(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877776
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】冷却パック
(51)【国際特許分類】
A61F 7/10 20060101AFI20210517BHJP
F25D 5/02 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
A61F7/10 312
F25D5/02
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-45306(P2019-45306)
(22)【出願日】2019年3月13日
(65)【公開番号】特開2020-146179(P2020-146179A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2020年6月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519088683
【氏名又は名称】株式会社グッドネス
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕喜仁
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−280731(JP,A)
【文献】
特開2004−91650(JP,A)
【文献】
特開平9−192162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を収容した水袋と、当該水袋及び水と反応して吸熱する冷却剤を内部に収容して封止される外袋とを有し、前記水袋を外からの衝撃により破裂させることにより水と冷却剤が吸熱反応をして冷却する冷却パックであって、
前記外袋の中に、ポリアクリル酸ナトリウムを含有させ、
前記外袋に収容される冷却剤には、硝酸アンモニウム及び尿素の少なくとも一方が使用され、
前記外袋の中に、さらに、シリカゲルを含有させ、
前記外袋には(a)尿素及び硝酸アンモニウムの少なくとも一方を35wt%、(b)ポリアクリル酸ナトリウム1wt%、(c)シリカゲル1wt%を配合し、前記水袋には(d)水63wt%(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100wt%とする)を収容する、ことを特徴とする冷却パック。
【請求項2】
瞬間冷却用の配合剤であって、(a)尿素及び硝酸アンモニウムの少なくとも一方を35wt%、(b)ポリアクリル酸ナトリウム1wt%、(c)シリカゲル1wt%、(d)水63wt%(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100wt%とする)を主成分とする、ことを特徴とする瞬間冷却用の配合剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬間的に被冷却物を冷却する際に使用される冷却パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱中症対策や発熱時などにおいて、瞬間的に冷却できる商品として、いわゆる冷却パックが広く用いられている。
【0003】
冷却パックは、ポリエチレンなどのプラスチック樹脂からなる外袋に硝酸アンモニウムや尿素などを混合した顆粒状の冷却剤を入れ、且つこの外袋の内側に水袋をも入れた状態で外袋を溶着・封止する。そして、冷却する際には、冷却パックを片手に持つか又は水平な所に載置し、外袋を外側から拳で叩き、外袋の内部に収容されている水袋を破裂させる。すると、外袋内の冷却剤と水とが混合して吸熱反応による冷却が始まり、瞬間的に冷却できるものである。
【0004】
通常、外袋に入れる冷却剤は、水に溶解する際に吸熱反応を起こす物質であり、例えば、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等が使用される。また、メーカによっては、増粘剤となるカルボキシメチルセルロース(CMC: carboxymethyl cellulose)を内部に含有させる場合もある。
【0005】
冷却の使用後の冷却パックは、冷凍庫にいれて一定期間以上に亘って冷却することで保冷剤として再利用されることも多い。
【0006】
ところで、外気温によって冷却剤が融解して塊状に固まるといった問題を解消し、取り扱いやすい冷却パックが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、被冷却体を瞬間的に冷却できると共にその保冷時間を延長できる瞬間冷却パックも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-6687号公報
【特許文献2】特開平9-170861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来より販売されている冷却パックにおいて、冷却の効果は、室温30℃での静置で約30分、氷点下の冷却温度を得ることができるが、未だ冷却温度・冷却性能としては不十分である。
【0009】
特に、冷却パックの使用後に冷凍庫に入れて凍結させて保冷剤として再利用する際においては、従来の冷却パックでは直ぐに融点が0℃以上になり、氷点下での冷却持続時間が非常に短いという問題がある。
【0010】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来の冷却パックと比較して、より冷却性能が向上し、特に、使用後に保冷剤として再利用する際の冷却性能を飛躍的に向上した冷却パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、水を収容した水袋と、当該水袋及び水と反応して吸熱する冷却剤を内部に収容して封止される外袋とを有し、前記水袋を外からの衝撃により破裂させることにより水と冷却剤が吸熱反応をして冷却する冷却パックであって、前記外袋の中に、ポリアクリル酸ナトリウムを含有させ
