特許第6877816号(P6877816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6877816重合体および該重合体を含んでなる樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877816
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】重合体および該重合体を含んでなる樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/12 20060101AFI20210517BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C08F290/12
   G03F7/004
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-159728(P2016-159728)
(22)【出願日】2016年8月16日
(65)【公開番号】特開2017-119819(P2017-119819A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2019年5月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-251370(P2015-251370)
(32)【優先日】2015年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100161942
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨 みどり
(72)【発明者】
【氏名】吉田雅年
(72)【発明者】
【氏名】前田順啓
(72)【発明者】
【氏名】大槻信章
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−201881(JP,A)
【文献】 特開2008−020873(JP,A)
【文献】 特開2009−300835(JP,A)
【文献】 特開平11−174224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00−222/40
C08F 212/00−212/36
C08F 2/00−2/60
C08F 290/00−290/14
G03F 7/004−7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全単量体単位100質量%中、マレイミド系単量体単位10〜80質量%、エステル結合を有さない不飽和塩基酸単位3〜70質量%、エステル結合を有さない芳香族系単量体単位20〜80質量%、水酸基を有する単量体単位1〜50質量%を必須単位として有し、
下記式により得られる熱処理後残存率X(質量%)と固形分濃度Y(質量%)との相対値X/Yが0.95以上である、アルカリ可溶性感光性樹脂用の重合体(但し、重合体側鎖に(メタ)アクリロイルオキシアルキルシリル基および/またはビニルシリル基を有するものを除く)とラジカル重合性化合物とを含んでなる、アルカリ可溶性感光性樹脂用の樹脂組成物。
熱処理後残存率X(質量%)={重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)とアセトン2mlとの混合物を200℃で30分加熱乾燥して得た乾燥混合物の質量(g)}/{重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
固形分濃度Y(質量%)={重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)を真空下160℃で1時間30分加熱乾燥させて得た固形分の質量(g)}/{重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
【請求項2】
前記エステル結合を有さない不飽和塩基酸単位が(メタ)アクリル酸単位である請求項1に記載のアルカリ可溶性感光性樹脂用の樹脂組成物
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水溶液に可溶な重合体および該重合体を含んでなる樹脂組成物に関する。より詳しくは、それを用いた硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成用の感光性樹脂組成物は、写真法(フォトリソグラフィー)の原理を応用することによって微細加工が可能な上に、物性に優れた硬化物を与えて画像を形成できることから、電子部品関係の各種レジスト材料や印刷版等の用途に多用されている。近年では、環境対策の点から希薄な弱アルカリ水溶液で現像できるアルカリ現像型が主流になっている。
ネガ型の画像形成用感光性樹脂組成物を、写真法(フォトリソグラフィー)の工程に用いる場合には、先ず基板上に樹脂組成物を塗布し、続いて加熱乾燥を行って塗膜を形成させた後、この塗膜にパターン形成用フィルムを装着し、露光して、現像するという一連の工程が採用されている。光硬化後の塗膜には、現像性に加えて、耐熱性や、耐水性、耐湿性等の長期信頼性に関わる特性が求められる。
【0003】
上記各特性をある程度満足するものとして、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるビニルエステル(エポキシアクリレート)に酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入したカルボキシル基含有ビニルエステルが知られている。このカルボキシル基含有ビニルエステルは、タックフリー性、光感度、現像性といった相反する特性をバランス良く満足している上に、硬化物に求められる耐熱性や耐水性等の重要特性も比較的良好であるが、さらに高いレベルでの向上、両立が求められている。
