(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続用電熱線は外部から電波が照射されると誘導電流を発生させ、前記ICタグに前記誘導電流を供給し、前記ICタグの読み出し及び書き込みを可能に構成されている、
請求項1又は2に記載の電気融着継手。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレン製の管等の熱可塑性樹脂管は、耐震性、柔軟性、耐蝕性を有することから、ガス管、用水管、排水管等に広く使用されている。
このような樹脂管同士を接続する際には、電気融着継手(以下、「EF継手」とする)が多用されている。具体的には、EF継手は、熱可塑性樹脂製の継手本体と、継手本体の内周面側の融着界面内に埋設された電熱線等の発熱体と、発熱体に接続され且つ継手本体の外周面に立設された端子ピンを有する端子部と、を備えている。そして、EF継手の継手本体の両端に設けられた受け口に、接続対象の樹脂管をそれぞれ挿入した状態で、端子ピンに接続した電源コードを通じて通電して発熱体を発熱させる。これによって発熱体周囲の受け口の内周面の樹脂及び各樹脂管の外周面表層を溶融させて、電気融着継手と両樹脂管とを接続し、一体的な管路を形成している。
【0003】
EF継手には、融着時の条件や継手本体の内周面側と樹脂管の外周面側が適正に融着したこと等を知らせるためのバーコードやタグが設けられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電気溶着装置の読み取り機によって読み取られる溶着条件データを表示する情報コード表示部材が継手本体に一体に設けられた合成樹脂製の溶着用継手において、前記情報コード表示部材が、前記継手本体に固定される固定部と、情報コードが表示される表示部と、前記固定部と表示部との間に介在し、表示部を継手本体に非固定状態に保持する連結部とを備えている溶着用継手(EF継手)が開示されている。この溶着用継手は、端子に電気溶着装置のコネクタを接続するとともに、バーコードリーダによって表示部のバーコードを読み取り、コネクタ及び端子を介して電気溶着装置からバーコードの情報どおりの溶着条件で電気を供給されることで、継手に接続される合成樹脂管と溶着される。
【0005】
また、特許文献2には、非接触方式のリーダライタで読み書き可能なIDタグに埋設管路に関する情報を書き込んだ状態で管路と共に埋設するとともに、前記リーダライタを設置した探知装置に、位置情報を得るためのGPSアンテナを含むGPS受信機と、IDタグから読み取った埋設管路に関する管路情報及び前記GPS受信機から得た位置情報を表示可能な端末とを設けた埋設管路の認識システムが開示されている。この埋設管路の認識システムにおいて、IDタグは、所謂無線式非接触型ID(RFID)タグと呼ばれるものであって、各種情報を記憶するICモジュールと送受信用のアンテナ(コイル)とを備え、電池等の電源が不要である。そして、IDタグは、埋設管路に長期間取付けておいても、リーダライタを近付けるだけで、埋設管路内を流れる流体の種類、埋設管路を形成する配管の種類、埋設管路の敷設時期、埋設管路の深度等のデータの送受信を可能とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、EF継手に設けられるバーコードやタグ等には、融着前に読み取られる情報(例えば、EF継手の融着条件、EF継手の使用条件(水道用、下水用、ガス用等)等)と、通電時や融着開始時に読み取られる情報(例えば、冷却時間、通電・融着履歴の有無等)の両方共が包括可能とされていることが望ましい。しかしながら、特許文献1に開示されている溶着用継手では、合成樹脂管と溶着用継手との融着時に必要な条件が継手の外周面に取り付けられたバーコードを専用の融着機に読み取らせるため、バーコードが読み取れない場合があり、融着条件等のデータは融着機にしか格納されない。また、特許文献2に開示されている埋設管路の認識システムでは、RFIDは配管とEF継手との融着後に貼付されるため、融着前や融着開始時に読み取る情報をRFIDに記録しておく意義が低くなる。即ち、従来のEF継手やEF継手を含む接続構造は、融着前から格納されている情報と融着後に書き込まれる情報とを両方とも記録し得るタグを備えていなかったという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、融着前から格納されている情報と融着後に書き込まれる情報とを両方とも容易に読み取り可能なEF継手及びEF継手の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るEF継手は、複数の樹脂管を加熱により融着することで接続する電気融着継手であって、複数の受け口を有する樹脂製の継手本体と、前記受け口に嵌入された前記樹脂管に当接する前記受け口の融着部に埋設された加温用電熱線と、
