(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878045
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】点群データの抽出方法、及び点群データの抽出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 21/00 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
G01B21/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-37620(P2017-37620)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-141757(P2018-141757A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100091580
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 雅文
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 信
(72)【発明者】
【氏名】横田 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】宮川 雄
【審査官】
三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−032444(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/129580(WO,A1)
【文献】
特開2014−163707(JP,A)
【文献】
米国特許第08825391(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00−21/32
G01C 11/00−11/30
7/00− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定経路に沿って移動させつつ測定装置の周囲を走査して取得した全周点群データから特定の解析対象物についての点群データである対象点群データを抽出するべく、
前記測定経路における前記測定装置の移動の軌跡を複数の軌跡点として表した軌跡点列データを取得し、
前記軌跡点列データから取得した軌跡点列の各軌跡点のそれぞれを基準として位置が定まると共に、指定された幾何学形状で特定される領域を抽出領域として設定し、
前記全周点群データのうち前記抽出領域に属する点データを対象点群データとして抽出する、点群データの抽出方法であって、
前記抽出領域が前記軌跡点からの垂線上の予め定めた位置に、予め設定した径と予め設定した高さ寸法に設定された複数の円柱領域であり、
前記抽出領域には、
複数の前記円柱領域と、
隣り合う2個の前記円柱領域に着目したときにおける前記2個の円柱領域のそれぞれの外周面に外接する平行な2面の接平面、前記2個の円柱領域の上面に相当する上側平面、前記2個の円柱領域の底面に相当する底平面、前記2個の円柱領域のそれぞれにおいて前記2面の接平面が前記外周面と接する2本の母線を含み前記円柱領域の直径をなす2面の直径平面で囲まれた平行六面体領域の内部領域と、を含むことを特徴とする点群データの抽出方法。
【請求項2】
前記軌跡点列は、予め定めた一定時間間隔で得られた測定軌跡点列データから指定した一定の距離だけ離間した軌跡点を取得することにより得られたことを特徴とする請求項1に記載の点群データの抽出方法。
【請求項3】
前記測定経路が測定対象である道路での走行経路であり、
前記解析対象物が前記道路の路面であることを特徴とする請求項1に記載の点群データの抽出方法。
【請求項4】
前記全周点群データが前記抽出領域に属しているか否かの判定を近似最近傍探索(ANN:Approximate Nearest Neighbor)および、指定された幾何学形状で特定される領域の内外判定を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の点群データの抽出方法。
【請求項5】
測定経路に沿って移動させつつ測定装置の周囲を走査して取得した全周点群データから特定の解析対象物についての点群データである対象点群データを抽出するべく、
前記測定経路における前記測定装置の移動の軌跡を複数の軌跡点として表した軌跡点列を取得する手段と、
前記軌跡点のそれぞれを基準として位置が定まると共に、指定された幾何学形状で特定される領域を抽出領域として設定する手段と、
前記全周点群データのうち前記抽出領域に属する点データを対象点群データとして抽出する手段とを備える、点群データの抽出装置であって、
