特許第6878053号(P6878053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878053
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】光受信モジュール及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/02 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   H01L31/02 B
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-48567(P2017-48567)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-152493(P2018-152493A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】小松 和弘
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−192510(JP,A)
【文献】 特開2004−273936(JP,A)
【文献】 特開2015−056704(JP,A)
【文献】 特開2012−142822(JP,A)
【文献】 特開2008−053423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/024、31/08−31/119
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアスが印加される第1電極及び第2電極をそれぞれが有し、入力された光信号を電気信号に変換して前記第1電極から前記電気信号を出力する複数の受光素子と、
前記複数の受光素子のそれぞれと電気的に接続する配線パターンを有し、前記第1電極及び前記第2電極が前記配線パターンに対向するように、前記複数の受光素子を支持するキャリアと、
を有し、
前記配線パターンは、前記第1電極に電気的に接続する第1配線ラインと、前記第2電極に電気的に接続する第2配線ラインと、を含み、
前記第2配線ラインは、少なくとも接続される前記受光素子と重なる位置に他の部分よりも抵抗値の高い高抵抗部を有し、少なくとも前記複数の受光素子のいずれにも重ならない位置に前記高抵抗部よりも抵抗値の低い低抵抗部を有し、
前記高抵抗部は、前記低抵抗部よりも、電気抵抗率の大きい材料から形成され、
前記高抵抗部及び前記低抵抗部は、直列に接続されていることを特徴とする光受信モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載された光受信モジュールであって、
前記第2配線ラインは、前記低抵抗部を、接続される前記受光素子と重なる前記位置にも有することを特徴とする光受信モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光受信モジュールであって、
前記第2配線ラインは、一対の第2配線ラインを含み、
前記一対の第2配線ラインのそれぞれが前記高抵抗部を有し、
前記第1配線ラインは、前記一対の第2配線ラインの間に配置されることを特徴とする光受信モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載された光受信モジュールであって、
前記一対の第2配線ラインのそれぞれの前記高抵抗部の抵抗値は略一致していることを特徴とする光受信モジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、
前記複数の受光素子のそれぞれに接続される前記第2配線ラインは、隣の前記受光素子に接続される前記第2配線ラインに隣り合うことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された光受信モジュールであって、
前記複数の受光素子のそれぞれに接続される前記第2配線ラインは、隣の前記受光素子に接続される前記第1配線ラインに隣り合うことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、
前記複数の受光素子は、1つのチップに一体的に集積されていることを特徴とする光受信モジュール。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、
前記複数の受光素子は、個別に分離された複数のチップであることを特徴とする光受信モジュール。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、
前記キャリアは、前記複数の受光素子を一体的に支持する1つのキャリアであることを特徴とする光受信モジュール。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、
前記複数の受光素子のそれぞれに前記バイアスを印加するための電圧を印加し、前記複数の受光素子のそれぞれから前記電気信号を入力して増幅するための増幅器をさらに有することを特徴とする光受信モジュール。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載された光受信モジュールを内蔵する光受信サブアセンブリと、
入力された電気信号から変換された光信号を出力する光送信サブアセンブリと、
