(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測距光を発する発光素子と、前記測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、前記反射測距光を受光し、受光信号を発生する受光素子とを有し、該受光素子からの前記受光信号に基づき測定対象物の測距を行う測距部と、測距光軸上に設けられ、該測距光軸を偏向する光軸偏向部と、前記測距光軸の偏角を検出する射出方向検出部と、前記光軸偏向部の偏向作動及び前記測距部の測距作動を制御する制御部とを具備し、前記光軸偏向部は、前記測距光軸上を中心として回転可能な一対の光学プリズムと、該光学プリズムを個々に独立して回転するモータとを具備し、
前記制御部は、前記一対の光学プリズムの回転方向、回転速度、回転比の制御により前記光軸偏向部による偏向を制御し、
前記制御部は、前記2つの光学プリズムを所定の関係で全周回転させることで測定可能な全範囲を全体スキャンし、
前記制御部は、測定可能な全範囲内の一部に局所測定範囲を設定し、
前記制御部は、前記2つの光学プリズムをそれぞれ個別に所定の偏角範囲で回転し、又前記2つの光学プリズムを一体に所定の角度で回転させ、前記局所測定範囲に対応したスキャン条件で前記局所測定範囲を前記測距光により局部的に局所スキャンさせスキャンデータを取得する様構成され、
前記光軸偏向部によって偏向されない前記測距光軸と平行な撮像光軸を有する撮像部を更に具備し、該撮像部による画像取得とスキャンとは同期され、
全体スキャンと同期させて第1画像を取得し、局所スキャンと同期させて第2画像を取得し、前記全体スキャンの結果と前記局所スキャンの結果とを前記第1画像と前記第2画像との画像マッチングで合成する様構成されたレーザスキャナ。
測距光を発する発光素子と、前記測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、前記反射測距光を受光し、受光信号を発生する受光素子とを有し、該受光素子からの前記受光信号に基づき測定対象物の測距を行う測距部と、測距光軸上に設けられ、該測距光軸を偏向する光軸偏向部と、前記測距光軸の偏角を検出する射出方向検出部と、前記光軸偏向部の偏向作動及び前記測距部の測距作動を制御する制御部とを具備し、前記光軸偏向部は、前記測距光軸上を中心として回転可能な一対の光学プリズムと、該光学プリズムを個々に独立して回転するモータとを具備し、
前記制御部は、前記一対の光学プリズムの回転方向、回転速度、回転比の制御により前記光軸偏向部による偏向を制御し、
前記制御部は、測定可能な全範囲内の一部に局所測定範囲を設定し、
前記制御部は、前記2つの光学プリズムをそれぞれ個別に所定の偏角範囲で回転し、又前記2つの光学プリズムを一体に所定の角度で回転させ、前記局所測定範囲に対応したスキャン条件で前記局所測定範囲を前記測距光により局部的に局所スキャンさせスキャンデータを取得する様構成され、
前記光軸偏向部によって偏向されない前記測距光軸と平行な撮像光軸を有する撮像部と、画像処理部とを更に具備し、該画像処理部は前記撮像部により取得した画像からエッジ抽出処理をし、前記制御部は抽出されたエッジを含む様に前記局所測定範囲を設定し、
前記制御部は、前記全範囲内で複数の前記局所測定範囲を前記局所スキャンし、得られた該局所スキャンの結果に基づき、前記撮像部で取得した画像の補正を行う様構成されたレーザスキャナ。
前記スキャンデータは、距離データと反射光量データとを含み、前記距離データに基づき距離に応じた表示で作成される距離画像、又は反射光量データに基づく濃淡表示で作成される距離画像が作成される請求項1又は請求項2に記載のレーザスキャナ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0021】
先ず、
図1に於いて、本実施例に係るレーザスキャナを具備する測量システムについて概略を説明する。
【0022】
図1中、1は測量システムであり、Oは光軸が偏向されていない状態での測距光軸を示し、この時の測距光軸を基準光軸とする。
【0023】
前記測量システム1は、主に支持装置としての三脚2、レーザスキャナ3、操作装置4、回転台5から構成される。該回転台5は前記三脚2の上端に取付けられ、前記回転台5に前記レーザスキャナ3が横回転可能及び縦回転可能に取付けられる。又、前記回転台5は、前記レーザスキャナ3の横方向の回転角(水平方向の回転角)を検出する機能を具備している。
【0024】
前記回転台5には横方向に延びるレバー7が設けられる。該レバー7の操作により、前記レーザスキャナ3を上下方向(鉛直方向)、又は横方向(水平方向)に回転させることができ、又所要の姿勢で固定することも可能となっている。
【0025】
前記レーザスキャナ3は、測距部(後述)、姿勢検出部(後述)を内蔵し、前記測距部は測距光を測定対象物、或は測定範囲に射出し、反射測距光を受光して測距を行う。又、前記姿勢検出部は、前記レーザスキャナ3の鉛直(又は水平)に対する姿勢を高精度に検出可能である。
