特許第6878050号(P6878050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6878050膜ろ過装置、膜ろ過方法及び膜ろ過装置のブロー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878050
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】膜ろ過装置、膜ろ過方法及び膜ろ過装置のブロー装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   C02F1/44 A
   C02F1/44 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-42095(P2017-42095)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-143964(P2018-143964A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 周平
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/008463(WO,A1)
【文献】 特開2014−172014(JP,A)
【文献】 特開平11−207332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00−71/82
C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被処理水が供給され、前記被処理水に浸漬されたろ過膜を備えた浸漬槽を有し、前記被処理水が前記ろ過膜を透過して得られた処理水をサイホン作用を利用して、前記ろ過膜の二次側に接続された排出ラインから、処理水槽に排出する膜ろ過処理を行う膜ろ過装置において、
前記処理水槽の処理水を前記排出ラインに導入して、前記排出ラインにおける前記ろ過膜の二次側近傍から排出するブロー処理を行うブロー手段と、
前記ブロー処理とは別に、前記処理水槽の処理水を前記ろ過膜の二次側から一次側に通液させる逆洗を行う逆洗手段と、
を備え
前記ブロー手段は、前記膜ろ過処理において、前記排出ラインにおける処理水流量が閾値以下となった場合、及び前記ろ過膜の二次側の圧力が閾値以下となった場合の少なくともいずれか一方を満たす場合に、前記ブロー処理を行うことを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項2】
前記排出ラインは、一方が前記ろ過膜の二次側に接続され、前記浸漬槽の上方まで立ち上がる立ち上がり配管を有し、前記ブロー手段は、前記立ち上がり配管に接続され、前記処理水を系外に排出するブロー配管を有することを特徴とする請求項1に記載の膜ろ過装置。
【請求項3】
内部にろ過膜を有する浸漬槽に被処理水を供給し、前記被処理水に浸漬された前記ろ過膜を透過した処理水をサイホン作用を利用して、前記ろ過膜の二次側に接続された排出ラインから、処理水槽に排出する膜ろ過工程を有する膜ろ過方法において、
前記処理水槽の処理水を前記排出ラインに導入して、前記排出ラインにおける前記ろ過膜の二次側近傍から排出するブロー工程と、
前記ブロー工程とは別に、前記処理水槽の処理水を前記ろ過膜の二次側から一次側に通液させる逆洗を行う逆洗工程と、
を備え
前記膜ろ過工程において、前記排出ラインにおける処理水流量が閾値以下となった場合、及び前記ろ過膜の二次側の圧力が閾値以下となった場合の少なくともいずれか一方を満たす場合に、前記ブロー工程を行うことを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項4】
内部に被処理水が供給され、前記被処理水に浸漬されたろ過膜を備えた浸漬槽を有し、前記被処理水が前記ろ過膜を透過して得られた処理水をサイホン作用を利用して、前記ろ過膜の二次側に接続された排出ラインから、処理水槽に排出する膜ろ過処理を行う膜ろ過装置のブロー装置であって、
前記処理水槽の処理水を前記排出ラインに導入して、前記排出ラインにおける前記ろ過膜の二次側近傍から排出するブロー処理を行うブロー手段と、
前記ブロー処理とは別に、前記処理水槽の処理水を前記ろ過膜の二次側から一次側に通液させる逆洗を行う逆洗手段と、
を備え、
