特許第6877772号(P6877772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877772
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20210517BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20210517BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20210517BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20210517BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   H01L27/146 F
   H01L27/144 K
   H04N5/369
   G01T1/24
   G01T1/17 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-547117(P2018-547117)
(86)(22)【出願日】2017年7月5日
(86)【国際出願番号】JP2017024611
(87)【国際公開番号】WO2018078956
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年8月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-210863(P2016-210863)
(32)【優先日】2016年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】作村 拓人
(72)【発明者】
【氏名】中江 保一
(72)【発明者】
【氏名】松下 一之
(72)【発明者】
【氏名】三楠 聰
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−501417(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0015339(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/161543(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0097864(US,A1)
【文献】 特開2002−198509(JP,A)
【文献】 特開2012−185159(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2463908(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/14−148
H01L 27/30
G01T 1/17−24
G01T 7/00
H04N 5/30−378
H01L 31/02−0392
H01L 31/08−119
H01L 31/18−20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する2次元ハイブリッドピクセルアレイ型の検出器であって、
検出領域を区画する各ピクセルで領域内に入射した放射線を検出する検出部と、
前記ピクセル毎に割り当てられ、対応する前記ピクセルにバンプボンディングのみで接続された計数回路を含む複数の読み出しチップと、を備え、
検出面上の一定方向に沿って、前記ピクセルより前記計数回路の方が、設定ピッチが小さく、
前記ピクセルと前記ピクセルに対応する計数回路の互いに占める領域のいずれもが少なくとも部分的に重複し、
前記重複する領域内で互いに対応する前記ピクセルと前記計数回路との接続がなされており、
前記検出部に用いられるすべてのピクセルが、一律の形状で規則的に配列され、
前記複数の読み出しチップの対向する縁に対し最も近い前記計数回路は、前記縁寄りの位置で前記ピクセルと電気的に接続し、前記縁に対し最も近い前記計数回路が割り当てられた前記ピクセルは、前記縁を有する読み出しチップの中央寄りの位置で前記計数回路と電気的に接続していることを特徴とする検出器。
【請求項2】
隣り合う前記読み出しチップの縁間の距離は、30μm以上であることを特徴とする請求項1記載の検出器。
【請求項3】
前記読み出しチップにおいて、前記ピクセルと前記計数回路との接続位置が線対称または点対称に分布していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の検出器。
【請求項4】
前記ピクセルの形状は、矩形であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の検出器。
【請求項5】
前記計数回路から計数信号の送信先である端子側への接続は、バイア構造であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を検出する2次元ハイブリッドピクセルアレイ型の検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトンカウンティング方式の2次元ハイブリッドピクセルアレイ検出器においては、検出面に複数のピクセルが配置され、その背後にピクセルで検出された計数値を読み出す読み出しチップが配置される。読み出しチップは検出面より小さいため、検出面の背面には複数の読み出しチップがタイリングされるのが一般的である。
