(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877691
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】エンジンの吸気装置
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20210517BHJP
F02M 35/104 20060101ALI20210517BHJP
F02M 26/19 20160101ALI20210517BHJP
【FI】
F02M35/10 311E
F02M35/10 301D
F02M35/104 A
F02M26/19 331
F02M26/19 321
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-89737(P2017-89737)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-188983(P2018-188983A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】岡田 誠二
(72)【発明者】
【氏名】山口 謙二
【審査官】
小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−252577(JP,A)
【文献】
特開平11−210566(JP,A)
【文献】
特開2000−145556(JP,A)
【文献】
特開2007−224802(JP,A)
【文献】
特開2009−293562(JP,A)
【文献】
特開2010−144669(JP,A)
【文献】
特開2017−078384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/19
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダに吸気を供給する吸気通路と、
前記エンジンの排気の一部をEGRガスとして再循環させて前記吸気と混合するEGR通路と、を備え、
前記吸気通路及び前記EGR通路は、前記吸気が前記EGRガスに略直角に交わるように接続され、
前記吸気通路は、前記EGR通路との接続部位で前記吸気が前記EGRガスに略垂直にぶつかるように案内するガイド部材を有し、
前記ガイド部材は、前記EGRガスが前記EGR通路から流出する方向と直交する向きに立設され、前記吸気を受け止める表面が滑らかな湾曲面状に形成されている
ことを特徴とする、エンジンの吸気装置。
【請求項2】
前記EGR通路に配置されたリード弁を備えている
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの吸気装置。
【請求項3】
前記吸気通路内であって前記吸気通路と前記EGR通路との接続部位よりも上流側に配置されたヒータを備えている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のエンジンの吸気装置。
【請求項4】
前記吸気通路と前記EGR通路との接続部位が、前記エンジンの吸気マニホールドの端部に位置する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のエンジンの吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気通路とEGR通路とを備えた、エンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンから排出された排気(燃焼ガス)の一部をEGRガスとして還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)システムが知られている。例えば特許文献1には、還流排ガス(EGRガス)を新気(吸気)と合流させるためのEGR通路を備えた、内燃機関の吸気装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の吸気装置では、吸気通路とEGR通路との合流部に、吸気及びEGRガスの流れを制御するための制御壁部が突設されている。特許文献1の技術によれば、吸気及びEGRガスが、制御壁部の表裏面にそれぞれ衝突した後、制御壁部の先端に向かって案内されて合流するとされている。このように吸気及びEGRガスを制御壁部の表裏面にそれぞれ沿わせて流せば、吸気及びEGRガスが互いの流れを邪魔しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-293562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、EGRシステムを備えたエンジンでは、吸気とEGRガスとの混合を促進し、シリンダに供給される混合気中の成分を均一化することで、排気性能が向上することが知られている。したがって、特許文献1の技術のように、吸気とEGRガスとを互いに平行に流した後に合流させると、吸気とEGRガスとが良好に混合しない虞がある。
【0006】
本件は、上述したような課題に鑑み創案されたものであり、エンジンの吸気装置において吸気とEGRガスとの混合を促進することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示するエンジンの吸気装置は、エンジンのシリンダに吸気を供給する吸気通路と、前記エンジンの排気の一部をEGRガスとして再循環させて前記吸気と混合するEGR通路と、を備えている。また、前記吸気通路及び前記EGR通路は、前記吸気が前記EGRガスに略直角に交わるように接続されている。
