特許第6878066号(P6878066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878066
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】指紋センサ及び指紋センサモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/28 20060101AFI20210517BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20210517BHJP
   A61B 5/1172 20160101ALI20210517BHJP
【FI】
   G01B7/28 A
   G06F3/01 510
   A61B5/1172
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-53516(P2017-53516)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2017-187478(P2017-187478A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2020年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-69293(P2016-69293)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴野 文人
(72)【発明者】
【氏名】水橋 比呂志
(72)【発明者】
【氏名】上原 利範
(72)【発明者】
【氏名】野々山 紀美代
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 隼人
【審査官】 山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第105138988(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104850840(CN,A)
【文献】 特開2004−317353(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/039037(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0333328(US,A1)
【文献】 特開2011−176229(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104657707(CN,A)
【文献】 特開2005−156291(JP,A)
【文献】 特開2006−101903(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0034740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
A61B 5/06−5/22
G06F 3/00−3/01
3/048−3/0489
3/18
G06K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のガラス基板と、第二のガラス基板と、前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板との間に配置された複数のセンサ電極とを備え、前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板とが前記センサ電極を挟んで封止材により接着され
前記封止材が前記センサ電極が配置された検出領域の外側の額縁領域に重畳して配置される指紋センサ。
【請求項2】
前記第一のガラス基板及び前記第二のガラス基板のうち少なくとも一方の厚さが100μm〜300μmの範囲にある請求項1に記載の指紋センサ。
【請求項3】
前記第一のガラス基板の上方に前記センサ電極が配置される請求項1または請求項2に記載の指紋センサ。
【請求項4】
前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板の間の間隙に充填物が充填される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の指紋センサ。
【請求項5】
前記充填物が液晶である請求項4に記載の指紋センサ。
【請求項6】
前記第一のガラス基板に配置され、前記センサ電極へ駆動信号を供給、または検出信号を出力、の少なくとも一方を行う信号線をさらに含む請求項1からのいずれか1項に記載の指紋センサ。
【請求項7】
前記第一のガラス基板に配置された制御線と、スイッチング素子とをさらに含み、前記信号線は前記スイッチング素子を介して前記センサ電極へ駆動信号を供給しまたは検出信号を出力し、制御線は前記スイッチング素子を介して駆動するセンサ電極を順次選択する請求項に記載の指紋センサ。
【請求項8】
前記センサ電極と信号線または制御線との間の層に配置される第一の対向電極を備える請求項に記載の指紋センサ。
【請求項9】
前記第二のガラス基板に配置される第二の対向電極を備える請求項に記載の指紋センサ。
【請求項10】
前記第一の対向電極及び前記第二の対向電極はガード電極である請求項に記載の指紋センサ。
【請求項11】
前記第二のガラス基板にセンサ駆動電極をさらに含む請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の指紋センサ。
【請求項12】
前記センサ駆動電極から発信された駆動信号を前記センサ電極が受信する請求項11に記載の指紋センサ。
【請求項13】
前記センサ電極の解像度が250ppi〜1000ppiの範囲の画素の解像度に相当する請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の指紋センサ。
【請求項14】
前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板の全ての辺が5mmから30mmの範囲にある請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の指紋センサ。
【請求項15】
前記第二のガラス基板はさらに加飾層を備える請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の指紋センサ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の指紋センサと、前記指紋センサと外部電子機器との信号の送受信を行う制御部とを含む指紋センサモジュール。
【請求項17】
前記第一のガラス基板または前記第二のガラス基板に接続されたフレキシブル基板を含み、前記フレキシブル基板に前記制御部が配置される請求項16に記載の指紋センサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指紋センサ、指紋センサモジュール及び指紋センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における生体認証の手段の1つとして、例えば指の表面の凹凸などの微細構造を検出可能な高解像度の静電容量式検出装置が開発されている。