前記加温用電熱線同士を接続する接続用電熱線と、隣り合う前記融着部同士の間の前記継手本体に埋没され
て前記接続用電熱線に電気的に接続され、アンテナ機能を形成したICタグと、を備え
、前記ICタグが前記接続用電熱線の中央部に設けられ、前記ICタグのアンテナとして機能する前記接続用電熱線および前記加温用電熱線の長さが前記ICタグの左右で対称となる。
ここで、「アンテナ機能を形成した」とは、ICタグ自体はアンテナを備えずに例えば接続用電熱線をアンテナとして作動し得る状態と、ICタグ自体がアンテナを具備している状態と、を両方含んでいる。
【0010】
上述の構成によれば、アンテナ機能を形成したICタグが隣り合う前記融着部同士の間の位置、すなわち加温用電熱線によって高温になる箇所でない非高温箇所に設けられていることで、融着によるICタグ内の記録の欠落や消去、ICタグの不良化等が発生し難くなる。これにより、ICタグから、融着前から格納されている情報と融着後に書き込まれる情報とを両方とも容易に読み取り可能となる。
【0012】
上述の構成によれば、金属等を含んで導電性を有する加温用電熱線及び接続用電熱線に対してEF継手の外部から電波が照射されると、これらの電熱線から誘導電流が発生し、接続用電熱線と電気的に接続されているICタグに誘導電流が流れ、この電熱線がICタグのアンテナとして機能する。これにより、ICタグは、通信及び内部情報の読み出し・書き出しに必要な電力を得る。
また、ICタグが電気的に接続可能な接続用電熱線が非高温箇所であるから、前述のようにICタグの不具合を防止することができる。
さらに、本発明では、接続用電熱線が加温用電熱線同士の間に配置されているので、接続用電熱線に対するICタグの接続部分が加温用電熱線及び接続用電熱線の電熱線の長さ方向の略中間に位置させることができ、アンテナとして機能する電熱線の長さ(アンテナ長)を長くすることができる。
【0013】
上述のEF継手において、前記ICタグは、絶縁体材料を介して前記接続用電熱線に電気的に接続されていてもよい。
この構成によれば、接続用電熱線に対してEF継手の外部から電波が照射されると、加温用電熱線及び接続用電熱線から誘導電流が発生し、絶縁体材料を介してICタグに誘導電流が伝わる。従って、上述のようにICタグは、通信及び内部情報の読み出し・書き出しに必要な電力を得る。また、絶縁体材料を介することで、通電された接続用電熱線からの熱はICタグに伝わり難くなり、ICタグ内の記録の欠落や消去、ICタグの不良化等の発生をより良好に防ぐことができ、接続用電熱線からの熱量が比較的大きい場合等に効果的である。
上述のEF継手において、前記接続用電熱線は外部から電波が照射されると誘導電流を発生させ、前記ICタグに前記誘導電流を供給し、前記ICタグの読み出し及び書き込みを可能に構成されてもよい。
【0014】
本発明に係るEF継手の製造方法は、
上述の電気融着継手の製造方法であって、コア金型に電熱線を巻く工程と、隣り合う前記融着部同士の間にアンテナ機能を形成した状態の
前記ICタグを配置する工程と、前記電熱線が巻かれた前記コア金型に外側から隙間をあけて樹脂成型用金型を嵌める工程と、前記樹脂成型用金型の内側に樹脂を射出し、隣り合う前記融着部同士の間の前記樹脂に前記ICタグを埋没させる工程と、を有する。
【0015】
上述の構成によれば、EF継手を射出成形によって製造する際に、ICタグを融着部同士の間、即ち非高温箇所に配置することができる。従って、上述のように融着前から格納されている情報と融着後に書き込まれる情報がICタグから容易に読み取り可能なEF継手を製造することができる。
【0016】
上述のEF継手の製造方法は、前記電熱線のうち前記接続用電熱線に対して前記ICタグを電気的に接続した状態で配置する工程をさらに有
してもよい。
【0017】
上述の構成によれば、ICタグを接続用電熱線に対して電気的に接続した状態で配置することで、ICタグがアンテナを有していない場合であっても、電熱線から発生する誘導電流をICタグに供給し、上述のようにICタグの通信及び内部情報の読み出し・書き出しを可能とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るEF継手及びEF継手の製造方法によれば、融着前や融着時に読み取るべき情報と融着後に読み取るべき情報とを両方とも容易に読み取ることができる。また、従来融着機にのみ残っていた融着履歴や通着に関する情報をEF継手に残すことができることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るEF継手及びEF継手の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のEF継手1は、少なくとも複数(
