(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正部は、前記所定断面の画像データに平行な断面の画像データであって、虚脱していない呼吸器系管状臓器を含む画像データにおける呼吸器系管状臓器の形状を用いて、前記形状補正を行う、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
前記補正部は、前記所定断面の画像データに平行な断面の画像データであって、虚脱していない呼吸器系管状臓器を含む画像データにおける呼吸器系管状臓器の領域の長径及び短径に基づいて、前記所定断面を回転させる角度を算出し、算出した角度を用いて、前記所定断面の画像データを回転させた断面位置の画像データを生成し、
回転された前記断面位置の前記画像データに含まれる虚脱領域に対して、前記形状補正を行う、
請求項1〜4のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態に係る医用画像処理装置、医用画像診断装置及び医用画像処理プログラムを説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、他の実施形態にも同様に適用可能である。
【0011】
以下の実施形態において、医用画像処理装置は、例えば、ワークステーションであるが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、医用画像処理装置は、PACS(Picture Archiving Communication System)ビューワ等、医用画像を表示する機能を備えた比較的情報処理能力の低い情報処理装置や、医用画像診断装置に備えられる操作端末(コンソール装置)であってもよい。すなわち、医用画像処理装置は、医用画像を処理可能な情報処理装置(コンピュータ)であればよい。
【0012】
また、以下の実施形態において、医用画像診断装置は、例えば、被検体を撮像し、医用画像データを生成する機能を備える装置(モダリティ)である。医用画像診断装置としては、例えば、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT−CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET−CT装置、又はこれらの装置群等が適用可能である。
【0013】
また、以下の実施形態では、呼吸器系疾患の例として、気管支軟化症及び慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、気管支軟化症及びCOPDに限らず、呼吸器系の疾患に対して広く適用可能である。
【0014】
また、以下の実施形態では、画像処理の対象となる呼吸器系管状臓器の例として、気管及び気管支について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、「気管」若しくは「気管支」と記載して説明した内容は、「気管」若しくは「気管支」の記載に限定されるものではなく、吸気及び呼気において空気(酸素)の流入出に関わる管状の臓器である呼吸器系管状臓器に対して広く適用可能である。
【0015】
(第1の実施形態)
図1を用いて、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100の構成例を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、例えば、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100は、入力回路101と、ディスプレイ102と、記憶回路110と、処理回路120とを備える。入力回路101、ディスプレイ102、記憶回路110、及び処理回路120は、相互に通信可能に接続される。
【0016】
入力回路101は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等に対応する。例えば、入力回路101は、医用画像処理装置100の操作者からの各種の指示や設定要求を受け付ける。入力回路101は、受け付けた各種の指示や設定要求を処理回路120へ出力する。
【0017】
ディスプレイ102は、医用画像診断装置により撮像された医用画像を表示したり、操作者が入力回路101を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0018】
記憶回路110は、例えば、NAND(Not AND)型フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)であり、医用画像データやGUIを表示するための各種のプログラムや、当該プログラムによって用いられる情報を記憶する。例えば、記憶回路110は、ボリュームデータ111を記憶する。
【0019】
ボリュームデータ111は、3次元の医用画像データである。例えば、ボリュームデータ111は、操作者の指示により、医用画像保管装置や医用画像診断装置から受信され、記憶回路110に格納される。このとき、ボリュームデータ111は、患者ID、検査ID、装置ID、シリーズID等と対応付けて格納される。
【0020】
例えば、ボリュームデータ111は、被検体の呼吸器系管状臓器を含む領域がX線CT装置によって撮影された3次元のX線CT画像データである。この場合、ボリュームデータ111は、異なる複数のスライス位置で撮影された複数のスライス画像により構成される。各スライス画像は、アキシャル(axial)断面の画像データである。なお、アキシャル断面は、所定断面の一例である。
【0021】
なお、本実施形態では、ボリュームデータ111がX線CT画像データである場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ボリュームデータ111は、MRI装置によって撮像されたMRI画像データであってもよい。すなわち、ボリュームデータ111は、上述した任意の医用画像診断装置によって撮像された3次元の医用画像データであればよい。
【0022】
処理回路120は、医用画像処理装置100における処理全体を制御する電子機器(プロセッサ)である。例えば、
図1に示す処理回路120の構成要素である抽出機能121、補正機能122、及び出力制御機能123が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路110内に記録されている。処理回路120は、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路120は、
