【実施例】
【0091】
実験
実施例1 − T細胞形質導入およびCAR発現の分析
ROR1特異的CARは、ヒトCD8+ T細胞内に発現することができ、ROR1+
B細胞腫瘍の特異的認識を与えるが、成熟した正常B細胞の認識を与えない。本発明者らは、健康なドナーまたはCLL患者由来のT細胞内に発現した場合、初代B−CLLおよびマントル細胞リンパ腫の特異的認識を与える、ROR1特異的キメラ抗原受容体を構築した。
【0092】
材料および方法
細胞系
エプスタイン・バーウイルスで形質転換されたB細胞(EBV−LCL)を記載されているように作製した(25)。腫瘍細胞系Jeko−1およびBALL−1は、Oliver Press博士およびJerald Radich博士(Fred Hutchinson Cancer Research Center)によって提供された。全ての細胞系を、RPMI、10%ウシ胎仔血清、0.8mM L−グルタミン、および1%ペニシリン−ストレプトマイシン(LCL培地)中に維持した。K562細胞を、American Type Culture Collectionから入手した。
【0093】
K562細胞のROR1でのトランスフェクション
ROR1遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のために、全RNAをB−CLL細胞から取得し(RNeasyPlusKit;QIAGEN)、M−MLV逆転写酵素(Invitrogen)でcDNAへ逆転写した。PCRを、特異的プライマー(ROR1−F:5−XhoIAGAGGAGGAATGCACCGGCC−3およびROR1−R:5−XhoI−CACAGAAGGTACTTGTTGCGATGT−3)で、Herculase−II DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて実行した。PCR産物をMIGR−1レトロウイルスベクターへクローニングし(23)、配列を検証した。Effecteneトランスフェクション試薬(QIAGEN)を用いて、Platinum−A細胞(Cell Biolabs)にMIGR−1/ROR1をトランスフェクションし、ROR1コード化レトロウイルスを作製した。K562細胞を、32℃において、2500rpmで60分間の遠心分離によりレトロウイルスによって形質導入し、増殖し、ROR1陽性サブセットを選別精製した。
【0094】
リアルタイム定量的PCR
B−CLL、正常な休止および活性化B細胞、ならびにEBV−LCLの第1鎖cDNAを、前の段落で記載されているように、調製した。正常組織(ヒト組織パネルI/II、血液画分)由来の第1鎖cDNAをClontechから入手した。ROR1 mRNAの発現を、二連で分析し、GAPDHに対して標準化した。増幅を、ABI Prism 7900(Applied Biosystems)において、25μL Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)、2.5ngのcDNA、ならびに以下の300nMの遺伝子特異的フォワードプライマーおよびリバースプライマーからなる50μLの反応物中で実施した:
ROR1−F 5−AGCGTGCGATTCAAAGGATT−3、
ROR1−R 5−GACTGGTGCCGACGATGACT−3、
GAPDH−F 5−GAAGGTGAAGGTCGGAGTC−3、
およびGAPDH−R 5−GAAGATGGTGATGGGATTTC−3。
【0095】
サイクル閾値(Ct)を、SDSソフトウェアv2.2.2(Applied Biosystems)を用いて決定し、遺伝子発現のレベルを、比較Ct法を用いて計算した(2−(ΔΔCt))。
【0096】
ベクター構築およびレンチウイルスの生成
CD20−CARコード化レンチウイルスベクター(CD20R−epHIV7)および緑色蛍光タンパク質(GFP)コード化レンチウイルスベクター(GFP−epHIV7)は以前に記載された(24)。ROR1−CARを同じベクターにコードさせた。以前の研究において、初代B−CLLおよびMCL腫瘍系上に発現するヒトROR1への特異的結合を示すマウスmAb(クローン2A2)を作製し、クローニングし、特徴づけた。mAb 2A2のVL鎖およびVH鎖を含有するscFvをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を合成し(GENEART)、NheIおよびRsrII制限部位を用いてCD20R−epHIV7へクローニングし、CD20特異的scFvを置換した。Effectene(Qiagen)を用いて、レンチウイルスベクターならびにパッケージングベクターpCHGP−2、pCMVRev2、およびpCMV−Gを同時トランスフェクションされた293T細胞において、レンチウイルスを産生した。トランスフェクションから16時間後、培地を交換し、48時間後、レンチウイルスを収集した。
【0097】
レンチウイルス形質導入およびCAR形質導入T細胞クローンの単離