前記抽出領域が前記軌跡点からの垂線上の予め定めた位置に、予め設定した径と予め設定した高さ寸法に設定された複数の円柱領域であり、
前記抽出領域には、
複数の前記円柱領域と、
隣り合う2個の前記円柱領域に着目したときにおける前記2個の円柱領域のそれぞれの外周面に外接する平行な2面の接平面、前記2個の円柱領域の上面に相当する上側平面、前記2個の円柱領域の底面に相当する底平面、前記2個の円柱領域のそれぞれにおいて前記2面の接平面が前記外周面と接する2本の母線を含み前記円柱領域の直径をなす2面の直径平面で囲まれた平行六面体領域の内部領域と、を含むことを特徴とする点群データの抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置で測定した測定装置の全周にわたる点群データから解析対象物である道路等の点群データを抽出する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に道路は車両等の通行により経時的に轍や凹凸が生じ、これらを補修する必要がある。このような道路の補修を行うため、道路の点検を行い、道路の路面性状についてのデータ、即ち路面の凹凸の状態についてのデータを取得する。これらの路面性状についてのデータは、測定員による測定や、路面性状車を測定対象となる道路の測定経路に沿って走行して取得される。路面性状車には、路面にスキャン光を照射して路面の各点の高さを計測する測定装置が搭載されている。
【0003】
特許文献1には、移動体を平面の縦断方向に移動させつつ光を平面に向けて投光し投光結果により平面の段差を計測する装置において、移動距離を検出する手段と投光手段、光照射ラインを撮像する手段、高さデータを取得する横断方向データ演算手段、縦方向データ演算手段、3次元データ演算手段、を備える構成とする。以上の構成により移動体が所定距離移動するごとに平面の横断方向に沿って1本の照射ラインが平面上に形成されるように移動体から平面に向け光が投光され、上記各種手段により凹凸プロフィルをリアルタイムに取得する技術が記載されている。
【0004】
このような路面性状車にあっては、路面の高さ測定は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)で位置を取得しつつ測定装置のスキャナにより車両の斜め前方にスキャン光をスパイラル状に照射して周囲の構造物からの反射光を受信することにより行われる。
【0005】
ここで、測定装置は、複数、例えば32個の測定素子を備え、この測定素子を回転駆動して順次スキャンを行い、周囲の構造物までの距離を取得して全周にわたる点群データを得る。
【0006】
一般に、道路の性状を調査するに際しては、取得した点群には、道路やトンネルの内壁、整備法面などの解析対象としたい構造以外も多く取得されている。このため、道路の性状を解析するためには、このような点群データから解析対象である道路等の構造部分の点群だけを切り出す必要がある。従来の点群処理ソフトウエアでは人が範囲を決めて点群データを切り出すことができるものの、点群データの取得には、取得したい領域を手動で指定する必要がある。このため、点群データから解析対象点群データを手動で抽出するには、手間がかかる。そこで自動的に道路に関する点群データを取得することが求められている。
【0007】
非特許文献1には、測定対象となる道路の路肩の凹凸形状を認識して、道路部分を自動的に分別する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
H. Guan et al. “Automated Road Information Extraction From Mobile Laser Scanning Data” IEEE TITS 16(1):194 205,2015
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−288516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、非特許文献1で提案されている従来の点群データの抽出方法にあっては、処理が複雑である他、路肩に縁石などの目標物がない場合は対応が困難であるという問題点がある。
【0011】
本発明は上述した課題に鑑みたものであり、測定経路について測定装置の全周にわたって取得された点群データから解析対象とする構造物についての解析対象点群データを簡単かつ自動的に抽出することができる点群データの抽出方法、及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決する請求項1に記載の発明は、測定経路に沿って移動させつつ測定装置の周囲を走査して取得した全周点群データから特定の解析対象物についての点群データである対象点群データを抽出する
