(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコーンゴム組成物を、未精練あるいは精練した織物であって、油剤量が織物重量の5質量%以下である織物にコーティングし、硬化させることによって、該織物の少なくとも一方の表面にシリコーンゴム組成物の硬化物層を形成することを特徴とする、請求項1に記載のシリコーンゴム組成物。
前記ブロックポリイソシアネート組成物の、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、熱解離性ブロック剤が、オキシム系、酸アミド系、アミン系、活性メチレン系およびピラゾール系化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコーンゴム組成物。
成分(H)として、B、Al、Ti、およびZrから選ばれる元素を金属原子としてなる、金属アルコキシド、金属酸塩および金属キレートなる群より選ばれる1種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシリコーンゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係るシリコーンゴム組成物の詳細を説明する。
【0013】
本発明の硬化性シリコーンゴム組成物は、少なくとも1種類以上のシリコーンゴム組成物の組成物キットからなり、これらの組成物キットを混合し、反応により硬化させて、最終的にシリコーンゴム組成物の硬化物が得られるものであれば、いかなるものであってもよい。そのような硬化方式としては
、付加硬化
であり、本発明の好適な硬化方法は、1分子中にケイ素原子に結合するアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンに対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi−H基を付加反応触媒
、紫外線などによって架橋する方
法である。
【0014】
(成分(A))
成分(A)は、硬化性シリコーンゴム組成物を構成する主成分であり、硬化後に優れたゴム物性を得るためのシリコーンゴム組成物の主材である。
本発明の硬化性シリコーンゴム組成物が付加硬化型の場合は、成分(A)は、以下に示す成分(A−1)である。
成分(A−1)は、1分子中にケイ素原子に結合するアルケニル基を、平均して1分子中に1.8個以上含有するオルガノポリシロキサンであって、通常、平均組成式が下記一般式(1)で表される。
R
2aSiO
(4−a)/2 (1)
(ただし、式(1)中、R2 は、互いに同一又は異種の炭素数1〜18の非置換の、または置換された一価炭化水素基である。a は1.7〜2.1である。)
【0015】
ここで、上記R
2で示される一価炭化水素基のうち、少なくとも2個以上はビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基から選ばれ、それ以外の基は、炭素数1〜18の置換または非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基や、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、シアノエチル基などのハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基などから選ばれる。
【0016】
R
2の選択にあたって、2個以上必要なアルケニル基としてはビニル基が好ましく、その他の基としてはメチル基、フェニル基、3,3,3 − トリフルオロプロピル基が好ましい。また、全R
2中の70モル%以上がメチル基であることが、硬化物の物性および経済性などの点で好ましく、通常はメチル基が80モル%以上を有するものが用いられる。
【0017】
成分(A−1)のオルガノポリシロキサンは直鎖状であっても、分岐状であってもよい。分子構造としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基で置換したオルガノポリシロキサン、およびこれらのオルガノポリシロキサンの2種類以上の混合物が例示されるが、入手のしやすさから直鎖状のオルガノポリシロキサンで分子鎖両末端にビニル基を有するものが好ましい。
【0018】
成分(A−2)は、分子鎖の両末端にケイ素原子に結合したヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサン、および/または、分子鎖の両末端にケイ素原子に結合したアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンであって、直鎖状でも分岐状であってもよい。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基などが例示されるが、反応性の観点からメトキシ基が好ましい。ヒドロキシ基とアルコキシ基礎以外は、互いに同一又は異種の炭素数1〜18の非置換の、または置換された一価炭化水素基であることが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基や、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、シアノエチル基などのハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基などから選ばれるが、本発明では、硬化物の物性および経済性などの点から、メチル基が好ましく、通常はメチル基が80モル%以上を有するものが用いられる。