健康なドナーおよびB−CLL患者由来のPBMC、および選別精製されたCD8+CD45RO+CD62L+セントラルメモリーT細胞(TCM)を、抗CD3 mAb(30ng/mL)で活性化し(25)、活性化後2日目および3日目に、32℃、2500rpmでの60分間の遠心分離により、1μg/mLポリブレン(Sigma−Aldrich)および50IU/mL組換えヒトインターロイキン−2(IL−2)を追加したレンチウイルス上清において形質導入した。10%ヒト血清、2mM L−グルタミン、および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI(CTL培地)中、T細胞を増殖させた(25)。増殖後、それぞれの形質導入されたT細胞系のアリコートを、ビオチンコンジュゲート化抗EGFR(上皮成長因子受容体)mAb、ストレプトアビジン−PE、および抗CD8 mAbで染色した。EGFR+CD8+ T細胞を選別精製し、限界希釈(0.5細胞/ウェル)によってクローニングした(25)。ROR1−CAR形質導入されたT細胞を、ビオチン化組換えFc−ROR1細胞外ドメイン融合タンパク質およびストレプトアビジン−PEでの染色により同定した。記載されているように(26)、組換えROR1タンパク質を、一過性にトランスフェクションされた293F細胞(Invitrogen)において産生し、精製し、BiotinTagキット(Sigma)を用いて、ビオチン化した。類似した様式で、GFP形質導入されたCD8+ T細胞を、フローサイトメトリーによって同定し、選別精製し、クローニングした。
【0098】
クロム遊離アッセイおよびサイトカイン分泌アッセイ
標的細胞を、
51Cr(PerkinElmer)で一晩、標識し、洗浄し、1〜2×10
3個の細胞/ウェルで、エフェクターT細胞と、様々なエフェクター対標的(E:T)比において、三連でインキュベートした。4時間のインキュベーション後、γカウントのために上清を回収し、比溶解を、標準式を用いて計算した(25)。
【0099】
結果
形質導入されたCD8+ T細胞を、ビオチン化抗EGFR mAbおよびストレプトアビジンコンジュゲート化色素を用いて選別精製した。選別精製されたT細胞の表面上のROR1−CAR発現を、ROR1−CARのscFvに直接結合するビオチン化組換えFc−ROR1細胞外ドメイン誘導タンパク質で細胞を染色し、かつストレプトアビジンコンジュゲート体で共染色することにより、評価した。Fc−ROR1タンパク質は、ROR1−CARレンチウイルスベクターを形質導入されたCD8+ T細胞を特異的に染色したが、GFPをコードする対照レンチウイルスベクターを形質導入されたCD8+ T細胞を染色しなかった(
図1)。
【0100】
本発明者らは、ROR1−CAR形質導入されたCD8+ T細胞クローン(n=10)および対照GFP形質導入されたCD8+ T細胞クローン(n=4)を、限界希釈により樹立し、複数のラウンドのインビトロ増殖後、CARの安定的な表面発現を確認した。形質導入されていないT細胞クローンまたはGFP形質導入T細胞クローンと比較して、ROR1−CAR形質導入されたT細胞クローンの成長に明らかな差はなかった(データ未呈示)。
【0101】
ROR1−CAR形質導入されたT細胞クローンは、ROR1遺伝子を安定的にトランスフェクションされた初代B−CLL細胞およびK562細胞を効率的に溶解したが、未変性のROR1陰性K562細胞は溶解せず、ROR1の特異的認識を実証した(
図2)。
【0102】
考察
CAR改変型T細胞を用いる養子免疫療法は、B細胞悪性腫瘍についての臨床治験において検討中である。標的化されることになっている表面分子は、B細胞系譜特異的であり、CD19(プロB細胞段階からプラズマ細胞までの正常B系譜細胞上に発現している)、およびCD20(プレB細胞段階からメモリーB細胞までの正常B細胞上に発現している)が挙げられる。したがって、これらの分子を標的化する効果的な治療の予測される結果は、正常なB細胞およびB細胞前駆体の枯渇である。遺伝子発現プロファイリング研究により、悪性B細胞により優先的にまたは独占的に発現するが、正常B細胞によっては発現しない遺伝子が同定されており、ROR1は、2つの独立した分析においてCLLシグネチャー遺伝子として出現した(27、28)。ROR1に対する特異的抗体は、CD154を発現するように改変された自己腫瘍細胞でのワクチン接種およびレナリドマイドでの処置後のCLL患者において、正常組織への明らかな毒性なしに、発生し、この腫瘍抗原が、免疫療法の適切な標的であり得ることを示唆した(29、30)。
【0103】
本発明者らの研究は、ROR1−CARを発現する操作されたT細胞で、ROR1陽性悪性細胞を標的化する可能性を例証している。CD8+ ROR1−CAR T細胞は、バルクPBMCか、または動物モデルにおいて、養子移入後長期間、持続する(31)選別精製されたTCMのいずれかのレンチウイルス形質導入後の正常ドナーおよびCLL患者のどちらの由来でもあり得る。ROR1−CAR形質導入されたT細胞は、初代B−CLLを効率的に溶解したが、正常な休止または活性化B細胞を溶解しなかった。これらのT細胞は、ROR1発現腫瘍細胞に応答して、TNF−α、IFNγ、およびIL−2を含むエフェクターサイトカインを産生し、増殖する能力があった。
【0104】
実施例2 − CD4+ CAR T細胞系の作製およびエフェクター機能の分析
CD4+ ROR1−CAR T細胞は、健康なドナー/CLL患者のPBMCから作製することができる。ROR1特異的CARは、ヒトCD4+ T細胞内に発現することができ、ROR1+ B細胞腫瘍の特異的認識を与えるが、成熟した正常B細胞の認識を与えない。
【0105】
材料および方法
細胞系
エプスタイン・バーウイルスで形質転換されたB細胞(EBV−LCL)を記載されているように作製した(25)。腫瘍細胞系Jeko−1およびBALL−1は、Oliver Press博士およびJerald Radich博士(Fred Hutchinson Cancer Research Center)によって提供された。全ての細胞系を、RPMI、10%ウシ胎仔血清、0.8mM L−グルタミン、および1%ペニシリン−ストレプトマイシン(LCL培地)中に維持した。K562細胞および293T細胞を、American Type Culture Collectionから入手し、指示されているように培養した。
【0106】
K562細胞のROR1でのトランスフェクション
