(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る杭体施工方法の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態は、杭体を施工する杭体施工方法に関する。この杭体は、建築物の基礎となる地盤に形成される杭である。なお、この杭体を用いて施工される建築物の用途は任意であり、例えばオフィスビル、飲食施設、娯楽施設、又は居住施設等として利用することができる。また、建築物の総階数や形状については任意である。
【0017】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0018】
(構成)
図1は、本実施の形態に係る杭体施工方法にて施工された基礎構造体1を示す断面図である。この
図1に示すように、本実施の形態に係る基礎構造体1は、杭孔10、杭体20、根固め部30、杭周固定部40、及び袋状体50を備えて構成されている。ここで、以下では、必要に応じて、各図におけるX方向を「幅方向」と称し、特に+X方向を「右方向」、−X方向を「左方向」と称する。また、Y方向(X−Z平面に直交する方向)を「奥行き方向」と称し、特に+Y方向(向かって手前の方向)を「前方向」、−Y方向(向かって奥の方向)を「後方向」と称する。また、Z方向を「高さ方向」と称し、特に+Z方向を「上方向」、−Z方向を「下方向」と称する。また、基礎構造体1の各部を基準として、基礎構造体1の中心に近づく方を「内側」、基礎構造体1の中心から遠ざかる方を「外側」と称して説明する。
【0019】
ここで、建築物を施工するためには、本実施の形態に係る基礎構造体1を地盤2に対して複数箇所に施工するが、各基礎構造体1はいずれも同様の構造であり、同様に施工することができるため、本実施の形態においてはこれらの複数の基礎構造体1のうち、一つの基礎構造体1についてのみ着目して説明する。
【0020】
(構成−杭孔)
杭孔10は、杭体20を挿入するための孔であって、施工面から鉛直下方向に沿って形成されている。ここで、「施工面」とは、杭孔10の掘削を開始する地点と同一レベルの面である。例えば、地表面に重機等を配置し、地表面から杭孔10の掘削を開始する場合には、地表面が施工面になる。あるいは、地表面から所定高さ(例えば1m)程度だけ掘り下げ、当該掘り下げた地点に重機等を配置して掘削を開始する場合には、当該掘り下げた地点と同一レベルの面が施工面となる。この杭孔10の具体的な形状は任意であり、本実施の形態においては円筒形の孔であるものとするが、杭体20の支持性能を向上させるためには、杭孔10における底部(根固め部30が位置する部分)を拡大掘削することが好ましい。なお、この杭孔10の大きさは、内部に杭体20及び袋状体50を挿入可能な限り任意である。
【0021】
(構成−杭体)
杭体20は、杭孔10に挿入される構造体であって、杭孔10の内部に鉛直方向に沿って配置されている。この杭体20は、杭孔10の内部において、根固め部30及び杭周固定部40に囲繞されるように配置されている。具体的には、杭孔10の軸心と杭体20の軸心とが略一致するように配置されており、杭体20の杭頭部は施工面と略同一平面上に位置し、杭体20の杭底部は杭孔10の底面よりも上方に位置している。
【0022】