【0026】
前記操作装置4は、前記レーザスキャナ3との間で有線、無線等所要の手段を介して通信を行う通信機能を有する。又、前記操作装置4は、アタッチメント8を介して前記レーザスキャナ3に着脱可能となっており、取外した前記操作装置4は片手で保持し、操作可能であり、該操作装置4により前記レーザスキャナ3を遠隔操作可能となっている。
【0027】
更に、前記レーザスキャナ3からは、画像、測定状態、測定結果等が前記操作装置4に送信され、該画像、測定状態、測定結果等が、前記操作装置4に記憶され、或は表示部(図示せず)に表示される様になっている。該操作装置4は、例えばスマートフォンであってもよい。
【0028】
図2を参照して、前記レーザスキャナ3について説明する。
【0029】
前記レーザスキャナ3は、測距光射出部11、受光部12、測距演算部13、撮像部14、射出方向検出部15、モータドライバ16、姿勢検出部17、第1通信部18、演算制御部19、第1記憶部20、撮像制御部21、画像処理部22を具備し、これらは筐体9に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部11、前記受光部12、前記測距演算部13等は測距部を構成する。
【0030】
前記測距光射出部11は射出光軸26を有し、該射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、前記射出光軸26上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡29と、受光光軸31(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡32とによって、前記射出光軸26は、前記受光光軸31と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡29と前記第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。
【0031】
前記発光素子27はパルスレーザ光線を発し、前記測距光射出部11は、前記発光素子27から発せられたパルスレーザ光線を測距光23として射出する。
【0032】
前記受光部12について説明する。該受光部12には、測定対象物(即ち測定点)からの反射測距光24が入射する。前記受光部12は、前記受光光軸31を有し、該受光光軸31には、上記した様に、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32によって偏向された前記射出光軸26が合致する。尚、該射出光軸26と前記受光光軸31とが合致した状態を測距光軸40とする(
図1参照)。
【0033】
偏向された前記射出光軸26上に、即ち前記受光光軸31上に光軸偏向部35(後述)が配設される。該光軸偏向部35の中心を透過する真直な光軸は、前記基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部35によって偏向されなかった時の前記射出光軸26又は前記受光光軸31と合致する。
【0034】
前記光軸偏向部35を透過し、入射した前記受光光軸31上に結像レンズ34が配設され、又受光素子33、例えばフォトダイオード(PD)が設けられている。前記結像レンズ34は、前記反射測距光24を前記受光素子33に結像する。該受光素子33は前記反射測距光24を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部13に入力される。該測距演算部13は、受光信号に基づき測定点迄の測距を行う。
【0035】
図3を参照して、前記光軸偏向部35について説明する。
【0036】
該光軸偏向部35は、一対の光学プリズム36a,36bから構成される。該光学プリズム36a,36bは、それぞれ円板状であり、前記受光光軸31上に直交して配置され、重なり合い、平行に配置されている。前記光学プリズム36a,36bとして、それぞれフレネルプリズムが用いられることが、装置を小型化する為に好ましい。
【0037】
前記光軸偏向部35の中央部は、前記測距光23が透過し、射出される第1光軸偏向部である測距光偏向部35aとなっており、中央部を除く部分は前記反射測距光24が透過し、入射する第2光軸偏向部である反射測距光偏向部35bとなっている。
【0038】
前記光学プリズム36a,36bとして用いられるフレネルプリズムは、それぞれ平行に形成されたプリズム要素37a,37bと多数のプリズム要素38a,38bによって構成され、円板形状を有する。前記光学プリズム36a,36b及び各プリズム要素37a,37b及びプリズム要素38a,38bは同一の光学特性を有する。
【0039】
