(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る一つの実施形態の電力機器の一例である配電盤1の真空断路器としての真空バルブ15、16の絶縁診断(真空状態の劣化具合いを診断)する絶縁診断装置2の一例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、実施形態の絶縁診断装置2は、配電盤1に通信ケーブル19などによって接続されたコンピュータなどであり、コンピュータ本体には、CPU、メモリ、通信インターフェース、ディスプレイ端子などが備えられており、ディスプレイ端子には表示装置3が接続されている。
【0017】
絶縁診断装置2は、配電盤1の筐体内に格納された真空断路器としての真空バルブ15、16内部の真空状態(劣化の有無)を診断するものである。
【0018】
配電盤1は、系統電圧測定のための計器用変圧器11と、主回路導体12と、この主回路導体12に接続されたケーブルヘッド13および真空バルブ15、16と、これら真空バルブ15、16の動作を制御する電磁操作機構17と、電力系統と接続する母線14と、筐体の内側に取付けられた部分放電計測用の電磁波センサ18とを筐体内に収容して構成されている。
【0019】
真空バルブ15、16は、電磁操作機構17により制御されて主回路導体12に繋がる回路を開閉する。電磁波センサ18は真空バルブ15、16内の部分放電により発生した電磁波を検出する。電磁波センサ18は例えばループアンテナ等である。
【0020】
電磁波センサ18は筐体に設けられた接続端子の一端に接続されている。接続端子の他端は筐体外部に引き出された通信ケーブル19が接続されている。配電盤1が複数ある場合、電磁波センサ18は診断対象とする配電盤1毎に設置される。
【0021】
絶縁診断装置2は、機能構成として、信号処理部20、判定部25、診断情報記憶部としての診断データベース30(以下「診断DB30」と称す)などを有する。信号処理部20はフィルタ21、増幅器22、演算部23、信号分割部24などを含む。
【0022】
信号処理部20は電磁波を検出したセンサ18の信号を、加工(増幅および周波数フィルタリング)する。具体的には、フィルタ21および増幅器22などは、電磁波センサ18により検出された電磁波を、基準電位に対して信号の値が正負(上下)に変動する波形の信号に整形(加工)する。つまり整形部では、電磁波センサ18により検出された電磁波の所定の帯域が強調された波形の信号とされる。
【0023】
演算部23は、フィルタ21および増幅器22を通じて生成された信号の周期を計算する。信号分割部24は演算部23により計算された信号の周期と受電電圧の周波数を基に、整形部からの信号を2つに分割する。
【0024】
例えば信号分割部24は受電電圧の周波数に応じて半周期の時間で信号を2つに分割する。つまり信号分割部24は基準値(例えば0Vなどの基準電位)に対して正負に変動する信号(極性が反転する信号)を、正側(プラス側)と負側(マイナス側)の2つの信号に分ける。ここで受電電圧とは、例えば周波数が50Hzなどの商用単相100Vまたは200Vの交流電圧などの電力信号である。
【0025】
判定部25は、信号処理部20により加工(増幅および周波数フィルタリング)された信号の波形の時間的な変化が予め設定された判定条件を満たした場合に異常放電を判定する。
【0026】
すなわち、判定部25は、信号分割部24により半周期毎に分割された2つの信号のピーク値と予め設定されている閾値とを比較して大小の判定を行い、その判定結果から真空バルブ15、16に部分放電が発生しているか否か(真空劣化の有無)を判定する。
【0027】
より具体的には、判定部25は、信号の正負に変動する波形のうち、時間的に早い第1波目の極大(小)値V1とその次の極小(大)値V2との比の絶対値|V2/V1|が0.05から1.0の範囲であり、かつ極大(小)値V1の値が予め設定した下限の閾値λ1以上である第1判定条件を満たした場合に異常放電と判定する。
【0028】
判定部25は、極大(小)値V1の時間をT1、その次の極小(大)値V2の時間をT2とした場合に互いの時間差T2−T1の値が0.15μ秒以上で15μsec以下である第2判定条件を満たした場合に異常放電と判定する。
【0029】
なお、上記第1判定条件の比の絶対値と上記第2判定条件の時間差との相関関係(
図6のグラフ参照)から導出した第3判定条件をさらに加えて、これら第1〜第3判定条件のうちの少なくとも2つの判定条件を用いて異常放電を判定してもよい。