【0004】
この目的に沿ったものとして、例えば、分子中に2個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物と分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を含有する樹脂組成物は、現像性、耐熱性、可撓性等の重要特性が良好であることが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、技術の進歩に伴って、さらにハイレベルな特性が求められており、例えば、微細なパターン形成に適合し得る高度な寸法安定性や、より高い温度条件での処理に耐えることが要求されるようになっている。
【0005】
ところで、高耐熱性要求に応え得る感光性樹脂として、N−置換マレイミド基とエチレン性不飽和二重結合を有するポリマーが検討されている(例えば特許文献2および3)。しかしながら、これらの系においても、耐熱性に重きを置き過ぎるとアルカリ現像性が低下したり硬化物に脆さが発現することになりかねず、アルカリ現像性、硬化性、耐熱性、可撓性のバランスの点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−48945号公報
【特許文献2】特開平10−139843号公報
【特許文献3】特開2002−62651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、優れたアルカリ可溶性、硬化性を有しつつ、耐熱分解性が高く脆さを発現しない硬化物を与えうる重合体ならびにそれを含む樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の樹脂組成物がアルカリ可溶性、硬化性を有しつつ、耐熱分解性が高く脆さを発現しない硬化物を与えうることを見出した。
すなわち、本発明の目的は、下記(1)〜()により達成される。
(1)全単量体単位100質量%中、マレイミド系単量体単位10〜80質量%、エステル結合を有さない不飽和塩基酸単位3〜70質量%、エステル結合を有さない芳香族系単量体単位20〜80質量%、水酸基を有する単量体単位1〜50質量%を必須単位として有する、アルカリ可溶性感光性樹脂用の重合体(但し、重合体側鎖に(メタ)アクリロイルオキシアルキルシリル基および/またはビニルシリル基を有するものを除く)とラジカル重合性化合物とを含んでなる、アルカリ可溶性感光性樹脂用の樹脂組成物
上記重合体は、下記式により得られる熱処理後残存率X(質量%)と固形分濃度Y(質量%)との相対値X/Yが0.95以上である。
熱処理後残存率X(質量%)={重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)とアセトン2mlとの混合物を200℃で30分加熱乾燥して得た乾燥混合物の質量(g)}/{重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
固形分濃度Y(質量%)={重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)を真空下160℃で1時間30分加熱乾燥させて得た固形分の質量(g)}/{重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
(2)上記エステル結合を有さない不飽和塩基酸単位が(メタ)アクリル酸単位である(1)に記載のアルカリ可溶性感光性樹脂用の樹脂組成物。
)(1)または(2)に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重合体を含んでなる樹脂組成物は、アルカリ可溶性、硬化性が良く、得られた硬化物は耐熱分解性が高く脆さを発現せず、塗膜とした場合は基材との密着性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の重合体は、マレイミド系単量体単位、エステル結合を有さない不飽和塩基酸(単量体)単位、エステル結合を有さない芳香族系単量体単位、水酸基を有する単量体単位を必須単位として有する重合体である。なお、単量体単位とは、単量体に由来する構成単位であり、当該単量体中の重合性炭素−炭素二重結合(C=C)が単結合(C−C)になった構造単位を意味する。例えば、マレイミド系単量体単位とは、マレイミド系単量体を共重合又はグラフト重合した場合の、マレイミド系単量体由来の構成単位を意味する。
【0011】
重合体は、マレイミド系単量体、エステル結合を有さない不飽和塩基酸、エステル結合を有さない芳香族系単量体、水酸基を有する単量体を必須成分としてラジカル重合させて得られることが好ましい。以下に単量体について説明する。
【0012】
マレイミド系単量体としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルメチルマレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]マレイミド、N−オクタデセニルマレイミド、N−ドデセニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(1−ヒドロキシフェニル)マレイミド等のN−置換マレイミドや無置換マレイミドが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、耐熱性向上効果が大きく、共重合性が良好で、かつ入手し易いという点でN−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等が好ましく、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドがより好ましく、N−フェニルマレイミドが最も好ましい。