ROR1遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のために、全RNAをB−CLL細胞から取得し(RNeasyPlusKit;QIAGEN)、M−MLV逆転写酵素(Invitrogen)でcDNAへ逆転写した。PCRを特異的プライマー(ROR1−F:5−XhoIAGAGGAGGAATGCACCGGCC−3およびROR1−R:5−XhoI−CACAGAAGGTACTTGTTGCGATGT−3)で、Herculase−II DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて実行した。PCR産物をMIGR−1レトロウイルスベクターへクローニングし(23)、配列を検証した。Effecteneトランスフェクション試薬(QIAGEN)を用いて、Platinum−A細胞(Cell Biolabs)にMIGR−1/ROR1をトランスフェクションし、ROR1コード化レトロウイルスを作製した。K562細胞を、32℃において、2500rpmで60分間の遠心分離によりレトロウイルスによって形質導入し、増殖し、ROR1陽性サブセットを選別精製した。
【0107】
ベクター構築およびレンチウイルスの生成
CD20−CARコード化レンチウイルスベクター(CD20R−epHIV7)および緑色蛍光タンパク質(GFP)コード化レンチウイルスベクター(GFP−epHIV7)は以前に記載された(24)。ROR1−CARを同じベクターにコードさせた。以前の研究において、初代B−CLLおよびMCL腫瘍系上に発現するヒトROR1への特異的結合を示すマウスmAb(クローン2A2)を作製し、クローニングし、特徴づけた。mAb 2A2のVL鎖およびVH鎖を含有するscFvをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を合成し(GENEART)、NheIおよびRsrII制限部位を用いてCD20R−epHIV7へクローニングし、CD20特異的scFvを置換した。Effectene(Qiagen)を用いて、そのレンチウイルスベクターならびにパッケージングベクターpCHGP−2、pCMVRev2、およびpCMV−Gを同時トランスフェクションされた293T細胞において、レンチウイルスを産生した。トランスフェクションから16時間後、培地を交換し、48時間後、レンチウイルスを収集した。
【0108】
レンチウイルス形質導入およびCD4+ ROR1−CAR T細胞系の単離
CD4+ T細胞を健康なドナーのPBMCから単離し、抗CD3 mAb(30ng/mL)で活性化し(25)、活性化後2日目および3日目に、32℃、2500rpmでの60分間の遠心分離により、1μg/mLポリブレン(Sigma−Aldrich)および50IU/mL組換えヒトインターロイキン−2(IL−2)を追加したレンチウイルス上清において形質導入した。10%ヒト血清、2mM L−グルタミン、および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI(CTL培地)中、T細胞を増殖させた(25)。増殖後、それぞれの形質導入されたT細胞系のアリコートを、ビオチンコンジュゲート化抗EGFR(上皮成長因子受容体)mAb、ストレプトアビジン−PE、および抗CD4 mAbで染色した。EGFR+CD4+ T細胞を選別精製し、増殖させた。ROR1−CAR形質導入されたT細胞を、ビオチン化組換えFc−ROR1細胞外ドメイン融合タンパク質およびストレプトアビジン−PEでの染色により同定した。記載されているように(26)、組換えROR1タンパク質を、一過性にトランスフェクションされた293細胞(Invitrogen)において産生し、精製し、BiotinTagキット(Sigma)を用いて、ビオチン化した。類似した様式で、GFP形質導入されたCD4+ T細胞を、フローサイトメトリーによって同定し、選別精製し、クローニングした。
【0109】
クロム遊離アッセイおよびサイトカイン分泌アッセイ
標的細胞を、
51Cr(PerkinElmer)で一晩、標識し、洗浄し、1〜2×10
3個の細胞/ウェルで、エフェクターT細胞と、様々なエフェクター対標的(E:T)比において、三連でインキュベートした。4時間のインキュベーション後、γカウントのために上清を回収し、比溶解を、標準式を用いて計算した(25)。サイトカイン分泌の分析のために、標的細胞およびエフェクター細胞を、2:1のE/T比で、三連のウェル中に蒔き、インターフェロン(INFγ)、腫瘍壊死因子(TNF−α)、およびIL−2を、24時間のインキュベーション後取り出された上清において、マルチプレックスサイトカインイムノアッセイ(Luminex)により測定した。
【0110】
CFSE増殖アッセイ
T細胞を、0.2μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen)で標識し、洗浄し、10U/mL組換えヒトIL−2を含有するCTL培地において2:1の比で刺激細胞と共に蒔いた。72時間のインキュベーション後、細胞を、抗CD4 mAbおよびヨウ化プロピジウム(PI)で標識して、分析から死細胞を排除した。試料を、フローサイトメトリーによって分析し、生きているCD4+ T細胞の細胞分裂をCFSE希釈によって評価した。
【0111】
共培養アッセイ
ROR1−CAR形質導入されたCD4+ T細胞およびROR1−CAR形質導入されたCD8+細胞傷害性Tリンパ球を、CFSEで標識し、2:1、1:1、および1:2の比で共培養した。その後、共培養物を、K562/ROR1細胞および対照K562細胞で刺激し、細胞増殖を、5日間のインキュベーション後、CFSE色素希釈アッセイによって測定した。フロー分析のために、試料を、コンジュゲート化抗CD8 mAbおよびコンジュゲート化抗CD4 mAbで染色し、CD8+サブセットとCD4+サブセットを区別した。