【0030】
また、判定部25は、上記判定条件を満たした回数をメモリに条件毎に計数(記憶)しておき、計数値が、真空バルブ15、16が遮断する主回路導体12(回路)に流れる受電電圧(電力信号)の1周期に対して2回以上であった場合に異常放電と判定してもよい。
【0031】
図2に示すように、診断DB30には、真空バルブ15、16の電圧クラス31、真空度(すなわち真空バルブ内の圧力、以下同様)と部分放電との関係32、真空度と放電周波数との関係33、放電電圧と真空度との関係34、放電検出強度と真空度との関係35、放電検出強度と真空バルブ15、16の距離との関係36などが記憶されている他、これらグラフの情報から導出される真空劣化の判定条件(第1〜第3判定条件(閾値等))37が記憶されている。
【0032】
図3は電磁波センサ18で検出した電磁波(放電信号)の一例を示す図である。
図3に示すように、電磁波(放電信号)S1には、正負の振動がみられ、最初に極大値を示し、続いて逆極性の極大値を示す。電磁波(放電信号)S1の波形を見ると、真空劣化度に応じて第1波目の極大値V1、次の極小値V2、第1波目の極大値V1の発生時刻T1、次の極小(大)値V2の発生時刻T2の値、すなわち電磁波(放電信号)S1の波形は変化する。
【0033】
真空劣化に伴うこれらの値の変化と相関関係を
図4〜
図6に示す。
図4は真空劣化時の極大値V1と次の極小値V2との電圧比|V2/V1|と真空バルブ内の圧力(真空度)との関係を示すグラフ(図)である。
【0034】
この関係から、|V2/V1|が0.25〜1.0の間では、真空バルブ15、16が機能するための絶縁状態(真空度)が維持されていないため、閾値として0.25〜1.0という範囲で第1判定条件が診断DB30に記憶されている。第1判定条件としては、例えば真空度のばらつきや測定精度等を考慮して|V2/V1|が0.25〜0.70という判定条件としてもよい。
【0035】
図5は真空劣化時の極大値V1が得られた時刻T1から次の極小値V2が得られる時刻T2までの経過時間と真空バルブ内の圧力(真空度)との関係を示すグラフ(図)である。この関係から、互いの経過時間(時間差)T2−T1が0.15μsec以上で15μsec以下である場合には、真空バルブが機能するための真空バルブ内の圧力(真空度)が維持されていないことが判るため、閾値として0.15μsec以上で15μsec以下という第2判定条件が診断DB30に記憶されている。第2判定条件としては、例えば真空度のばらつきや測定精度等を考慮して0.20μsec以上で5μsec以下という判定条件としてもよい。
【0036】
図6は真空劣化時の極大値V1が得られた時刻T1から次の極小値V2が得られる時刻T2までの経過時間T2−T1と、極大値V1と次の極小値V2との電圧比|V2/V1|との関係を示すグラフ(図)である。つまり同図は
図4の|V2/V1|と
図5の時間差T2−T1との相関関係を表した図である。
【0037】
この関係から、例えば経過時間(時間差)T2−T1が0.20〜5μsecの間で電圧比|V2/V1|が0.25〜0.70の間では、真空バルブ15、16が機能するための真空バルブ内の圧力(真空度)が維持されていないため、閾値として経過時間(時間差)T2−T1が0.25〜5μsecと電圧比|V2/V1|が0.25〜0.7という第3判定条件が診断DB30に記憶されている。つまり第3判定条件は、第1判定条件の比の絶対値|V2/V1|と、第2判定条件の時間差T2−T1との相関関係から導出した条件である。
【0038】
これら
図4〜
図6の相関関係(第1〜第3判定条件)と
図3に示した波形の変化(計測値)とを利用することで、真空バルブ15、16内部の真空状態の劣化具合いについて確度の高い診断(絶縁診断)が可能となる。
【0039】
以下、
図7のフローチャートを参照して絶縁診断装置2の動作を説明する。
図7はこの絶縁診断装置2の動作を示すフローチャートである。
電磁波センサ18は、常に動作し、設置位置(筐体内側面)における電磁波を検出し、その検出信号(電磁波を検出した信号)を、通信ケーブル19を通じて絶縁診断装置2に入力する。
【0040】
絶縁診断装置2では、電磁波センサ18により検出された電磁波を取得すると(
図7のステップS101)、取得した信号に対してフィルタ21および増幅器22により所定の帯域を強調するなどの加工処理を行い(ステップS102)、演算部23を通じて信号分割部24に入力する。
