特許第6878070号(P6878070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878070
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】汚泥処理システムおよび汚泥処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   C02F11/00 ZZAB
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-54893(P2017-54893)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-153788(P2018-153788A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】胡 錦陽
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−168557(JP,A)
【文献】 特開昭50−031087(JP,A)
【文献】 特開平09−099298(JP,A)
【文献】 特開2004−248618(JP,A)
【文献】 米国特許第6884351(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0162923(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102583917(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00
C02F 1/00
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚泥およびヌクレアーゼ含有水を撹拌混合して前記有機性汚泥を可溶化処理する可溶化処理槽と、
可溶化処理した有機性汚泥を消化処理する消化槽と、を備え、且つ
ヌクレアーゼ含有水を貯留するヌクレアーゼ含有水貯留槽、および前記ヌクレアーゼ含有水貯留槽内のヌクレアーゼ含有水を前記可溶化処理槽に送る送水手段、又は
ヌクレアーゼを分泌する生体触媒または細胞表面にヌクレアーゼを提示した生体触媒を培養する生体触媒培養槽、および前記生体触媒培養槽内のヌクレアーゼ含有水を前記可溶化処理槽に送る送水手段と、を備え、更に
前記送水手段を制御する制御手段と、を備える汚泥処理システムであって、
前記制御手段が、前記可溶化処理槽に送られる有機性汚泥の汚泥濃度および流量に基づいて、前記可溶化処理槽に供給するヌクレアーゼ含有水中のヌクレアーゼが、1mgの有機性汚泥(揮発性浮遊性物質(VSS)換算)に対して、1〜5Uとなるように、または、ヌクレアーゼ含有水中の細胞表面にヌクレアーゼを提示した生体触媒が、1mgの有機性汚泥(揮発性浮遊性物質(VSS)換算)に対して、細胞数で1.0×10〜3.0×10となるように、前記送水手段を制御するものである汚泥処理システム。
【請求項2】
有機性汚泥およびヌクレアーゼ含有水を撹拌混合して前記有機性汚泥を可溶化処理する可溶化処理工程と、
可溶化処理した有機性汚泥を消化処理する消化処理工程と、を備え
前記可溶化処理工程が、1mgの有機性汚泥(揮発性浮遊性物質(VSS)換算)に対して、ヌクレアーゼを1〜5U含むヌクレアーゼ含有水または細胞表面にヌクレアーゼを提示した生体触媒を細胞数で1.0×10〜3.0×10含むヌクレアーゼ含有水のいずれか一方と、有機性汚泥とを撹拌混合する工程である汚泥処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、汚泥処理システムおよび汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水処理場における有機性排水の処理では、一般に、好気性微生物が有機性排水を好気処理する、活性汚泥法による生物処理が行われる。活性汚泥法では、過剰に増殖した好気性微生物が、余剰汚泥として生成する。この余剰汚泥は、排水処理場の最初沈殿池で沈殿した有機物等とともに、有機性汚泥として汚泥処理施設に送られて処理される。
【0003】
汚泥処理施設に送られた有機性汚泥は、消化槽で消化処理されてバイオガスと消化汚泥とに分解される。バイオガスは、全量の60%〜70%がメタンガスであり、残部が二酸化炭素等である。近年では、バイオガスに含まれるメタンガスを、発電機やボイラの燃料として使用して、エネルギーとして回収することが行われている。しかしながら、消化処理における有機性汚泥のメタンガス変換効率が30%〜35%程度と低いという課題がある。また、消化処理に時間がかかり、消化槽での滞留時間が20日〜30日と長期間であること等の課題がある。
【0004】
そのため、消化処理における有機性汚泥のメタンガス変換効率を向上させるために、有機性汚泥を低分子化、可溶化する可溶化処理を行ってから、消化処理が行われている。有機性汚泥を低分子化する可溶化処理技術としては、例えば、オゾン、アルカリ剤、超音波破砕による可溶化処理技術が知られている。しかしながら、これらの技術はいずれも、多大なエネルギー投入、薬剤投入、付帯設備の導入等が必要であるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−169329号公報
【特許文献2】特開2001−327998号公報
【特許文献3】特開2008−264650号公報
【特許文献4】特開2004−8892号公報
【特許文献5】特開2015−100764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、多大なエネルギーの投入や大掛かりな付帯設備の導入をすることなく、有機性汚泥の消化処理効率を向上できる汚泥処理システムおよび汚泥処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の汚泥処理システムは、可溶化処理槽と、消化槽と、を持つ。
前記可溶化処理槽は、有機性汚泥およびヌクレアーゼ含有水を撹拌混合して前記有機性汚泥を可溶化処理する。
