【文献】
医療薬学,日本,日本医療薬学会,2003年,Vo. 29, No. 1,p.92-99
【文献】
薬剤学,1997年,vol. 57, No. 2,pp.86-94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゼラチン(A)と、水(B)と、アセトアミノフェン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物(C)とを含有し、前記(C)成分の質量/前記(A)成分の質量が2.3〜9.0であり、pHが1.0〜3.5である内服用半固形製剤。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(内服用半固形製剤)
本発明の内服用半固形製剤は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含有し、pHが1.0〜3.5である。
本発明における内服用半固形製剤とは、第十七改正 日本薬局方の製剤総則における、経口ゼリー剤及び錠剤項中のゼリー状ドロップ剤に準ずる。
すなわち、内服用半固形製剤は、(B)成分中に(A)成分を分散させたゲル状又はゾル状の基材に、(C)成分が分散したものである。
本発明における内服用半固形製剤は、ゼリー性状又はグミ性状の製剤であり、ゼリー強度が10〜2000gであることが好ましい。内服用半固形製剤のゼリー強度は、50〜2000gであることがより好ましく、100〜1600gであることがさらに好ましい。内服用半固形製剤のゼリー強度が前記下限値以上であれば、内服用半固形製剤の強度が向上し、服用性が向上する。内服用半固形製剤のゼリー強度が前記上限値以下であれば、強度が高くなりすぎず、服用性が向上する。
本発明におけるゼリー強度とは、JIS K6503に準じ、10℃において、12.7mm径のプランジャーで内服用半固形製剤に荷重をかけ、内服用半固形製剤表面が4mm押し下げられた時の重さ(単位:g)を意味する。
【0009】
本発明の内服用半固形製剤の寸法は特に限定されず、(A)、(B)、(C)成分の配合量及び用量等を考慮して適宜決定することができる。内服用半固形製剤の取り扱いやすさの観点から、内服用半固形製剤の径として5〜40mmφが好ましく、7〜30mmφがより好ましい。また、内服用半固形製剤1個あたりの重量としては0.3〜10g程度が適切である。
形状は特に限定されないが、球状、楕円球、直方体、円柱、角柱、円錐、角錐が挙げられ、球状、楕円球、直方体、円柱、角柱が好ましい。実施例では上下に凸部のある楕円球状の内服用半固形製剤を使用した。
【0010】
内服用半固形製剤のpH範囲は1.0以上3.5以下が好ましく、1.0以上3.3以下がより好ましく、1.0以上3.0以下がさらに好ましい。
pHは、ガラス電極式pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM−30R」)を用い、内服用半固形製剤を溶解した液にガラス電極を直接に浸漬し、1分間経過後に示す値である。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分はゼラチンである。(A)成分を含有することにより、本発明の内服用半固形製剤は、ゲル状又はゾル状となる。
ゼラチンの重量分子量は、数万〜数十万の間で特に限定されないが、30,000〜270,000が好ましく、50,000〜260,000がより好ましく、110,000〜250,000がさらに好ましい。ゼラチンの重量分子量が前記下限値以上であれば、内服用半固形製剤の強度が向上し、服用性が向上する。ゼラチンの重量分子量が前記上限値以下であれば、強度が高くなりすぎず、服用性が向上する。
【0012】
(分子量測定方法)
本発明において、ゼラチンの重量平均分子量(Mw)は、写真用ゼラチン試験法(PAGI法)第10版「20−1分子量分布」に記載されている方法に従って算出することができる。具体的には、PAGI法は、高速液体クロマトグラフィーを用いたゲル濾過法によってゼラチンのクロマトグラムを求め、その分子量分布を推定する方法である。具体的な操作は以下に示す。
装置として、高速液体クロマトグラフ、カラム(Shodex Asahipak GS620 7G 2本:昭和電工社製)、紫外吸光検出器を用いる。
試薬として、(1)0.1mol/lリン酸二水素カリウム溶液、(2)0.1mol/lリン酸二水素ナトリウム溶液を用意し、これらを等量混合し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものを溶離液とする。