【0041】
信号分割部24は、入力された信号(加工処理後の電磁波の信号)を、受電電圧の周波数に応じた半周期の時間で2つの信号(OVを基準に正極側の信号、負極側の信号)に分割し(ステップS103)、判定部25へ出力する。
【0042】
判定部25は、診断DB30から判定条件(閾値)37を読み出し、信号分割部24から入力された正側の信号と負側の信号の計測値が、これら信号の値に関する判定条件(閾値)37を満たしているか否か(真空劣化の有無)を判定する(ステップS104)。
【0043】
この場合、真空バルブ15、16の真空劣化に伴って発生する部分放電特性(信号の強度や信号波形の変動状況、頻度などの閾値)を予め診断DB30に格納しておき、判定部25は、診断DB30に格納されている判定条件(閾値)37を読み出し、読み出した判定条件(閾値)37を基に真空度合いを診断する。これにより高精度に診断を行うことができる。
【0044】
このステップS104の判定処理では、判定部25は、信号の計測値と判定条件(閾値)とを比較して真空度合いを判定する。判定にあたり、信号の強度(電圧レベル)の比較判定だけでもよいが、これに加えて、頻度での判定(単位時間に何回閾値を超えたか)を併用することにより、診断の精度をさらに向上することができる。
【0045】
ステップS104の判定の結果、信号の計測値が判定条件37を満たした場合(ステップS104のYes)、判定部25は、「真空劣化あり」と判定して(ステップS105)、真空劣化を報知するための出力を行う(ステップS106)。
【0046】
一方、判定の結果、信号の計測値が判定条件37を満たさなかった場合(ステップS104のNo)、判定部25は、「健全」(真空バルブ15、16の真空劣化が進んでいないもの)と判定して(ステップS107)、健全を報知するための出力を行う(ステップS108)。
【0047】
出力としては、OK、NGの信号を出力および表示するだけでもよいが、計測データや閾値と共に判定結果を出力し、表示装置3に表示するようにしてもよい。
【0048】
ここで、判定部25の判定動作について、いくつかの事例(第1動作例、第2動作例)をあげて説明する。
(第1動作例)
図8に示すように、第1動作例では、判定部25は、信号分割部24から入力される正側の信号と負側の信号の電圧(計測値)のうち、時間的に早い第1波目の極大値V1と診断DB30から読み出したこの値に関する判定条件(閾値λ)とを比較する。
【0049】
この比較の結果、閾値λよりも極大値V1が小さい場合(S201のNo)、健全(正常)と判定し(ステップS107)、その旨を示す情報(健全出力)を出力する(ステップS108)。
一方、比較の結果、閾値λよりも極大値V1が大きい場合(S201のYes)、判定部25は、次の判定ステップS202の処理を行う。
すなわち、判定部25は、極大値V1と次の極小値V2との電圧比|V2/V1|と閾値(0.25〜1.0)とを比較し、電圧比|V2/V1|が、閾値(0.25〜1.0)の範囲内か否かを判定する(ステップS202)。
【0050】
この判定の結果、電圧比|V2/V1|が閾値(0.25〜1.0)の範囲外であれば(ステップS202のNo)、健全(正常)と判定し(ステップS107)、その旨を示す情報(健全出力)を出力する(ステップS108)。
【0051】
一方、比較の結果、電圧比|V2/V1|が閾値(0.25〜1.0)の範囲内の場合(S202のYes)、判定部25は、真空劣化と判定し(ステップS105)、その旨を示す情報(劣化出力)を出力する(ステップS106)。
【0052】
(第2動作例)
図9に示すように、第2動作例では、上記ステップS201の動作とステップS202の判定の結果、閾値λよりも極大値V1が小さい場合、および電圧比|V2/V1|が閾値(0.25〜1.0)の範囲外であった場合(S201およびS202のNo)の動作は同じであり、説明は省略する。
【0053】
ステップS202の判定の結果、電圧比|V2/V1|が閾値(0.25〜1.0)の範囲内の場合(S202のYes)、判定部25は、次の判定ステップS203の処理を行う。
すなわち、判定部25は、極大値V1が得られた時刻T1から次の極小値V2が得られた時刻T2までの経過時間T2−T1と閾値(0.15μsec〜15μsec)とを比較する(ステップS203)。
【0054】
この判定の結果、経過時間T2−T1が閾値(0.15μsec〜15μsec)の範囲外であれば(ステップS203のNo)、健全(正常)と判定し(ステップS107)、その旨を示す情報(健全出力)を出力する(ステップS108)。