前記プリズム要素37a,37bは、前記測距光偏向部35aを構成し、前記プリズム要素38a,38bは前記反射測距光偏向部35bを構成する。
【0040】
前記フレネルプリズムは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なフレネルプリズムを製作できる。
【0041】
前記光学プリズム36a,36bはそれぞれ前記受光光軸31を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム36a,36bは、回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出される前記測距光23の前記射出光軸26を任意の方向に偏向し、受光される前記反射測距光24の前記受光光軸31を前記射出光軸26と平行に偏向する。
【0042】
前記光学プリズム36a,36bの外形形状は、それぞれ前記受光光軸31を中心とする円形であり、前記反射測距光24の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム36a,36bの直径が設定されている。
【0043】
前記光学プリズム36aの外周にはリングギア39aが嵌設され、前記光学プリズム36bの外周にはリングギア39bが嵌設されている。
【0044】
前記リングギア39aには駆動ギア41aが噛合し、該駆動ギア41aはモータ42aの出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア39bには駆動ギア41bが噛合し、該駆動ギア41bはモータ42bの出力軸に固着されている。前記モータ42a,42bは、前記モータドライバ16に電気的に接続されている。
【0045】
前記モータ42a,42bは、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いてモータの回転量を検出してもよい。前記モータ42a,42bの回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ16により前記モータ42a,42bが個別に制御される。尚、エンコーダを直接前記リングギア39a,39bにそれぞれ取付け、エンコーダにより前記リングギア39a,39bの回転角を直接検出する様にしてもよい。
【0046】
前記駆動ギア41a,41b、前記モータ42a,42bは、前記測距光射出部11と干渉しない位置、例えば前記リングギア39a,39bの下側に設けられている。
【0047】
前記投光レンズ28、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32、前記測距光偏向部35a等は、投光光学系を構成し、前記反射測距光偏向部35b、前記結像レンズ34等は受光光学系を構成する。
【0048】
前記測距演算部13は、前記発光素子27を制御し、前記測距光23としてパルスレーザ光線を発光させる。該測距光23が、前記プリズム要素37a,37b(前記測距光偏向部35a)により、測定点に向う様前記射出光軸26が偏向される。
【0049】
測定対象物から反射された前記反射測距光24は、前記プリズム要素38a,38b(前記反射測距光偏向部35b)、前記結像レンズ34を介して入射し、前記受光素子33に受光される。該受光素子33は、受光信号を前記測距演算部13に送出し、該測距演算部13は前記受光素子33からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測距光が照射された点)の測距を行い、測距データは前記第1記憶部20に格納される。而して、前記測距光23をスキャンしつつ、パルス光毎に測距を行うことで各測定点の測距データが取得できる。
【0050】
前記射出方向検出部15は、前記モータ42a,42bに入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ42a,42bの回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ42a,42bの回転角を検出する。又、前記射出方向検出部15は、前記モータ42a,42bの回転角に基づき、前記光学プリズム36a,36bの回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部15は、前記光学プリズム36a,36bの屈折率と回転位置に基づき、測距光の偏角、射出方向を演算し、演算結果は前記演算制御部19に入力される。
【0051】
該演算制御部19は、測距光の偏角、射出方向から測定点の水平角、鉛直角を演算し、各測定点について、水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、測定点の3次元データを求めることができる。
【0052】