【0112】
結果
健康なドナーおよびCLL患者のPBMCからのCD4
+ ROR1−CAR T細胞の作製
本発明者らは、ROR1、癌胎児性チロシンキナーゼ受容体が、CLLおよびMCL上に一律に発現することを示し、CD8
+ T細胞内に発現する場合、悪性B細胞の特異的認識を与えるが、成熟した正常B細胞の認識を与えない抗ROR1 mAb由来のROR1−CARを開発した(32)。ここで、本発明者らは、CD4
+ ROR1−CAR T細胞を作製して、直接的な腫瘍認識、およびCD8
+ ROR1−CAR CTLを強化するそれらの能力を分析した。CAR改変型CD4
+ T細胞は、健康なドナー(n=4)およびCLL患者(n=4)のバルク末梢CD4
+ T細胞から、ROR1−CARコード化レンチウイルスベクターを用いて容易に作製することができた。このベクターにおいて、本発明者らは、形質導入マーカーとして、および抗EGFR mAbを用いた導入遺伝子発現T細胞の濃縮のための両方の役割を果たすように、ROR1−CARおよび自己切断可能な2Aエレメントの下流に切断型EGFR(上皮成長因子受容体、tEGFR)ドメインをコードさせた(
図3)。本発明者らは、tEGFRマーカーを用いて、ROR1−CARコード化レンチウイルスでの単回形質導入(MOI=3)後12日目においてCAR改変型T細胞の頻度を決定し、同じ個体から得られたCD8
+ CAR T細胞系と比較して、CD4
+ CAR T細胞系において、一貫してより高い形質導入効率を見出した。CD4
+ T細胞の表面上のROR1−CARの発現を確認するために、本発明者らが、ROR1−CARのscFvに直接結合するビオチン化組換えFc−ROR1細胞外ドメイン融合タンパク質を利用したところ、ROR1−CARレンチウイルスを形質導入されたCD4
+ T細胞を特異的に染色したが、形質導入されていない対照CD4
+ T細胞は染色しなかった(
図3)。本発明者らは、tEGFRマーカーを用いて、導入遺伝子を発現するCD4
+ T細胞を濃縮し、抗CD3 mAbでの刺激によりCAR陽性T細胞サブセットを増殖した。CD4
+ CAR T細胞の3−logより多い増殖を、14日間の刺激サイクルの終わりに達成することができ、それは、CD8
+ CAR CTLにおいて観察された増幅と等しい。増殖後、本発明者らは、CD4
+ CAR T細胞の細胞表面上のROR1−CARの安定的発現を確認し(データ未呈示)、ROR1陽性腫瘍細胞の認識について分析した。
【0113】
CD4
+ ROR1−CAR T細胞はROR1陽性腫瘍を特異的に認識する
本発明者らは、ROR1陽性初代腫瘍細胞およびROR1陽性腫瘍細胞系に対するCD4
+ ROR1−CAR T細胞のエフェクター機能を分析した。本発明者らは、CD4
+ CAR T細胞の直接的細胞傷害性を与える能力を、クロム遊離アッセイ(CRA)により分析し、標準の4時間のインキュベーションの終わりに、ROR1陽性標的細胞の弱いが、特異的な溶解を検出した(
図4)。本発明者らは、CRAを10時間まで延長し、比溶解のさらなる増加を観察したが、CD4+ CAR T細胞の全体の細胞溶解活性は、まだCD8
+ ROR1−CAR CTLより低かった(
図2、4)。健康なドナーとCLL患者のどちらの由来のCD4
+ ROR1−CAR T細胞も、IFN−γ ELISAにより、初代CLL細胞、ROR1陽性腫瘍細胞系Jeko−1(MCL)およびBALL−1(B−ALL)、ならびにROR1遺伝子を安定的にトランスフェクションされたK562細胞(K562/ROR1)を特異的に認識したが、未変性のROR1陰性K562細胞を認識せず、標的細胞の細胞表面上のROR1の特異的認識を実証した(
図5A)。マルチプレックスサイトカイン分析により、CD8
+ CAR CTLと比較して有意に高いレベルでのTNF−αおよびIL−2などの他のTh1サイトカインの産生、ならびにIL−4、IL−10、およびIL−17の産生が明らかにされた(
図5B)。
【0114】
次に、本発明者らは、ROR1陽性腫瘍細胞での刺激後のCD4
+ CAR T細胞の増殖を、CFSE染色によって評価し、いかなる潜在的非特異的刺激も除去するために外因性サイトカインの添加なしのストリンジェントな培養条件を用いた。CD4
+ CAR
T細胞は、ROR1陽性腫瘍細胞に応答して、劇的かつ特異的な増殖を示した。増殖するように誘導されたT細胞のパーセンテージ、および増殖サブセットが行う細胞分裂の回数のどちらも、CD8
+ CAR T細胞と比較して、CD4
+ CAR T細胞においての方が有意に高かった(
図6)。まとめると、本発明者らのデータは、健康なドナーおよびCLL患者のどちらから得られたCD4
+ T細胞も、ROR1特異的CARでの遺伝子改変後、抗腫瘍反応性を獲得することを実証している。さらに、外因性サイトカインの非存在下で増殖する能力、および高レベルのTh1サイトカインを産生する能力により、CD4
+ CAR T細胞は、CARを通しての刺激後に典型的なヘルパー機能を発揮し、直接的抗腫瘍効果を与えることに加えて、CD8
+ CAR CTLを強化するためにも利用され得ることが示唆される。
【0115】
CAR改変型CD4
+ T細胞はCD8
+ CAR CTLを援助するが、形質導入されていないCD4
+ T細胞は援助しない CD4
+ CAR T細胞が、CD8
+ CAR CTLを援助することができるかどうかを分析するために、本発明者らは、健康なドナーおよびCLL患者から樹立した、CAR形質導入されたポリクローナルのCD4
+ T細胞系およびCD8
+ T細胞系、ならびに対照の形質導入されていないポリクローナルのCD4
+ T細胞系およびCD8
+