ここで、当該杭体20は、代表的には、公知の鋼管杭、PHC杭、PRC杭、又はSC杭等の既製杭であるが、これらに限らず、公知の様々な既製杭を適用できる。例えば、本実施の形態においては、杭体20は、中空部21を有する円筒形の鋼管である。このように中空部21を設けることにより、杭体20を杭孔10に挿入していく際に中空部21を根固め液31及び杭周固定液41(いずれも後述する)が流動する。すなわち、杭体20が杭孔に挿入されることで、杭体20の体積と同量のこれらの液が杭孔10の上端から溢れ出て、杭体20とこれらの液の入れ替わりが起こる。このように、中空部21を設けることで、杭体20とこれらの液との中空部21を介した入れ替わりが可能となり、中空部21を設けない場合と比べて杭体20の挿入を好適に行うことができる。したがって、杭体20を適切な位置まで挿入する前にこれらの液が固化して所定強度を発現してしまうことに伴う杭体20の上げ止まりを防止できる。ただし、中空部21を有しない杭体を用いても構わない。例えば、外殻となる鋼管の内部にコンクリートを充填して構成した既製杭でもよい。または、鉛直方向に沿って配筋された主筋と、当該主筋を覆うように配筋されたフープ筋と、これらの主筋及びフープ筋を覆うように形成された円柱形状のコンクリートとを備える杭体でも構わない。
【0023】
(構成−根固め部)
根固め部30は、杭体20の底部を固定するための底部固定手段である。この根固め部30は、杭体20の支持性能を向上させるためのものであり、杭孔10における底部の位置に、杭体20の底部を覆うように形成されたセメント硬化体である。すなわち、根固め部30は、鉛直断面形状が略円柱形状のセメント硬化体であって、上端に形成された凹部に杭体20の杭底部が隙間なく収まるような形状に形成されている。なお、本実施の形態における「セメント硬化体」とは、成分として少なくともセメントを含む流動体又は固体(例えばセメントミルクと泥との混合体を含む)であり、根固め部30や杭周固定部40のように固化した後の状態や、これらが固化する前の状態(後述する根固め液31や杭周固定液41)を含む概念である。この根固め部30の形成方法は任意で、例えばセメントミルクである根固め液31(後述する
図2参照)を杭孔10の内部に注入して、当該根固め液31に杭体20を落とし込んだ状態で根固め液31を硬化させることにより形成できる。なお、この根固め液31の水とセメントとの配合比率は任意で、公知の値を適用できる。
【0024】
(構成−杭周固定部)
杭周固定部40は、杭体20の周囲を固定するための周囲固定手段である。この杭周固定部40は、杭孔10における根固め液31が注入された領域、及び杭体20が配置された領域を除く領域に形成されたセメント硬化体である。すなわち、杭周固定部40は、円筒形状のセメント硬化体であって、軸心に形成された孔部に杭体20が隙間なく収まるような形状に形成されている。この杭周固定部40の形成方法は任意で、例えばセメントミルクである杭周固定液41(後述する
図2参照)を、根固め液31の上から杭孔10の内部に注入して、当該杭周固定液41に杭体20を落とし込んだ状態で杭周固定液41を硬化させることにより形成できる。なお、この杭周固定液41の水とセメントとの配合比率は任意で、公知の値を適用できるが、本実施の形態では根固め液31と同じか、根固め液31よりも少ない比率のセメントで形成される。
【0025】
(構成−袋状体)
袋状体50は、杭孔10の少なくとも一部を封鎖する封鎖手段である。ここで、袋状体50の上下位置は任意であるが、本実施の形態では杭体20の上端付近に取り付けられており、袋状体50の全体が杭周固定部40に埋没している。ただし、袋状体50の位置はこのような位置に限定されず、より上方の位置に設けてもよく、例えば、袋状体50の下部の一部分は杭周固定部40に埋没しており、他の部分は杭周固定部40の上方に露出していてもよい。また、袋状体50を杭体20の上下方向中央部に取り付けてもよいし、杭体20の下端部付近に取り付けても構わない。ただし、例えば袋状体50を杭体20の下端部に取り付けた場合には、杭体20を杭孔10に挿入している間、袋状体50は、杭孔10内部に充填された根固め液31及び杭周固定液41(いずれも後述する)から力を受け続けてしまい、脱落の可能性があるため、これを避けるためにも杭体20の上端付近に取り付けることが好ましい。また、袋状体50は本実施の形態では杭体20の中空部21に1つのみ設けるが、これに限らず任意の数の袋状体50を中空部21に設けてもよい。この際に、各袋状体50を同一高さに設置してもよいし、高さ方向の位置をずらして配置しても構わない。