【0003】
複数の読み出しチップをタイリングするためには、互いの読み出しチップ間に空隙を設ける必要がある。従来、チップ間の空隙に対しては、他の位置のピクセルとは異なり、空隙に合わせたピクセルが形成される。図8は、従来の検出部910および読み出しチップ920を示す背面図である。検出部910には、一律の形状のピクセル915が原則規則的に配置されているが、読み出しチップ920の縁間の付近では、ピクセル915の形状や位置が不規則であり、大きいピクセル915が配置されている。
【0004】
図9は、従来のピクセル915と計数回路921の配置を示す背面図である。ピクセル915と計数回路921は同じ設定ピッチで配置されており、ピクセル915に対して割り当てられた計数回路921の領域全体が、ピクセル915に重複している。読み出しチップ920の縁の間付近には大きいピクセル915が配置されているため、検出信号の位置情報が喪失し、計数回路での数え落としも生じうる。図10は、従来の検出データ画像を示す図である。図10に示すように検出データ画像には、読み出しチップの縁間が他の領域とは異なる明度で表示される。このように読み出しチップの縁間の付近で他の領域とは検出条件が異なってしまい、生の計数値を補正する必要が生じる。
【0005】
補正では、計数値は、空隙が無かったときに規則的に配置される仮想ピクセルの計数値に変換する方法が知られている。その際にはピクセルの面積比に応じた分配で計数値が補正される(例えば、非特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】P. Kraft, A. Bergamaschi, Ch. Broennimann, R. Dinapoli, E. F. Eikenberry, B. Henrich, I. Johnson, A. Mozzanica, C. M. Schleputza P. R. Willmotta and B. Schmitta, “Performance of single-photon-counting PILATUS detector modules”, Journal of Synchrotron Radiation, (2009). 16, 368-375
【非特許文献2】Marten Jan Bosma, “On the Cutting Edge of Semiconductor Sensors” , Institute for High Energy Physics, 21-12-2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように補正するとしても、隣接する読み出しチップの縁に重なる位置のピクセルを他の位置のピクセルよりも大面積とすると、そのピクセルで検出された放射線の強度を補正する際に位置情報が失われる。また、サイズの大きいピクセルを設けた場合には、回路の応答性が不十分な場合に数え落としが生じる。また、タイリングにおいて読み出しチップの間隔の狭さにより、実装時に縁の接触が生じ不良発生率が上昇する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、計数回路の設計により隣接する読み出しチップの縁付近で特殊形状のピクセルでなくても十分に接続を確保できる検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の検出器は、放射線を検出する2次元ハイブリッドピクセルアレイ型の検出器であって、各ピクセルで領域内に入射した放射線を検出する検出部と、前記ピクセル毎に接続された計数回路を含む複数の読み出しチップと、を備え、検出面上の一定方向に沿って、前記ピクセルより前記計数回路の方が、設定ピッチが小さく、前記ピクセルと前記ピクセルに対応する計数回路の互いに占める領域が少なくとも部分的に重複し、前記重複する領域内で前記接続がなされていることを特徴としている。
【0010】
このように、検出面上の一定方向に沿ってピクセルの設定ピッチより計数回路の設定ピッチの方が小さいため、隣接する読み出しチップの縁付近で特殊形状のピクセルでなくても十分に接続を確保できる。その結果、読み出しチップの縁に関わらずピクセルの形状および配置を設計でき、同一形状のピクセルを全面に配置できる。
【0011】
また、従来は隣接する読み出しチップの縁付近において失われていた位置情報を正しく得ることができ、データの補正が不要になる。読み出しチップ間の位置にサイズの大きいピクセルを設けた場合には、回路の応答性が十分でないため数え落としが生じるが、ピクセルサイズを小さくでき、数え落としを防止できる。隣接する読み出しチップの縁の距離を大きくとることができるため、実装が容易になる。
【0012】