【0019】
成分(A)のオルガノポリシロキサンは当業者に公知の方法で製造され、25℃における粘度は50〜1,000,000mPa・sが好ましく、200〜500,000mPa・sがより好ましく、特に粘度の異なる2種類以上を用いることは、最終的なシリコーンゴム組成物の粘度調整が行いやすくなるため好ましい。なお、粘度は回転粘度計などによって測定することができる。
【0020】
(成分(B))
成分(B)のブロックポリイソシアネート組成物は、シリコーンゴム組成物を、未精練あるいは精練した織物であって、油剤量が織物重量の5質量%以下である織物に強力に接着させるための、本発明の必須成分である。従来のブロックポリイソシアネート化合物は、原料となるポリイソシアネートとブロック剤とを反応させる際に生成するウレタン基や尿素基の、強い分子内水素結合によって粘度が非常に高くなるため、取り扱いにくいという欠点があった。また、分子中のイソシアネート含有率が少ないため、基布と強力に接着させるためには配合量を増やす必要があったが、粘度が高くて取り扱いにくい上、硬化性シリコーンゴム組成物に相溶しないため、分離したり、あるいは分散不良によって十分な接着性が得られなかった。本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートから得られるポリイソシアネートと、熱解離性ブロック剤を含有するブロックポリイソシアネート組成物であって、有機溶剤を実質的に含まず、60℃における粘度が100,000mPa・s以下の低粘度のブロックポリイソシアネート組成物を用いると、硬化性シリコーンゴム組成物への相溶性が従来より大幅に改善し、その結果、ブロックポリイソシアネート組成物の分散が良好となり、シリコーンゴム組成物の接着性が時間経過とともに低下せず、かつ、未精練あるいは精練した織物であって、油剤量が織物重量の5質量%以下である織物であっても、強力に接着できるという驚くべき効果があることを見出した。
【0021】
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートが例示される。これらの中でも工業的入手のしやすさから、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。これらの脂肪族ジイソシアネートは、単独でも、2種以上を併用してもよい。また、脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートなどが例示される。これらの中でも工業的入手のしやすさから、イソホロンジイソシアネートが好ましい。これらの脂環族ジイソシアネートは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0022】
脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートは、どちらかを単独で使用してもよく、脂肪族ジイソシアネートと脂環族ジイソシアネートで2種以上を併用してもよい。
【0023】
ブロック剤は、熱解離性であって本発明の目的に沿うものであれば特に制限はない。ブロック剤はイソシアネート基を保護し、水分等によるイソシアネート基の失活を防ぐとともに、硬化触媒がイソシアネート基により被毒することを防げるため、シリコーン組成物中でも安定化して維持ができる。ここでの「熱解離」性とは、加熱によってイソシアネート基に結合したブロック剤が解離することを意味するが、解離に必要な温度は、ブロック剤の構造によって異なるが、例えば40℃〜300℃である。ブロック剤が解離した後はイソシアネート基はただちに接着作用を働くことができる。
これらは、工業的入手のしやすさから、オキシム系、酸アミド系、アミン系、活性メチレン系およびピラゾール系化合物から選択したものを、単独あるいは複数で使用することが好ましく、メチルエチルケトオキシム、アセトオキシム、メタノール、エタノール、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、ジフェニルアミン、アニリン、アセト酢酸エチル、3−メチルピラゾール、3.5−ジメチルピラゾールなどが例示される。
【0024】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、有機溶剤を実質的に含まないが、「実質的に含まない」とは、ブロックポリイソシアネート組成物中の有機溶剤含有量が5質量%以下であることをいい、さらに環境負荷低減の観点から3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。また、粘度は低粘度ほど相溶性が改善するため好ましく、取り扱いやすさから、60℃で100,000mPa・s以下が好ましく、混合のしやすさから60℃で30,000mPa・s以下のものがより好ましい。粘度測定は、25,600mPa・sまではE型粘度計、それ以上はレオメーター(HAAKE社製RS−1)を用いることができる。また、ローターは粘度に応じて選択することができる。
