特許第6878040号(P6878040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878040
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20210517BHJP
   F16K 1/32 20060101ALI20210517BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20210517BHJP
   F16K 31/06 20060101ALN20210517BHJP
【FI】
   F16K27/00 D
   F16K1/32 E
   H01M8/04 N
   !F16K31/06 305Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-29381(P2017-29381)
(22)【出願日】2017年2月20日
(65)【公開番号】特開2018-135914(P2018-135914A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】堀 良輔
(72)【発明者】
【氏名】矢橋 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】木田 浩司
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−080001(JP,A)
【文献】 特開2004−134253(JP,A)
【文献】 特開平06−306901(JP,A)
【文献】 特開2010−048537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04−8/0668
F16K 27/00−27/12
F16K 1/00− 1/54
F15D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からのガス導入口と、ガスタンクへの連通口と、ガス消費機器へのガス供給口とを少なくとも備えた弁装置であって、
前記ガス導入口は逆止弁を備え、前記ガスタンクへの連通口と前記ガス供給口は開閉弁を備え、
前記ガス導入口と前記ガスタンクへの連通口とは第1のガス流路で連通しており、前記第1のガス流路から分岐部を介して第2のガス流路が分岐しており、前記第2のガス流路は前記ガス供給口に接続しており、
前記第1のガス流路は屈曲部を有しており、前記第2のガス流路への分岐部は、前記第1のガス流路の前記屈曲部と前記ガスタンクへの連通口との間に位置しており、前記屈曲部と前記分岐部との間における前記第1のガス流路内には、内部空間を前記第1のガス流路の方向と平行な複数の空間に分割して上流からのガスの流れを前記第1のガス流路の方向と平行な方向に整えることのできる整流部材が配置されていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置であって、前記屈曲部より下流側の前記第1のガス流路は断面円形であり、前記整流部材の長さは前記屈曲部より下流側の前記第1のガス流路の直径の1.5倍以上であることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1に記載の弁装置であって、前記整流部材は、前記屈曲部より下流側の前記第1のガス流路の方向に平行な長孔を有する部材であることを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項1に記載の弁装置であって、前記整流部材は、前記屈曲部より下流側の前記第1のガス流路の方向に平行な1枚以上の平板で形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項5】
外部からのガス導入口と、ガスタンクへの連通口と、ガス消費機器へのガス供給口とを少なくとも備えた弁装置であって、
前記ガス導入口は逆止弁を備え、前記ガスタンクへの連通口と前記ガス供給口は開閉弁を備え、
前記ガス導入口と前記ガスタンクへの連通口とは第1のガス流路で連通しており、前記第1のガス流路から分岐部を介して第2のガス流路が分岐しており、前記第2のガス流路は前記ガス供給口に接続しており、