検液の調整方法は試料ゼラチン2.0gを100mlメスフラスコに量り取り、溶離液を加えて1時間膨潤させた後、40℃で約60分間加熱して溶かす。そして室温まで冷却した後、溶離液を標線まで加える。この溶液を溶離液で正確に10倍希釈し検液とする。検液は使用直前に孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過を行う。
測定操作としてはカラム2本を直列に装着し、溶離液の流速を1.0ml/分、カラムの温度50℃、検液の注入量は100μl、測定波長230nmの吸光度として測定する。保持時間を横軸にとり、対応した230nmの吸光度を縦軸にして、試料ゼラチンの分子量分布曲線を作成する。なお、評価は、分子量分布曲線全体の形状で行う。
【0013】
ゼラチンとしては、その種類等については特に制限がなく、例えば、牛や豚等の骨や皮、鯨、魚に由来するものが挙げられ、中でも牛、魚、豚が好ましく、牛、豚がより好ましく、豚由来が最も好ましい。前記ゼラチンは、酸処理ゼラチン(等電点pH6〜9)であってもよいし、アルカリ処理ゼラチン(等電点pH4.8〜5.2)であってもよいが、酸処理ゼラチンが好ましい。
ゼラチンのゼリー強度は、100g以上が好ましく、150g以上がより好ましく、200g以上がさらに好ましい。
ゼラチンの粘度は1.0〜8.0mPa・sが好ましく、1.2〜7.5mPa・sがより好ましく、1.5〜7.0mPa・sが最も好ましい。
なお、粘度の測定方法はJIS K 6503−2001に従う。
ゼラチンの配合量は特に限定されないが、内服用半固形製剤100質量%に対し2〜50質量%が好ましく、3〜40質量%がより好ましく、4〜30質量%がさらに好ましい。内服用半固形製剤100質量%中の(A)成分の含有量が前記下限値以上であれば、内服用半固形製剤が粉状に崩れにくく硬すぎないため、服用性が向上する。内服用半固形製剤100質量%中の(A)成分の含有量が前記上限値以下であれば、内服用半固形製剤をつまんだ際に変形して分断されることがないため、取り扱いやすく、服用性が向上する。また、この範囲とすることで優れた熱安定性を示す。
【0014】
<(B)成分>
(B)成分は水である。(B)成分を含有することにより、本発明の内服用半固形製剤は、適度に柔軟となり、服用しやすいものとなる。水は、精製水であってもよいし、蒸留水や水道水であってもよい。
水の配合量は特に限定されないが、内服用半固形製剤100質量%に対し15〜75質量%が好ましく、17〜73質量%がより好ましく、18〜70質量%がさらに好ましい。内服用半固形製剤100質量%中の(B)成分の含有量が前記下限値以上であれば、内服用半固形製剤が粉状に崩れにくく硬すぎないため、服用性が向上する。内服用半固形製剤100質量%中の(B)成分の含有量が前記上限値以下であれば、内服用半固形製剤をつまんだ際に変形して分断されることがないため、取り扱いやすく、服用性が向上する。
また、([(A)成分の質量]/[(A)成分の質量+(B)成分の質量])×100で表される質量比は、5〜40質量%が好ましく、6〜35質量%がより好ましく、7〜30質量%がさらに好ましい。
【0015】
<(C)成分>
(C)成分は、アスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、ロキソプロフェン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物である。(C)成分は、本発明の内服用半固形製剤における薬物成分(有効成分)であり、(C)成分を含有することで、内服用半固形製剤の保形性(熱安定性)が維持される。これら(C)成分の中でも、内服用半固形製剤としての熱安定性の向上効果の観点から、アスピリンが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(C)成分の含有量は、(C)成分の種類に応じて適宜決定され、例えば、内服用半固形製剤100質量%に対し5〜75質量%が好ましく、7〜73質量%がより好ましく、9〜70質量%がさらに好ましい。この範囲とすることで優れた熱安定性効果が発揮される。
また、(A)成分の質量に対する(C)成分の質量の比((C)成分の質量/(A)成分の質量)としては、0.1〜10が好ましく、0.2〜9.5がより好ましく、0.4〜9.0が最も好ましい。
【0016】
(アスピリン)
アスピリンの粒子径は、特に限定されないが、0.5〜500μmが好ましく、1〜400μmがより好ましく、5〜300μmがさらに好ましい。この範囲とすることで優れた熱安定性効果が発揮される。
なお、粒度分布はBECKMAN COULTER社のレーザ錯乱回折法粒度分布測定装置(LS13320)にて測定される。