を有することを特徴とする光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信モジュール及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光受信モジュールの小型・高機能化に伴い、一つのパッケージ内に複数の受光素子を収めた形態の光受信モジュールが使われ始めている(特許文献1)。光受信モジュールの小型化に伴い、複数の受光素子は隣接して配置され始めた。例えば複数の受光素子が同一基板上に集積された受光素子アレイが用いられている。複数の受光素子はサブマウントにジャンクションダウンで搭載されている。サブマウントには各受光素子に対応したアノード配線(シグナル配線)とカソード配線(バイアス配線)が設けられている。アノード配線およびカソード配線はアンプを備えた集積回路などに接続されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−96878号公報
【特許文献2】特開2014−192510号公報
【特許文献3】特開2000−82806号公報
【特許文献4】特開2003−14994号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. Shishikura et al., “10-Gbit/s per channel parallel optical transmitter and receiver module for high-capacity interconnects,” Proc. The 53th Electronic Components and Technology Conference, pp.1040-1045 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、さらなる小型化が進み、隣接する受光素子間又は配線間の電気的なクロストークが課題となってきた(特許文献3及び4並びに非特許文献1)。クロストークにより高周波特性が低下する。特に受光素子は空気と比較して誘電率が高い材料(InP、GaAs、SiGeなどの半導体材料)から構成されているので、容量成分の要因となる。本来、互いに電気的に独立していることが好ましい受光素子が近接することで、隣接する配線は、受光素子を介して電気結合を引き起こし、特性の劣化を招く。
【0006】
本発明は、クロストークノイズを効果的に吸収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る光受信モジュールは、バイアスが印加される第1電極及び第2電極をそれぞれが有し、入力された光信号を電気信号に変換して前記第1電極から前記電気信号を出力する複数の受光素子と、前記複数の受光素子のそれぞれと電気的に接続する配線パターンを有し、前記第1電極及び前記第2電極が前記配線パターンに対向するように、前記複数の受光素子を支持するキャリアと、を有し、前記配線パターンは、前記第1電極に電気的に接続する第1配線ラインと、前記第2電極に電気的に接続する第2配線ラインと、を含み、前記第2配線ラインは、少なくとも接続される前記受光素子と重なる位置に他の部分よりも抵抗値の高い高抵抗部を有し、少なくとも前記複数の受光素子のいずれにも重ならない位置に前記高抵抗部よりも抵抗値の低い低抵抗部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第2配線ラインの高抵抗部を、少なくとも接続される受光素子と重なる位置、すなわち、受光素子に近い位置に配置するので、クロストークノイズを効果的に吸収することができる。
【0009】
(2)(1)に記載された光受信モジュールであって、前記第2配線ラインは、前記低抵抗部を、接続される前記受光素子と重なる前記位置にも有することを特徴としてもよい。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載された光受信モジュールであって、前記第2配線ラインは、一対の第2配線ラインを含み、前記一対の第2配線ラインのそれぞれが前記高抵抗部を有し、前記第1配線ラインは、前記一対の第2配線ラインの間に配置されることを特徴としてもよい。
【0011】
(4)(3)に記載された光受信モジュールであって、前記一対の第2配線ラインのそれぞれの前記高抵抗部の抵抗値は略一致していることを特徴としてもよい。
【0012】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、前記複数の受光素子のそれぞれに接続される前記第2配線ラインは、隣の前記受光素子に接続される前記第2配線ラインに隣り合うことを特徴としてもよい。
【0013】
(6)(1)又は(2)に記載された光受信モジュールであって、前記複数の受光素子のそれぞれに接続される前記第2配線ラインは、隣の前記受光素子に接続される前記第1配線ラインに隣り合うことを特徴としてもよい。
【0014】
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、前記複数の受光素子は、1つのチップに一体的に集積されていることを特徴としてもよい。
【0015】
(8)(1)から(6)のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、前記複数の受光素子は、個別に分離された複数のチップであることを特徴としてもよい。