【0013】
また、本発明ではアルカリ現像に必須となるカルボキシル基を導入し、加えて硬化物の特性を優れたものとするため、単量体としてエステル結合を有さない不飽和塩基酸を必須成分として用いる。具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ソルビン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、中でも、硬化物の特性に優れることから(メタ)アクリル酸が好ましく、さらに、より良好なアルカリ現像性を発現させることができることから、アクリル酸が特に好ましい。
【0014】
本発明では、マレイミド系単量体との共重合性が良好であり、硬化物の特性にも優れることから、エステル結合を有さない芳香族系単量体を必須成分として用いる。具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、電気特性に優れ、安価である点からスチレンが最も好ましい。
【0015】
本発明では、水酸基(ヒドロキシル基)を有する単量体を必須成分として用いる。従来より、カルボキシル基を有する重合体として(メタ)アクリル酸を共重合させたものが知られているが、アルカリ現像性の点で改善の余地があり、アルカリ現像性を向上させる手法として、水酸基を有する単量体単位を共重合させ、水酸基含有骨格中の水酸基に対して多塩基酸無水物を反応させたものや、特許文献3に記載されているように、グリシジル基含有骨格中のグリシジル基に対して(メタ)アクリル酸のような不飽和一塩基酸を反応させ、グリシジル基が開環して生成したヒドロキシル基に対して多塩基酸無水物を反応させたものが知られているが、いずれもアルカリ現像性、耐熱性の両立の点で改善の余地があった。
【0016】
それに対して、本発明では、エステル結合を有さない不飽和塩基酸、水酸基を有する単量体、両方を必須成分として共重合することで良好なアルカリ現像性を発現させることができ、加えて硬化物の特性にも優れるものとすることができた。分子内に水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル等の(ジ)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシピバリル(メタ)アクリルアミド、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリルアミド、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用可能である。中でも、共重合性の点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、特に(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0017】
マレイミド系単量体(マレイミド系単量体単位)は、全単量体成分(全単量体単位100質量%)中10〜80質量%である。マレイミド系単量体の含有量を10質量%以上とすることで、硬化物に充分な耐熱性を付与することができる。一方、含有量を80質量%以下とすることで、不飽和塩基酸、水酸基を有する単量体、芳香族系単量体に起因するアルカリ現像性、硬化物特性を充分に付与することができる。マレイミド系単量体の好ましい下限は15質量%、より好ましい下限は20質量%である。また、好ましい上限は60質量%、より好ましい上限は40質量%である。
【0018】
エステル結合を有さない不飽和塩基酸(エステル結合を有さない不飽和塩基酸単位)は、全単量体成分(全単量体単位100質量%)中3〜70質量%である。不飽和塩基酸の含有量を3質量%以上とすることで良好なアルカリ現像性を発現させることができる。一方、含有量を70質量%以下とすることで、マレイミド系単量体や芳香族系単量体に起因する耐熱性等の硬化物特性を充分に付与することができる。不飽和塩基酸の好ましい下限は5質量%、より好ましい下限は10質量%、さらに好ましい下限は15質量%である。また、好ましい上限は65質量%、より好ましい上限は60質量%である。
【0019】
エステル結合を有さない芳香族系単量体(エステル結合を有さない芳香族系単量体単位)は、全単量体成分(全単量体単位100質量%)中20〜80質量%である。芳香族系単量体の含有量を20質量%以上とすることで、硬化物特性を充分に付与することができる。一方、含有量を80質量%以下とすることで、マレイミド系単量体、不飽和塩基酸、水酸基を有する単量体に起因する耐熱性、アルカリ現像性を充分に付与することができる。芳香族系単量体の好ましい上限は75質量%、より好ましい上限は70質量%である。
【0020】
水酸基を有する単量体(水酸基を有する単量体単位)は、全単量体成分(全単量体単位100質量%)中1〜50質量%である。水酸基を有する単量体の含有量を1質量%以上とすることで良好なアルカリ現像性を発現させることができる。一方、含有量を50質量%以下とすることで、マレイミド系単量体や芳香族系単量体に起因する耐熱性等の硬化物特性を充分に付与することができる。水酸基を有する単量体の好ましい下限は3質量%、より好ましい下限は5質量%、さらに好ましい下限は7質量%である。また、好ましい上限は40質量%、より好ましい上限は30質量%である。
【0021】
本発明では、特性に悪影響を及ぼさない限りにおいて、重合体を得る際に他の共重合可能な単量体成分を使用しても良い。
このような単量体成分の具体例としては、前記したもの以外の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系単量体;n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルや対応するアルキルビニル(チオ)エーテル;無水マレイン酸等の酸無水物基含有単量体あるいはこれをアルコール類等により酸無水物基を開環変性した単量体や前記したもの以外の不飽和塩基酸;N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体等が挙げられる。