【0017】
(イブプロフェン)
イブプロフェンの粒子径は、特に限定されないが、0.5〜200μmが好ましく、1〜150μmがより好ましく、5〜100μmがさらに好ましい。この範囲とすることで優れた熱安定性効果が発揮される。なお、粒度分布の測定は、アスピリンに準じる。
【0018】
(アセトアミノフェン)
アセトアミノフェンの粒子径は、特に限定されないが、0.5〜500μmが好ましく、1〜450μmがより好ましく、5〜400μmがさらに好ましい。この範囲とすることで優れた熱安定性効果が発揮される。なお、粒度分布の測定は、アスピリンに準じる。
【0019】
(ロキソプロフェン)
ロキソプロフェンの粒子径は、特に限定されないが、0.5〜400μmが好ましく、1〜350μmがより好ましく、5〜300μmがさらに好ましい。この範囲とすることで優れた熱安定性効果が発揮される。なお、粒度分布の測定は、アスピリンに準じる。
【0020】
<(D)成分>
(D)成分は、糖類である。(D)成分を含有することで、酸性薬物の内服用半固形製剤における含有量低下をさらに抑制することができる。
(D)成分としては、白糖、粉末麦芽還元糖水飴、キシリトール、ソルビトール、マルトース、トレハロース、マンニトール、ラクトースが好ましく、白糖、粉末麦芽還元糖水飴、キシリトール、ソルビトールがより好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(D)成分の粒子径は特に限定されないが1〜700μmが好ましく、1〜650μmがより好ましく、1〜600μmが最も好ましい。この範囲とすることで優れた薬物含量低下の抑制効果が発揮される。
(D)成分の配合量は、特に限定されないが、内服用半固形製剤100質量%に対し5〜60質量%が好ましく、10〜55質量%がより好ましく、15〜50質量%がさらに好ましい。
この範囲とすることで優れた薬物含量低下の抑制効果を発揮する。なお、粒度分布は(C)成分と同様の測定装置にて測定される。
【0021】
<(E)成分>
(E)成分は、無機金属塩である。(E)成分を含有することで、本発明の内服用半固形製剤の味をさらに改善することができる。
(E)成分としては、マグネシウム及びアルミニウムの双方もしくは一方の無機金属塩が好ましい。具体的には乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物が挙げられる。これらの中でも乾燥水酸化アルミニウムゲルが好ましい。
(E)成分の粒子径は、特に限定されないが、1〜500μmが好ましく、10〜350μmがより好ましく、20〜300μmがさらに好ましい。この範囲とすることで優れた味・食感の改善効果を発揮する。
(E)成分の配合量は、特に限定されないが、内服用半固形製剤100質量%に対し0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1.5〜10質量%がさらに好ましい。この範囲とすることで優れた味・食感の改善効果を発揮する。なお、粒度分布は(C)成分と同様の測定装置にて測定される。
【0022】
<任意成分>
内服用半固形製剤には製剤の物性、保存安定性を損なわない範囲で任意に、その他の生理活性成分や添加剤を配合しても良い。
生理活性成分としては、たとえば、(E)成分以外の制酸剤や(C)成分以外の解熱鎮痛成分(例えば、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、エテンザミド、スルピリン等)、鎮静催眠成分(例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl−メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等)等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、塩酸ジフェンヒドラミン、アリルイソプロピルアセチル尿素、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、無水カフェイン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、dl−メチルエフェドリンが好ましい。
【0023】
