柱22を形成する鉄骨芯材は、地下最下階(例えば、地下3階)では
図4に示すように、I形状の下部鉄骨芯材31が新設地下外壁21の壁厚さ内に配置され、上層階側の地下階(例えば、地下2階)では
図5に示すように、H型状の中間部鉄骨芯材32が既存地下外壁20の建物内部側に配置され、その中間部鉄骨芯材32を覆うように新設柱22の柱型が建物内部側に表れている。
具体的には、鉄骨芯材は、地下最下階から上層階側の地下階に至るまでI形状の基本鉄骨であり、上層階側の地下階において、I形状の鉄骨材に対して、新たにフランジ部を有するウエブ材が溶接されて、十字状となる。よって、鉄骨芯材は、I形状の区間長とH形状の区間長が備えたものとなる。鉄骨芯材は、地下最下階においては新設地下外壁21内に埋設されるために、壁面長手方向の鉄骨鋼材量が削減された結果として、壁厚さ方向に沿ってI形状を有することになった。また、上層階側の地下階の鉄骨芯材については、新設柱22が既存地下外壁20の外側に配置され、鉄骨芯材を囲むように柱型が形成されるとともに、地下最下階に比べて新設地下外壁21もなく、鉄骨芯材廻りのRC部の抵抗断面積も低減されるために、RC部の抵抗断面積を補うためにも鉄骨芯材量が増加され、H形状を有することになった。
【0019】
鉄筋27は、平面視コ字状で、中間部鉄骨芯材32を取り囲むように配置され、その両端が、既存地下外壁20に定着されたアンカー筋29に接合されている。
また、新設柱22の中間部22cは、鉄骨芯材の外側に平面視コ字状の鉄筋27を配筋し、既存地下外壁20にアンカー定着させることで、新設柱22の中間部22cと既存地下外壁20を一体化した。新設柱22の中間部22cと既存地下外壁20が一体化されることで、地下最下階における新設地下外壁21と一体化された新設柱22を、地下上層階側でも高い剛性を備えた柱躯体とすることができる。
【0020】
これら中間部鉄骨芯材32及び鉄筋27がコンクリート28に埋設されることで、新設柱22の中間部22cが構成されている。この新設柱22の中間部22cは、既存地下外壁20に沿って配置され、かつ既存地下外壁20にアンカー筋29を介して接合されている。このようにして、新設柱22の中間部22cが既存地下外壁20に接合されて一体化されることで、新設柱22の中間部22cと既存地下外壁20とから、上部壁柱30Bが形成されている。
図2に示されるように、新設柱22の上端部(上部)22tは、新設柱22の中間部22cに連続してさらに上方に延びている。
図2、
図3、
図6に示されるように、新設柱22の上端部22tは、鉄骨24の上部24dと、鉄筋27と、コンクリート28と、からなる。
【0021】
ここで、鉄骨24の上部24dを構成する上部鉄骨芯材(第三の鉄骨芯材)33は、地上階部12の外周柱15を構成する柱鉄骨36の下端部を形成するもので、例えば、断面ロ字状の鋼管からなる。上部鉄骨芯材33の外周面には、外方に向かって突出するスタッド(図示無し)が接合され、このスタッドにより上部鉄骨芯材33がコンクリート28に定着されている。
図3に示されるように、上部鉄骨芯材33の内側には、中間部鉄骨芯材32の上端部32tが挿入され、上部鉄骨芯材33内に充填されるコンクリート37によって、地上階部分のコンクリート充填鋼管柱を構成する○形状や□形状の鉄骨芯材、または上部鉄骨芯材33と中間部鉄骨芯材32の上端部32tとが一体に接合されている。具体的には、前記接合部分が、地下階の鉄骨柱と地上階の鉄骨柱が切り替わる接合部に相当する。
【0022】
図6に示されるように、新設柱22の上端部22tにおいても、新設柱22の中間部22cと同様、鉄筋27は、平面視コ字状で、上部鉄骨芯材33を取り囲むように配置され、その両端が、既存地下外壁20に定着されたアンカー筋29に接合されている。
これら上部鉄骨芯材33及び鉄筋27がコンクリート28に埋設されることで、新設柱22の上端部22tが構成されている。新設柱22の上端部22tは、既存地下外壁20に沿って配置され、かつ既存地下外壁20にアンカー筋29を介して接合されている。このようにして、新設柱22の上端部22tが既存地下外壁20に接合されて一体化されることで、新設柱22の上端部22tと既存地下外壁20とから、上部壁柱30Cが形成されている。
