(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る電圧監視装置および組電池監視システムを詳細に説明する。なお、かかる実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[1.車両搭載用システムの構成]
図1は、実施形態に係る組電池監視システムを含む車両搭載用システムの構成例を示す図である。車両搭載用システム100は、例えば、図示しないハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、および、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両に搭載される。
【0011】
かかる車両搭載用システム100は、組電池1と、組電池監視システム2と、車両制御装置3と、電動機4と、電力変換器5と、リレー6とを備える。
【0012】
組電池1は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などであり、図示しない車体に対して絶縁されている。組電池1は、複数の電池ブロック10が直列に接続されて構成される。各電池ブロック10は、直列に接続された複数の電池セル11を備える。そして、各電池セル11には、内部圧力が上昇した時に、機械的に電流経路を遮断する不図示の電流遮断デバイス(Current Interrupt Device)が設けられている。
【0013】
組電池監視システム2は、組電池1の充電状態などを監視し、車両制御装置3へ通知する。かかる組電池監視システム2は、複数のサテライト基板21と、電池状態監視部23とを備える。各サテライト基板21は、ブロック監視部22(電圧監視装置の一例)を有しており、電池ブロック10毎に個別に設けられる。なお、複数のサテライト基板21は、例えば、互いに離間した位置に配置される。
【0014】
ブロック監視部22は、電池ブロック10や電池セル11の電圧を検出したり、電池ブロック10の過電圧や電池ブロック10の断線などを検出したりし、これらの検出結果を電池状態監視部23へ通知する。なお、かかるブロック監視部22の構成および動作については後で詳述する。
【0015】
また、電池状態監視部23は、例えば電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)である。かかる電池状態監視部23は、複数のブロック監視部22から取得した情報に基づいて、組電池1の充電状態を判定する。電池状態監視部23は、組電池1の充電状態を車両制御装置3へ通知したり、組電池1の充電状態に基づいて、リレー6をオフにして、組電池1に対する充放電を停止させたりすることができる。
【0016】
例えば、電池状態監視部23は、組電池1の電圧が許容値より大きい場合に組電池1またはブロック監視部22に異常があると判定し、リレー6をオフにして、組電池1に対する充放電を停止させることができる。また、電池状態監視部23は、ブロック監視部22によって電池ブロック10の異常が検出された場合、リレー6をオフにして、組電池1に対する充放電を停止させることができる。
【0017】
車両制御装置3は、組電池1の充電状態に応じて組電池1に対する充放電を行って車両を制御する。例えば、車両制御装置3は、組電池1に充電された電圧を電力変換器5に直流から交流の電圧に変換させ、変換された電圧を電動機4へ供給して電動機4を駆動させる。これにより、組電池1が放電される。
【0018】
また、車両制御装置3は、電動機4の回生制動によって発電した電圧を電力変換器5に交流から直流の電圧に変換させ、組電池1へ供給する。これにより、組電池1が充電される。このように、車両制御装置3は、組電池監視システム2から取得した組電池1の充電状態に基づいて組電池1の電圧を監視し、監視結果に応じた制御を実行する。
【0019】
[2.ブロック監視部22]
図2は、ブロック監視部22を含むサテライト基板21の構成例を示す図である。
図2に示すように、サテライト基板21は、電池ブロック10毎に設けられており、複数のセル接続端子T1と、通信端子T2と、出力端子T3、T5と、入力端子T4と、ブロック監視部22とを備える。
【0020】
ブロック監視部22は、複数のヒューズ30と、電源電圧生成部31と、セルモニタIC(Integrated Circuit)32と、通信部33と、過電圧検出部34と、高電圧検出部35とを備える。
【0021】
電源電圧生成部31は、電池ブロック10の正極と負極との間の電圧Vbr(以下、ブロック電圧Vbrと記載する場合がある)に基づいて、電源電圧Vcを生成する。かかる電源電圧Vc(<Vbr)は、電源電圧生成部31からセルモニタIC32、通信部33、過電圧検出部34および高電圧検出部35へ出力される。セルモニタIC32、通信部33、過電圧検出部34および高電圧検出部35は、電源電圧Vcによって動作する。
【0022】
各電池セル11の正極および負極のそれぞれは異なるセル接続端子T1に接続され、セルモニタIC32(セル電圧検出部の一例)は、複数のヒューズ30を介して各電池セル11の正極および負極のそれぞれと接続される。セル接続端子T1とセルモニタIC32との間に大きな電流が流れた場合、ヒューズ30が溶断し、セルモニタIC32が保護される。
【0023】
セルモニタIC32は、電池ブロック10を構成する各電池セル11の電圧(以下、セル電圧Vceと記載する場合がある)やブロック電圧Vbrを検出する。かかるセルモニタIC32は、例えば、電池状態監視部23から電圧検出要求に応じてセル電圧Vceやブロック電圧Vbrを検出し、かかる検出結果を電池状態監視部23へ通知することができる。
【0024】
通信部33は、絶縁性の通信インターフェイスであり、通信端子T2とセルモニタIC32との間に設けられる。かかる通信部33は、電池状態監視部23との間で通信信号S1を送受信する。かかる通信部33によってセルモニタIC32と電池状態監視部23との間の絶縁性を保ちつつ、電池状態監視部23とセルモニタIC32との間で通信を行うことができる。
【0025】
過電圧検出部34は、電池ブロック10の電圧が過電圧になったか否かを判定し、かかる判定結果を示す検出結果信号S2を出力端子T3経由で電池状態監視部23へ出力する。かかる過電圧検出部34は、ブロック電圧Vbrに対応する電圧と閾値電圧Vathとを比較し、かかる比較結果に基づいて電池ブロック10の過電圧を検出する。このように、セルモニタIC32に加え、過電圧検出部34を設けることで、電池ブロック10の電圧の監視をより適切に行うことができる。
【0026】
また、過電圧検出部34は、電池状態監視部23から入力端子T4へ入力される閾値調整要求信号S3に基づいて、閾値電圧Vathを変更することができる。これにより、閾値電圧Vathを電池状態監視部23から調整することができる。なお、かかる過電圧検出部34の構成については後で詳述する。
【0027】
