(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在、特開2017−66651号公報(特許文献1)のように、ケーシングに「脱臭機能」や「除菌機能」等を有する機能部の動作状態を表示する表示部を設けた衛生洗浄装置が知られている。
この特許文献1において、表示部は、ケーシング内部に設けられた光源からの光をケーシングに設けられた開口を塞ぐように取り付けられた光透過窓から透過させることで、機能部の動作状態を表示することができる。
【0003】
また、特開2016−189929(特許文献2)のように、光透過窓の代わりに、ケーシングの一部を薄肉にした光透過部から光源の光を透過させて機能部の動作状態を表示するものが知られている。
この特許文献2を特許文献1の衛生洗浄装置と組み合わせることで、表示部にケーシングと別部材である透過窓が必要なくなり、衛生洗浄装置の清掃性及び意匠性を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2を組み合わせた衛生洗浄装置において、光透過部の外面とその周辺のケーシングの外面とが面一となっており、光源からの光がケーシング外に広がりにくい。そのため、使用者の見る角度によって表示部の光が見えにくく、機能部の動作状態が確認しにくいという問題があった。
例えば、パブリックスペースに設置される衛生洗浄装置などにおいて、機能部の動作状態に異常があることを見落とされると、修理が行われるまでに多くの時間を要することになるため視認性の向上させることは重要である。
【0006】
また、表示範囲を広げて視認性を向上させるために、均一な肉厚の薄肉部の範囲を広げて光透過部を大きくすると、光透過部と一体で形成されたケーシングの強度が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ケーシングの強度を低下させずに表示部の視認性を向上させることができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明の衛生洗浄装置は、機能部を内部に収容するケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、前記機能部の動作状態に基づいて発光する光源と、前記ケーシングと一体で形成され、前記光源からの光が透過するように前記ケーシングの内面が凹状に窪んで形成された光透過部と、を有する表示部と、を備え、前記表示部の光透過部は、前記ケーシングの肉厚より薄い肉厚で形成される第1薄肉部と、前記第1薄肉部の周囲において、前記第1薄肉部に近づくにつれて徐々に薄肉となる肉厚で形成された第2薄肉部と、を有し、前記光透過部の外面が、前記第2薄肉部から第1薄肉部まで前記ケーシングの外面よりも凸状に盛り上がっていることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、第2薄肉部によって、ケーシングの外面側から光透過部にかかる荷重を分散させることで、広い範囲に均一の肉厚で光透過部を形成した場合と比較して、肉厚を薄肉にすることによるケーシングの強度の低下を抑制することができる。
また、光透過部は、光透過部の外面が第2薄肉部の一部から第1薄肉部にかけてケーシングの外面よりも凸状に盛り上がって形成され、その部分を光源の光が透過することで、光透過部の外面がケーシングの外面と面一で形成されている場合と比較して、第1薄肉部と第2薄肉部とからより多くの光を透過させることができると共に、その光をよりも広い範囲から視認可能にできる。
従って、広い範囲に均一の肉厚で光透過部を形成した場合と比較して、ケーシングの強度を低下させずに表示部の視認性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記表示部の光透過部は、その内面が前記ケーシングの外面より盛り上がらないように形成されていることを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明においては、光透過部の内面が大きく盛り上がらない、つまり、第1薄肉部と第2薄肉部における肉厚が極端に薄くならないようになっているので、ケーシングの強度が低下しにくい。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記光源の先端は、前記光透過部の凹状に窪んだ部分に配置されることを特徴としている。
【0013】
このように構成された本発明においては、光源が光透過部の窪んだ部分の外部に配置された場合と比較して、光源からの光をできるだけ光透過部の内面に近い位置から透過させることができ、ケーシングの強度を高めるために光透過部の肉厚を厚くした場合であっても確実に光を透過させ、視認性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーシングの強度を低下させずにケーシングの強度を低下させずに、表示部の視認性を向上させることができる衛生洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態による衛生洗浄装置を備えたトイレ装置について説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
まず、
図1により、本発明の実施形態による衛生洗浄装置をトイレ装置の説明を行う。