べく、前記測定経路における前記測定装置の移動の軌跡を複数の軌跡点として表した軌跡点列データを取得し、前記軌跡点列データから取得した軌跡点列の各軌跡点のそれぞれを基準として位置が定まると共に、指定された幾何学形状で特定される領域を抽出領域として設定し、前記全周点群データのうち前記抽出領域に属する点データを対象点群データとして抽出する、
点群データの抽出方法であって、前記抽出領域が前記軌跡点からの垂線上の予め定めた位置に、予め設定した径と予め設定した高さ寸法に設定された複数の円柱領域であり、前記抽出領域には、複数の前記円柱領域と、隣り合う2個の前記円柱領域に着目したときにおける前記2個の円柱領域のそれぞれの外周面に外接する平行な2面の接平面、前記2個の円柱領域の上面に相当する上側平面、前記2個の円柱領域の底面に相当する底平面、前記2個の円柱領域のそれぞれにおいて前記2面の接平面が前記外周面と接する2本の母線を含み前記円柱領域の直径をなす2面の直径平面で囲まれた平行六面体領域の内部領域と、を含むことを特徴とすることを特徴とする点群データの抽出方法である。
【0013】
同じく請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の点群データの抽出方法において、前記軌跡点列は、予め定めた一定時間間隔で得られた測定軌跡点列データから指定した一定の距離だけ離間した軌跡点を取得することにより得られたことを特徴とする。
【0014】
同じく請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の点群データの抽出方法において、前記測定経路が測定対象である道路での走行経路であり、前記解析対象物が前記道路の路面で
あることを特徴とする。
【0015】
同じく請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載の点群データの抽出方法において、
前記全周点群データが前記抽出領域に属しているか否かの判定を近似最近傍探索(ANN:Approximate Nearest Neighbor)および、指定された幾何学形状で特定される領域の内外判定を用いて行うことを特徴とする。
【0016】
同じく請求項5に記載の発明は、
測定経路に沿って移動させつつ測定装置の周囲を走査して取得した全周点群データから特定の解析対象物についての点群データである対象点群データを抽出するべく、前記測定経路における前記測定装置の移動の軌跡を複数の軌跡点として表した軌跡点列を取得する手段と、前記軌跡点のそれぞれを基準として位置が定まると共に、指定された幾何学形状で特定される領域を抽出領域として設定する手段と、前記全周点群データのうち前記抽出領域に属する点データを対象点群データとして抽出する手段とを備える、点群データの抽出装置であって、前記抽出領域が前記軌跡点からの垂線上の予め定めた位置に、予め設定した径と予め設定した高さ寸法に設定された複数の円柱領域であり、前記抽出領域には、複数の前記円柱領域と、隣り合う2個の前記円柱領域に着目したときにおける前記2個の円柱領域のそれぞれの外周面に外接する平行な2面の接平面、前記2個の円柱領域の上面に相当する上側平面、前記2個の円柱領域の底面に相当する底平面、前記2個の円柱領域のそれぞれにおいて前記2面の接平面が前記外周面と接する2本の母線を含み前記円柱領域の直径をなす2面の直径平面で囲まれた平行六面体領域の内部領域と、を含むことを特徴とする点群データの抽出装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る点群データの抽出方法、及び装置によれば、測定経路について測定装置の全周にわたって取得された点群データから解析対象とする構造物についての解析対象点群データを簡単かつ自動的に抽出することができる。
【0018】
即ち、請求項1に記載の点群データの抽出方法、及び請求項6に記載の点群データの抽出装置によれば、測定経路に沿って移動させつつ測定装置の周囲を走査して取得した全周点群データから特定の解析対象物についての点群データである対象点群データを抽出するに際して、測定経路における前記測定装置の移動の軌跡を複数の軌跡点として表した軌跡点列データを取得し、軌跡点列の各軌跡点のそれぞれを基準として位置が定まると共に、指定された幾何学形状で特定される領域を抽出領域として設定し、全周点群データのうち抽出領域に属する点データを対象点群データとして抽出する。
よって、測定経路について測定装置の全周にわたって取得された点群データから解析対象とする構造物についての解析対象点群データを簡単かつ自動的に抽出することができる。
また、所望の幅寸法での解析対象物についての点群データを迅速にかつ少ない漏れで抽出できる。
また、抽出領域には、複数の円柱領域と、複数の平行六面体領域の内部領域と、を含むので、本来なら道路の点群データとして、円柱領域から外れる点群データを平行六面体領域内部領域で抽出することができ、点群データの抽出漏れを最小限にすることができる。