しかし、このような装置のうち、従来の指紋センサは単結晶シリコン基板上に形成されているため指で押すと割れやすいという問題があった。
日本国特開2004−317353号公報には、絶縁基板上に形成された指紋センサの耐久性が向上することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−317353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような指紋センサの耐久性をさらに向上させることが求められていた。さらに、指紋センサの耐久性と、検出感度とを両立させることについても求められていた。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた耐久性を備えた指紋センサ、指紋センサモジュール及び指紋センサの製造方法を提供することにある。さらには、耐久性とともに、検出感度を両立することも可能な、指紋センサ、指紋センサモジュール及び指紋センサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
指紋センサは、第一のガラス基板と、第二のガラス基板と、前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板との間に配置された複数のセンサ電極とを備え、前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板とが前記センサ電極を挟んで封止材により接着されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は本実施形態に係る指紋センサの平面図である。
図2図2は本実施形態に係る指紋センサの側面図である。
図3図3は本実施形態に係る指紋センサの断面図である。
図4図4は本実施形態に係る指紋センサの断面図の一部の拡大図である。
図5図5は本実施形態に係る指紋センサの接着構造の一例を示す断面図である。
図6図6は本実施形態に係る指紋センサの接着構造の別の一例を示す断面図である。
図7図7は本実施形態に係る指紋センサの接着構造の別の一例を示す断面図である。
図8図8は本実施形態に係る指紋センサの検出原理の一例を示す回路図である。
図9図9は本実施形態に係る第二の対向電極の断面図である。
図10図10は本実施形態に係る第二の対向電極の別の一例の断面図である。
図11図11は本実施形態に係る第二の対向電極の平面図である。
図12図12は本実施形態に係るセンサ駆動電極の断面図である。
図13図13は本実施形態に係るセンサ駆動電極の別の一例の断面図である。
図14図14は本実施形態に係るセンサ駆動電極の平面図である。
図15図15は本実施形態に係るセンサ駆動電極の検出原理の一例を示す図である。
図16図16は本実施形態に係る指紋センサの駆動方法を示す概略図である。
図17図17は本実施形態に係る第二の対向電極の駆動方法を示す概略図とタイミングチャートである。
図18図18は本実施形態に係るセンサ駆動電極の駆動方法を示す概略図とタイミングチャートである。
図19図19は本実施形態に係る指紋センサモジュールの平面図の一例である。
図20図20は本実施形態に係る指紋センサモジュールの側面図の一例である。
図21図21は本実施形態に係る加飾層の断面図である。
図22図22は本実施形態に係る加飾層の断面図の別の一例である。
図23図23は本実施形態に係るダミー電極の平面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態につき説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。本開示はあくまで一例にすぎず、当業者において適宜変更しうるものまたは容易に想到し得るものを含む。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であり本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
1−1.全体構成
図1は、本実施形態に関わる指紋センサの一構成例を示す平面図である。
【0010】
指紋センサ1は、第一のガラス基板SUB1と、第二のガラス基板SUB2と、センサ電極SEと、制御線C1と、信号線S1と、制御線駆動回路CDと、信号線駆動回路MUと、検出領域AAと、額縁領域PAとを含む。第一のガラス基板SUB1の上にセンサ電極SEが形成され、その上に第二のガラス基板SUB2が重ねられている。すなわち、2枚のガラス基板の間にセンサ電極SEが挟まれた構造となっている。
【0011】
第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2の間は、図示されない封止材で接着されている。
【0012】
指紋センサ1は、センサ電極SEが配置され、指紋等を検出する検出領域AAと検出領域AAの外側の額縁領域PAとを備える。2枚のガラス基板間に指紋検出のためのセンサ電極SEを挟みガラス基板間を接着することにより、センサ電極SEを物理的、化学的に保護するとともに上から押圧した際の変形、破壊を防止することができる。このような指紋センサは例えば樹脂フィルムなどで保護した指紋センサよりも耐久性に優れる。
【0013】
また、絶縁基板と樹脂フィルムなど、線膨張係数の差異の大きな部材でセンサ電極SEを挟んで保護した場合、高温条件下または低温条件下での線膨張係数の違いにより指紋センサの反りが発生するが、2枚のガラス基板間にセンサ電極SEを挟んで接着することでセンサの反りを防止することができる。
【0014】
第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2とを同一のガラス材料、すなわち線膨張係数が等しい材料とすると、よりセンサの反りを防止することができ、好ましい。
【0015】
また、2枚のガラス基板でセンサ電極SEを挟む構造をとることによって、例えばウェットエッチング法などにより、ガラス基板の厚さを制御することが可能となる。このため、指紋センサのガラスの薄型化が容易である。すなわち、センサ電極SEを挟んで2枚のガラス基板を接着することで、指紋センサの薄型化と、指紋センサの反りの防止とを両立することができる。センサ電極SEと指との間に配置されるガラス基板が厚すぎると指紋センサの検出感度が低下するが、本実施形態によれば検出感度に優れた指紋センサ1を提供することが可能である。またセンサ電極SEと指との間に配置されるガラス基板が薄すぎる場合には指紋センサの耐久性が低下する場合があるが、本実施形態によればガラス基板の膜厚を制御することが容易であり所望の耐久性の指紋センサ1を提供することが可能である。ガラス基板SUB1またはSUB2の形状及び検出領域AA、額縁領域PAの形状は図示した形状に限定されず、正方形、長方形、円形または多角形等であってもよい。