図1の処理回路120内に示された各機能を有することとなる。なお、抽出機能121、補正機能122、及び出力制御機能123の詳細については、後述する。
【0023】
なお、本実施形態においては、単一の処理回路120にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0024】
ここで、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100は、呼吸器疾患における断面の解析を容易にするために、以下の処理を実行する。つまり、医用画像処理装置100は、虚脱を起こした呼吸器系管状臓器の領域に対して、呼吸器系管状臓器の直交断面の真の形状が真円であると仮定した形状補正を行う。ここで、虚脱とは、例えば、気管支軟化症において、呼吸器系管状臓器の管構造が維持できず、管の直交断面像が三日月形状になる症状である。
【0025】
図2を用いて、虚脱について説明する。
図2は、呼吸器系管状臓器の虚脱について説明するための図である。
図2には、呼吸器系管状臓器の直交断面を例示する。
図2の上下方向は、被検体の背腹方向に対応する。また、
図2の左右方向は、虚脱の程度に対応する。
【0026】
図2の左図に示すように、虚脱を起こしていない正常な呼吸器系管状臓器(気管及び気管支)は、略真円形状の内壁及び外壁により、空気(酸素)の通り道である管腔を形成している。呼吸器系管状臓器の前壁(背側の壁面)から側壁にかけては馬蹄形の気管軟骨により形成されるが、後壁(腹側の壁面)は気管筋により形成される。このため、
図2の中央図や右図に示すように、他の臓器による圧迫や先天的な脆さにより後壁が内腔側へ入り込むことで、虚脱となる。
【0027】
虚脱の治療法としては、虚脱を防ぐために虚脱部位にステントを挿入することが行われている。例えば、医師は、虚脱部位の直交断面像を閲覧して、ステントにより虚脱が改善した状況の管腔の形状を思い描くことで、挿入するステントのサイズを決定する。しかしながら、このようなステントサイズの決定方法は定量的なものではない。
【0028】
そこで、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100は、虚脱を起こした呼吸器系管状臓器の領域に対して、呼吸器系管状臓器の直交断面の真の形状が真円であると仮定した形状補正を行う。これにより、医師は、虚脱を起こした呼吸器系管状臓器の真の形状を把握することができる。この結果、医用画像処理装置100は、呼吸器疾患における断面の解析を容易にすることが可能となる。以下、本実施形態に係る医用画像処理装置100の各処理について、説明する。
【0029】
抽出機能121は、あるスライス画像から所望の領域を抽出する。例えば、抽出機能121は、ボリュームデータ111を構成する複数のスライス画像のうち、任意の画像から所望の領域を抽出する。具体的には、医師は、複数のスライス画像の中から任意のスライス画像を選択する。そして、抽出機能121は、医師により選択されたスライス画像において、点の設定を受け付ける。例えば、医師は、スライス画像において、気管の内腔内にポインタを移動させ、確定ボタンを押下することで、点を設定する。これにより、抽出機能121は、ポインタにより指定された点の設定を受け付ける。
【0030】
そして、抽出機能121は、設定された点を含む領域を抽出する。例えば、抽出機能121は、設定された点の輝度値(CT値)を用いたセグメンテーション処理を行うことで、設定された点を含む領域を抽出する。ここで、虚脱している気管の内腔内の点が設定される場合、抽出機能121により抽出される領域は、虚脱した内腔領域(虚脱領域)である。
【0031】
このように、抽出機能121は、スライス画像から所望の領域を抽出する。なお、抽出機能121の処理内容は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、上記の説明では、医師により手動的に設定された点(位置)を含む領域を虚脱領域として抽出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、抽出機能121は、自動的に虚脱領域を抽出可能である。例えば、抽出機能121は、スライス画像全体に対して空気のCT値を用いたセグメンテーション処理を行うことで、気管、主気管支、細気管支、肺胞など、空気を多く含む複数の領域をそれぞれ抽出する。そして、抽出機能121は、気管と他の臓器(脊椎、胸骨、肋骨、心臓等)との位置関係を用いて、空気を多く含む複数の領域の中から気管に対応する領域を自動的に抽出することができる。
【0032】
また、ここでは虚脱領域が抽出される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。抽出機能121により抽出される領域は、虚脱した内腔領域に限らず、任意の形状の領域を抽出可能である。
【0033】
なお、抽出機能121にて行われるセグメンテーション処理は、3次元の画像データに対するセグメンテーション処理ではなく、2次元の画像データに対するセグメンテーション処理である。このため、抽出機能121にて行われるセグメンテーション処理は、3次元の画像データに対するセグメンテーション処理と比較して小さな処理負荷で実行可能である。
【0034】
補正機能122は、所定断面の画像データに含まれる領域であって虚脱を起こした呼吸器系管状臓器の領域である虚脱領域に対して、非虚脱状態における形状を仮定し、前記仮定された形状に基づき形状補正を行う。例えば、補正機能122は、非虚脱状態における形状が呼吸器系管状臓器の直交断面の真の形状が略真円であると仮定した形状補正を行う。具体的には、補正機能122は、抽出機能121により抽出された虚脱領域に対して、気管の直交断面の真の形状が真円であると仮定した形状補正を行う。
【0035】
例えば、補正機能122は、以下に説明する第1方法〜第4方法のうち任意の方法により、虚脱領域の形状補正を行う。ここで、第1方法〜第3方法による形状補正は、被検体の気管がアキシャル断面(スライス画像)に対して直交していると仮定して、虚脱を起こした気管の断面像から虚脱していない状態の形状を推定するための補正処理である。また、第4方法による形状補正は、アキシャル断面に対して直交していない気管支の断面像を用いて、その気管支の直交断面の断面位置を推定する直交断面推定処理を含む補正処理である。以下、第1方法〜第4方法による形状補正について、順に説明する。
【0036】