前記消化槽は、可溶化処理した有機性汚泥を消化処理する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態における汚泥処理システムの概要図。
図2】有機性汚泥に含まれるフロックの構造の一例を示す説明図。
図3】様々な酵素を用いて可溶化処理を行った場合の、消化処理工程におけるバイオガス発生量を示す図。
図4】第2の実施形態における汚泥処理システムの概要図。
図5】第3の実施形態における汚泥処理システムの概要図。
図6】第3の実施形態に好適に用いられる生体触媒の説明図。
図7】第4の実施形態における汚泥処理システムの概要図。
図8】ヌクレアーゼ添加量とバイオガス発生量との関係を示す図。
図9】第5の実施形態における汚泥処理システムの概要図。
図10】生体触媒添加量とバイオガス発生量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の汚泥処理システムおよび汚泥処理方法を、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態である汚泥処理システムを示す図である。
本実施形態の汚泥処理システム100は、可溶化処理槽2と、消化槽3と、を備える。
汚泥処理システム100は、図1に示すように、ヌクレアーゼ含有水貯留槽1と、脱水装置4と、を備えていてもよい。
【0011】
ヌクレアーゼ含有水貯留槽1は、ヌクレアーゼ含有水が貯留されている槽である。なお、本実施形態においてヌクレアーゼ含有水とは、ヌクレアーゼを含有する水のことである。ヌクレアーゼ含有水貯留槽1は、ヌクレアーゼ含有水供給ライン50を介して可溶化処理槽2と接続されている。
【0012】
可溶化処理槽2は、図示略の排水処理施設から有機性汚泥送泥ライン51を介して送られた有機性汚泥と、ヌクレアーゼ含有水とを撹拌混合して、有機性汚泥を可溶化処理する槽である。なお、本実施形態において、可溶化処理とは、有機性汚泥に含まれる少なくとも一部を可溶化する処理である。
可溶化処理槽2は、有機性汚泥とヌクレアーゼ含有水とを撹拌混合するための、図示略の撹拌装置を備えている。撹拌装置としては、例えば、撹拌翼を回転させる攪拌機、ガス撹拌機等が挙げられる。また、可溶化処理槽2は、ヌクレアーゼ含有水中のヌクレアーゼが活性化するための手段を備えていることが好ましい。この手段としては、例えば、温度調整手段やpH調整手段が挙げられる。
【0013】
可溶化処理槽2は、有機性汚泥送泥ライン51を介して、図示略の排水処理施設と接続されている。また、可溶化処理槽2は、可溶化汚泥送泥ライン52を介して消化槽3と接続されている。
【0014】
消化槽3は、可溶化処理槽2から送泥された有機性汚泥を、嫌気性微生物によって、二酸化炭素やメタンガスを含むバイオガスと、消化汚泥とに分解させる、消化処理を行う槽である。消化槽3内の運転温度は、嫌気性微生物の消化処理が効率的に行われる温度である、37〜55℃であることが好ましい。そのため、消化槽3は、温度調整手段を備えていることが好ましい。
消化槽3は、消化汚泥送泥ライン53を介して脱水装置4と接続されている。また、消化槽3は、バイオガス送気ライン54を介して、消化槽3外にバイオガスを排出できるようになっている。
【0015】
脱水装置4は、消化槽3から送泥された消化汚泥を脱水して脱水汚泥と脱離液とに固液分離する槽である。なお、脱水装置4としては、例えば、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機、ロータリープレス脱水機、スクリュープレス脱水機、遠心分離脱水機、多重円板脱水機等が挙げられる。
脱水装置4は、図示略の脱水汚泥送泥ラインを介して、脱水装置4外に脱水汚泥を排出できるようになっている。また、脱水装置4は、図示略の脱離液送液ラインを介して、脱離液を脱水装置4外に排出できるようになっている。
【0016】
次に、本実施形態の汚泥処理システム100のそれぞれの構成要素の作用を説明すると共に、当該汚泥処理システム100を用いた汚泥処理方法について説明する。
【0017】
本実施形態の汚泥処理方法は、有機性汚泥およびヌクレアーゼを撹拌混合して可溶化処理する可溶化処理工程と、可溶化処理した有機性汚泥を消化処理する消化処理工程と、を有する。
【0018】
より詳細には、可溶化処理槽2で、有機性汚泥とヌクレアーゼ含有水とを撹拌混合して、有機性汚泥をヌクレアーゼの働きにより可溶化処理する可溶化処理工程と、消化槽3で、可溶化処理工程にて可溶化処理した有機性汚泥を消化処理して、消化汚泥およびバイオガスを得る消化処理工程と、を有する。
【0019】
また、本実施形態の汚泥処理方法は、脱水装置4で、消化処理工程で生じた消化汚泥を脱水して脱水汚泥および脱離液を得る脱水工程を有していてもよい。
【0020】
可溶化処理工程は、可溶化処理槽2で、排水処理施設から送られた有機性汚泥と、ヌクレアーゼ含有水貯留槽1から送られたヌクレアーゼ含有水とを撹拌混合して、有機性汚泥を可溶化処理する工程である。
【0021】
排水処理施設から汚泥処理設備に送られる有機性汚泥には、余剰汚泥が含まれている。この余剰汚泥は、微生物フロックが主な組成となっている。図2は、余剰汚泥に含まれるフロックの構造を模式的に示した図である。図2に示すように、微生物フロックは、細胞質1a(炭水化物、タンパク質、核酸)、細胞膜2a(脂質)、細胞壁3a(ペプチドクリカン)、粘性物質4a(タンパク質、多糖類、核酸)で構成される。余剰汚泥中の微生物フロックは、微生物自身が分泌する粘性物質4aにより囲まれている。この粘性物質が微生物を囲むように微生物を守っている。粘性物質4aに囲まれた微生物は、嫌気性微生物が分解するのに時間がかかる。
【0022】
この粘性物質4aは主に、タンパク質、多糖類、核酸によって構成されている。そのため、核酸分解酵素であるヌクレアーゼが、この粘性物質4aを分解することができる。これにより、有機性汚泥に含まれる微生物フロックが可溶化処理される。
【0023】
可溶化処理槽2で可溶化処理された有機性汚泥は、可溶化汚泥送泥ライン52を介して消化槽3に送られる。
【0024】
消化処理工程は、消化槽3で、可溶化処理槽2から送られた有機性汚泥を消化処理して、消化汚泥とバイオガスとを得る工程である。可溶化処理された有機性汚泥は、消化槽3内に存在する嫌気性微生物の、加水分解菌および酸生成菌により、更なる低分子化と酸生成が行われ、酢酸等の低分子有機酸となる。この低分子有機酸が、消化槽3内に存在するメタン生成菌の働きにより、メタンガスに転換される。