図1から
図5では二本)の樹脂管5,5を加熱により融着することで接続するEF継手であって、複数(
図1から
図5では二つ)の受け口7,7を有する樹脂製の継手本体2と、各受け口7に嵌入された樹脂管5に当接する受け口7の融着部Mに埋設された加温用電熱線3hと、加温用電熱線3h同士を接続する接続用電熱線3xと、接続用電熱線3xに電気的に接続されたICタグ20と、を備えている。
EF継手1は、ソケットであり、上述の構成に加えて、樹脂管5,5との融着を行うためのターミナル部10と、インジケータ13と、を備えている。
【0022】
継手本体2は、接続対象の樹脂管5,5を内嵌させるための円筒状の部材である。受け口7,7同士の間には、樹脂管5,5同士の衝突及び破損を防止するためのストッパー9が設けられている。ストッパー9は、継手本体2の内周面2aから内側に突設する。
【0023】
継手本体2の内周面2a側には、ニクロム線等の電熱線3が埋設されている。なお、電熱線3は、金属を含み、EF継手1の外部から電波が照射された際に誘導電流を発生可能であれば、特に限定されない。
図1及び
図2に示すように、電熱線3は、継手本体2の内周面2aに接するように、継手本体2の軸線方向に沿って螺旋状に且つ連続して巻き回されている。そして、電熱線3は、一方の受け口7の主に中央部で密に巻き回され、そこから受け口7,7同士の接続部分で疎に巻き渡され、他方の受け口7の主に中央部で再び密に巻き回されている。
【0024】
融着部Mは、電熱線3が密に巻き回され、電熱線3に通電が行われた際に周囲よりも高温になり得る部分である。
即ち、加温用電熱線3hは、受け口7の主に中央部で密に巻き回された電熱線3で構成されており、加温用電熱線3hに通電された際に融着部Mを形成する。
接続用電熱線3xは、加温用電熱線3h同士を接続し、加温用電熱線3hよりも疎に巻き回された電熱線3で構成されている。なお、
図1及び
図2では、接続用電熱線3xが継手本体2の軸線方向に沿って螺旋状に設けられた例を示しているが、直線状に設けられていても構わない。
【0025】
ICタグ20としてアンテナが内蔵されていないものを採用する場合や、通信距離が著しく短いアンテナのみ内蔵するものの場合には、接続用電熱線3xに対して外周面側から当接するようにして電気的又は非電気的に接続し、継手本体2に埋設されている。ICタグ20は、電気的又は非電気的に接続した接続用電熱線3xと接続用電熱線3xと連続した加温用電熱線3hをアンテナとして、接続用電熱線3xからの誘導電流によってEF継手1の外部からの通信及び種々の情報の読み出し・書き込みを可能とするタグである。
ICタグ20を設ける位置としては、接続用電熱線3xに当接する位置であれば特に限定されないが、接続用電熱線3xの中央部に設けることで、ICタグ20のアンテナとして機能する接続用電熱線3xおよび加温用電熱線3hの長さがICタグ20の左右で対称となり、接続用電熱線3xおよび加温用電熱線3hが、ICタグ20を中心とした左右対称なダイポールアンテナとして機能する。
また、ICタグ20を、ICタグ20からターミナルピン4までの長さが通信波長λの1/4長さとなる位置で接続用電熱線3xと当接させても良い。
なお、ICタグ20として外部アンテナを有するものや、内部にアンテナ機能を有しているものの場合には、接続用電熱線3x付近の継手本体に埋設され、リーダライタR等を用いて非接触で情報を読み出し可能に構成されていれば特に限定されないが、アンテナが継手本体の管軸と直交する方向(継手本体の周方向)になるよう、継手本体に埋設することが好ましい。
【0026】
具体的に、融着前からICタグ20に予め格納されている情報としては、樹脂管5,5同士及びEF継手1の融着条件、製造年月日、製造場所、製造者、樹脂管5,5同士及びEF継手1の接続構造の用途(例えば、上下水道用、ガス用、レンタル用等)、EF継手1の種類(例えば、ソケット、チーズ、エルボ等)が挙げられるが、これらの情報に限定されない。そして、このような予め格納されている情報は、融着前に読み取ることが可能である。
