特許第6878055号(P6878055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878055
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】光回路及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20210517BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   G02B6/122
   G02B6/42
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-48936(P2017-48936)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-151572(P2018-151572A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】菅原 一也
(72)【発明者】
【氏名】奥野 将之
(72)【発明者】
【氏名】陣内 啓光
(72)【発明者】
【氏名】中山 俊
【審査官】 井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−153431(JP,A)
【文献】 国際公開第03/058305(WO,A1)
【文献】 特開2001−154067(JP,A)
【文献】 特開平07−084159(JP,A)
【文献】 特開2004−046021(JP,A)
【文献】 特開2015−096886(JP,A)
【文献】 米国特許第06920257(US,B1)
【文献】 特開2002−023123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 − 6/14
G02B 6/26 − 6/27
G02B 6/30 − 6/34
G02B 6/42 − 6/43
JSTplus/JMEDplus/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアがクラッドで覆われた導波路が形成されている光回路において、
前記光回路の上面と下面とに挟まれ、外周を形成する4つの面のうち、前記導波路の入出射端の配置されていない2つの面の全体に傾斜が施され、前記コアから前記クラッドへ漏洩した漏洩光を前記光回路の外部に向けて反射させる反射部、
を備える光回路。
【請求項2】
前記反射部で反射されかつ前記光回路から出射される漏洩光の光路上に配置され、前記光回路から出射された漏洩光を吸収する無反射部をさらに備える、
請求項に記載の光回路。
【請求項3】
請求項に記載の光回路と、
前記光回路を覆う筐体と、
前記筐体の内壁面のうちの前記光回路から出射される漏洩光の光路上に配置され、前記光回路から出射された漏洩光を吸収する無反射部と、
を備える光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光回路及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光回路(PLC(Planar Lightwave Circuit))が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の光回路は、光が導波路区間において捕らえられないように、更には1つの分岐区間から他方の分岐区間に光が再結合するのを回避するように、導波路区間の角度を設定する。
【0003】
PLC(Planar Lightwave Circuit)やSiP(System in a Package)などの光回路に入射した光は、波長板や導波路端、レンズ、PD(Photo Diode)、LD(Laser Diode)などの端部で反射、放射、散乱してクラッド内や基板内を漏洩光として伝搬する。これら漏洩光は、光回路内のあらゆる方向に伝搬し、光回路に接続されている光部品に入斜し、光部品の特性を劣化させる。光回路を用いた光通信モジュールを例にした場合、光回路で散乱された漏洩光はあらゆる方向からモニタPDに向かい、モニタPDの受光感度の劣化を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−211553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、光回路内の漏洩光を減少させ、光部品の特性劣化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光回路の入出射方向の端面は外部回路と光結合させる面であるため端面処理が行われているが、導波路の入出射端がなく外部との光結合が無い面は特に端面の処理は行われていなかった。そこで、本開示は、外部との光結合が無い端面を斜め加工し、散乱された漏洩光を光回路外に導く。
【0007】
具体的には、本開示の光回路は、
コアがクラッドで覆われた導波路と、
前記導波路の配置されている面に略垂直に配置されている端面のうちの導波路端の配置されていない部分の少なくとも一部に傾斜が施され、前記コアから前記クラッドへ漏洩した漏洩光を光回路の外部に向けて反射させる反射部と、
を備える。
【0008】
前記反射部の前記傾斜が、前記端面のうちの前記導波路端の配置されていない端面の全体に施されていてもよい。
【0009】
前記反射部において傾斜している端面と前記導波路の配置されている面に平行な面とのなす角度は略45°であってもよい。
【0010】
前記光回路の外周面のうちの前記光回路から出射される漏洩光の光路上に配置され、前記光回路から出射された漏洩光を吸収する無反射部をさらに備えていてもよい。
【0011】
本開示の光モジュールは、本開示の光回路と、前記光回路を覆う筐体と、前記筐体の内壁面のうちの前記光回路から出射される漏洩光の光路上に配置され、前記光回路から出射された漏洩光を吸収する無反射部と、を備える。
【0012】
なお、上記各開示は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、光回路内の漏洩光を減少させ、光部品の特性劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る光モジュールの一例である。
図2】本実施形態における反射部の一例である。
図3】本実施形態における無反射部の設置の別例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0016】