(2)また、本発明の検出器は、前記複数の読み出しチップにおいて、隣の読み出しチップの縁に対向する自読み出しチップの縁に最も近い計数回路と前記ピクセルとの接続位置が前記縁側の領域にあることを特徴としている。これにより、ピクセルの設定ピッチより計数回路の設定ピッチを小さくしつつ互いの接続をすることができる。そして、隣接する読み出しチップの縁付近にピクセル配置のスペースを確保でき、他の領域のピクセルと同一形状のピクセルを配置できる。
【0013】
(3)また、本発明の検出器は、前記読み出しチップにおいて、前記ピクセルと前記計数回路との接続位置が線対称または点対称に分布していることを特徴としている。これにより、ピクセルとそのピクセルに対応する計数回路との接続が容易になり、一定規格の接続で検出器を製造できる。
【0014】
(4)また、本発明の検出器は、前記ピクセルの形状は、矩形であることを特徴としている。これにより、ピクセルサイズの調整や接続部分の配置等の設計やそれらを満たす検出器の製造が容易になる。
【0015】
(5)また、本発明の検出器は、隣り合う前記読み出しチップの縁間の距離は、30μm以上であることを特徴としている。これにより、隣り合う読み出しチップ同士を配置する際に求められる精度が緩和されるとともに、縁が接触することによる不具合を防止できる。
【0016】
(6)また、本発明の検出器は、前記計数回路から端子側への接続は、バイア構造であることを特徴としている。これにより、複数の読み出しチップが設けられた検出モジュールの端部にリード線が不要になり、検出モジュール間を狭くした構成が可能になる。その結果、検出モジュールをつないで広い範囲を検出できる検出器を構成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、計数回路の設計により隣接する読み出しチップの縁付近で特殊形状のピクセルでなくても十分に接続を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態の検出システムの構成の一例を示す概略図である。
図2】第1の実施形態の検出器およびデータ処理装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態の(a)検出部および読み出しチップを示す背面図、(b)検出部および読み出しチップを示す側断面図である。
図4】第1の実施形態におけるピクセルと計数回路の配置例を示す背面図である。
図5】第1の実施形態における読み出しチップ全体にわたって計数回路および接続部の配置例を示す背面図である。
図6】読み出しチップ120内のバイア構造を示す側断面図である。
図7】第2の実施形態における読み出しチップ全体にわたって計数回路および接続部の配置例を示す背面図である。
図8】従来の検出部および読み出しチップを示す背面図である。
図9】従来のピクセルと計数回路の対応関係を示す背面図である。
図10】従来の検出データ画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[第1の実施形態]
(検出システムの構成)
図1は、検出システム10の構成の一例を示す概略図である。図1に示すように検出システム10は、放射線源20、試料S、検出器100およびデータ処理装置500で構成されている。
【0021】
放射線源20は、例えば、X線源であり、陰極であるフィラメントから放射された電子束を対陰極であるロータターゲットに衝突させてX線を発生させる。放射線源20から放射されるX線は、いわゆるポイントフォーカスのX線ビームである。なお、放射線源20は、α線、β線、γ線または中性子線の線源であってもよい。
【0022】
ロータターゲットの外周面には、例えば、MoまたはCuのような金属が設けられている。Moターゲットに電子が衝突したとき、特性線であるMoKα線(波長0.711Å)を含むX線が放射される。Cuターゲットに電子が衝突したとき、特性線であるCuKα線(波長1.542Å)を含むX線が放射される。
【0023】
試料Sは、試料支持装置により支持されている。検出器100は、例えば試料Sで回折された回折線または蛍光X線のような放射線を検出する。データ処理装置500は、検出された計数値を処理し、検出結果を出力する。検出器100およびデータ処理装置500の詳細については、後述する。
【0024】
(検出器およびデータ処理装置の構成)
図2は、検出器100およびデータ処理装置500の機能的な構成を示すブロック図である。検出器100は、例えばX線を検出するフォトンカウンティング方式のハイブリッドピクセルアレイ型の2次元半導体検出器である。ただし、2次元半導体検出器に限らず、1次元半導体検出器であってもよい。検出器100は、単一の検出モジュール105で構成されていてもよいが、複数の検出モジュール105を備えていることが好ましい。検出モジュール105は、検出部110、読み出しチップ120を備えている。
【0025】
検出部110は、複数の放射線受光用のピクセル115を有しており、各ピクセル115で領域内に入射した放射線を検出する。検出部110では、複数のピクセル115により検出面が形成されており、検出面全面に読み出しチップ120がタイリングされている。読み出しチップ120内にはピクセル115毎に割り当てられた計数回路121が設けられている。各ピクセル115の形状は、後述する計数回路121の配置により検出面全面で同一にすることができる。
【0026】