【0019】
また、請求項2に記載の点群データの抽出方法によれば、抽出領域を決めるための軌跡点列は、予め定めた一定時間間隔で得られた測定軌跡点列から指定した一定の距離だけ離間した点を取得することにより得る。
よって、過度に多く軌跡点列を設定することがなくなり、流出領域の設定処理や点群データの抽出処理を簡単かつ迅速にできる。
【0020】
また、請求項3に記載の点群データの抽出方法によれば、測定経路を測定対象である道路での走行経路とし、解析対象物を道路の路面とし、更に抽出領域を軌跡点からの垂線上の予め定めた位置に設定された複数の円柱領域とし、円柱領域を、予めに設定した径と予め設定した高さ寸法とする。
よって、所望の幅寸法での路面についての点群データを迅速にかつ少ない漏れで抽出できる。
【0021】
また、請求項4に記載の点群データの抽出方法によれば、
全周点群データが前記抽出領域に属しているか否かの判定を近似最近傍探索(ANN:Approximate Nearest Neighbor)および、指定された幾何学形状で特定される領域の内外判定を用いて行う。
このため、点群データの抽出処理を、高性能な装置を使用することなく、簡単かつ高速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る点群データの抽出装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】路面測定装置による路面の測定状態を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【
図3】点群データの抽出を行うための抽出領域を説明するものであり、(a)は円柱領域の平面図、(b)は円柱領域と平行六面体領域を示す平面図である。
【
図4】点群データの抽出を行うための抽出領域を構成する円柱領域と平行六面体領域を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係る点群データの抽出方法における処理を示すフローチャートである。
【
図6】点群データの抽出状態を示すものであり、(a)は抽出前の点群データに取得した写真を重ねて示した図、(b)は抽出された道路の点群データを写真に重ねて示した図、(c)は抽出された道路の点群データの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態に係る点群データの抽出方法、及び点群データの抽出装置について説明する。
【0024】
本発明の実施形態に係る点群データの抽出方法及び点群データの抽出装置は、MMS(モバイルマッピングシステム:Mobile Mapping System)を構成する路面測定装置で取得される全周点群データと、軌跡点列データから解析対象物である道路の点群データを抽出する。抽出された道路の点群データは面的に評価され、路面性状の評価がなされる。
【0025】
路面測定装置は、走行して移動する車両に搭載され、スキャナ及び画像による高精度な実測データを取得する。この測定は、スキャナの全周についてなされ、道路の他、道路の付属物、建築物、立木等、周囲の構造物についての点群データ(全周点群データ)が取得される。道路の評価を行う際には、道路以外のものについて得られた点群データがあると、道路のモデル面の設定等が正確にできない。このため、抽出装置により、取得した全周点群データから道路の点群データを対象点群データとして抽出する。
【0026】
以下、点群データの抽出装置について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る点群データの抽出装置の構成を示すブロック図、
図2は路面測定装置による路面の測定状態を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。路面測定装置300は、
図2(a)に示すように、道路410を走行する車両340に搭載される。路面測定装置300は、測定装置であるスキャナ310と、全周カメラ320と、GNSS(Global Navigation Satellite System)装置330と、路面測定装置300の姿勢検出装置、加速度計等を備える。路面測定装置300はGNSS装置で位置を取得しつつスキャナ310により車両340の斜め前方にスキャン光Laをスパイラル状に走査して照射し、構造物400である例えば道路410や周囲の建築物420からの反射光Lbを受信する。
【0027】
この受信までの時間に基づいて構造物400の測定データ(全周点群データ)を取得する。このため、構造物400における、スキャン光Laの軌跡Tは、スパイラル状となる。なお、