【0026】
ここで、袋状体50の内部の空隙部には、硬化した注入材51(後述する
図7参照)が注入されている。「注入材」51とは、袋状体50に注入される流体であって、気体、液体、又は固体のいずれでも構わず、例えば空気や水であっても構わないが、本実施の形態においては、注入材51としてセメントミルクを用いるものとして説明する。なお、袋状体50の形状は、内部に注入材51を注入可能な空隙部を有する限りにおいて任意であり、本実施の形態においては、膨張した際の形状が略円柱形状である袋であるものとして説明する。
【0027】
このように袋状体50は膨張することで、杭孔10の少なくとも一部を封鎖する。「杭孔10の少なくとも一部を封鎖」とは、杭孔10内部に充填された根固め液31及び杭周固定液41(いずれも後述する)の上下方向の流動を阻害するような配置となることである。例えば本実施の形態の袋状体50は、杭体20の中空部21で膨張することでこの中空部21におけるこれらの液の流動を阻害する。なお、本実施の形態では、袋状体50の膨張時の水平断面形状が、中空部21の水平断面形状と同一であり、中空部21の水平断面全域を袋状体50が満たすが、これに限らず、中空部21の水平断面の一部を満たすような袋状体50でも構わない。
【0028】
(施工方法)
続いて、本実施の形態に係る杭体施工方法について説明する。当該杭体施工方法は、概略的に、杭体20を杭孔10に挿入し、杭体20が設計位置まで到達した際に袋状体50に注入材51を注入して袋状体50を膨張させることにより、杭体20の中空部21を袋状体50で蓋をし、杭体20の落ち込みを抑制する方法に関する。ここで、本実施の形態に係る杭体施工方法は、概略的に、杭孔形成工程、根固め液注入工程、杭周固定液注入工程、袋状体設置工程、杭体挿入工程、封鎖工程、及び支持解除工程を含む。
【0029】
(施工方法−手順1)
図2は、本実施の形態に係る杭体施工方法の手順1にて施工された基礎構造体1を示す断面図である。この
図2に示すように、まずは、杭孔形成工程、根固め液注入工程、及び杭周固定液注入工程を順次行う。
【0030】
杭孔形成工程は、施工面から鉛直下方向に沿った杭孔10を形成する工程である。このように杭孔10を形成する具体的な方法は任意で、例えば公知の掘削ヘッドを用いて地盤2を掘り下げていく方法を採用できる。
【0031】
根固め液注入工程は、上述した杭孔形成工程にて形成した杭孔10の底部に根固め液31を注入する工程である。この根固め液31の量やセメントの配合比率等は任意で、例えば地盤2の固さや杭体20の大きさ等に応じて適宜決定して良い。
【0032】
杭周固定液注入工程は、上述した杭孔形成工程にて形成した杭孔10における、根固め液31の上方に杭周固定液41を注入する工程である。この杭周固定液41の量やセメントの配合比率等は任意で、例えば地盤2の固さや杭体20の大きさ等に応じて適宜決定して良い。なお、これらの杭孔形成工程、根固め液注入工程、及び杭周固定液注入工程は、適宜順番を変えて、あるいはいずれか一部の工程のみを適宜組み合わせて実行することができる。例えば、掘削ヘッドで地盤2を掘りながら掘削ヘッドの先端からセメントミルクを吐出し、掘った土とセメントミルクを適宜混ぜて、セメント配合比率の高い根固め液31及びセメント配合比率の低い杭周固定液41としてもよい。
【0033】
(施工方法−手順2)
図3は、杭体施工方法の手順2にて施工された基礎構造体1を示す断面図、
図4は、
図3のA部の拡大図、
図5は、
図4のB−B矢視断面図である。これらの
図3、
図4、及び
図5に示すように、続いて、袋状体設置工程、及び杭体挿入工程を行う。なお、この
図5や後述する
図7では、図示の便宜上、中空部21の中に充填された杭周固定液41のハッチングを省略している。