前記姿勢検出部17について説明する。尚、該姿勢検出部17としては、特許文献2に開示された姿勢検出部を使用することができる。
【0053】
該姿勢検出部17は、フレーム45を有し、該フレーム45は前記筐体9に固定され、或は構造部材に固定され、前記レーザスキャナ3と一体となっている。
【0054】
前記フレーム45にジンバルを介してセンサブロック46が取付けられている。該センサブロック46は、直交する2軸を中心に360゜回転自在となっている。
【0055】
該センサブロック46には、第1傾斜センサ47、第2傾斜センサ48が取付けられている。
【0056】
前記第1傾斜センサ47は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させ反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器、或は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、前記第2傾斜センサ48は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
【0057】
前記センサブロック46の前記フレーム45に対する2軸についての相対回転角は、エンコーダ49,50によって検出される様になっている。
【0058】
又、前記センサブロック46を回転させ、水平に維持するモータ(図示せず)が前記2軸に関して設けられており、該モータは、前記第1傾斜センサ47、前記第2傾斜センサ48からの検出結果に基づき前記センサブロック46を水平に維持する様に、前記演算制御部19によって制御される。
【0059】
前記センサブロック46が傾斜していた場合(前記レーザスキャナ3が傾斜していた場合)、前記センサブロック46に対する相対回転角が前記エンコーダ49,50によって検出され、該エンコーダ49,50の検出結果に基づき、前記レーザスキャナ3の傾斜角、傾斜方向が検出される。
【0060】
前記センサブロック46は、2軸について360゜回転自在であるので、前記姿勢検出部17がどの様な姿勢となろうとも(例えば、該姿勢検出部17の天地が逆になった場合でも)、全方向での姿勢検出が可能である。
【0061】
姿勢検出に於いて、高応答性を要求する場合は、前記第2傾斜センサ48の検出結果に基づき姿勢検出と姿勢制御が行われるが、該第2傾斜センサ48は前記第1傾斜センサ47に比べ検出精度が悪いのが一般的である。
【0062】
前記姿勢検出部17では、高精度の前記第1傾斜センサ47と高応答性の前記第2傾斜センサ48を具備することで、該第2傾斜センサ48の検出結果に基づき姿勢制御を行い、前記第1傾斜センサ47により高精度の姿勢検出を可能とする。
【0063】
該第1傾斜センサ47の検出結果で、前記第2傾斜センサ48の検出結果を較正することができる。即ち、前記第1傾斜センサ47が水平を検出した時の前記エンコーダ49,50の値、即ち実際の傾斜角と前記第2傾斜センサ48が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、該偏差に基づき前記第2傾斜センサ48の傾斜角を較正することができる。
【0064】
従って、予め、該第2傾斜センサ48の検出傾斜角と、前記第1傾斜センサ47による水平検出と前記エンコーダ49,50の検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、前記第2傾斜センサ48に検出された傾斜角の較正(キャリブレーション)をすることができ、該第2傾斜センサ48による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。
【0065】
前記演算制御部19は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が速い時は、前記第2傾斜センサ48からの信号に基づき、前記モータを制御する。又、前記演算制御部19は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち前記第1傾斜センサ47が追従可能な状態では、該第1傾斜センサ47からの信号に基づき、前記モータを制御する。
【0066】
尚、前記第1記憶部20には、前記第1傾斜センサ47の検出結果と前記第2傾斜センサ48の検出結果との比較結果を示す対比データが格納されている。前記第2傾斜センサ48からの信号に基づき、該第2傾斜センサ48による検出結果を較正する。この較正により、該第2傾斜センサ48による検出結果を前記第1傾斜センサ47の検出精度迄高めることができる。よって、前記姿勢検出部17による姿勢検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
【0067】