【0016】
(9)(1)から(8)のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、前記キャリアは、前記複数の受光素子を一体的に支持する1つのキャリアであることを特徴としてもよい。
【0017】
(10)(1)から(9)のいずれか1項に記載された光受信モジュールであって、前記複数の受光素子のそれぞれに前記バイアスを印加するための電圧を印加し、前記複数の受光素子のそれぞれから前記電気信号を入力して増幅するための増幅器をさらに有することを特徴としてもよい。
【0018】
(11)本発明に係る光モジュールは、(1)から(10)のいずれか1項に記載された光受信モジュールを内蔵する光受信サブアセンブリと、入力された電気信号から変換された光信号を出力する光送信サブアセンブリと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用した第1の実施形態に係る光モジュールの分解斜視図である。
図2】本発明を適用した第1の実施形態に係る光受信モジュールの一部分解斜視図である。
図3】複数の受光素子を有するチップの底面を示す図である。
図4図2に示す光受信モジュールの等価回路を示す図である。
図5】本発明を適用した第2の実施形態に係る光受信モジュールの一部分解斜視図である。
図6図5に示す光受信モジュールの等価回路を示す図である。
図7】本発明を適用した第3の実施形態に係る光受信モジュールの一部分解斜視図である。
図8】本発明を適用した第4の実施形態に係る光受信モジュールの一部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る光モジュールの分解斜視図である。光モジュール100は、電気信号を光信号に変換するための光送信サブアセンブリ110(TOSA: Transmitter Optical Sub-Assembly)と、光信号を電気信号に変換するための光受信サブアセンブリ120(ROSA: Receiver Optical Sub-Assembly)と、を有する。送信側では図示しないホスト基板より送られる電気信号を、電気的インターフェース102を通して光モジュール100内の回路に通して光信号に変換し、これを光学的インターフェース104から送信する。受信側では光信号を受信し、電気信号を図示しないホスト側基板へと出力する。光モジュール100は、一対のハーフケースからなるケース106,108を有し、その内部に電子部品が収納される。
【0022】
図2は、本発明を適用した第1の実施形態に係る光受信モジュールの一部分解斜視図である。図2に示す光受信モジュール10は、図1に示す光受信サブアセンブリ120の内部に配置される。光受信モジュール10は、複数の受光素子12が一体的に集積されたチップ14(PD(Photodiode)アレイ等)を含む。
【0023】
図3は、複数の受光素子12を有するチップ14の底面を示す図である。光受信モジュール10は、受光素子12(例えばフォトダイオード)を有する。光信号LS(図2参照)は、光受信サブアセンブリ120に入光し、図示しないレンズによって集光されて、受光素子12に入射する。受光素子12は、受光部(吸収層)12aが形成された面とは反対側から光信号LSが入射する裏面入射型受光素子である。
【0024】
受光素子12は、図3の例では底面に、バイアスが印加される第1電極16及び第2電極18を有する。受光素子12は、受光部12aから入力された光信号LSを電気信号に変換して、第1電極16から電気信号ES(図4参照)を出力する。受光素子12はPN接合を有するInPベースの半導体素子であり、p型半導体に接続する側をアノード、n型半導体に接続する側をカソードと呼称してもよい。つまり、第1電極16及び第2電極18を、それぞれ、アノード及びカソードということもできる。別の言い方として、p型半導体側をシグナル電極、n型半導体側をバイアス電極と呼称することもある。なお、アノード及びカソードという呼称は、便宜上のものであり逆に呼び合うこともある。つまり、ここでのアノード及びカソードという呼称は、受光素子12は異なる極性(異なる電位差)の二つの電極(第1電極16及び第2電極18)を有していることを示している。
【0025】
図2に示すように、光受信モジュール10は、キャリア20を有する。キャリア20は、複数の受光素子12(チップ14)を一体的に支持する1つのキャリアである。キャリア20は、それぞれの受光素子12に対応する配線パターン22を有する。配線パターン22は、受光素子12と電気的に接続する。電気的接続のため、チップ14のボンディングプロセスでは半田ボール24を使用する。なお、配線パターン22と受光素子12が電気的な接続が取れれば半田ボールに限定されず、適宜選択すればよい。キャリア20は、第1電極16及び第2電極18が配線パターン22に対向するように、複数の受光素子12(チップ14)を支持する。
【0026】
配線パターン22は、第1電極16に電気的に接続する第1配線ライン26を含む。配線パターン22は、第2電極18に電気的に接続する第2配線ライン28を含む。第2配線ライン28は、一対の第2配線ライン28aを含む。第1配線ライン26は、一対の第2配線ライン28aの間に配置される。複数の受光素子12のそれぞれに接続される第2配線ライン28は、隣の受光素子12に接続される第2配線ライン28に隣り合う。つまり、隣同士の配線パターン22は、それぞれの第2配線ライン28が隣り合う。