各ピクセル115の形状は、三角形、六角形等の多角形であってもよいが、矩形であることが好ましい。これにより、ピクセルサイズの調整や接続部分の配置等の設計やそれらを満たす検出器の製造が容易になる。また、矩形は正方形であることが好ましい。
【0027】
読み出しチップ120は、計数回路121およびカウンタ読み出し回路125を有する。計数回路121は、ピクセル115毎に割り当てられており、ピクセル115と割り当てられた計数回路121とはそれぞれ接続部130を介して電気的に接続されている。
【0028】
計数回路121は、分別回路121aおよびカウンタ部121bから構成されている。分別回路121aは、複数のピクセル115の個々に接続されており、さらにはカウンタ部121bが、分別回路121aの個々に接続されている。カウンタ読み出し回路125は、複数のカウンタ部121bに接続されている。
【0029】
分別回路121aは、ピクセル115のパルス信号を放射線波長ごとに分別して出力する。カウンタ部121bは、分別回路121aによって波長毎に分別された信号のそれぞれの個数を計数する。カウンタ部121bは、例えば、分別回路121aによって分別された数のパルス信号をそれぞれカウントできるように分別数と同じ数のカウンタ回路を内蔵する。カウンタ読み出し回路125は、読み出しチップ120ごとに各カウンタ部121bでカウントされたデータを読み出す。カウンタ読み出し回路125の出力信号は、エネルギーの閾値により分離された放射線検出データであり、データ処理装置500に通信線を通して伝送される。
【0030】
データ処理装置500は、例えばパーソナルコンピュータである。パーソナルコンピュータは、例えば、演算制御するためのCPU、データを記憶するためのメモリ、メモリ内の所定領域に記憶されたシステムソフト、およびメモリ内の他の所定領域に記憶されたアプリケーションプログラムソフト等によって構成されている。
【0031】
データ処理装置500には、ユーザの入力を受け付ける入力部としてキーボード等が接続されている。また、データ処理装置500には、ディスプレイやプリンタ等の出力部が接続されている。出力部は、データ処理装置500からの指示に従って測定結果を出力する。
【0032】
(検出部と読み出しチップ)
図3(a)は、検出部および読み出しチップを示す背面図である。図3(a)に示すように、検出部110の複数のピクセル115は、2次元的にアレイ化されており、一律の形状で原則規則的に配列されている。ただし、一部のピクセル115は形状や位置が不規則であってもよい。図3(a)に示す例では、検出部110に対して、矩形板状の読み出しチップ120がタイリングされており、隣り合う読み出しチップ120の互いの縁間にはわずかな空隙122が設けられている。
【0033】
なお、図3(a)は、計数回路121および接続部130を省いて単純化して図示されている。また、検出モジュール105を背面(受光面の逆側)から見た図であるため、拡大図において、読み出しチップ120に隠れたピクセル115を破線で表している。
【0034】
図3(b)は、図3(a)の一定方向3bから見た検出部110および読み出しチップ120を示す側断面図である。図3(b)に示すように、検出部110と読み出しチップ120とは、例えばバンプボンディングによる接続部130で接続されている。
【0035】
隣り合う読み出しチップ120の縁間の空隙122の距離は、十分に大きくとることができ30μm以上であることが好ましい。これにより、隣り合う読み出しチップ120同士を配置する際に求められる精度が緩和されるとともに、縁が接触することによる不具合を防止できる。
【0036】
(ピクセルと計数回路)
図4は、ピクセル115と計数回路121の配置例を示す背面図である。図4に示すように、各ピクセル115に対して、読み出しチップ120内の計数回路121が設けられ、ピクセル115と計数回路121とが接続部130により接続されている。ピクセル115で放射線を検出したときの信号は接続部130で接続された固別に割り当てられた計数回路121に入り、計数される。
【0037】
ピクセル115より計数回路121の方が、サイズ(x、y方向の長さ)は小さい。なお、図面では、分かりやすいようにピクセルを角の鋭い正方形で表し、計数回路を角丸の正方形で表しているが、実際にはこのような形状に限定されるものではない(以下同様)。
【0038】
読み出しチップ120内の、隣の読み出しチップ120の縁に対向する縁に最も近い計数回路121において、ピクセル115と計数回路121との接続部130の位置が、計数回路121が占める領域のうち縁側の領域にあることが好ましい。例えば、計数回路121−1において、接続部130−1は、読み出しチップ120の隅側1/4の領域に入っている。
【0039】
このような配置により、ピクセル115の設定ピッチより計数回路121の設定ピッチを小さくしつつ互いの接続をすることができる。そして、隣接する読み出しチップ120の縁付近で小さいピクセルでも十分に接続を確保でき、他の領域のピクセル115と同一形状のピクセル115を配置できる。なお、読み出しチップ120内の四隅の計数回路121の接続部130が縁側の領域にあることが効果的である。
【0040】