【0025】
成分(B)の配合量は、成分(A)100質量部に対して0.01質量部〜5質量部が好ましく、0.02質量部〜3質量部がさらに好ましい。0.01部以下では初期から露出するイソシアネート基の割合が大きくなるので、水分等で失活するので接着性の効果が得にくく、5質量部以上では硬化が遅くなってくるため好ましくない。
【0026】
(成分(C))
本発明の硬化触媒は、硬化性シリコーンゴム組成物を硬化するために用いられるものであれば、いずれのものも使用することができる。付加反応に用いる触媒としては、アルケニル基とケイ素原子に結合する水素原子との付加硬化反応を促進する、当業者に公知の触媒である。具体的には、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウムなどの白金族金属、またはこれらを微粒子状の担体材料(例えば、活性炭、酸化アルミニウム、酸化ケイ素)に固定したもの、さらに、白金化合物としては、白金ハロゲン化物、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、ジシクロペンタジエン−白金ジクロライド、シクロオクタジエン−白金ジクロライド、シクロペンタジエン−白金ジクロライドなどが例示される。
【0027】
また、経済的理由により貴金属以外の金属化合物触媒を用いてもよく、具体的には、ヒドロシリル化鉄触媒としては、鉄−カルボニル錯体触媒、シクロペンタジエニル基を配位子として有する鉄触媒、ターピリジン系配位子や、ターピリジン系配位子とビストリメチルシリルメチル基を有する鉄触媒、ビスイミノピリジン配位子を有する鉄触媒、ビスイミノキノリンを配位子を有する鉄触媒、アリール基を配位子として有する鉄触媒、不飽和基を有する環状または非環状のオレフィン基を有する鉄触媒、不飽和基を有する環状または非環状のオレフィニル基を有する鉄触媒である。その他、ヒドロシリル化のコバルト触媒、バナジウム触媒、ルテニウム触媒、イリジウム触媒、サマリウム触媒、ニッケル触媒、マンガン触媒などが例示される。
【0028】
触媒は微粒子固体等にマイクロカプセル化した形で使用することもできる。この場合、触媒を含有し、かつ、オルガノポリシロキサン中に不溶の微粒子固体としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂)である。また、触媒は包接化合物の形で、例えば、シクロデキストリン内で使用することも可能である。
【0029】
触媒配合量は所望する硬化温度や硬化時間に応じた有効量が用いられるが、通常、シリコーンゴム組成物の合計質量に対して、触媒金属元素の濃度として0.5〜1,000ppmの割合であればよく、1〜500ppmの割合であることがより好ましく、さらに好ましくは1〜100ppmの範囲である。配合量が0.5ppm未満の場合は硬化が著しく遅くなったり、もしくは硬化しない場合があり、一方、1,000ppmを超える場合はコストが上昇するため経済的に好ましくない。
【0030】
有機過酸化物による反応に用いる触媒としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、o−クロルベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサンなどが例示され、これらの有機過酸化物は成分(A−1)100質量部あたり0.1〜5質量部の範囲で使用される。
【0031】
縮合反応に用いる触媒としては、ジブチルスズジアセテート、ビス(アセトキシジブチルスズ)オキサイド、ビス(ラウロキシジブチルスズ)オキサイド、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズビスマレイン酸モノブチルエステル、ジオクチルビスマレイン酸モノブチルエステルなどの有機スズ系触媒などが例示され、これらの縮合反応触媒は成分(A−2)100質量部あたり0.1〜20質量部の範囲で使用される。
【0032】
(成分(D))
成分(D)は、ケイ素原子に結合した水素原子を平均して1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、成分(A)と反応して架橋剤として作用するものであり、具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ単位とSiO
4/2単位からなる共重合体などが挙げられる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、ケイ素原子に結合した水素原子が成分(A−1)のアルケニル基の合計に対して0.5〜20モルとなる量が好ましい。0.5モルより少なくなると硬さが著しく低下し、20モルより大きくなると硬くなりすぎて硬化被膜が割れたり、剥がれたりしやすくなるため好ましくない。
【0033】
成分(D)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は1〜100,000mPa・sが好ましく、さらに好ましくは、2〜5,000mPa・sであり、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0034】