前記ブロー手段は、前記膜ろ過処理において、前記排出ラインにおける処理水流量が閾値以下となった場合、及び前記ろ過膜の二次側の圧力が閾値以下となった場合の少なくともいずれか一方を満たす場合に、前記ブロー処理を行うことを特徴とする膜ろ過装置のブロー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬型のろ過膜を用いた膜ろ過装置、膜ろ過方法、及び膜ろ過装置のブロー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水、下水、し尿、産業排水等を処理する水処理装置として、浸漬型の膜ろ過装置がある。浸漬型の膜ろ過装置は、浸漬槽に浸漬したろ過膜を用いて被処理水を膜ろ過するものであり、シンプルでコンパクトな装置構成で確実な固液分離を行えるという利点を有している。
【0003】
また、このような浸漬型の膜ろ過装置には、浸漬槽の水位と処理水槽の水位との水位差によるサイホン作用を利用して、ろ過膜を透過した透過水(処理水)を処理水槽に排出するサイホン式の膜ろ過装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−251346号公報
【特許文献2】特開2001−70938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サイホン式の膜ろ過装置では、ろ過膜の二次側に接続され、ろ過膜を透過した透過水を処理水槽に排出する配管に空気が混入し、それを放置しておくと、サイホン作用が失われて、膜ろ過処理が停止してしまう場合がある。この場合、ろ過膜の二次側の配管に設置される吸引ポンプを稼働させて、被処理水をろ過膜に透過させ、その透過水をろ過膜の二次側の配管から処理水槽に強制的に送ることで、配管内の空気を除く方法がある。
【0006】
この方法によれば、配管内は透過水で満水になるため、サイホン作用を利用した膜ろ過処理を再開することは可能であるが、配管内を透過水で満水にするまでには時間が掛かるため、サイホン作用を利用した膜ろ過処理を再開するまでに多くの時間を要することになる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ろ過膜の二次側の配管に空気が混入して、サイホン作用が失われることを抑制すること、又はサイホン作用が失われた場合であっても、サイホン作用を利用した膜ろ過処理を短時間で再開することが可能な膜ろ過装置、膜ろ過方法及び膜ろ過装置のブロー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態は、内部に被処理水が供給され、前記被処理水に浸漬されたろ過膜を備えた浸漬槽を有し、前記被処理水が前記ろ過膜を透過して得られた処理水をサイホン作用を利用して、前記ろ過膜の二次側に接続された排出ラインから、処理水槽に排出する膜ろ過処理を行う膜ろ過装置において、前記処理水槽の処理水を前記排出ラインに導入して、前記排出ラインにおける前記ろ過膜の二次側近傍から排出するブロー処理を行うブロー手段と、前記ブロー処理とは別に、前記処理水槽の処理水を前記ろ過膜の二次側から一次側に通液させる逆洗を行う逆洗手段と、を備え、前記ブロー手段は、前記膜ろ過処理において、前記排出ラインにおける処理水流量が閾値以下となった場合、及び前記ろ過膜の二次側の圧力が閾値以下となった場合の少なくともいずれか一方を満たす場合に、前記ブロー処理を行う、膜ろ過装置である。
【0010】
前記排出ラインは、一方が前記ろ過膜の二次側に接続され、前記浸漬槽の上方まで立ち上がる立ち上がり配管を有し、前記ブロー手段は、前記立ち上がり配管に接続され、前記処理水を系外に排出するブロー配管を有することが好ましい。
【0011】
また、本実施形態は、内部にろ過膜を有する浸漬槽に被処理水を供給し、前記被処理水に浸漬された前記ろ過膜を透過した処理水をサイホン作用を利用して、前記ろ過膜の二次側に接続された排出ラインから、処理水槽に排出する膜ろ過工程を有する膜ろ過方法において、前記処理水槽の処理水を前記排出ラインに導入して、前記排出ラインにおける前記ろ過膜の二次側近傍から排出するブロー工程と、前記ブロー工程とは別に、前記処理水槽の処理水を前記ろ過膜の二次側から一次側に通液させる逆洗を行う逆洗工程と、を備え
前記膜ろ過工程において、前記排出ラインにおける処理水流量が閾値以下となった場合、及び前記ろ過膜の二次側の圧力が閾値以下となった場合の少なくともいずれか一方を満たす場合に、前記ブロー工程を行う、膜ろ過方法である。