T細胞系での共培養実験を行った。援助の提供についての読み出しとして、本発明者らは、単独で培養されたCD8
+ T細胞と比較して、CD4
+ T細胞の存在下での腫瘍特異的CD8
+エフェクター機能の向上を定義した。本発明者らは、CAR形質導入されたCD4
+ T細胞かまたは形質導入されていない対照CD4
+ T細胞のいずれかを、CD8
+ CAR CTLと、異なるCD4:CD8比(2:1、1:1、1:2)で組み合わせ、それらをROR1陽性腫瘍細胞で刺激し、CFSE色素希釈により増殖を測定した。本発明者らは、CAR形質導入されたCD4
+ T細胞のCD8
+ CAR CTLへの添加が、CD8
+ CAR CTL単独と比較して、CD8
+サブセットの特異的増殖を有意に増加させるが、形質導入されていないCD4
+ T細胞は有意には増加させないことを見出した(
図7)。増殖の増加は、少なくとも等量のCD4
+ CAR T細胞(2:1または1:1のCD4:CD8比)が共培養に加えられた場合、最も顕著であった。形質導入されていないCD4
+ T細胞と形質導入されていないCD8
+ T細胞との組み合わせは、追加的な対照としての役割を果たし、CD8
+サブセットにおいて非特異的増殖を誘導しなかった(データ未呈示)。
【0116】
考察
遺伝子発現プロファイリング研究により、悪性B細胞により優先的にまたは独占的に発現するが、正常B細胞によっては発現しない遺伝子が同定されており、ROR1は、2つの独立した分析においてCLLシグネチャー遺伝子として出現した(27、28)。本発明者らの研究は、ROR1陽性悪性細胞を、ROR1−CARを発現する操作されたT細胞で標的化する可能性を例証している。CD8
+ ROR1−CAR T細胞およびCD4
+ ROR1−CAR T細胞は、バルクPBMCかまたは選別精製されたT細胞のいずれかのレンチウイルス形質導入後の正常ドナー由来であり得る。CD8+ ROR1−CAR形質導入されたT細胞は、初代B−CLLを効率的に溶解したが、正常な休止または活性化B細胞を溶解しなかった。CD4+ ROR1−CAR形質導入されたT細胞は、初代B−CLLを弱く溶解したが、正常な休止または活性化B細胞を溶解しなかった。これらのT細胞は、TNF−α、IFNγ、IL−2、IL−4、およびIL−10を含むエフェクターサイトカインを産生した。CAR形質導入されたCD4+ T細胞は、形質導入されたCD8+細胞より有意に高い量のサイトカインを産生した。どちらの細胞型も、ROR1発現腫瘍細胞に応答して増殖する能力があった。この場合もやはり、CD4+ ROR1−CAR T細胞は、CD8+ ROR1−CAR CTLより2〜3倍多く増殖した。これらの結果は、形質導入されたCD4+ヘルパーT細胞が、典型的なヘルパー機能を発揮することを示しており、それらが、CD8+ CAR CTLを強化するために利用され得ることを示唆している。
【0117】
実施例3 − ナイーブサブセット、セントラルメモリーサブセット、およびエフェクターメモリーサブセットに由来したCD4+ ROR1−CAR T細胞のエフェクター機能
ナイーブサブセット、セントラルメモリーサブセット、およびエフェクターメモリーサブセットから引き出され、その後、ROR1 CARで改変されたCD4 T細胞のエフェクター機能を比較した。
【0118】
材料および方法
ナイーブCD4細胞、セントラルメモリーCD4細胞、およびエフェクターメモリーCD4細胞の選別精製
健康なドナーのPBMCから、触れられていないCD4+ T細胞を生じるネガティブ磁気ビーズ選択(Miltenyi CD4単離キット)を用いて、CD4+ T細胞を単離した。CD4+画分を、コンジュゲート化抗CD45RA mAb、抗CD45RO mAb、および抗CD62L mAbで標識し、FACS Ariaフロー選別機(BD Biosciences)を用いてフロー選別精製し、ナイーブCD4+ T細胞(CD45RA+ CD45RO− CD62L+)、セントラルメモリーCD4+ T細胞(CD45RA− CD45RO+ CD62L+)、およびエフェクターメモリーCD4+ T細胞(CD45RA− CD45RO+ CD62L−)を、これらの定義されたマーカーの発現に基づいて精製した。
【0119】
CFSE増殖アッセイ
T細胞を、0.2μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen)で標識し、洗浄し、10U/mL組換えヒトIL−2を含有するCTL培地において2:1の比で刺激細胞と共に蒔いた。72時間のインキュベーション後、細胞を、抗CD8 mAbまたは抗CD4 mAb、およびヨウ化プロピジウム(PI)で標識して、分析から死細胞を排除した。試料を、フローサイトメトリーによって分析し、生きているCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の細胞分裂をCFSE希釈によって評価した。
【0120】
サイトカインアッセイ
サイトカイン分泌の分析のために、標的細胞およびエフェクター細胞を、2:1のE/T比で、三連のウェル中に蒔き、インターフェロン(INFγ)、腫瘍壊死因子(TNF−α)、およびIL−2を、24時間のインキュベーション後取り出された上清において、マルチプレックスサイトカインイムノアッセイ(Luminex)により測定した。
【0121】
結果
本発明者らは、CD45RA、CD45RO、およびCD62Lの発現に基づいた3人の健康なドナーの末梢血からCD4
+ N T細胞、セントラルメモリーCD4
+ T細胞(CM)、およびエフェクターメモリーCD4
+ T細胞(EM)をフロー選別精製し(
図8A)、ROR1−CARでの改変後のそれらのエフェクター機能を比較した。本発明者らは、その3つのサブセットのそれぞれに由来するCAR T細胞系において同様に高い形質導入効率を達成した。導入遺伝子を発現するT細胞の濃縮後の多パラメータフローサイトメトリーは、レンチウイルス形質導入後の活性化表現型と一致した、CD4
