(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の実施形態に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部内に配置される内側コア部を含み、閉磁路を形成する磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間に介在されて前記内側コア部の少なくとも一部を覆う内側樹脂部を含み、前記巻回部の外周面を覆わない樹脂モールド部とを備え、
前記内側コア部は、
所定の磁路断面積を有する基本領域と、
前記基本領域の磁路断面積よりも小さい磁路断面積を有すると共に、前記巻回部の軸方向の中央を含む中央近傍に配置される領域であって、単一のコア片に設けられる中央領域とを備え、
前記内側樹脂部は、
前記基本領域と前記中央領域との段差によって形成される環状の溝に構成樹脂が充填されてなり、前記基本領域を覆う箇所の厚さよりも厚い肉厚部を含む。
【0012】
上記のリアクトルは、巻回部を露出した状態で内側コア部を覆う樹脂モールド部を備えるため、内側樹脂部によって巻回部と内側コア部との間の絶縁性を高められる上に、リアクトルを液体冷媒等の冷却媒体で冷却する場合には、巻回部を冷却媒体に直接接触させられて放熱性に優れる。
【0013】
特に、上記のリアクトルは、内側樹脂部の厚さが内側コア部の全長に亘って一様ではなく、内側コア部における巻回部の軸方向の中央近くの位置に肉厚部を備える。この肉厚部は、樹脂モールド部において内側コア部の基本領域を覆う箇所よりも厚い上に、上記の環状の溝に沿って環状に連続して設けられていることから、割れ難いといえる。また、この肉厚部は、少なくとも単一のコア片の外周に設けられる。即ち、肉厚部は、コア片同士の継ぎ目箇所以外の箇所の外周に必ず設けられる。このことからも、以下に説明するように割れ難い。上記のリアクトルは、このような肉厚部を樹脂モールド部における機械的強度の弱点箇所に備えるため、熱応力や外部からの振動等が付与されても肉厚部を含む樹脂モールド部に割れが生じ難く、強度に優れる。
【0014】
例えば、コア片の端面の周縁を面取りしたり、コア片間にコア片の端面と同等以下の平面面積を有するギャップ板を挟んだりして、コア片同士を接続すれば、コア片同士の継ぎ目箇所には、その周方向に連続する環状の凹部を形成できる。この状態で樹脂モールド部を形成すれば、上記凹部に樹脂モールド部の構成樹脂が充填されることで、コア片同士の継ぎ目箇所に、上記凹部以外の箇所よりも厚い環状の肉厚箇所を形成できる。しかし、熱応力や外部からの振動等が付与されて、隣り合うコア片が離れる方向に引っ張られる際に上述の肉厚箇所がコア片に引っ張られる等して、肉厚箇所に割れが生じ得る。一方、コア片同士の継ぎ目箇所からずれた位置、即ち一つのコア片において端面及びその近傍から離れた位置に、樹脂モールド部の厚さが局所的に厚い箇所を設ければ、熱応力や外部からの振動等が付与されてもこの厚い箇所に割れが生じ難い。以上のことから、上記のリアクトルに備えられる肉厚部は、単一のコア片の外周に設けられる領域を含むものとする。なお、この肉厚部は、コア片同士の継ぎ目箇所の外周に設けられる領域を含むことを許容する。
【0015】
樹脂モールド部が上述の二方向の充填によって形成された場合、モールド原料の合流箇所は代表的には肉厚部に含まれる。そのため、この場合でも、上記のリアクトルは上記合流箇所の強度に優れる。
【0016】
(2)上記のリアクトルの一例として、
前記コア片は、前記中央領域と、前記中央領域を挟む前記基本領域との双方を備える形態が挙げられる。
【0017】
上記形態は、環状の溝部が設けられたコア片を含み、このコア片の溝部の外周に設けられる肉厚部は、コア片同士の継ぎ目箇所の外周に設けられていないといえる。そのため、上記形態は、上述の熱応力や外部からの振動等が付与されても肉厚部がより割れ難く、強度に優れる。
【0018】
(3)上記のリアクトルの一例として、
前記内側コア部は、前記中央領域を備える第一のコア片と、前記基本領域を備え、前記第一のコア片を挟む二つの第二のコア片とを備える形態が挙げられる。
【0019】
上記形態では、第一のコア片が二つの第二のコア片に挟まれることで、第一のコア片の中央領域と第二のコア片の基本領域とによって環状の溝部を形成する。即ち、上記形態は、三つのコア片によって形成される環状の溝部の外周に肉厚部を備えるといえる。この肉厚部の一部は、コア片同士の継ぎ目箇所の外周に設けられるものの、肉厚部の残部は、上記継ぎ目箇所以外の箇所、具体的には第一のコア片における端面から離れた中間部分の外周に設けられる。そのため、上記形態は、強度に優れる。また、上記形態は、各コア片を溝付きコア片とする必要が無く、直方体状や円柱状等の単純な形状の成形体とすることができ、コア片の製造性にも優れる。
【0020】
(4)内側コア部が複数のコア片を備える上記(3)のリアクトルの一例として、
前記第一のコア片と前記第二のコア片との間にギャップ部を備える形態が挙げられる。
【0021】