【0013】
また、本実施形態は、内部に被処理水が供給され、前記被処理水に浸漬されたろ過膜を備えた浸漬槽を有し、前記被処理水が前記ろ過膜を透過して得られた処理水をサイホン作用を利用して、前記ろ過膜の二次側に接続された排出ラインから、処理水槽に排出する膜ろ過処理を行う膜ろ過装置のブロー装置であって、前記処理水槽の処理水を前記排出ラインに導入して、前記排出ラインにおける前記ろ過膜の二次側近傍から排出するブロー処理を行うブロー手段と、前記ブロー処理とは別に、前記処理水槽の処理水を前記ろ過膜の二次側から一次側に通液させる逆洗を行う逆洗手段と、を備え、前記ブロー手段は、前記膜ろ過処理において、前記排出ラインにおける処理水流量が閾値以下となった場合、及び前記ろ過膜の二次側の圧力が閾値以下となった場合の少なくともいずれか一方を満たす場合に、前記ブロー処理を行う、膜ろ過装置のブロー装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ろ過膜の二次側の配管に空気が混入して、サイホン作用が失われることを抑制すること、又はサイホン作用が失われた場合であっても、サイホン作用を利用した膜ろ過処理を短時間で再開することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る膜ろ過装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る膜ろ過装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る膜ろ過装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す膜ろ過装置20は、原水槽22、ろ過膜24が浸漬された浸漬槽26、処理水槽28を備える。処理水槽28の水位が浸漬槽26の水位より低い位置となるように、浸漬槽26及び処理水槽28が設置されている。
【0019】
膜ろ過装置20は、原水流入配管30を備えている。原水槽22に原水流入配管30の一端が接続され、浸漬槽26に原水流入配管30の他端が接続されている。原水流入配管30には原水ポンプ32が設置されている。
【0020】
膜ろ過装置20は、サイホンろ過用排出ラインを備えている。サイホンろ過用排出ラインは、配管1、配管2、配管3、配管4から構成されている。配管1の一端がろ過膜24の二次側に接続され、配管1から、配管2、配管3、配管4の順で接続され、配管4の一端が処理水槽28に接続されている。配管2には、流量計34及び圧力計36が設置されている。流量計34は、処理水の流量を検知するものであり、圧力計36は、ろ過膜24の二次側の圧力を検知するものである。また、配管3にはバルブ3aが設置され、配管4にはバルブ4aが設置されている。
【0021】
膜ろ過装置20は、吸引ろ過用排出ラインを備えている。吸引ろ過用排出ラインは、配管1、配管2、配管3、配管5、配管6、配管7から構成されている。配管1の一端がろ過膜24の二次側に接続され、配管1から、配管2、配管3、配管5、配管6、配管7の順で接続され、配管7の一端が処理水槽28に接続されている。配管5にはバルブ5aが設置され、配管7にはバルブ7aが設置されている。また、配管6には吸引ろ過/ブロー用ポンプ38が設置されている。
【0022】
膜ろ過装置20は、ブローラインを備えている。ブローラインは、配管8、配管6、配管9、配管10から構成されている。配管8の一端は処理水槽28に接続され、配管8から、配管6、配管9の順で接続され、配管9の一端が配管2と配管3の接続点に接続されている。また、配管10は、配管1と配管2の接続点に接続されている。配管8にはバルブ8aが設置され、配管9にはバルブ9aが設置され、配管10にはバルブ10aが設置されている。
【0023】
サイホンろ過用排出ラインと配管10の接続位置は、配管1と配管2の接続点に制限されるものではなく、サイホンろ過用排出ラインにおけるろ過膜24の二次側近傍であればよい。また、サイホンろ過用排出ラインの上流側をろ過膜24の二次側に近づく方向とし、サイホンろ過用排出ラインの下流側をろ過膜24の二次側から離れる方向とすると、サイホンろ過用排出ラインと配管9の接続位置は、サイホンろ過用排出ラインと配管10の接続位置より、サイホンろ過用排出ラインの下流側であればよい。
【0024】