【0025】
なお、消化処理工程における消化槽3の運転温度は、嫌気性微生物の活性温度である37〜55℃とすることが好ましい。
消化汚泥処理工程で生じた消化汚泥は、消化汚泥送泥ライン53を介して脱水装置4に送られる。一方、消化処理工程で生じたバイオガスは、図示略のバイオガス送気ラインを介して消化槽3外に排出される。
【0026】
脱水工程は、脱水装置4で、消化処理工程で生じた消化汚泥を脱水して、脱水汚泥および脱離液を得る工程である。
消化槽3から送られた消化汚泥は、脱水されて、脱水汚泥と脱離液とに分離する。脱水工程で生じた脱水汚泥は脱水汚泥送泥ラインを介して、図示略の乾燥装置に送られて乾燥された後、廃棄される。一方、脱離液は、脱離液送液ラインを介して、図示略の排水処理施設に送られて処理される。
【0027】
なお、上述した実施形態では、ヌクレアーゼ含有水供給ライン50を、ポンプを備える送水手段とし、この送水手段を制御する制御手段をさらに備えていてもよい。この場合、制御手段は、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の供給量が、適正供給量となるように、送水手段を制御するとよい。
【0028】
以上の構成によれば、有機性汚泥とヌクレアーゼ含有水とを撹拌混合する可溶化処理を行い、有機性汚泥を可溶化し、可溶化した有機性汚泥を消化処理するため、多大なエネルギーの投入や付帯設備の導入等をすることなく、有機性汚泥の消化処理効率を向上できる。そのため、有機性汚泥の消化処理におけるメタンガス変換効率を向上することができ、また、消化汚泥の生成量を低減できる。
【0029】
また、可溶化処理を行うことによって、有機性汚泥の消化処理効率が向上し、消化槽3における有機性汚泥の滞留時間を短縮することができる。さらに、有機性汚泥の消化処理効率が向上することにより、消化槽3の規模を縮小することが可能となる。
【0030】
また、ヌクレアーゼ含有水を使用して有機性汚泥を低分子化しているため、従来の低分子化技術(オゾン、超音波破砕、水熱処理等)に比べて、大掛かりな装置等が不要となる。これにより、大掛かりな装置等の導入に要するコストや運転コストを削減できる。
【0031】
また、有機性汚泥を低分子化するため、消化処理において、有機性汚泥の消化処理が効率的に行われる。すると、メタンガスの生成量が多くなるとともに、消化汚泥の生成量が少なくなる。これにより、最終処分する汚泥量を少なくすることができる。そのため、汚泥の最終処分に要する焼却等のコストを削減することができる。
【0032】
また、ヌクレアーゼを用いて、有機性汚泥を低分子化、可溶化しているため、ヌクレアーゼ以外の酵素を使用した場合に比べて、可溶化効率を向上させことができる。図3は、酵素添加による可溶化処理(可溶化処理)を行わない場合、可溶化処理にヌクレアーゼを使用した場合、その他の酵素を用いて可溶化処理を行った場合の、それぞれを消化処理して生成したバイオガス発生量を示す図である。可溶化処理は、それぞれの酵素と有機性汚泥とを、35℃で、30分撹拌混合して行った。また、消化処理は、それぞれ可溶化処理した有機性汚泥を、消化槽の運転温度を37〜55℃として行った。
なお、図3中のVSSとは、揮発性浮遊性物質(Volatile Suspended Solid)であり、有機性固形物の総量の目安となる指標である。
【0033】
図3から、ヌクレアーゼを使用して可溶化処理を行った場合が、バイオガス発生量が一番多くなっていることが分かる。これは、可溶化処理工程で使用する酵素としてヌクレアーゼを用いることによって、他の酵素を用いた場合と比べて、有機性汚泥の可溶化効率が向上し、消化処理効率が向上したためだと考えられる。これにより、ヌクレアーゼを使用して可溶化処理を行うことによって、有機性汚泥の可溶化効率を向上することができ、消化処理効率を向上できることが分かる。
【0034】
(第2の実施形態)
本実施形態の汚泥処理システムを、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、図1に示した汚泥処理システム100と同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する。
【0035】
図4の汚泥処理システム200は、汚泥処理システム100と同様に、可溶化処理槽2と、消化槽3と、を備える。
また、汚泥処理システム200は、第1生体触媒培養槽5と、送水手段20と、を備える。なお、送水手段20は、ポンプP1と、上澄み水送水ライン21と、を備える。
汚泥処理システム200は、図4に示すように、脱水装置4と、基質槽6と、を備えていてもよい。
【0036】
第1生体触媒培養槽5は、遺伝子組み換えによってヌクレアーゼ生産機能を持つ遺伝子情報を導入した宿主微生物(生体触媒)を培養する槽である。
【0037】
なお、宿主微生物としては、例えば、Pseudomonas alcaligenes、P.putida、P.dacunhae等のPseudomonas属のグラム陰性細菌;Gluconobacter melanogenes、G.oxydans等のGluconobacter属のグラム陰性細菌;Alcaligenes eutrophus等のAlcaligenes属のグラム陰性細菌;Acetobacter suboxydans等の酢酸菌;Escherichia coli、E.freundii、Enterobacter aerogenes等の大腸菌群細菌;Erwinia carotovora、Serratia marcescens、Protaminobacter rubrum、Proteus mirabilis等のその他のグラム陰性細菌などを挙げることができる。