前記第1のガス流路は屈曲部を有しており、前記第2のガス流路への分岐部は、前記第1のガス流路の前記屈曲部と前記ガスタンクへの連通口との間に位置しており、前記第1のガス流路内には前記屈曲部の下流側の前記第1のガス流路を2つに区分けする流路区分け材が配置されており、
該流路区分け材で区分けされた一方の流路は前記ガス導入口に連通し、他方の流路は前記分岐部を介して前記第2のガス流路に連通しており、前記流路区分け材の下端部は前記分岐部より下流側に位置していることを特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車には、車載のガスタンクから燃料電池への水素の供給と停止を制御するための弁装置が搭載されている。その一例が特許文献1に記載されており、その弁装置は、ガスタンクに接続するガス流路を備え、ガスタンク内の高圧の水素ガスは該ガス流路に配置した電磁弁を通過した後、減圧弁を通過して燃料電池に供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−80001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池車において、一般に、車載のガスタンクには外部の水素ステーションから高圧の水素ガスが充填される。そして、特許文献1に記載の弁装置のように、ガスタンクに充填された水素ガスが、弁装置内のガス流路を通ってガス消費機器である燃料電池に供給される。この種の弁装置において、水素ステーション等である外部からのガス導入口とガスタンクへの連通口とを連通するガス流路が屈曲部を有しない実質的に直線状の流路である場合には、供給されるガスはガス流路内を、該ガス流路に平行なほぼ整流の状態で流下する。しかし、ガス流路が途中にたとえば90度に屈曲する屈曲部を有する場合、該屈曲部を通過するときにガスの流れに乱れが生じ、本発明者らの実験では、旋回流となる場合があることを経験した。
【0005】
そのような屈曲部の下流側に、ガス消費機器である燃料電池への分岐ガス流路が分岐している形状を備えた弁装置の場合、ガスタンクへのガス充填時に、屈曲部の下流側を流れる旋回流をなすガス流に起因して、前記分岐ガス流路内にガスの一部が入り込むことが考えられる。ガスに少量の水分が含まれていると、その水分が、ガス消費機器側の開閉弁に付着する恐れがある。そのような水分の付着は弁の初期作動に、不安定要素を持ち込むので、回避する必要がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、外部からのガス導入口と、ガスタンクへの連通口と、ガス消費機器へのガス供給口とを少なくとも備えた弁装置において、前記ガス導入口と前記ガスタンクへの連通口とを接続するガス流路が屈曲部を有し、該屈曲部の下流側にガス消費機器へのガス供給口への分岐ガス流路が位置する形態の弁装置であっても、前記分岐ガス流路内にガス内に含まれる水分が入り込むのを効果的に抑制することのできる弁装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第1の形態の弁装置は、外部からのガス導入口と、ガスタンクへの連通口と、ガス消費機器へのガス供給口とを少なくとも備えた弁装置であって、前記ガス導入口は逆止弁を備え、前記ガスタンクへの連通口と前記ガス供給口は開閉弁を備え、前記ガス導入口と前記ガスタンクへの連通口とは第1のガス流路で連通しており、前記第1のガス流路から分岐部を介して第2のガス流路が分岐しており、前記第2のガス流路は前記ガス供給口に接続しており、前記第1のガス流路は屈曲部を有しており、前記第2のガス流路への分岐部は、前記第1のガス流路の前記屈曲部と前記ガスタンクへの連通口との間に位置しており、前記屈曲部と前記分岐部との間における前記第1のガス流路内には、上流からのガスの流れを前記第1のガス流路の方向と平行な方向に整えることのできる整流部材が配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記第1の形態の弁装置では、ガスタンクへのガス充填時において、前記第1のガス流路内を通過するガスは、前記屈曲部で旋回流を含む乱流状態となるが、前記整流部材を通過する過程で、その流れは第1のガス流路の方向と平行な方向に整流され、旋回理由は消滅する。そして、その整流状態は、第2のガス流路への分岐部を通過するときにも、そのまま維持されるので、第2のガス流路内にガス流が入り込むことは実質的に生じない。したがって、ガス流に水が混入している場合でも、前記ガス供給口に設けた開閉弁の作動に不都合が発生する事態を回避することができる。