【0027】
第2配線ライン28は、少なくともそれが接続される受光素子12と重なる位置に、他の部分よりも抵抗値の高い高抵抗部30を有する。高抵抗部30は、NiとCrの化合物、TaとNの化合物、Ti、Mo等の電気抵抗が大きい材料から形成する。一対の第2配線ライン28aのそれぞれが高抵抗部30を有する。なお、二つの高抵抗部30はほぼ同一の抵抗値であることが好ましい。また、第2配線ライン28は、少なくとも複数の受光素子12のいずれにも重ならない位置に、高抵抗部30よりも抵抗値の低い低抵抗部32を有する。低抵抗部32は、電気抵抗の小さい金属(たとえばAu、アルミ、白金、銀など)で形成してもよい。第2配線ライン28は、低抵抗部32を、接続される受光素子12と重なる位置にも有する。
【0028】
なお、高抵抗部30を高抵抗層で形成し、低抵抗部32を低抵抗層及び高抵抗層の積層構造にしてもよい。例えば、電気抵抗が大きい材料からなる膜を、低抵抗部32及び高抵抗部30に連続的に残るようにパターニングし、低抵抗部32には、電気抵抗が小さい金属をメッキしてもよい。
【0029】
光受信モジュール10は、例えば、プリアンプ、リミッティングアンプ、オートゲインコントローラ又はトランスインピーダンスアンプなどの増幅器34を有する。増幅器34には、外部にある電源36(図4参照)から電力が供給される。例えば、外部電源線路(図示せず)からワイヤにより平板キャパシタ44を通り、電源パッド46を通って、増幅器34の増幅回路38(図4参照)へ電力が供給される。受光素子12には、増幅器34から、バイアスを印加するための電圧が供給される。例えば、図示しない外部電源線路からワイヤにより平板キャパシタ48を通り、増幅器34の電源パッド50に電圧が印加される。この電圧も、外部にある電源36(図4参照)から供給される。なお、受光素子12と増幅器34が別個の電源に接続されてもよい。
【0030】
増幅器34は、オペアンプなどの増幅回路38(図4参照)を有し、受光素子12から出力された電気信号ESを増幅する。増幅器34は、受光素子12に供給するためのバイアスの電圧が現れる増幅器側バイアスパッド40及び増幅器側シグナルパッド42を有する。増幅器側シグナルパッド42は、増幅器34に電気信号ES(図4参照)を入力するためのパッドでもある。増幅器側バイアスパッド40及び増幅器側シグナルパッド42は、増幅器34に直接設けられている。
【0031】
第1配線ライン26と増幅器側シグナルパッド42は、ワイヤによって接続されている。増幅器34は、増幅器側シグナルパッド42から入力された電気信号ESを増幅し、出力パッド52へ出力する。差動出力のため、一対の出力パッド52がある。差動出力された電気信号ESは、配線基板54上のシグナルパターン56を通って外部へと出力される。配線基板54上には、スルーホール58を有するGNDパターン60があり、ワイヤで増幅器34のGNDパッド62に接続されている。
【0032】
図4は、図2に示す光受信モジュールの等価回路を示す図である。図4において、受光素子12及び増幅器34以外の構成は簡略化してある。受光素子12は、受光した光に比例した電流を押し出す電流源64と、内部容量66及び図示しない内部抵抗を伴った素子と考えることができる。
【0033】
本実施形態では、n型半導体に接する側の第2電極18に正の電圧を印加する(逆バイアス状態)。尚、多くの半導体の受光素子12は本実施形態と同方向のバイアス電圧が印加されて使われるが、電圧の正負の向きは、特に限定されず、使用する受光素子12によって適宜選択される。
【0034】
電流源64への電源供給は、外部にある電源36から、ワイヤを介して第2配線ライン28から成される。増幅器34内のバイアス線路にはフィルタ等がつけられることが多く、その引き回し方法等は、増幅器34のメーカー各社によって異なる。
【0035】
受光素子12に光信号LSが入力されると、受光した光に比例した電気信号ESが発生する。電気信号ESは、ワイヤを介して増幅器側シグナルパッド42(図2参照)を通って増幅器34内の増幅回路38に入力される。
【0036】
第2配線ライン28には、バイアス電流BCが流れており、隣同士の受光素子12にそれぞれ接続されて隣り合う第2配線ライン28には、相互インダクタンスや浮遊容量によってクロストークを生じる。特に、電気信号ESの変調周波数が高い場合、このクロストークは顕著になる。そして隣接する受光素子12は半導体で形成されているために、空気と比較して誘電率が高く、隣接する第2配線ライン28間で半導体領域を介して電気的な結合が発生しやすい。特に本実施形態のように複数の受光素子12が近接して並んでいる場合にこの電気的な結合は強くなる。つまり、電気信号ESの周波数と強度に応じて、第2配線ライン28にも微弱なクロストークノイズNが発生することになる。このクロストークノイズNは、隣接する受光素子12(チップ14)を介して隣接する第2配線ライン28にも流れ込み、第2電極18を通り、電流源64を通り、増幅回路38に入力される。したがって、増幅回路38から出力パッド52を通って出力される電気信号ESはノイズ成分が含まれる信号となってしまう。なお、ここではクロストークノイズと呼称したが、電気信号ESの高周波成分によりバイアス電流BCそのものが揺らぐこともあり、この揺らぎの成分もノイズ源となりうる。このノイズも上述したメカニズムで隣接する受光素子12に流れ込み、悪影響を与える。