図1は、本発明の実施形態による衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、トイレ装置1は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)2と、衛生洗浄装置4と、を備える。衛生洗浄装置4は、便器2の上に取り付けられる。衛生洗浄装置4は、便器2に対して一体的に取り付けてもよいし、便器2に対して着脱可能に取り付けてもよい。便器2は、トイレ装置1に必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0018】
便器2は、陶器製であって、凹状のボウル部2aを有する。この便器2は、ボウル部2aにおいて使用者の尿や便などの排泄物を受ける。
【0019】
衛生洗浄装置4は、便座6と、便蓋8と、ケーシング10と、を有する。便蓋8は、衛生洗浄装置4に必要に応じて設けられ、省略可能である。便座6と便蓋8とは、ケーシング10に対して回転可能に軸支されている。
【0020】
ここで、本願明細書においては、便座6に座った使用者からみて上方を「上方」とし、便座6に座った使用者からみて下方を「下方」とする。また、開いた状態の便蓋8に背を向けて便座6に座った使用者からみて前方を「前方」とし、後方を「後方」とし、右側を「右側方」とし、左側を「左側方」とする。
【0021】
便座6は、その内部に通電されることにより発熱するヒータ(図示せず)が設けられており、このヒータによって便座6の着座面を暖める暖房機能を有する。
【0022】
衛生洗浄装置4のケーシング10は、例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィンやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルやABS樹脂などのポリスチレン系樹脂で形成された樹脂製の筐体であり、便器2のボウル部2aよりも後方の部分の上に取り付けられる。
【0023】
ケーシング10の内部には、各種機能を備えた機能部12が内蔵されている。この機能部12は、例えば、便座6に座った使用者の「おしり」などを洗浄するための「局部洗浄機能」、ボウル2a内の脱臭を行う「脱臭機能」、ボウル2aにミスト状の機能水あるいは水を噴霧するための「除菌機能」などの機能を有する。
機能部12は、便座6に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「室内暖房機能」などの機能をさらに有してもよく、上記に限ることなく、トイレ装置1において用いられる任意の機能であればよい。
【0024】
また、ケーシング10には、機能部12の動作状態を表示する表示部14が隣同士に連立して複数設けられている。
この表示部14は、発光色を変えて点灯することで、機能部12の動作状態を使用者に視認させることができる。なお、本発明の実施形態においては、この表示部14は、複数設けられており、それぞれ「電源のONOFF状態」、「暖房機能」、「脱臭機能」、「除菌機能」の動作状態を表示している。
具体的には、表示部14は、例えば、「電源のONOFF状態」を表示する場合、緑系の発光色で点灯することで通常使用可能状態、消灯することで電源OFF状態、赤系の発光色で点灯することで省電力待機状態を示す。
また、表示部14は、例えば、「暖房機能」を表示する場合、緑系の発光色で点灯することで通常使用可能態、赤系の発光色で点灯することで加熱状態、消灯することで使用不可状態を示す。
また、これに限らず、表示部14は、上記の発光色と異なる色で点灯することで、上述した状態と異なる動作状態を示すようにしてもよい。
【0025】
次に、
図2及び
図3により、本発明の実施形態による衛生洗浄装置の表示部の詳細について説明を行う。
図2は、
図1のII−II線における断面図である。
図3は、
図2の拡大図である。
【0026】
図2及び
図3に示すように、表示部14は、ケーシング10の内部に設けられた光源18と、ケーシング10と一体で形成され、光源18からの光を透過するように光透過部16と、を有する。この光透過部16と光源18とは、表示部14の数だけ連立して設けられている。
【0027】
光透過部16は、ケーシング10の内面10a側が凹状になだらかに窪むように形成されている。
具体的には、光透過部16は、ケーシングの肉厚Wよりも薄肉な肉厚w1で形成された第1薄肉部22と、第1薄肉部22に近づくにつれて徐々に薄肉となる肉厚w2で形成された第2薄肉部24と、を有する。これらの肉厚は肉厚W>肉厚w2>肉厚w1の関係になるように形成されている。
つまり、光透過部16は、その肉厚がケーシング10の肉厚Wから第2薄肉部24の肉厚w2を経て、第1薄肉部22の肉厚w1まで薄肉になることで、凹状になだらかに窪んで形成されている。
なお、ケーシング10の肉厚Wは、1.5mm〜3.5mmであり、第1薄肉部22の肉厚w1は、0.2mm〜0.7mmである。
また、光透過部16の内面16aは、ケーシング10の外面10bよりも盛り上がらないように形成されている。換言すると、光透過部16の内面16aは、ケーシング10の外面10bよりも下方に位置するようになっている。
【0028】
また、光透過部16の外面16bは、第2薄肉部24の一部から第1薄肉部22にかけて、ケーシング10の外面10bよりも凸状に盛り上がって形成されている。