高電圧検出部35は、「CID切れ」や「バスバー外れ」などのような電池ブロック10の断線が発生したか否かを判定し、かかる判定結果を示す検出結果信号S4を出力端子T5経由で電池状態監視部23へ出力することができる。なお、「CID切れ」は、電池セルに設けられた電流遮断デバイス(図示せず)が作動して電池セル11の電流経路が遮断された状態である。また、「バスバー外れ」は、電池セル11間を接続するバスバー(図示せず)が電池セル11間から外れた状態である。
【0028】
高電圧検出部35は、整流ブリッジ回路を有しており、かかる整流ブリッジ回路の出力電圧に基づいて、電池ブロック10の断線を検出する。そのため、高電圧検出部35は、電池ブロック10の放電時および充電時のいずれの場合においても、電池ブロック10の断線を精度よく検出することができる。
【0029】
このように、セルモニタIC32に加え、高電圧検出部35を設けることで、電池ブロック10の監視をより適切に行うことができる。また、高電圧検出部35により電池セルの断線を検出することで、フライングキャパシタにより電池セルの断線を検出する場合に比べ、低コスト化を図ることができる。なお、かかる高電圧検出部35の構成については後で詳述する。
【0030】
[3.過電圧検出部34の構成例]
図3は、過電圧検出部34の構成例を示す図である。
図3に示す過電圧検出部34は、分圧回路41と、閾値電圧出力部42と、コンパレータ43と、出力部44と、入力部45と、閾値電圧調整部46と、電源電圧監視部47とを備える。
【0031】
分圧回路41は、ブロック電圧Vbrに対応する電圧を生成する。具体的には、分圧回路41は、抵抗R1、R2を有しており、ブロック電圧Vbrを分圧した電圧である分圧電圧Va(=R2/(R1+R2))を生成する。なお、ブロック電圧Vbrに比例する電圧をコンパレータ43に出力できる構成であればよく、
図2に示す分圧回路41に限定されない。
【0032】
閾値電圧出力部42は、閾値電圧Vathを生成して出力する。かかる閾値電圧Vathは、ブロック電圧Vbrが正常範囲にある場合に、
分圧電圧Vaよりも高い電圧である。
【0033】
かかる閾値電圧出力部42は、例えば、分圧回路41と同様の分圧回路を有しており、
電源電圧Vcを分圧した電圧を閾値電圧Vathとして生成する。なお、閾値電圧出力部42は、例えば、抵抗とツェナーダイオードの直列回路などによって構成してもよい。
【0034】
コンパレータ43は、分圧電圧Vaと閾値電圧Vathとを比較し、かかる比較結果を示す検出信号Scmpを出力する。具体的には、コンパレータ43は、分圧電圧Vaが閾値電圧Vath以上である場合に、電池ブロック10が過電圧であることを示すHighレベルの検出信号Scmpを出力する。一方、コンパレータ43は、分圧電圧Vaが閾値電圧Vath未満である場合に、電池ブロック10が過電圧でないことを示すLowレベルの検出信号Scmpを出力する。
【0035】
このように、過電圧検出部34は、コンパレータ43により電池ブロック10が過電圧であるか否かを判定することから、フライングキャパシタとマイクロコンピュータとにより過電圧を検出する場合に比べ、過電圧検出部34を低コストで構成することができる。
【0036】
出力部44は、絶縁性の出力部であり、出力端子T3とコンパレータ43の出力との間に設けられる。かかる出力部44は、検出信号Scmpに応じた検出結果信号S2を電池状態監視部23へ出力する。かかる出力部44によって過電圧検出部34と電池状態監視部23との間の絶縁性を保ちつつ、検出信号Scmpに応じた検出結果信号S2を電池状態監視部23へ出力することができる。
【0037】
図4は、ブロック電圧Vbrが正常状態から過電圧になった場合の分圧電圧Va、検出信号Scmpおよび検出結果信号S2の変化の一例を示す図である。
図4に示すように、電池ブロック10の過充電などによって
分圧電圧Vaが閾値電圧Vath以上になった場合(時刻t1)、検出信号ScmpはLowレベルからHighレベルへ変化する。そのため、過電圧を示す検出結果信号S2が出力部44から電池状態監視部23へ出力される。
【0038】
図3に戻って、過電圧検出部34の説明を続ける。過電圧検出部34の入力部45は、絶縁性の入力部であり、入力端子T4と閾値電圧調整部46の出力との間に設けられる。入力部45は、閾値電圧Vathの調整を要求する閾値調整要求信号S3を電池状態監視部23から入力端子T4を介して受信する。
【0039】
かかる入力部45は、受信した閾値調整要求信号S3に応じた調整信号Adを閾値電圧調整部46へ出力する。かかる入力部45によって電池状態監視部23と過電圧検出部34との間の絶縁性を保ちつつ、電池状態監視部23と過電圧検出部34との間の通信を行うことができる。
【0040】
閾値電圧調整部46は、入力部45から出力された調整信号Adに基づいて、閾値電圧Vathを調整する。閾値調整要求信号S3および調整信号Adは、例えば、デューティ比を有するパルス信号であるが、閾値電圧Vathが調整できればよく、閾値調整要求信号S3および調整信号Adは、デューティ比を有するパルス信号に限定されない。
【0041】
閾値電圧調整部46は、調整信号Adのデューティ比に基づいて、閾値電圧Vathを調整することができる。この場合、例えば、閾値電圧出力部42には出力端にコンデンサが接続されており、かかるコンデンサの電荷を調整信号Adのデューティ比で放電させることで、コンデンサの電圧を減少させる。これにより、閾値電圧Vathが調整される。
【0042】
電池状態監視部23は、閾値調整要求信号S3を調整することによって、セルモニタIC32や過電圧検出部34が正常に動作しているかどうかの自己診断処理を実行することができ、サテライト基板21の故障などを精度よく検出することができる。
【0043】
例えば、電池状態監視部23は、セルモニタIC32による検出結果に基づいて、閾値電圧Vathが
分圧電圧Vaよりも少し高い程度の電圧になるように閾値調整要求信号S3を調整することができる。かかる調整により、異常ありを示す検出結果信号S2が出力部44から電池状態監視部23へ出力された場合、電池状態監視部23は、セルモニタIC32または過電圧検出部34に異常があることを検出することができる。
【0044】
また、電池状態監視部23は、セルモニタIC32による検出結果に基づいて、閾値電圧Vathが
分圧電圧Vaよりも少し低い程度の電圧になるように閾値調整要求信号S3を調整することができる。かかる調整により、異常ありを示す検出結果信号S2が出力部44から電池状態監視部23へ出力されない場合、電池状態監視部23は、セルモニタIC32または過電圧検出部34に異常があることを検出することができる。
【0045】
図5は、電池状態監視部23による自己診断処理が実行された場合の閾値電圧Vath、調整信号Adおよび検出信号Scmpの変化の一例を示す図である。なお、
図5においては、調整信号Adの大きさは、ディーティ比を示すものとし、また、セルモニタIC32は正常に動作しているものとする。
【0046】
図5に示すように、自己診断処理が実行される前(時刻t10よりも前)において、調整信号Adはディーティ比がゼロであり、閾値電圧調整部46によって閾値電圧Vathは調整されない。この状態では、閾値電圧Vathは、分圧電圧Vaよりもある程度高く、検出信号ScmpはLowレベルである。
【0047】