【0023】
また、
図2に示されるように、新設梁23は、互いに隣接する新設柱22,22間の長手方向、及び短辺方向に其々架設されている。この実施形態では、新設梁23は、
図2に示す地下階部の縦断面図に見られるように、各階の柱頭位置に3本が設けられている。また、各新設梁23上には、地下床版35が敷設されている。
【0024】
図1に示されるように、建替え建物10の地上階部12は、外周柱15と、梁16と、を備える。
外周柱15は、建替え建物10の外周部に位置するもので、地下階部11Aの新設柱22上に設けられている。この実施形態において、外周柱15は、その下部に、既存地下外壁20の内側に設けられた新設柱22から、建物外方に向かって張り出すように、斜め外側に向かって傾斜して設けられた傾斜部15sと、傾斜部15sの上端から鉛直上方に延びる垂直部15vと、を一体に備えている。
図2に示されるように、この実施形態において、外周柱15は、例えばコンクリート充填鋼管造(CFT造)で、上部鉄骨芯材33から連続する柱鉄骨36と、柱鉄骨36内に配筋された図示しない鉄筋と、柱鉄骨36内に充填されたコンクリート37と、からなる。
図1に示されるように、梁16は、水平方向において互いに対向する外周柱15,15間に架設され、梁16上には床版17が敷設されている。
【0025】
建替え建物の構築方法の流れを示し、既存地下外壁を残して既存建物を解体した状態を示す断面図を
図7に示す。建替え建物の構築方法の流れを示し、既存地下外壁の内側に新設地下外壁を形成した状態を示す断面図を
図8に示す。
上記したような建替え建物10を構築するには、まず、
図7に示されるように、既存建物を、既存地下外壁20のみを残して、解体撤去する。
次いで、既存地下外壁20の内側の地盤Gを、所定深さまで掘削する。
この後、
図8に示されるように、新設地下外壁21を形成するRC造による壁躯体部を構築する前に、新設柱22の下部22bを構成する下部鉄骨芯材31を設置する。下部鉄骨芯材31の下端部31bは、アンカー38により地盤Gに定着させる。
さらに、鉄筋(図示無し)を配筋し、コンクリート21cを打設することで、新設地下外壁21(下部壁柱30A)を形成する。
次に、下部壁柱30Aの内側にコンクリートやモルタルを打設し、基礎床版13を形成する。
【0026】
この後は、
図2に示されるように、新設柱22の中間部22cを構成する中間部鉄骨芯材32、上部鉄骨芯材33を下部鉄骨芯材31上に立設し、アンカー筋29の既存地下外壁20への定着、鉄筋27の配筋及びアンカー筋29への接合を行った後、コンクリート28を打設する。これにより、新設柱22の中間部22c及び上端部22tが形成され、上部壁柱30B,30Cが形成される。
さらに、新設梁23を、互いに隣接する新設柱22,22間に架設する。
しかる後、
図1に示されるように、地上階部12の外周柱15の立設、梁16の架設を順次行っていくことで、建替え建物10が構築される。
【0027】
上述したような建替え建物10によれば、新設柱22の下部22bを、新設地下外壁21内に設置することで、柱部と壁部が一体化された下部壁柱30Aを構成することができ、新設柱22と新設地下外壁21とを別々に設けた場合と比較すると、柱芯と壁芯との間の偏心距離が殆どなくなることで、柱部と壁部がともに有効にせん断抵抗することができるために地下躯体強度を高めることができる。また、新設柱22の下部22bと新設地下外壁21によって下部壁柱30Aが構成されることで、新設地下外壁21から建物内方への新設柱22の突出寸法を抑えることができる。これにより、地下階部11Aの下部における室内空間を広く確保することができる。
また、新設柱22の中間部22c及び上端部22tは、既存地下外壁20に接合されることで、新設柱22と既存地下外壁20とからなる上部壁柱30B,30Cを構成することができ、これらを別々に設けた場合に比較し、地下躯体強度を高めることができる。また、新設柱22の下部22bにおける新設地下外壁21から建物内方への突出寸法を抑えることで、その上方に形成される新設柱22の中間部22c及び上端部22tも、既存地下外壁20から建物内方への突出寸法を抑えることができる。これにより、地下階部11Aの上部における室内空間を広く確保することができる。