【0009】
本発明者らの実験では、前記屈曲部より下流側の前記第1のガス流路が断面円形である場合に、前記整流部材の長さは前記屈曲部より下流側の前記第1のガス流路の直径の1.5倍以上であれば、ガス流の整流化という目的を、十分に達成することができた。
【0010】
第1の形態の弁装置において、前記整流部材は、上流からのガスの流れを前記第1のガス流路の方向と平行な方向に整えることのできる形状のものであれば、特に制限はない。本発明者らの実験では、前記整流部材が、前記屈曲部より下流側の前記第1のガス流路の方向に平行な長孔を有する部材であること、あるいは、前記屈曲部より下流側の前記第1のガス流路の方向に平行な1枚以上の平板で形成されていることは、製造の容易性の観点からも、好適な整流部材となる。
【0011】
本発明による第2の形態の弁装置は、外部からのガス導入口と、ガスタンクへの連通口と、ガス消費機器へのガス供給口とを少なくとも備えた弁装置であって、前記ガス導入口は逆止弁を備え、前記ガスタンクへの連通口と前記ガス供給口は開閉弁を備え、前記ガス導入口と前記ガスタンクへの連通口とは第1のガス流路で連通しており、前記第1のガス流路から分岐部を介して第2のガス流路が分岐しており、前記第2のガス流路は前記ガス供給口に接続しており、前記第1のガス流路は屈曲部を有しており、前記第2のガス流路への分岐部は、前記第1のガス流路の前記屈曲部と前記ガスタンクへの連通口との間に位置しており、前記第1のガス流路内には前記屈曲部の下流側の前記第1のガス流路を2つに区分けする流路区分け材が配置されており、該流路区分け材で区分けされた一方の流路は前記ガス導入口に連通し、他方の流路は前記分岐部を介して前記第2のガス流路に連通しており、前記流路区分け材の下端部は前記分岐部より下流側に位置していることを特徴とする。
【0012】
上記第2の形態の弁装置では、ガスタンクへのガス充填時において、前記第1のガス流路内を通過するガスは、前記屈曲部で旋回流を含む乱流状態となった場合であっても、流路区分け材で区分けされた一方の流路を通過して前記ガスタンクへの連通口に流れ込む。前記流路区分け材の下端部は前記分岐部より下流側に位置しており、一方の流路を流れる過程で、その流れが前記分岐部を介して第2のガス流路内に流入することはない。したがって、ガスタンクへのガス充填時にガス流に水が混入している場合でも、その水が第2のガス流路内に入り込むことはない。それにより、運転開始時等に、前記ガス供給口に設けた開閉弁の作動に不都合が発生する事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による弁装置を用いることにより、例えば、外部の水素ステーションから車載のガスタンクに高圧の水素ガスを充填するときに、ガス消費機器である燃料電池等への分岐ガス流路にガスに含まれる水が浸入するのを、阻止することができる。それにより、運転開始時に弁作動の不具合に起因してガス消費機器に生じる恐れのある作動の不具合を、回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による第1の形態の弁装置の一実施の形態を示す断面図。
図2】整流部材の具体例を示す図。
図3】第1の形態の弁装置でのガスの流れを示す模式図(図3(a))と整流部材を備えない場合でのガスの流れを示す模式図(図3(b))。
図4】第2の形態の弁装置の一実施の形態を示す図。
図5図4に示す弁装置において、ガスタンクからガス消費機器へガスを供給するときのガスの流れを示す図。
図6】第2の形態の弁装置の他の実施例における遮蔽体を説明する断面図。
図7】第2の形態の弁装置の他の実施の形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。この例において、弁装置100は、燃料電池車に搭載されるガスタンク1に付設されるものであり、ボディ2を有する。ボディ2には、外部からのガス導入口としての逆止弁10を備える。逆止弁10は従来知られたものであってよい。逆止弁10の一端は充填入口部11であり、そこに、外部の水素ステーション5に設置された充填機6の供給ノズルが接続されることで、蓄ガス器7に貯留されている高圧水素ガスが、弁装置100内に導入される。