上記形態は、ギャップ部を含むことで磁気飽和し難い上に、ギャップ部を巻回部内に備えるため漏れ磁束に起因する損失も低減し易い。また、上記形態では、コア片同士の継ぎ目箇所にギャップ部を含み、上述のように肉厚部の一部がコア片同士の継ぎ目箇所の外周に設けられるものの、肉厚部の残部が上記継ぎ目箇所以外の箇所の外周に設けられるため、強度に優れる。
【0022】
(5)上記のリアクトルの一例として、
前記肉厚部は、前記樹脂モールド部を形成する際の流動性樹脂の合流箇所を含む形態が挙げられる。
【0023】
上記形態は、樹脂モールド部が流動性樹脂(モールド原料)の合流箇所を含むものの、合流箇所は肉厚部に含まれるため、合流箇所以外の箇所よりも厚く形成されている。従って、上記形態は、熱応力や外部からの振動等が付与されても、合流箇所が割れ難く、強度に優れる。また、上記形態は、樹脂モールド部が二方向の充填によって形成されたものといえ、樹脂モールド部の形成時、モールド原料の充填時間を短くでき、製造性にも優れる。
【0024】
(6)上記のリアクトルの一例として、
前記内側コア部は、磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体からなる樹脂コア片、及び圧粉成形体からなる圧粉コア片の少なくとも一方を含む形態が挙げられる。
【0025】
上記形態において樹脂コア片を備える場合、上述の(2)の溝付きコア片といった凹凸形状のコア片であっても、射出成形等によって容易に成形でき、製造性に優れる。圧粉コア片を備える場合、圧粉成形体は複合材料の成形体よりも透磁率を高め易く、小型なコア片にし易いため、磁性コアやリアクトルを小型にできる。
【0026】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0027】
[実施形態1]
図1〜
図3を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。
以下の説明では、リアクトル1Aにおける設置対象に接する設置側を下側、その対向側を上側として説明する。
図2は、紙面の下側がリアクトル1Aの設置側である場合を例示する。
図2は、巻回部2aをその軸方向に平行な平面で切断した縦断面を示し、内側樹脂部61を露出させた状態を示す。
図1,
図2、及び後述の
図4の巻回部2a,2bに付した一点鎖線は、巻回部2a,2bの軸方向の中央を意味する。
【0028】
〈概要〉
実施形態1のリアクトル1Aは、
図1に示すように、コイル2と、閉磁路を形成する磁性コア3と、磁性コア3の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部6とを備える。この例では、コイル2は一対の巻回部2a,2bを有する。各巻回部2a,2bは、各軸が平行するように横並びに配置される。磁性コア3は、巻回部2a,2b内にそれぞれ配置される内側コア部31,31を含む。樹脂モールド部6は、巻回部2a,2bと内側コア部31,31との間にそれぞれ介在されて、各内側コア部31,31の少なくとも一部を覆う内側樹脂部61,61を含む。樹脂モールド部6は、各巻回部2a,2bの外周面を覆わず露出させる。このようなリアクトル1Aは、代表的には、コンバータケース等の設置対象(図示せず)に取り付けられて使用される。
【0029】
特に、実施形態1のリアクトル1Aでは、内側コア部31,31における巻回部2a,2bの軸方向の中央近くに配置される箇所が部分的に細い。この細い箇所(後述の中央領域3C)は、単一のコア片(この例では内コア片310)に設けられる。内側樹脂部61は、上記細い箇所と相対的に太い箇所(後述の基本領域3S)との段差によって形成される環状の溝に構成樹脂が充填されてなる肉厚部61Cを含む。内側コア部31が特定の形状及び大きさであると共に、内側コア部31の特定の位置に環状の肉厚部61Cを備えるリアクトル1Aは、例えば熱応力や外部からの振動等が付与されても、樹脂モールド部6に割れが生じ難い。以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
【0030】
〈コイル〉
この例のコイル2は、巻線が螺旋状に巻回されてなる筒状の巻回部2a,2bを備える。横並びされる一対の巻回部2a,2bを備えるコイル2として、以下の形態が挙げられる。
(α)1本の連続する巻線から形成される巻回部2a,2bと、巻回部2a,2b間に渡される巻線の一部からなり、巻回部2a,2bを連結する連結部とを備える形態。
(β)独立した2本の巻線によってそれぞれ形成される巻回部2a,2bと、巻回部2a,2bから引き出される巻線の両端部のうち、一方の端部同士が溶接や圧着等によって接合されてなる接合部とを備える形態。
いずれの形態も、各巻回部2a,2bから引き出される巻線の端部((β)では他方の端部)は、電源等の外部装置が接続される接続箇所として利用される。
【0031】