また、図4に示す例では、検出面上のx、y方向に沿って、ピクセル115より計数回路121の方が、設定ピッチが小さい。すなわち、ピクセル115の中心の配置間隔より計数回路の中心の配置間隔の方が小さくなっている。平均で、ピクセル115の設定ピッチより計数回路121の設定ピッチの方が必ず小さくなっており、各配置すべてでもピクセル115の設定ピッチより計数回路121の設定ピッチの方が小さいことが好ましい。
【0041】
そして、ピクセル115の占める領域の一部とそのピクセル115に対応する計数回路121の占める領域の一部は、互いに厚み方向に重複している。重複する領域内に設けられた接続部130によりピクセル115と計数回路121とが接続されている。接続部130は、ワイヤなしで微細な球状の半田バンプによるバンプボンディングで形成されることが好ましく、その場合にはピクセル115と計数回路121とを短距離でコンパクトに接続できる。
【0042】
その結果、読み出しチップ120の縁付近において補正なしで位置情報を正しく得ることができる。また、計数時の数え落としを防止でき、隣接する読み出しチップ120の縁間の距離を大きくとることができるため、互いの接触を回避しやすくなり実装が容易になる。
【0043】
図5は、読み出しチップ120全体にわたって計数回路121および接続部130の配置例を示す背面図である。読み出しチップ120内に設けられた計数回路121は、ピクセル115よりx、y方向の一辺が小さく、設定ピッチも小さい。そして、ピクセル115とそのピクセル115に割り当てられた計数回路121との重複領域上に接続部130が設けられている。
【0044】
上記のような配置の結果、読み出しチップ120では、ピクセル115と計数回路121との接続部130の位置が検出面の中央付近の一点(直線L1と直線L2の交点)から外側に向かって分散して(間隔が広がりながら)分布している。このような配置が好ましく、その場合、計数回路121に対しては、接続部130の配置が読み出しチップ120の縁側に偏っていることになる。
【0045】
このような接続部130の配置により、ピクセル115の設定ピッチより計数回路121の設定ピッチを小さくしつつ、バンプボンディングにより互いの接続を確実にとることができる。なお、上記の例を異なる視点で表すと、従来例に比べて複数の計数回路121が全体的に中央に寄せられた配置で設計されている。
【0046】
また、読み出しチップ120では、ピクセル115と計数回路121との接続部130の位置がx方向に垂直な直線L1およびy方向に垂直な直線L2に対して対称である。このように、ピクセル115と計数回路121との接続部130の位置が線対称または点対称であることが好ましい。これにより、一定規格の接続で検出モジュールを製造できる。
【0047】
図6は、読み出しチップ120内のバイア構造127を示す側断面図である。図6に示す例では、カウンタ読み出し回路125からデータ処理装置500につながる通信線の端子までの信号線の一部分が、読み出し用パッド126およびバイア構造127で接続されている。読み出し用パッド126からワイヤボンディングで信号線を取り出すこともできるが、図6に示すようにバイア構造127を用いることにより、読み出しチップ120の裏面への接続が嵩張らず単純になる。このように複数の読み出しチップ120が設けられた検出モジュール105の端部にワイヤボンディングによるリード線を設ける必要がなくなり、検出モジュール105同士の間を狭くしたほとんど継ぎ目のない構成が可能になる。その結果、検出モジュール105をつないで広い範囲を検出できる検出器を構成できる。
【0048】
また、図6に示すように、各ピクセル115の設置間隔より計数回路121の設置間隔が小さいため、読み出しチップ120の最外周の計数回路121より外側にピクセル115が設けられている。その外側のピクセル115に重なる位置(計数回路121の集合の外周部)にカウンタ読み出し回路125および読み出し用パッド126を配置できるため、検出面に垂直な方向から見た時に読み出しチップ120全体を検出部110の縁より内側に収めることができる。
【0049】
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、接続部130が規則的に配置されているが、必ずしも規則的に配置されている必要はない。図7は、読み出しチップ220全体にわたって計数回路221および接続部230の配置例を示す背面図である。図5に示す配置例に比べると図7に示す配置例では、ピクセル215と計数回路221のサイズの差が小さい。そのため、互いの重複領域を十分広く確保できるため、接続部230の配置の自由度が大きくなる。したがって、図7に示すように接続部230の不規則な配置も可能になる。
【符号の説明】
【0050】
10 検出システム
20 放射線源
S 試料
100 検出器
105 検出モジュール
110 検出部
115、215 ピクセル
120、220 読み出しチップ
121a 分別回路
121b カウンタ部
121、121−1、221 計数回路
122 空隙
125 カウンタ読み出し回路
126 読み出し用パッド
127 バイア構造
130、130−1、230 接続部
500 データ処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10