このように形成された第2薄肉部24は、ケーシング10の外面10b側から光透過部16にかかる荷重を分散させることができ、ケーシング10の強度が低下することを抑制することができる。
なお、光透過部16の外面16bは、第2薄肉部24のはじめから第1薄肉部22にかけて、ケーシング10の外面10bよりも凸状に盛り上がって形成してもよい。
【0029】
光源18は、ケーシング10の内部に設けられたLEDである。この光源18は、電子基板20に接続されており、波長が変更されるように制御することで、青、緑、赤などの複数の色に発光することができる。
【0030】
光源18は、少なくともその先端18aが光透過部16の凹状に窪んで形成された部分である内部空間Sに位置するように配置されている。そのため、光源18が光透過部16の内部空間Sの外部に配置された場合と比較して、光源18からの光をできるだけ光透過部16の内面16aに近い位置から透過させることができ、ケーシング10の強度を高めるために光透過部16の肉厚を厚くした場合であっても確実に光源18からの光を透過させることができ、表示部14の視認性の低下を抑制することができる。
また、光源18は、その先端18aが光透過部16の内部空間Sに位置するように配置されているため、光源18からの光が隣接する光透過部16に届きづらく、隣接する光源18からの光が光透過部16から透過して、機能部12の動作状態を誤表示することを抑制することができる。
【0031】
つぎに、
図4を用いて、上述した本発明の実施形態による衛生洗浄装置における表示部の発光状態について説明する。
図4は、本発明の実施形態による衛生洗浄装置における表示部の光源の発光状態を示す図である。
図4に示すように、表示部14は、光源18が中心軸Tから放射状に光Lが広がるように発光する。そして、表示部14は、光源18からの光Lが屈折しながら光透過部16を透過することで、機能部12の動作状態を示すことができる。
【0032】
光源18からの光Lは、光透過部16の外面16bがケーシング10の外面10bよりも凸状に盛り上がっている部分から透過すると、光透過部16の外面16bがケーシング10の外面10bと面一で形成されている場合よりも広い範囲から視認できる。そのため、光透過部16の外面16bが面一で形成されている場合よりも使用者の視認性を向上させることができる。
また、光透過部16の外面16bは、第2薄肉部24の一部から第1薄肉部22にかけて、ケーシング10の外面10bよりも凸状に盛り上がって形成されているので、光透過部16は、第1薄肉部22と第2薄肉部24とから透過するより多くの光Lを凸状に盛り上がっている部分から透過させることができ、使用者の視認性がより良い。
特に、赤系の光は、青系の光と比較して屈折率が小さく、より多くの光Lが光透過部16の外面16bの凸状に盛り上がっている部分から透過しやすい。そのため、機能部12の異常状態における視認性がよい。
【0033】
つぎに、上述した本発明の実施形態による衛生洗浄装置4における作用について説明する。
まず、本発明の実施形態による衛生洗浄装置4によれば、表示部14の光透過部16は、ケーシング10の肉厚Wより薄い肉厚w1で形成される第1薄肉部22と、第1薄肉部22の周囲において、第1薄肉部22に近づくにつれて徐々に薄肉となる肉厚w2で形成された第2薄肉部24と、を有し、光透過部16の外面16bが、第2薄肉部24から第1薄肉部22までケーシング10の外面10bよりも凸状に盛り上がっている。
この光透過部16は、第2薄肉部24によって、ケーシング10の外面10b側から光透過部16にかかる荷重を分散させ、広い範囲に均一の肉厚で光透過部16を形成した場合と比較して、肉厚を薄肉にすることによるケーシング10の強度の低下を抑制することができる。
また、光透過部16は、光透過部16の外面16bが第2薄肉部24の一部から第1薄肉部22にかけてケーシング10の外面10bよりも凸状に盛り上がって形成され、その部分を光源18の光が透過することで、光透過部16の外面16bがケーシング10の外面10bと面一で形成されている場合と比較して、第1薄肉部22と第2薄肉部24とからより多くの光Lを透過させることができると共に、その光Lをよりも広い範囲から視認可能にできる。
従って、広い範囲に均一の肉厚で光透過部16を形成した場合と比較して、ケーシング10の強度を低下させずに、表示部14の視認性を向上させることができる。
【0034】
また、本発明の実施形態による衛生洗浄装置4によれば、光透過部16は、その内面16aがケーシング10の外面10bより盛り上がらないように形成されている。つまり、第1薄肉部22と第2薄肉部24における肉厚が極端に薄くならないようになっているので、ケーシング10の強度が低下しにくい。
【0035】
また、本発明の実施形態による衛生洗浄装置4によれば、光源18の先端18aは、光透過部16の凹状に窪んだ部分である内部空間Sに配置されている。
そのため、光源18が光透過部16の内部空間Sの外部に配置された場合と比較して、光源18からの光をできるだけ光透過部16の内面16aに近い位置から透過させることができ、ケーシング10の強度を高めるために光透過部16の肉厚を厚くした場合であっても確実に光源18からの光を透過させることができ、視認性の低下を抑制することができる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではなく、前述の本実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。