その後、時刻t10において、自己診断処理が実行されると、電池状態監視部23は、セルモニタIC32の検出結果に応じたブロック電圧Vbrに基づいてディーティ比がDuty1の閾値調整要求信号S3を生成する。
【0048】
このとき、入力部45から出力される調整信号Adのディーティ比はDuty1であり、閾値電圧調整部46によって閾値電圧Vathが調整され、閾値電圧Vathが分圧電圧Vaを少し上回るぐらいまで低下する。この状態では、閾値電圧Vathが分圧電圧Vaより高いため、検出信号ScmpはLowレベルである。
【0049】
一方で、例えば、分圧回路41が故障して分圧電圧Vaが通常よりも高い電圧Va’になっていると仮定する。この場合、時刻t11で閾値電圧Vathが電圧Va’を下回る。そのため、検出信号Scmpは、「Scmp’」に示すようにHighレベルになり、過電圧を示す検出結果信号S2が出力部44から電池状態監視部23へ出力される。
【0050】
したがって、電池状態監視部23は、過電圧検出部34から出力される検出結果信号S2に基づいて、分圧回路41の故障、すなわち、過電圧検出部34の異常を検出することができる。
【0051】
また、分圧回路41が正常である場合であっても、閾値電圧出力部42または閾値電圧調整部46の故障によって、閾値電圧Vathが通常よりも低くなった場合も同様に、閾値電圧Vathが分圧電圧Vaを
下回ることがある。この場合にも、過電圧検出部34から出力される検出結果信号S2に基づいて、閾値電圧出力部42または閾値電圧調整部46の故障、すなわち、過電圧検出部34の異常を検出することができる。
【0052】
電池状態監視部23は、過電圧検出部34に異常がないと判定した場合、時刻t12に、閾値調整要求信号S3のディーティ比をDuty1からDuty2へ上げる。これにより、Duty2の調整信号Adによって閾値電圧調整部46により閾値電圧Vathが調整され、閾値電圧Vathが分圧電圧Vaを少し下回るぐらいまで低下する。この状態では、閾値電圧Vathが分圧電圧Vaより低いため、検出信号ScmpはHighレベルであり、過電圧を示す検出結果信号S2が出力部44から電池状態監視部23へ出力される。
【0053】
一方、例えば、分圧回路41が故障して分圧電圧Vaが通常よりも低い電圧Va”になっていると仮定する。この場合、時刻t13〜t15の期間で閾値電圧Vathが電圧Va”を上回る。そのため、検出信号Scmpは、「Scmp”」に示すようにLowレベルのままであり、過電圧を示す検出結果信号S2は出力部44から電池状態監視部23へ出力されない。したがって、電池状態監視部23は、検出結果信号S2に基づいて、分圧回路41の故障、すなわち、過電圧検出部34の異常を検出することができる。
【0054】
また、分圧回路41が正常である場合であっても、閾値電圧出力部42または閾値電圧調整部46の故障によって、閾値電圧Vathが通常よりも高くなった場合も同様に、閾値電圧Vathが分圧電圧Vaを
上回ることがある。この場合にも、同様に過電圧検出部34の異常を検出することができる。
【0055】
なお、過電圧検出部34が正常であっても、セルモニタIC32が正常に動作しておらず、ブロック電圧Vbrが正常に検出できない場合、上述した場合と同様に、閾値調整要求信号S3に応じた適切な検出結果信号S2が出力されない場合がある。このような場合には、セルモニタIC32が故障等の異常を検出することができる。
【0056】
図3に戻って、過電圧検出部34の説明を続ける。過電圧検出部34の電源電圧監視部47は、電源電圧Vcが上昇する異常を検出することができる。電源電圧監視部47は、電源電圧Vcが閾値電圧Vcth以上に上昇した場合、電源電圧Vcが異常であると判定する。
【0057】
電源電圧Vcが異常であると判定した場合、電源電圧監視部47は、Highレベルの異常検出信号Sabを出力部44へ出力し、異常を示す検出結果信号S2を出力部44から電池状態監視部23へ出力させる。なお、異常を示す検出結果信号S2は、過電圧を示す検出結果信号S2と共用することで、出力部44の構成を簡易化することができる。
【0058】
閾値電圧Vathの大きさが電源電圧Vcの大きさに依存して変化する場合、電源電圧Vcが上昇する異常が発生すると、閾値電圧Vathも上昇する。そのため、電池ブロック10が過電圧になる場合に、分圧電圧Vaが閾値電圧Vath以上になるまでの時間がかかったり、分圧電圧Vaが閾値電圧Vath以上にならなかったりする場合がある。このような場合、過電圧の検出が遅れたり、過電圧の検出ができなかったりするため、電池ブロック10がさらに過充電されてしまうおそれがある。
【0059】
そこで、電源電圧監視部47は、電源電圧Vcが閾値電圧Vcth以上に上昇した場合、電源電圧Vcの異常であると判定し、出力部44から異常を示す検出結果信号S2を電池状態監視部23へ出力させる。これにより、電池状態監視部23は、例えば、リレー6(
図1参照)をオフにし、組電池1への充放電を停止させることができ、電池ブロック10の過充電の抑制が遅延することを防止することができる。
【0060】
図6は、電源電圧Vcが上昇する異常が発生する前後の状態における電源電圧Vc、分圧電圧Vaおよび異常検出信号Sabの状態変化を示す図である。
図6に示すように、時刻t20において、電源電圧生成部31に故障が発生した場合、電源電圧Vcが上昇し、かかる電源電圧Vcの上昇に伴って閾値電圧Vathが上昇する。
【0061】
そして、電源電圧Vcが閾値電圧Vcth以上になった場合(時刻t21)、電源電圧監視部47は、電源電圧Vcが異常であることを示すHighレベルの異常検出信号Sabを出力部44へ出力する。これにより、出力部44から異常を示す検出結果信号S2が電池状態監視部23へ出力される。
【0062】
このように、過電圧検出部34は、電源電圧監視部47を有しており、電源電圧Vcの異常によって過電圧の検出が遅れるような場合や過電圧の検出ができないような場合であっても、電池ブロック10を適切に保護することができる。
【0063】
[4.過電圧検出部34の具体的な構成例]
図7は、過電圧検出部34の具体的な構成例を示す図である。
図7に示すように、閾値電圧出力部42は、抵抗R3〜R5と、コンデンサC1を備える。
電源電圧Vcは、抵抗R3、R4によって分圧され、かかる分圧電圧は、抵抗R5を介してコンデンサC1へ入力され、コンデンサC1の両端電圧が、閾値電圧Vathとして出力される。
【0064】
かかる閾値電圧出力部42は、入力端子T4への閾値調整要求信号S3の入力がない場合、すなわち、閾値調整要求信号S3のデューティ比がゼロである場合、
電源電圧Vcの分圧電圧を閾値電圧Vath(=R4/(R3+R4))として出力する。
【0065】
一方、閾値電圧出力部42は、入力端子T4への閾値調整要求信号S3の入力がある場合、閾値電圧調整部46によって閾値調整要求信号S3に応じてコンデンサC1の両端電圧が低下させられる。そのため、かかる低下後の電圧が閾値電圧Vathとなる。
【0066】
出力部44は、抵抗R6〜R8、R18と、コンデンサC2と、トランジスタQ1、Q2と、フォトカプラPC1とを備える。なお、トランジスタQ1は、NPN型トランジスタであり、トランジスタQ2は、PNP型トランジスタである。
