(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877733
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】釣り竿のグリップ
(51)【国際特許分類】
A01K 87/08 20060101AFI20210517BHJP
A01K 97/00 20060101ALI20210517BHJP
A01K 87/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
A01K87/08 A
A01K97/00 Z
A01K87/00 640Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-27207(P2017-27207)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2018-130084(P2018-130084A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】502123481
【氏名又は名称】株式会社長崎工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 一宣
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】長崎 浩二
【審査官】
大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−157122(JP,A)
【文献】
実開昭56−014557(JP,U)
【文献】
特開2011−092177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00−89/08、
97/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールシートに設けられている電動リールに接続された電源ケーブルを包接するケーブル包接部と、
グリップを包接するグリップ包接部と、
を備える固定具を備える釣り竿のグリップであって、
このグリップのロッドエンドには、回転自在にケーブル掴持部を設け、
該グリップには、その軸心方向に向かった、前記電源ケーブル挿入用の切欠を設け、
該切欠は、前記グリップの前記ロッドエンド側の端に達し、かつ前記軸心より深い第1の溝を形成し、
前記ケーブル掴持部には、この第1の溝に連繋する第2の溝を設け、
この第1の溝とこの第2の溝に、前記電源ケーブルを連続して配置する、
構成とした釣り竿のグリップ。
【請求項2】
前記グリップ包接部は、前記グリップの軸心方向より見て、角隅に欠落部を備えた多角形状に曲折形成し、
前記ケーブル包接部は、前記グリップ包接部の一辺に円弧状に曲折形成し、
このケーブル包接部及びこのグリップ包接部は、一連の板状部材で形成し、この板状部材の両端を重ねるように形成したケーブル差込み部を備え、
前記固定具は、略筒状である、
構成とした請求項1に記載の釣り竿のグリップ。
【請求項3】
前記ケーブル包接部及び/又は前記グリップ包接部は、円弧状に曲折する、
構成とした請求項1に記載の釣り竿のグリップ。
【請求項4】
前記ケーブル掴持部には、
軸心を超える深さで、かつその軸心に平行に、両端に達する状態で設けた前記第2の溝と、
前記グリップのロッドエンドに回転可能に支持する支持部材と、
を備え、
前記第1の溝と前記第2の溝は、
前記ケーブル掴持部のロッドエンド側の端から見て重なった状態で、前記電源ケーブルを連続して配置することができ、
前記ケーブル掴持部が、前記回転した状態で、このケーブル掴持部のロッドエンド側の端から見て、前記第1・2の溝で、一の孔を形成し、該孔に前記電源ケーブルを配置し、該電源ケーブルをロック状態に保持する、
構成とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の釣り竿のグリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
釣り竿のグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
カワハギ、アジといった小型の魚からヒラマサ、カンパチといった大型の魚まで、様々な種類の魚を釣り上げる際に、釣り竿に装着して使用する電動リールが広く利用されている。この電動リールへの給電方法として、外部のバッテリから電源ケーブルを介して給電する方法が用いられることがあるが、電源リールへ直接電源ケーブルを接続すると、釣り竿の重心を奪い、食いついた魚を引き上げる際に支障を来すことがある。
釣り竿の重心を移動させないために、特許文献1には、釣り竿のグリップ部分の軸心に沿って設けた貫通孔に、電動リールに接続させる導電コードを挿通させ、電源ケーブルを釣り竿の持ち手側の終端に接続させる釣り竿が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−300841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された釣り竿は、導電コードがグリップ部分に組み込まれているため、導電コードが断線したり腐食したりした際にメンテナンスをするのが容易ではない。また、グリップ部分に設けた貫通孔の径によって、導電コードの種類が制限されるため、ユーザの好みに応じて導電コードをカスタマイズすることができないという不便がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、釣り竿の重心を安定させ、かつメンテナンス容易でユーザの好みに応じて電源ケーブルをカスタマイズ可能な釣り竿の
グリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の観点に係る釣り竿のグリップは、
リールシートに設けられている電動リールに接続された電源ケーブル
を包接するケーブル包接部と、
グリップ
を包接するグリップ包接部と、
を備える固定具を備える
釣り竿のグリップであって、
グリップのロッドエンドには、回転自在にケーブル掴持部を設け、
グリップには、軸心方向に向かった、電源ケーブル挿入用の切欠を設け、
切欠は、グリップのロッドエンド側の端に達し、かつ軸心より深い第1の溝を形成し、
ケーブル掴持部には、第1の溝に連繋する第2の溝を設け、
第1の溝と第2の溝に、電源ケーブルを連続して配置する、
構成
である。
【0007】
グリップ包接部は、グリップの軸心方向より見て、
角隅に欠落部を備えた多角形状に曲折形成し、
ケーブル包接部は、グリップ包接部の一辺に円弧状に曲折形成し、
ケーブル包接部及びグリップ包接部は、一連の板状部材で形成し、板状部材の両端を重ねるように形成したケーブル差込み部を備え、
固定具は、略筒状である、
構成でもよい。
【0009】
ケーブル包接部及び/又は
グリップ包接部は、円弧状に
曲折する、
構成
でもよい。
【0011】
ケーブル掴持部には、
軸心を超える深さで、
かつ軸心に平行に、両端に達する状態で
設けた第2の溝
と、
グリップのロッドエンド
に回転可能に支持する支持部材と、
を備え
、
第1の溝と第2の溝は、
ケーブル掴持部のロッドエンド側の端から見て重なった状態で、
電源ケーブルを連続して配置することができ、
ケーブル掴持部が、
回転した状態で、
ケーブル掴持部のロッドエンド側の端から見て、
第1・2の溝で、一の孔を形成し、
孔に電源ケーブルを配置し、
電源ケーブルをロック状態に保持する、
構成
でもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、釣り竿の重心を安定させることができ、かつ釣り竿のメンテナンスが容易で、ユーザの好みに応じて電源ケーブルをカスタマイズすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る釣り竿のロッドエンドからリールシートまでの構造を示した概略図である。
【
図3】固定具でグリップに電源ケーブルを固定した場面を示した斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る釣り竿のグリップの構造を示した概略図である。
【
図6】(a)第1の溝と第2の溝が重なって一の溝を形成しているときの釣り竿のグリップの平面図である。(b)ケーブル掴持部をある程度回転したときの釣り竿のグリップの平面図である。
【
図7】(a)釣り竿のグリップとケーブル掴持部の斜視図である。(b)ケーブル掴持部を回転し、第1の溝と第2の溝の中心部分のみが重なっている場合にケーブル掴持部をロッドエンド側の端から見たときの平面図である。(c)第1の溝と第2の溝とが一の溝を形成している場合にケーブル掴持部をロッドエンド側の端から見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る釣り竿のグリップ及び固定具について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、釣り竿100のグリップ10は、釣り竿100のロッドエンドに位置する部品であり、ユーザが釣り竿100を操作する際に持ち手となる部分である。グリップ10には、固定具20が設けられている。また、グリップ10のトップ側には、電動リール30が設けられている。電動リール30は、魚がかかり、ユーザが釣り竿100を引き上げる際に、その動力を提供する装置である。電動リール30は、ブランク40に備えられているリールシート50に設置されている。
【0017】
固定具20は、外部電源から電動リール30に電力を供給するための電源ケーブル60をグリップ10に固定するための部品である。固定具20は、アルミニウム、ステンレス、プラスチック、木材等からなり、
図2に示すように、略環状の形状を備える。
固定具20は、電源ケーブル60に包接するケーブル包接部21と、グリップ10に包接するグリップ包接部22と、を備える。
図3に示すように、ケーブル包接部21が電源ケーブル60を向心方向に包接し、グリップ包接部22がグリップ10を向心方向に包接することによって、グリップ10と電源ケーブル60とが密接して束ねられるように、互いに固定される。
【0018】
図2に戻り、ケーブル包接部21
とグリップ包接部22は、例えば略U時型の形状を備える板状部材
でなる方形状の構造とする。先ずケーブル包接部21は、板状の一つの向かい合う二辺が平行して湾曲し、他の向かい合う二辺が平行に対峙するように、形成されている。
グリップ包接部22は、例えば略コの字型の形状を備える板状部材である。グリップ包接部22は、ケーブル包接部21と同様に、板状の一つの向かい合う二辺が平行して湾曲し、他の向かい合う二辺が平行に対峙するように、形成されている。
ケーブル包接部21とグリップ包接部22は、略多角形状に湾曲していてもよいし、円弧状に湾曲していてもよい。
ケーブル包接部21とグリップ包接部22は、一連の板状部材
でなる方形状の構造とする。即ち、板状の一部が重なるように形成されていてもよい。また、ケーブル包接部21’とグリップ包接部22’は、
図4に示すように、一部が分離して形成されていてもよい。さらに、ケーブル包接部21とグリップ包接部22とは、グリップ10及び電源ケーブル60の形状に合わせて、共に円弧状に形成されていてもよい。