また、Streptococcus faecalis、Leuconostoc mensenteroides、Lactobacillus delbruckii等の乳酸菌;Bacillus subtilis 、B. megaterium等のBacillus属のグラム陽性細菌;Clostridium acetobutylicum、C. beijerinckii等のClostridium属のグラム陽性細菌;Arthrobacter simplex等のArthrobacter属のグラム陽性細菌;Corynebacterium glutamicum、Brevibacterium ammoniagenes、B.flavum、Propionibacterium sp.等のその他のグラム陽性細菌などを挙げることができる。
さらに、Nocardia rhodocrous、Streptomyces phaeochromogenes、S.rimosus、S.roseochromogenes、S.tendae、S.rimosus等の放線菌、Saccharomyces sp.、Hansenula jadinii 、Candida tropicalis、Rhodotorula minuta等の酵母、Rhizopus nigricans、R.stolonofer、Curvularia lunata、Aspergillusochraceus、A.niger、Penicillium chrysogenum等の糸状菌などを挙げることができる。
また、上述した微生物の内、生体触媒として2種以上の異なる微生物を宿主微生物として用いてもよい。
【0038】
ヌクレアーゼ生産機能を持つ微生物としては、例えば、スタフィロコッカス属、アスペルギルス属等が挙げられる。これら微生物のヌクレアーゼ生産機能を持つ遺伝子情報が導入された宿主微生物は、ヌクレアーゼを生産する機能を有する。
【0039】
ヌクレアーゼ生産機能を持つ遺伝子情報が導入された宿主微生物は、所有している遺伝子情報を基に、ヌクレアーゼの生産を行う。この宿主微生物は、生産したヌクレアーゼを微生物外に分泌する。
【0040】
第1生体触媒培養槽5は、宿主微生物が好適に増殖するための手段を備えていることが好ましい。この手段としては、例えば、温度調整手段、pH調整手段、基質濃度制御手段、圧力制御手段、撹拌手段等が挙げられる。
【0041】
第1生体触媒培養槽5は、送水手段20の上澄み水送水ライン21を介して、可溶化処理槽2と接続されている。また、第1生体触媒培養槽5は、培地供給ライン55を介して基質槽6と接続されている。さらに、第1生体触媒培養槽5は、図示略の余剰微生物排出ラインを介して、過剰に増殖した宿主微生物を第1生体触媒培養槽5外に排出できるようになっている。
なお、第1生体触媒培養槽5は、過剰に増殖した微生物を、消化槽3で消化処理できるように、余剰汚泥送泥ラインを介して消化槽3と接続されていてもよい。
【0042】
基質槽6は、第1生体触媒培養槽5に供給するための培地が貯留されている槽である。培地としては、第1生体触媒培養槽5内の微生物を培養できるものであれば特に限定されないが、炭素源、窒素原、無機塩類等を含有するものであると好ましい。
炭素源としては、グルコース、フルクトース、シュークロース等の糖類;デンプン又はデンプン加水分解物等の炭水化物が挙げられる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機酸または有機酸のアンモニウム塩、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティーブリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕、大豆粕加水分解物、各種発酵菌体消化物等が挙げられる。
無機塩類としては、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル等が挙げられる。
基質槽6は、培地供給ライン55を介して第1生体触媒培養槽5と接続されている。
【0043】
送水手段20は、第1生体触媒培養槽5内の上澄み水を消化槽3に送水する手段である。なお、送水手段20は、ポンプP1と、上澄み水送水ライン21と、を備える。ポンプP1は、上澄み水送水ライン21の途中に設けられている。このポンプP1が作動すると、第1生体触媒培養槽5内の上澄み水が、上澄み水送水ライン21を介して可溶化処理槽2に送られる。
【0044】
次に、本実施形態の汚泥処理システム200のそれぞれの構成要素の作用を説明すると共に、当該汚泥処理システムを用いた汚泥処理方法について説明する。
【0045】
本実施形態の汚泥処理方法は、ヌクレアーゼ生産機能を有する宿主微生物(生体触媒)を培養する生体触媒培養工程と、ヌクレアーゼ含有水および有機性汚泥を撹拌混合して可溶化処理する可溶化処理工程と、可溶化処理した有機性汚泥を消化処理する消化処理工程と、を有する。
【0046】
より詳細には、第1生体触媒培養槽5で、ヌクレアーゼ生産機能を有する遺伝子を導入されて、ヌクレアーゼ生産機能を持つ宿主微生物(生体触媒)を培養する生体触媒培養工程と、可溶化処理槽2で、宿主微生物(生体触媒)が分泌したヌクレアーゼを含むヌクレアーゼ含有水および有機性汚泥を撹拌混合して、有機性汚泥をヌクレアーゼの働きにより可溶化処理する可溶化処理工程と、消化槽3で、可溶化処理した有機性汚泥を消化処理して、消化汚泥およびバイオガスを得る消化処理工程と、を有する。
【0047】
また、本実施形態の汚泥処理方法は、脱水装置4で、消化処理工程で生じた消化汚泥を脱水して脱水汚泥および脱離液を得る脱水工程と、基質槽6から第1生体触媒培養槽5に培地を供給する培地供給工程と、を有していてもよい。
以下、それぞれの工程のうち、第1の実施形態と同じものについては、省略または簡略する。
【0048】
微生物培養工程は、第1生体触媒培養槽5で、ヌクレアーゼ生産機能を有する遺伝子を導入されて、ヌクレアーゼ生産機能を持つ宿主微生物(生体触媒)を培養する工程である。遺伝子組み換えによってヌクレアーゼ生産機能を有する遺伝子情報を導入された宿主微生物は、所有している遺伝子情報を基に、ヌクレアーゼの合成を行う。この宿主微生物は、生産したヌクレアーゼを微生物外に分泌する。
【0049】
次に、分泌したヌクレアーゼと、微生物とを固液分離する。この方法としては、例えば、重力沈殿やろ過を用いた方法が挙げられる。固液分離して得たヌクレアーゼを含む上澄み水(ヌクレアーゼ含有水)は、送水手段20によって消化槽3に送られる。
【0050】