膜ろ過装置20は、逆洗ラインを備えている。逆洗ラインは、配管8、配管6、配管9、配管2、配管1により構成されている。配管8の一端は処理水槽28に接続され、配管8から、配管6、配管9、配管2、配管1の順で接続され、配管1の一端がろ過膜24の二次側に接続されている。
【0025】
膜ろ過装置20は、散気管40、コンプレッサ42、気体供給配管44を備えている。散気管40は浸漬槽26内に設置されている。散気管40とコンプレッサ42とは気体供給配管44により接続されている。
【0026】
膜ろ過装置20は、制御装置46を備えている。制御装置46は、各ポンプ及び各バルブと電気的に接続され、制御装置46によって、以下で説明する各ポンプの稼働・停止、及び各バルブの開閉等が制御される。また、制御装置46は、流量計34及び圧力計36と電気的に接続され、流量計34により検知された処理水の流量データや圧力計36により検知されたろ過膜の二次側の圧力データが入力される。
【0027】
図1に示す膜ろ過装置20の動作の一例について説明する。
【0028】
まず、原水ポンプ32を稼働させ、原水槽22内の被処理水を原水流入配管30から浸漬槽26に供給する。そして、運転初期段階においては、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38を稼働させると共に、配管3のバルブ3a、配管5のバルブ5a、配管7のバルブ7aを開放することによって、浸漬槽26内の被処理水はろ過膜24によりろ過され、ろ過膜24を透過した処理水は、吸引ろ過用排出ラインを通り(配管1→配管2→配管3→配管5→配管6→配管7を通り)、処理水槽28に強制排出される(吸引式の膜ろ過工程)。
【0029】
例えば、所定時間後、又は流量計34により処理水流量が規定値に達した後、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38を停止すると共に、配管5のバルブ5a、配管7のバルブ7aを閉じ、配管4のバルブ4aを開放する。処理水槽28内の処理水の水位は、浸漬槽26の被処理水の水位よりも低く設定されているので、浸漬槽26内の被処理水はろ過膜24によりろ過され、ろ過膜24を透過した処理水は、サイホンの作用によって、サイホンろ過用排出ラインを通り(配管1→配管2→配管3→配管4を通り)、処理水槽28に自然排出される(サイホン式の膜ろ過工程)。サイホン式の膜ろ過工程では、動力源を使わないので、ランニングコストを抑えることができる。
【0030】
次に、サイホンろ過用排出ライン内に空気が混入した場合等におけるブロー工程について説明する。ブロー工程では、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38を稼働させると共に、配管3のバルブ3a、配管4のバルブ4aを閉じ、配管9のバルブ9a及び配管10のバルブ10aを開放することによって、処理水槽28内の処理水を、ブローラインの配管8、配管6、配管9を通して、サイホンろ過用排出ラインの配管2に導入し、配管2を経由して、ろ過膜24の二次側近傍に位置する配管10から排出させる。このように、処理水をサイホンろ過用排出ラインから導入して、当該ラインにおけるろ過膜24の二次側近傍から排出するブロー工程を行うことで、サイホンろ過用排出ライン内に混入した空気は、処理水の流れに同伴されて移動し系外へ排出される。
【0031】
ブロー工程は、所定時間毎に実施してもよいし、以下に説明するように、処理水流量及びろ過膜24の二次側の圧力のうちいずれか一方が閾値以下となった場合に実施してもよい。
【0032】
サイホンろ過用排出ライン内への空気の混入が進行していくと、サイホン作用が失われていくため、サイホンろ過用排出ラインを流れる処理水の流量が低下し、また、ろ過膜24の二次側の圧力も低下していく。ここで、ろ過膜24の二次側の圧力とは、大気圧と吸引圧力との差の絶対値である。そこで、処理水流量及びろ過膜24の二次側の圧力に対してそれぞれ閾値を設定し、流量計34によって計測された値が設定した閾値以下となった場合、圧力計36によって計測された値が設定した閾値以下となった場合のうちいずれか一方を満たす場合に、制御装置46は、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38の稼働、各バルブの開閉等を制御し、前述のブロー工程を行う。
【0033】