特に、伸縮性のある織物に対して、シリコーンゴム組成物の硬化物の伸びを向上させて追従させたい場合には、分子鎖の両末端にのみケイ素原子と結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有させるとよい。これらは、直鎖状が好ましく、成分(A−1)のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの分子鎖長を、硬化反応により比較的容易に増長させることで高い伸びが得られやすくなる。
【0035】
また、伸びおよび接着性の観点から、分子鎖の両末端と、両末端以外に水素原子を含むものを含有してもよく、具体的には、以下の一般式(2)で示されるような直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが例示される。
HR
32SiO-(HR
3SiO)
m-(R
32SiO)
n-SiR
32H (2)
式(2)中、R
3は独立に脂肪族不飽和結合を有さない互いに同一または異種の炭素原子数1〜10の非置換またはハロゲン置換の1価炭化水素基であり、mは1〜50の正数、nは0または1〜150の正数であり、式:t=m/(m+n)で示されるtは、0.01≦t≦1.0を満たすものが用いられる。式(2)中のmは、より好ましくは1〜20であり、nは、より好ましくは10〜100であり、tは0.02≦t≦1.0、さらに好ましくは、tは0.02≦t≦0.2である。mが50以上となると破断時の伸びが上がらず、nが150以上となると硬化物の硬さが下がるため好ましくない。また、tは0.01以下では硬化物の硬さが下がるため好ましくなく、0.1以上では硬化物の破断時の伸びが上がりにくくなるため好ましくない。
【0036】
接着性および耐熱性の観点から、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基を有するもので、分子中に芳香族の基を少なくとも1個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有してもよく、経済的な理由により、芳香族の基はフェニル基であることが好ましい。さらに、これらに、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基を有し、分子中に芳香族の基を含まないオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、水素含有量が5ミリモル/g以上のものを併用すると、接着性がより助長されるため好ましい。
【0037】
(成分(E))
成分(E)のシリカは、補強材としての働きを有する成分であって、親水性または疎水性を有する、ヒュームドシリカ、シリカフューム、沈殿シリカ、焼成シリカ、コロイダルシリカ、ケイ藻土などが例示され、特にそれらは微粉末のものが好ましく、粒子径が100μm以下、かつ、比表面積が50m
2/g以上がより好ましく、150m
2/g以上がより一層好ましい。また、オルガノシラン、オルガノシラザン、オルガノシクロポリシロキサンなどで、予め表面処理されたシリカも好適に用いることができる。成分(E)の添加量は、通常、成分(A)100質量部に対して0.5〜50質量部の範囲であり、好ましくは1〜30質量部の範囲で使用される。これらは単独または複数種類を組み合わせて用いてもよい。配合量が少ないと、所望する引裂き強度などの物性が得られなくなり、多すぎるとシリコーンゴム組成物の流動性が低下して、所望する硬化物の厚みが得られなくなったり、コーティング作業性が低下する。
【0038】
親水性の微粉末シリカを用いる場合には、必要に応じて、その表面を疎水化処理剤で疎水化処理してから用いることが好ましい。疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザンなどのオルガノシラザン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランなどのハロゲン化シランや、これらのハロゲン原子がメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基で置換されたオルガノアルコキシシランなど、あるいはジメチルシリコーンオイルが挙げられるが、好ましくはヘキサメチルジシラザンである。
【0039】
(成分(F))
成分(F)は、シリコーンゴム組成物の硬化物の強度を向上する働きを付与する成分であって、分子中にビニル基を有するシロキサン単位と、式R
1SiO
3/2で示されるTシロキサンユニット(ただし、式中、R
1 は、互いに同一又は異種の炭素数1〜18の非置換の又は置換された一価炭化水素基である。)、および/または、式SiO
4/2で示されるQシロキサンユニットを有するシロキサン単位を含有するオルガノポリシロキサンレジンが好ましい。これらは、成分(A)100質量部に対して0.1〜50質量部を含有することが好ましい。0.1質量部以下では接着性の向上の効果がみられず、50質量部以上では硬化物が硬くなりすぎたり、硬化物表面にタック性が出てブロッキングを起こしやすくなるため好ましくない。
【0040】
(成分(G))