【0022】
重合体を得る方法は特に限定されず、溶液重合法や塊状重合法等、従来公知の重合法の採用が可能である。中でも、重合反応中の温度制御が容易な溶液重合法が好ましい。
溶液重合の際の溶媒としては、重合を阻害したり、原料単量体各成分を変質させるおそれの無い溶媒であれば特に限定されない。使用可能な溶媒の具体的としては、トルエン、キシレン等の炭化水素類;セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、(ジ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸(ジ)メチル、コハク酸(ジ)メチル、アジピン酸(ジ)メチル、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロピオネート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、(ジ)エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。また、特に、(メタ)アクリル酸等の不飽和塩基酸の使用量が30質量%を超える場合には、重合体の析出を防止するために、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類とプロピレングリコールモノメチルエーテルやイソプロパノール等のアルコール類との混合溶媒が好ましい。
【0023】
重合反応の際に使用可能な重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤が挙げられる。具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)等のアゾ系化合物;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−アミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等を挙げることができ、所望する反応条件や、得られる重合体に対する要求特性に応じて適宜選択して使用すればよい。
【0024】
上記重合開始剤としては、中でも、硬化物の特性をより優れたものとするため、パーオキシ基に結合した有機基がすべて、同一または異なって、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状の炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基を含み、且つ炭素数6以上の直鎖状または分枝状の炭化水素基を含まないものである有機過酸化物(P)が好ましい。上記有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、フェニル基などが挙げられる。パーオキシ基には、有機基以外に、水素原子が結合していてもよい。
【0025】
上記有機過酸化物(P)としては、中でも、下記式(1)
R−OO−CO−R’ (1)
[上記式(1)中、R、R’は、同一または異なって、いずれも炭素数1〜4のアルキル基である]
で表される有機過酸化物が好ましい。上記R、R’としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が好ましく例示され、中でもtert−ブチル基が好ましい。
上記有機過酸化物(P)としては、t−ブチルパーオキシピバレートが、特に好ましい。
【0026】
重合開始剤由来の構成単位は、共重合されたポリマー分子の末端に含まれると考えられるが、上記有機過酸化物(P)を重合開始剤として用いることにより、共重合されたポリマー分子の末端が短くなり、ポリマー分子の末端の動きの自由度を低下でき、共重合体の耐熱性をより向上できる。
【0027】
上記重合開始剤の使用量は、重合反応に使用する単量体成分100質量%に対して、0.001〜15質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.01〜10質量%である。
重合体を得る具体的手法としては特に限定されないが、溶媒中に、全ての成分を一括で仕込んで重合する方法、予め溶媒と成分の一部を仕込んだ反応容器に残りの成分を連続添加あるいは逐次添加して重合する方法等が採用可能である。
【0028】
本発明の重合体の製造方法では、全単量体成分中、マレイミド系単量体10〜80質量%、エステル結合を有さない不飽和塩基酸単量体3〜70質量%、エステル結合を有さない芳香族系単量体16〜80質量%、水酸基を有する単量体1〜50質量%を必須成分とする単量体を、重合開始剤として、上記有機過酸化物(P)を用いて、ラジカル重合させることが好ましい。
【0029】
また、本発明の重合体は、上記有機過酸化物(P)由来の構成単位を含んでいることが好ましい。
【0030】
反応時の圧力についても特に限定はなく、常圧、加圧のいずれの条件下で行ってもよい。重合反応時の温度については、使用する原料モノマーの種類や組成比、使用溶媒の種類にもよるが、通常は20〜150℃の範囲で行うのが好ましく、より好ましくは30〜120℃である。
【0031】
重合反応時には、重合体溶液の最終固形分濃度が10〜70質量%となるように、溶媒と各単量体成分の量を設定することが好ましい。この最終固形分濃度が10質量%未満では、生産性が低くなるため好ましくない。一方、最終固形分濃度が70質量%を越える場合、溶液重合の場合でも重合液の粘度が上昇して重合転化率が上昇しないおそれがある。より好ましい最終固形分濃度は20〜65質量%であり、さらに好ましくは25〜60質量%である。
【0032】