このようなブロー工程によって、サイホンろ過用排出ライン内の空気は除去され、処理水で満たされるため、ブロー工程を行わずにサイホン式の膜ろ過工程を継続した場合と比較して、空気混入によるサイホン作用の消失が抑制される。また、サイホン式の膜ろ過工程において、空気混入によるサイホン作用が失われた場合であっても、本実施形態のブロー工程によれば、サイホンろ過用排出ライン内の空気を速やかに除去することができるため、サイホン式の膜ろ過工程を短時間で再開することができる。なお、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38を稼働させて、ろ過膜24を透過した処理水をサイホンろ過用排出ライン側に強制的に送ることでも、当該ライン内の空気を除去することは可能であるが、本実施形態のブロー工程と比較すれば、空気除去に時間が掛かり、また吸引ろ過/ブロー用ポンプ38の出力も増大させなければならないため、サイホン式の膜ろ過工程を再開するまでに時間が掛かり、さらにランニングコストも増大する。さらに、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38を稼働させて、ろ過膜24を透過した処理水をサイホンろ過用排出ライン側に強制的に送ると、サイホンろ過用排出ライン内に混入した空気がポンプ内に溜まり、ポンプ自体の性能を低下させる虞があるが、本実施形態のブロー工程によれば、ポンプ内の空気溜まりも抑制される。
【0034】
ブロー工程後は、サイホン式の膜ろ過工程を再開してもよいし、吸引式の膜ろ過工程後にサイホン式の膜ろ過工程を再開してもよい。或いは、ブロー工程後に、以下に説明する逆洗工程を実施し、サイホン式や吸引式の膜ろ過工程を行ってもよい。
【0035】
逆洗工程では、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38を稼働させると共に、配管8のバルブ8a、配管9のバルブ9aを開放し(その他の配管のバルブが閉じた状態)、処理水槽28内の処理水を、配管8、配管6、配管9、配管2、配管1を経由して、ろ過膜24の二次側から一次側に通液させる。この逆洗工程により、ろ過膜24に堆積した堆積物を剥離することができる。なお、逆洗工程の際には、コンプレッサ42を稼働させ、空気等の気体を気体供給配管44、散気管40を通して、浸漬槽26に供給し、ろ過膜24を振動させるエアスクラビングを行っても良い。また、逆洗工程では、次亜塩素酸等の洗浄液をろ過膜24の二次側から一次側に通液させてもよい。
【0036】
洗浄工程は、所定時間毎に行ってもよいし、以下に説明するように、処理水流量が閾値以下で、ろ過膜24の二次側の圧力が閾値超である場合に実施してもよい。処理水流量の閾値、ろ過膜24の二次側の圧力の閾値は、前述のブロー工程で設定した閾値とすることが望ましい。
【0037】
膜ろ過処理において、ろ過膜24に堆積物が堆積して、ろ過膜24が閉塞していくと、サイホンろ過用排出ラインを流れる処理水の流量が低下する一方で、ろ過膜24の二次側の圧力はほとんど変化しない。そこで、流量計34によって計測された値が設定した閾値以下となった場合であって、圧力計36によって計測された値が設定した閾値超である場合に、制御装置46は、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38の稼働、各バルブの開閉等を制御し、前述の逆洗工程を行う。
【0038】
また、ブロー工程及び洗浄工程を、処理水流量及びろ過膜24の二次側の圧力で管理する場合、処理水流量が閾値以下であって、ろ過膜24の二次側の圧力が閾値以下の場合に、前述のブロー工程を行い、処理水流量が閾値以下であって、ろ過膜24の二次側の圧力が閾値超である場合に、前述の逆洗工程を行うことが好ましい。このような制御により、サイホンろ過用排出ラインに空気が混入した場合、ろ過膜24が閉塞した場合それぞれに対して、適切な処理が可能となる。なお、逆洗工程は必須ではないので、例えば、逆洗工程に代えて警報を鳴らして、ろ過膜の交換を促してもよい。
【0039】
図2は、本実施形態に係る膜ろ過装置の他の一例を示す概略構成図である。図2に示す膜ろ過装置21において、図1に示す膜ろ過装置20と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図2において制御装置46は省略するが、図2に示す膜ろ過装置21においても同様に制御装置46を備えている。