成分(G)の有機ケイ素化合物は、本発明のシリコーンゴム組成物の接着性をさらに向上する働きを付与する成分であって、1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物であればいかなる有機ケイ素化合物でも使用できるが、少なくとも1個のエポキシ基と、少なくともケイ素原子結合のアルコキシ基を2個以上有する有機ケイ素化合物であることが好ましい。このようなエポキシ基としては、グリシドキシプロピル基などのグリシドキシアルキル基、2,3−エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などのエポキシ含有シクロヘキシルアルキル基などの形でケイ素原子に結合していることが好ましく、1分子中のエポキシ基は2〜3個を含むものを用いてもよい。また、ケイ素原子結合アルコキシ基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基などのトリアルキルシリル基、アルキルジアルコキシシリル基などが好ましい。また、前述以外の官能基として、ビニル基などのアルケニル基、(メタ)アクリロキシ基、ヒドロシリル基(SiH基)から選択される官能基を用いてもよい。
【0041】
(成分(H))
成分(H)は、接着促進のための縮合助触媒としての働きを有する成分であって、B、Al、Ti、及びZrから選ばれる元素を金属原子としてなる、金属アルコキシド、金属酸塩及び金属キレートなる群より選ばれる1種以上の化合物である。このような有機金属化合物としては、ボロンイソプロポキシドなどのホウ素系縮合触媒;テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、テトラステアリルチタネーとなどの有機チタンアルコキシド、チタンイソステアレートなどの有機チタンアシレート、ジイソプロポキシ(アセチルアセトネート)チタン、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)チタン、テトラアセチルアセトネートチタン、チタン-1,3−プロパンジオキシビス(エチルアセトアセテート)などの有機チタンキレート化合物、などで示されるチタン系縮合助触媒;テトライソプロピルジルコネート、テトラノルマルブチルジルコネート、テトラターシャリーブチルジルコネート、テトラオクチルジルコネート、テトラステアリルジルコネートなどの有機ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムイソステアレートなどの有機ジルコニウムアシレート、ジルコニウムジイソプロポキシ(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートなどの有機ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムビス(2−エチルヘキサノエート)オキサイド、ジルコニウムアセチルアセトネート(2−エチルヘキサノエート)オキサイドなどのオキソジルコニウム化合物、などで示されるジルコニウム系縮合助触媒;アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリ(sec−ブチレート)などのアルミニウムアルコキシド;ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などのアルミニウムキレート化合物;ヒドロキシアルミニウムビス(2−エチルヘキサノエート)などのアルミニウムアシロキシ化合物、などで示されるアルミニウム系縮合触媒が例示される。
【0042】
(成分(I))
成分(I)は、前記成分(B)のブロックポリイソシアネート組成物の分散をさらに向上させる働きを付与する成分であれば、いかなるものを配合してもよいが、密度が2.0g/cm
3以上の粉体が好ましい。吸油量が多くなるとブロックポリイソシアネート組成物の分散がより向上するため、15ml/100g以上が好ましく、配合のしやすさから平均粒子径は100μm以下が好ましい。具体的には、沈降性硫酸バリウム、タルクなどの粉末が例示される。
【0043】
本発明のシリコーンゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、前記成分(A)〜(I)以外の任意成分として、シリコーンゴムの添加物として従来公知のいかなるものを用いてもよい。このような添加物としては、粘度調整材、補強充填材、非補強充填材、接着付与剤、顔料、染料、硬化抑制剤、耐熱付与剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、気密性向上剤、放射線遮蔽剤、電磁波遮蔽剤、防腐剤、安定剤、有機溶剤、可塑剤、防かび剤、あるいは、1分子中に1個のケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を含有し、他の官能性基は含有しないオルガノポリシロキサンや、ケイ素原子結合水素原子あるいはアルケニル基を含有しない、無官能性のオルガノポリシロキサンやオルガノポリシロキサンレジンなどが例示される。これらは単独または複数で配合してもよい。
【0044】