【0016】
[第1の形態]
逆止弁10の出側は、ボディ2内に形成された第1のガス流路20に接続している。第1のガス流路20は横断面が円形であり、その一部に、90度に折れ曲がった屈曲部21を有している。第1のガス流路20の前記屈曲部21より下流側の部分(以下、この部分を「第1のガス流路の下流部22」という)は直線状であり、その端部は、ボディ2内に形成されたより直径の大きい円筒部25の先端側に接続している。該円筒部25には、ガスタンク1内への連通口26が形成されており、連通口26を通して、高圧の水素ガスがガスタンク1に高圧充填される。
【0017】
前記円筒部25には、例えば電磁弁である開閉弁30の可動弁部分31が進退自在に挿入されており、該可動弁部分31が前進することで前記連通口26は閉じた状態となり、後退することで連通口26は開いた状態となる。連通口26が開いた状態のときに、第1のガス流路20はガスタンク1内に連通した状態となる。
【0018】
前記第1のガス流20における前記屈曲部21と前記ガスタンク1への連通口26との間、すなわち、前記した第1のガス流路の下流部22の適所には分岐部23が形成されており、該分岐部23から、前記第1のガス流路の下流部22の中心軸線の方向から90度の方向に分岐する、第2のガス流路24が分岐している。第2のガス流路24の下流側の端部は、例えば電磁弁である開閉弁40に接続しており、該開閉弁40が閉じているときには第2のガス流路24の出側は閉鎖された状態となり、開閉弁40が開くことで、第2のガス流路24の出側は、開閉弁40を介して、減圧弁3および車両に搭載された燃料電池4に接続した状態となる。それにより、燃料電池4には燃料として水素が供給される。なお、この電磁弁である開閉弁40は、例えば前記した特許文献1に記載されるような従来知られたものであってよく、開閉弁40の詳細な説明は省略する。
【0019】
前記第1のガス流路の下流部22であって、前記分岐部23よりも上流側の部分には、すなわち、前記第1のガス流路20における前記屈曲部21と前記分岐部23との間の部分には、その内部に整流部材50が配置されている。整流部材50は、上流からのガスの流れを、前記第1のガス流路の下流部22の中心軸線の方向に平行な流れとなるように、整えることができる形状を備えたものである。また、円筒状である前記第1のガス流路の下流部22の直径をDとしたときに、整流部材50の軸線方向の長さLは、好ましくは、L≧1.5Dとされる。
【0020】
図2は、前記整流部材50の具体的な形状のいくつかの例を、第1のガス流路20における前記屈曲部21と前記分岐部23との間の部分内に配置した状態で示している。図2(a)〜図2(d)において、上位の図は平面図であり、下位の図は上位の図のs−s線に沿う断面図である。
【0021】
図2(a)に示す整流部材50aは、外径がDであり、長さがLである円筒体51と、前記円筒体51の内周面における最大直径部分に、円筒体51の軸線方向に立設した長さLの1枚の垂直壁部52とで構成されている。整流部材50aの内部空間は、垂直壁部52によって、軸方向で2分割されている。図2(b)に示す整流部材50bは、図2(a)に示す整流部材50aにおける垂直壁部52に直交するようにしてもう一枚の垂直壁部53を一体形成したものである。ここでは、整流部材50bの内部空間は、垂直壁部52と53とによって、軸方向で4分割されている。
【0022】
図2(c)に示す整流部材50cは、対角線の長さがDであり長さがLである直方体55の中央部に直径dである円筒状の連通孔56を1個形成したものである。図2(c)の上位の図に示されるように、この整流部材50cを第1のガス流路20における前記屈曲部21と前記分岐部23との間の部分に配置することで、前記第1のガス流路の下流部22の内部空間は、第1のガス流路の内周面と前記直方体55の4つの外周壁とで区画される4つの空間57と前記円筒状の連通孔56である空間の5個の空間に分けられる。そして、5個の空間はすべて前記第1のガス流路の下流部22の軸心線に平行な空間となる。