+ N CAR T細胞系におけるCD45ROの発現およびCD45RAの消失を示した。CD4
+ N CAR T細胞系、CD4
+ CM CAR T細胞系、およびCD4
+
EM CAR T細胞系は、CD62Lの発現差異を保持しており、最初のフロー選別精製が高純度で実行されたことが確認された。
【0122】
その後、本発明者らは、Nサブセット、CMサブセット、およびEMサブセット由来のCD4
+ CAR T細胞の腫瘍認識、サイトカイン分泌、および増殖を分析し、バルクCD4
+ T細胞から生じたCAR T細胞系とそれらを比較した。本発明者らは、その細胞系のそれぞれにおいて、IFN−γ ELISAによりROR1陽性腫瘍細胞の特異的認識を観察した。マルチプレックスサイトカイン分析により、Nサブセット由来のCD4
+ CAR T細胞は、群を抜いて最も高いレベルのTh1サイトカイン、特にIL−2を産生することが明らかにされ(
図8C)、CFSE色素希釈により、それらが、ROR1陽性腫瘍細胞での刺激に応答して最も活発に増殖することが示された(
図8B)。
【0123】
考察
本発明者らの研究は、ROR1−CARを発現する操作されたT細胞でROR1陽性悪性細胞を標的化する可能性を例証している。CD8+ ROR1−CAR T細胞およびCD4+ ROR1−CAR T細胞は、どちらも、バルクPBMCかまたは、定義されたナイーブT細胞サブセットもしくはメモリーT細胞サブセットから選別精製されたT細胞のいずれかのレンチウイルス形質導入後の正常ドナー由来であり得る。CD4+ナイーブT細胞、CD4+セントラルメモリーT細胞、およびCD4+エフェクターT細胞は、TNFα、IFNγ、IL−2、IL−4、およびIL−10を含むエフェクターサイトカインを産生した。ナイーブサブセット由来のCAR形質導入されたCD4+細胞は、CARを通してのシグナル伝達後、セントラルメモリー由来のCD4+ CAR T細胞およびエフェクターメモリー由来CD4+ CAR T細胞より有意に高い量のTNFαおよびIL−2を産生した。全てのCD4細胞型は、ROR1/K562に応答して増殖する能力があったが、ナイーブサブセット由来のCAR形質導入されたCD4+細胞において、増殖するように誘導されたT細胞のパーセンテージ、および増殖サブセットが起こした細胞分裂の回数は、有意に高かった。サイトカインプロファイルおよび増殖能力の両方は、ナイーブCD4+ ROR1−CAR T細胞が、CD8+ ROR1−CAR CTLを強化するのに最も良く適している可能性があることを示している。
【0124】
実施例4 − ナイーブCD4+ T細胞がメモリーCD4+ T細胞より良いヘルパーである ナイーブの形質導入型CD4+ T細胞、セントラルメモリーの形質導入型CD4+ T細胞、およびエフェクターの形質導入型CD4+ T細胞を、形質導入型CD8+細胞傷害性Tリンパ球と共培養し、K562/ROR1細胞での刺激に応答した、それらの細胞の増殖応答を測定した。
【0125】
材料および方法
共培養
ナイーブ由来ROR1−CAR形質導入されたCD4+ T細胞、セントラルメモリー由来ROR1−CAR形質導入されたCD4+ T細胞、およびエフェクターメモリー由来ROR1−CAR形質導入されたCD4+ T細胞、ならびにナイーブCD8+ T細胞由来ROR1−CAR形質導入されたCD8+細胞傷害性Tリンパ球およびセントラルメモリーCD8+ T細胞由来ROR1−CAR形質導入されたCD8+細胞傷害性Tリンパ球を、CFSEで標識し、CD4+ CAR T細胞系およびCD8+ CAR T細胞系を、1:1比で共培養した。その後、共培養物を、K562/ROR1細胞および対照K562細胞で刺激し、細胞増殖を、5日間のインキュベーション後、CFSE色素希釈アッセイによって測定した。フロー分析のために、試料を、コンジュゲート化抗CD8 mAbおよびコンジュゲート化抗CD4 mAbで染色して、CD8+サブセットとCD4+サブセットを区別した。
【0126】
結果
CD4
+ナイーブCAR T細胞は、CD8
+ CAR CTLのエフェクター機能を強化する優れた能力を有する
本発明者らは、CD4
+ N CAR T細胞の有利なサイトカインプロファイルおよび増殖ポテンシャルがまた、CD8
+ CAR CTLへの最も強いヘルパー効果へと変換されるかどうかを決定するために、CD4
+ N CAR T細胞系、CD4
+ CM CAR T細胞系、およびCD4
+ EM CAR T細胞系のヘルパー機能を比較した。以前の研究により、N CD8
+ T細胞とCM CD8
+ T細胞とEM CD8
+ T細胞の間に、養子免疫療法のためのそれらの潜在的有用性に影響する本質的相違があることが実証されている。本発明者らのグループは、最近、CM由来CD8
+ T細胞が、養子移入後、長期間持続することができるが、EM由来CD8
+ T細胞はできないことを示しており、それゆえに、CM由来CD8
+ T細胞は免疫療法のためのCD8
+
T細胞の好ましいサブセットである(33、34)。他のグループは、CD8
+ N T細胞もまたT細胞治療に用いられる有利な形質を有する可能性があると示唆した(35、36)。したがって、本発明者らは、CD8
+ CAR T細胞サブセットおよびCD4
+ CAR T細胞サブセットの最適な組み合わせを決定するために、選別精製されたN T細胞およびCM T細胞からCD8
+ CAR CTLを作製した。レンチウイルス形質導入、およびtEGFRマーカーを用いたCAR形質導入されたCD8
+ T細胞の濃縮後、本発明者らは、CD8
+ N CAR CTLおよびCD8