巻線は、銅等からなる導体線と、ポリアミドイミド等の樹脂からなり、導体線の外周を覆う絶縁被覆とを備える被覆線が挙げられる。この例の巻回部2a,2bは、被覆平角線からなる巻線をエッジワイズ巻して形成された四角筒状のエッジワイズコイルであり、形状・巻回方向・ターン数等の仕様を同一とする。巻線や巻回部2a,2bの形状、大きさ等は適宜選択できる。例えば、巻線を被覆丸線としたり、巻回部2a,2bの形状を円筒状、楕円状やレーストラック状等の角部を有しない筒状としたりすることが挙げられる。また、各巻回部2a,2bの仕様を異ならせることもできる。
【0032】
実施形態1のリアクトル1Aでは、巻回部2a,2bの外周面の全体が樹脂モールド部6に覆われず露出される。一方、巻回部2a,2b内には樹脂モールド部6の一部である内側樹脂部61が介在し、巻回部2a,2bの内周面は樹脂モールド部6に覆われる。
【0033】
〈磁性コア〉
《概要》
この例の磁性コア3は、巻回部2a,2b内にそれぞれ配置される内側コア部31,31と、巻回部2a,2b外に配置される外側コア部32,32とを備える。この例の磁性コア3は、四つのコア片(二つの内コア片310,310と二つの外コア片)を環状に組み付けて形成され、その外周が樹脂モールド部6によって覆われることで一体に保持されると共に、コア片間に磁気ギャップを実質的に含まないギャップレス構造である。
【0034】
実施形態1のリアクトル1Aでは、内側コア部31の磁路断面積がその全長に亘って一様ではなく部分的に異なる。この内側コア部31は、磁路断面積が相対的に小さい箇所を巻回部2a(又は2b、以下この段落、次段落では2aのみ記載する)の軸方向の中心近くに備える。より具体的には、内側コア部31は、所定の磁路断面積Ssを有する基本領域3Sと、基本領域3Sの磁路断面積Ssよりも小さい磁路断面積Scを有する中央領域3Cとを備える。磁路断面積が相対的に小さい箇所である中央領域3Cは、巻回部2aの軸方向の中央を含む中央近傍に配置される領域である。かつ、中央領域3Cは、単一のコア片(この例では後述の内コア片310)に設けられる領域である。
【0035】
ここでの「巻回部2aの軸方向の中央を含む中央近傍」とは、巻回部2aの軸方向の中央を中心とし、上記中央から巻回部2aの長さLの10%の地点までの領域とする。つまり、「中央近傍」とは、上記中心を含み、巻回部2aの長さLの20%の長さを有する領域である。長さLは、巻回部2aの軸方向に沿った大きさとする。中央領域3Cが「中心近傍に配置される」とは、中央領域3Cの少なくとも一部が中心近傍に重複することをいう。
【0036】
内側コア部31は、このような中央領域3Cを挟むように二つの基本領域3S,3Sを備えることで、基本領域3S,3Sと中央領域3Cとの段差によって形成される環状の溝(溝部312)を備える。この環状の溝部312を樹脂モールド部6の肉厚部61Cの形成箇所とする。この例の内側コア部31は、中央領域3Cと、中央領域3Cを挟む二つの基本領域3S,3Sとの双方を備える内コア片310を備える。
以下、内側コア部31(内コア片310)、外側コア部32(外コア片)を順に説明する。
【0037】
《内側コア部》
この例では、一つの内側コア部31は、主として一つの柱状の内コア片310で構成される。各内コア片310,310において各端面31e,31eは、外側コア部32をなす外コア片の内端面32eに接合される(
図2)。なお、この例では、コア片同士の継ぎ目箇所には、後述する介在部材5が配置される。
【0038】
この例の内コア片310,310はいずれも同一形状、同一の大きさである。詳しくは、内コア片310は、
図3に示すように直方体状であり、両端面31e,31eから離れた中間部に、その周方向に連続する環状の溝部312が形成された溝付きコア片である。この内コア片310における溝部312の形成領域が中央領域3Cに相当し、溝部312の形成領域以外の領域が基本領域3Sに相当する。内コア片310の形状は適宜変更できる。例えば、内コア片310を円柱状、六角柱等の多角柱状等とすることが挙げられる。角柱等とする場合に内コア片310の角部をC面取り、又は
図3に示すようにR面取りされたような形状とすることが挙げられる。角部が丸められることで、欠け難く強度に優れる上に、軽量化、内側樹脂部61との接触面積の増大を図ることができる。なお、
図3では、溝部312が分かり易いように強調して示す。
【0039】
この例の基本領域3Sは、その全長に亘って所定の磁路断面積Ssを有する。そのため、磁性コア3は、磁路断面積Ssを有する部分を十分に確保して、所定の磁気特性を有することができる。
【0040】
中央領域3Cが大き過ぎると、磁性コア3において磁路断面積Ssよりも小さい磁路断面積Scを有する部分の割合が多くなるため、磁気飽和し易くなったり、中央領域3Cからの漏れ磁束が多くなったりし得る。一方、中央領域3Cが大きいほど、肉厚部61Cを大きくし易く、強度を高め易い。磁気飽和や漏れ磁束等の磁気特性と強度とを考慮すると、中央領域3Cの長さ(=溝部312の開口幅)は、巻回部2a,2bの長さLの1%以上35%以下、更に5%以上20%以下、15%以下程度とすることが挙げられる。また、上述の磁気特性と強度とを考慮すると中央領域3Cの磁路断面積Scが基本領域3Sの磁路断面積Ssの60%以上100%未満、更に65%以上98%以下、70%以上95%以下程度となるように、溝部312の深さを選択することが挙げられる。又は、溝部312の深さは、0.1mm以上2mm以下、更に0.5mm以上1.5mm以下、1.2mm以下程度とすることが挙げられる。なお、中央領域3Cの長さは、内側コア部31の軸方向(巻回部2a,2bの軸方向に等しい)に沿った大きさとする。溝部312の深さは、内側コア部31の軸方向に直交する方向の大きさとする。