図2(b)には、道路410に照射されたスキャン光Laだけを記載している。スキャナ310には、32個の測定素子が配置されている。この測定素子は発光素子と受光素子とを備え、発光素子からはパルス状に測定光が射出され、受光素子は構造物400による測定光の反射を受光する。発光から受光までの時間に基づいて、スキャナ310の全周にわたって測定した全周点群データを取得する。
【0028】
また、路面測定装置300は、同時に全周カメラ320により全周にわたり道路の画像を取得する。GNSS装置330は、人工衛星の電波をとらえ、路面測定装置300の平面位置と高度を取得して路面測定装置300の走行経路、即ち測定経路を取得する。そして、路面測定装置300の座標を一定時間間隔、例えば100回/秒間隔の軌跡点を取得して軌跡点列データを座標として出力する。この軌跡点列データは所定時間間隔で取得されるから、各データの間隔は必ずしも一定距離距とはならず、各データの間隔は車両340の走行速度に依存する。
【0029】
抽出装置100は、路面測定装置300からの測定データとして、全周点群データと軌跡点データとを取得して、道路についての点群データを対象点群データとして抽出し、路面評価装置200に出力する。路面評価装置200ではこの対象点群データを解析して路面性状の評価を行う。
【0030】
図1に示すように、抽出装置100は、データ格納部110、軌跡点列設定部120、抽出領域設定部130、近似最近傍探索処理部140、抽出処理部150、及び道路点群データ出力部160を備える。
【0031】
抽出装置100は、処理装置としてCPU(Central Processing Unit)、主記憶装置としてRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置としてHDD(Hard Disc Drive)等を備えたコンピュータとして構成され、CPUによりプログラムを実行することによりデータ格納部110、軌跡点列設定部120、抽出領域設定部130、近似最近傍探索処理部140、抽出処理部150、及び道路点群データ出力部160の機能を実現する。抽出装置100は点群データの抽出方法を実現するプログラムをインストールしたノート型のパーソナルコンピュータで実現できる。
【0032】
データ格納部110は、路面測定装置300からの全周点群データと軌跡点列データとを受け取り格納する。軌跡点列設定部120は、データ格納部110から軌跡点列データを取得して、一定時間ごとに取得された点列データを変換して所定の一定間隔(例えば30cm)ごとに軌跡点が配列された軌跡点列を生成する。この処理は、例えば測定軌跡点列データから指定した一定の距離だけ離間した点を取得することにより行うことができる。なお、点列の間隔は測定対象等により適宜変更することができる。
【0033】
抽出領域設定部130は、軌跡点列設定部120で設定した軌跡点列の軌跡点を基準として位置が定まると共に指定された幾何学形状で特定される複数の領域を設定する。本実施形態は、道路についての点群データを取得する。このため、点群データ抽出のための領域を以下のように設定している。
図3は点群データの抽出を行うための抽出領域を説明するものであり、(a)は円柱領域の平面図、(b)は円柱領域と平行六面体領域を示す平面図、
図4は点群データの抽出を行うための抽出領域を構成する円柱領域と平行六面体領域を示す斜視図である。
【0034】
抽出領域設定部130は、
図3(a)、(b)及び
図4に示すように、各軌跡点Xiから地面への垂線Vi上の予め定めた位置、即ち軌跡点から所定距離hcに設定した予め設定した半径r(例えば3m)と予め設定した高さ寸法h(例えば20cm)を備える円柱領域Ciを設定する。
【0035】
また、本実施形態では、抽出領域設定部130は、隣り合う2個の円柱領域Ci、Ci+1に着目したときにおける2個の円柱領域のそれぞれの外周面に外接する平行な2面の接平面p1及びp2、2個の円柱領域の上面に相当する上側平面p3、2個の円柱領域の底面に相当する底平面p4、2個の円柱領域のそれぞれにおいて前記2面の接平面が外周面と接する2本の母線を含み前記円柱領域の直径をなす2面の直径平面p5及びp6で囲まれた平行六面体領域Hiを設定する。この例では、円柱領域Ciの両側に平行六面体領域Hi−1、平行六面体領域Hiが配置されている。これらの設定は、抽出装置100として使用するノート型のパーソナルコンピュータのキーボードやマウスから行う。この領域の形状や寸法、位置は抽出する対象により適宜変更することができる。
【0036】
近似最近傍探索処理部140は、データ格納部110が格納している全周点群データの各点がどの軌跡点列に最も近いかを判定する処理を行う。この処理は例えば、近似最近傍探索(ANN:Approximate Nearest Neighbor)を用いることができる。なお、この処理には他の手法を用いることができる。
【0037】