樹脂組成物としての特性、アルカリ現像性、硬化塗膜物性、耐熱性等を考慮すれば、重合体の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの値として、ポリスチレン換算値で1,000〜100,000が好ましい。Mwを1,000以上とすることで、硬化物に充分な耐熱性を付与することができる。一方、Mwを100,000以下とすることで、充分なアルカリ現像性を付与することができる。Mwのより好ましい下限は2,000、さらに好ましい下限は3,000である。また、より好ましい上限は50,000、さらに好ましい上限は30,000である。
【0033】
この範囲の分子量に調整するために、必要であれば、重合反応時に連鎖移動剤を用いてもよいが、用いないことでメルカプタン臭のない樹脂組成物を得ることができる。
使用する場合の使用可能な連鎖移動剤としては、重合に使用する各単量体成分に悪影響を及ぼさないものであればよく、通常、チオール化合物が使用される。具体的には、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール等のアリールメルカプタン;メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチル等のメルカプト基含有脂肪族カルボン酸およびそのエステル等が好ましい物として挙げられる。連鎖移動剤の使用量は特に限定されず、所望の分子量を有する重合体が得られるように適宜調節すればよいが、一般的には、重合に使用される単量体総量に対して、0.1〜15質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0034】
本発明の重合体は、下記式により得られる熱処理後残存率X(質量%)と固形分濃度Y(質量%)との相対値X/Yが0.95以上である。
熱処理後残存率X(質量%)={重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)とアセトン2mlとの混合物を200℃で30分加熱乾燥して得た乾燥混合物の質量(g)}/{重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
固形分濃度Y(質量%)={重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)を真空下160℃で1時間30分加熱乾燥させて得た固形分の質量(g)}/{重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
上記式において、重合体としては上記溶媒を含んだものであってもよい。重合体の加熱乾燥は、アルミカップ等の熱伝導性の高い容器で行うことが好ましい。重合体の加熱乾燥前の質量0.3gについては、精秤した質量が分かれば良く、0.3g前後(例えば0.28〜0.32g)であってもよい。
【0035】
本発明の重合体では、全単量体由来の構成単位100質量%中、マレイミド系単量体由来の構成単位10〜80質量%、エステル結合を有さない不飽和塩基酸単量体由来の構成単位3〜70質量%、エステル結合を有さない芳香族系単量体由来の構成単位16〜80質量%、水酸基を有する単量体由来の構成単位1〜50質量%を必須単位として有するため、エステル結合の含有率を低く抑えられ、優れた耐熱分解性が得られる。
上記相対値X/Yは熱分解が全く生じなかった場合には1となり、上記相対値X/Yが1に近いほど、耐熱分解性が良い。上記相対値X/Yは、好ましくは0.96以上、より好ましくは0.97以上、さらに好ましくは0.98以上である。
【0036】
本発明の重合体は、アルカリ可溶性感光性樹脂として好適に用いることができる。特に、ネガ型のアルカリ可溶性感光性樹脂として好適に用いることができる。
【0037】
本発明では、重合体と後述のラジカル重合性化合物等と共に構成した樹脂組成物を、アルカリ可溶性感光性樹脂組成物として用いることができるが、重合体が有するヒドロキシル基および/またはカルボキシル基に対して、これらの基と反応し得る官能基を有する単量体を反応させて得たラジカル重合性二重結合を有する変性重合体を用いることもできる。
【0038】
ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基と反応し得る官能基としては、イソシアネート基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキサゾリン基、アジリジン基、オキセタニル基等が挙げられ、単量体の具体例としては、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、N−(メタ)アクリロイルアジリジン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0039】
ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基に対する単量体の使用量は、単量体中のこれらと反応し得る官能基が0.9モル以下、より好ましくは0.8モル以下となるように反応させることが好ましい。
反応条件については、公知の手法で触媒、反応温度を適宜選択して行えばよい。
【0040】
このようにして得られたラジカル重合性二重結合を有する変性重合体は、カルボキシル基とラジカル重合性二重結合の両方を有していることから、単独でもアルカリ可溶性感光性樹脂とすることもできる。特に、ネガ型のアルカリ可溶性感光性樹脂として好適に用いることができる。
【0041】
本発明においては、重合体と公知のラジカル重合性化合物とを含有する樹脂組成物とすることで、熱や光反応を経て架橋構造を有する塗膜が得られることとなる。このようなラジカル重合性化合物には、ラジカル重合性樹脂とラジカル重合性モノマーとがある。
【0042】