培地供給工程は、基質槽6に貯留されている培地を、第1生体触媒培養槽5に供給する工程である。基質槽6内の培地は、培地供給ラインを介して第1生体触媒培養槽5に送られる。第1生体触媒培養槽5に供給される培地の量は、第1生体触媒培養槽5内の生体触媒量、基質濃度、供給する培地の種類等によって、適宜、決定するとよい。
【0051】
以上の構成によれば、有機性汚泥とヌクレアーゼ含有水とを撹拌混合する可溶化処理を行い、有機性汚泥を可溶化し、可溶化した有機性汚泥を消化処理するため、多大なエネルギーの投入や付帯設備の導入等をすることなく、有機性汚泥の消化処理効率を向上できる。そのため、有機性汚泥の消化処理におけるメタンガス変換効率を向上することができ、また、消化汚泥の生成量を低減できる。
【0052】
また、有機性汚泥とヌクレアーゼとを撹拌混合して、有機性汚泥を低分子化させるため、消化処理において、有機性汚泥の消化処理が効率的に行われる。これにより、消化汚泥の生成量が少なくなり、最終処分する汚泥量を少なくすることができる。すると、汚泥の最終処分に要する焼却等のコストを削減することが可能となる。
【0053】
また、ヌクレアーゼ含有水を使用して有機性汚泥を低分子化しているため、従来の低分子化技術(オゾン、超音波破砕、水熱処理等)に比べて、大掛かりな装置等が不要となる。これにより、大掛かりな装置等の導入に要するコストや運転コストを削減できる。
【0054】
また、ヌクレアーゼ生産機能を有する遺伝子を導入した宿主微生物にヌクレアーゼを分泌させているため、市販の高価なヌクレアーゼが不要となる。これにより、ヌクレアーゼによる可溶化処理に要するコストを削減することが可能となる。
【0055】
(第3の実施形態)
図5の汚泥処理システム300は、汚泥処理システム100と同様に、可溶化処理槽2と、消化槽3と、を備える。
また、汚泥処理システム300は、第2生体触媒培養槽8と、送水手段22と、を備える。なお、送水手段22は、ポンプP2と、生体触媒送水ライン23と、を備える。
汚泥処理システム300は、図5に示すように、脱水装置4と、基質槽9と、を備えていてもよい。
【0056】
第2生体触媒培養槽8は、遺伝子組み換えによって、細胞表面にヌクレアーゼを提示(アーミング)した宿主微生物(生体触媒)を培養する槽である。
【0057】
第2生体触媒培養槽8は、宿主微生物が好適に増殖するための手段を備えていることが好ましい。この手段としては、例えば、温度調整手段、pH調整手段、基質濃度制御手段、圧力制御手段、撹拌手段等が挙げられる。
【0058】
第2生体触媒培養槽8は、送水手段22の生体触媒送水ライン23を介して、可溶化処理槽2と接続されている。また、第2生体触媒培養槽8は、培地供給ライン56を介して基質槽9と接続されている。さらに、第2生体触媒培養槽8は、図示略の余剰微生物排出ラインを介して、過剰に増殖した宿主微生物を第2生体触媒培養槽8外に排出できるようになっている。
なお、過剰に増殖した宿主微生物を、消化槽3で消化処理できるように、第2生体触媒培養槽8は、余剰汚泥送泥ラインを介して消化槽3と接続されていてもよい。
【0059】
基質槽9は、第2生体触媒培養槽8に供給するための培地が貯留されている槽である。基質槽9は、培地供給ライン56を介して第2生体触媒培養槽8と接続されている。
【0060】
送水手段22は、第2生体触媒培養槽8の宿主微生物を含むヌクレアーゼ含有水を消化槽3に送水する送水手段である。なお、送水手段22は、ポンプP2と、生体触媒送水ライン23と、を備える。ポンプP2は、生体触媒送水ライン23の途中に設けられている。このポンプP2が作動すると、第2生体触媒培養槽8内のヌクレアーゼ含有水が、生体触媒送水ライン23を介して可溶化処理槽2に送られる。
【0061】
次に、本実施形態の汚泥処理システム300のそれぞれの構成要素の作用を説明すると共に、当該汚泥処理システムを用いた汚泥処理方法について説明する。
【0062】
本実施形態の汚泥処理方法は、細胞表面にヌクレアーゼを提示した宿主微生物(生体触媒)を培養する生体触媒培養工程と、細胞表面にヌクレアーゼを提示した宿主微生物(生体触媒)を含むヌクレアーゼ含有水および有機性汚泥を撹拌混合して可溶化処理する可溶化処理工程と、可溶化処理した有機性汚泥を消化処理する消化処理工程と、を有する。
【0063】
より詳細には、第2生体触媒培養槽8で、ヌクレアーゼを細胞表面に提示した宿主微生物(生体触媒)を培養する生体触媒培養工程と、可溶化処理槽2で、細胞表面にヌクレアーゼを提示した宿主微生物(生体触媒)を含むヌクレアーゼ含有水および有機性汚泥を撹拌混合して、有機性汚泥をヌクレアーゼの働きにより低分子化させる可溶化処理工程と、消化槽3で、低分子化させた有機性汚泥を消化処理して、消化汚泥およびバイオガスを得る消化処理工程と、を有する。
【0064】
また、本実施形態の汚泥処理方法は、脱水装置4で、消化処理工程で生じた消化汚泥を脱水して脱水汚泥および脱離液を得る脱水工程と、基質槽9から第2生体触媒培養槽8に培地を供給する培地供給工程と、を有していてもよい。
以下、それぞれの工程のうち、第1の実施形態と同じものについては、省略または簡略する。
【0065】
微生物培養工程は、遺伝子組み換えによって、細胞表面にヌクレアーゼを提示した宿主微生物(生体触媒)を培養する工程である。
【0066】
図6に、第3の実施形態に好適に用いられる生体触媒の説明図を示す。
図6は、細胞表面にヌクレアーゼを提示した宿主微生物を示す図である。図6中の1bは宿主微生物であり、2bはヌクレアーゼである。細胞表面にヌクレアーゼを提示させる方法としては、例えば、遺伝子組み換えによって、ヌクレアーゼと細胞表層提示タンパクをコードしている遺伝子とを、特定の微生物に導入する方法が挙げられる。遺伝子の発現により、微生物の細胞内からヌクレアーゼが合成された後、ヌクレアーゼが細胞表面に提示される。ヌクレアーゼを提示した宿主微生物は、ヌクレアーゼによる有機性汚泥の可溶化効果を有する、生体触媒となる。
【0067】
第2生体触媒培養槽8内の細胞表面にヌクレアーゼを提示した宿主微生物は、送水手段22によって、消化槽3に送られる。
【0068】
培地供給工程は、基質槽9に貯留されている培地を、第2生体触媒培養槽8に供給する工程である。基質槽9内の培地は、培地供給ラインを介して第2生体触媒培養槽8に送られる。第2生体触媒培養槽8に供給される培地の量は、第2生体触媒培養槽8内の宿主微生物の量、基質濃度、供給する培地の種類等によって、適宜、決定するとよい。