【0067】
図7に示すように、抵抗R6とトランジスタQ1とによって第1のエミッタ接地回路が構成され、抵抗R7とトランジスタQ2とによって第2のエミッタ接地回路が構成される。そして、トランジスタQ1のコレクタがトランジスタQ2のベースに入力される。
【0068】
かかる構成によって、コンパレータ43から出力される検出信号ScmpがLowレベルの場合、トランジスタQ1がオフであり、トランジスタQ2がオフである。そのため、検出信号ScmpがLowレベルの場合、フォトカプラPC1はオフであり、出力端子T3を構成する端子T3aとT3bとは接続されていない状態であることから過電圧を示す検出結果信号S2は出力端子T3から出力されない。
【0069】
一方、コンパレータ43から出力される検出信号ScmpがHighレベルの場合、トランジスタQ1がオンであり、トランジスタQ2がオンである。そのため、検出信号ScmpがHighレベルの場合、フォトカプラPC1はオンであり、端子T3aとT3bとが接続された状態であることから過電圧を示す検出結果信号S2が出力端子T3から出力される。
【0070】
このように、フォトカプラPC1によって検出結果信号S2が出力端子T3から出力されるため、絶縁性を高めつつ、電池状態監視部23と過電圧検出部34との間の通信を行うことができる。なお、抵抗R6およびコンデンサC2はノイズ除去用のフィルタを構成する。これにより、フォトカプラPC1がノイズ等の影響によってオンになってしまうことを防止することができる。
【0071】
入力部45は、フォトカプラPC2と抵抗R9、R10とを有する。フォトカプラPC2のダイオードは、入力端子T4を構成する端子T4aとT4bとの間に接続される。したがって、端子T4aとT4bとの間に電流が流れた場合にフォトカプラPC2はオンになり、端子T4aとT4bとの間に電流が流れない場合にはフォトカプラPC2はオフになる。
【0072】
図7に示す過電圧検出部34の構成の場合、閾値調整要求信号S3は、電池状態監視部23によってデューティ比が調整されたパルス信号である。抵抗R9は、フォトカプラPC2のトランジスタのコレクタと電源電圧Vcとの間に接続されており、抵抗R10は、フォトカプラPC2のトランジスタのエミッタとグランドとの間に接続されている。
【0073】
抵抗R9の抵抗値は、抵抗R10の抵抗値に対して十分に小さい。そのため、フォトカプラPC2がオンのとき、調整信号Adは、Highレベルになり、フォトカプラPC2がオフのとき、調整信号Adは、Lowレベルになる。これにより、入力部45は、閾値調整要求信号S3のディーティ比と同じデューティ比の調整信号Adを出力する。
【0074】
閾値電圧調整部46は、抵抗R11と、トランジスタQ3とを備える。調整信号Adは、トランジスタQ3のゲートに入力される。調整信号Adがオフ(Lowレベル)の場合、トランジスタQ3がオフになり、コンデンサC1は抵抗R11を介してグランドに接続されない。
【0075】
一方、調整信号Adがオン(Highレベル)の場合、トランジスタQ3がオンになり、コンデンサC1が抵抗R11およびトランジスタQ3を介してグランドに接続される。そのため、調整信号Adのデューティ比がゼロでない場合、コンデンサC1の電圧が低下して閾値電圧Vathが低下し、調整信号Adのディーティ比が高いほど、閾値電圧Vathを低下させることができる。
【0076】
電源電圧監視部47は、抵抗R12と、コンパレータ48と、トランジスタQ4とを備える。コンパレータ48の非反転入力端子には電源電圧Vcが入力され、コンパレータ48の反転入力端子には閾値電圧Vcthが入力される。なお、閾値電圧Vcthはブロック電圧Vbrから生成される。例えば、ブロック電圧Vbrをツェナーダイオードに抵抗を介して接続することによって、ツェナーダイオードのツェナーを閾値電圧Vcthとすることができる。
【0077】
電源電圧Vcが閾値電圧Vcth未満である場合、コンパレータ48はLowレベルの信号を出力する。そのため、トランジスタQ4はオフであり、Highレベルの異常検出信号Sabが出力されるため、過電圧の異常がない場合、フォトカプラPC1はオフである。一方、電源電圧Vcが閾値電圧Vcth以上である場合、コンパレータ48はHighレベルの信号を出力する。そのため、トランジスタQ4はオンであり、Lowレベルの異常検出信号Sabが出力され、フォトカプラPC1はオンである。
【0078】
[5.電池状態監視部23]
次に、上述した自己診断処理を行う電池状態監視部23の構成および動作についてさらに詳細に説明する。
図8は、電池状態監視部23の構成のうち自己診断処理を行う構成例を示す図であり、その他の機能を行う構成については省略している。
【0079】
図8に示すように、電池状態監視部23は、通信端子T10と、入力端子T11と、出力端子T12と、通信部60と、ブロック電圧値要求部61と、ブロック電圧値取得部62と、閾値電圧調整要求部63と、異常判定部64とを備える。
【0080】
かかる電池状態監視部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。マイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、通信部60、ブロック電圧値要求部61、ブロック電圧値取得部62、閾値電圧調整要求部63および異常判定部64として機能する。
【0081】
また、通信部60、ブロック電圧値要求部61、ブロック電圧値取得部62、閾値電圧調整要求部63および異常判定部64の少なくともいずれかまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0082】
通信部60は、通信端子T10を介して通信信号S1をセルモニタIC32との間で例えばシリアルデータ形式またはパラレルデータ形式で情報や要求を送受信する。ブロック電圧値要求部61は、通信部60から電圧検出要求をセルモニタIC32へ出力する。これにより、セルモニタIC32に電池セル11の電圧または電池ブロック10の電圧を検出させる。
【0083】
ブロック電圧値取得部62は、電圧検出要求に応じてセルモニタIC32から送信される各電池セル11の電圧値または電池ブロック10の電圧値の情報を取得する。ブロック電圧値取得部62は、セルモニタIC32から各電池セル11の電圧値を取得した場合、電池ブロック10を構成するすべての電池セル11の電圧値を積算することで電池ブロック10の電圧値の情報を取得する。
【0084】
閾値電圧調整要求部63は、ブロック電圧値取得部62によって取得された電池ブロック10の電圧値に基づいて、電池ブロック10の電圧値に応じたデューティ比の閾値調整要求信号S3を生成して、出力端子T12を介して過電圧検出部34へ出力する。
【0085】
かかる閾値電圧調整要求部63は、例えば、過電圧検出部34毎に対応するブロック電圧Vbrに応じたデューティ比の閾値調整要求信号S3を生成して、過電圧検出部34毎の閾値調整要求信号S3を出力端子T12から出力することができる。なお、出力端子T12は、過電圧検出部34毎に設けられており、これにより、過電圧検出部34毎に閾値調整要求信号S3を出力することができる。