これにより、吸気がEGRガスに略直角にぶつかるため、吸気とEGRガスとの混合が促進される。
【0008】
(2)前記吸気通路が、前記EGR通路との接続部位で前記EGRガスに向けて前記吸気を案内するガイド部材を有することが好ましい。
この場合、ガイド部材を設けるだけで、吸気とEGRガスとの混合が促進される。
【0009】
(3)前記吸気装置が、前記EGR通路に配置されたリード弁を備えていることが好ましい。
この場合、EGR通路におけるEGRガスの流れ方向がリード弁で規制されることにより、シリンダへのEGRガスの供給量が適切な量になる。
【0010】
(4)前記吸気装置が、前記吸気通路内であって前記吸気通路と前記EGR通路との接続部位よりも上流側に配置されたヒータを備えていることが好ましい。
この場合、ヒータとEGRガスとの接触が防止されるため、EGRガスに含まれる粒子状物質(PM;Particulate Matter)がヒータに付着することがなくなり、ヒータの性能低下が抑制される。
【0011】
(5)前記吸気通路と前記EGR通路との接続部位が、前記エンジンの吸気マニホールドの端部に位置することが好ましい。
この場合、シリンダに対するEGRガスの分配率にバラツキが生じやすくなるが、上述したように吸気とEGRガスとの混合が促進されることにより、シリンダに対するEGRガスの分配率が均一化される。
【発明の効果】
【0012】
開示のエンジンの吸気装置によれば、吸気とEGRガスとの混合を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るエンジンの吸気装置をエンジンと共に示す模式的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としてのエンジンの吸気装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0015】
[1.構成]
本実施形態に係るエンジンの吸気装置1は、
図1に示すエンジン10に適用されている。エンジン10は、例えばディーゼルエンジンであって、図示しない車両に搭載される。本実施形態では、四つのシリンダ11が直列に配置されたエンジン10を例示する。
【0016】
なお、
図1では、四つのシリンダ11を互いに区別するために、図示する最も左方のシリンダ11から最も右方のシリンダ11まで順に「11A」〜「11D」の符号を付している。また、以下の説明では、シリンダ11が並ぶ方向を列設方向Dという。
【0017】
各シリンダ11には、吸気マニホールド12の下流端が接続されている。また、吸気マニホールド12の上流端は、吸気マニホールド12の列設方向Dにおける端部に設けられている。本実施形態では、吸気マニホールド12の上流端が、吸気マニホールド12の右方(シリンダ11D側)の端部に設けられている場合を例示する。なお、吸気マニホールド12の上流端から各シリンダ11までの通路長さは、
図1中で最も左方のシリンダ11Aまでの通路が最も長く、
図1中で最も右方のシリンダ11Dまでの通路が最も短い。
【0018】
吸気装置1は、エンジン10の各シリンダ11に吸気を供給する吸気通路2と、エンジン10の排気の一部をEGRガスとして再循環させて吸気と混合するEGR通路3とを備えている。これらの吸気通路2及びEGR通路3は、気体の通り道として機能する空間であって、例えば管状の部材で形成されている。なお、
図1及び
図2において、白抜き矢印は吸気の流れ方向を示し、黒塗り矢印はEGRガスの流れ方向を示している。
【0019】
吸気通路2は、吸気の通り道であって、外気を取り入れる吸気口から吸気マニホールド12の上流端まで延設されている。吸気通路2は、吸気マニホールド12と接続される部位でEGR通路3と合流する。言い換えると、吸気通路2とEGR通路3とは、吸気マニホールド12の上流端で互いに接続される。本実施形態では、上述したように吸気マニホールド12の上流端が吸気マニホールド12の端部に設けられているため、吸気通路2とEGR通路3との接続部位Xは、吸気マニホールド12の端部に位置する。
【0020】
また、本実施形態の吸気通路2は、EGR通路3と合流する部分に、吸気を所定の方向へ案内するガイド部材4を有する。ガイド部材4の詳細については後述する。
【0021】
EGR通路3は、EGRガスの通り道であって、エンジン10の排気通路(図示略)から吸気通路2まで延設される。EGR通路3の下流端は、吸気マニホールド12の上流端に正対するように設けられる。言い換えると、EGR通路3は、吸気マニホールド12の上流端に向けてEGRガスを真っ直ぐに流出させるような向きに配置されている。
【0022】
本実施形態の吸気装置1は、吸気通路2の内部に配置されたヒータ5と、EGR通路3の下流端に並設された二つのリード弁6とを備えている。ヒータ5は、例えば外気温が低い場合に、吸気を温めるためのものである。ヒータ5は、吸気通路2内であって、吸気通路2とEGR通路3との接続部位Xよりも上流側に配置される。
【0023】
リード弁6は、EGRガスの流れ方向を規制するための一方向弁であり、薄くて弾力のある二枚一組の板部材で形成されている。リード弁6は、EGRガスがEGR通路3から吸気マニホールド12へ流出することは許容し、吸気が吸気通路2からEGR通路3へ流入することは阻止するように設けられる。リード弁6は、EGR通路3におけるEGRガスの逆流を防止し、各シリンダ11に対するEGRガスの供給量の低下を抑制する機能を持つ。
【0024】