【0041】
この例の溝部312の断面形状は、開口縁から深さ方向に向かうに従って開口幅が狭くなる台形状であるが、適宜変更できる。例えば、溝部312の断面形状を半円状やV字状等とすることができる。
【0042】
その他、各内コア片310,310について、中央領域3Cの位置を中央近傍に重複する範囲で異ならせたり、溝部312の断面形状や開口幅、深さ等を異ならせたりすることができる。この例の内コア片310,310のように、同一形状、同一の大きさとすれば、同じ金型でコア片を製造できる上に、樹脂モールド部6の形成時に条件の調整等が行い易い。これらの点から、製造性に優れる。
【0043】
《外側コア部》
この例では、一つの外側コア部32は、主として一つの柱状の外コア片で構成される。二つの外コア片は、横並びされる内コア片310,310を挟むように配置されて、環状に組み付けられる(
図1)。
【0044】
この例の外コア片はいずれも同一形状、同一の大きさであり、
図1,
図2に示すように直方体状である。各外コア片の一面(内端面32e)が内コア片310,310との接合面として利用される。また、この例の外コア片は、
図2に示すように、その設置側である下面が内コア片310の設置側である下面よりも設置対象側に突出し、その反対側の上面が内コア片310の上面と面一である。このような外コア片は、内コア片310の基本領域3Sの磁路断面積Ssと同等以上の磁路断面積を有しており、漏れ磁束を低減し易い。
【0045】
外コア片の形状は適宜変更できる。例えば、外コア片を、平面視(上面視)で台形状又はドーム状といった、外側の角部がある程度大きくC面取り又はR面取りされたような形状とすることが挙げられる。平面視で、外コア片における巻回部2a,2bから離れた外側の角部は磁束があまり通過しない領域であるため、上述のように角部が丸められていても磁気特性の低下を招き難い上に、軽量化、外側樹脂部62との接触面積の増大を図ることができる。
【0046】
《材質》
磁性コア3を構成するコア片(ここでは内コア片310、外コア片)は、軟磁性材料、例えば鉄や鉄合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金等)といった軟磁性金属等を含む成形体が挙げられる。コア片の具体例として、軟磁性材料からなる粉末や更に絶縁被覆を備える被覆粉末といった磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体からなる樹脂コア片、上記磁性粉末が圧縮成形された圧粉成形体からなる圧粉コア片、軟磁性材料の焼結体からなるフェライトコア片、電磁鋼板といった軟磁性金属板が積層された積層体からなる鋼板コア片等が挙げられる。磁性コア3は、上述の樹脂コア片、圧粉コア片、フェライトコア片、及び鋼板コア片からなる群から選択される1種のコア片を含む単一形態、上記群から選択される複数種のコア片を含む混合形態のいずれも利用できる。また、内側コア部31や外側コア部32が複数のコア片を含む場合、単一形態でも、混合形態でもいずれも利用できる。
【0047】
樹脂コア片を構成する上述の複合材料中の磁性粉末の含有量は、30体積%以上80体積%以下、樹脂の含有量は10体積%以上70体積%以下が挙げられる。飽和磁束密度や放熱性の向上の観点から、磁性粉末の含有量を50体積%以上、更に55体積%以上、60体積%以上とすることができる。製造過程での流動性の向上の観点から、磁性粉末の含有量を75体積%以下、更に70体積%以下、樹脂の含有量を30体積%超とすることができる。
【0048】
上述の複合材料中の樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、低温硬化性樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。その他、不飽和ポリエステルに炭酸カルシウムやガラス繊維が混合されたBMC(Bulk molding compound)、ミラブル型シリコーンゴム、ミラブル型ウレタンゴム等も利用できる。
【0049】
上述の複合材料は、磁性粉末及び樹脂に加えて、アルミナやシリカ等の非磁性かつ非金属粉末(フィラー)を含有すると、放熱性をより高められる。非磁性かつ非金属粉末の含有量は、0.2質量%以上20質量%以下、更に0.3質量%以上15質量%以下、0.5質量%以上10質量%以下が挙げられる。
【0050】
上述の複合材料の成形体は、射出成形や注型成形等の適宜な成形方法によって製造できる。そのため、溝付きコア片といった凹凸形状の成形体を容易に、かつ精度よく成形できる。
【0051】