第1方法による形状補正について説明する。例えば、補正機能122は、虚脱領域の両端の点に対応する第1端点及び第2端点を特定する。そして、補正機能122は、第1端点及び第2端点を結ぶ線分の垂直二等分線と円弧との交点を特定する。そして、補正機能122は、垂直二等分線上であって、第1端点及び第2端点のうち一方からの距離と、交点からの距離とが等しくなる点を、呼吸器系管状臓器の真の形状の中心点として特定する。そして、補正機能122は、特定した中心点を用いて、形状補正を行う。
【0037】
図3を用いて、第1方法による形状補正について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る第1方法による形状補正を説明するための図である。
図3には、アキシャル断面に描出される虚脱領域に対する処理内容を例示する。
【0038】
図3の上段に示すように、補正機能122は、虚脱領域から、虚脱領域の両端の点に対応する点X
1及び点X
2を特定する。ここで、点X
1及び点X
2は、例えば、円弧Cの両端の点として特定される。続いて、
図3の中段に示すように、補正機能122は、点X
1及び点X
2を結ぶ線分の垂直二等分線Lと、円弧Cとの交点Aを特定する。そして、
図3の下段に示すように、補正機能122は、垂直二等分線L上であって、点X
1からの距離と、交点Aからの距離とが等しくなる点Oを、気管の真の形状の中心点Oとして特定する。つまり、補正機能122は、線分OX
1の長さと線分OAの長さが等しくなるように、垂直二等分線L上の点Oの位置を特定する。
【0039】
そして、補正機能122は、特定した中心点Oを用いて、形状補正を行う。例えば、補正機能122は、中心点Oを中心とする円形の領域(図の破線部分)を、虚脱していない状態の気管の内腔領域として推定する。そして、補正機能122は、推定した気管の内腔領域に関する情報を、出力制御機能123に送る。例えば、補正機能122は、推定した気管の内腔領域に関する情報として、内腔領域の中心点Oの座標、及び、径(半径若しくは直径)の長さを含む情報を、出力制御機能123に送る。
【0040】
このように、補正機能122は、第1方法による形状補正を行う。なお、第1方法による形状補正の処理内容は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、上記の説明では、「OX
1=OA」となる点Oの位置を特定する場合を説明したが、これに限らず、「OX
2=OA」となる点Oの位置を特定してもよい。
【0041】
次に、第2方法による形状補正について説明する。例えば、補正機能122は、虚脱領域における外周の長さを、呼吸器系管状臓器の真の形状における外周の長さとして、形状補正を行う。
【0042】
図4を用いて、第2方法による形状補正について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る第2方法による形状補正を説明するための図である。
図4には、アキシャル断面に描出される虚脱領域に対する処理内容を例示する。
【0043】
図4の上段に示すように、補正機能122は、虚脱領域における外周L
1の長さを計測する。そして、補正機能122は、計測した外周L
1の長さを、気管の真の形状における外周L
2の長さとして、形状補正を行う。つまり、補正機能122は、虚脱の発生の有無にかかわらず、直交断面における気管の内腔領域の外周の長さは変化しないものと仮定して、形状補正を行う。具体的には、補正機能122は、真円の外周L
2の長さを虚脱領域の外周L
1の長さに一致させて、真円を描出する。そして、補正機能122は、描出した真円の外周の位置が虚脱領域の円弧の位置に一致するように、描出した真円の位置を決定する。
【0044】
そして、補正機能122は、決定した真円の位置を用いて、形状補正を行う。例えば、補正機能122は、描出した真円の領域(L
2で囲まれた領域)を、虚脱していない状態の気管の内腔領域として推定する。そして、補正機能122は、推定した気管の内腔領域に関する情報を、出力制御機能123に送る。例えば、補正機能122は、推定した気管の内腔領域に関する情報として、内腔領域の中心点の座標、及び、径(半径若しくは直径)の長さを含む情報を、出力制御機能123に送る。
【0045】
このように、補正機能122は、第2方法による形状補正を行う。なお、第2方法による形状補正の処理内容は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、虚脱は、被検体の背腹方向で起こり、被検体の左右方向では起こらないことが知られている。そこで、補正機能122は、L
1で囲まれた領域の左右方向の長さを維持するように、L
1と同じ長さの外周を有する円形の領域を推定することで、虚脱していない状態の内腔領域を推定してもよい。
【0046】
次に、第3方法による形状補正について説明する。例えば、補正機能122は、所定断面の画像データに平行な断面の画像データであって、虚脱していない呼吸器系管状臓器を含む画像データである非虚脱画像データにおける呼吸器系管状臓器の形状を用いて、形状補正を行う。
【0047】
図5を用いて、第3方法による形状補正について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る第3方法による形状補正を説明するための図である。
図5には、気管支に対する処理内容を例示する。なお、
図5に示す断面位置P
1は、医師により選択されたスライス画像(アキシャル断面)の断面位置に対応する。断面位置P
1は、例えば、虚脱部位(
図5の破線部分)の中心部を通る位置に対応する。
【0048】
図5の上段に示すように、補正機能122は、断面位置P
1に平行な断面の画像データから、気管が虚脱していない断面(非虚脱断面)の画像データを探索する。例えば、補正機能122は、断面位置P
1を上方向(被検体の頭部への方向)へ移動させながら、スライス画像に描出される気管の内腔領域の面積を算出する。算出される面積は、虚脱の程度が低減するほど広くなり、虚脱していない断面に到達すると面積変化が極端に小さくなるという特徴を有する。そこで、補正機能122は、この特徴を利用して、虚脱していない断面位置を特定する。つまり、補正機能122は、断面位置P
1の上方向への移動に伴う面積変化を検出する。そして、補正機能122は、面積変化が閾値以上存在する場合には、その断面位置の気管が虚脱していると判定し、面積変化が閾値未満となった場合には、その断面位置の気管が虚脱していないと判定する。これにより、
図5の下段に示すように、補正機能122は、非虚脱断面(断面位置P
2)を検出する。
【0049】
そして、補正機能122は、断面位置P
2のスライス画像に描出された気管の形状を用いて、形状補正を行う。例えば、補正機能122は、断面位置P
2における内腔領域を、断面位置P