また、融着後にICタグ20に書き込まれる情報としては、例えば配管施工に関する情報(例えば、位置情報、配管図面、設置年月日、施工者、使用した融着機の種類や型番、通電・融着履歴)等が挙げられるが、これらの情報に限定されない。
【0027】
継手本体2の外周面2bには、融着用のコントローラのケーブルコネクタを取り付けて電熱線3に電流を流すためのターミナル部10が形成されている。ターミナル部10は、継手本体2の軸線O1方向における両端部側の外周面2bにそれぞれ設けられている。
ターミナル部10は、ターミナルピン4と、コネクタ取付部12と、を備えている。
ターミナルピン4は、継手本体2の外周面2bから軸線O1直交方向において径方向外側に突設されている。ターミナルピン4には、電熱線3の端部が接続されている。
コネクタ取付部12は、ターミナルピン4を中心として、ターミナルピン4を囲繞するように、継手本体2の外周面2bから軸線O1直交方向において径方向外側に突設されている。また、コネクタ取付部12は、円筒状に形成され、ターミナルピン4と互いの中心軸線が同軸上に配されるように、継手本体2の外周面2bに一体形成されている。
【0028】
図1に示すように、継手本体2の外周面2bには、外周面2bから内周面2a側(即ち、軸線O1直交方向の径方向内側)に凹部8が凹設されている。凹部8には、凹部8の底面8aから継手本体2の外周面2b側に突設する略円柱棒状のインジケータ13が形成されている(
図2参照)。
インジケータ13は、EF継手1を用いて樹脂管5,5同士を接合する接合作業時に、継手本体2の内周面2a側と樹脂管5,5の外周面側が適正に融着したことを知らせるために用いられる。
【0029】
継手本体2及び樹脂管5の材質としては、ポリブテン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。
【0030】
次いで、本実施形態のEF継手1を用いた樹脂管5,5の接続方法について説明する。
EF継手1を用いて、樹脂管5,5同士を接合する際には、先ず樹脂管5,5のそれぞれの端部を継手本体2の受け口に嵌合させる。
【0031】
図1に示すように、リーダライタRによって電熱線3に電波を照射し、接続用電熱線3xからの誘導電流でICタグ20に電力供給し、EF継手1の使用条件(例えば、水道用、下水用、ガス用等)を確認する。
【0032】
次に、一対のターミナルピン4に不図示のコントローラ(通電装置)のケーブルコネクタCを取り付け、電熱線3に通電する。この際にも接続用電熱線3xから誘導電流を発生させ、ICタグ20のアンテナとして機能させ、通信及び読み出し・書き込み可能な状態としてもよい。
【0033】
電熱線3への通電により、加温用電熱線3hに通電され、加温用電熱線3hが発熱することで加温され、
図3に示すように、融着部Mがその周囲よりも高温になり、融着部Mの樹脂が溶融する。さらに電熱線3への通電が続くことにより、
図4に示すように、融着部Mの温度上昇が樹脂管5のうち融着部Mに接する部分にも及び、その部分の樹脂も溶融する。一方、接続用電熱線3x及びICタグ20の温度は、融着部Mより低い状態であるため、ICタグ20に既に記録されている情報は保護される。
【0034】
このとき、融着に使用する不図示の融着機にリーダライタRと同様の機能をもたせることで、この融着機とICタグ20とを通信させ、この融着機に融着条件を読み込ませる。この際、融着に関する注意事項として、例えば必要な冷却時間の表示や「融着完了後に通信して下さい」等の表示をさせる、或いは以前に通電した履歴や融着した履歴があるため、融着を行えない、又は使用できない等の表示させるように通信してもよい。
基本的に、EF継手1は一度通電されると、熱を受けた樹脂の状態が変化し、接合強度が通電前と変化するため、通電不可となる。そこて、通信したことを履歴としてICタグ20に記録する。これにより、融着の途中でケーブルコネクタCがターミナルピン4から外れた場合や、電力不足等の理由で融着が止まった場合では、EF継手1を後に誤って再使用しようとした際に、その融着開始時に前述のように融着履歴が有る旨を表示させ、EF継手1の再使用を防ぐことができる。
【0035】
図5に示すように融着部Mと融着部Mに接する樹脂管5とが融合して一体化がなされたら、電熱線3への通電を止める。上述の工程により、EF継手1を用いて樹脂管5,5が接続される。
この際、融着機とICタグ20とを通信させ、ICタグ20に融着が正常に完了したことを書き込んでもよい。融着完了時に、融着機とICタグ20とが互いに通信するように融着機に表示させてもよい。
【0036】
なお、上述のいずれかの工程時に、施工情報(例えば、施工者、施工日、位置情報等)をICタグ20に書き込んでもよい。
【0037】