粘度調整材としては、シリコーンゴム組成物の粘度変化を制御する働きを付与するものであれば、いかなるものであってもよく、具体的には、1分子中に少なくとも1個のシラノール基(即ち、ケイ素原子に結合した水酸基)を含有するシランが好ましい。これらは単独または複数で使用され、具体的には、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリイソプロピルシラノール、トリフェニルシラノール、ジメチルフェニルシラノール、ビニルフェニルメチルシラノール、ジメチルビニルシラノールなどが例示されるが、工業的入手のしやすさから、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリイソプロピルシラノール、トリフェニルシラノールが好ましい。
【0045】
接着性付与剤としては、さらに、エポキシ基を含まないシランカップリング剤を配合してもよい。有機官能基としては、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基から選択されるいずれかひとつ、あるいは複数を含むものが好ましく、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランや3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリロキシシランや、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、ジヒドロ-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5−フランジオンなどのフランジオンなどが例示される。有機官能基はアルキレン基などの他の基を介してケイ素原子に結合していてもよい。これらは、特に成分(H)との併用で、その効果がより助長されるため併用が好ましく、具体的には、メタクリロキシ基含有のオルガノアルコキシシランに対してチタンキレート化合物の併用、および/またはジルコニウムキレート化合物の併用、および/またはアルミニウムキレート化合物の併用や、あるいは、ジヒドロ-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5−フランジオンに対してチタンキレート化合物の併用、および/またはジルコニウムキレート化合物の併用、および/またはアルミニウムキレート化合物の併用などの組合わせが例示される。
【0046】
顔料としては、酸化チタン、アルミナケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、希土類酸化物、酸化クロム、コバルト顔料、群青、セリウムシラノレート、アルミニウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、チタンイエロー、カーボンブラック、フタロシアニンブルーや、および、これらの混合物が例示される。
【0047】
硬化抑制剤としては、硬化抑制効果を持つ化合物として従来公知のものはすべて使用することができ、アセチレン系化合物、ヒドラジン類、トリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物、硫黄含有化合物、アセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含有する化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体、アミノ基を有するシランおよびシリコーン化合物などが例示される。
【0048】
さらに具体的には、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、および3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インのような各種の「エン−イン」システム;3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、および2−フェニル−3−ブチン−2−オールのようなアセチレン性アルコール;周知のジアルキル、ジアルケニル、およびジアルコキシアルキルフマラートおよびマレアートのようなマレアートおよびフマラート;およびシクロビニルシロキサンを含有するものなどが例示される。
【0049】
耐熱付与剤としては、水酸化セリウム、酸化セリウム、酸化鉄、ヒューム二酸化チタンや、および、これらの混合物が例示される。
【0050】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、珪藻土、炭酸カルシウムなどが例示される。
【0051】
気密性向上剤としては、硬化物の通気性を低下させる効果を有するものであればいかなるものでもよく、有機物、無機物を問わない。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレン共重合体や、マイカ、ガラスフレーク、ベーマイト、各種金属箔や金属酸化物などの扁平状の形状を有する粉体、シリコーンゴムパウダーやシリコーンレジンパウダーや、および、これらの混合物が例示される。
【0052】
本発明のシリコーンゴム組成物を製造するには、当業者に公知な方法を用いることができ、その方法は限定されない。例えば、予め成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(E)を、あるいは、成分(A)、成分(D)および成分(E)を攪拌機で混合したり、あるいは2本ロール、ニーダーミキサー、加圧ニーダーミキサーや、ロスミキサーなどの高せん断型の混合機や押出し機、連続式の押出し機などで均一に混練してシリコーンゴムベースを調製した後、これに成分(F)〜成分(I)のいずれかを配合して製造してもよい。また、例えば、予め成分(A)、および成分(C)、あるいは、成分(A)、および成分(D)を、乳化剤を用いて乳化機で製造するという公知の方法を用いてもよい。また、本発明のシリコーンゴム組成物は、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、あるいはホワイトスピリット、あるいはこれらの混合物などの有機溶剤中に保存してもよい。