前記撮像部14は、前記レーザスキャナ3の前記基準光軸Oと平行な撮像光軸43を有し、例えば50°の画角を有するカメラであり、前記レーザスキャナ3のスキャン範囲を含む画像データを取得する。前記撮像光軸43と前記射出光軸26及び前記基準光軸Oとの関係は既知となっている。又、前記撮像部14は、動画像、又は連続画像が取得可能である。
【0068】
前記撮像制御部21は、前記撮像部14の撮像を制御する。前記撮像制御部21は、前記撮像部14が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、該動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと前記レーザスキャナ3でスキャンするタイミングとの同期を取っている。前記演算制御部19は画像と点群データとの関連付けも実行する。
【0069】
前記撮像部14の撮像素子44は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸43を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。
【0070】
前記画像処理部22は、前記撮像部14で取得した画像データを、エッジ抽出処理、特徴点の抽出、画像トラッキング処理、画像マッチング等の画像処理を行い、又画像データから濃淡画像を作成する。
【0071】
前記レーザスキャナ3の測定作動について説明する。
【0072】
前記三脚2を既知点、又は所定点に設置し、前記基準光軸Oを測定対象物に向ける。この時の該基準光軸Oの水平角は、前記回転台5の水平角検出機能によって検出され、前記基準光軸Oの水平に対する傾斜角は前記姿勢検出部17によって検出される。
【0073】
前記光軸偏向部35の偏向作用、スキャン作用について、
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)を参照して説明する。
【0074】
尚、
図4(A)では説明を簡略化する為、前記光学プリズム36a,36bについて、前記プリズム要素37a,37bと前記プリズム要素38a,38bとを分離して示している。又、
図4(A)は、前記プリズム要素37a,37b、前記プリズム要素38a,38bが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏角が得られる。又、最小の偏角は、前記光学プリズム36a,36bのいずれか一方が180゜回転した位置であり、前記光学プリズム36a,36bの相互の光学作用が相殺され、偏角は0゜となる。従って、該光学プリズム36a,36bを経て射出、受光されるレーザ光線の光軸(前記測距光軸40)は前記基準光軸Oと合致する。
【0075】
前記発光素子27から前記測距光23が発せられ、該測距光23は前記投光レンズ28で平行光束とされ、前記測距光偏向部35a(前記プリズム要素37a,37b)を透過して測定対象物或は測定範囲に向けて射出される。ここで、前記測距光偏向部35aを透過することで、測距光は前記プリズム要素37a,37bによって所要の方向に偏向されて射出される。
【0076】
測定対象物或は測定範囲で反射された前記反射測距光24は、前記反射測距光偏向部35bを透過して入射され、前記結像レンズ34により前記受光素子33に集光される。
【0077】
反射測距光が前記反射測距光偏向部35bを透過することで、反射測距光の光軸は、前記受光光軸31と合致する様に前記プリズム要素38a,38bによって偏向される(
図4(A))。
【0078】
前記光学プリズム36aと前記光学プリズム36bとの回転位置の組合わせにより、射出する測距光の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
【0079】
又、前記光学プリズム36aと前記光学プリズム36bとの位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム36aと前記光学プリズム36bとで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ42a,42bにより、前記光学プリズム36aと前記光学プリズム36bとを一体に回転すると、前記測距光偏向部35aを透過した測距光が描く軌跡は前記測距光軸40を中心とした円となる。
【0080】
従って、前記発光素子27よりレーザ光線を発光させつつ、前記光軸偏向部35を回転させれば、前記測距光23を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、前記反射測距光偏向部35bは、前記測距光偏向部35aと一体に回転していることは言う迄もない。
【0081】
次に、