ラジカル重合性樹脂としては、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が使用できる。これらのラジカル重合性樹脂を用いる場合、本発明の重合体100質量部に対し、ラジカル重合性樹脂を80質量部以下で使用することが好ましい。より好ましい上限値は70質量部、さらに好ましい上限値は60質量部である。
【0043】
ラジカル重合性モノマーとしては、単官能モノマー(ラジカル重合性二重結合が1個)と多官能モノマー(ラジカル重合性二重結合が2個以上)のいずれも使用可能である。ラジカル重合性モノマーは重合に関与するため、得られる硬化物の特性を改善する上に、樹脂組成物の粘度を調整することもできる。ラジカル重合性モノマーを使用する場合の好ましい使用量は、本発明の重合体100質量部に対し、300質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。好ましい下限値としては、重合体100質量部に対し、1質量部、より好ましくは5質量部である。
【0044】
ラジカル重合性モノマーの具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルメチルマレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]マレイミド、N−オクタデセニルマレイミド、N−ドデセニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(1−ヒドロキシフェニル)マレイミド等のN−置換マレイミド基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリアジン、デンドリチックアクリレート等の(メタ)アクリル系単量体;n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の(ヒドロキシ)アルキルビニル(チオ)エーテル;(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のラジカル重合性二重結合を有するビニル(チオ)エーテル;無水マレイン酸等の酸無水物基含有単量体あるいはこれをアルコール類、アミン類、水等により酸無水物基を開環変性した単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル系単量体;アリルアルコール、トリアリルシアヌレート等、ラジカル重合可能な二重結合を1個以上有する化合物が挙げられる。
これらは、用途や要求特性に応じて適宜選択され、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
本発明の重合体とラジカル重合性化合物とを含んでなる樹脂組成物は、ベンゾイルパーオキサイドやクメンハイドロパーオキサイド等の公知の熱重合開始剤を使用することにより熱重合も可能であるが、光重合開始剤を配合した感光性樹脂組成物とすることで、光によるラジカル重合が可能となる。特に、ネガ型の感光性樹脂組成物とすることができる。
【0046】
光重合開始剤としては公知のものが使用でき、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。
【0047】
これらの光重合開始剤は1種または2種以上の混合物として使用され、本発明の重合体とラジカル重合性化合物との総量100質量部に対し、0.5〜30質量部含まれていることが好ましい。光重合開始剤の量が0.5質量部より少ない場合には、光照射時間を増やさなければならなかったり、光照射を行っても重合が起こりにくかったりするため、適切な表面硬度が得られなくなる。なお、光重合開始剤を30質量部を越えて配合しても、多量に使用するメリットは少ない。
【0048】
本発明の組成物には、さらに必要に応じて、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、着色用顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤等の公知の添加剤を添加してもよい。また、各種強化繊維を補強用繊維として用い、繊維強化複合材料とすることができる。
【0049】
本発明の重合体とラジカル重合性化合物とを含んでなる樹脂組成物を画像形成用として使用する場合には、通常、基材に公知の方法で塗布・乾燥し、露光して硬化塗膜を得た後、未露光部分をアルカリ水溶液に溶解させてアルカリ現像を行う。
【0050】
現像に使用可能なアルカリの具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンイミン等の水溶性有機アミン類が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、液状のものを直接基材に塗布する方法以外にも、予めポリエチレンテレフタレート等のフィルムに塗布して乾燥させたドライフィルムの形態で使用することもできる。この場合、ドライフィルムを基材に積層し、露光前または露光後にフィルムを剥離すればよい。
また、印刷製版分野で最近多用されているCTP(Computer To Plate)システム、すなわち、露光時にパターン形成用フィルムを使用せず、デジタル化されたデータによってレーザー光を直接塗膜上に走査・露光して描画する方法を採用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術的範囲に包含される。各例中、特に言及しない限り、部および%は質量基準である。なお、下記実施例において、物性の評価は次のようにして行なった。
【0053】
以下の実施例において、各種物性等は以下のように測定した。
<酸価>
各溶液約0.3gを精秤し、アセトン/水混合溶媒に溶解し、0.1規定のKOH水溶液を滴定液として用いて、自動滴定装置(平沼産業社製)により酸価を測定した。
【0054】
<重量平均分子量(Mw)>
ポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶離液としてHLC−8220GPC(東ソー社製)によるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法にて重量平均分子量を測定した。
【0055】
<耐熱分解性>
各溶液を、アルミカップに0.3g程度入れて精秤し、アセトン約2mlを加え、よく混合した後、200℃の熱風乾燥機に入れた。30分加熱乾燥した後の質量を測定し、200℃で加熱乾燥後の質量を加熱乾燥前の質量で割って熱処理後残存率X(%)を求めた。このX(%)と真空下160℃にて1時間30分加熱乾燥させて得た固形分濃度Y(%)との相対値(X/Y)で評価した。この値が大きいほど、耐熱分解性が高いことになる。
【0056】
<アルカリ溶解性>
表に示す配合にて得た溶液をスピンコートにて銅板上に塗布し、80℃で30分乾燥させた後に室温まで冷却し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液に浸漬して塗膜の溶解性により評価した。
【0057】
<光硬化性>
上記で得たアルカリ溶解性評価用試験板に2000mJの光を照射した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液に浸漬して評価した。
【0058】
<冷熱サイクル試験耐性(TCT耐性)>
光硬化性評価のときと同様に乾燥塗膜形成、光照射を行い、硬化物を得た。これを150℃で1時間加熱して試験基板とした。この試験基板を用いて、−65℃で15分、150℃で15分を1サイクルとして冷熱サイクル試験を行い、200サイクル後の外観を観察し、目視で評価した。
【0059】
合成例1
共重合体の合成
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート112.5部を仕込み、窒素置換した後、85℃に昇温した。他方、滴下槽1にN−フェニルマレイミド30部、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル20部、重合開始剤としてルペロックス11(商品名;アルケマ吉富社製、t−ブチルパーオキシピバレートを70%含有する炭化水素溶液)を10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部を混合した。また、滴下槽2にスチレン30.7部、滴下槽3にアクリル酸19.3部を仕込んだ。反応温度を85℃に保ちながら、滴下槽1、2から3.0時間、滴下槽3から2.5時間かけて滴下を行った。滴下終了後から更に85℃で30分、反応を継続した。その後、反応温度を105℃に昇温し、1.5時間反応を継続して重合体溶液A−1を得た。
得られた重合体溶液A−1について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は11500、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は32.5%、固形分当たりの酸価は145mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.985であった。
【0060】
合成例2
共重合体の合成
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート102.5部を仕込み、窒素置換した後、85℃に昇温した。他方、滴下槽1にN−フェニルマレイミド30部、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル10部、重合開始剤としてルペロックス11を10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート110部を混合した。また、滴下槽2にスチレン40.7部、滴下槽3にアクリル酸19.3部を仕込んだ。反応温度を85℃に保ちながら、滴下槽1、2から3.0時間、滴下槽3から2.5時間かけて滴下を行った。滴下終了後から更に85℃で30分、反応を継続した。その後、反応温度を105℃に昇温し、1.5時間反応を継続して重合体溶液A−2を得た。
得られた重合体溶液A−2について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は10400、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は31.7%、固形分当たりの酸価は151mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.991であった。
【0061】
合成例3
共重合体の合成
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート113.3部を仕込み、窒素置換した後、80℃に昇温した。他方、滴下槽1にN−フェニルマレイミド30部、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル15部、重合開始剤としてルペロックス11を10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート120部を混合した。また、滴下槽2にスチレン30.7部、滴下槽3にアクリル酸19.3部、アクリロニトリル5部を仕込んだ。反応温度を80℃に保ちながら、滴下槽1、2から3.0時間、滴下槽3から2.5時間かけて滴下を行った。滴下終了後から更に80℃で30分、反応を継続した。その後、反応温度を95℃に昇温し、1.5時間反応を継続して重合体溶液A−3を得た。