【0086】
また、閾値電圧調整要求部63は、複数の過電圧検出部34に対して共通の閾値調整要求信号S3を生成して、かかる共通の閾値調整要求信号S3を出力端子T12から複数の過電圧検出部34へ出力することができる。この場合、閾値電圧調整要求部63は、複数のブロック電圧Vbrの平均値、最小値または最大値に対応するデューティ比の閾値調整要求信号S3を共通の閾値調整要求信号S3として生成することができる。
【0087】
また、出力端子T12は、過電圧検出部34毎に設けられてもよいが、複数の過電圧検出部34に対して出力端子T12を共通化することができる。例えば、複数の過電圧検出部34の入力端子T4をカスケード接続し、カスケード接続された複数の入力端子T4の一端と他端を出力端子T12に接続する構成にもできる。これにより、出力端子T12の数を低減することができ、電池状態監視部23の小型化を図ることができる。
【0088】
かかる閾値電圧調整要求部63は、第1デューティ比出力部65と、第2デューティ比出力部66とを備える。第1デューティ比出力部65は、過電圧検出部34毎に対応するブロック電圧Vbrよりも少し高い程度の電圧になるようなデューティ比の閾値調整要求信号S3を生成して出力端子T12を介して過電圧検出部34へ出力する。
【0089】
なお、第1デューティ比出力部65は、複数の過電圧検出部34に対して共通の閾値調整要求信号S3を生成する場合、複数のブロック電圧Vbrの最大値より閾値電圧Vathの方が少し高い程度の電圧になるようなデューティ比の閾値調整要求信号S3を生成することもできる。
【0090】
また、第2デューティ比出力部66は、過電圧検出部34毎に対応するブロック電圧Vbrよりも少し低い程度の電圧になるようなデューティ比の閾値調整要求信号S3を生成して出力端子T12を介して過電圧検出部34へ出力する。
【0091】
なお、第2デューティ比出力部66は、複数の過電圧検出部34に対して共通の閾値調整要求信号S3を生成する場合、複数のブロック電圧Vbrの最小値よりも閾値電圧Vathの方が少し低い程度の電圧になるようなデューティ比の閾値調整要求信号S3を生成することもできる。
【0092】
異常判定部64は、第1デューティ比出力部65からの検出結果信号S2が過電圧検出部34へ出力された際に、過電圧検出部34から出力された閾値調整要求信号S3が異常ありを示す場合、セルモニタIC32または過電圧検出部34が異常であると判定する。また、異常判定部64は、第2デューティ比出力部66からの検出結果信号S2が過電圧検出部34へ出力された際に、過電圧検出部34から出力された閾値調整要求信号S3が異常なしを示す場合、セルモニタIC32または過電圧検出部34が異常であると判定する。
【0093】
なお、入力端子T11は、過電圧検出部34毎に設けられており、出力端子T3を構成する端子T3a、T3bをそれぞれ接続する2つの端子を備える。これにより、過電圧検出部34毎に検出結果信号S2を入力することができる。
【0094】
異常判定部64には、出力端子T3を構成する端子T3a、T3b間の導通状態を検出する検出部(図示せず)を有しており、かかる検出部によって、過電圧検出部34毎の検出結果信号S2の状態を判定し、過電圧検出部34毎に過電圧異常や電源電圧異常を検出する。なお、端子T3a、T3b間の導通状態は、例えば、端子T3a、T3b間に電圧を印加し、その際に電流が流れるか否かによって判定することができる。
【0095】
また、複数の過電圧検出部34に対して入力端子T11を共通化することができる。例えば、複数の過電圧検出部34の出力端子T3を入力端子T11に並列に接続する構成にもできる。これにより、複数の過電圧検出部34のうちいずれか一つに過電圧異常や電源電圧異常が生じたことを検出可能としつつ入力端子T11の数を低減することができ、電池状態監視部23の小型化を図ることができる。
【0096】
図9は、電池状態監視部23が行う自己診断処理の流れを示すフローチャートである。なお、セルモニタIC32は正常であるとして説明する。
【0097】
図9に示すように、電池状態監視部23は、過電圧検出部34の自己診断開始タイミングであるか否かを判定する(ステップS10)。過電圧検出部34の自己診断開始タイミングであると判定した場合(ステップS10;Yes)、電池状態監視部23は、セルモニタIC32へ電圧検出要求を行い、ブロック電圧Vbrの情報を取得する(ステップS11)。
【0098】
次に、電池状態監視部23は、ステップS11で取得したブロック電圧Vbrよりも少し高い程度の電圧になるようなデューティ比の閾値調整要求信号S3を生成して出力端子T12を介して過電圧検出部34へ出力する(ステップS12)。その後、電池状態監視部23は、検出結果信号S2が正常を示すか否かを判定する(ステップS13)。
【0099】
検出結果信号S2が正常を示すと判定した場合(ステップS13;Yes)、電池状態監視部23は、ブロック電圧Vbrよりも少し低い程度の電圧になるようなデューティ比の閾値調整要求信号S3を生成して出力端子T12を介して過電圧検出部34へ出力する(ステップS14)。その後、電池状態監視部23は、検出結果信号S2が異常を示すか否かを判定する(ステップS15)。
【0100】
検出結果信号S2が異常を示すと判定した場合(ステップS15;Yes)、電池状態監視部23は、過電圧検出部34は正常であると判定する(ステップS16)。一方、ステップS13において検出結果信号S2が正常を示さないと判定した場合(ステップS13;No)、または、検出結果信号S2が異常を示さないと判定した場合(ステップS15;No)、ステップS15において電池状態監視部23は、過電圧検出部34は異常であると判定する(ステップS17)。
【0101】
自己診断開始タイミングではないと判定した場合(ステップS10;No)、ステップS16またはステップS17の処理が終了した場合、
図9に示す処理をステップS10から繰り返し行う。
【0102】
[6.高電圧検出部35]
次に、高電圧検出部35について説明する。
図10は、高電圧検出部35の構成例を示す図である。
【0103】
図10に示すように、高電圧検出部35は、整流ブリッジ回路51と、断線検出部52とを備える。整流ブリッジ回路51は、電池ブロック10の負極と正極との間に接続され、ブロック電圧Vbrを整流して出力する。
【0104】
断線検出部52は、整流ブリッジ回路51の出力電圧Vreが所定電圧Vreth以上である場合に、電池ブロック10の断線があることを示す検出結果信号S4(以下、断線を示す検出結果信号S4と記載する)を出力する。一方、整流ブリッジ回路51の出力電圧Vreが所定電圧Vreth未満である場合に、断線を示す検出結果信号S4を出力しない。
【0105】
断線検出部52は、後で詳述するように、例えば、複数の電圧制限回路を有する構成であり、これらの制限電圧回路の出力電圧差が所定値以上である場合に、出力電圧Vreが所定電圧Vreth以上であるとして、断線を示す検出結果信号S4を出力することができる。
【0106】