【0023】
図2(d)に示す整流部材50dは、直方体55の形状は図2(c)に示した整流部材50cのものと同じであるが、該直方体55に形成される貫通孔の形状において、異なっている。整流部材50dでは、前記貫通孔58は、直径d1(<d)の円筒状であり、その適数個(図示のものでは4個)が、周方向に均等に分布するようにして、直方体55内に形成されている。この整流部材50dを第1のガス流路20における前記屈曲部21と前記分岐部23との間の部分に配置することで、前記第1のガス流路の下流部22の内部空間は、第1のガス流路の内周面と前記直方体55の4つの外周壁とで区画される4つの空間57と4個の円筒状の連通孔58からなる4つの空間の計8個の空間に分けられる。そして、ここでも、8個の空間はすべて前記第1のガス流路の下流部22の軸心線に平行な空間となる。
【0024】
図3を参照して、上記弁装置100の作動状態について説明する。図3は、弁装置100における、前記した第1のガス流路20と、該第1のガス流路20の屈曲部21より下流側の部分である第1のガス流路の下流部22と、該第1のガス流路の下流部22における前記分岐部23から90度方向に分岐している第2のガス流路24の部分を、模式的に示す拡大図である。そして、図3(a)は、本実施の形態での整流部材50を備えた弁装置100におけるガスの流れを、図3(b)は、同じ弁装置であるが整流部材50を備えない場合でのガスの流れを示している。
【0025】
車載のガスタンク1に、外部の水素ステーション5から高圧水素ガスを充填するとき、第1のガス流路の下流部22の端部に設けた開閉弁30は開とされ、第2のガス流路24に設けた開閉弁40は閉とされる。水素ステーション5からの高圧水素ガスは、充填機6の操作によって、逆止弁10を通って第1のガス流路20内に流入し、ガスタンク1への連通口26からガスタンク1内に充填される。ガスをガスタンク1へ充填するときは、ガスタンク1内は低圧であり、第1のガス流路20内を通過するガス流fは、高速な流れとなる。また、このガス流fは、通常、第1のガス流路20の軸心線に沿った平行流となっている。
【0026】
第1のガス流路20内のガス流fは、第1のガス流路20の前記屈曲部21に到達し、そこで90度の角度で向きを変える。高速流となっているガス流fは、この流れの向きが変わることで、図3(b)に示すように、渦流f1となる。そして、渦流f1の状態で第1のガス流路の下流部22を通過し、ガスタンク1への連通口26に到達する。もしガス流fに水が混入している場合、図3(b)に示すように、前記渦流f1が第2のガス流路24への分岐部23を通過するときに、ガス中の水が遠心力によって、第2のガス流路24内へ侵入する恐れがある。
【0027】
ガスタンク1への所定量のガスの充填が終了した時点で、開閉弁30を閉じ、車両から充填機6の供給ノズルは外される。車載の燃料電池4を駆動するときに、開閉弁30は開状態とされ、ガスタンク1と第1のガス流路20は連通口26を介して連通した状態となり、ガスタンク1の高圧の水素ガスは、第2のガス流路24を通って開閉弁40に到達する。開閉弁40が開状態となったときに、水素ガスは減圧弁3によって圧制御されて、ガス消費機器である燃料電池4に供給される。
【0028】
上記燃料電池への水素ガスの供給過程で、前記のように第2のガス流路24内に水が浸入していると、ガス流とともに水が開閉弁40内に流入することとなり、開閉弁40の作動に変調を生じさせる。弁装置100が低温環境に置かれていた場合などには、第2のガス流路24の水が凍結することも起こりうるので、第2のガス流路24での水の存在が開閉弁40へ与える影響は一層大きくなる。
【0029】
図3(a)に示すように、上記実施の形態の弁装置100では、第1のガス流路の下流部22であって、分岐部23よりも上流側の部分に、すなわち、前記第1のガス流路20における前記屈曲部21と前記分岐部23との間の領域に、整流部材50(例えば、図2に示した形態の50a〜50dの何れか)が配置されている。そのために、整流部材50の上流側でガス流fが渦流f1となっているときでも、該整流部材50内を通過する過程で、前記渦流f1は、整流部材50により形成された貫通孔56、58あるいは空間57の軸心線に平行な流れに整流される。結果、整流部材50を通過した後のガス流f2は、第1のガス流路の下流部22の中心軸線の方向と平行な方向の流れとなる。そのために、そのガス流f2が前記第2のガス流路24との分岐部23を通過するときに、第2のガス流路24に向けた偏向流が生じることはなく、それにより、ガス流fに水が含まれている場合であっても、その水が第2のガス流路24内に浸入するのを確実に回避することができる。