本発明のゲル化剤または増粘剤としては、アルギン酸、寒天、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、ペクチン、アラビアガム、トラガンドガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、プルラン、カゼイン、カルボキシメチルスターチが挙げられる。中でも、アルギン酸、寒天、カラギーナン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシセルロースが好ましい。
【0024】
添加剤の例としては賦形剤、崩壊剤、香料、滑沢剤、甘味剤、酸味
剤、pH調整剤などが挙げられる。具体的には、賦形剤としては、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、L−システイン等を用いることができる。
香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
甘味
剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
酸味
剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等を用いることができる。
pH調整剤としては、塩酸、リン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、酪酸が挙げられ、塩酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸が好ましい。
これらpH調整剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組合せられて用いられてもよい。
なお、(A)成分〜(E)成分及び任意成分の合計は、100質量%を超えない。
【0025】
(製造方法)
本発明の内服用半固形製剤の製造方法は、(B)成分中に(A)成分及び(C)成分が分散され、pH1.0〜3.5である原料液をゲル化させる工程(成形工程)を有する。
例えば、内服用半固形製剤の製造方法は、(A)成分を(B)成分中に加熱溶解する加熱溶解工程と、加熱溶解工程で得られたゼラチン溶解液に(C)成分及び任意成分を混合して原料液を得る混合工程と、成形工程とを有する。
さらに、本発明では、上記混合工程中に(D)成分及び(E)成分を添加する工程を有し、製剤の味の改善や薬物含量の低下を抑制することができる。(D)成分に関しては、粉のまま添加しても(B)成分に溶解させた後に添加しても良いが、適量の(B)成分で溶かした状態で添加することが好ましい。
以下、各工程について具体的に説明する。
【0026】
<加熱溶解工程>
加熱溶解工程は、(A)成分を(B)成分で膨潤させた後に加熱し、ゼラチン溶解液を得る工程である。
加熱温度は40〜90℃が好ましく、50〜80℃がより好ましく、60〜70℃がさらに好ましい。
【0027】
<混合工程>
混合工程は、上記のゼラチン溶解液に(D)〜(E)各成分を混合した後、pH調整剤にてpHを1.0〜3.5に調整し、(C)成分を混合して原料液を得る工程である。
本発明では、上記の各成分を混合する方法は特に限定されないが、(A)〜(E)成分を手混合で、又は公知の攪拌機を使用して混合することができる。なお、(B)〜(E)の各成分を混合する際、各成分の原末を通常の条件で均一に混合すればよいが、(D)成分に関しては、(B)成分で溶かした状態が好ましい。
本発明で使用できる混合(攪拌)機の具体例としては、スリーワンモータ等の撹拌機を挙げることができる。本発明では、これらの中でも良好な混合性を得る観点からスリーワンモータを好適に使用することができる。
【0028】
なお、(C)成分を混合する順序は特に限定されず、前述した加熱溶解工程で(A)成分と共に(B)成分に分散させてもよく、あらかじめ適量の(B)成分で分散させた状態で添加してもよい。
(C)成分の(B)成分に対する溶解度を考慮すると、前述した加熱溶解工程を経た後で、(C)成分を混合することが好ましい。
【0029】
<成形工程>
成形工程は、上記の原料液を型に流し、冷却することで内服用半固形製剤を得る工程である。型の材質は特に限定されないが、コーンスターチ、プラスチック、ステンレス、鉄などを用いることができ、コーンスターチが好ましい。
冷却時間は1時間から24時間が好ましく、2時間から18時間がより好ましく、3時間から12時間がさらに好ましい。
冷却温度は、−5〜30℃が好ましく、−3〜29℃がより好ましく、0〜28℃がさらに好ましい。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用した原料は下記の<使用原料>に示す通りである。
なお、実施例1〜3、5〜28は、参考例である。
【0031】
<使用原料>
ゼラチン:ニッピ社製、「AP-270」分子量110,000。