【0069】
以上の構成によれば、有機性汚泥とヌクレアーゼ含有水とを撹拌混合する可溶化処理を行い、有機性汚泥を可溶化し、可溶化した有機性汚泥を消化処理するため、多大なエネルギーの投入や付帯設備の導入等をすることなく、有機性汚泥の消化処理効率を向上できる。そのため、有機性汚泥の消化処理におけるメタンガス変換効率を向上することができ、また、消化汚泥の生成量を低減できる。
【0070】
また、有機性汚泥とヌクレアーゼとを撹拌混合して、有機性汚泥を低分子化させるため、消化処理において、有機性汚泥の消化処理が効率的に行われる。これにより、消化汚泥の生成量が少なくなり、最終処分する汚泥量を少なくすることができる。すると、汚泥の最終処分に要する焼却等のコストを削減することが可能となる。
【0071】
また、ヌクレアーゼを細胞表面に提示した宿主微生物(生体触媒)によって、消化汚泥を可溶化処理しているため、市販の高価なヌクレアーゼが不要となる。これにより、ヌクレアーゼによる可溶化処理に要するコストを削減することが可能となる。
【0072】
また、ヌクレアーゼ分泌機能を有する宿主微生物(生体触媒)を用いた場合と比べて、宿主微生物とヌクレアーゼ含有水とを固液分離する必要がないため、第2生体触媒培養槽8の運転管理を簡略化できる。さらに、ヌクレアーゼを高濃度に集積することができるため、第2生体触媒培養槽8の容積を小さくすることができる。これにより、大きな設置スペースの確保や設備導入コストを削減することができる。
【0073】
(第4の実施形態)
図7の汚泥処理システム400は、汚泥処理システム100と同様に、可溶化処理槽2と、消化槽3と、を備える。
また、汚泥処理システム400は、第1生体触媒培養槽5と、送水手段20と、制御手段30と、を備える。なお、送水手段20は、ポンプP1と、上澄み水送水ライン21と、を備える。また、制御手段30は、制御装置31と、濃度計32と、流量計33と、を備える。
汚泥処理システム400は、図4に示すように、脱水装置4と、基質槽6と、を備えていてもよい。
なお、以下の説明では、第2の実施形態と同じものについては、省略または簡略する。
【0074】
制御手段30の濃度計32は、図示略の排水処理施設から有機性汚泥送泥ライン51を介して可溶化処理槽2に送られる、有機性汚泥中の汚泥濃度(浮遊物質(SS)濃度)を計測する計測器である。濃度計32は、制御装置31に接続されている。
【0075】
制御手段30の流量計33は、図示略の排水処理施設から有機性汚泥送泥ライン51を介して消化槽3に送られる、有機性汚泥の流量を計測する計測器である。流量計33は、制御装置31に接続されている。
【0076】
制御手段30の制御装置31は、濃度計32から送られる有機性汚泥中の汚泥濃度と、流量計33から送られる有機性汚泥の流量とに基づいて、送水手段20が第1生体触媒培養槽5から消化槽3に供給するヌクレアーゼ含有水の供給量を制御する装置である。制御装置31は、図示略の演算部および制御部を備える。
【0077】
制御装置31は、第1生体触媒培養槽5から可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の供給量を決定し、その供給量となるように、送水手段20のポンプP1を制御する。
【0078】
次に、本実施形態の汚泥処理システム400のそれぞれの構成要素の作用を説明すると共に、当該汚泥処理システムを用いた汚泥処理方法について説明する。
【0079】
本実施形態の汚泥処理方法は、ヌクレアーゼ生産機能を有する宿主微生物(生体触媒)を培養する生体触媒培養工程と、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出する供給量算出工程と、算出した適正供給量となるように、可溶化処理槽2にヌクレアーゼ含有水を供給するヌクレアーゼ供給工程と、ヌクレアーゼ含有水および有機性汚泥を撹拌混合して可溶化処理する可溶化処理工程と、可溶化処理した有機性汚泥を消化処理する消化処理工程と、を有する。
【0080】
より詳細には、第1生体触媒培養槽5で、ヌクレアーゼ生産機能を有する遺伝子を導入されて、ヌクレアーゼ生産機能を持つ宿主微生物(生体触媒)を培養する生体触媒培養工程と、制御装置31の演算部が、有機性汚泥送泥ライン51を介して可溶化処理槽2に送られる、有機性汚泥の汚泥濃度および流量に基づいて、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出する供給量算出工程と、第1生体触媒培養槽5から可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の供給量が、演算部が算出した適正供給量となるように、宿主微生物が分泌したヌクレアーゼを含むヌクレアーゼ含有水を供給するヌクレアーゼ供給工程と、可溶化処理槽2で、ヌクレアーゼ含有水および有機性汚泥を撹拌混合して、有機性汚泥をヌクレアーゼの働きにより可溶化処理する可溶化処理工程と、消化槽3で、可溶化処理した有機性汚泥を消化処理して、消化汚泥およびバイオガスを得る消化処理工程と、を有する。
【0081】
また、本実施形態の汚泥処理方法は、脱水装置4で、消化処理工程で生じた消化汚泥を脱水して脱水汚泥および脱離液を得る脱水工程と、基質槽6から第1生体触媒培養槽5に培地を供給する培地供給工程と、を有していてもよい。
以下、それぞれの工程のうち、第2の実施形態と同じものについては、省略または簡略する。
【0082】
まず、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼの適正量について説明する。
図8に、1mgVSS(揮発性浮遊性物質)あたりのヌクレアーゼ添加量を調整して可溶化処理した後、この有機性汚泥を消化処理した際のバイオガス発生量と、可溶化処理で添加したヌクレアーゼ添加量との関係を示す。図8から、ヌクレアーゼ添加量が、少なすぎても多すぎても、バイオガス発生量が少なくなることが分かる。
【0083】
ヌクレアーゼ添加量が少ない場合は、有機性汚泥の可溶化処理が十分に行われず、消化処理が効率的に行われない。そのため、消化処理した際のバイオガス発生量が少なくなると考えられる。