【0016】
第一のガラス基板SUB1の検出領域AAにはセンサ電極SEが配列して配置され、額縁領域PAには信号線駆動回路MUと制御線駆動回路CDが配置されている。センサ電極SEは少なくとも検出領域AA内においてX方向およびY方向にそれぞれ配列する複数のマトリックス状のパターン形状を有する。隣接するセンサ電極SE同士はスリットにより分割されている。検出領域AAに配置されるセンサ電極SEは、指紋などの微細構造を検出するために、1つのセンサ電極SEを画素に相当すると換算した時に250〜1000ppi(pixel per inch)の範囲となるような密度で配置されることが好ましい。これにより、センサ電極SEの解像度が250ppi〜1000ppiの範囲の画素の解像度に相当する。
【0017】
信号線駆動回路MUは信号線S1を介してセンサ電極SEに指紋検出のための駆動信号を供給し、または指紋検出のための検出信号を出力する。信号線S1は少なくとも検出領域AA内においてY方向に沿って延在しX方向に沿って配列する。1本の信号線S1がY方向に沿った少なくとも1列のセンサ電極SEのそれぞれに対応するように配置される。信号線駆動回路MUは所定の選択信号に応じて駆動検出対象の信号線S1を選択する。信号線駆動回路MUには例えばマルチプレクサ回路などの選択回路が含まれる。
【0018】
制御線駆動回路CDは制御線C1を介して選択信号を供給し、駆動対象のセンサ電極SEを選択する。制御線C1は少なくとも検出領域AA内においてX方向に沿って延在しY方向に沿って配列する。1本の制御線C1がX方向に沿った少なくとも一行のセンサ電極SEの所定の行の各センサ電極SEのそれぞれに対応するように配置される。制御線駆動回路CDには例えばシフトレジスタ回路などの転送回路やデコーダ回路などの選択回路が含まれる。
【0019】
図2は、本実施形態の指紋センサの一構成を示す側面図である。図2に示すように第二のガラス基板SUB2の上に指Fを近接または接触した時に、第一のガラス基板SUB1に形成された図示されないセンサ電極が、指の指紋を検出する。
【0020】
本実施形態では、第一のガラス基板SUB1より、第二のガラス基板SUB2のほうが、基板の主面の面積が狭くなっている。第二のガラス基板SUB2の端部Tの近傍には段差Dが形成される。第一基板の上に第二基板が重畳しない領域には例えば信号配線、フレキシブル基板、端子(コネクタ)等を配置できる。
【0021】
本実施形態の指紋センサは小型化、薄型化、軽量化が容易であり、耐久性に優れ高い検出感度を備えることができる。本実施形態の指紋センサはクレジットカードなどに内蔵し、指紋認証機能付カードを提供することができる。すなわち、本実施形態の指紋センサは高解像度な薄型センサ、小型センサとして使用できる。
【0022】
本実施形態に係る指紋センサの第一のガラス基板SUB1及び前記第二のガラス基板SUB2のうち、少なくとも一方の厚さが100〜300μmの範囲にあることが好ましい。厚さが100μm未満の場合には指紋センサの耐久性が低下する場合がある。厚さが300μmを超えると指紋センサの感度が低下する場合がある。本実施形態に係る指紋センサの第一のガラス基板SUB1と前記第二のガラス基板SUB2の全ての辺は5mmから30mmの範囲にあることが好ましい。ガラス基板の1辺が5mm未満の場合には指紋検出を行う解像度が不足する場合がある。ガラス基板の1辺が30mmを超えると指紋センサが大型化する場合がある。
【0023】
1−2.指紋センサの構成例
図3は、本実施形態に関わる指紋センサ1の概略断面図の一例である。
【0024】
第一のガラス基板SUB1の上に、センサ回路3が形成されている。センサ回路3には、図示されない制御線、信号線等の配線と、前記制御線より供給される制御信号によりセンサ電極SEに前記信号線からの駆動信号を供給するスイッチ素子とを含む。センサ回路3の上に平坦化膜PLNが形成される。平坦化膜PLNは例えばアクリル樹脂などの有機材料で形成される。有機材料を用いると平坦化膜PLNの膜厚を厚くできるためセンサ電極SEや第一の対向電極CE1と、センサ回路3との間の寄生容量を低減することができ、センサの検出速度および検出感度の向上や消費電力の削減が可能である。
【0025】
平坦化膜PLNの上にセンサ電極SEに対向する第一の対向電極CE1が形成される。第一の対向電極CE1は例えばガード電極としての機能を有する。指紋センサのような微細構造を認識する高解像度な入力検出装置においては、多数の小さなセンサ電極SEが検出領域に密に配置されることとなるため、これらを順次駆動する駆動回路や選択回路及び制御配線が必要となるため、これらを含むセンサ回路とセンサ電極SEとの間にガード電極を配置することでノイズを低減したり寄生容量を低減することができる。第一の対向電極CE1は例えばインジウム錫酸化物ITOのような導電層で形成され、例えば少なくともセンサ電極SEが配置された検出領域AA内全面を覆うベタパターン形状に形成される。ただし第一の対向電極CE1が複数に分割されたパターン形状であってもよい。第一の対向電極CE1はITOで形成されていてもよく、インジウム亜鉛酸化物IZO、酸化亜鉛ZnO等のような透光性導電材料でも良く、金属等の遮光性導電材料であってもよい。検出領域AA全面を覆うように第一の対向電極CE1をセンサ電極SEに対向させるとガード効果が向上するので好ましい。
【0026】
第一の対向電極CE1は浮遊電位でも良く、所定の電位が供給されてもよい。第一の対向電極CE1に供給されるアクティブガード電位としては限定されるものではないが、第一の対向電極CE1にセンサ電極SEに供給される駆動信号と同位相の信号を、センサ電極SEに供給するタイミングと同一のタイミングで供給するとセンサ電極SEとセンサ回路3との間の寄生容量を低減する効果が高く好ましい。このようにセンサの駆動信号と同期したガード信号をアクティブガード電位とする。アクティブガード電位の信号の電圧はセンサの駆動信号と同一の位相を有するものであればよい。駆動信号と同一の位相及び振幅を有する同波形のアクティブガード電位を用いることがより好ましい。
【0027】
第一の対向基板CE1の上に、絶縁膜2が形成され、絶縁膜2の上にセンサ電極SEが形成される。センサ電極SEは例えばITOで形成される。センサ電極SEはIZO,ZnOあるいは金属膜で形成されていてもよい。センサ電極SEの上に配向膜AL1が形成される。
【0028】
一方、第二のガラス基板SUB2の上にオーバーコート層(保護層)OCが形成される。オーバーコート層OCの上にスペーサSPが形成される。スペーサSPの上に配向膜AL2が形成される。前記配向膜AL1と配向膜AL2の間に液晶層LQが配置される。すなわち、第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2との間に形成される空隙に液晶層LQの液晶が充填されている。第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2との間は額縁領域PAにおいて接着されるので、ガラス基板間の間隙に液晶を充填しない場合はガラス基板間に真空層あるいは空気層が含まれる。センサ電極SEと、指が触れる側の基板(この実施形態では第二のガラス基板SUB2)との間に真空層や空気層が配置されると指紋センサの検出感度が低下する場合があるので、例えば液晶のような充填物を充填することが好ましい。また、後述する通り、第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2との間の間隙に封止材を充填してもよい。