上述の圧粉成形体は、代表的には、磁性粉末とバインダーとを含む混合粉末を所定の形状に圧縮成形したもの、更に成形後に熱処理を施したものが挙げられる。バインダーは樹脂等を利用でき、その含有量は30体積%以下程度が挙げられる。熱処理を施すと、バインダーが消失したり、熱変性物になったりする。圧粉成形体は、複合材料の成形体よりも磁性粉末の含有量を高め易く(例えば80体積%超、更に85体積%以上)、飽和磁束密度がより高いコア片を得易い。
【0052】
この例では、内コア片310は樹脂コア片であり、外コア片は圧粉コア片である混合形態であるが、適宜変更できる。
【0053】
〈介在部材〉
この例のリアクトル1Aは、更に、コイル2と磁性コア3との間に介在される介在部材5を備える。介在部材5は、代表的には絶縁材料からなり、コイル2と磁性コア3との間の絶縁部材や、巻回部2a,2bに対する内コア片310、外コア片の位置決め部材等として機能する。この例の介在部材5は、内コア片310と外コア片との継ぎ目箇所及びその近傍が配置される長方形の枠状のものであり、樹脂モールド部6の形成時、モールド原料の流路を形成する部材としても機能する。
【0054】
介在部材5は、例えば、以下の貫通孔と、支持部と、コイル溝部と、コア溝部とを備えるものが挙げられる(類似の形状として特許文献1の外側介在部52参照)。貫通孔は、介在部材5において外コア片が配置される側(以下、外コア側と呼ぶ)から巻回部2a,2bが配置される側(以下、コイル側と呼ぶ)に貫通し、内コア片310,310が挿通される。支持部は、貫通孔を形成する内周面から部分的に突出して内コア片310の一部(この例では四つの角部)を支持する。コイル溝部は、介在部材5のコイル側に設けられ、各巻回部2a,2bの端面及びその近傍が嵌め込まれる。コア溝部は、介在部材5の外コア側に設けられ、外コア片の内端面32e及びその近傍が嵌め込まれる。
【0055】
巻回部2a,2bがコイル溝部に嵌め込まれ、内コア片310,310が各貫通孔に挿通されて、端面31e,31eと、コア溝部に嵌め込まれた外コア片の内端面32eとが当接された状態において、モールド原料の流路が設けられるように介在部材5の形状や大きさを調整する。モールド原料の流路を設けるには、例えば、各内コア片310,310における支持部に支持されていない箇所と貫通孔の内周面との間や、外コア片とコア溝部との間等に隙間を設けることが挙げられる。また、このモールド原料の流路は、巻回部2a,2bの外周面にモールド原料が漏出しないように設ける。介在部材5は、上述の機能を有すれば、形状や大きさ等を適宜選択でき、公知の構成を参照できる。
【0056】
介在部材5の構成材料は、各種の樹脂といった絶縁材料が挙げられる。例えば、樹脂コア片を構成する複合材料の項で説明した各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。介在部材5は、射出成形等の公知の成形方法によって製造できる。
【0057】
〈樹脂モールド部〉
《概要》
樹脂モールド部6は、磁性コア3をなす少なくとも一つのコア片の外周を覆うことで、コア片を外部環境から保護したり、機械的に保護したり、コア片とコイル2や周囲部品との間の絶縁性を高めたりする機能を有する。かつ、樹脂モールド部6は、巻回部2a,2bの外周を覆わず露出させることで、例えば巻回部2a,2bを液体冷媒等の冷却媒体に直接接触させられて、放熱性を高められる。
【0058】
この例の樹脂モールド部6は、内側コア部31,31をなす内コア片310,310の外周を覆う内側樹脂部61,61に加えて、外側コア部32,32をなす外コア片の外周を覆う外側樹脂部62,62を備える。また、この例の樹脂モールド部6は、これらの樹脂部61,61,62,62が連続して形成された一体物であると共に、磁性コア3と介在部材5との組物を一体に保持する。特に、実施形態1のリアクトル1Aでは、内側樹脂部61は肉厚部61Cを備える。
以下、内側樹脂部61、外側樹脂部62を順に説明する。
【0059】
《内側樹脂部》
この例の内側樹脂部61は、巻回部2a(又は2b)の内周面と内コア片310の外周面との間に設けられる筒状の空間(ここでは四角筒状の空間)に樹脂モールド部6の構成樹脂が充填されてなる筒状体である。また、内側樹脂部61は、内コア片310の両端面31e,31eから離れた中間部分(ここでは介在部材5に配置される部分以外の部分)の外周面の実質的に全体を覆って、内コア片310の外形に応じた形状である。この内側樹脂部61は、内コア片310の中央領域3Cを覆う箇所(肉厚部61C)と、基本領域3S,3Sをそれぞれ覆う二つの箇所(基本被覆部61S,61S)とを備える。
【0060】
内側樹脂部61の厚さがその全長に亘って一様ではなく、部分的に異なる。具体的には、中央領域3Cを覆う箇所、即ち溝部312を覆う箇所の厚さtcは、基本領域3S,3Sを覆う基本被覆部61S,61Sの厚さtsよりも溝部312の深さ分だけ厚い(
図1)。この中央領域3Cを覆う部分的に厚い箇所を肉厚部61Cとする。肉厚部61Cの厚さtcが厚いほど、内側樹脂部61の機械的強度を高め易く、内側樹脂部61を割れ難くすることができる。肉厚部61Cの厚さtcは、基本被覆部61Sの厚さtsと溝部312の深さとの合計値に相当することから、上記厚さt