また、ヌクレアーゼ添加量が多い場合は、可溶化処理槽2に過剰に供給されたヌクレアーゼが、有機性汚泥の可溶化に使われずに残存して、消化槽3に送られる。消化槽3に送られたヌクレアーゼが、消化槽3内における嫌気性微生物の細胞壁に作用することによって嫌気性微生物の消化処理を阻害するため、バイオガス発生量が少なくなると考えられる。
【0084】
図8から、ヌクレアーゼ添加量が、1〜5U/mgVSSであると、バイオガス発生量が増加することが分かる。そのため、本実施形態では、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼの添加量(供給量)が、1〜5U/mgVSSとなるように、ヌクレアーゼ含有水の供給量を制御する。なお、ヌクレアーゼ供給量は、2〜4U/mgVSSの範囲であるとより好ましい。
【0085】
次に、制御手段30が、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ供給量が、上述したヌクレアーゼ供給量となるように、送水手段20を制御する方法について、各工程ごとに説明する。
【0086】
供給量算出工程は、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出する工程である。具体的には、制御手段30における制御装置31の図示略の演算部が、有機性汚泥送泥ライン51を介して、可溶化処理槽2に送られる有機性汚泥の汚泥濃度(SS濃度)と流量とに基づいて、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出する工程である。
【0087】
制御装置31の図示略の演算部は、一例として、以下に示す方法によって、ヌクレアーゼ含有水の適正量を算出するとよい。
【0088】
制御装置31の図示略の演算部は、下記式(1)および(2)を用いて、ヌクレアーゼ含有水の適正添加量を算出する。
【0089】
VSS=a×Qs×Cs/1000…(1)
ただし、SVSS:1時間あたりに可溶化処理槽2に流入するVSS量(kg/h)、a:1gSSあたりのVSS量(−)、Qs:1時間あたりに可溶化処理槽2に流入する有機性汚泥量(L/h)、Cs:SS濃度(g/L)である。
なお、上記VSSは揮発性浮遊性物質であり、上記SSは浮遊物質である。
【0090】
Qn=Rop×(SVSS/Cn)×10…(2)
ただし、Qn:ヌクレアーゼ適正供給量(ml/h)、Rop:1mgVSSあたりのヌクレアーゼ適正供給量(U/mgVSS)、Cn:供給するヌクレアーゼ含有水のヌクレアーゼ濃度(U/ml)である。なお、上記Uは、酵素活性の単位であり、1U=(1/60)μkatと表すこともできる。
【0091】
まず、制御装置31の図示略の演算部は、SVSS(kg/h)を算出する。
【0092】
上記式(1)中の、a(1gSSあたりのVSS量)は、定常状態で大きく変化することがない。そのため、可溶化処理槽2に送られる1gSSあたりのVSS量は、週に一回程度の頻度で測定するとよい。測定したaは、固定値として制御装置31の図示略の演算部に入力する。
【0093】
また、上記式(1)中の、Qs(1時間あたりに可溶化処理槽2に流入する有機性汚泥量(L/h))、Cs(SS濃度(%))はそれぞれ、濃度計32および流量計33によって測定される。濃度計32および流量計33によって、それぞれ測定されたQsおよびCsは、制御装置31の図示略の演算部に送られる。
【0094】
制御装置31の図示略の演算部は、固定値として予め入力されたa、濃度計32から送られたCsおよび流量計33から送られたQsと、上記式(1)とを用いて、SVSSを算出する。
【0095】
次に、制御装置31の図示略の演算部は、Qn(ヌクレアーゼ適正供給量)を算出する。
【0096】
上記式(2)中のRop(1mgVSSあたりのヌクレアーゼ適正供給量)は、実験値から求める。上述したように本実施形態では、1mgVSSあたりのヌクレアーゼ適正供給量は、1〜5Uである。そのため、1〜5Uの範囲内の値を、固定値Ropとして、制御装置31の図示略の演算部に入力する。なお、Ropは、2〜4Uの範囲とすることがより好ましい。
【0097】
上記式(2)中の、Cn(供給するヌクレアーゼ含有水のヌクレアーゼ濃度(U/ml))は、定常状態で大きく変化することがない。そのため、第1生体触媒培養槽5の上澄み水(ヌクレアーゼ含有水)のヌクレアーゼ濃度は、週に一回程度の頻度で測定するとよい。測定したCnは、固定値として制御装置31の演算部に入力する。
【0098】
制御装置31の演算部は、実験値に基づいて求めたRop、算出したSVSSおよび予め入力されたCnと、上記式(2)とを用いて、Qnを算出する。演算部は、算出したQnを、制御装置31の図示略の制御部に送る。
【0099】
ヌクレアーゼ供給工程は、第1生体触媒培養槽5から可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の供給量が、演算部が算出した適正添加量Qnとなるように、可溶化処理槽2にヌクレアーゼ含有水を供給する工程である。
【0100】
制御装置31の図示略の制御部は、演算部から送られたQnの値になるように、送水手段20のポンプP1を制御して、第1生体触媒培養槽5から可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の供給量を制御する。なお、ヌクレアーゼ含有水の供給量の調整は、ポンプP1のモーターの回転数を調整するとよい。
【0101】
なお、上述した本実施形態では、制御手段30の制御装置31は、一定時間ごとに、ヌクレアーゼ含有水の供給量を制御するとよい。すなわち、制御装置31の演算部が、一定時間ごとにヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出し、制御装置31の制御部が、一定時間ごとに演算部が算出した適正供給量に基づいて、ポンプP1のモーターの回転数を調整するとよい。その間隔は、例えば、1時間程度とするとよい。
【0102】
また、上述した本実施形態では、制御手段30の制御装置31は、上澄み水送水ライン21の途中に設けられた開閉弁を調整することにより、ヌクレアーゼ含有水の供給量を調整してもよい。