【0029】
第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2との間に充填した液晶が外部に漏れたり、また第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2との間の間隙に外部から空気が入ったりしないように、第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2とは、隙間なく封止材で接着されている、すなわち封止されていることが好ましい。
【0030】
図4は、第一のガラス基板SUB1に形成されたセンサ回路の拡大図の一例である。図4は、図1の指紋センサのX方向に沿った断面図の拡大概略図である。図4に示すように、第一のガラス基板SUB1の上に、制御線C1と補助ガード電極SGE(Sub Guard Electrode)が形成される。制御線C1及び補助ガード電極SGEは第一のガラス基板SUB1の上に直接形成されてもよく、絶縁膜等を介して形成されてもよい。補助ガード電極SGEは、信号線S1と第一のガラス基板SUB1との間に配置され、制御線C1と同一の導電材料、例えば金属で形成される。制御線C1及び補助ガード電極SGEの上に第一絶縁膜11が形成されている。第一半導体層SC1は、第一絶縁膜11の上に形成されている。第一半導体層SC1は、制御線C1と対向した2個のチャネル領域を有している。第一半導体層SC1は、第一の対向電極CE1に対してセンサ電極SEの反対側に位置している。第一半導体層SC1は、例えば多結晶シリコンで形成されている。第一半導体層SC1は、酸化物半導体、アモルファスシリコンで形成されていてもよい。第二絶縁膜12は、第一絶縁膜11及び第一半導体層SC1の上に形成されている。
【0031】
信号線S1、第一導電層CL1及び第一補助配線A1は、第二絶縁膜12の上に形成されている。信号線S1、第一導電層CL1及び第一補助配線A1は、第一の対向電極CE1に対してセンサ電極SEの反対側に位置している。信号線S1、第一導電層CL1及び第一補助配線A1は、同一の導電材料で形成され、例えば金属で形成されている。
【0032】
ここで第一補助配線A1はコンタクトホールCHa1を介して第一の対向電極CE1にアクティブガード電位を供給するための配線である。
【0033】
また、信号線S1は、第二絶縁膜12に形成されたコンタクトホールCHa1を通って第一半導体層SC1の一端部に接続されている。
【0034】
信号線S1と第一のガラス基板SUB1との間に補助ガード電極SGEを設けることで第一のガラス基板SUB1の下側(センサ電極SEが形成された面と反対側の面)から信号線S1へのノイズを遮蔽することができる。
【0035】
なお、第一のガラス基板SUB1の上に信号線S1を最初に形成させ、制御線C1をその上方に形成してもよい。その場合は補助ガード電極SGEは制御線C1と第一のガラス基板SUB1との間に形成される。補助ガード電極SGEは、信号線と同一の層、若しくは同一の材料で形成されていてもよい。
【0036】
補助ガード電極SGEには第一補助配線A1を介してアクティブガード電位を供給することができる。アクティブガード電位は特に限定されるものではないが、センサ電極SEの駆動信号に同期したアクティブガード電位を供給することにより信号線S1や制御線C1とセンサ電極SEとの寄生容量をさらに低減させることができる。第一の対向電極CE1に加えて第一のガラス基板SUB1にさらに近い方向にこのような補助シールド電極を一層追加することにより高い寄生容量低減効果が得られる。
【0037】
第一導電層CL1は、第二絶縁膜12に形成されたコンタクトホールを通って第一半導体層SC1のチャネル領域の間に接続されている。第一補助配線A1は、第二絶縁膜12に形成されたコンタクトホールを通って第一半導体層SC1の他端部に接続されている。
【0038】
第三絶縁膜13は、第二絶縁膜12、信号線S1、第一導電層CL1及び第一補助配線A1の上に形成されている。第三絶縁膜13は、第一導電層CL1と対向し第一導電層CL1に開口したコンタクトホールを有している。第三絶縁膜13は図3の平坦膜PLNに相当する層であり有機材料で形成されることが好ましい。
【0039】
第一の対向電極CE1は、第三絶縁膜13の上に形成されている。第一の対向電極CE1は、第三絶縁膜13に形成されたコンタクトホールCHa1を通って第一補助配線A1に接続される。
【0040】
対向電極CE1は、第一検出スイッチDS1と対向し、第三絶縁膜13のコンタクトホールを取り囲んだ第一開口OP1を有している。対向電極CE1は、第一開口OP1だけではなく、例えば、対向電極CE1は、第二検出スイッチと対向した第二開口、第三検出スイッチと対向した第三開口、第四検出スイッチと対向した第四開口などの複数の開口を有している。
【0041】
第四絶縁膜14は、第一導電層CL1、第三絶縁膜13及び対向電極CE1の上に形成されている。第四絶縁膜14は、第一導電層CL1と対向し、第一導電層CL1に開口したコンタクトホールを有している。センサ電極SEは、第四絶縁膜14の上に形成され、第一開口OP1と対向している。センサ電極SEは、第一開口OP1及び第四絶縁膜14のコンタクトホールを通って第一導電層CL1に接続されている。
【0042】
第一導電層CL1、第一半導体層SC1、第一スイッチング素子DS1aを含む第1検出スイッチDS1は本発明に関わるスイッチ素子の一具体例である。
【0043】
第一スイッチング素子DS1aは、制御線C1に電気的に接続された第一電極と、信号線S1に電気的に接続された第二電極と、センサ電極SEに電気的に接続された第三電極とを含み、上記第一電極がTFT(Thin film transistor)のゲート電極、第二及び第三電極の一方がソース電極、第二及び第三電極の他方がドレイン電極として機能するようになっており第一制御線C1からセンサ電極SEに選択信号が供給されると第一スイッチング素子DS1aがオンとなってセンサ電極SEに第一信号線S1から駆動信号が供給され、また検出信号が第一信号線S1に出力されるようになっている。
【0044】
なお、指紋センサを駆動するスイッチング素子としては少なくとも第一スイッチング素子DS1aがあれば動作するが、本実施形態では非選択のセンサ電極SEにアクティブガード電位を印加するために、さらに第二スイッチング素子DS1bを備えている。第二スイッチング素子DS1bは、第一制御線C1に電気的に接続された第一電極と、第一補助配線A1に電気的に接続された第二電極と、センサ電極SEに電気的に接続された第三電極とを有し、上記第一電極がTFT(Thin film transistor)のゲート電極、第二及び第三電極の一方がソース電極、第二及び第三電極の他方がドレイン電極として機能するようになっており第一制御線C1からセンサ電極SEに選択信号が供給されると第二スイッチング素子DS1bがオンとなってセンサ電極SEに第一補助配線A1からアクティブガード電位が供給されるようになっている。