s及び上記深さの少なくとも一方をより大きくすることで、内側樹脂部61をより割れ難くすることができる。基本被覆部61Sの厚さtsが厚いほど、コア片の外部環境からの保護、機械的保護、絶縁性の確保等の効果を得易いものの、樹脂モールド部6の重量の増大や大型化、ひいてはリアクトル1Aの重量の増大や大型化を招く。溝部312の深さが大きいほど、上述の磁気特性の低下等を招き得る。従って、上述の厚さtc,tsは、重量や寸法、磁気特性、強度等を考慮して選択することが挙げられる。基本被覆部61Sの厚さtsは、例えば、0.1mm以上4mm以下、更に0.3mm以上3mm以下、更には2.5mm以下、2mm以下、1.5mm以下程度とすることが挙げられる。肉厚部61Cの厚さtcは、上記厚さtsと上述の溝部312の深さとによって調整するとよい。
【0061】
《外側樹脂部》
この例の外側樹脂部62は、外コア片の外周面のうち、内コア片310,310が接続される内端面32e及びその近傍を除いて実質的に全体を外コア片に沿って覆い、概ね一様な厚さを有する。外側樹脂部62における外コア片の被覆領域、厚さ等は適宜選択できる。外側樹脂部62の厚さは例えば基本被覆部61Sの厚さtsと等しくすることもできるし、異ならせることもできる。
【0062】
《構成材料》
樹脂モールド部6の構成材料は、各種の樹脂、例えば、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、PA樹脂、PBT樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。上記構成材料を、これらの樹脂に熱伝導性に優れる上述のフィラー等を含有する複合樹脂とすれば、放熱性に優れる樹脂モールド部6とすることができる。樹脂モールド部6の構成樹脂と介在部材5の構成樹脂とを同じ樹脂とすれば、両者の接合性に優れる上に、両者の熱膨張係数が同じであるため、熱応力による剥離や割れ等を抑制できる。樹脂モールド部6の成形には、射出成形等が利用できる。
【0063】
《リアクトルの製造方法》
実施形態1のリアクトル1Aは、例えば、コイル2と磁性コア3をなすコア片(ここでは二つの内コア片310,310及び二つの外コア片)と介在部材5とを組み付け、この組物を樹脂モールド部6の成形金型(図示せず)に収納し、モールド原料によってコア片を被覆することで製造できる。
【0064】
この例では、介在部材5のコイル側に巻回部2a,2bを配置したり、各貫通孔に内コア片310,310を挿通したり、コア側に外コア片を配置したりすることで、上述の組物を容易に組み付けられる。
【0065】
上述の組物を成形金型に収納し、
図2に二点鎖線の矢印で示すように二方向の充填を行うことが挙げられる。詳しくは、外コア片の外端面(
図2では左側の外コア片の左端面、右側の外コア片の右端面)をモールド原料の充填開始位置とし、外コア片を経て巻回部2a,2bの各端部からモールド原料を充填する。樹脂モールド部6を形成する際に上記二方向の充填を行うと、巻回部2a,2bの軸方向の中央近くでモールド原料(流動性樹脂)がぶつかり合って、上記中央近くにモールド原料の合流箇所が設けられる。この合流箇所は、モールド原料が充填空間内に最終的に到達する充填終了位置でもある。上記中央近くには内コア片310の溝部312が配置されるため、上記合流箇所は溝部312の外周に設けられて基本被覆部61Sよりも厚く形成され、肉厚部61Cに含まれる。
【0066】
なお、樹脂モールド部6が合流箇所を含むことを確認するには、例えば、以下の方法が挙げられる。樹脂モールド部6を巻回部2a(又は2b)の軸方向に平行な平面で切断し、断面を顕微鏡等で観察し、ウェルドラインの有無を調べる。
【0067】
《用途》
実施形態1のリアクトル1Aは、電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品、例えば種々のコンバータや電力変換装置の構成部品等に利用できる。コンバータの一例として、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC−DCコンバータ)や、空調機のコンバータ等が挙げられる。
【0068】
《効果》
実施形態1のリアクトル1Aは、樹脂モールド部6の内側樹脂部61における巻回部2a,2bの軸方向の中央近くの位置に肉厚部61C,61Cを備える。肉厚部61Cは、基本被覆部61Sの厚さtsよりも厚く、かつ環状に設けられている上に、単一のコア片(ここでは内コア片310)の外周に設けられており、割れ難い。このような肉厚部61Cを樹脂モールド部6における機械的強度の弱点箇所に備える実施形態1のリアクトル1Aは、熱応力や外部からの振動等が付与されても肉厚部61Cを含む樹脂モールド部6に割れが生じ難く、強度に優れる。特に、この例のリアクトル1Aは、肉厚部61Cにモールド原料の合流箇所を含むものの、肉厚部61Cが合流箇所以外の箇所(ここでは主として基本被覆部61S)よりも厚く形成されているため、熱応力や外部からの振動等が付与されても合流箇所に割れが生じ難く、強度に優れる。
【0069】