図1に、本実施形態に係る光モジュールの一例を示す。本実施形態に係る光モジュールは、本実施形態に係る光回路2が筐体9内に配置されている。本実施形態では、光モジュールの一例として、光モジュールが位相変調された光信号を受信する受信モジュールである場合について説明する。
【0017】
本実施形態に係る光モジュールは、光回路2、モニタPD5、受光素子6、バイアス差動検出器7、信号処理部8、筐体9を備える。光回路2、モニタPD5、受光素子6、バイアス差動検出器7、信号処理部8は、筐体9に覆われている。
【0018】
光ファイバ11で伝送された光信号が光回路2に入射される。光回路2は、コアがクラッドで覆われた導波路(不図示)を備え、導波路を用いて光ファイバ11からの光信号をモニタPD5及び受光素子6に導波する。モニタPD5は、光ファイバ11から入射されたモニタ光を受光して、光信号の強度を観測する。受光素子6は、光ファイバ11から入照された光信号を受光し、電気信号に変換する。バイアス差動検出器7は、受光素子6が変換した電気信号の差を検出する。信号処理部8は、バイアス差動検出器7からの出力信号を用いて光信号を復調する。
【0019】
光回路2の導波路が形成されている面に略垂直の外周の面に、第1の端面21、第2の端面22、第3の端面23、第4の端面24が配置されている。第1の端面21及び第2の端面22に光信号の入出力する導波路端が配置され、第3の端面23及び第4の端面24に導波路端は配置されていない。
【0020】
第1の端面21に、入射部21−1及び出射部21−3として機能する導波路端が配置されている。入射部21−1は、光ファイバ11と結合され、出射部21−3はモニタPD5と結合される。第2の端面22に、出射部22−1〜22−8として機能する導波路端が配置されている。出射部22−1〜22−8は、それぞれ、受光素子6−1〜6−8に結合される。
【0021】
本実施形態に係る光回路2は、光回路2の第1の端面21〜第4の端面24のうちの導波路端の配置されていない部分の少なくとも一部に、コアからクラッドへ漏洩した漏洩光を光回路2の外部に向けて反射させる反射部が設けられている。例えば、第3の端面23は反射部23−1を備え、第4の端面24は反射部24−1を備える。反射部は、第3の端面23及び第4の端面24の一部であってもよいが、第3の端面23及び第4の端面24の全体に反射部が設けられていることが好ましい。また、第1の端面21のうちの入射部又は出射部の配置されていない部分に反射部21−2が設けられていてもよい。
【0022】
図2に、A−A’断面における反射部の一例を示す。反射部23−1は、傾斜が施されており、光回路2と空気の屈折率差を用いて、光回路2のコアからクラッドへ漏洩した漏洩光Bを光回路2の上面25に反射させる。反射部23−1は、導波路の配置されている面と平行な面に対して所定の角度Cで傾斜することで形成される。導波路の配置されている面に平行な面は、例えば上面25である。漏洩光Bが反射部23−1に入射したとき、漏洩光Bは反射部23−1で反射され、反射された漏洩光Bは上面25から光回路2外に出射される。これにより、光回路2において、再びクラッドや基板の光の伝搬方向と結合させないことができる。反射部23−1での反射率を高めるために、反射部23−1にコーティングなどの反射処理を施すことが好ましい。
【0023】
所定の角度Cは、反射部の位置に応じた、反射させたい角度に設定する。所定の角度Cは、45°であることが好ましい。PLCの比屈折率差は、例えば、ガラスを用いた場合は1.5、Siを用いた場合は3.0である。比屈折率差が1.5以上の場合、臨界角が45°より小さくなる。このため、所定の角度Cが45°であることで、漏洩光Bが上面25から出射される程度に漏洩光Bを反射することができる。
【0024】
本実施形態の光回路の製造方法は、カット工程と、研磨工程と、順に有する。
カット工程では、複数の光回路2が形成されているウエハから、光回路2をダイシングソーで切り出す。
研磨工程では、切り出した光回路2の端面を研磨して反射部23−1、24−1を形成する。このとき、上面25又は下面26に対して端面が所定の角度Cに傾くように、光回路2の端面23、24を研磨する。研磨方法としては、CMP法による研磨が挙げられる。これにより、本実施形態に係る光回路2を生産することができる。
【0025】
本実施形態では、光回路2から出射された漏洩光Bの光路上の筐体9の内壁面9Aに、漏洩光Bを吸収する無反射部4が設けられていることが好ましい。無反射部4は、例えば、反射防止コーティングが例示できる。これにより、漏洩光Bの筐体9内での散乱を防止することができる。
【0026】
図3に、無反射部の設置の別形態を示す。無反射部4は、光回路2の上面25に接して、漏洩光Bの光路上に配置されても良い。これにより、筐体9の構造上の制約により筐体9の内壁面9Aに無反射部4が設けられない場合や光回路2と筐体9の間に部品が配置されている場合でも、漏洩光Bの筐体9内での散乱を防止することができる。
【0027】
なお、図2及び図3では、反射部23−1が漏洩光Bを光回路2の上面25に反射させる例を示したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、反射部23−1は、漏洩光Bを光回路2の下面26に反射させてもよい。この場合、下面26に対して第3の端面23を所定の角度C傾けて反射部を形成する。所定の角度Cは、下面26と反射部23−1とのなす角度になる。さらに無反射部4を設ける場合は、下面26から出射された漏洩光Bの光路上の筐体9に無反射部4を配置する。或いは、漏洩光Bの光路上に位置する下面26に配置される。
【0028】
また、本実施形態では光モジュールが受光モジュールである例を示したが、送信モジュールなどの光回路を搭載した任意の光モジュールに適用することができる。
【0029】
以上のように、本実施形態の光回路および光モジュールは、光回路の外部に向けて反射させる反射部が設けられているので筐体内での散乱が防止できるため、モニタPDの受光感度の劣化を防止できる。さらに無反射部を漏洩光の光路上の筐体あるいは光回路の上面に設けることにより漏洩光の散乱をより効果的に抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
11:光ファイバ
2:光回路
21:第1の端面
21−1:入射部
21−2:反射部
21−3:出射部
22:第2の端面
22−1、22−2、22−3、22−4、22−5、22−6、22−7、22−8:出射部
23:第3の端面
23−1:反射部
24:第4の端面
24−1:反射部
25:上面
26:下面
4:無反射部
5:モニタPD
6−1、6−2、6−3、6−4、6−5、6−6、6−7、6−8:受光素子
7−1、7−2、7−3、7−4:バイアス差動検出器
8−1、8−2:信号処理部
9:筐体
9A:筐体の内壁面
図1
図2
図3