【0045】
なお、このように第一検出スイッチDS1が直列に接続された第一スイッチング素子DS1aと第二スイッチング素子DS1bとを含む場合には、どちらかのスイッチング素子がオンの時にはもう一方はオフになるようになっている。第一及び第二スイッチング素子DS1a、DS1bは、例えば互いに導電型の異なる薄膜トランジスタ、例えばNチャネル型の薄膜トランジスタとPチャネル型の薄膜トランジスタで形成されている。
【0046】
第一及び第二スイッチング素子DS1a、DS1bは、トップゲート型あるいはボトムゲート型のいずれであってもよい。第一及び第二スイッチング素子DS1a、DS1bの半導体層は、多結晶シリコン(polycrystalline silicon:poly-Si)によって形成されているが、多結晶シリコンに限らず非晶質シリコンや酸化物半導体などによって形成されていてもよい。
【0047】
信号線S1及び補助配線A1に対する検出スイッチDS1の接続関係は上述した例に限定されるものではなく各検出スイッチDS1の第一スイッチング素子の第二電極が第一補助配線A1に接続され、各検出スイッチDS1の第二スイッチング素子の第二電極が信号線S1に接続されていてもよい。
【0048】
1−3.接着構造
図5は本実施形態の指紋センサの接着構造の概略断面図の一例である。第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2とは、額縁領域PAに重畳する領域で封止材SLにより接着されている。第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2と間を額縁領域PAにおいて接着した際に、検出領域AA等においてガラス基板間に生じる間隙に液晶層LQの液晶が充填される。より具体的には、第一のガラス基板SUB1の上に第一のガラス基板上回路4が形成され、その上に絶縁膜2、センサ電極SE、配向膜AL1がこの順に形成され、第二のガラス基板SUB2の上にはオーバーコート層OC、スペーサSP、配向膜AL2がこの順で形成され、これらの膜が形成された第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2とを額縁領域PAに配置した封止材SLで接着する。
【0049】
液晶層LQはガラス間接着後に封止材SLにあらかじめ設けられた注入口から液晶を注入したのち、注入口をさらに封止して充填できる。
【0050】
第一のガラス基板SUB1または第二のガラス基板SUB2の上に液晶を滴下し、液晶の周辺領域に封止材を印刷したのちガラスを貼りあわせ硬化させるODF方式を用いてもよい。
【0051】
図6は、指紋センサの接着構造の変形例である。本変形例では第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2との間の間隙に封止材SLを充填している。本変形例では、封止材SLは額縁領域PA及び検出領域AAの全面、すなわち少なくとも第二のガラス基板SUB2の全面に重畳して配置され、第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2との間を接着する。
【0052】
この時は第一のガラス基板SUB1、または第二のガラス基板SUB2の上全面に行き渡る量の封止材SLを塗布または印刷したのち、ガラス基板間を貼りあわせ、加熱等の硬化工程を行うことによってガラス基板間を接着する。
【0053】
封止材SLとしては、例えば接着剤の熱硬化型エポキシ樹脂などを用いることができる。このような封止材を用いることによって2枚のガラス基板間の間隙が全面的に均一になるように接着することができる。このような封止材を用いてガラス基板間を隙間なく接着する、すなわち封止することができる。なお、図6では、第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2とに配向膜ALが形成されているが、本変形例においては配向膜ALはなくても良い。
【0054】
図7図6の変形例である。基板の全面に重畳して封止材SLを配置して第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2とを接着する場合に、スペーサSPを配置しなくても良い。
【0055】
スペーサSPを配置する場合は第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2との間の間隙を全面的により均一にする効果が得られる。
【0056】
スペーサSPを配置しない場合は第一のガラス基板SUB1と第二のガラス基板SUB2との間の間隙に封止材を充填した際に気泡が生じる可能性を低下できる。
【0057】
1−4.検出原理
図8に本実施形態の指紋センサの検出原理の一例を示す。図8は、センサ電極SEの検出器DTを示す回路図である。本実施形態において、検出器DTは、接続配線W1を介してセンサ電極SEに接続されている。接続配線W1とセンサ電極SEの間には図示されない信号線駆動回路MUを介していてもよい。検出器DTの個数は、例えば、接続配線W1の本数と同一である。この場合、検出器DTは接続配線W1に一対一で接続される。
【0058】
図8に示すように、検出器DTは、積分器INと、リセットスイッチRSTと、スイッチSW1と、スイッチSW2とを有している。積分器INは、演算増幅器AMPと、コンデンサCONとを有している。この例では、コンデンサCONは、演算増幅器AMPの非反転入力端子と出力端子との間に接続されている。リセットスイッチRSTは、コンデンサCONに並列に接続されている。スイッチSW1は、信号源SGと接続配線W1との間に接続されている。スイッチSW1は、信号源SGから接続配線W1などを介してセンサ電極SEにセンサ駆動信号Vwを与えるかどうかを切替える。スイッチSW2は、接続配線W1と、演算増幅器AMPの非反転入力端子との間に接続されている。スイッチSW2は、検出信号Vrを上記非反転入力端子に入力するかどうかを切替える。
【0059】
上記のような検出器DTを利用する場合、まず、スイッチSW1をオンにし、スイッチSW2をオフにし、接続配線W1などを介してセンサ電極SEにセンサ駆動信号Vwを書き込む。次いで、スイッチSW1をオフにした後、スイッチSW2をオンにし、センサ電極SEから接続配線W1などを介して取り出した検出信号Vrを上記非反転入力端子に入力する。積分器INは、入力された電圧(検出信号Vr)を時間で積分する。これにより、積分器INは、入力された電圧に比例した電圧を出力信号Voutとして出力することができる。その後、リセットスイッチRSTをオフにすることにより、コンデンサCONの電荷は放出され、出力信号Voutの値はリセットされる。
【0060】
本実施形態の検出原理は接続配線W1を介してセンサ電極SEにセンサ駆動信号Vwを書き込み、検出信号Vrを読み取る自己容量静電方式を一例として示したが、検出原理はこれに限定されない。