また、実施形態1のリアクトル1Aは、内側樹脂部61,61によって巻回部2a,2bと内側コア部31,31(内コア片310,310)との間の絶縁性を高められる上に、巻回部2a,2bが樹脂モールド部6に覆われずに露出されることで、例えば液体冷媒等の冷却媒体に直接接触できて、放熱性にも優れる。
【0070】
この例のリアクトル1Aは、更に、以下の効果を奏する。
(1)溝付きコア片を備えて、肉厚部61Cがコア片同士の継ぎ目箇所の外周に設けられていないため、肉厚部61Cがより割れ難く、強度に優れる。
(2)磁性コア3をなすコア片の個数が少なく、組み付ける部品数も少ないため(この例ではコイル2、コア片、介在部材5で合計7個)、組立作業性に優れる。
(3)磁性コア3をなすコア片の個数が少ないことでコア片同士の接合箇所が少ない上に、樹脂モールド部6が内側樹脂部61と外側樹脂部62とを含み、両者が連続して一体に形成されているため、樹脂モールド部6で覆われた磁性コア3は一体物としての剛性を高められて、強度に優れる。
(4)溝付きコア片といった凹凸形状の内コア片310を樹脂コア片とすることで、射出成形等によって容易に、かつ精度よく成形でき、内コア片310の製造性に優れる。また、樹脂コア片は、樹脂を含むため耐食性にも優れる。
(5)内コア片310を樹脂コア片とし、外コア片を圧粉コア片とすることで、樹脂コア片の単一形態とする場合に比較して、磁性コア3を小型にし易く、小型なリアクトル1Aとすることができる。
(6)外コア片を圧粉コア片とし、外コア片の実質的に全体を外側樹脂部62で覆うことで耐食性に優れる。
(7)樹脂モールド部6を二方向の充填によって形成することで、充填時間を短縮でき、製造性に優れる。
(8)磁性コア3がギャップレス構造であるため、ギャップ部分の漏れ磁束に起因する損失が実質的に生じず、低損失なリアクトル1Aとすることができる。
【0071】
[実施形態2]
以下、
図4を参照して、実施形態2のリアクトル1Bを説明する。
図4は、リアクトル1Bをコイル2の巻回部2a,2bの軸方向に平行すると共に、巻回部2a,2bの並び方向(
図4では上下方向)に平行する平面で切断した断面図である。
図4では介在部材5を仮想的に二点鎖線で示す。
【0072】
実施形態2のリアクトル1Bの基本的構成は実施形態1と同様であり、コイル2と、磁性コア3と、樹脂モールド部6とを備える。磁性コア3は、内側コア部31と外側コア部32とを備え、内側コア部31における巻回部2a,2bの軸方向の中央近くが部分的に細い。樹脂モールド部6は内側樹脂部61と外側樹脂部62とを備え、内側樹脂部61は上記細い箇所の外周を覆う肉厚部61Cを備える。実施形態2のリアクトル1Bにおける実施形態1との相違点の一つは、内側コア部31をなすコア片にあり、この内側コア部31は、溝付きコア片を備えておらず、磁路断面積が異なる複数のコア片31C,31Sを備える。相違点の別の一つは、肉厚部61Cにあり、この肉厚部61Cはコア片31C,31S同士の継ぎ目箇所の外周に設けられる部分も含む。以下、上記相違点を詳細に説明し、その他の構成及び効果等については詳細な説明を省略する。
【0073】
各内側コア部31,31は、中央領域3Cを備える第一のコア片31Cと、基本領域3Sを備え、第一のコア片31Cを挟む二つの第二のコア片31S,31Sとを備える。この例では、コア片31C,31Sはいずれも、直方体状であり、その全長に亘って一様な磁路断面積Sc,Ssを有する。そのため、コア片31C,31Sはいずれも、単純な形状といえ、製造性に優れる。コア片31C,31Sの形状は適宜変更でき、例えば円柱状等とすることが挙げられる。また、磁路断面積Sc,Ssを有する範囲で、各コア片31C,31Sの形状を異ならせることもできる。この例では、一つの内側コア部31をなすコア片の個数を3とするが、4以上とすることもできる。
【0074】
第一のコア片31Cの両側に第二のコア片31S,31Sが同軸状に配置されることで、第一のコア片31Cの外周面と、第一のコア片31Cを挟む第二のコア片31S,31Sの端面によって、内側コア部31の周方向に連続する環状の溝部を形成できる。この溝部は、第一のコア片31Cの少なくとも一部が巻回部2a(又は2b)の中央近傍に配置されることで、肉厚部61Cの形成箇所をなす。中央領域3Cの長さは、第一のコア片31Cの長さに相当し、溝部の深さは、上述の同軸状に配置された両コア片31C,31Sの高さの差に相当する。従って、溝部の大きさは、コア片31C,31Sの大きさ(コア片31Cの長さ、磁路断面積Sc,Ss、同軸状に配置された状態での高さの差の1/2等)を調整することで、所望の大きさに容易に変更できる。溝部の開口幅や深さは、実施形態1の溝部312の開口幅や深さを参照するとよい。
【0075】
この例のコア片31C,31S及び外コア片はいずれも、圧粉コア片である単一形態であるが、適宜変更できる。圧粉コア片の単一形態では、ギャップ部gを備えると磁気飽和し難くて好ましい。この例では、コア片31C,31S間にギャップ部gを備える。ギャップ部gの厚さは、コア片の飽和磁束密度等に応じて適宜選択できる。ギャップ部gは、この例のようにアルミナ等の非磁性材料からなるギャップ板を用いることが挙げられる。ギャップ板とコア片31C,31Sとを積層した状態で巻回部2a,2bに収納し、樹脂モールド部6を形成することで、コア片31C,31S間にギャップ板が介在された状態を維持できる。ギャップ板をコア片の端面に接着剤等で接合することもできる。