【0019】
本実施形態に係る釣り竿100のグリップ10及び固定具20によれば、電源ケーブル60がグリップ10に固定されるため、電源ケーブル60が電動リール30から垂れ下がることがなく、ひいては、釣り竿100全体の重心を奪うことがない。これにより、ユーザは食いついた魚を引き上げる際に、電源ケーブル60に動作を奪われずに、釣り竿100を操作することができる。
また、グリップ10と電源ケーブル60とを固定具20で束ねれば本発明を達成するため、ユーザに余計な手間を取らせることがなく、さらにユーザの好みの電源ケーブル60をカスタマイズすることができ、メンテナンスも容易である。
【0020】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る釣り竿のグリップについて、図面を参照して説明する。
【0021】
図5に示すように、釣り竿100のグリップ10は、そのロッドエンド側の端にケーブル掴持部11を備え、側面に切欠12が設けられている。切欠12には、電源ケーブル60が配置され、ユーザがグリップ10を握る際に、グリップ10と共に電源ケーブル60を容易に握ることができるようになっている。
ケーブル掴持部11は、略円柱状の部材であり、不図示の支持部材によってグリップ10のロッドエンドに介して回転可能に支持されている。支持部材は、ケーブル掴持部11をグリップ10のロッドエンドに回転可能に支持すれば、どのような形態のものでもよいが、例えば、微小角度毎にストッパを有し、任意の角度で回転を保持できるようなものが好ましい。
【0022】
図6(a)に示すように、グリップ10には、第1の溝13が設けられており、ケーブル掴持部11には、第2の溝14が設けられている。
第1の溝13は、
図7(a)に示すように、グリップ10のロッドエンド側の端に達し、グリップ10の軸心を超える深さで設けられている。
また、第2の溝14は、ケーブル掴持部11の軸心を超える深さで、その軸心と平行に設けられており、ケーブル掴持部11の円柱形状の両底辺に達している。
第1の溝13及び第2の溝14には、電動リール30に接続された電源ケーブル60が嵌め込まれて配置される。電源ケーブル60は、第1の溝13及び第2の溝14に配置されることによって、グリップ10に安定して保持される。
【0023】
図7(a)示すように、ケーブル掴持部11がグリップ10のロッドエンド側の端に対してある程度(例えば90°)回転した場合、
図7(b)に示すように、ケーブル掴持部11のロッドエンド側の端から見ると、第1の溝13と第2の溝14の中心部分のみが重なって、孔Hを形成する。このとき、グリップ10を切欠12の上面から見ると、
図6(b)のようになる。この状態から
図7(a)の矢印Aの方向に、ケーブル掴持部11を回転させると、第1の溝13と第2の溝14の全体同士が重なって
図7(c)に示す状態となる。
【0024】
図7(c)に示す状態の時に、電源ケーブル60を第1の溝13及び第2の溝14に嵌め込み、ケーブル掴持部11を
図7(a)の矢印Bの方向に、例えば90°回転させると、
図7(b)に示す孔Hに電源ケーブル60が保持される。これにより、電源ケーブル60は、グリップ10に固定され、換言すれば、ロックされることとなる。
【0025】
本実施形態に係る釣り竿100のグリップ10によれば、電源ケーブル60がグリップ10に固定されるため、電源ケーブル60が電動リール30から垂れ下がることがなく、ひいては、釣り竿100全体の重心を奪うことがない。これにより、ユーザは食いついた魚を引き上げる際に、電源ケーブル60に動作を奪われずに、釣り竿100を操作することができる。
また、第1の溝13と第2の溝14に電源ケーブル60を嵌め込み、ケーブル掴持部11を回転すれば、簡単に電源ケーブル60をグリップ10に固定できるため、ユーザに余計な手間を取らせることがない。さらにユーザの好みの電源ケーブル60をカスタマイズすることができ、メンテナンスも容易である。
【0026】
(変形例)
上述した第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせることももちろん可能である。すなわち、固定具20が、切欠12に配置された電源ケーブル60をグリップ10に固定するようにしてもよい。このように構成することで、電源ケーブル60は、固定具20と、ユーザの手と、ケーブル掴持部11とによって、より強固にグリップ10に固定されることなる。
【0027】
第2実施形態において、グリップ10に、ケーブル掴持部11が備えられていなくてもよい。この場合、切欠12に第1の溝13が設けられている場合には、第1の溝13に電源ケーブル60を嵌め込むことで、電源ケーブル60を保持してもよい。この場合でも、ユーザは、グリップ10と電源ケーブル60とを共に握ることが容易となるため、電源ケーブル60が電動リール30から垂れ下がることがなく、釣り上げ操作に支障を来さない。
【0028】
前述した各構造は、本発明の好ましい一例の説明である。従って、本発明は上述した各実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨の範囲において構成の一部を変更する構造とか、同じ特徴と効果を達成できる構造、等は、本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0029】
10:グリップ
11:ケーブル掴持部
12:切欠
13:第1の溝
14:第2の溝
20、20’:固定具
21、21’:ケーブル包接部
22、22’:グリップ包接部
30:電動リール
40:ブランク
50:リールシート
60:電源ケーブル
100:釣り竿
H:孔