抽出処理部150は、全周点群データから抽出領域設定部130で定めた領域内に配置された点群データを抽出してこの点群データを対象点群データとして出力する。道路点群データ出力部160は、抽出処理部150で抽出した対象点群データを路面評価装置200に出力する。
【0038】
次に、抽出領域設定部130と、抽出処理部150の処理について説明する。
図5は実施形態に係る点群データの抽出方法における処理を示すフローチャートである。まず、近似最近傍探索処理部140は、データ格納部110からN個の点群データ(P)を読み取り点群データ格納用のファイルに格納すると共に、軌跡点列設定部120で生成した軌跡点列データ(X)を読み取る(ステップS1)。以下の処理は、n=1;n≦N;n++の条件で繰り返し処理する(ステップS2〜ステップS8)。
【0039】
即ち、最初に点群データの点Pnに最も近い軌跡点列の軌跡点Xkを探索する(ステップS3)。これは、近似最近傍探索(ANN:Approximate Nearest Neighbor)で行う。この方法は公知であり、ソースコードも公開されている。これにより、点Pnがどの軌跡点Xkに属するかの対応を付ける。なお、点Pnと2つの軌跡点Xk、Xk+1との距離とが等しいときは、一方に属するものとするか、両方に属するものとして処理して差し支えない。
【0040】
そして、この結果から点Pnが軌跡点Xkに対応する円柱領域Ckの内側にあるかを判定し(ステップS4)、点Pnが円柱領域Ckの内側にあるとき(ステップS4のYes)、点Pnを削除せずに残す(ステップS5)。一方、点Pnが円柱領域Ckの外側になるとき(ステップS4のNo)、点PnがXk−1、Xk、Xk+1の間に対応する平行六面体領域Hk、Hk−1の内側にあるかを判定する(ステップS5)。点Pnが平行六面体領域Hk、Hk−1の内側にあるとき(ステップS5のYes)、点Pnを削除せずに点群データを格納したファイルに残す(ステップS5)。一方、点Pnが平行六面体領域Hk、Hk−1の内側にないとき(ステップS5のNo)、点Pnを破棄してファイルから削除する(ステップS7)。これらの処理により、設定した領域に存在している点群データを対象点群データとして抽出できる。
【0041】
次に抽出装置100による処理の具体例について説明する。
図6は点群データの抽出状態を示すものであり、(a)は抽出前の点群データに取得した写真を重ねて示した図、(b)は抽出された道路の点群データを写真に重ねて示した図、(c)は抽出された道路の点群データの拡大図である。
【0042】
図6(a)に示した画像500は、路面測定装置300から読み込んだデータを鳥瞰図として示している。画像500は、道路510と建物520等をあわせて示している。この画像500は、スキャナ310で取得した全周点群データに全周カメラ320で取得した写真データを重ね、軌跡点列530を重ねて鳥瞰図に変換したものである。
【0043】
この画像500で示される全周点群データを抽出装置100で処理することにより、対象点群データをとして道路510だけの点群データを得た。画像540は、抽出した点群データを
図5(a)と同様に写真データを重ねて鳥瞰図として表示したものである。これにより、対象点群データとして道路の点群データが取得できることがわかる。道路の点群データを模式的に
図5(c)に示す。この画像550では、抽出領域で抽出された点群データが道路の幅にわたって配置される。なお、点群は、スキャナ310のスキャン軌跡に沿って弧状に分布している。
【0044】
取得された対象点群データは、路面評価装置200で評価される。即ち、路面評価装置200では、抽出装置100からの対象点群データを所定の小領域に切り分け、小領域内の点群データを平面フィッティングして基準面を生成し、各点における基準面からの離間量を算出する。そして、この離間量を可視化したり数値化したりして測定した道路の評価を行う。この評価手法は公知である。
【0045】
なお、上記の実施形態では、評価対象を道路として、抽出領域を円柱領域及び平行六面体領域で特定した。しかし、抽出領域は必要に応じて変更できる。例えば抽出領域を円柱領域だけで構成することができる。また、道路の外側に位置する建築物や法面を計測するため、軌跡点列から道路の外側に向けて設定した領域とすることができる。更に、トンネルの側面や天井面等を測定対象とするときには、中心の共通とする異なる半径を有する2つ円柱に挟まれる領域を抽出領域とすることができる。
【符号の説明】
【0046】
100:抽出装置
110:データ格納部
120:軌跡点列設定部
130:抽出領域設定部
140:近似最近傍探索処理部
150:抽出処理部
160:道路点群データ出力部
200:路面評価装置
300:路面測定装置
310:スキャナ
320:全周カメラ
330:GNSS装置
340:車両
400:構造物
410:道路
420:建築物
500:画像
510:道路
520:建物
530:軌跡点列
540:画像
550:点群画像