ICタグ20との通信に使用する通信周波数としては、HF帯(主に13.56MHz)や、マイクロ波帯(主に2.45GHz)などを使用できるが、特にUHF帯(主に860MHz〜960MHz)であれば、配管中の水の影響を受けにくく、アンテナ長さにもよるが数mの通信距離が得られるので、数m離れた場所、例えば、土中や道路の数m下に埋設されたEF継手1や、天井に配管されたEF継手1に対し、地表からでもICタグ20の情報の読み出し及びICタグ20への情報の書き込み等が可能になる。
【0038】
次いで、本発明に係るEF継手の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態のEF継手の製造方法は、2箇所の受け口7,7を有する樹脂製の継手本体2と、受け口7,7の融着部Mに埋設された加温用電熱線3hと、加温用電熱線3h,3h同士を接続する接続用電熱線3xと、を備え、複数の樹脂管5,5を加熱により融着することで接続するEF継手1の製造方法であって、コア金型32に電熱線3を巻く工程と、電熱線3のうち接続用電熱線3xに対してICタグ20を電気的に接続した状態で配置する工程と、電熱線3が巻かれたコア金型32に外側から隙間Sをあけて樹脂成型用金型34を嵌める工程と、樹脂成型用金型34の内側に樹脂を射出する工程と、を有する。
【0039】
具体的には、コア金型32に電熱線3を巻く工程において、
図6(a)に示すように、軸線方向に沿って分離可能なコア金型32を用いる。続いて、コア金型32の軸線方向に沿って、電熱線3を螺旋状に且つ連続して巻き回す。この際、
図6(b)に示すように、両受け口7,7において加温用電熱線3hが巻き回され、受け口7,7同士の接続部分において接続用電熱線3xが巻き回される。
【0040】
次に、接続用電熱線3xに対してICタグ20を電気的に接続した状態で配置し、
図6(c),(d)に示すように、電熱線3が巻かれたコア金型32に、射出成型用の樹脂を注入するためのゲート34gが形成された樹脂成型用金型34を外側から隙間Sをあけて嵌める。
続いて、樹脂成型用金型34の内側に樹脂Pを射出し、
図6(e)に示すように、射出成形完了後に樹脂成型用金型34を外す。さらに、
図6(f)に示すように、コア金型32を軸線方向に沿って互いに離間させることで、樹脂Pの射出成形体からコア金型32を外す。その後、
図6(g)に示すように、樹脂Pの射出成形体からゲート34gに射出された樹脂Pを切除し、
図6(h)に示すように、EF継手1を得る。なお、
図6(e)から
図6(h)までの図は、
図6(a)から
図6(d)までの図に対して紙面上で左右反転した状態で示している。
【0041】
以上説明した本実施形態のEF継手1によれば、ICタグ20が融着部M同士の間、つまり非高温箇所に設けられていることで、融着によるICタグ20の記録の欠落や消去、ICタグ20の動作不良等が発生し難くなる。従って、例えば、非接触式のリーダライタR等を用いて融着前に通信すれば、EF継手1の融着条件や使用条件を確認することができる。通電・融着開始時には、融着機に通信して融着条件を読み込ませることもでき、融着に関する注意事項を融着機に表示させる、或いは融着履歴を書き込むこともできる。融着完了時には、融着が正常に完了したことを書き込むこともできる。その他、ICタグ20には、施工情報等を書き込むこともできる。
【0042】
また、本実施形態のEF継手1によれば、導電性を有する加温用電熱線3h及び接続用電熱線3xに対してEF継手1の外部から電波を照射すると、これらの電熱線から誘導電流が発生し、接続用電熱線と電気的に接続されているICタグに誘導電流を供給することができる。これにより、接続用電熱線3xをアンテナとして、ICタグ20を容易に、通信及び内部情報の読み出し・書き出しが可能な状態にすることができる。
【0043】
従って、本実施形態のEF継手1によれば、少なくとも融着前や通電・融着開始時に読み取るべき情報と融着後に読み取るべき情報の両方を容易に読み取ることができる。これにより、樹脂管5とEF継手1との接続構造の施工等の作業効率を向上させることもできる。
【0044】
また、本実施形態のEF継手1の製造方法によれば、EF継手1を射出成形によって製造する際に、ICタグ20を非高温箇所(即ち、本実施形態では接続用電熱線3x上)に配置し、ICタグ20を接続用電熱線3xに対して電気的に接続することができる。従って、上述のように融着前や融着時に読み取るべき情報及び融着後に読み取るべき情報をICタグ20からリーダライタR等を用いて容易に読み取り可能なEF継手1を製造し、高温によるICタグ20の破損や内部情報の消失を防止することができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0046】