【0076】
又は、ギャップ部gは、樹脂モールド部6の構成樹脂によって形成することが挙げられる。この場合、樹脂モールド部6の形成と同時に、ギャップ部gも形成できる上に、ギャップ部gをコア片同士の接合材としても利用できる。内側コア部31に樹脂モールド部6によるギャップ部gを備える場合、巻回部2a,2bと内側コア部31,31との間に介在されて、樹脂モールド部6によるギャップ部gを形成するためにコア片間を離間して保持可能な内側介在部(図示せず)を備えることが挙げられる。内側介在部の形状は公知の構成を適宜利用できる(例、特許文献1の内側介在部51参照)。
図4では、コア片31Sと外コア片との間に樹脂モールド部6によるギャップ部gを備える場合を例示するが、このギャップ部gを省略して、内側コア部31のみにギャップ部gを備えることもできる。
【0077】
実施形態2のリアクトル1Bは、例えば、実施形態1と同様に、コイル2と磁性コア3をなすコア片(ここではコア片31C,31S及び外コア片)と介在部材5とを組み付け、モールド原料によってコア片を被覆することで製造できる。樹脂モールド部6は、実施形態1で説明した二方向の充填によって形成することが挙げられる。この例では、樹脂モールド部6によって、ギャップ部gを含んで上記コア片が一体に保持される。
【0078】
実施形態2のリアクトル1Bは、相対的に大きな磁路断面積Ssを有するコア片31S,31Sによって、相対的に小さな磁路断面積Scを有するコア片31Cを挟むことで、環状の溝部を形成して、コア片31Cの外周面全体の外周に肉厚部61Cが設けられている。このような肉厚部61Cを備える実施形態2のリアクトル1Bは、実施形態1のリアクトル1Aと同様に、熱応力や外部からの振動等が付与されても肉厚部61Cを含む樹脂モールド部6に割れが生じ難く、強度に優れる。肉厚部61Cがモールド原料の合流箇所を含んでいても、強度に優れる。
【0079】
かつ、実施形態2のリアクトル1Bでは、肉厚部61Cの形成領域にコア片31C,31S同士の継ぎ目箇所(この例ではギャップ部gの形成箇所でもある)の外周を含むものの、上記継ぎ目箇所以外の箇所、即ち第一のコア片31Cにおける両端面から離れた中間部分の外周を含むことからも、強度に優れる。
【0080】
また、この例のリアクトル1Bは、ギャップ部gを含むため磁気飽和し難い上に、ギャップ部gを主として巻回部2a,2b内に備えるため漏れ磁束に起因する損失も低減し易い。従って、低損失なリアクトル1Bとすることができる。
【0081】
更に、この例のリアクトル1Bは、磁性コア3をなすコア片が全て圧粉コア片であるため、樹脂コア片の単一形態である場合に比較して、磁性コア3を小型にし易い。従って、小型なリアクトル1Bとすることができる。
【0082】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の実施形態1,2に対して、以下の(a)〜(e)の少なくとも一つの変更が可能である。
【0083】
(a)自己融着型のコイルを備える。
この場合、融着層を備える巻線を用い、巻回部2a,2bの形成後、加熱して融着層を溶融、固化することで、隣り合うターンを融着層で接合する。こうすることで、コイル2と磁性コア3との組み付け時等で、巻回部2a,2bを保形でき、作業性に優れる。
(b)実施形態1において、内側コア部31は、複数の内コア片と、内コア片間に介在されるギャップ部とを備える。
この場合、複数の内コア片のうち、巻回部2a,2bの軸方向の中央近くに配置される内コア片は、環状の溝部312を備えるものとする。
(c)巻回部2a,2bの一端部をモールド原料の充填開始位置とし、他端部をモールド原料の充填終了位置とする一方向の充填によって樹脂モールド部6を形成する。
この場合、肉厚部61Cは、モールド原料の合流箇所を含まず、より割れ難くすることができ、強度により優れる。
(d)実施形態1,2において、磁性コア3をなすコア片を全て樹脂コア片とする。
この場合、外コア片が樹脂を含んで耐食性に優れるため、外側樹脂部62を省略したり、外コア片において外側樹脂部62に覆われずに露出された領域を設けたりすることが挙げられる。樹脂コア片の単一形態では、磁性粉末の含有量によっては磁気飽和し難いため、実施形態1のようにギャップレス構造とすることができる。実施形態2のようにギャップ部を備えることもできる。
【0084】
(e)以下の少なくとも一つを備える。
(e1)温度センサ、電流センサ、電圧センサ、磁束センサ等のリアクトルの物理量を測定するセンサ(図示せず)
(e2)コイル2の外周面の少なくとも一部に取り付けられる放熱板(例えば金属板等)
(e3)リアクトルの設置面と設置対象、又は(e2)の放熱板との間に介在される接合層(例えば接着剤層。絶縁性に優れるものが好ましい。)
(e4)外側樹脂部62に一体に成形され、リアクトルを設置対象に固定するための取付部