このようにして、建替え建物10では、地下空間を広く確保しつつ、躯体強度を有効に高めることが可能となる。
【0028】
また、新設柱22の中間部22cは、内部に中間鉄骨芯材32を有し、下部22bは、内部に、中間鉄骨芯材32に連結された下部鉄骨芯材31を有している。このような構成によれば、既存地下外壁20に接合される新設柱22の中間部22cにおいては、中間鉄骨芯材32は、既存地下外壁20に沿う方向と直交する方向の二方向に対して地下躯体強度を確保する必要がある。これに対し、新設地下外壁21に一体に形成される新設柱22の下部22bにおいては、新設地下外壁21に沿う方向については、新設地下外壁21自体によって地下躯体強度が確保できるため、下部鉄骨芯材31は、新設地下外壁21に直交する方向のみ地下躯体強度を確保すればよい。このようにして、新設柱22に埋設された鉄骨芯材については、地下最下階から上層階側の地下階に向うに伴って、地下階の最上端部に作用する最大曲げモーメント量に抵抗出来るように、断面形状を変化させて横断面積を増加させることで、躯体強度負担の最適化により材料の低コスト化を図ることができる。また、地下階の外周部の新設柱22は、既存地下外壁20または既存地下外壁20以深に構築された新設地下外壁21と連結された合成壁柱であり、新設柱22の突出量を低減させた地下階を有する建替え建物を実現することができる。
【0029】
さらに、新設地下外壁21内に下部鉄骨芯材31が埋設されている。このように、下部鉄骨芯材31を新設地下外壁21内に埋設すれば、新設柱22の下部22bにおける新設地下外壁21から建物内方への突出寸法を最小限に抑えることができ、室内空間を広く確保することができる。
また、新設柱22の上方に地上階部12の外周柱15が設けられ、外周柱15には上部鉄骨芯材33が配置され、中間鉄骨芯材32は、上部鉄骨芯材33と連結されている。このような構成によれば、新設柱22と地上階部12の外周柱15とを強固に連結することができる。また、中間鉄骨芯材32と上部鉄骨芯材33との断面形状を異ならせ、中間鉄骨芯材32を十文字鋼とするのに対し、上部鉄骨芯材33は断面ロ字状の鋼管であるので、上部鉄骨芯材33内に中間鉄骨芯材32を挿入すれば、これらを強固に連結することができる。
また、地上階部12の外周柱15は、新設柱22の上端部から建物外方へ傾斜しつつ上方へ延びる傾斜部15sを備えている。
このような構成によれば、地下階部11Aに対し、地上階部12を既存地下外壁20よりも建物外方に広げて設けることができ、敷地面積を最大限に生かした建物を実現することができる。
【0030】
(第二実施形態)
本発明の建替え建物を構成する既存地下外壁および新設地下外壁と接合された壁柱構造において、第2実施形態の新設柱は、
図9、10に示すように新設地下外壁の外側に鉄骨芯材が設置され、建物内部側に柱型が現われている。また、鉄骨芯材は、地下階の上層階においては外方に傾斜している。
以下に示す第二実施形態にかかる建替え建物は、上記第一実施形態に対し、地下階部の一部の構成が異なるのみで、地上階部等、他の構成は上記第一実施形態と共通する。したがって、以下の説明においては、上記第一実施形態と相違する構成を中心に説明し、上記第一実施形態と共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。
第二実施形態に係る建替え建物の地下階部の構成を示す断面図を
図9に示す。
図9のD−D矢視断面図を
図10に示す。
【0031】
図9に示されるように、建替え建物10の地下階部11Bは、既存地下外壁20と、新設地下外壁41と、新設柱42と、新設梁23と、を備える。
新設地下外壁41は、平面視した状態で、既存地下外壁20の内側に形成され、その上端部41tが既存地下外壁20の下端部20bの内周面に沿っている。新設地下外壁41は、所定の壁厚を有した鉄筋コンクリート造で、図示しない鉄筋とコンクリート41cとからなる。
【0032】
図10に示されるように、新設柱42は、新設地下外壁41に沿った水平方向に間隔をあけて複数本が設けられている。各新設柱42は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で、それぞれ上下方向に延びるよう設けられている。