また、断線検出部52は、例えば、出力電圧Vreを分圧する分圧回路とコンパレータを有する構成であってもよい。この場合、断線検出部52は、出力電圧Vreの分圧電圧が所定電圧以上である場合に、出力電圧Vreが所定電圧Vreth以上であるとして、断線を示す検出結果信号S4を出力することができる。
【0107】
図11は、電池セル11が有する電流遮断デバイス(CID)の作動状態と、電池セル11の充放電状態と、電流遮断デバイスの両端電圧との関係を説明するための図である。なお、
図11において、CID切れが発生した場合を「CID切れ」と記載し、CID切れが発生してない場合を「CID正常」と記載している。また、CID切れが発生した場合の電流遮断デバイスの両端電圧は、一例として±300Vであるとしている。
【0108】
図11に示すように、電池ブロック10の放電中にCID切れが発生するとCID切れ発生箇所の電圧Vcid(以下、CID電圧Vcidと記載する)は、+300Vになり、電池ブロック10の充電中にCID切れが発生するとCID電圧Vcidは、−300Vになる。
【0109】
上述したように、電池ブロック10の両極間は、整流ブリッジ回路51に接続されており、かかる整流ブリッジ回路51によってブロック電圧Vbrが整流されて整流ブリッジ回路51から出力される。したがって、CID電圧Vcidが+300Vであっても−300Vであっても、整流ブリッジ回路51から同じ正電圧が出力される。
【0110】
そのため、整流ブリッジ回路51の出力電圧Vreを監視することで、電池ブロック10の充電時にCID切れが発生した場合であっても、電池ブロック10の充電時にセル電流遮断が発生した場合であっても、CID切れを精度よく検出することができる。
【0111】
また、バスバー外れの場合、CID切れの場合と同様に、バスバーが外れた電池ブロック10間で正の高電圧または負の高電圧が発生するため、整流ブリッジ回路51の出力電圧Vreを監視することで、電池ブロック10の充電時と放電時とに関わらず、バスバー外れを精度よく検出することができる。
【0112】
さらに、高電圧検出部35は、
図2に示すように、ヒューズ30を介さずに電池ブロック10の両端(負極と正極)に接続される。そのため、例えば、電池ブロック10の断線によってセルモニタIC32と電池ブロック10との間に過電流が流れてヒューズ30が溶断された場合であっても、電池ブロック10の断線を検出することができる。
【0113】
したがって、電池ブロック10の断線によって、ヒューズ30が溶断し、セルモニタIC32および過電圧検出部34によって電池ブロック10の電圧が検出できず、電池状態監視部23への電圧の情報を通知できない場合であっても、電池ブロック10の断線を検出することができる。
【0114】
[7.高電圧検出部35の具体的な構成例]
図12は、高電圧検出部35の具体的な構成例を示す図である。
図12に示すように、整流ブリッジ回路51は、4つのダイオードD10〜D13がブリッジ接続されたダイオードブリッジ回路で構成される。
【0115】
断線検出部52は、第1電圧制限回路53と、第2電圧制限回路54と、判定部55と、出力部56とを備える。
【0116】
第1電圧制限回路53は、出力電圧Vreが第1電圧V1以下である場合に、出力電圧Vreに応じた電圧を出力電圧Vcp1として出力し、整流ブリッジ回路51の出力電圧Vreが第1電圧V1より高い場合に、出力電圧Vcp1を第1電圧V1に制限して出力する。なお、「出力電圧Vreに応じた電圧」は、第1電圧制限回路53の入出力間の電圧を無視できるとした場合、出力電圧Vreと同じ電圧である。
【0117】
第1電圧V1は、電池ブロック10が正常である場合のブロック電圧Vbrよりも高い電圧に設定される。例えば、ブロック電圧Vbrの正常値が110V以下である場合、第1電圧V1は、例えば、130Vに設定される。
【0118】
したがって、ブロック電圧Vbrの正常値である場合、ブロック電圧Vbrに応じた電圧が出力電圧Vcp1として第1電圧制限回路53から出力される。一方、電池ブロック10の断線などによってブロック電圧Vbrが正常値に対して高電圧になった場合、第1電圧V1が出力電圧Vcp1として第1電圧制限回路53から出力される。
【0119】
かかる第1電圧制限回路53は、抵抗R20と、コンデンサC10と、ツェナーダイオードZD1とを備える。抵抗R20の一端は、整流ブリッジ回路51の出力に接続され、抵抗R20の他端とグランドとの間にはコンデンサC10およびツェナーダイオードZD1が並列に接続される。なお、抵抗R20とコンデンサC10とによりRCフィルタが構成される。
【0120】
ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧は、第1電圧V1に設定されており、出力電圧Vreが第1電圧V1より低い場合、出力電圧Vreに応じた電圧が出力電圧Vcp1として出力される。
【0121】
一方、整流ブリッジ回路51の出力電圧Vreが第1電圧V1より高い場合、ツェナーダイオードZD1によって抵抗R20の他端の電圧がクランプされる。これにより、出力電圧Vreが第1電圧V1を超える場合に、第1電圧制限回路53の出力電圧Vcp1が第1電圧V1になり、第2電圧制限回路54および判定部55に加わる電圧を第1電圧V1以下に制限することができる。
【0122】
そのため、第2電圧制限回路54および判定部55に高電圧が加わることを避けることができ、高電圧が加わる場合に比べ、第2電圧制限回路54および判定部55を構成する各素子の定格電圧を抑えることができ、低コスト化や小型化を図ることができる。
【0123】
第2電圧制限回路54は、出力電圧Vcp1が第1電圧V1よりも低い第2電圧V2(<V1)以下である場合に、出力電圧Vcp1に応じた電圧を出力電圧Vcp2として出力する。なお、「出力電圧Vcp1に応じた電圧」は、第2電圧制限回路54の入出力間の電圧を無視できるとした場合、出力電圧Vcp1と同じ電圧である。
【0124】
一方、第2電圧制限回路54は、第1電圧制限回路53の出力電圧Vcp1が第2電圧V2より高い場合に、出力電圧Vcp2を第2電圧V2に制限して出力する。
【0125】
第2電圧V2は、電池ブロック10が正常である場合のブロック電圧Vbrよりも高い電圧に設定され、かつ、第1電圧V1よりも低い電圧に設定される。例えば、ブロック電圧Vbrの正常値が110V以下である場合、第2電圧V2は、例えば、120Vに設定される。
【0126】
第2電圧制限回路54は、抵抗R21と、コンデンサC11と、ツェナーダイオードZD2とを備え、第1電圧制限回路53と同様に構成される。ただし、ツェナーダイオードZD2のツェナー電圧は、第2電圧V2に設定されており、第1電圧制限回路53の出力電圧Vcp1が第2電圧V2以下である場合、出力電圧Vreに応じた電圧が出力電圧Vcp2として出力される。
【0127】
一方、第1電圧制限回路53の出力電圧Vcp1が第2電圧V2を超える場合、ツェナーダイオードZD2によって抵抗R21の他端の電圧がクランプされる。これにより、第1電圧制限回路53の出力電圧Vcp1が第2電圧V2を超える場合に、第2電圧制限回路54の出力電圧Vcp2が第1電圧V1よりも低い第2電圧V2になる。