【0061】
1−5.第二の対向電極の構造について
図9に第二の対向電極を有する指紋センサの概略断面図の一例を示す。第二のガラス基板SUB2の第一の面7、すなわち第一のガラス基板SUB1に近い方の面に、センサ電極SEに対向する第二の対向電極CE2が形成される。第二の対向電極CE2はガード電極として機能し、好ましくは上述したアクティブガード電位が供給される。センサ電極SEの上にガラス基板を配置すると、センサ電極SEと指の間の距離が遠くなりセンサ電極SEの検出感度が低下しやすいが、指が近接または接触する側の基板すなわち第二のガラス基板SUB2の上に第二対向電極CE2を配置してアクティブガード電位と同様に、駆動信号と同一の位相及び振幅を有する電位を印加する。を印加することでセンサ電極SEから発生する駆動信号の電界を第二のガラス基板SUB2の上方に増幅させ指紋センサの検出感度を向上させる効果がある。
【0062】
また、ガラス基板を挟むとセンサ電極SEと指の間の距離が遠くなり、第二のガラス基板SUB2上の指紋の凹凸の凹の部分と凸の部分までのセンサ電極SEからの距離が異なるために検出信号を算出した際に得られる指紋データがぼやけることがあるが、このような第二対向電極CE2を配置しアクティブガード電位と同様に、駆動信号と同一の位相及び振幅を有する電位を供給することでセンサの信号強度を向上させることができるのでデータのぼやけを改善できる。第二の対向電極CE2に供給される電位は駆動信号と同一の電位であることが好ましい。
【0063】
第二の対向電極CE2はITOで形成されるが、これに限定されず金属膜であってもよい。第二の対向電極CE2は、導電経路6を介して、センサ回路接続配線5に接続されている。導電経路6は、銀ペーストや導電テープなどである。センサ回路3は、第一のガラス基板SUB1上に形成されており、センサ回路接続配線5に接続されている。第二の対向電極CE2にはセンサ回路接続配線5を通してセンサ回路3から駆動信号が供給される。しかしこのような導通経路に限定されず例えば第二のガラス基板SUB2上に駆動信号供給回路を形成してもよい。
【0064】
図10図9の変形例を示す。本変形例では第二のガラス基板SUB2の第二の面8、すなわち第一のガラス基板と反対側の方の面に、センサ電極SEに対向する第二の対向電極CE2が形成される。このように第二のガラス基板SUB2の第二の面8に形成された第二の対向電極CE2は、より指に近い場所で駆動信号の電界を増幅することができるので指紋センサの検出感度や精度を向上させる効果が高い。
【0065】
図11に第二の対向基板CE2の平面図を示す。第二の対向電極CE2は第二のガラス基板SUB2の上に平面視で重畳し、かつセンサ電極SEに重畳しないよう各センサ電極SEの周辺を取り囲むパターンに形成されている。第二の対向電極CE2は検出領域AAを囲んで額縁領域PAにも形成され額縁領域PAの第二の対向電極CE2の電極幅は検出領域AA内の第二の対向電極CE2の電極幅よりも広くなっている。このようなパターン形状とすることでセンサ電極SEから発生される駆動信号を遮蔽せずに駆動信号を増幅できる。ただし第二の対向電極CE2のパターン形状はこれに限定されるものではない。
【0066】
センサ回路接続配線5はコネクタ9に接続され、コネクタ9を介してセンサ回路3に接続される。第二の対向電極CE2を駆動する方法はこれに限定されずコネクタ9を介してフレキシブル基板などの駆動回路から第二の対向電極CE2を駆動してもよい。
【0067】
1−6.第二のガラス基板上のセンサ駆動電極について
図12に第二のガラス基板SUB2上に配置されるセンサ駆動電極SDEの断面図の一例を示す。図12では第二のガラス基板SUB2の第一の面7(第一のガラス基板SUB1に近い方の面)にセンサ駆動電極SDEが形成されている。
【0068】
センサ駆動電極SDEは導電経路6によりセンサ回路接続配線5に接続されている。センサ駆動電極SDEにはセンサ回路接続配線5を介してセンサ回路3から駆動信号を供給することができる。しかしこれに限定されず第二のガラス基板上に駆動信号供給電源を配置してもよい。
【0069】
センサ駆動電極SDEから駆動信号が送信され、指を介してセンサ電極SEは前記駆動信号を受信信号として受信する。この受信信号を基に指紋センサに近接または接触した指紋を認識できる。すなわちこの場合のセンサ電極SEは検出電極として機能する。
【0070】
図13図12の変形例を示す。図13ではセンサ駆動電極SDEが第二のガラス基板SUB2の第二の面8に形成されている。この変形例はセンサ駆動電極SDEが指に近くなるので指紋センサの検出感度が向上する。
【0071】
図14に第二のガラス基板上のセンサ駆動電極SDEの平面図を示す。センサ駆動電極SDEは指紋センサ1の額縁領域PAに検出領域AAを取り囲むように形成されている。
センサ駆動電極SDEはITO、IZO、ZnOあるいは金属膜等の材料により形成できる。
【0072】
次に図15に本実施形態の検出原理の一例を示す。センサ駆動電極SDEを駆動電極とし、センサ電極SEを検出電極として指紋を検出する方法の一例としてRF方式が挙げられる。先に述べた静電容量方式は、指Fの表面の凹凸による容量変化の違いにより指紋を検出するものであるが、RF方式は指の表皮のさらに奥の伝導性を持った真皮に高周波数の駆動信号を送信し、真皮細胞により生じた電界を検出信号として検出するものである。図15ではセンサ駆動電極SDEより高周波のセンサ駆動信号Vwが送信され、センサ駆動信号Vwに指Fの真皮細胞の微細構造等の情報を持った電界による変化が追加された検出信号Vrを検出電極(ここではセンサ電極SE)が受信する。しかしセンサ駆動電極SDEとセンサ電極SEとを用いて指紋のような微細構造を検出する原理としてはこれに限定されるものではない。
【0073】
1−7.指紋センサの駆動方法について
図16は本実施形態の指紋センサの駆動方法を示すための回路図の一例である。図16では、図示されない制御部CUの制御のもと、制御線駆動回路CDは、第一制御線C1及び第二制御線C2に対してオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)を同時に与え、第一制御線C1及び第二制御線C2以外の制御線C3、C4に対してオフレベルの駆動信号CS(電源電圧Vss)を与える。
【0074】
この時オンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)は制御線Cの選択信号であり、オフレベルの駆動信号CS(電源電圧Vss)は制御線Cの非選択信号である。これにより、1行目と2行目の検出スイッチDSは導通状態となる。また、信号線駆動回路MUにおいては、第二制御スイッチCSW2及び第三制御スイッチCSW3を導通状態とし、第一制御スイッチCSW1及び第四制御スイッチCSW4を非導通状態とする。第6制御スイッチCSW6に関しても非導通状態とする。
【0075】