【0053】
本発明は、特に、自動車などのエアバッグに用いる繊維基布用のシリコーンゴム組成物に関するものであるが、エアバッグとは、エアバッグ基布を袋状に縫合したものであり、主に自動車に装備され、衝突時に袋が膨張して運転者および搭乗者の安全を確保する装置である。エアバッグ基布は通常、ポリアミドやポリエチレンテレフタレートなどの合成繊維を織り込んだ織物であって、本発明のシリコーンゴム組成物はこれらの合成繊維織物上にコーティングされる。具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などのポリアミド繊維織物、アラミド繊維織物、ポリアルキレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維織物、ポリエーテルイミド繊維織物、サルフォン系繊維織物、炭素繊維織物、あるいはこれらの混合物が用いられる。シリコーンゴム組成物は、10〜5,000デシテックスの太さの糸を使用する、平織り、袋状、ホース状などの形状を有する織物にコーティングされるが、加工性や経済性の観点から50〜1,000デシテックスの糸を用いた織物が好ましい。
【0054】
織物は未精練でも、精練のいずれの状態でもよいが、未精練の場合は、直接コ−ティングを行うことで精練工程を省略できる。油剤の種類や成分は特に制限されないが、製造のしやすさから油剤量は、織物重量の5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0055】
本発明のシリコーンゴム組成物は、一般的に用いられている方法によってコーティングを実施することができ、例えば、浸漬およびパジング、刷毛塗り、流し塗り、吹付け、ローラー塗工、グラビア塗工、コンマコーター、捺染、ナイフ塗工、マイヤーバー、エアブラシ、スロップパジング、ロール塗工などが用いられ、状況に応じてこれら単独あるいは組合わせてコーティングが実施される。また、コーティングは必ずしも一度で実施されなくともよく、目的とするコーティング状態が得られるまで複数回実施してもよい。従って、コーティング後の硬化膜は必ずしも一層でなくてもよく、複数の硬化膜から構成されていてもよい。さらにコーティング後の硬化膜表面には、例えば、防汚や、帯電防止や、すべり性の付与やブロッキング防止などの効果を付与させる目的で、シリコーンゴム組成物に目的の成分を追加したり、コーティングあるいは硬化後に表面を加工をしたり、あるいは、そのような機能を有する硬化層をさらに形成してもよい。
【0056】
コーティング実施後の乾燥および硬化は、通常、熱空気、赤外線、近赤外線、ガスバーナー、熱交換器もしくは他のエネルギー源によって加熱することができる加熱装置中で行われる。なお、常用される加熱装置の他に、目的を達成することが可能な装置であれば、いかなるものも用いることができ、例えば、加熱ロールカレンダー、加熱可能なはり合わせプレス、加熱可能な段プレスまたは高温接触ロール、熱風乾燥機、マイクロ波乾燥機が例示される。
【0057】
硬化時には、硬化被膜への気泡形成を回避するために、加熱装置に温度の異なる複数の温度帯域を設けることが好ましく、例えば、第1の温度帯域中では60〜150℃、好ましくは80〜130℃、さらに好ましくは90〜120℃の温度で予備乾燥を行い、続く第2以降の温度帯域中では300℃以下の温度で硬化を実施することができるが、多くの繊維は加工上の耐熱制限があるため、250℃以下であることが好ましい。
【0058】
なお、工程上複数の温度帯域を設けることが困難な場合でも、硬化をさせようとする基材が少なくとも170℃以上の温度に一度でも到達するように予備乾燥することが好ましい。また、硬化に必要とする滞留時間はコーティングの重量、織物の熱伝導性およびコーティングされた織物の熱伝導などに依存して変化するが、0.5〜30分間程度であることが好ましく、室温であれば10分〜数時間放置で実施してもよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、各例における配合部数は、いずれも質量部を示す。本実施例および比較例の結果を表1、表2に示す。
【0060】
<試験基布>
基布は470デシテックスの太さの糸で構成されるポリエステル製の平織布で、精練により油剤量を織物重量の0.04質量%とした基布、および未精練で油剤量が織物重量の1.2質量%である2種類の基布を使用した。
【0061】
<コーティング方法>
接着性の時間経過を確認するため、処方後のシリコーンゴム組成物は、室温で5時間以上放置してからコーティングを行った。コーティングはナイフコーターを用いて行い、硬化は温度190℃、硬化時間45秒で行った。
【0062】
<コーティング物の接着試験方法>