1における気管の虚脱が改善した状態の気管の内腔領域として推定する。そして、補正機能122は、推定した気管の内腔領域に関する情報を、出力制御機能123に送る。例えば、補正機能122は、推定した気管の内腔領域に関する情報として、内腔領域の中心点の座標、及び、径(半径若しくは直径)の長さを含む情報を、出力制御機能123に送る。
【0050】
このように、補正機能122は、第3方法による形状補正を行う。なお、第3方法による形状補正の処理内容は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、上記の説明では、内腔領域の面積変化を用いて断面位置P
2を検出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、補正機能122は、気管の背腹方向の長さの変化を用いて断面位置P
2を検出してもよい。背腹方向の長さは、虚脱の程度が低減するほど長くなり、虚脱していない断面に到達すると変化量が極端に小さくなるという特徴を有する。また、例えば、上記の説明では、断面位置P
1の上方向に向かって非虚脱断面を探索する場合を説明したが、これに限らず、下方向(被検体の脚部への方向)に向かって探索してもよい。また、例えば、上記の説明では、自動的に断面位置P
2を検出する場合を説明したが、これに限らず、操作者(医師)により手動的に検出されてもよい。
【0051】
次に、第4方法による形状補正について説明する。第4方法による形状補正は、アキシャル断面に直交していない呼吸器系管状臓器の虚脱に対して行われる形状補正である。例えば、補正機能122は、所定断面の画像データに平行な断面の画像データであって、虚脱していない呼吸器系管状臓器を含む画像データである非虚脱画像データにおける呼吸器系管状臓器の領域の長径及び短径に基づいて、所定断面を回転させる角度を算出し、算出した角度を用いて、所定断面の画像データを回転させた断面位置の画像データを生成する。そして、補正機能122は、回転された断面位置の画像データに含まれる虚脱領域に対して、形状補正を行う。
【0052】
図6A及び
図6Bを用いて、第4方法による形状補正について説明する。
図6A及び
図6Bは、第1の実施形態に係る第4方法による形状補正を説明するための図である。
図6A及び
図6Bでは、アキシャル断面に直交していない呼吸器系管状臓器の一例として、気管支(気管ではなく)に生じた虚脱を形状補正する場合を説明する。
図6Aには、気管支に対する処理とともに、断面に描出される気管支の内腔領域を例示する。また、
図6Bには、
図6Aの中段を詳細に説明するための拡大図を例示する。
【0053】
図6Aの上段に示すように、虚脱部位が左主気管支に存在する場合、断面位置P
1の断面像には、虚脱した楕円形の内腔領域が描出される(
図6A上段右図)。補正機能122は、断面位置P
1に平行な断面の画像データから、非虚脱断面の画像データを探索する。例えば、補正機能122は、断面位置P
1を下方向(被検体の脚部への方向)へ移動させながら、スライス画像に描出される気管の内腔領域の面積を算出する。算出される面積は、気管支が断面に直交していなくとも、虚脱の程度が低減するほど広くなり、虚脱していない断面に到達すると面積変化が極端に小さくなる。そこで、補正機能122は、断面位置P
1の下方向への移動に伴う面積変化を検出する。そして、補正機能122は、面積変化が閾値以上存在する場合には、その断面位置の気管が虚脱していると判定し、面積変化が閾値未満となった場合には、その断面位置の気管が虚脱していないと判定する。これにより、
図6Aの中段に示すように、補正機能122は、非虚脱断面(断面位置P
2)を検出する。
【0054】
ここで、
図6Aの中段の右図に示すように、断面位置P
2の断面像には、楕円形の内腔領域が描出される。この楕円形の内腔領域の短径aは、直交断面の直径に対応する。つまり、長径b及び短径aは、
図6Bの左図に示す線分b及び線分aにそれぞれ対応する。ここで、線分aを通る断面位置は、気管支に直交する断面位置であると推定される。断面位置P
1付近の気管支の太さが一定であると仮定すると、線分b及び線分aは、直角三角形の二辺に対応すると見なすことができる。そこで、補正機能122は、「cosθ=a/b」により、線分bと線分aとがなす角θを算出する。なお、楕円形の内腔領域の長径b及び短径aを算出する処理は、従来の如何なる画像処理技術により実現されてもよい。
【0055】
そして、
図6Aの下段に示すように、補正機能122は、角度θに基づいて、断面位置P
1を回転させた断面位置P
3の断面像を生成する。例えば、補正機能122は、断面位置P
1の内腔領域の重心位置を算出する。そして、補正機能122は、算出した重心位置を回転中心として、角度θ分回転させた断面位置P
3を決定する。そして、補正機能122は、ボリュームデータ111に対するMPR処理により、決定した断面位置P
3のMPR像を生成する。断面位置P
3のMPR像には、虚脱部位の直交断面が描出される(
図6A下段右図)。
【0056】
すなわち、補正機能122は、呼吸器系管状臓器と直交していない断面から直交断面を推定する直交断面推定処理を実行する。そして、補正機能122は、断面位置P
3のMPR像に描出された虚脱領域に対して、第1方法〜第3方法のいずれかの方法による補正処理を行うことで、虚脱していない状態の内腔領域の形状を推定する。
【0057】
このように、補正機能122は、第4方法による形状補正を行う。なお、第4方法による形状補正の処理内容は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、上記の説明では、内腔領域の面積変化を用いて断面位置P
2を検出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、補正機能122は、気管の背腹方向の長さの変化を用いて断面位置P
2を検出してもよい。また、例えば、上記の説明では、断面位置P
1の下方向に向かって非虚脱断面を探索する場合を説明したが、これに限らず、上方向(被検体の頭部への方向)に向かって探索してもよい。また、例えば、上記の説明では、自動的に断面位置P
2を検出する場合を説明したが、これに限らず、操作者(医師)により手動的に検出されてもよい。
【0058】
このように、補正機能122は、第1方法〜第4方法のいずれかの方法による形状補正を行う。なお、第1方法〜第4方法のうちいずれの方法を選択するかについては、医師が適宜選択してもよいし、補正機能122が自動的に選択してもよい。また、補正機能122は、第1方法〜第4方法のうち一つの形状補正を実行する機能のみを備える場合であってもよい。つまり、補正機能122は、第1方法〜第4方法のうち、少なくとも一つの方法による形状補正実行機能を備えていればよい。
【0059】