これにより、1行目と2行目のセンサ電極SEのうち、斜線を付した4個の隣り合うセンサ電極SEが電気的に束ねられて選択された状態となる。センサ駆動信号Vwは、第一乃至第8信号線S1乃至S8のうち、第二信号線S2、第三信号線S3、第六信号線S6、及び第七信号線S7に与えられる。これにより、1本の接続配線W1を介し、それぞれ束ねられた4個のセンサ駆動電極SEに対して、一括して、センサ駆動信号Vwの書込みと、検出信号Vrの読取りとを行なうことができる。
【0076】
続くセンシング期間において、例えば、信号線駆動回路MUが第二制御スイッチCSW2及び第三制御スイッチCSW3を導通状態とし、第一制御スイッチCSW1及び第四制御スイッチCSW4、第六制御スイッチCSW6を非導通状態とすることで、4個の隣り合うセンサ電極SEの電気的な束をそれぞれ信号線一本分右にずらすことができる。このように、複数のセンサ電極SEを所定のピッチでずらしながら検出する動作を繰り返し、得られた出力信号を足し合わせて算出することによって、高解像度かつぼやけの少ない指紋データが得られる。
【0077】
接続配線W1の先は図示されない制御部CUに接続されている。制御部CUは各制御信号や選択信号を制御し、検出信号の検出回路及び出力結果の演算回路、駆動信号の供給電源、検出信号のデジタル化などを行うAFE(アナログフロントエンド)等を含んでいてもよい。
【0078】
図17に第一の対向電極と第二の対向電極を含む静電容量方式の指紋センサの駆動方法について示す。図17において、各センサ電極SEは、信号線S1〜S2に接続されるスイッチング素子DS1a〜6aと、補助配線A1、A2とに接続されるスイッチング素子DS1b〜6bとにそれぞれ接続されている。制御線駆動回路CDは制御線Cにオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)またはオフレベルの駆動信号CS(電源電圧Vss)を供給する。図17の回路においては、制御線駆動回路CDはオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)を一行ずつずらしながら次の行の制御線Cに供給して、駆動対象の制御線Cを選択し、選択されない制御線Cにはオフレベルの駆動信号CS(電源電圧Vss)が供給される。それぞれの制御線Cには一行のラインに属する複数のセンサ電極SEに接続された各スイッチング素子が接続されている。オンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)が供給された制御線Cに接続されたスイッチング素子DS3a、DS4aはセンサ電極SEと信号線S1、S2とを導通し、かつスイッチング素子DS3b、DS4bはセンサ電極SEと補助配線A1、A2とを非導通にする。オフレベルの駆動信号CS(電源電圧Vss)が供給された制御線Cに接続されたスイッチング素子DS1a、DS2a、DS5a、DS6aはセンサ電極SEと信号線S1、S2とを非導通にし、かつスイッチング素子DS1b、DS2b、DS5b、DS6bはセンサ電極SEと補助配線A1、A2とを導通する。
【0079】
なお図17では信号線Sには信号線駆動回路MUを介してセンサ駆動信号Vwが供給されている。補助配線Aには信号線駆動回路MUを介して、制御部CUからアクティブガード電位Vaが供給されている。すなわちオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)が印加される制御線Cに属するセンサ電極SEには信号線駆動回路MUを介してセンサ駆動信号Vwが供給され、かつ検出信号Vrが出力される。オフレベルの駆動信号CS(電源電圧Vss)が印加される制御線Cに属するセンサ電極SEには信号線駆動回路MUを介してアクティブガード電位Vaが供給される。
【0080】
図17の右図のタイミングチャートでは制御線Cn、Cn+1、Cn+2にタイミングをずらしてオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)が供給され、選択されるセンサ電極SEの行が一行ずつずらして駆動するようになっている。図17の左図は、制御線Cn+1が選択されているときの接続状態(右図の点線で囲まれたタイミングの接続状態)を示しており、制御線Cn+1にオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)が供給され、隣り合う2つのセンサ電極SEのグループSEn+1が選択されているので、信号線駆動回路MUを介して、制御部CUからセンサ電極SEn+1にセンサ駆動信号Vwが供給され、センサ電極SEnとセンサ電極SEn+2にはガード信号Vaが供給される。図17では図示されない第一の対向電極CE1はセンサ電極SEに対向して検出領域AAの全面に重畳するように配置されている。第二の対向電極CE2は検出領域AA及び額縁領域PAのセンサ電極SEに重畳しない領域に重畳して、センサ電極SEの外周に沿って配置されている。第一の対向電極CE1及び第二の対向電極CE2には、いずれかの制御線Cの指紋センサ検出期間全ての期間にわたってセンサ駆動信号Vwと同一の位相及び振幅を有するアクティブガード電位Vaがセンサ駆動信号Vwと同期して供給されている。
【0081】
図18にセンサ駆動電極を含むRF方式の指紋センサの駆動方法について示す。図18において、各センサ電極SEは、信号線S1〜S2に接続されるスイッチング素子DS1a〜6aにそれぞれ接続されている。
【0082】
スイッチング素子DS1a〜DS6aはn型薄膜トランジスタを含む。制御線駆動回路CDは制御線Cにオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)またはオフレベルの駆動信号CS(電源電圧Vss)を供給する。図18の回路においては、制御線駆動回路CDはオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)を一行ずつずらしながら次の行の制御線Cに供給して、駆動対象の制御線を選択し、選択されない制御線にはオフレベルの駆動信号CS(電源電圧Vss)が供給される。
【0083】
それぞれの制御線Cには一行のラインに属する複数のセンサ電極SEに接続された各スイッチング素子が接続されている。オンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)が供給された制御線Cに接続されたスイッチング素子DS3a、DS4aはセンサ電極SEと信号線S1、S2とを導通し、オフレベルの駆動信号CS(電源電圧Vss)が供給された制御線Cに接続されたスイッチング素子DS1a、DS2a、DS5a、DS6aはセンサ電極SEと信号線S1、S2とを非導通にする。センサ電極SEは信号線Sを介して信号線駆動回路MU及び制御部CUに対して検出信号Vrを出力する。
【0084】
図18の右図のタイミングチャートでは制御線Cn、Cn+1、Cn+2にタイミングをずらしてオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)が供給され、選択されるセンサ電極SEの行が一行ずつずらして検出するようになっている。図18の左図は、制御線Cn+1が選択されているときの接続状態(右図の点線で囲まれたタイミングの接続状態)を示しており、制御線Cn+1にオンレベルの駆動信号CS(電源電圧Vdd)が供給され、隣り合う2つのセンサ電極SEのグループSEn+1が選択されているので、信号線駆動回路MUを介して、センサ電極SEn+1から制御部CUに検出信号Vrが出力される。