【0034】
袋状体設置工程は、後述する杭体挿入工程において杭孔10に挿入する杭体20の中空部21の内周面に袋状体50を設置する工程である。ここで、袋状体50を杭体20に設置する方法は任意であるが、本実施の形態においては、
図4及び
図5に示すように、テープ52a及びテープ52bを用いて取り付けるものとして説明する。なお、これらのテープの貼り方は一例に過ぎず、これらの貼り方に限定されない。
【0035】
このうちテープ52aは、杭体20を杭孔10の内部に挿入した際において、杭周固定液41によって袋状体50が捲り上がってしまうことを防止するためのテープであり、図示のように、袋状体50の両側端部及び上下端部を覆うように取り付けられる。
【0036】
また、テープ52bは、後述する杭体挿入工程において袋状体50を杭体20に対してより強固に接着するためのテープであって、袋状体50の外側を囲繞するように上下二箇所に取り付けられる。なお、このテープ52bは、後述する封鎖工程において、袋状体50に注入材51(セメントミルク)を注入して袋状体50が膨張した際には破断する。
【0037】
ここで、袋状体50は、ホース53を介してプラント54と相互に接続されており、プラント54から送り出した注入材51が、当該ホース53を介して袋状体50の内部に注入される構造となっている。なお、このホース53は、袋状体50に対して一本ずつ取り付けられている。
【0038】
杭体挿入工程は、杭孔10に杭体20を挿入する工程である。具体的には、上述した袋状体設置工程において外周面に袋状体50を設置した杭体20を、クレーン等で吊り上げて杭孔10の内部に杭体20の自重で(必要に応じて杭体20に対して軸心を中心とする回転を加えて)挿入していき、杭体20の下端部が上述した根固め液31に至る位置まで杭体20を挿入する。
【0039】
(施工方法−手順3)
図6は、杭体施工方法の手順3にて施工された基礎構造体1を示す断面図、
図7は、
図6のC部の拡大図である。これらの
図6及び
図7に示すように、続いて、封鎖工程、及び支持解除工程を行う。
【0040】
封鎖工程は、袋状体50に注入材51を注入することにより、杭体20の落ち込みを抑制する工程である。具体的には、まず、プラント54から注入材51を送出し、ホース53を介して袋状体50の内部に送り込んで袋状体50を膨張させ、袋状体50を杭体20の中空部21の内周面に密着させる。なお、このように袋状体50を膨張させることにより、テープ52bが破断するため、テープ52bが袋状体50の膨張を阻害してしまうことを防止できる。なお、図示は省略するが、この際にテープ52aも袋状体50の膨張に伴って脱落してもよい。そして、さらに袋状体50の内部に注入材51を注入することにより、袋状体50の内部に内圧が加わることによって、袋状体50と中空部21の内周面との隙間がなくなり、中空部21を介した根固め液31及び杭周固定液41の流動を抑制して杭体20の落ち込みを抑制する。ここで、「杭体20の落ち込みを抑制する」とは、杭体20が全く落ち込みしないようにすることに限らず、杭体20の落ち込み速度をわずかでも低下させることを含む。このように落ち込み速度を低下できれば、施工時間の短縮効果を奏する。例えば、わずかでも杭体20の落ち込み速度を低下させることができれば、仮支持の架台をわずかながら早期に取り外すことができ、全体的な施工時間を短縮できる。
【0041】
このように、杭体20を杭孔10に挿入してから、袋状体50を膨張させて中空部21に蓋をすることにより杭体20の落ち込みを防止するので、中空部21に初めから蓋のある杭体20や中空部21の無い杭体20を杭孔20に挿入する場合よりも、杭体20を杭孔10に円滑に挿入できる。よって、杭体20を設計位置まで挿入する前に根固め液31や杭周固定液41が固化してしまうことに伴う杭体20の上げ止まりを防止できる。
【0042】