アスピリン:「RODINE3220」(粒子径:89μm)。
イブプロフェン:BASF社製、「IBUPROFEN25」(粒子径:26μm)。
ロキソプロフェンナトリウム水和物:大和薬品工業(株)製、「ロキソプロフェンナトリウム水和物」(粒子径:195μm)。
アセトアミノフェン:マリンクロットジャパン(株)製、「アセトアミノフェン」(粒子径:114μm)。
ケトプロフェン:相互薬工(株)製、「ケトプロフェン」(粒子径:20μm)。
乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業社製、「S−100」(粒子径:112μm)。
酸化マグネシウム:富田製薬(株)製、「酸化マグネシウムNK」日本薬局方(粒子径:35μm)。
合成ヒドロタルサイト:協和化学工業(株)製、「アルカマックVF」(粒子径:35μm)。
炭酸カルシウム:備北粉化工業製、「沈降炭酸カルシウム」(粒子径:3μm)。
炭酸マグネシウム:富田製薬社製、粒子径(163μm)。
白糖:三井製糖社製、「白糖」(粒子径:560μm) 。
粉末麦芽還元糖水飴:三菱商事フードテック社製、「アマルティMR-50」(粒子径:52μm)。
キシリトール:三菱商事フードテック社製、「キシリット」(粒子径:210μm)。
ソルビトール:三菱商事フードテック社製、「ソルビット」(粒子径:152μm)。
塩酸:和光純薬製、「試薬特級」。
リンゴ酸:和光純薬製、「D−Lリンゴ酸」。
【0032】
<熱安定性評価方法>
各例の内服用半固形製剤をトレイに入れ、トレイごとアルミガゼットで包装した。これを50℃の恒温槽に4日間保存した。保存前後における内服用半固形製剤の質量を測定し、保存前の内服用半固形製剤の質量に対する保存後の内服用半固形製剤の質量の割合(残存率(質量%))を求めた。以下の評価基準により熱安定性を評価した。
(評価基準)
5点:90質量%以上固形分が残っている。
4点:80以上90質量%未満固形分が残っている。
3点:70以上80質量%未満固形分が残っている。
2点:50以上70質量%未満固形分が残っている。
1点:50質量%より多く溶解している。
なお、3点以上で合格とした。
【0033】
<味の評価方法>
各例の内服用半固形製剤を服用し、以下の5段階で味を評価した。服用した内服用半固形製剤は飲み込まず、評価を終えた時点で吐き出した。なお、対象者は健常男性9名で実施し、平均点の小数点以下第1位を四捨五入した。
(評価基準)
5点:不快味を全く感じない。
4点:不快味を殆ど感じない。
3点:不快味を少し感じる。
2点:不快味が感じられるが服用できる。
1点:強い不快味を感じ服用が憚られる。
なお、2点以上で合格とした。
【0034】
<薬物含有量評価方法>
各例の内服用半固形製剤をトレイに入れ、トレイごとアルミガゼットで包装した。これを50℃75%RHの恒温槽に4日間保存した。保存前後における薬物の含有量を測定し、保存前の薬物の含有量に対する保存後の薬物の含有量の割合(対初期値含量(質量%))を算出した。薬物の対初期含有量を、以下の通り評価した。なお、アスピリン、イブプロフェン、ケトプロフェンの定量試験は、第十七改正 日本薬局方に記載のアスピリン、イブプロフェン、ケトプロフェンの定量試験法に準拠し実施した。
(評価基準)
5点:対初期値含量が90質量%以上。
4点:対初期値含量が85以上90質量%未満。
3点:対初期値含量が80以上85質量%未満。
2点:対初期値含量が75以上80質量%未満。
1点:対初期値含量が70質量%未満。
−:薬物が入っていない。
なお、3点以上を合格とした。
【0035】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
表1の配合量に従い、(A)成分であるゼラチンを(B)成分である精製水で膨潤させ、60℃にて溶解させた後、塩酸にてゼラチン溶解液のpHを2.5に調整した。このゼラチン溶解液に(C)成分としてアスピリンまたはイブプロフェン、ロキソプロフェン二水和物、アセトアミノフェンを添加し、原料液を得た。この原料液をコーンスターチの型(半径8mmの半球形)に表1に記載の配合量になるように流し込み、蓋をして5℃の冷蔵庫で7時間冷却し、上下に凸部のある楕円球状の内服用半固形製剤を得た。得られた内服用半固形製剤について、熱安定性、味、薬物の対初期値含量について評価した(表1)。
その結果、(C)成分であるアスピリンまたはイブプロフェン、ロキソプロフェン二水和物、アセトアミノフェンを添加した場合、内服用半固形製剤の熱安定性が向上した。