、前記外袋に収容される冷却剤には、硝酸アンモニウム及び尿素の少なくとも一方が使用され、前記外袋の中に、さらに、シリカゲルを含有させ、前記外袋には(a)尿素及び硝酸アンモニウムの少なくとも一方を35wt%、(b)ポリアクリル酸ナトリウム1wt%、(c)シリカゲル1wt%を配合し、前記水袋には(d)水63wt%(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100wt%とする)を収容することを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、瞬間冷却用の配合剤であって、(a)尿素及び硝酸アンモニウムの少なくとも一方を35wt%、(b)ポリアクリル酸ナトリウム1wt%、(c)シリカゲル1wt%、(d)水63wt%(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100wt%とする)を主成分とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る冷却パックは、水袋と、水袋及び水と反応して吸熱する冷却剤を内部に収容して封止される外袋とを有し、水袋を外からの衝撃により破裂させることにより水と冷却剤が吸熱反応をして冷却し、外袋の中に、ポリアクリル酸ナトリウムを含有させる。この構成により、本発明の冷却パックは、従来の冷却パックと比較して、より冷却性能が向上し、特に、使用後に保冷剤として再利用する際の冷却性能を飛躍的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る冷却パックの説明のための概略断面図である。
【
図2】本発明の実施例2に係る冷却パックと比較例2に係る冷却パックの再利用時の温度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る冷却パックについて
図1を参照して説明する。冷却パック1は、発熱時や頭痛などの応急処置、スポーツ、レジャ、仕事、勉強時などの暑さ対策の用途に用いられ、一瞬で冷却できる手軽な商品として幅広く使用されている。
【0020】
最初に、冷却パック1の構造に関して
図1を参照しながら説明する。冷却パック1は、例えば矩形状の袋であり、水10aを収容した水袋10と、水袋10及び水10aと反応して吸熱する冷却剤11aを内部に収容して溶着・封止される外袋11とを有する。そして、水袋10を外からの衝撃により破裂させることにより水10aと冷却剤11aが吸熱反応をして冷却作用を生じる。冷却パック1のサイズは、例えば幅180mm×高さ110mm程度である。
【0021】
水袋10及び外袋11は、例えばポリエチレンやナイロン、ポリアミドなどの熱可塑性プラスチック樹脂で形成される。通常、水袋10の方は外からの衝撃により破裂できるよう厚さが薄く、外袋11は外からの衝撃によっても容易に破裂しないような厚さの樹脂で形成される。
【0022】
冷却パック1の外袋11の中には、水袋10からの水10aの即座の流動を防止するための増粘剤として作用するポリアクリル酸ナトリウム11bを含有させる。外袋11に収容される冷却剤11aには、硝酸アンモニウム及び尿素の少なくとも一方が使用される。この際、硝酸アンモニウム又は尿素の一方のみを使用しても良いし、両方を所定割合で混合しても良い。
【0023】
冷却パック1の外袋11の中には、さらに増粘剤として作用するシリカゲル11cを含有させる。これらの増粘剤(ポリアクリル酸ナトリウム11b及びシリカゲル11c)を外袋11に含有させることで水10aが一気に外袋11の内に流れ出て冷却剤11aと反応するのを防止し、冷却温度及び冷却持続時間を適切に保つことができる。
【0024】
より具体的には、外袋11には(a)冷却剤11aとしての尿素及び硝酸アンモニウムの少なくとも一方を35wt%、(b)ポリアクリル酸ナトリウム11bを1wt%、(c)シリカゲル11cを1wt%、水袋10には(d)水10aを63wt%(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100wt%とする)を配合する。また、(b)ポリアクリル酸ナトリウム11bは0.5wt%以上とすることが好ましい。
【0025】
次に、本実施の形態に係る冷却パック1の使用に関して説明する。最初に、所定の冷却が必要な際に、冷却パック1の外側から拳骨を振り下ろす程度の衝撃を水袋10に与えると、水袋10のみ破裂する。外袋11内に出た水10aと冷却剤11aとが反応し、冷却材11aが水10aに溶解するときに吸熱反応をし、周囲から溶解熱を奪って急速冷却が開始される。この際、本実施の形態に係る冷却パック1では、増粘剤たるポリアクリル酸ナトリウム11b及びシリカゲル11cの効果により、水10aは徐々に糊状になり、断熱効果を発揮して保冷持続時間を長くし、且つ冷却温度を低く保つことができる。また、水10aと冷却材11aとの吸熱反応が徐々に進行する。
【0026】
その後、顆粒状の冷却剤11aと水10aとが徐々に吸熱反応をして、全ての冷却剤11aの水10aへの溶解が終了するまで持続する。この結果、冷却パック1は、冷却温度が従来品に比較して低くなり、且つ冷却持続時間をより長くすることが可能となる。
【0027】
次に、本実施の形態に係る冷却パック1の再利用に関して説明する。通常、冷却の使用後の冷却パック1は、冷凍庫にいれて一定期間以上に亘って冷却することで保冷剤として再利用(二次利用)できる。冷却パック1を再利用するときは、例えば冷凍庫に6時間程度入れて、凍結した後に再度保冷剤として使用できる。この際、本実施の形態に係る冷却パック1は、ポリアクリル酸ナトリウム11bを内部に含有しており粘性が従来品に比較して高くなる。この結果、断熱効果を発揮して、特にマイナス10℃前後となる保冷持続時間を飛躍的に長くし、且つ冷却温度を低い状態を従来と比較して非常に長期間保つことができる。また、再利用で例えば10分程度冷凍庫で冷やすと、直ぐに冷えて、何回でも繰り返して冷却効果を得ることができる。