出力制御機能123は、形状補正後の虚脱領域に関する情報を出力する。例えば、出力制御機能123は、所定断面の画像データを表示させる。また、出力制御機能123は、直交断面推定処理により推定された直交断面の断面像を表示させる。また、出力制御機能123は、虚脱していない状態の内腔領域の輪郭を示すマーカを表示させる。また、出力制御機能123は、呼吸器系管状臓器が描出された画像上に、回転された断面位置(直交断面)を示すマーカを表示させる。
【0060】
図7及び
図8を用いて、出力制御機能123の処理を説明する。
図7及び
図8は、第1の実施形態に係る出力制御機能123の処理を説明するための図である。
図7及び
図8には、出力制御機能123によりディスプレイ102に表示される表示画像を例示する。
【0061】
例えば、
図7に示すように、出力制御機能123は、アキシャル断面のスライス画像10を表示させる。また、出力制御機能123は、直交断面推定処理により推定された直交断面の断面像11を表示させる。また、出力制御機能123は、虚脱していない状態の内腔領域の輪郭を示すマーカ12を、断面像11上に表示させる。
【0062】
また、例えば、
図8に示すように、出力制御機能123は、気管及び気管支を3次元的に表す画像20上に、直交断面の断面位置を示すマーカ21を表示させる。なお、この画像20は、例えば、ボリュームデータ111のWL(Window Level)調整により呼吸器系管状臓器を描出した画像データである。
【0063】
このように、出力制御機能123は、形状補正後の虚脱領域に関する情報を出力する。なお、出力制御機能123の処理内容は、上記の説明に限定されるものではない。図示した表示例以外にも、例えば、出力制御機能123は、形状補正後の虚脱領域の中心点の座標、及び、径(半径若しくは直径)の長さを含む情報(数値データ)を表示可能である。また、出力制御機能123が情報を出力する出力先は、ディスプレイ102に限らず、医用画像処理装置100以外の装置(外部装置)に出力してもよい。例えば、出力制御機能123は、病院内のデータを集中的に管理しているサーバ装置や、診断レポートを作成するための装置(レポート作成装置など)に対して、形状補正後の虚脱領域に関する情報を送信しても良い。また、例えば、出力制御機能123は、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録メディアに情報を格納しても良い。
【0064】
図9を用いて、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100の処理手順を説明する。
図9は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100の処理手順を示すフローチャートである。
図9に示す処理手順は、例えば、スライス画像を表示する旨の指示を操作者から受け付けた場合に、開始される。
【0065】
ステップS101において、処理回路120は、処理タイミングか否かの判定を行う。例えば、処理回路120は、スライス画像を表示する旨の指示を操作者から受け付けた場合に、処理タイミングであると判定し、ステップS102以降の処理へ移行する。なお、ステップS101が否定される場合には、ステップS102以降の処理は実行されず、抽出機能121、補正機能122、及び出力制御機能123の各処理機能は待機状態である。
【0066】
ステップS101が肯定されると、ステップS102において、操作者は、複数のスライス画像の中から、注目すべきスライス画像を選択する。例えば、操作者(医師)は、ボリュームデータ111を構成する複数のスライス画像を1枚ずつディスプレイ102に表示させる。ここで、複数のスライス画像は、例えば、被検体の気管を含む領域が撮像されたアキシャル断面の画像データである。医師は、表示対象のスライス画像を順番に切り替えながら、表示される気管の断面像を閲覧する。そして、操作者は、例えば、顕著に虚脱している気管の断面像(スライス画像)を発見すると、そのスライス画像を注目すべきスライス画像として選択する。
【0067】
ステップS103において、選択されたスライス画像において、注目気管の内腔内に点を設定する。例えば、医師は、表示されたスライス画像において、気管の内腔内にポインタを移動させ、確定ボタンを押下することで、点を設定する。これにより、抽出機能121は、ポインタにより指定された点の設定を受け付ける。
【0068】
ステップS104において、抽出機能121は、設定された点を含む領域を抽出する。
例えば、抽出機能121は、設定された点の輝度値(CT値)を用いたセグメンテーション処理を行うことで、設定された点を含む領域を抽出する。例えば、医師により虚脱している内腔領域内の点が設定されると、抽出機能121は、虚脱領域を抽出する。
【0069】
ステップS105において、補正機能122は、虚脱領域に対して、呼吸器系管状臓器の直交断面の真の形状が真円であると仮定した形状補正を行う。例えば、補正機能122は、上述した第1方法〜第4方法のうち任意の方法により、虚脱領域の形状補正を行う。
【0070】
例えば、補正機能122は、虚脱領域の両端の点を結ぶ線分の垂直二等分線を用いて、第1方法による形状補正を行う。また、補正機能122は、虚脱領域における外周の長さを、呼吸器系管状臓器の真の形状における外周の長さとして、第2方法による形状補正を行う。また、補正機能122は、スライス画像に平行な非虚脱断面における呼吸器系管状臓器の形状を用いて、第3方法による形状補正を行う。また、補正機能122は、呼吸器系管状臓器と直交していない断面から直交断面を推定する直交断面推定処理を実行した後に、第1方法〜第3方法のいずれかの方法による補正処理を行うという第4方法による形状補正を行う。
【0071】
ステップS106において、出力制御機能123は、形状補正後の領域に関する情報を出力する。例えば、出力制御機能123は、直交断面の断面像を表示させる。また、出力制御機能123は、虚脱していない状態の内腔領域の輪郭を示すマーカや、直交断面の断面位置を示すマーカを表示させる。
【0072】
上述したように、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100において、補正機能122は、所定断面の画像データに含まれる領域であって虚脱を起こした呼吸器系管状臓器の領域である虚脱領域に対して、呼吸器系管状臓器の直交断面の真の形状が真円であると仮定した形状補正を行う。そして、出力制御機能123は、形状補正後の虚脱領域に関する情報を出力する。これによれば、医用画像処理装置100は、呼吸器疾患における断面の解析を容易にすることができる。例えば、医用画像処理装置100は、虚脱部位の直交断面の真の形状(虚脱していない状態の形状)を推定し、表示することができる。この結果、医師は、虚脱部位の直交断面の真の形状を定量的に把握することができるので、例えば、気管に挿入するステントサイズを正確かつ容易に決定することが可能となる。