得られた重合体溶液A−3について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は12300、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は30.3%、固形分当たりの酸価は148mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.997であった。
【0062】
合成例4
共重合体の合成
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート113.3部を仕込み、窒素置換した後、80℃に昇温した。他方、滴下槽1にN−フェニルマレイミド30部、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル15部、重合開始剤としてルペロックス11を10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート120部を混合した。また、滴下槽2にスチレン25.7部、滴下槽3にアクリル酸19.3部、アクリロニトリル10部を仕込んだ。反応温度を80℃に保ちながら、滴下槽1、2から3.0時間、滴下槽3から2.5時間かけて滴下を行った。滴下終了後から更に80℃で30分、反応を継続した。その後、反応温度を95℃に昇温し、1.5時間反応を継続して重合体溶液A−4を得た。
得られた重合体溶液A−4について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は12300、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は30.0%、固形分当たりの酸価は147mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=1.000であった。
【0063】
合成例5
比較用共重合体の合成(水酸基を有する単量体不使用)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート92.5部を仕込み、窒素置換した後、90℃に昇温した。他方、滴下槽1にN−フェニルマレイミド30部、重合開始剤としてルペロックス575(商品名;アルケマ吉富社製、t−アミルパーオキシオクトエート)を8部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート120部を混合した。また、滴下槽2にスチレン50.7部、滴下槽3にアクリル酸19.3部を仕込んだ。反応温度を90℃に保ちながら、滴下槽1、2から3.0時間、滴下槽3から2.5時間かけて滴下を行った。滴下終了後から更に90℃で30分、反応を継続した。その後、反応温度を115℃に昇温し、1.5時間反応を継続して比較用重合体溶液B−1を得た。
得られた重合体溶液B−1について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は9400、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は29.9%、固形分当たりの酸価は148mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.993であった。
【0064】
合成例6
エポキシアクリレートの合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、ビフェニル型エポキシ樹脂(商品名「YX4000」;三菱化学製;エポキシ当量186)186部、メタアクリル酸88部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150部、エステル化触媒としてトリフェニルホスフィン0.8部、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.7部を仕込み、120℃で20時間反応させ、反応物の酸価が6mgKOH/gになったことを確認した。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸76部を加えて、110℃で7時間反応させ、酸価87mgKOH/gのエポキシアクリレートを70%含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0065】
各溶液を用いて表1に示す配合物を調製し、上記した方法でアルカリ溶解性、光硬化性、TCT耐性について評価した。結果を合わせて表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1中の用語は以下の通りである。
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
重合開始剤:イルガキュアー907(BASFジャパン社製光重合開始剤)
【0068】
共重合体A−1〜A−4、比較用共重合体B−1、いずれも同等の耐熱分解性で、中でもアクリロニトリルを共重合したA−3、A−4が高い結果となった。また、実施例1〜4に示すように、共重合体A−1〜A−4とラジカル重合性化合物を用いて得た樹脂組成物は、アルカリ溶解性、光硬化性、TCT耐性、いずれも良好であった。
一方、比較例1に示すように、比較用共重合体B−1を用いた組成物では、アルカリ溶解性、TCT耐性に劣る結果となった。
【0069】
本発明の樹脂組成物は微細加工に必須となるアルカリ可溶性を有していることから、感光性樹脂組成物として活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の樹脂組成物は、優れた耐熱性を有しつつアルカリ可溶性、光硬化性を有し、さらには硬化塗膜とした場合、被塗物への密着性も良好なことから、アルカリ現像可能な画像形成用の感光性樹脂組成物の構成成分として、例えば、印刷製版、カラーフィルターの保護膜、カラーフィルター、ブラックマトリックス等の液晶表示板製造用等の各種の用途に好適に使用できる。