各新設柱42の下部42bは、鉄骨44と、鉄筋45と、コンクリート46とからなる。
この実施形態において、
図9に示されるように、新設柱42は、その下部42bが新設地下外壁41の内側面41sに沿うように設けられている。すなわち、鉄骨44の下部44bは、新設地下外壁41に対して建物内方にオフセットした位置に配設され、新設柱42の下部42bが新設地下外壁41から内方に突出している。
ここで、
図10に示されるように、鉄骨44の下部44bを構成する下部鉄骨芯材(第二の鉄骨芯材)51は、断面H型のH鋼により形成されている。下部鉄骨芯材51は、ウェブ51aと、ウェブ51aの両端部に直交して形成されたフランジ51f,51fとを有している。下部鉄骨芯材51は、ウェブ51aを新設地下外壁41の壁厚方向に沿わせ、一方のフランジ51fが建物内方に向けて設けられている。
【0033】
鉄筋45は、平面視コ字状で、下部鉄骨芯材51を取り囲むように配置され、その両端が、既存地下外壁20に定着されたアンカー筋49に接合されている。
これにより、新設柱42の下部42bは、新設地下外壁41に沿って配置され、かつ新設地下外壁41にアンカー筋49を介して接合されている。このようにして、新設柱42の下部42bが新設地下外壁41と一体に接合されることで、新設柱42の下部42bと新設地下外壁41とからなる下部壁柱50Aを形成している。
【0034】
図9に示されるように、新設柱42の中間部(上部)42cは、新設地下外壁41の上端部41tから上方に突出して延びている。新設柱42の中間部42cは、鉄骨44の中間部44cと、図示しない鉄筋と、コンクリート48と、からなる。
鉄骨44の中間部44cは、下部鉄骨芯材51の上端部から上方に向かうにしたがって既存地下外壁20に漸次近づくよう、斜め外方に向かって延びている。
ここで、鉄骨44の中間部44cを構成する中間部鉄骨芯材(第一の鉄骨芯材)52は、第一実施形態で示した中間部鉄骨芯材32と同様、断面十文字状に形成された十文字鋼からなる。また、鉄筋(図示無し)は、第一実施形態で示した鉄筋27と同様、平面視コ字状で、中間部鉄骨芯材52を取り囲むように配置され、その両端が、既存地下外壁20に定着されたアンカー筋に接合されている。
このようにして、新設柱42の中間部42cは、既存地下外壁20に沿って配置され、かつ既存地下外壁20に接合されている。これにより、新設柱42の中間部42cと既存地下外壁20とから、上部壁柱50Bが形成されている。
【0035】
新設柱42の上端部(上部)42tは、新設柱42の中間部42cに連続してさらに上方に延びている。新設柱42の上端部42tは、鉄骨44の上部44dと、鉄筋(図示無し)と、コンクリート48と、からなる。
ここで、鉄骨44の上部44dを構成する上部鉄骨芯材(第三の鉄骨芯材)53は、第一実施形態における上部鉄骨芯材33と同様、地上階部12の柱15を構成する柱鉄骨36の下端部を形成するもので、断面ロ字状の鋼管からなる。
上部鉄骨芯材53は、中間部鉄骨芯材52に連続して、上方に向かうにしたがって既存地下外壁20に漸次近づくよう、斜め外方に向かって延びている。上部鉄骨芯材53の内側には、中間部鉄骨芯材52の上端部52tが挿入され、上部鉄骨芯材53内に充填されるコンクリート48やモルタル等によって、上部鉄骨芯材53の下端部53bと中間部鉄骨芯材52の上端部52tとが一体に接合されている。
【0036】
新設柱42の上端部42tにおいても、新設柱42の中間部42cと同様、鉄筋(図示無し)は、平面視コ字状で、上部鉄骨芯材53を取り囲むように配置され、その両端が、既存地下外壁20に定着されたアンカー筋に接合されている。
このようにして、新設柱42の上端部42tは、既存地下外壁20に沿って配置され、かつ既存地下外壁20に接合されている。このようにして、新設柱42の上端部42tが既存地下外壁20に接合されて一体化されることで、新設柱42の上端部42tと既存地下外壁20とから、上部壁柱50Cが形成されている。
【0037】