【0128】
したがって、電池ブロック10の断線などによってブロック電圧Vbrが高電圧になった場合、第1電圧制限回路53から第1電圧V1が出力電圧Vcp1として出力され、第2電圧制限回路54から第2電圧V2が出力電圧Vcp2として出力される。このように、電池ブロック10の断線が発生した場合、出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2とは、電圧差ΔV(=V1−V2)を生じる。
【0129】
そこで、判定部55は、出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2との差に基づいて、電池ブロック10の断線があるか否かを判定する。例えば、判定部55は、出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2との差が所定値ΔVcp(<ΔV)以上である場合に、電池ブロック10の断線があると判定する。一方、判定部55は、出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2との差が所定値ΔVcp未満である場合、電池ブロック10の断線がないと判定する。
【0130】
判定部55は、例えば、入力抵抗R22とトランジスタQ10とを備える。トランジスタQ10のエミッタには、第1電圧制限回路53の出力電圧Vcp1が入力され、トランジスタQ10のベースには、入力抵抗R22を介して第2電圧制限回路54の出力電圧Vcp2が入力される。
【0131】
そのため、出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2との電圧差がトランジスタQ10の閾値電圧以上になった場合にトランジスタQ10がオンになり、電池ブロック10の断線があると判定した状態になる。したがって、
図12に示す回路の場合、所定値ΔVcpは、トランジスタQ10の閾値電圧以上の電圧である。一方、出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2との電圧差がトランジスタQ10の閾値電圧未満である場合、トランジスタQ10はオフであり、電池ブロック10の断線がないと判定した状態になる。
【0132】
出力部56は、絶縁性の出力部であり、判定部55の出力と出力端子T5との間に設けられる。かかる出力部56は、電池状態監視部23へ判定部55の判定結果に応じた検出結果信号S4を出力する。かかる出力部56によって高電圧検出部35と電池状態監視部23との間の絶縁性を保ちつつ、判定部55の判定結果に応じた検出結果信号S4を電池状態監視部23へ出力することができる。
【0133】
かかる出力部56は、抵抗R23と、フォトカプラPC3とを備える。フォトカプラPC3のダイオード側は、抵抗R23と直列接続され、フォトカプラPC3のトランジスタ側には、出力端子T5を構成する端子T5aとT5bが接続される。
【0134】
トランジスタQ10がオフである場合、フォトカプラPC3はオフであり、端子T5aとT5bとは接続されていない状態であり、断線を示す検出結果信号S4は出力端子T5から出力されない。一方、トランジスタQ10がオンである場合、フォトカプラPC3はオンであり、端子T5aとT5bとは接続された状態であり、断線を示す検出結果信号S4が出力端子T5から出力される。
【0135】
なお、電池状態監視部23は、端子T5aとT5bとにそれぞれ接続される2つの端子を有する入力端子T15(図示せず)と、入力端子T15の2つの端子の導通状態を検出する検出部(図示せず)を有している。電池状態監視部23は、かかる検出部によって、高電圧検出部35毎の検出結果信号S4の状態を判定し、高電圧検出部35毎に電池ブロック10の断線を検出することができる。なお、端子T5aとT5b間の導通状態は、例えば、端子T5aとT5b間に電圧を印加し、その際に電流が流れるか否かによって判定することができる。
【0136】
また、電池状態監視部23は、複数の高電圧検出部35の出力端子T5を入力端子T15(図示せず)に並列に接続する構成にもできる。これにより、複数の高電圧検出部35のうちいずれか一つに電池ブロック10の断線が生じたことを検出可能としつつ入力端子T15の数を低減することができ、電池状態監視部23の小型化を図ることができる。なお、複数の高電圧検出部35の出力端子T5は、入力端子T11に出力端子T3と並列に接続されてもよい。
【0137】
このように、
図12に示す断線検出部52は、ブロック電圧Vbrの正常値よりも高い電圧制限であって制限電圧が互いに異なる2つの電圧制限回路を設け、これらの電圧制限回路の出力の差に基づき、電池ブロック10の断線があるか否かを判定することができる。そのため、例えば、抵抗、ツェナーダイオード、コンデンサおよびトランジスタのみを用いた比較的簡易かつ安価に断線検出部52を構成することができる。
【0138】
なお、
図12に示す判定部55では、トランジスタQ10によって、出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2との電圧差が所定値以上であることを検出したが、かかる構成に限定されない。
【0139】
例えば、抵抗R23とフォトカプラPC3の直列回路(
図12参照)の抵抗R23側に出力電圧Vcp1を入力し、かかる直列回路のフォトカプラPC3側に出力電圧Vcp2を入力する構成であってもよい。これにより、抵抗R23とフォトカプラPC3の直列回路に出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2との電圧差ΔVに応じた電流が流れる。
【0140】
また、この場合、抵抗R23とフォトカプラPC3の直列回路に1以上のダイオードを直列に追加することでフォトカプラPC3がオンになる出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2との電圧差を調整することができる。この場合、ダイオードの順方向はフォトカプラPC3の順方向と同じである。
【0141】
図13は、電池ブロック10の放電時にCID切れの発生によるCID電圧Vcid、出力電圧Vre、Vcp1、Vcp2、および、検出結果信号S4の変化を示す図である。
【0142】
図13に示すように、電池ブロック10の放電時にCID切れが発生した場合(時刻t31)、CID電圧Vcidおよび出力電圧Vre、Vcp1、Vcp2が上昇する。そして、第1電圧制限回路53の出力電圧Vcp1が第2電圧V2より高くなった場合(時刻t32)、第2電圧制限回路54の出力電圧Vcp2が第2電圧V2に制限される。
【0143】
その後、第1電圧制限回路53の出力電圧Vcp1が上昇して、出力電圧Vcp1と出力電圧Vcp2との電圧差が所定値ΔVcp以上になった場合(時刻t33)に、判定部55が電池ブロック10の断線があると判定し、出力部56が断線を示す検出結果信号S4を出力端子T5から出力する。
【0144】
図14は、電池ブロック10の充電時にCID切れの発生によるCID電圧Vcid、出力電圧Vre、Vcp1、Vcp2、および、検出結果信号S4の変化を示す図である。