図4(B)は前記光学プリズム36aと前記光学プリズム36bとを相対回転させた場合を示している。前記光学プリズム36aにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記光学プリズム36bにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記光学プリズム36a,36bによる光軸の偏向は、該光学プリズム36a,36b間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
【0082】
従って、前記光学プリズム36aと前記光学プリズム36bを逆向きに同期して等速度で往復回転させた場合、前記光学プリズム36a,36bを透過した測距光は、直線状にスキャンされる。従って、前記光学プリズム36aと前記光学プリズム36bとを逆向きに等速度で往復回転させることで、
図4(B)に示される様に、測距光を合成偏向C方向に直線の軌跡52で往復スキャンさせることができる。
【0083】
更に、
図4(C)に示される様に、前記光学プリズム36aの回転速度に対して遅い回転速度で前記光学プリズム36bを回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ測距光が回転されるので、測距光のスキャン軌跡は、スパイラル状となる。
【0084】
更に又、前記光学プリズム36a、前記光学プリズム36bの回転方向、回転速度を個々に制御することで、測距光のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心とした照射方向(半径方向のスキャン)とし、或は水平、垂直方向とする等、種々のスキャンパターンが得られる。
【0085】
図5は、スキャンパターンの一例を示している。
図5が示すスキャンパターン53は、花びら形状のスキャンパターン(以下、花びらパターン)となっている。
【0086】
該スキャンパターン53は、例えば一方の光学プリズム36aを25回転、他方の光学プリズム36bを逆方向に5回転することで得られたものである。前記スキャンパターン53の場合、25回転/逆5回転が1パターン周期となる。又、スキャンする過程で測定を実行することで、前記スキャンパターン53のスキャン軌跡に沿ってスキャンデータが得られる。尚、前記光学プリズム36a,36bの回転比、回転方向は求めるスキャンパターンによって、適宜選択される。
【0087】
ここで、反射測距光を前記受光素子33が受光し、該受光素子33が発する受光信号に基づき前記測距演算部13で距離が演算される。又、前記受光素子33は反射測距光の光量に応じた受光信号を発するので、スキャンデータは測距データと反射光量データを含んでいる。
【0088】
又、スキャンデータの密度を高める場合は、1パターン周期毎に所定角度、前記光学プリズム36a,36bを一体に回転し、同様に前記スキャンパターン53でスキャンすることで、該スキャンパターン53が所定角度ステップで回転したパターンが得られ、スキャン密度を高めたスキャンパターンとなる。
【0089】
次に、前記レーザスキャナ3が実行する測定の態様としては、前記光軸偏向部35(前記光学プリズム36a,36b)を所要偏角毎に固定して測距を行うことで、特定の測定点についての測距を行うことができる。又、測距時の方向角(水平角、鉛直角)は前記射出方向検出部15の検出結果に基づき取得できる。又、前記レーザスキャナ3の水平に対する傾斜及び傾斜方向は、前記姿勢検出部17によって検出でき、該姿勢検出部17の検出結果に基づき測定結果を水平基準のデータに補正することができる。即ち、前記レーザスキャナ3をトータルステーションと同様に使用することができる。
【0090】
更に、前記光軸偏向部35の偏角を連続的に変更しつつ、測距を実行することで、即ち測距光をスキャンしつつ測距を実行することでスキャン軌跡に沿って測距データ(スキャンデータ)を取得することができる。
【0091】
又、スキャン速度、スキャン密度等で定まるスキャン条件について、スキャン速度は、前記モータ42a,42b間の関係を維持して、回転速度を増減することで、増減し、スキャン密度は、スキャン速度と測距光のパルス発光周期との関係を制御することで所望の値に設定できる。
【0092】
又、測距時の測距光の射出方向角は、前記モータ42a,42bの回転角により検出でき、測距時の射出方向角と測距データとを関連付けることで、3次元の測距データを取得することができる。
【0093】
従って、前記レーザスキャナ3を3次元位置データを有する点群データを取得するレーザスキャナとして機能させることができる。
【0094】
図5で示した前記スキャンパターン53は、前記光学プリズム36a,36bを全周回転させ、測定範囲全域をスキャンするものであるが、測定範囲を局部的に設定し、局部的に細密にスキャンを行うパターンを設定することもできる。
【0095】
図6(A)、
図6(B)は、局部的にスキャン(局所スキャン)を行うスキャンパターンの一例を示している。
【0096】
図6(A)に示すスキャンパターン54aは、
図4(B)で示される直線スキャンを一スキャン毎に前記光学プリズム36a,36bを一体に所定角度ステップp1だけ回転させることで得られる。尚、