上述したような建替え建物10によれば、新設柱42の下部42bは、新設地下外壁41に一体形成することで、下部壁柱50Aを構成することができ、地下躯体強度を高めることができる。また、新設柱42の下部42bと新設地下外壁41とからなる下部壁柱50Aを構成することで、新設地下外壁41から建物内方への新設柱42の突出寸法を抑えることができる。これにより、地下階部11Bの下部における室内空間を広く確保することができる。
また、新設柱42の中間部42c及び上端部42tは、既存地下外壁20に接合されることで、新設柱42と既存地下外壁20とからなる上部壁柱50B,50Cを構成することができ、これらを別々に設けた場合に比較し、地下躯体強度を高めることができる。また、新設柱42の下部42bにおける新設地下外壁41から建物内方への突出寸法を抑えることで、その上方に形成される新設柱42の中間部42c及び上端部42tも、既存地下外壁20から建物内方への突出寸法を抑えることができる。これにより、地下階部11Bの上部における室内空間を広く確保することができる。
このようにして、建替え建物10では、地下空間を広く確保しつつ、躯体強度を有効に高めることが可能となる。
【0038】
(第三実施形態)
本発明の建替え建物を構成する既存地下外壁および新設地下外壁と接合された壁柱構造において、第3実施形態の新設柱は、
図11に示すように第1実施形態と同様に、新設地下外壁内に鉄骨芯材が配置され、壁部と柱部が合成された壁柱が設けられている。また、鉄骨芯材は、第2実施形態と同様に、地下階の上層階においては外方に傾斜している。
以下に示す第三実施形態にかかる建替え建物は、上記第一、第二実施形態に対し、地下階部の一部の構成が異なるのみで、地上階部等、他の構成は上記第一、第二実施形態と共通する。したがって、以下の説明においては、上記第一、第二実施形態と相違する構成を中心に説明し、上記第一、第二実施形態と共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。
第三実施形態に係る建替え建物の地下階部の構成を示す断面図を
図11に示す。
【0039】
図11に示されるように、建替え建物10の地下階部11Cは、既存地下外壁20と、新設地下外壁61と、新設柱62と、新設梁23と、を備える。
新設地下外壁61は、既存地下外壁20の内側に形成され、その上端部61tが既存地下外壁20の下端部20bの内周面に沿っている。新設地下外壁61は、所定の壁厚を有した鉄筋コンクリート造で、図示しない鉄筋とコンクリート61cとからなる。
新設柱62は、新設地下外壁61に沿った水平方向に間隔をあけて複数本が設けられている。各新設柱62は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で、それぞれ上下方向に延びるよう設けられている。
新設柱62の下部62bは、鉄骨64の下部64bと、図示しない鉄筋と、コンクリート66とからなる。
この実施形態において、新設柱62は、その下部62bが新設地下外壁61に埋設されている。すなわち、新設柱62の下部62bにおいて、鉄骨64の下部64bが新設地下外壁61のコンクリート61c内に埋設されるとともに、新設柱62の下部62bのコンクリート66は、新設地下外壁61のコンクリート61cの一部をなしている。
【0040】
ここで、鉄骨64の下部64bを構成する下部鉄骨芯材(第二の鉄骨芯材)71は、第一、第二実施形態の下部鉄骨芯材31,51と同様、断面H型のH鋼により形成されている。
このようにして、新設柱62の下部62bが新設地下外壁61と一体に形成されることで、新設柱62の下部62bと新設地下外壁61とからなる下部壁柱70Aを形成している。
【0041】
新設柱62の中間部(上部)62cは、新設地下外壁61の上端部61tから上方に延びている。新設柱62の中間部62cは、鉄骨64の中間部64cと、鉄筋(図示無し)と、コンクリート68と、からなる。
鉄骨64の中間部64cは、下部鉄骨芯材71の上端部から上方に向かうにしたがって既存地下外壁20に漸次近づくよう、斜め外方に向かって延びている。
ここで、鉄骨64の中間部64cを構成する中間部鉄骨芯材(第一の鉄骨芯材)72は、第一、第二実施形態で示した中間部鉄骨芯材32、52と同様、断面十文字状に形成された十文字鋼からなる。鉄筋(図示無し)は、平面視コ字状で、中間部鉄骨芯材72を取り囲むように配置され、その両端が、既存地下外壁20に定着されたアンカー筋に接合されている。