【0073】
また、例えば、医用画像処理装置100は、第1方法〜第4方法による形状補正を行う機能を備える。これにより、例えば、医師は、虚脱の状況に応じて適切な形状補正方法を選択することができる。
【0074】
また、例えば、医用画像処理装置100は、虚脱部位がアキシャル断面に直交していない場合には、その虚脱部位の直交断面を推定する直交断面推定処理を行う。これにより、医用画像処理装置100は、例えば、アキシャル断面に直交しない呼吸器系管状臓器(気管支、細気管支など)に対しても、虚脱を補正するための形状補正を行うことが可能となる。
【0075】
また、一般的に、3次元の医用画像データに対するセグメンテーション処理は、処理負荷が大きく、この処理を用いて画像を表示する場合には、待ち時間が生じてしまう。これに対して、医用画像処理装置100は、直交断面推定処理において、3次元の医用画像データに対するセグメンテーション処理を行わずに、虚脱部位の直交断面を表示する。このため、医用画像処理装置100は、小さい処理負荷で虚脱部位の直交断面を表示することができる。これにより、医師は、待ち時間をかけずに虚脱部位の直交断面を閲覧することができる。また、直交断面推定処理は、小さな処理負荷で実行可能であるので、比較的情報処理能力の低い端末に対しても実装可能である。
【0076】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、虚脱した呼吸器系管状臓器の形状補正の一部の処理として直交断面推定処理を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、直交断面推定処理は、呼吸器系管状臓器が虚脱していない場合にも、直交断面を推定する処理として実行可能である。そこで、第2の実施形態では、医用画像処理装置100が、虚脱の有無にかかわらず、呼吸器系管状臓器と直交していない断面から直交断面を推定する場合の直交断面推定処理について説明する。
【0077】
図10を用いて、第2の実施形態に係る処理回路120の構成例を説明する。
図10は、第2の実施形態に係る処理回路120の構成例を示すブロック図である。第2の実施形態に係る医用画像処理装置100は、
図1に例示した医用画像処理装置100と同様の構成を備え、処理回路120が
図10に示す構成を備える点が相違する。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、
図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図10に示すように、処理回路120は、抽出機能121と、生成機能124と、出力制御機能123とを実行する。なお、抽出機能121及び出力制御機能123の処理については、第1の実施形態で説明した内容と同様であるので、説明を省略する。
【0079】
生成機能124は、ボリュームデータ111を構成する複数の画像データのうちの画像データに含まれる呼吸器系管状臓器の領域の長径及び短径に基づいて、画像データを回転させた断面位置の画像データを、ボリュームデータ111から生成する。
【0080】
図11を用いて、生成機能124の処理を説明する。
図11は、第2の実施形態に係る生成機能124の処理を説明するための図である。
図11では、気管支と直交していないアキシャル断面から、その気管支と直交する直交断面を推定する場合を説明する。
図11には、気管支に対する処理とともに、断面に描出される気管支の内腔領域を例示する。
【0081】
図11の上段に示すように、注目部位が左主気管支に存在する場合、断面位置P
4の断面像には、楕円形の内腔領域が描出される(
図11上段右図)。生成機能124は、左主気管支の内腔領域の長径b及び短径aに基づいて、断面位置P
4の断面像を回転させた画像データを生成する。ここで、楕円形の内腔領域の短径aが直交断面の直径に対応することを利用して(
図6B参照)、生成機能124は、「cosθ=a/b」により、左主気管支に直交する直交断面の向き(角度θ)を算出する。なお、楕円形の内腔領域の長径b及び短径aを算出する処理は、従来の如何なる画像処理技術により実現されてもよい。
【0082】
そして、
図11の下段に示すように、生成機能124は、角度θに基づいて、断面位置P
4を回転させた断面位置P
5の断面像を生成する。例えば、生成機能124は、断面位置P
4の内腔領域の重心位置(若しくは中心位置)を算出する。そして、生成機能124は、算出した重心位置を回転中心として、角度θ分回転させた断面位置P
5を決定する。そして、生成機能124は、ボリュームデータ111に対するMPR処理により、決定した断面位置P
5のMPR像を生成する。断面位置P
5のMPR像には、左主気管支の直交断面が描出される(
図11下段右図)。
【0083】
このように、生成機能124は、虚脱していない気管支のアキシャル断面に対しても、直交断面推定処理を行うことで、直交断面を推定する。なお、生成機能124の処理内容は、上記の説明に限定されるものではない。
【0084】
図12を用いて、第2の実施形態に係る医用画像処理装置100の処理手順を説明する。
図12は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置100の処理手順を示すフローチャートである。
図12に示す処理手順のうち、ステップS201〜ステップS204の処理内容は、
図9に示した処理手順におけるステップS101〜ステップS104の処理内容と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
ステップS205において、生成機能124は、抽出された領域の長径及び短径に基づいて、直交断面推定処理を行う。例えば、生成機能124は、左主気管支の内腔領域の長径b及び短径aに基づいて、断面位置P
4の断面像を回転させた断面位置P
5のMPR像を生成する。
【0086】
ステップS206において、出力制御機能123は、MPR像を出力する。例えば、出力制御機能123は、生成機能124により生成されたMPR像をディスプレイ102に表示させる。若しくは出力制御機能123は、MPR像を医用画像処理装置100以外の外部装置に出力してもよい。
【0087】