【0055】
一方、比較の結果、経過時間T2−T1が閾値(0.15μsec〜15μsec)の範囲内である場合(ステップS203のYes)、判定部25は、真空劣化と判定し(ステップS105)、その旨を示す情報(劣化出力)を出力する(ステップS106)。
【0056】
図10は真空劣化(真空異常)に伴って発生する放電信号の一例を示す図である。
図11、
図12は
図10の放電信号以外に、診断機器で発生し得るノイズとなる放電の検出波形を示す図であり、
図11は内部放電の検出波形を示し、
図12は気中放電の検出波形を示す。
【0057】
図10の放電信号の検出波形に対して、
図11、
図12に示したようなノイズとなる放電の周波数は、横軸の単位を見比べると分かるように、通常の信号に比べて異常に高いため、時刻T2−時刻T1の値が、0.15μsecよりも短くなる。
【0058】
よって、時刻T2−時刻T1の値に対して閾値0.15μsec(真空劣化の判定条件として0.15μsec以上)を診断DB30に設定しておき、この閾値での判定を加えることで、これらノイズ成分の信号を真空劣化の判定条件から除外することができる。
【0059】
以下、
図13、
図14を参照してこの絶縁診断装置2の動作を説明する。
配電盤1の真空バルブ15、16において真空劣化が生じた場合、真空度の劣化度に応じて絶縁性能低下が低下し、電極間の橋絡に至らない放電(部分放電)が発生する。部分放電が生じると、放電電流による電磁波が発生し、これを電磁波センサ18が検出する。
絶縁性能低下で発生した放電電流による電磁波の波形は、内部の真空劣化度に応じて例えば
図3に示したような基準電圧(0V)を基準として正負(上下)に変動する波形であり、放電信号S1として計測される。
【0060】
このような波形の放電信号S1が整形及び分離されて判定部25に入力されると、判定部25は、入力信号の波形の時間的な変化が予め設定された判定条件を満たしているか否かを判定する。具体的には、入力信号の波形の一部の電圧値(電磁波の強度、またはセンサ電圧と称す)と予め設定した閾値λ1とを比較し、大小関係を判定する。
【0061】
この比較の結果、電磁波の強度(センサ電圧)が閾値λ1を超えている場合、
図3に示した電圧値V1、V2および時刻T1、T2とそれらの関係から設定した閾値に基づいて、異常放電か否かを判定する。
【0062】
ここで、閾値λ1の設定方法について説明する。
図13は真空劣化させた真空バルブ15、16と電磁波センサ18とを所定の距離だけ離して設置し、真空バルブ15、16に高電圧をかけて、部分放電を発生させた場合に検出された電圧を測定した結果である。
【0063】
図13に示すように、電磁波センサ18と診断対象の真空バルブ15、16との距離が例えば1メートルである場合、閾値λ1を30mV程度に設定しておくことで、この閾値λ1を超える電圧が発生すれば、それを異常放電と判定できるので、精度の高い診断を実施できる。
【0064】
なお、
図14に示すように、真空バルブ15、16の内部の圧力(真空度)によって、電磁波センサ18により検出される電磁波の強度(センサ電圧)が異なる場合がある。この場合はセンサ電圧の最低値(この例では10mVなど)を判定条件にした閾値λ1を設定しておくことで、真空劣化を高感度に検出することができる。
【0065】
配電盤1の内部で、例えば
図12に示すような放電が発生し、設定した閾値λ1以上の信号が電磁波センサ18により検出され、絶縁診断装置2に入力されたものとする。
【0066】
絶縁診断装置2では、
図7に示した判定ステップS104での比較判定(電圧値V1、V2、時刻T1、T2とそれぞれの関係に対する判定条件)に基づいて真空劣化の具合いを判定する。
【0067】
センサ電圧の最低値の10mVなどを判定条件に設定していた場合、電圧比|V2/V1|の条件が0.25から1.0を満たさないため、真空不良と誤って判断することはない。なお、これらの放電も電気機器としては異常放電であるので、別途、電圧値V1、V2、時刻T1、T2の値を設定することによって、検出することも可能である。
【0068】
この第1実施形態によれば、真空バルブ15、16の内部の真空劣化によって生じる部分放電による電磁波を電磁波センサ18で検出し、検出した電磁波の信号波形に対して、所定の条件や閾値を設定し、信号波形から得られる計測値と閾値を比較することで、不規則に発生するノイズの影響を除外しつつ真空バルブ15、16の真空劣化の進み具合い、換言すれば真空バルブ15、16内の絶縁状態を高精度に診断することができる。