+ CM CAR CTLの腫瘍反応性を確認し(データ未呈示)、前のように、CD4
+ CAR T細胞との共培養実験を行った。予測されたように、CD8
+ N CAR CTLおよびCD8
+ CM CAR CTLのCD4
+ N CAR T細胞との共培養は、CD4
+ CM CAR T細胞もしくはCD4
+ EM CAR T細胞との共培養、またはCD8
+ CAR CTL単独と比較して、有意に高いCD8
+サブセットの腫瘍特異的増殖をもたらした(
図9)。全ての組み合わせのうち、ROR1陽性腫瘍細胞での刺激に応答した、CD8
+ CAR CTLの最大増殖は、CD4
+ N CAR T細胞のCD8
+ CM CAR CTLとの共培養後に観察された(
図9)。まとめると、本発明者らのデータは、N CD4
+ T細胞、CM CD4
+ T細胞、およびEM CD4
+
T細胞の間に、それらのサイトカインプロファイルおよび増殖ポテンシャルにおける本質的相違があり、CD4
+ N T細胞においてIL−2の産生がより高く、増殖がより優勢であることを実証している。本発明者らのデータは、選別精製されたCM CD4
+ T細胞、EM CD4
+ T細胞、またはバルクCD4
+ T細胞よりむしろ、選別精製されたN CD4
+ T細胞が、CD8
+ CTLのエフェクター機能を強化するのに最も良く適している可能性があることを示唆し、CM由来CD8
+ T細胞が養子免疫療法に用いられる有利な特徴を有するという、CD8
+ T細胞における以前の研究を補完している。
【0127】
考察
まとめると、これらのデータは、ROR1−CAR改変型CD4
+ T細胞およびROR1−CAR改変型CD8
+ T細胞の養子移入が、侵襲性全身性リンパ腫のインビボモデルにおいて強力な抗腫瘍応答を与えることを実証し、CD8
+ CAR CTLの抗腫瘍効力へのCD4
+ CAR T細胞の有益かつ相乗的な効果についての証拠を提供している。本発明者らのデータは、どのようにして、細胞固有の質の分析が、腫瘍特異的CD8
+ T細胞および腫瘍特異的CD4
+ T細胞の両方を含有する細胞製造物の理論的な設計に情報を与えて、がん免疫療法の結果を向上させることができるかを例証している。
【0128】
実施例5 − 全身性マントル細胞リンパ腫のマウス腫瘍モデル(NSG/Jeko−1−ffLuc)
本発明者らは、侵襲性全身性マントル細胞リンパ腫のインビボモデルにおいて、ROR1−CAR改変型CD8
+ CTLの抗腫瘍効力への、CD4のヘルパー効果を調べた。
【0129】
材料および方法
致死量以下で照射されたNOD/SCID/ガンマ
−/−(NSG)マウスに、生物発光画像法を用いて腫瘍量および腫瘍分布の評価を可能にするためにホタルルシフェラーゼで安定的にトランスフェクションされている5×10
5個のJeko−1細胞(Jeko−1/ffLuc)を尾静脈注射によって生着させた。本発明者らは、これらの条件下で、NSGマウスにおいて、急速進行性播種性リンパ腫の一貫した生着(生着率=100%)および発症を確認した。腫瘍生着後、3匹のマウスの群は、CD8
+ CAR CTL(群1)、CD4
+ CAR T細胞(群2)、CD8
+ ROR1−CAR形質導入型T細胞とCD4
+ ROR1−CAR形質導入型T細胞の組み合わせ(群3)、形質導入されていない対照T細胞(群4、5、6)のいずれかを尾静脈注射によって受け、または処置を受けなかった(群7)。移入されたT細胞の総数は、全ての場合において10×10
6個であった。本発明者らは、養子移入から2日後、マウスから眼の血液を採取し、末梢血におけるROR1−CAR形質導入型T細胞または形質導入されていないT細胞の存在を確認した。
【0130】
結果
T細胞移入後6日目、本発明者らは、腫瘍量を評価するために生物発光画像法を実施した。CD8
+ ROR1−CAR T細胞およびCD4
+ ROR1−CAR T細胞の組み合わせを受けたマウスにおいて、最も強い抗腫瘍効果が観察され、対照群と比較して生物発光シグナルの>2 logの低下があった(
図10)。本発明者らはまた、CD8
+ ROR1−CAR改変型T細胞かまたはCD4
+ ROR1−CAR改変型T細胞のいずれかを受けたマウスにおいて強い抗腫瘍効果を観察し、対照と比較して生物発光シグナルの>1 logの低下があった(
図10)。重要なことには、CD8
+/CD4
+ CAR T細胞組み合わせの投与後の腫瘍量の低下は、CD8
+ CAR CTL群の腫瘍量の低下とCD4
+ CAR T細胞群の腫瘍量の低下を合わせたものより大きく、CD4
+ CAR T細胞およびCD8
+ CAR CTLが相乗的に働いていたことを示唆した。
【0131】
考察
まとめると、これらのデータは、ROR1−CAR改変型CD4
+ T細胞およびROR1−CAR改変型CD8
+ T細胞の養子移入が、侵襲性全身性リンパ腫のインビボモデルにおいて強力な抗腫瘍応答を与えることを実証し、CD8
+ CAR CTLの抗腫瘍効力へのCD4
+ CAR T細胞の有益かつ相乗的な効果についての証拠を提供している。本発明者らのデータは、どのようにして、細胞固有の質の分析が、腫瘍特異的CD8
+ T細胞および腫瘍特異的CD4
+ T細胞の両方を含有する細胞製造物の理論的な設計に情報を与えて、がん免疫療法の結果を向上させることができるかを例証している。
【0132】
実施例6 − CD19 CAR T細胞は同じ相乗作用を示す
本発明者らは、インビトロでの共培養において、および侵襲性全身性マントル細胞リンパ腫のインビボモデルにおいて、CD19改変型CD8
+ CTLの抗腫瘍効力への、CD4のヘルパー効果を調べた。
【0133】
材料および方法
CD19 CAR T細胞を、米国特許出願公開第2008/0131415号(参照により本明細書に組み入れられている)に記載されているように調製することができる。