上述したように、第2の実施形態に係る医用画像処理装置100において、生成機能124は、ボリュームデータ111を構成する複数の画像データのうちの画像データに含まれる呼吸器系管状臓器の領域の長径及び短径に基づいて、画像データを回転させた断面位置の画像データを、ボリュームデータ111から生成する。そして、出力制御機能123は、回転させた断面位置の画像データを出力する。これによれば、医用画像処理装置100は、呼吸器疾患における断面の解析を容易にすることができる。
【0088】
例えば、医用画像処理装置100は、3次元の医用画像データに対するセグメンテーション処理を行わずに、呼吸器系管状臓器と直交していない断面から直交断面を推定し、表示することができる。このため、医用画像処理装置100は、小さい処理負荷で直交断面を表示することができる。これにより、医師は、待ち時間をかけずに直交断面を閲覧することができる。また、直交断面推定処理は、小さな処理負荷で実行可能であるので、比較的情報処理能力の低い端末に対しても実装可能である。
【0089】
(第3の実施形態)
また、第1及び第2の実施形態にて出力される情報を用いて、WA(Wall Area)率や壁厚などの診断指標値を測定することも可能である。
【0090】
図13を用いて、第3の実施形態に係る処理回路120の構成例を説明する。
図13は、第3の実施形態に係る処理回路120の構成例を示すブロック図である。第3の実施形態に係る医用画像処理装置100は、
図1に例示した医用画像処理装置100と同様の構成を備え、処理回路120が
図13に示す構成を備える点が相違する。そこで、第3の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、
図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0091】
図13に示すように、処理回路120は、抽出機能121と、補正機能122と、特定機能125と、測定機能126と、出力制御機能123とを実行する。なお、抽出機能121、補正機能122、及び出力制御機能123の処理については、第1の実施形態で説明した内容と同様であるので、説明を省略する。
【0092】
特定機能125は、例えば、回転された断面位置の画像データに平行な複数の画像データを用いて、断面位置を含む呼吸器系管状臓器の分枝の範囲を特定する。例えば、特定機能125は、呼吸器系管状臓器の分岐位置の特徴を用いて、呼吸器系管状臓器の分枝の範囲を特定する。
【0093】
図14を用いて、特定機能125の処理を説明する。
図14は、第3の実施形態に係る特定機能125の処理を説明するための図である。
図14では、直交断面推定処理により推定された断面位置P
6と交わる分枝の範囲を特定する場合を説明する。
図14には、左主気管支に対する処理を例示する。
【0094】
図14の上段に示すように、注目部位が左主気管支に存在する場合、断面位置P
6が直交断面推定処理により推定される。特定機能125は、断面位置P
6に対して垂直な方向に断面位置P
6を移動させる。そして、特定機能125は、移動した各断面位置における各画像データから分岐位置の特徴となる情報を抽出して、分岐位置を特定する。
【0095】
例えば、分岐位置は、注目する内腔領域の面積が極端に大きくなるという特徴を有する。例えば、
図14の中段に示すように、断面位置P
6に平行な断面位置P
7では、分岐した気管支と断面位置P
7とが交わる領域が存在する結果、分岐位置では内腔領域の面積が極端に大きくなる。そこで、特定機能125は、断面位置P
6を双方向に移動させ、断面位置P
6に平行な断面の各画像データから内腔領域の面積を算出する。そして、特定機能125は、閾値処理により、断面位置P
6の内腔領域を挟むように存在する2つの分岐位置を特定する。そして、特定機能125は、特定した2つの分岐位置の間の範囲Rを、左主気管支(分枝)の範囲として特定する。
【0096】
このように、特定機能125は、分岐位置を特定することで、呼吸器系管状臓器の分枝の範囲を特定する。なお、特定機能125の処理内容は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、特定機能125は、分割位置を超えた位置では注目する内腔領域が分割されるという特徴を用いて、分岐位置を特定しても良い。
【0097】
測定機能126は、特定された分枝の範囲に関する定量情報を測定する。例えば、測定機能126は、内腔領域が描出された直交断面から、WA率や壁厚などの診断指標値を測定する。
【0098】
図15を用いて、測定機能126の処理を説明する。
図15は、第3の実施形態に係る測定機能126の処理を説明するための図である。
図15では、特定機能125により特定された左主気管支の範囲RにおけるWA率の変化を示すグラフを例示する。
図15において、縦軸はWA率[%]に対応し、横軸は分枝の位置(距離)[mm]に対応する。
【0099】
図15に示すように、測定機能126は、左主気管支の範囲Rにおける各直交断面の画像データから、WA率を算出する。ここで、測定機能126は、「左主気管支の内腔面積/左主気管支の直交断面積×100」という式を用いて、WA率を算出する。そして、測定機能126は、各直交断面の画像データから算出したWA率を、各直交断面の位置に対応づけてプロットすることで、
図15に示すグラフを生成する。
【0100】
このように、測定機能126は、特定された分枝の範囲に関する定量情報を測定する。なお、測定機能126の処理内容は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、測定機能126は、分枝の範囲に限らず、任意の断面位置の定量情報を測定しても良い。
【0101】
上述したように、第3の実施形態に係る医用画像処理装置100において、特定機能125は、回転された断面位置の画像データに平行な複数の画像データを用いて、断面位置を含む呼吸器系管状臓器の分枝の範囲を特定する。そして、測定機能126は、特定された分枝の範囲に関する定量情報を測定する。これによれば、医用画像処理装置100は、3次元の医用画像データに対するセグメンテーション処理を行わずに、直交断面から定量情報を測定することができる。このため、例えば、医師は、待ち時間をかけずに直交断面から測定される定量情報を得ることができる。
【0102】
なお、第3の実施形態では、第1の実施形態の処理回路120に特定機能125及び測定機能126が備えられた場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第3の実施形態で説明した特定機能125及び測定機能126は、第2の実施形態で説明した処理回路120に備えられても良い。
【0103】
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0104】