【0028】
以上のように、本実施の形態に係る冷却パック1は、水10aを収容した水袋10と、水袋10及び水10aと反応して吸熱する冷却剤11aを内部に収容して封止される外袋11とを有し、水袋10を外からの衝撃により破裂させることにより水10aと冷却剤11aが吸熱反応をして冷却する。冷却パック1の外袋11の中には、ポリアクリル酸ナトリウム11bを含有させる。また、外袋11に収容される冷却剤11aには、硝酸アンモニウム及び尿素の少なくとも一方が使用される。さらに、外袋11の中に、シリカゲル11cを含有させることができる。より具体的には、外袋11には重量比で(a)冷却剤11aとしての尿素及び硝酸アンモニウムの少なくとも一方を35wt%、(b)ポリアクリル酸ナトリウム11bを1wt%、(c)シリカゲル11cを1wt%、水袋10には(d)水10aを63wt%(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100wt%とする)を主成分として配合する。この結果、冷却パック1は、従来の冷却パックと比較して、より冷却性能が向上し、特に、瞬間冷却の使用後に保冷剤として再利用する際の冷却性能を飛躍的に向上できる。より具体的には、冷却パック1を使用後の再使用時において、マイナス10℃程度の冷却温度となる冷却持続時間を飛躍的に長くすることができる。
【0029】
<保冷試験>
次に、本実施の形態に係る冷却パック1に係る実施例1と、従来の冷却パックに係る比較例1とを用いて保冷試験を行った。なお、この試験は、冷却パックの保冷性能を判断するための試験である(経過時間に対する冷却パックの表面温度を測定した)。
【0030】
(実施例1)
実施例1では、冷却パック1の外袋11には(a)冷却剤11aとしての尿素35wt%、(b)ポリアクリル酸ナトリウム11bを1wt%、(c)シリカゲル11cを1wt%、水袋10には(d)水10aを63wt%(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100wt%とする)を配合した。
【0031】
(比較例1)
また、上記実施例1との比較のため、比較例1として、硝酸アンモニウムを35g及びシリカゲル少々を封入した外袋と、水48gを封入した水袋とを拳骨を振り下ろす程度の衝撃を与え、水袋を破裂させて冷却剤と水とを反応させた。
【0032】
上記のように作製した実施例1と比較例1とに係る各サンプルを評価した。評価方法・条件としては以下の測定を行った。
【0033】
・表面温度の測定
使用方法に基づいて、水袋を破裂させた後、冷却パックの裏面中央部に温度センサを貼り付けて表面温度を測定した。25±1℃の恒温室内で、冷却パックの裏面を下にして試料を平らに静置した。各サンプルの試験結果を下記の[表1]に示した。
【0035】
[表1]に示す実施例1、及び比較例1に係る表面温度の結果から明らかなように、実施例1は、比較例1より冷却性能、及び冷却持続時間が延びていることが分かる。
【0036】
<冷却パックの再使用時の保冷試験>
次に、本実施の形態に係る冷却パック1に係る実施例2と、従来の冷却パックに係る比較例2とを用いて冷却パックの再使用時の保冷試験を行った。
【0037】
(実施例2)
実施例2では、冷却パック1の外袋11には(a)冷却剤11aとしての尿素35wt%、(b)ポリアクリル酸ナトリウム11bを1wt%、(c)シリカゲル11cを1wt%、水袋10には(d)水10aを63wt%(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100wt%とする)を配合した。そして、この冷却パック1の瞬間冷却の使用後において冷凍庫に6時間載置したものを使用した。
【0038】
(比較例2)
また、上記実施例2との比較のため、比較例2として、硝酸アンモニウムを35g及びシリカゲル少々を封入した外袋と、水48gを封入した水袋とを有する冷却パックの使用後に、冷凍庫に6時間載置したものを使用した。そして、実施例2と比較例2とに係る各サンプルを評価し、その試験結果を
図2や下記[表2]に示した。
【0039】
・表面温度の測定
冷凍庫から取り出した冷却パックの裏面中央部に温度センサを貼り付けて表面温度を測定した。25±1℃の恒温室内で、冷却パックの裏面を下にしてクーラーパック内に試料を平らに静置した。
【0041】
図2や[表2]に示す実施例2及び比較例2に係る表面温度の結果から明らかなように、実施例2は、比較例2よりマイナス10℃程度の冷却温度となる冷却持続時間が飛躍的に長くなり、従来品に比較して再利用時の冷却性能が非常に向上していることが分かる。
【0042】
なお、本発明は、上記の実施の形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、寒冷剤として硝酸アンモニウム、硝酸カリウムなどを用いても良い。また、上述の配合は、冷却パック1への使用に限定されるものではなく、(a)尿素及び硝酸アンモニウムの少なくとも一方を35wt%、(b)ポリアクリル酸ナトリウム1wt%、(c)シリカゲル1wt%、(d)水63wt%(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100wt%とする)を主成分とする瞬間冷却用の配合剤として、冷却が必要な他の分野に応用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1 冷却パック
10 水袋
10a 水
11 外袋
11a 冷却剤
11b ポリアクリル酸ナトリウム
11c シリカゲル