硬化物の接着性は揉み試験で確認した。縦10cm×横5cmのコーティング布を用意して、硬化膜上に10Nの荷重をかけて測定を実施した。試験装置はスクラブテスタINC−1507−A(株式会社 井元製作所製)を使用し、試験はISO 5981に準拠して行った。
測定は、コーティング布を室温で24時間放置した後に行い、接着性の判定は、揉み回数が1000回の時点で、ピンホールや剥離が認められなかったものを合格とした。
【0063】
<実施例1>
成分(A−1)として、粘度約20,000mPa・sを有する両末端ビニル基含有のジメチルポリシロキサン60部に、粘度約100,000mPa・sを有する両末端ビニル基含有のジメチルポリシロキサン8部と、粘度約1,000mPa・sを有する両末端ビニル基含有のジメチルポリシロキサン7.8部と、粘度約10mPa・sを有する両末端と分子内にビニル基を含有するジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量3ミリモル/g)0.5部とを混合したものに、成分(B)として、60℃の粘度が20,000mPa・sであるデュラネート X2252(旭化成株式会社製)0.3部と、成分(C)として、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金含有量として1%を含有するジメチルポリシロキサン溶液0.3部とを加え、攪拌混合機でよく混合してゴムベースを調整した。
【0064】
前記のゴムベース77部に、成分(E)として、BET法で測定した比表面積300m
2/gであるヒュームドシリカ5.9部と、硬化抑制剤として、エチニルシクロヘキサノール0.1部を加えて攪拌混合機でよく混合した。さらに、成分(D)として、25℃における粘度が30mPa・sである両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量1.6%)0.6部と、25℃における粘度が70mPa・sである両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.8%)3部と、25℃における粘度が40mPa・sである両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.8%)0.2部と、25℃における粘度が50mPa・sである分子鎖の両末端にのみケイ素原子と結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.05%)5部と、トリメチルシラノール0.3部を加え、攪拌混合機でよく混合した。
【0065】
さらに、成分(G)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.8部と、成分(H)として、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)チタン0.5部とを加え、攪拌混合機でよく混合して実施例1のシリコーンゴム組成物を作製した。このシリコーンゴム組成物中の全Si−H基と全ビニル基のモル比は5.9であった。これを、室温で5時間放置してから、精練したポリエステル布に約36g/m
2でコーティングして硬化させ、室温で24時間放置後に接着試験を行った。
【0066】
実施例1のコーティング布は、2,000回でピンホールが数点見られたが、1,800回まではピンホールや剥離はなく、良好な接着性を示し、接着性の判定は合格であった。
【0067】
<実施例2>
室温で5時間放置した実施例1のシリコーンゴム組成物を、未精練のポリエステル布に36g/m
2でコーティングし、実施例1と同様にコーティング布を作製した。実施例2では油剤量が増えたにもかかわらず、1,800回までピンホールや剥離はなく、接着性の判定は合格であった。
【0068】
<実施例3>
実施例1のシリコーンゴム組成物の処方に、さらに、成分(F)として、分子中にビニル基単位とQシロキサンユニットを有するオルガノポリシロキサンレジン6部と、成分(I)として、沈降性硫酸バリウム粉末(密度4.0g/cm
3、吸油量18ml/100g、平均粒子径0.3μm)0.3部加え、攪拌混合機でよく混合し、実施例3のシリコーンゴム組成物を作製した。これを、室温で5時間放置してから未精練のポリエステル布に約35g/m
2でコーティングし、硬化させてコーティング布を作製した。実施例3ではさらに接着性が向上し、2,000回でもピンホールや剥離はみられず、接着性の判定は合格であった。
【0069】
<比較例1>
実施例3の処方の成分(B)であるブロックポリイソシアネート組成物を含まないものを作製し、これを比較例1とした。そして、室温で5時間放置してから精練したポリエステル布に35g/m
2でコーティングし、実施例1と同様にコーティング布を作製した。比較例1では、600回までピンホールや剥離はみられなかったが、800回で剥離が認められたため試験を中止した。従って、接着性の判定は不合格であった。
【0070】
<比較例2>
室温で5時間放置した比較例1で作製した調合液を、未精練のポリエステル布に35g/m
2でコーティングし、実施例1と同様にコーティング布を作製した。比較例2では、200回までピンホールや剥離は見られなかったが、400回で剥離が認められたため試験を中止した。接着性の判定は不合格であった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】