【0069】
(第2実施形態)(異常放電の検出にウェーブレット変換を用いる例)
図15〜
図19を参照して第2実施形態を説明する。
図15に示すように、この第2実施形態は、変換部27を備える。変換部27は信号処理部20により整形された信号またはその前段の電磁波の信号をウェーブレット変換する。具体的には、変換部27は判定部25により真空劣化(異常放電あり)と判定された信号または演算部23から入力された信号に対してウェーブレット変換を行う。
【0070】
図17は外来ノイズが到達する測定個所で測定したノイズ信号の一例である。
図17に示すように、外来ノイズは、強度がほとんどそろっており、かつ連続した信号である。
【0071】
電磁波センサ18により検出される信号に、例えば
図16に示すようなノイズ成分が含まれるケースが考えられる。このような信号に、
図17に示す真空劣化に伴う部分放電の放電信号が重畳した場合、
図18に示すような波形が検出される。
【0072】
この場合、電圧値V1、V2、時刻T1、T2の条件に従って波形を判定するが、
図16のようにノイズ成分が大きい信号の場合は、波形の一部の電圧値を比較するだけでは絶縁判定が困難なケースがある。
【0073】
そこで、このようなケースでは、判定部25で判定した信号または演算部23から判定部25へ出力された信号を分岐させて変換部27を介して表示装置3へ出力するようにしておき、変換部27で信号をウェーブレット変換する。
【0074】
このウェーブレット変換では、信号の強度に応じて色分布が変わる。つまり信号が強いほど黒く、信号が弱いほど白く現れる。したがって、ウェーブレット変換の結果として、例えば
図19に示すような結果(信号波形)が得られれば、電源周期に連動していない周波数成分(ノイズ成分)と、突発的に発生する高レベルの放電信号(破線Pで示す箇所の縦線が異常放電)とを識別可能に描画されることになり、ノイズ環境の中でも異常放電の信号を確実に検出することができる。
【0075】
この第2実施形態によれば、放電信号をウェーブレット変換する変換部27を設けることで、電磁波センサ18で検出される電磁波に平均的に大きいノイズ成分が乗っている場合にも異常放電の信号を確実に検出することができる。
【0076】
(第3実施例)(分割した一方の信号の包絡線検波を行うことで、異常放電の信号を検出する例)
図20、
図21を参照して第3実施形態を説明する。
図20に示すように、この第3実施形態は、包絡線検波部28を備える。包絡線検波部28は信号分割部24により分割された2つの信号のうち一方の信号、例えば負極側の信号を全波整流し、正極側の信号と合わせてピーク点から包絡線を検出し判定部25に入力する。
【0077】
続いて、第3実施形態の動作を説明する。この第3実施形態では、信号分割部24からは、包絡線検波部28と判定部25とにそれぞれ信号が入力される(
図21のステップS103)。
【0078】
包絡線検波部28は、信号分割部24から入力された負極側の信号を全波整流し、正極側の信号と合わせてピーク点から包絡線を検波し(ステップS204)、判定部25に入力する。
【0079】
判定部25では、予め設定しておいた閾値と包絡線とを比較し異常放電の有無を判定して(ステップS205)、判定結果を表示装置3へ出力する。
【0080】
この第3実施形態によれば、包絡線検波部28を設けることで、第1実施形態のように分割した正負の信号の第1波目の最小値V1と第2波目の最大値V2との比の絶対値をとる以外の方法でも異常放電の有無を検出して真空バルブ15、16の真空劣化を診断することができる。
【0081】
すなわち、上記いくつかの実施形態によれば、配電盤1などの電力機器の受電を停止することなく配電盤1に備えられる真空バルブ15、16の絶縁診断を高精度に行える絶縁診断装置および絶縁診断方法を提供することができる。
【0082】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0083】
また上記実施形態に示した絶縁診断装置2の各構成要素を、コンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることで本発明の機能をコンピュータが実現するようにしてもよい。
【0084】
電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。