例えば、ICタグ20は、接続用電熱線3xに電気的に接続され、継手本体2内の融着部M以外の部分に埋設されれば、接続用電熱線3xに必ず当接している必要はなく、導電性を有する接着剤によって接続用電熱線3xに接着されていてもよく、別の不図示の電熱線によって接続用電熱線3xに接続されていてもよい。
【0047】
また、ICタグ20は、不図示の絶縁体材料を介して接続用電熱線3xに電気的に接続されていてもよい。即ち、ICタグ20は、絶縁体材料を介して接続用電熱線3xからの誘導電流を受け取り可能に配置されていても構わない。このような絶縁体材料としては、例えばポリブテン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
また、ICタグ20がアンテナを内蔵している場合や、ICタグ20が接続用電熱線3xに対して非接触状態において容量結合等で接続可能である場合には、ICタグ20と接続用電熱線3xとは電気的に接続していなくてもよい。
【0049】
例えば、アンテナを内蔵しているICタグ20の場合には、リーダライタR等を用いて例えば地表等のようにEF継手1の外方から、非接触で情報を読み出し可能に構成される。このようなICタグ20としては、例えば、所謂RFID素子等が挙げられる。
【0050】
また、アンテナが内蔵されていない上述した実施形態とは別のICタグ20としては、例えば特許第4674638号公報等に記載されている電磁結合モジュールが挙げられる。この電磁結合モジュールは、無線ICチップと、該無線ICチップを搭載し、所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路基板と、を備えている。この電磁結合モジュールにおける通信方法については、例えば、上述の特許第4674638号公報に記載されている方法が挙げられる。
【0051】
また、例えば、上述の実施形態では、EF継手1として継手本体2がソケットであるものとして説明したが、継手本体2の種類や形状は複数の受け口7を有していれば、特に限定されず、例えばエルボ、レデューサ、チーズ等であってもよい。
【0052】
さらに、ソケットやエルボのように二つの受け口7,7を有し、各受け口にコネクタ取付部12(所謂、端子)を一つずつ有する継手本体2を用いる場合は、接続用電熱線3xが設けられるので、
図1に示すように構成すればよい。但し、各受け口に二つのコネクタ取付部を有する場合や例えば三つの受け口を有する継手本体を用いる場合は、各受け口で電熱線への通電が完結し、接続用電熱線3xを設けないことが多い。そのような場合には、電熱線にアンテナの役割を持たせられないので、ICタグ20には、上述のようにアンテナを内蔵するものを用いるのが好適である。
【0053】
さらに、上述した実施形態では、二箇所の融着部(加温用電熱線3hが配置される位置)同士の間の位置(接続用電熱線3xの位置)に一つのICタグ20を設けた構成、即ち一つのEF継手1に一つのICタグ20が設けられているが、一つのEF継手に複数のICタグを設けるようにしても良い。例えば3箇所の融着部を有するEF継手の場合には、隣り合う融着部同士の間にICタグを配置することが可能であり、一つのEF継手に二つのICタグが設けられることになる。
【0054】
さらに、継手本体2の外周面に融着情報を記録したバーコードを貼付しておいても良い。これにより、施工現場によっては、非接触方式のリーダライタ機能を有しない旧式のコントローラしか用意していない場合であっても融着施工を行うことができる。
【0055】
さらに、コントローラをEF継手1のターミナル部10に接続したときに、そのEF継手1の接続用電熱線3x及び/または加熱用電熱線3hを発信アンテナとし、HF帯の波長の電波を発信させ、EF継手内のICタグ20と通信してもよい。施工現場によっては異なる種類のEF継手が近接している場合があり、UHF帯のリーダライタを用いて通信を行うと、目的とするEF継手ではなく隣のEF継手と通信する可能性があるが、HF帯での通信距離は短いため、隣接するEF継手と誤通信することがない。
さらに、接続用電熱線3xとIDタグ20がはんだ等の導電体で電気的に接続されている場合には、コントローラとIDタグ20が電熱線3を介した有線通信を行い、融着条件等の読み込みを行っても良い。
さらに、コントローラのリーダライタRの電波の出力を小さくして目的とするEF継手1のみと通信する様にし、隣接する他のEF継手1と混線しないようにしても良い。