【0030】
なお、上記の説明では、弁装置100の第1のガス流路20を通過するガスは水素ガスであり、水素ガスを消費する機器は車載の燃料電池4であるとして説明したが、弁装置100の使用用途は、これに限らない。第1のガス流路20が屈曲部21を有し、第2のガス流路24への分岐部2が、第1のガス流路20の前記屈曲部21と適宜のガスタンクへの連通口26との間に位置している構成を備える弁装置であれば、任意の用途にある弁装置に上記した「整流部材」を配置することで、本発明の所期の目的は達成することができる。第1のガス流路20を流れるガスも水素に限られない。また、屈曲部として90度に折れ曲がる屈曲部21を示したが、屈曲の角度は任意であり90度は例示である。
【0031】
さらに、上記の説明では、前記屈曲部21より下流側の第1のガス流路20は断面円形であり、その直径をDとし、整流部材50の軸心線方向の長さLとしたときに、好ましくは、L≧1.5Dとされるものとしたが、本発明者らの実験では、L≧1.5Dの条件を満たすことで、高い確率で上流側での渦流f1を整流f2に直すことができた。L<1.5Dの場合には、渦流f1の条件によっては、整流部材50を通過した後でも渦成分が残っていることが観察された。また、渦流f1の旋回流の強さは、当初のガス流fの持つ運動条件は同じであっても、第1のガス流路20と第1のガス流路の下流部22の直径の大きさ、さらには前記屈曲部21の屈曲角度によって、変化するので、実験的に、L≧1.5Dの最適条件を選択することが好ましい。
【0032】
[第2の形態]
弁装置の第2の形態を説明する。第2の形態の弁装置は、第1の形態の弁装置100における「整流部材50(50a〜50d)」に変えて、以下に説明する「流路区分け材」を用いる点でのみ、構成において第1の形態の弁装置100と相違する。弁装置の用途や対象となるガスの種類等は、第1の形態の弁装置100と同じである。したがって、以下の説明では、主に「流路区分け材」に係る構成のみを説明し、他の構成は説明および図示を省略する。
【0033】
図4は、第2の形態の弁装置における、図3(a)に相当する図であり、図4(b)は、図4(a)のb−b線に沿う断面図である。図3に示すと同じ部材には、同じ符号を付している。
【0034】
この実施の形態において、前記第1のガス流路20における前記屈曲部21より下流の部位(第1のガス流路の下流部22)には、該流路をガスの流れ方向に2分割する位置、すなわち、第1のガス流路20の下流部22の軸線方向に沿って、平板状の流路区分け材60が配置されている。図示の例では、流路区分け材60は、図4(b)に示すよう、第1のガス流路20の下流部22の直径と同じ横幅である。そして、図4(a)に示すように、その上端部は第1のガス流路20の屈曲部21における天面部に当接しており、下端部は、分岐部23よりも下流側に位置している。
【0035】
それにより、第1のガス流路20の下流部22は、流路区分け材60が存在する部位では軸線方向に2つに区分けされ、流路区分け材60の下端部より下流において、2つの流路は合流する。区分けされた一方の流路22aは、前記屈曲部21よりも上流側の第1のガス流路20に連通しており、前記ガス導入口につながっている。区分けされた他方の流路22bは、流路区分け材60が存在する部位に形成されている前記分岐部23を介して前記第2のガス流路24に連通している。
【0036】
上記の上記弁装置の作動状態について説明する。車載のガスタンク1への外部の水素ステーション5からの高圧水素ガスの充填は、第1の形態の弁装置100と同様にして行われる。図1に示す逆止弁10を通って第1のガス流路20内に流入したガスは、ガス流fとなって、第1のガス流路20内を高速な流れとなって流れる。
【0037】