図6(A)中、S1はスキャン方向を示す。
【0097】
又、直線スキャンの長さL1は、
図4(B)中で示される、角度差θの変動の幅を選択することで設定でき、直線スキャンの速度も、前記モータ42a,42bの回転速度の制御で任意に設定できる。又、角度ステップp1は、前記光学プリズム36a,36bを一体に回転させる際の送り角を選択することで任意に設定できる。
【0098】
図6(B)に示すスキャンパターン54bは、前記光学プリズム36a,36bにより前記測距光軸40の偏角を設定した後、前記光学プリズム36a,36bを一体に所定角度回転させ、周方向に円弧スキャンさせ、1円弧スキャン毎に偏角を半径方向に所定送りステップp2で変更させることで得られる。尚、
図6(B)中、S2はスキャン方向を示す。
【0099】
又、円弧スキャンの長さL2は、前記光学プリズム36a,36bを一体で回転させる回転角を設定することで、任意に決定される。円弧スキャンの速度も、前記モータ42a,42bの回転速度の制御で任意に設定できる。又、偏角のステップも、前記光学プリズム36a,36b間の相対角度を選定することで任意に設定できる。
【0100】
尚、局所スキャンのパターンについては、前記光学プリズム36a,36bの回転を個々に制御することで、種々のパターンを設定できることは言う迄もない。
【0101】
以下、前記レーザスキャナ3による測定について、
図1、
図7〜
図11を参照して更に説明する。
【0102】
前記レーザスキャナ3を前記三脚2を介して、既知点或は所定点に設置する。
【0103】
前記基準光軸Oを測定対象物に向け、測定範囲を設定する(STEP:01)。
【0104】
尚、測定範囲は、前記撮像部14で取得した画像から設定してもよく、或は事前に測定範囲が決められていれば、決定されている測定範囲の中心に前記基準光軸Oを向ける。
【0105】
図8に示される様に、最初に前記光軸偏向部35により前記測距光軸40を最大偏角で偏向し、最大偏角で前記測距光23を1回転スキャンする(円スキャンの実行)ことで測定範囲を示す円軌跡55が得られる。従って、該円軌跡55に基づき最終的な測定範囲を設定してもよい。尚、前記撮像部14の画角は、該円軌跡55で示される測定範囲を含む大きさとなっている。
【0106】
次に、全体スキャンパターンを選択する。例えば、
図5で示した花びらパターン(前記スキャンパターン53)が選択され、該スキャンパターン53に従ってスキャンが開始される(STEP:02)。
【0107】
前記スキャンパターン53により、測定範囲全体をスキャン(全体スキャン56)し、スキャンデータを取得する(
図7参照)。又、より細かく、測定範囲全体のスキャンデータが必要であれば、前記スキャンパターン53の一周期を実行する度に、該スキャンパターン53を所定角度ステップで回転させながら、スキャンを実行する。ステップ送りが所定の角度に到達することで測定範囲全体のより細かいスキャンデータを取得することができる(STEP:03)。
【0108】
上記した様に、スキャンデータは距離データと反射光量データを含んでいる。距離データに基づき距離画像を作成する。ここで距離画像とは、距離に応じた表示がされた画像であり、例えば距離に応じて色分けされた画像、等高線又は等高線と類似の表記を含む画像等である。又、前記反射光量に基づき、濃淡画像を作成することもできる。
【0109】
又、前記全体スキャン56の実行に同期させ、前記撮像部14により画像を取得する。全体スキャン56の実行と、画像の取得とを同期させることで、スキャンデータと画像との関連付けが容易になる(STEP:04)。
【0110】
尚、前記全体スキャン56の実行と画像の取得との同期は、必ずしも、該全体スキャン56の開始時と画像の取得とが一致している必要はなく、スキャン途中の測定点の測定時と画像取得時とが明確になっていればよい。
【0111】
測定対象物が建築物である様な場合、通常測定対象物は平面で構成されている。従って、壁面等平面のスキャンデータを取得する場合は、少ない測定点(低い点群密度)で平面の測定が可能である。
【0112】
一方、平面と平面との交差部位(稜線部分)については、高い点群密度で測定する必要がある。交差部位等、高い点群密度が要求される部位については、局所測定範囲を設定し、
図6(A)、
図6(B)に示される様な局所スキャン57が実行される(
図8参照)(STEP:05)。
【0113】
該局所スキャン57で実行されるスキャンパターンは、測定部位の状況によって適宜選択される。例えば、鉛直に延びる稜線部分を局所スキャンする場合は、走査方向が稜線と交差する前記スキャンパターン54bが選択される等である。
【0114】
前記局所スキャン57で得られたスキャンデータから局所距離画像、局所濃淡画像を作成する。
【0115】