これ以外にもなんらかの原因で隣接す受光素子12間でクロストークが発生することがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、第2配線ライン28の高抵抗部30を、少なくとも接続される受光素子12と重なる位置(図2参照)、すなわち、受光素子12に近い位置に配置した。これにより、クロストークノイズNを効果的に吸収している。より詳しく説明すると、前述したように隣接した第2配線ライン28の間は受光素子12(チップ14)を介して電気的な結合が発生しうる。つまりクロストークは第2配線ライン28のうち、受光素子12が無い領域より受光素子12がある領域のほうが強く発生する。クロストークにより発生したノイズNが電気信号ESに乗る前に発生したノイズNを減少させることで、電気信号ESの品質を保つことができる。そのため、クロストークノイズNを減少させる(吸収させる)ための高抵抗部30はクロストーク発生領域の傍、つまり受光素子12に近いところにあることが好ましい。従って高抵抗部30は受光素子12と重なる位置にあることで強い効果が得られる。また高抵抗部30の領域が大きすぎると本来のバイアスそのものも減少させてしまうために適切な大きさが良く、受光素子12と重なる程度の大きさが好ましい。なお、高抵抗部30すべてが受光素子12と重なる位置にあっても良いが、その一部が重ならない位置あっても効果は得られる。
【0038】
[第2の実施形態]
図5は、本発明を適用した第2の実施形態に係る光受信モジュールの一部分解斜視図である。この例では、それぞれの受光素子212に対応する配線パターン222は、1つの第2配線ライン228を含む。また、複数の受光素子212のそれぞれに接続される第2配線ライン228は、隣の受光素子212に接続される第1配線ライン226に隣り合う。そのため、第1配線ライン226と第2配線ライン228は、相互インダクタンスや浮遊容量によってクロストークを生じる。その他の内容は、第1の実施形態で説明した内容が該当する。
【0039】
図6は、図5に示す光受信モジュールの等価回路を示す図である。この例では、第1配線ライン226で伝送される電気信号ESによって、隣の受光素子212に接続される第2配線ライン228にクロストークノイズNが乗る。クロストークノイズNは、第2電極218を通り、電流源264を通り、増幅回路238に入力される。したがって、隣接する増幅回路238から出力される電気信号ESはノイズ成分を含む信号となってしまう。そこで、本実施形態でも、第2配線ライン228の高抵抗部230を、少なくとも接続される受光素子212と重なる位置、すなわち、受光素子212に近い位置に配置した。これにより、クロストークノイズNを効果的に吸収することができる。
【0040】
[第3の実施形態]
図7は、本発明を適用した第3の実施形態に係る光受信モジュールの一部分解斜視図である。本実施形態では、複数の受光素子312は、個別に分離された複数のチップである。
【0041】
基板368の上面に増幅器334が搭載され、基板368の側端面にキャリア320が縦に取り付けられ、キャリア320に複数の受光素子312が搭載されている。その他の内容は、第1の実施形態で説明した内容が該当する。本実施形態のように、複数の受光素子が同一の半導体基板に集積されていない状態であっても、隣接する受光素子間でクロストークノイズNが発生する場合もあり、近年の小型・高密度実装がされている光受信モジュールにおいて効果が得られる。
【0042】
[第4の実施形態]
図8は、本発明を適用した第4の実施形態に係る光受信モジュールの一部分解斜視図である。この例では、図2に示すキャリア20と配線基板54が一体化した構造のキャリア420を使用する。キャリア420には、複数の受光素子を内蔵するチップ414、増幅器434及び平板キャパシタ444,448が搭載される。その他の内容は、第1の実施形態で説明した内容が該当する。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 光受信モジュール、12 受光素子、12a 受光部、14 チップ、16 第1電極、18 第2電極、20 キャリア、22 配線パターン、24 半田ボール、26 第1配線ライン、28 第2配線ライン、28a 第2配線ライン、30 高抵抗部、32 低抵抗部、34 増幅器、36 電源、38 増幅回路、40 増幅器側バイアスパッド、42 増幅器側シグナルパッド、44 平板キャパシタ、46 電源パッド、48 平板キャパシタ、50 電源パッド、52 出力パッド、54 配線基板、56 シグナルパターン、58 スルーホール、60 GNDパターン、62 GNDパッド、64 電流源、66 内部容量、100 光モジュール、102 電気的インターフェース、104 光学的インターフェース、106 ケース、110 光送信サブアセンブリ、120 光受信サブアセンブリ、212 受光素子、218 第2電極、222 配線パターン、226 第1配線ライン、228 第2配線ライン、230 高抵抗部、238 増幅回路、264 電流源、312 複数の受光素子、320 キャリア、334 増幅器、368 基板、414 チップ、420 キャリア、434 増幅器、444 平板キャパシタ、BC バイアス電流、ES 電気信号、LS 光信号、N クロストークノイズ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8