【0040】
図2に示す膜ろ過装置21は、混合槽48を備える。混合槽48は、隔壁により原水導入部50と本体部52に区画され、また、本体部52は、隔壁により本体部52a、本体部52bに区画されている。但し、原水導入部50は上部が開放されている。また、本体部52を区画する隔壁の下部には開口部が設けられ、本体部52aと本体部52bは開口部を通して連通している。また、本体部52a、本体部52bには撹拌機54が設置されている。
【0041】
図2に示す膜ろ過装置21において、混合槽48と浸漬槽26とは隣接しており、混合槽48から浸漬槽26への被処理水の供給は越流式となっている。また、浸漬槽26は、隔壁により原水導入部56と本体部58に区画されている。但し、隔壁の下部には開口部が設けられ、原水導入部56と本体部58とは開口部を通して連通している。また、浸漬槽26の底部側面には、汚泥排出管60が接続されている。汚泥排出管60にはバルブ60aが設置されている。汚泥排出管60は浸漬槽26内の汚泥を排出するための配管である。
【0042】
図2に示す膜ろ過装置21において、配管10の一端は、配管1と配管2の接続点に接続され、他端は浸漬槽26に接続されている。
【0043】
図2に示す膜ろ過装置21の動作の一例について説明する。
【0044】
まず、原水ポンプ32を稼働させ、原水槽22内の被処理水を原水流入配管30から混合槽48に供給する。被処理水は、混合槽48の原水導入部50を通り、上部から本体部52に導入される。本体部52a、52b内では、撹拌機54により被処理水が混合される。図での説明は省略するが、混合槽48の本体部52に凝集剤を添加し、凝集処理を行ってもよい。凝集処理を行うことで、原水中の有機物がフロックに取り込まれ、膜の目詰まりを抑制する効果がある点で、混合槽48を設置することが望ましい。
【0045】
本体部52b内の被処理水は浸漬槽26側へ越流して、浸漬槽26の原水導入部56から本体部58に導入される。そして、運転初期段階においては、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38を稼働させると共に、配管3のバルブ3a、配管5のバルブ5a、配管7のバルブ7aを開放することによって、浸漬槽26内の被処理水はろ過膜24によりろ過され、ろ過膜24を透過した処理水は、吸引ろ過用排出ラインを通り(配管1→配管2→配管3→配管5→配管6→配管7を通り)、処理水槽28に強制排出される(吸引式の膜ろ過工程)。
【0046】
次に、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38を停止すると共に、配管5のバルブ5a、配管7のバルブ7aを閉じ、配管4のバルブ4aを開放することによって、浸漬槽26内の被処理水はろ過膜24によりろ過され、ろ過膜24を透過した処理水は、サイホンの作用によって、サイホンろ過用排出ラインを通り(配管1→配管2→配管3→配管4を通り)、処理水槽28に自然排出される(サイホン式の膜ろ過工程)。
【0047】
ブロー工程を行う場合には、吸引ろ過/ブロー用ポンプ38を稼働させると共に、配管3のバルブ3a、配管4のバルブ4aを閉じ、配管9のバルブ9a及び配管10のバルブ10aを開放することによって、処理水槽28内の処理水を、ブローラインの配管8、配管6、配管9を通して、サイホンろ過用排出ラインの配管2に導入し、配管2、配管10を経由して、浸漬槽26に排出させる。サイホンろ過用排出ライン内に混入した空気は、処理水の流れに同伴されて移動し、配管10から浸漬槽26へ排出される。なお、逆洗工程を行う場合は前述した通りであるので、説明を省略する。
【0048】
本実施形態において処理する被処理水は、如何なる由来の水でもよく、例えば、浄水、下水、し尿、産業排水等が挙げられる。
【0049】
本実施形態で使用するろ過膜24の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、中空糸、管状膜、平膜、スパイラル等が挙げられる。ろ過膜24は、例えば、限外ろ過膜(UF膜)、精密ろ過膜(MF膜)、逆浸透膜(RO膜)等が挙げられる。ろ過膜24の材質は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、セルロースアセテート(CA)等の有機膜、セラミック製の無機膜等が挙げられる。
【0050】