吸気通路2及びEGR通路3は、吸気が接続部位XでEGRガスに略直角に交わるように接続されている。すなわち、吸気通路2とEGR通路3とは、吸気通路2を流れる吸気がEGR通路3から流出するEGRガスに対して略直角にぶつかるように接続されている。本実施形態では、ガイド部材4により、吸気がEGRガスに略垂直にぶつかるように案内される。
【0025】
ガイド部材4は、吸気通路2とEGR通路3との接続部位Xで、EGRガスに向けて吸気を案内するものである。
図2に示すように、本実施形態のガイド部材4は、薄いプレート状に形成され、EGRガスがEGR通路3から流出する方向と直交する向きに立設されている。また、ガイド部材4は、吸気を受け止める表面4aが、滑らかな湾曲面状に形成されている。
【0026】
[2.作用,効果]
(1)上述した吸気装置1では、吸気がEGRガスに略直角に交わるように吸気通路2とEGR通路3とが接続されているため、吸気をEGRガスに略直角にぶつけることができる。これにより、吸気とEGRガスとの混合を促進することができる。よって、各シリンダ11に対するEGRガスの分配率を目標の範囲内に収める(分配率の均一化を図る)ことができ、排気性能の向上を図ることができる。
【0027】
また、一般に吸気通路2における吸気の流量は、EGR通路3におけるEGRガスの流量よりも多いことから、上述したように吸気をEGRガスにぶつけることで、EGRガスを吸気にぶつける場合よりも、吸気とEGRガスとの混合を促進することができる。
【0028】
さらに、吸気装置1によれば、吸気がEGRガスに略直角に交わるように吸気通路2とEGR通路3とを接続するだけで上述したように吸気とEGRガスとの混合を促進できるため、装置の大型化を防止しながら(コンパクトな構造で)排気性能の向上を実現することができる。したがって、例えば小型トラックのように吸気装置1を設置するためのスペースが制限される車両に対しても、容易に適用することができる。
【0029】
(2)上述した吸気通路2には、EGR通路3との接続部位XでEGRガスに向けて吸気を案内するガイド部材4が設けられることから、簡素な構成で吸気とEGRガスとの混合を促進することができる。すなわち、既存の吸気通路にガイド部材4を追加するだけで、吸気とEGRガスとの混合を促進することができる。このため、装置の大型化を防止するとともに製造コストを抑えることができる。
【0030】
(3)上述したEGR通路3にはリード弁6が配置されるため、EGRガスの流れ方向を規制することができ、各シリンダ11に対するEGRガスの供給量を適切な量とすることができる。また、吸気装置1によれば、リード弁6を配置したとしても上述したようにコンパクトな構造とすることができる。
【0031】
(4)上述した吸気通路2には、EGR通路3との接続部位Xよりも上流側にヒータ5が配置されることから、必要に応じてヒータ5で吸気を温めることにより、排気性能を向上させることができる。また、ヒータ5が吸気通路2のうちのEGR通路3との接続部位Xよりも上流側に配置されるため、ヒータ5とEGRガスとの接触を防止することができる。これにより、EGRガスに含まれる煤などの粒子状物質(PM;Particulate Matter)がヒータ5に付着することを防止できるため、ヒータ5の性能低下を抑制することができる。
【0032】
(5)上述した吸気装置1では、吸気通路2とEGR通路3との接続部位Xが吸気マニホールド12の端部に位置するため、吸気及びEGRガスが各シリンダ11に到達するまでの道のり(通路長さ)の差が大きくなる。具体的には、上述したように、
図1中において最も左方のシリンダ11Aまでの通路長さと、最も右方のシリンダ11Dまで通路長さとの差が大きくなる。
【0033】
吸気とEGRガスとの混合が不十分であると、各シリンダ11までの通路長さの差に応じてEGRガスの分配率にバラツキが生じるため、少なくとも何れかのシリンダ11では排気性能が低下する虞がある。これに対し、吸気装置1によれば、上述したように吸気及びEGRガスの混合が促進されることから、たとえ各シリンダ11までの通路長さに大きな差があったとしても、各シリンダ11に対するEGRガスの分配率を目標の範囲内に収めることができる。よって、全てのシリンダ11において排気性能を向上させることができる。
【0034】
(6)上述したガイド部材4は、吸気を受け止める表面4aが滑らかな湾曲面状に形成されているため、吸気をEGRガスに向けて滑らかに案内することができ、吸気の圧力損失を抑制することができる。
【0035】
[3.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、吸気通路2にヒータ5が配置され、EGR通路3の下流端にリード弁6が配置された場合について説明したが、これらのヒータ5及びリード弁6の何れか一方又は両方が吸気装置1から省略されてもよい。また、上述した吸気マニホールド12の構成は一例であって、吸気通路2とEGR通路3との接続部位Xが吸気マニホールド12の端部以外に位置していてもよい。
【0037】
上述したエンジン10は、ガソリンエンジンであってもよい。すなわち、上述した吸気装置1は、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンに対しても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 吸気装置
2 吸気通路
3 EGR通路
4 ガイド部材
5 ヒータ
6 リード弁
10 エンジン
11(11A〜11D) シリンダ
12 吸気マニホールド
X 接続部位