第1のガス流路20内のガス流fは、第1のガス流路20の前記屈曲部21に到達し、屈曲部21に位置している前記流路区分け材60に衝突することで下方に向きを変える。衝突により乱流状態となり、その状態で、区分けされた一方の流路22a内を流下する。そして、ガスタンク1への連通口26に到達する。流路区分け材60は、その下端部を前記分岐部23よりも下流側に位置させている。そのために、一方の流路22a内を流下するガス流が、乱流であっても整流であっても、前記分岐部23を介して前記第2のガス流路24に流れ込むことはない。したがって、ガス流fに水が含まれている場合であっても、その水が第2のガス流路24内に浸入するのを確実に回避することができる。
【0038】
第1の形態の弁装置100と同じように、燃料電池4に燃料としての水素をガスタンクから供給するときのガスの流れは、図5に示すガス流faのようになる。すなわち、ガスタンクからの高圧ガスは、最初に流路区分け材60で区分けされた2つの流路22a,22bに流入するが、一方の流路22aは逆止弁によって閉鎖されており、一方の流路22aから外部には流出しない。一方、他方の流路22bの上端部は、流路区分け材60の上端部が第1のガス流路20の屈曲部21における天面部に当接していることで閉鎖されているので、他方の流路22bに流入してくるガスは、前記分岐部23を通って、第2のガス流路24に流入し、燃料電池4に送られる。
【0039】
上記のように、第2の形態の弁装置を用いる場合は、ガスタンクへの充填時に、充填ガスが前記分岐部23である開口部に直接接するようにして流下するのを回避できるので、第1の形態の弁装置100の場合と同様に、ガスタンクへの充填時に第2のガス流路24へ充填ガスが入り込むのを阻止することができる。
【0040】
図4および図5では、流路区分け材60として、一枚の平板からなるものを示したが、図6に示すように、2枚の平板61と62を十文字状に組み合わせた流路区分け材60を用いることもできる。
【0041】
図7は、第2の形態の弁装置の他の実施の形態を示す、図4に相当する図である。なお、図7(b)は、図7(a)のb−b線に沿う断面図である。ここでの流路区分け材70は、第1のガス流路20の下流部22における、前記分岐部23が形成されている部位の近傍のみを、2つの流路に区分けしている点で、図4で説明したものと異なっている。
【0042】
図7に示す形態では、流路区分け材70は半楕円形状のものであり、その曲線部である外周縁部を、前記分岐部23よりも上位の位置において、第1のガス流路20の下流部22の内周面に固定することで、斜板状態となって、第1のガス流路20の下流部22に一体化されている。流路区分け材70の下端部は直線状であり、前記分岐部23よりも下方部位まで達している。
【0043】
図7に示すように、斜板状体の流路区分け材70が存在することで、第1のガス流路20の下流部22の一部は、図で左側の第1の流路22xと、流路区分け材70を挟んで反対側である、図で右側の第2の流路22yに区分けされる。そして、区分けされた一方の流路である第1の流路22xは、上流側の第1のガス流路20に連通して前記ガス導入口につながっている。区分けされた他方の流路である第2の流路22yは、流路区分け材70が存在する部位に形成されている前記分岐部23を介して前記第2のガス流路24に連通している。
【0044】
この流路区分け材70が奏する作用効果は、図4図5に示した流路区分け材60が奏する作用効果と実質的に同じであり、説明は省略する。
【符号の説明】
【0045】
100…弁装置、
1…ガスタンク、
2…ボディ、
3…減圧弁、
4…燃料電池、
5…外部の水素ステーション、
6…充填機、
7…蓄ガス器、
10…逆止弁、
11…逆止弁の充填入口部、
20…第1のガス流路、
21…屈曲部、
22…第1のガス流路の下流部、
23…分岐部、
24…第2のガス流路、
25…円筒部、
26…ガスタンクへの連通口、
30…電磁弁である開閉弁、
31…電磁弁の可動弁部分、
40…電磁弁である開閉弁、
50(50a〜50d)…整流部材、
51…円筒体、
52、53…垂直壁部、
55…直方体、
56、58…直方体の中央部に形成した円筒状の連通孔、
57…整流部材で形成される空間、
60、70…流路区分け材、
D…整流部材が配置される第1のガス流路20の下流部22の直径、
L…整流部材の長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7