処理水槽28内の処理水の水位は、サイホン作用を利用する点で、浸漬槽26の被処理水の水位よりも低く設定されていれば特に制限されるものではないが、例えば、浸漬槽26の水位と処理水槽28の水位との差が1m〜5mの範囲であることが好ましい。浸漬槽26の水位と処理水槽28の水位との差が1m未満であると、ろ過膜24を透過した処理水の流速が低下し、一定量の処理水を得るのに時間が掛かる場合がある。また、浸漬槽26の水位と処理水槽28の水位との差が5m超であると、負圧による配管や計器破損対策が必要となる場合がある。
【0051】
浸漬槽26内のろ過膜24は、その上端が浸漬槽26の水位より低い位置となるように設置されることが望ましく、例えば、ろ過膜24の上端から浸漬槽26の水位までの距離は10cm以上であることが好ましい。ろ過膜24の上端から浸漬槽26の水位までの距離が10cm未満であると、汚泥引抜時等に膜の上端が水位よりも高くなり、膜面積を有効に使えない場合がある。また、浸漬槽26内のろ過膜24は、その下端が浸漬槽26の底部から離れるように設置されることが望ましく、例えば、ろ過膜24の下端から浸漬槽26の底部までの距離が50cm以上であることが好ましい。ろ過膜24の下端から浸漬槽26の底部までの距離が50cm未満であると、洗浄時に巻き上がった汚泥が膜面に付着して、閉塞の原因となる場合がある。
【0052】
サイホンろ過用排出ラインと配管10の接続位置は、ろ過膜24の二次側近傍であればよいが、サイホンろ過用排出ラインに混入した空気は、当該ラインの上部に溜まり易いため、当該ラインの最上部より、サイホンろ過用排出ラインの上流側(ろ過膜24の二次側に近づく方向)であることが望ましい。具体的には、一方がろ過膜24の二次側に接続され、浸漬槽26の上方まで立ち上がる配管1に配管10が接続されることが望ましい。サイホンろ過用排出ラインと配管9の接続位置は、サイホンろ過用排出ラインと配管10の接続位置より、サイホンろ過用排出ラインの下流側(ろ過膜24の二次側から離れる方向)であればよいが、サイホンろ過用排出ラインに混入した空気は、当該ラインの上部に溜まり易いため、当該ラインの最上部より、サイホンろ過用排出ラインの下流側(ろ過膜24の二次側から離れる方向)とすることが望ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
<実施例>
図1に示す排水処理装置によるサイホン式の膜ろ過工程中に、配管10から意図的に空気を送り込み、サイホン作用を消失させた。直ちに、ブロー工程を20秒間行った後、サイホン式の膜ろ過工程を再開した結果、再開から約10秒間で、ろ過膜の二次側から排出される処理水の流量が設定流量に達した。表1に、ブロー工程及びサイホン式の膜ろ過工程の経過時間における吸引ポンプの出力及びろ過流量の結果をまとめた。
ろ過流量(%)=(ろ過膜の二次側から排出される処理水流量/設定流量)×100
【0055】
<比較例>
図1に示す排水処理装置によるサイホン式の膜ろ過工程中に、配管10から意図的に空気を送り込み、サイホン作用を消失させた。直ちに、吸引ポンプを稼働させ、吸引式の膜ろ過工程を行った結果、ろ過膜の二次側から排出される処理水の流量が設定流量に達したのは、吸引式の膜ろ過工程開始から80秒後であった。その後、サイホン式の膜ろ過工程に移行した。表1に、吸引式の膜ろ過工程及びサイホン式の膜ろ過工程の経過時間における吸引ポンプの出力及びろ過流量の結果をまとめた。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から分かるように、ブロー工程により配管中の空気を除去した実施例の方が、吸引式の膜ろ過工程により配管中の空気を除去した比較例より、サイホン作用消失後から短時間でサイホン式の膜ろ過工程を再開することができた。また、実施例の方が、吸引ポンプの出力は小さく、稼働時間も短くて済むので、動力コストを抑えることも期待される。
【符号の説明】
【0058】
1〜10 配管、3a,4a,5a,7a,8a,9a,10a,60a バルブ、20,21 膜ろ過装置、22 原水槽、24 ろ過膜、26 浸漬槽、28 処理水槽、30 原水流入配管、32 原水ポンプ、34 流量計、36 圧力計、38 吸引ろ過/ブロー用ポンプ、40 散気管、42 コンプレッサ、44 気体供給配管、46 制御装置、48 混合槽、50,56 原水導入部、52,52a,52b,58 本体部、54 撹拌機、60 汚泥排出管。
図1
図2