(形状補正及び角度補正を選択可能なプログラムとしての提供)
例えば、第1の実施形態にて説明した形状補正、及び、第2の実施形態にて説明した角度補正(直交断面推定処理)が一つの画像処理プログラムに備えられ、医師により適宜選択されて実行される場合であってもよい。
【0105】
図16を用いて、その他の実施形態に係る医用画像処理装置100の処理手順を説明する。
図16は、その他の実施形態に係る医用画像処理装置100の処理手順を示すフローチャートである。
図6に示す処理手順のうち、ステップS301〜ステップS304の処理内容は、
図9に示した処理手順におけるステップS101〜ステップS104の処理内容と同様であるので、説明を省略する。
【0106】
ステップS305において、補正機能122は、形状補正が選択されたか否かを判定する。例えば、医師は、ステップS304の処理により抽出された内腔領域を閲覧する。そして、この内腔領域に形状補正が必要であると判断すると、医師は、形状補正を行う旨の指示を行う。補正機能122は、形状補正を行う旨の指示を受け付けると、形状補正が選択されたものと判定し、ステップS306の処理へ移行する。なお、ステップS306及びステップS307の処理内容は、
図9に示した処理手順におけるステップS105及びステップS106の処理内容と同様であるので、説明を省略する。
【0107】
一方、形状補正が選択されない場合、処理回路120は、ステップS308の処理へ移行する。例えば、医師は、閲覧した内腔領域に形状補正が必要ないと判断すると、形状補正を行わない旨の指示を行う。
【0108】
ステップS308において、生成機能124は、角度補正が選択されたか否かを判定する。例えば、医師は、閲覧した内腔領域に角度補正が必要であると判断すると、角度補正を行う旨の指示を行う。生成機能124は、角度補正を行う旨の指示を受け付けると、角度補正が選択されたものと判定し、ステップS309の処理へ移行する。なお、ステップS309及びステップS310の処理内容は、
図12に示した処理手順におけるステップS205及びステップS206の処理内容と同様であるので、説明を省略する。
【0109】
一方、角度補正が選択されない場合、処理回路120は、処理を終了する。例えば、医師は、閲覧した内腔領域が直交断面にある場合、角度補正が必要ないと判断して、角度補正を行わない旨の指示を行う。
【0110】
このように、第1の実施形態にて説明した形状補正、及び、第2の実施形態にて説明した角度補正(直交断面推定処理)は、一つの画像処理プログラムに備えられ、医師により適宜選択されて実行されてもよい。これによれば、医師は、この画像処理プログラムを起動しておけば、気管支軟化症の患者にもCOPDの患者にも応対することができる。
【0111】
(任意のアキシャル断面への角度θの適用)
また、上記の実施形態において、直交断面推定処理において算出された角度θは、任意のアキシャル断面に対して適用可能である。例えば、補正機能122は、呼吸器系管状臓器の領域の長径及び短径に基づいて、断面位置を回転させる角度θを算出する。そして、補正機能122は、算出した角度θを用いて、任意のアキシャル断面を回転させた断面位置の画像データを生成することができる。
【0112】
(医用画像診断装置)
また、例えば、上述した実施形態にて説明した各処理機能は、医用画像診断装置に備えられてもよい。例えば、医用画像診断装置は、被検体内が撮像された画像データ(ボリュームデータ111)を生成する機能を備えるとともに、例えば、
図1に示した医用画像処理装置100と同様の構成を備える。そして、医用画像診断装置は、所定断面の画像データに含まれる領域であって虚脱を起こした呼吸器系管状臓器の領域である虚脱領域に対して、呼吸器系管状臓器の直交断面の真の形状が真円であると仮定した形状補正を行う。そして、医用画像診断装置は、形状補正後の虚脱領域に関する情報を出力する。これによれば、医用画像診断装置は、呼吸器疾患における断面の解析を容易にすることができる。なお、医用画像診断装置は、
図10若しくは
図13に示した処理回路120と同様の構成を備えていてもよい。
【0113】
上述した実施形態において説明した処理回路120の各処理機能は、ソフトウェアによって実現することもできる。例えば、処理回路120の各処理機能は、上記の実施形態において処理回路120の各処理機能が行うものとして説明した処理の手順を規定したプログラムをコンピュータに実行させることで、実現される。このプログラム(医用画像処理プログラム)は、例えば、ハードディスクや半導体メモリ素子等に記憶され、CPUやMPU等のプロセッサによって読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)やMO(Magnetic Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されて、配布され得る。
【0114】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはプロセッサの回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサの回路内にプログラムを組み込む代わりに、コンソール30が有する記憶回路にプログラムを保存するように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0115】
また、上述した実施形態において図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0116】
また、上述した実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0117】
また、上述した実施形態では、呼吸器系管状臓器の直交断面の真の形状が真円であると仮定した形状補正を行う場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、統計解析により、人体における気管の直交断面の形状が、多少歪んだ円形状であると判明した場合には、医用画像処理装置100は、この形状を用いて形状補正を行うことも可能である。すなわち、医用画像処理装置100は、真円に限らず、多少歪んだ円形状を含む「略真円」の形状を用いて、形状補正を行うことができる。なお、形状補正にて用いられる略真円の形状は、操作者により予め設定される。
【0118】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、呼吸器疾患における断面の解析を容易にすることができる。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。