このようにして、新設柱62の中間部62cは、既存地下外壁20に沿って配置され、かつ既存地下外壁20に接合されている。これにより、新設柱62の中間部62cと既存地下外壁20とから、上部壁柱70Bが形成されている。
【0042】
新設柱62の上端部(上部)62tは、新設柱62の中間部62cに連続してさらに上方に延びている。新設柱62の上端部62tは、鉄骨64の上部64dと、鉄筋(図示無し)と、コンクリート68と、からなる。
ここで、鉄骨64の上部64dを構成する上部鉄骨芯材(第三の鉄骨芯材)73は、第一、第二実施形態における上部鉄骨芯材33、53と同様、地上階部12の柱15を構成する柱鉄骨36の下端部を形成するもので、断面ロ字状の鋼管からなる。
上部鉄骨芯材73は、中間部鉄骨芯材72に連続して、上方に向かうにしたがって既存地下外壁20に漸次近づくよう、斜め外方に向かって延びている。上部鉄骨芯材73の内側には、中間部鉄骨芯材72の上端部72tが挿入され、上部鉄骨芯材73内に充填されるコンクリート37によって、上部鉄骨芯材73の下端部73bと中間部鉄骨芯材72の上端部72tとが一体に接合されている。
【0043】
新設柱62の上端部62tにおいても、新設柱62の中間部62cと同様、鉄筋(図示無し)は、平面視コ字状で、上部鉄骨芯材73を取り囲むように配置され、その両端が、既存地下外壁20に定着されたアンカー筋に接合されている。
このようにして、新設柱62の上端部62tは、既存地下外壁20に沿って配置され、かつ既存地下外壁20に接合されている。このようにして、新設柱62の上端部62tが既存地下外壁20に接合されて一体化されることで、新設柱62の上端部62tと既存地下外壁20とから、上部壁柱70Cが形成されている。
【0044】
上述したような建替え建物10によれば、新設柱62の下部62bは、新設地下外壁61に一体形成することで、下部壁柱70Aを構成することができ、新設柱62と新設地下外壁61とを別々に設けた場合に比較し、地下躯体強度を高めることができる。また、新設柱62の下部62bと新設地下外壁61とからなる下部壁柱70Aを構成することで、新設地下外壁61から建物内方への新設柱62の突出寸法を抑えることができる。これにより、地下階部11Bの下部における室内空間を広く確保することができる。
また、新設柱62の中間部62c及び上端部62tは、既存地下外壁20に接合されることで、新設柱62と既存地下外壁20とからなる上部壁柱70B,70Cを構成することができ、これらを別々に設けた場合に比較し、地下躯体強度を高めることができる。また、新設柱62の下部62bにおける新設地下外壁61から建物内方への突出寸法を抑えることで、その上方に形成される新設柱62の中間部62c及び上端部62tも、既存地下外壁20から建物内方への突出寸法を抑えることができる。これにより、地下階部11Bの上部における室内空間を広く確保することができる。
このようにして、建替え建物10では、地下空間を広く確保しつつ、躯体強度を有効に高めることが可能となる。
【0045】
さらに、新設地下外壁61内に下部鉄骨芯材71が埋設されている。このように、下部鉄骨芯材71を新設地下外壁61内に埋設すれば、新設柱62の中間部62c及び下部62bにおける新設地下外壁61から建物内方への突出寸法を最小限に抑えることができ、室内空間を広く確保することができる。
【0046】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の既存の地下外壁を有する建替え建物は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態でした建替え建物10の階数、平面形状等については、何ら限定するものではなく、適宜他の構成としてもよい。
また、地下階部11A,11B,11Cの施工方法についても何ら限定するものではなく、例えば新設地下外壁21,41,61を地盤G中に先行して構築した後、新設地下外壁21,41,61の内側の地盤Gを掘削する、いわゆる逆打ち工法を採用してもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。