一方、比較例1に示すとおり、(C)成分を添加しなかった内服用半固形製剤は、50℃4日間で50質量%以上溶解していた。また、比較例2に示すとおり、(C)成分以外の医薬成分であるケトプロフェンを添加した場合でも内服用半固形製剤は、50質量%以上溶解していた。
【0036】
【表1】
【0037】
(実施例5〜8、比較例3)
表2の配合量に従い、pH調整剤である塩酸の配合量を変化させる以外は実施例1と同様に原料液を調整し、pHが異なる楕円球状の内服用半固形製剤を得た。実施例1と同様に保存後の内服用半固形製剤の熱安定性、味、薬物の対初期値含量について評価した(表2)。
その結果、ゼラチン溶解液のpHが1.4〜3.3の際に熱安定性を示した。また、ゼラチン溶解液のpHが3.3においても、味や薬物含量について問題が無かった。
一方、比較例3に示すとおり、ゼラチン溶解液のpHを4.5とした内服用半固形製剤は、熱安定性は問題が無かったものの、アスピリンの含量の低下が見られた。
【0038】
【表2】
【0039】
(実施例9〜16)
表3の配合量に従い、(C)成分のアスピリン配合量及び(B)成分の精製水をそれぞれ変化させる以外は実施例1と同様に原料液を調整した。得られた楕円球状の内服用半固形製剤について、前述の実施例と同様に保存後の熱安定性、味、薬物の対初期値含量について評価した(表3)。
その結果、(C)成分を内服用半固形製剤100質量%に対し、14質量%以上添加した場合に熱安定性を示した。特に(C)成分を内服用半固形製剤100質量%に対し26質量%以上添加した場合に良好な熱安定性を示した。味と薬物含量については、問題が無い範囲であり、味に関しては特に(C)成分を内服用半固形製剤100質量%に対し57質量%以下にした際に良好であった。また、([(A)成分の質量]/[(A)成分の質量+(B)成分の質量])×100で表される質量比が9.0質量%以上の際に良好な熱安定性を示した。
【0040】
【表3】
【0041】
(実施例17〜21)
表4の配合量に従い、ゼラチン溶解液に、(D)成分の白糖、粉末麦芽還元糖水飴、キシリトール、ソルビトールのいずれか1種を溶解させた((B)成分として記載した精製水の5割ほどを流用し溶解させた。)。この溶解液を塩酸にてpHを2.5に調整した。さらに(C)成分としてアスピリンを添加し、原料液を得た。この原料液を実施例1と同様に調整し、楕円球状の内服用半固形製剤を得た。前述の実施例と同様に熱安定性、味、薬物の対初期値含量について評価した(表4)。
その結果、(D)成分である白糖、粉末麦芽還元糖水飴、キシリトール、ソルビトールのいずれか1種類を添加した場合において、内服用半固形製剤の薬物含量低下がより良好に抑制された。特に粉末麦芽還元糖水飴を添加した場合、薬物含量の低下抑制に関しても高い効果が得られた。
一方、任意成分としてコーンスターチを配合した場合では薬物の含量低下抑制効果は確認されなかった。実施例1と同じ製剤中の水分比率とした場合においても、同様に(D)成分を配合することで薬物の含量低下抑制効果が確認された。
【0042】
【表4】
【0043】
(実施例22〜27)
表5の配合量に従い、ゼラチン溶解液に、(E)成分として乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウムのいずれか1種を混合した。この溶解液を塩酸にてpHを2.5に調整した。さらに(C)成分としてアスピリンを添加し、原料液を得た。この原料液を実施例1と同様に調整し、楕円球状の内服用半固形製剤を得た。前述の実施例と同様に保存後の熱安定性、味、薬物の対初期値含量について評価した(表5)。
その結果、何れの(E)成分を添加した場合においても、内服用半固形製剤の味を改善する効果があった。特に乾燥水酸化アルミニウムゲルを添加した場合、高い効果が得られた。
一方、任意成分としてコーンスターチを配合した場合では、製剤の味を改善する効果は確認されなかった。さらに、(D)成分としてソルビトール、(E)成分として乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用した実施例27は、熱安定性、味、薬物の対初期値含量何れも最良の結果が得られた。
【0044】
【表5】
【0045】
(実施例28)
表6の配合量に従い、ゼラチン溶解液にリンゴ酸を粉で添加し、pHを3.0に調整した。さらに(C)成分としてアスピリンを添加し、原料液を得た。この原料液を実施例1と同様に調整し、楕円球状の内服用半固形製剤を得た。
前述の実施例と同様に保存後の熱安定性、味、薬物の対初期値含量について評価した結果、pH調整剤をリンゴ酸に変更しても良好な熱安定性を示した(表6)。また、味や薬物の対初期値含量についても良好であった。
【0046】
【表6】