支持解除工程は、封鎖工程の後に、重機等による杭体20の支持を解除する。すなわち、従来の施工方法では、重機等による杭体20の支持を解除する前に杭体20を架台等で仮支持しなければ、杭体20が落ち込んでしまい下げ止まりを誘発するが、本実施の形態では袋状体50により杭体20の落ち込みを抑制しているので、仮支持をしなくても杭体20が大きく落ち込むことがない。そのため、仮支持に要する架台のコストや、仮支持期間を削減できる。
【0043】
なお、袋状体50については杭孔10の内部に埋め殺す形となるが、袋状体50の内部に注入された注入材51はセメントミルクであり、杭周固定部40と同等以上の強度を実現するため問題無い。このように注入材51をセメントミルクとすることにより、袋状体50を杭孔10の外部に撤去する手間を省略できる。また、ホース53の一部も本実施の形態では杭孔10の内部に埋め殺す形となるが、ホース53の内部に充填されている注入材51もセメントミルクであるため問題ない。なお、ホース53は取り外しても構わない。例えば、袋状体50の一部が施工面よりも上方に露出しており、この露出した部分にホース53が取り付けられている場合には、ホース53を適宜取り外して再度他の杭に注入材51を注入する際にホース53を再利用してもよい。以上にて、本実施の形態に係る杭体施工方法の説明を終了する。
【0044】
(実施の形態の効果)
このように、本実施の形態の杭体施工方法によれば、袋状体50で杭孔10の少なくとも一部を封鎖して杭孔10内でのセメント硬化体の流動を抑制するので、杭孔10内でのセメント硬化体の流動を伴う杭体20の沈降を抑制して杭体20の下げ止まりを防止しつつ架台での仮保持時間を短縮又は仮保持を省略でき、かつ多数の仮保持用の架台を必要としないので、施工コストの低減、及び最小限の施工ヤードでの施工が可能である。
【0045】
また、杭体20を杭体20の中空部21に設置して、杭体20の中空部21内でのセメント硬化体の流動を抑制するので、中空部21内でのセメント硬化体の流動を伴う杭体20の沈降を抑制して杭体20の下げ止まりを防止できる。
【0046】
また、袋状体50を杭体20の上端付近に設置するので、杭体挿入工程において袋状体50がセメント硬化体から力を受け続ける距離を最小限に抑えることができ、袋状体50が損壊したり杭体20から外れたりしてしまう可能性を低減できる。
【0047】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0048】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0049】
(寸法や材料について)
発明の詳細な説明や図面で説明した基礎構造体1の各部の寸法、形状、材料、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、材料、比率等とすることができる。
【0050】
(袋状体について)
図8は、変形例に係る基礎構造体60を示す断面図である。なお、この
図8は、
図6に示す実施の形態の手順3に対応する図である。この
図8に示すように、外周部に袋状体50が設置された杭体20を杭孔10に挿入してもよい。このように杭体20の外周部の袋状体50に注入材51を注入することにより、杭体20の外周面と杭孔10の内周面との間隙を袋状体50で埋めることができ、当該間隙でのセメント硬化体の流動を抑制できる。なお、本変形例では、杭体20の中空部21の袋状体50に加えて、さらに杭体20の外周部の袋状体50を設ける構成としたが、これに限らず、杭体20の外周部の袋状体50のみを設けてもよい。また、本変形例では、外周部の袋状体50を、外周部の前後左右の合計4か所に配置したが、袋状体50の数はこれに限らない。また、例えば膨らんだ際の形状が、上述した杭体20の外周面と杭孔10の内周面との間隙の形状と一致する円筒状の袋状体50を用いることで、外周部の袋状体50を1つに抑えてもよい。