【0134】
共培養アッセイ
CD19−CAR形質導入されたCD4+ T細胞およびCD19−CAR形質導入されたCD8+細胞傷害性Tリンパ球を、CFSEで標識し、2:1、1:1、および1:2の比で共培養した。その後、共培養物を、K562/ROR1細胞および対照K562細胞で刺激し、細胞増殖を、5日間のインキュベーション後、CFSE色素希釈アッセイによって測定した。フロー分析のために、試料を、コンジュゲート化抗CD8 mAbおよびコンジュゲート化抗CD4 mAbで染色し、CD8+サブセットとCD4+サブセットを区別した。
【0135】
インビボモデル
致死量以下で照射されたNOD/SCID/ガンマ
−/−(NSG)マウスに、生物発光画像法を用いて腫瘍量および腫瘍分布の評価を可能にするためにホタルルシフェラーゼで安定的にトランスフェクションされている5×10
5個のJeko−1細胞(Jeko−1/ffLuc)を尾静脈注射によって生着させた。本発明者らは、これらの条件下で、NSGマウスにおいて、急速進行性播種性リンパ腫の一貫した生着(生着率=100%)および発症を確認した。腫瘍生着後、3匹のマウスの群は、CD8
+ CD19 CAR CTL(群1)、CD4
+ CD19 CAR T細胞(群2)、CD8
+ CD19 CAR形質導入型T細胞とCD4
+ CD19 CAR形質導入型T細胞の組み合わせ(群3)、形質導入されていない対照T細胞(群4、5、6)のいずれかを尾静脈注射によって受け、または処置を受けなかった(群7)。移入されたT細胞の総数は、全ての場合において10×10
6個であった。本発明者らは、養子移入から2日後、マウスから眼の血液を採取した。
【0136】
結果
図10は、CD19+マントル細胞リンパ腫腫瘍系Jeko−1で刺激された、CD8+ CD19−CAR CTLおよびCD4+ CD19−CAR T細胞系に関する共培養実験におけるセントラルメモリー由来CD8+ CAR CTLの腫瘍特異的増殖を強化する、ナイーブサブセット由来のCD4+ CAR T細胞系の優れた能力を示す。しかし、セントラルメモリーサブセットまたはエフェクターメモリーサブセット由来のCD4+ CAR T細胞系は、セントラルメモリー由来のCD8+ CAR CTLの腫瘍特異的増殖を、はるかに低い程度で強化する。
【0137】
図11は、免疫不全マウスのリンパ腫モデル(NOD/SCID−Raji)において、CD8+ CAR T細胞およびCD4+ CAR T細胞が非依存的に、直接的抗腫瘍効力を与えることを示す。マウスは、CD19−CAR形質導入されたCD8+セントラルメモリー由来T細胞もしくは対照の偽形質導入されたCD8+セントラルメモリー由来T細胞(A)、またはCD19−CAR形質導入されたCD4+ナイーブ由来T細胞もしくは対照の偽形質導入されたCD4+ナイーブ由来T細胞(B)のいずれかを受けた。
【0138】
図12は、全身性マントル細胞リンパ腫のマウス腫瘍モデル(NSG/Jeko−1−ffLuc)における、CD4+ ROR1−CAR改変型T細胞の、CD8+ ROR1−CAR CTLの抗腫瘍効力への強化および相乗効果を示す。全身性侵襲性マントル細胞リンパ腫のマウス腫瘍モデル(NSG/Jeko−1)におけるROR1−CAR改変型CD8+ T細胞およびROR1−CAR改変型CD4+ T細胞の抗腫瘍効力は、いずれかの細胞集団単独と比較した場合、または形質導入されていない細胞と比較した場合、増強されていた。
【0139】
図13は、全身性リンパ腫のマウスモデル(NSG/Raji)におけるCD8+ CD19−CAR T細胞とCD4+ CD19−CAR T細胞の相乗作用を示す。腫瘍接種後6日目に、生物発光画像法によりRaji腫瘍の生着が確認された(処置前)(処置スキームはAに示されており、生物発光による腫瘍生着はBに示されている)。生物発光画像法を用いた腫瘍量の分析により、CD8+ CD19−CAR T細胞で処置されたマウスのコホート、およびCD8+ CD19−CAR T細胞とCD4+ CD19−CAR T細胞の組み合わせ型製造物で処置されたマウスにおいてRaji腫瘍の完全な根絶が示された(B、処置後の中央の黒色バーおよび灰色バー)。その後、マウスを、Raji腫瘍細胞の2回目の接種で曝露させ、末梢血におけるCD4+ CAR T細胞およびCD8+ CAR T細胞の頻度、ならびに腫瘍生着を分析した。CD8+ CAR T細胞とCD4+ CAR T細胞の組み合わせ型製造物で処置されたマウスにおける、腫瘍曝露後の有意により高いレベルのCD8+ CAR T細胞(Cの下方のパネル)、およびRaji接種物の完全な拒絶(B、腫瘍曝露後の右の灰色バー)。対照的に、CD8+ CD19−CAR CTL単独を受けたマウスにおいて、本発明者らは、腫瘍曝露後にCAR T細胞の増加を検出せず(C)、Raji腫瘍細胞は生着することができた(パネルB、腫瘍曝露後の右の黒色バー)。
【0140】
考察
まとめると、これらのデータは、別(CD19)のCAR構築物を細胞に形質導入すること、すなわち、CD19−CAR改変型CD4
+ T細胞およびCD19−CAR改変型CD8
+ T細胞が、侵襲性全身性リンパ腫のインビボモデルにおいて強力な抗腫瘍応答を与えることを実証し、CD8
+ CAR CTLの抗腫瘍効力へのCD4
+ CAR T細胞の有益かつ相乗的な効果についての証拠を提供している。
【0141】
前述は、本発明の例証となるものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲、加えて、それに含まれ得る特許請求の範囲の等価物により定義される。本明細書で言及された全ての引例および文献は、参照により本明細書に組み入れられている。
【0142】
参考文献
【0143】
【表1-1】
【0144】
【表1-2】
【0145】
【表1-3】