該局所スキャン57実行時に、該局所スキャン57と同期して前記撮像部14により画像を取得し、局所スキャンのスキャンデータと局所スキャン時の画像と全体スキャン時の画像とを画像マッチングさせ、画像同士のマッチングにより、局所スキャンデータと全体スキャンデータとのマッチング、局所スキャンデータと全体スキャン時の画像とのマッチングを行ってもよい。
【0116】
又、局所スキャンを実行するかどうか、又局所スキャンを実行する部位の選択については、全体スキャン時に取得した画像から、作業者が目視で判断してもよく、局所スキャンの条件についても、作業者の判断で設定してもよい。尚、鉛直方向に延びる稜線等について、稜線が鉛直と想定される場合は、稜線の上下部分について、局所スキャンが実行されればよい。
【0117】
或は、局所スキャンの部位、範囲、スキャン条件は画像処理の結果に基づき、自動的に決定してもよい。
【0118】
画像をエッジ処理し、特徴点を抽出し、特徴点を中心に所定範囲を局所スキャン範囲として設定する。或はエッジ抽出し、エッジが多く抽出された部位を含む様に局所スキャンの範囲が設定される。抽出したエッジの状態から、スキャンパターンが選択され、スキャン密度が設定され、局所スキャンが実行される(STEP:06)。
【0119】
尚、スキャン密度については、前記モータ42a,42bの回転速度制御によってスキャンスピード、スキャンピッチを自在に設定できるので、所望のスキャン密度が得られる。
【0120】
全体スキャンと局所スキャンで得られたスキャンデータを画像上で重ね合せると、
図9に示される様になる。尚、
図9では、前記局所スキャン57は1個所となっているが、細密なスキャンデータが必要な部位に対応して、複数個所に設定されることは言う迄もない。
【0121】
尚、全体スキャンを実行する前に、事前に局所スキャンの部位、範囲を設定してもよい。この場合、全体スキャンする過程に、局所スキャンを組込んでもよい。
【0122】
前記全体スキャン56と前記局所スキャン57とを組合わせることで、不要なスキャンを省略し、必要な部位だけ細密なスキャンデータを取得でき、作業効率がよく、実用的な測定が行える(STEP:07)。
【0123】
次に、局所スキャンデータに基づき画像歪み補正することができる。
【0124】
前記撮像部14で取得した画像は、レンズの特性から歪みを含んでいる。
【0125】
図10に示される様に、複数個所について前記局所スキャン57を実行する。好ましくは、画像の歪みが現れやすい、画像の周辺、例えば、前記円軌跡55に沿った複数個所について前記局所スキャン57を実行する。
【0126】
又、局所スキャンデータと全体画像の局所該当部位との間での比較処理を行う(STEP:08)。比較処理は、エッジ抽出処理が行われた全体画像との間で行ってもよい。
【0127】
局所スキャンデータは、距離データと該距離データに関連付けられた角度データを含んでいるので、距離データ及び角度データに基づき画像の歪みを補正することができる(STEP:09)。
【0128】
上記した様に、本実施例では、前記モータ42a,42bの駆動制御によってスキャン速度、スキャンパターン等、スキャンの状態を任意に設定できる。従って、スキャン実行中に速度を変更すること、スキャンパターンを変更することが可能である。
【0129】
図12は、更に細密な測定データを得る為のスキャン態様を示している。
【0130】
図12中、Dは前記測距光23の照射位置でのビーム径を示し、p3は測定ピッチ(測定点間のピッチ)を示し、S3はスキャン方向を示している。
【0131】
局所スキャンを実行する際に、測定ピッチp3が、ビーム径Dより小さくなる様に、前記演算制御部19によりスキャン速度、発光タイミングが制御される。
【0132】
測定ピッチp3をビーム径Dより小さくしてスキャンし、各測距光毎に(各照射位置毎に)、測距を実行し、各測距光毎に測距結果を取得することで、測定ピッチp3に対応した分解能が得られる。又、測距データを取得すると同時に、前記受光素子33からの受光信号に基づき各測定点での光量を検出する。
【0133】
従って、ビーム径サイズ以下の分解能で測距データ、光量データを取得することができる。
【0134】
上記した実施例では、前記レーザスキャナ3を前記三脚2に設けた場合を説明したが、該レーザスキャナ3は、高精度、高応答性を有し、而も全姿勢での前記レーザスキャナ3の傾斜を検出することができるので、支持装置を一脚(図示せず)とし、一脚の上端に前記レーザスキャナ3を設けてもよい。一脚の支持により、前記レーザスキャナ3が傾斜した状態で測定が実行されても、前記姿勢検出部17により測定時の前記レーザスキャナ3の姿勢がリアルタイムで検出できるので、前記レーザスキャナ3の測定結果を前記姿勢検出部17の検出結果により補正することができる。
【0135】
同様に、前記レーザスキャナ3を手に持ち、手持状態で測定を実行しても、前記姿勢検出部17の検出結果で、測定結果を補正できるので、高精度の測定が行える。