【0051】
このように、本変形例に係る杭体施工方法によれば、杭体20を杭体20の外周部に設置して、杭体20と杭孔10との間隙内でのセメント硬化体の流動を抑制するので、杭体20と杭孔10との間隙内でのセメント硬化体の流動を伴う杭体20の沈降を抑制して杭体20の下げ止まりを防止できる。
【0052】
(テープについて)
本実施の形態においては、テープ52a及びテープ52bにより袋状体50を杭体20に対して固定し、袋状体50の注入材51を注入した際にテープ52bが破断するものとして説明したが、これに限られない。すなわち、杭体20を杭孔10に挿入する際に袋状体50が捲り上がったりずれてしまったりすることがなく、かつ注入材51を袋状体50に注入した際には袋状体50の膨張を阻害しないように固定可能である限り、任意の手段により固定することができる。例えば、テープ52a及びテープ52bの代わりに、ゴム等の袋状体50の膨張に応じて変形するもので袋状体50を固定しても構わない。あるいは、袋状体50の杭体20側の面を接着剤によって杭体20に接着して固定したり、袋状体50をボルトで杭体20に対して固定したり、袋状体50を鉄板等で挟み込んで固定しても構わない。
【0053】
(杭体挿入工程について)
本実施の形態においては、杭孔10を形成して当該杭孔10に杭周固定液41や根固め液31を注入してから、杭孔10に杭体20を挿入したが、この工程の順序は適宜公知の工程に変更して構わない。例えば公知の中堀工法を採用し、杭体20の中空部21を掘削して杭孔10を形成しながら杭体20を沈設しても構わない。
【0054】
(付記)
付記1の杭体施工方法は、施工面から鉛直下方向に沿った杭孔であって、セメント硬化体が充填された杭孔を形成する杭孔形成工程と、袋状体が設置された杭体を前記杭孔に挿入する杭体挿入工程と、前記杭体挿入工程の後に、前記袋状体に注入材を注入して前記袋状体により前記杭孔の少なくとも一部を封鎖することによって、前記杭孔内での前記セメント硬化体の流動を抑制する注入工程と、を備える。
【0055】
付記2の杭体施工方法は、付記1に記載の杭体施工方法において、前記杭体は中空部を有し、前記杭体挿入工程において、前記中空部に前記袋状体が設置された杭体を前記杭孔に挿入する。
【0056】
付記3の杭体施工方法は、付記1又は2に記載の杭体施工方法において、前記杭体挿入工程において、外周部に前記袋状体が設置された杭体を前記杭孔に挿入する。
【0057】
付記4の杭体施工方法は、付記1から3のいずれか一項に記載の杭体施工方法において、前記袋状体は、前記杭体の上端付近に設置される。
【0058】
(付記の効果)
付記1に記載の杭体施工方法によれば、袋状体で杭孔の少なくとも一部を封鎖して杭孔内でのセメント硬化体の流動を抑制するので、杭孔内でのセメント硬化体の流動を伴う杭体の沈降を抑制して杭体の下げ止まりを防止しつつ架台での仮保持時間を短縮又は仮保持を省略でき、かつ多数の仮保持用の架台を必要としないので、施工コストの低減、及び最小限の施工ヤードでの施工が可能である。
【0059】
付記2に記載の杭体施工方法によれば、杭体を杭体の中空部に設置して、杭体の中空部内でのセメント硬化体の流動を抑制するので、中空部内でのセメント硬化体の流動を伴う杭体の沈降を抑制して杭体の下げ止まりを防止できる。
【0060】
付記3に記載の杭体施工方法によれば、杭体を杭体の外周部に設置して、杭体と杭孔との間隙内でのセメント硬化体の流動を抑制するので、杭体と杭孔との間隙内でのセメント硬化体の流動を伴う杭体の沈降を抑制して杭体の下げ止まりを防止できる。
【0061】
付記4に記載の杭体施工方法によれば、袋状体を杭体の上端付近に設置するので、杭体挿入工程において袋状体がセメント硬化体から力を受け続ける距離を最小限に抑えることができ、袋状体が損壊したり杭体から外れたりしてしまう可能性を低減できる。