【0085】
図18ではセンサ駆動電極SDEは額縁領域PAに沿って配置されている。センサ駆動電極SDEには、いずれかの制御線Cの指紋センサ検出期間の間の全ての期間にわたってセンサ駆動信号Vwが供給されている。
【0086】
選択された制御線に属するセンサ電極SEは、センサ駆動電極SDEから供給された電波を、指を介して受信し、信号線Sに検出信号Vrが出力される。制御部CUは、図示されない検出器DTを含み、センサ電極SEからの検出信号Vrを検出する。
【0087】
なお、図18では、選択されない制御線(オフレベルの駆動信号CSが供給される制御線)の行に属するセンサ電極SEは信号線Sに接続されない、すなわち検出回路に接続されないのでフローティング電位となっている。
【0088】
1−8.指紋センサの製造方法
本実施形態に関わる指紋センサは、2枚のガラス基板間にセンサ電極SEを挟み隙間なく接着する、すなわち封止材で封止したのち、ウェットエッチングによりガラス基板を溶解させガラス基板の膜厚を薄くすることができる。すなわち、2枚のガラス基板を封止材で封止した後に、エッチング液に浸漬してガラス基板を所望の膜厚に調節する。2枚のガラス基板の膜厚のそれぞれが100〜300μmの範囲となるように調節することが好ましい。エッチング工程の前にガラス基板間に液晶を充填しておくことができる。その後、必要に応じてガラス基板を切断する。この方法により薄型で検出感度の高い指紋センサを作ることができる。また小型で軽量な指紋センサを作ることができる。ガラス基板の膜厚を調整する方法としては公知の研磨方法やエッチング方法を用いることができる。ウェットエッチング法を用いるとガラスにクラックが入りにくいため好ましい。
【0089】
1−9.指紋センサモジュール
図19は本実施形態の指紋センサモジュール15の概略平面図の一例である。図20は本実施形態の指紋センサモジュール15の概略側面図の一例である。指紋センサモジュール15は、指紋センサ1に含まれる第一のガラス基板SUB1上に接続されたフレキシブル基板10と、フレキシブル基板10の上に配置された制御部CUとを備える。制御部CUは、外部機器と指紋センサとの間で信号やデータを送受信することが可能な部品である。制御部CUは例えば信号線Sより信号線駆動回路MUを介して出力された検出信号Vrを受信する検出器DTを含む。また制御部CUは検出信号Vrをデータ変換するAFE(アナログフロントエンド)を含んでもよい。
【0090】
制御部CUは第一のガラス基板SUB1の上に配置されていてもよい。また信号線駆動回路MUおよび制御線駆動回路CDが第一のガラス基板SUB1上になくフレキシブル基板10上に配置された制御部CUに含まれていても良い。センサ電極SEに接続された信号線Sは、図示されない接続配線W1を介して、信号線駆動回路MUから制御部CUに接続されている。
【0091】
指紋センサモジュール15は、フレキシブル基板10上に配置された制御部CUを介して、指紋センサモジュール15を例えばパソコン、携帯電話、タブレット、生体認証機能付カード等の電子機器に内蔵させるときに、制御部CUと電子機器のOS(オペレーションシステム)やアプリケーションプロセッサとの間で任意の選択信号、制御信号、同期信号をやりとりし、OSから指紋センサを制御することが容易である。また、制御部CUを介して検出器DTから検出された検出データを、電子機器の例えばアプリケーションプロセッサに送信し、検出データから所定の指紋データへの画像変換、データ補正処理、任意の認証システムやソフトウェアとの関連付けを行うことが容易である。制御部CUは指紋センサモジュール15が内蔵される表示装置の表示回路制御ドライバや指紋センサ1が内蔵されるタッチパネル(指紋センサよりも大型のタッチパネル)のタッチ検出ドライバ等と信号の授受を行いモジュール間の同期や検出データの処理を行ってもよい。このように薄型化、小型化され、耐久性の高い指紋センサモジュール15は、あらゆる電子機器に容易に組み込み可能であり、電子機器の中に直接指紋センサを一体化させて作りこむよりも製造コストが低く汎用性に優れる。
【0092】
1−10.加飾層
本発明に係る指紋センサにはさらに加飾層が含まれていても良い。
【0093】
図21に本実施形態に係る加飾層の断面図の一例を示す。図21では第二のガラス基板SUB2とオーバーコート層OCの間に加飾層16が第二のガラス基板SUB2の全面に重畳して配置される。加飾層がオーバーコート層を兼ねていてもよい。
【0094】
図22は本実施形態に係る加飾層の断面図の別の一例である。図22に示される通り、加飾層16は額縁領域PAにのみ重畳して配置されてもよい。
加飾層16は任意の着色層を用いることができる。加飾層16はブラックマトリクスであってもよい。
【0095】
図23に額縁領域PAに形成されたダミー電極DEの平面図を示す。ダミー電極DEはセンサ電極SEと同じ層で形成されていてもよい。ダミー電極DEが額縁領域PAに配置された加飾層16と重畳するように形成されていてもよい。ダミー電極DEには、アクティブガード電位が供給されていてもよい。
【0096】
1−11.その他の機能
本発明に係る指紋センサは、指紋検出に限らず、生体の微細構造を検出する小型かつ薄型のセンサ用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0097】
1…指紋センサ、SE…センサ電極、SUB1…第一のガラス基板、SUB2…第二のガラス基板、MU…信号線駆動回路、CD…制御線駆動回路、AA…検出領域、PA…額縁領域、S…信号線、C…制御線、F…指、T…第二のガラス基板の端部、D…段差、SP…スペーサ、OC…オーバーコート(保護)層、AL…配向膜、LQ…液晶層、2…絶縁膜、CE1…第一の対向電極、PLN…平坦化膜、3…センサ回路、SGE…補助ガード電極、11…第一絶縁膜、SC1…第一半導体層、12…第二絶縁膜、A1…第一補助配線、CL1…第一導電層、13…第三絶縁膜、14…第四絶縁膜、SL…封止材、4…第一のガラス基板上回路、DT…検出器、W,W1…接続配線、IN…積分器、RST…リセットスイッチ、SW1…スイッチ、SW2…スイッチ、AMP…演算増幅器、CON…コンデンサ、Vw…センサ駆動信号、Vr…検出信号、SG…信号源、Vout…出力信号、CE2…第二の対向電極、5…センサ回路接続配線、6…導電経路、3…センサ回路、7…第二のガラス基板の第一の面、8…第二のガラス基板の第二の面、9…コネクタ、SDE…センサ駆動電極、CS(Vdd)…オンレベルの駆動信号、CS(Vss)…オフレベルの駆動信号、DS…検出スイッチ、CSW…制御スイッチ、Va…アクティブガード電位、15…指紋センサモジュール、16…加飾層、10…フレキシブル基板、CU…制御部、DE…ダミー電極
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