【0145】
図14に示すように、電池ブロック10の充電時にCID切れが発生した場合(時刻t31)、CID電圧Vcidが負電圧になるが、整流ブリッジ回路51から出力される出力電圧Vreは、
図13に示す場合と同様に正電圧である。そのため、
図13に示す場合と同様に、判定部55が電池ブロック10の断線があると判定し、出力部56が断線を示す検出結果信号S4を出力端子T5から出力することができる。
【0146】
ここで、出力部56の抵抗R23とフォトカプラPC3のダイオードとに流れる電流Iaと、フォトカプラPC3のオン/オフとの関係を説明する。
図15は、CID電圧Vcid、電流IaおよびフォトカプラPC3のオン/オフ状態を示す図である。
【0147】
図15に示すように、CID電圧Vcidが所定電圧Vcidth以上になった場合に、電流Iaが閾値Ith以上となって、フォトカプラPC3がオンになり、断線を示す検出結果信号S4が出力端子T5から出力される。なお、所定電圧Vcidthは、所定電圧Vrethに対応する電圧であり、整流ブリッジ回路51の内部ロス分を無視した場合、例えば、Vcidth=Vrethである。
【0148】
以上のように、高電圧検出部35は、整流ブリッジ回路51を有し、かかる整流ブリッジ回路51の出力電圧Vreに基づいて電池ブロック10の断線を検出する。そのため、電池ブロック10が充電状態である場合も放電状態である場合も、電池ブロック10の断線を同様の構成にて検出することができる。
【0149】
なお、
図12に示す高電圧検出部35は、第2電圧制限回路54の入力側が第1電圧制限回路53の出力側に接続されるが、高電圧検出部35は
図12に示す構成に限定されない。
図16は、高電圧検出部35の他の構成例を示す図である。
図16に示す高電圧検出部35は、第2電圧制限回路54の入力側が整流ブリッジ回路51の出力側に接続される。
【0150】
図16に示す高電圧検出部35は、第1電圧制限回路53の入力側と第2電圧制限回路54の入力側とがそれぞれ整流ブリッジ回路51の出力側に接続される。そのため、コンデンサC10によって出力電圧Vcp1の立ち上がりが遅延する場合であっても、かかる遅延による出力電圧Vcp2の立ち上がりの遅延を抑制することができる。そのため、電池ブロック10の断線を迅速に検出することができる。
【0151】
以上のように、実施形態に係るブロック監視部22(電圧監視装置の一例)は、複数の電池ブロック10を有する組電池1の電池ブロック10毎に設けられる。かかるブロック監視部22は、閾値電圧出力部42と、コンパレータ43と、出力部44とを備える。閾値電圧出力部42は、閾値電圧Vathを出力する。コンパレータ43は、ブロック電圧Vbr(電池ブロックの電圧)の分圧電圧Vaと閾値電圧Vathとを比較し、電池ブロック10の過電圧を検出する。出力部44は、コンパレータ43による過電圧の検出結果を出力する。このように、ブロック監視部22は、コンパレータ43により電池ブロック10が過電圧であるか否かを判定することから、フライングキャパシタとマイクロコンピュータとにより過電圧を検出する場合に比べ、ブロック監視部22を低コストで構成することができる。
【0152】
また、ブロック監視部22は、入力部45と、閾値電圧調整部46とを備える。入力部45は、閾値電圧Vathの調整を要求する閾値調整要求信号S3を入力する。閾値電圧調整部46は、入力部45に入力された閾値調整要求信号S3に基づいて、閾値電圧Vathを調整する。このように、ブロック監視部22は、ブロック監視部22の外部から閾値電圧Vathを変更することができることから、電池ブロック10の過電圧やブロック監視部22の故障を精度よく検出することができる。
【0153】
また、閾値調整要求信号S3は、ブロック電圧Vbrに応じたデューティ比を有するパルス信号であり、閾値電圧調整部46は、閾値調整要求信号S3のディーティ比に基づいて、閾値電圧Vathを調整する。閾値調整要求信号S3をパルス信号にすることで、絶縁性を保ちつつも、閾値電圧Vathを多段階に調整するための閾値調整要求を簡単な構成で電池状態監視部23からブロック監視部22へ送ることができる。
【0154】
また、ブロック監視部22は、電源電圧生成部31と、電源電圧監視部47とを備える。電源電圧生成部31は、ブロック電圧Vbrに基づいて、電源電圧Vcを生成する。閾値電圧出力部42は、電源電圧Vcに比例する電圧を閾値電圧Vathとして出力する。電源電圧監視部47は、電源電圧Vcの上昇に基づいて、電源電圧Vcの異常を検出する。出力部44は、電源電圧監視部47による電源電圧Vcの異常の検出結果を出力する。これにより、閾値電圧Vathの大きさが電源電圧Vcの大きさに依存して変化する場合に、過電圧の検出が遅れた場合などにおいても、電池ブロック10の過充電を抑制することが可能になる。
【0155】
また、出力部44は、フォトカプラPC2を備える。かかるフォトカプラPC2は、コンパレータ43による過電圧の検出結果に応じてON/OFFして、コンパレータ43による過電圧の検出結果を出力する。これにより、例えば、ブロック監視部22と外部(例えば、電池状態監視部23)との間で絶縁性を保ちつつ、簡易な構成で過電圧の検出結果を外部(例えば、電池状態監視部23)へ出力することができる。
【0156】
また、実施形態に係る組電池監視システム2は、ブロック監視部22を複数備えると共に、複数のブロック監視部22との間で通信を行う電池状態監視部23とを備える。電池状態監視部23は、ブロック監視部22での過電圧の検出結果に基づいて、組電池1の充放電を停止する。これにより、電池ブロック10毎にブロック監視部22を設けつつ、ブロック監視部22での過電圧の検出結果に基づいて、組電池1の充放電を停止することができる。
【0157】
また、実施形態に係る組電池監視システム2は、セルモニタIC32(セル電圧検出部の一例)を備える。セルモニタIC32は、ブロック電圧Vbrまたは複数のセル電圧Vce(電池ブロック10を構成する複数の電池セルの電圧)を検出する。電池状態監視部23は、セルモニタIC32によって検出された電圧に基づいて、閾値電圧出力部42が出力する閾値電圧Vathよりも低くブロック電圧Vbrよりも高い電圧になるように閾値電圧調整部46に閾値電圧Vathを調整させる要求を閾値調整要求信号S3として出力する。その後、電池状態監視部23は、ブロック監視部22から過電圧の検出結果が出力された場合に、ブロック監視部22に異常があると判定する。これにより、ブロック監視部22の故障を精度よく検出することができる。
【0158】
また、電池状態監視部23は、セルモニタIC32によって検出された電圧に基づいて、ブロック電圧Vbrよりも低い電圧になるように閾値電圧調整部46に閾値電圧Vathを調整させる要求を閾値調整要求信号S3として出力する。その後、電池状態監視部23は、ブロック監視部22から過電圧の検出結果が出力された場合に、ブロック監視部22に異常があると判定する。これにより、ブロック監視部22の故障を精度よく検出することができる。
【0159】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。