【0103】
また、上述した実施形態では、第2生体触媒培養槽8が、汚泥処理システム100のヌクレアーゼ含有水貯留槽1であってもよい。すなわち、送水手段20は、ヌクレアーゼ含有水貯留槽1から可溶化処理槽2にヌクレアーゼ含有水を送水する。また、制御手段30は、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水が、適正供給量となるように、送水手段20を制御する。なお、この場合は、基質槽6は不要である。
【0104】
以上の構成によれば、有機性汚泥とヌクレアーゼ含有水とを撹拌混合する可溶化処理を行い、有機性汚泥を可溶化し、可溶化した有機性汚泥を消化処理するため、多大なエネルギーの投入や付帯設備の導入等をすることなく、有機性汚泥の消化処理効率を向上できる。そのため、有機性汚泥の消化処理におけるメタンガス変換効率を向上することができ、また、消化汚泥の生成量を低減できる。
【0105】
また、有機性汚泥とヌクレアーゼとを撹拌混合して、有機性汚泥を低分子化させるため、消化処理において、有機性汚泥の消化処理が効率的に行われる。これにより、消化汚泥の生成量が少なくなり、最終処分する汚泥量を少なくすることができる。すると、汚泥の最終処分に要する焼却等のコストを削減することが可能となる。
【0106】
また、ヌクレアーゼ含有水を使用して有機性汚泥を低分子化しているため、従来の低分子化技術(オゾン、超音波破砕、水熱処理等)に比べて、大掛かりな装置等が不要となる。これにより、大掛かりな装置等の導入に要するコストや運転コストを削減できる。
【0107】
また、ヌクレアーゼ生産機能を有する遺伝子を導入した宿主微生物にヌクレアーゼを分泌させているため、市販の高価なヌクレアーゼが不要となる。これにより、ヌクレアーゼによる可溶化処理に要するコストを削減することが可能となる。
【0108】
また、制御手段30によって、第1生体触媒培養槽5から可溶化処理槽2に、適正量のヌクレアーゼを供給することができる。これにより、ヌクレアーゼの供給量が少なく、有機性汚泥の可溶化処理が不十分となることによる、消化処理効率の低減を防ぐことができる。また、ヌクレアーゼの供給量が多く、可溶化処理槽2で有機性汚泥の可溶化に使用されずに消化槽3に送られたヌクレアーゼが、消化槽3内の嫌気性微生物の細胞壁に作用して消化処理を阻害することを抑制できる。そのため、消化槽3内における消化処理効率の低減を防ぐことができる。
【0109】
(第5の実施形態)
図9の汚泥処理システム500は、汚泥処理システム100と同様に、可溶化処理槽2と、消化槽3と、を備える。
また、汚泥処理システム500は、第2生体触媒培養槽8と、送水手段22と、制御手段34と、を備える。なお、送水手段22は、ポンプP2と、生体触媒送水ライン23と、を備える。また、制御手段34は、制御装置35と、濃度計36と、流量計37と、吸光光度計38と、を備える。
汚泥処理システム300は、図5に示すように、脱水装置4と、基質槽9と、を備えていてもよい。
なお、以下の説明では、第3の実施形態と同じものについては、省略または簡略する。
【0110】
制御手段34の濃度計36は、図示略の排水処理施設から有機性汚泥送泥ライン51を介して可溶化処理槽2に送られる、有機性汚泥中の汚泥濃度(SS濃度)を計測する計測器である。濃度計36は、制御装置35に接続されている。
【0111】
制御手段34の流量計37は、図示略の排水処理施設から有機性汚泥送泥ライン51を介して可溶化処理槽2に送られる、有機性汚泥の流量を計測する計測器である。流量計37は、制御装置35に接続されている。
【0112】
制御手段34の吸光光度計38は、第2生体触媒培養槽8内の吸光度を測定する測定器である。吸光光度計38は、制御装置35に接続されている。
【0113】
制御手段34の制御装置35は、濃度計36から送られる汚泥濃度と、流量計37から送られる有機性汚泥の流量と、吸光光度計38から送られる吸光度とに基づいて、送水手段22が第2生体触媒培養槽8から可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水量を制御する装置である。制御装置35は、図示略の演算部および制御部を備える。
【0114】
制御装置35は、第2生体触媒培養槽8から可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水量を決定し、そのヌクレアーゼ含有水量となるように、送水手段22のポンプP2を制御する。
【0115】
次に、本実施形態の汚泥処理システム500のそれぞれの構成要素の作用を説明すると共に、当該汚泥処理システムを用いた汚泥処理方法について説明する。
【0116】
本実施形態の汚泥処理方法は、細胞表面にヌクレアーゼを提示した宿主微生物(生体触媒)を培養する生体触媒培養工程と、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出する供給量算出工程と、算出した適正供給量となるように、可溶化処理槽2にヌクレアーゼ含有水を供給するヌクレアーゼ供給工程と、ヌクレアーゼ含有水および有機性汚泥を撹拌混合して可溶化処理する可溶化処理工程と、可溶化処理した有機性汚泥を消化処理する消化処理工程と、を有する。
【0117】
より詳細には、第2生体触媒培養槽8で、ヌクレアーゼを細胞表面に提示した宿主微生物(生体触媒)を培養する生体触媒培養工程と、制御装置35の演算部が、有機性汚泥送泥ライン51を介して可溶化処理槽2に送られる、有機性汚泥の汚泥濃度、流量および第2生体触媒培養槽8内の生体触媒濃度(吸光度)に基づいて、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出する供給量算出工程と、第2生体触媒培養槽8から可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の供給量が、演算部が算出した適正供給量となるように、ヌクレアーゼを細胞表面に提示した宿主微生物(生体触媒)を含むヌクレアーゼ含有水を供給する、ヌクレアーゼ供給工程と、可溶化処理槽2で、ヌクレアーゼ含有水および有機性汚泥を撹拌混合して、有機性汚泥をヌクレアーゼの働きにより可溶化処理する可溶化処理工程と、消化槽3で、可溶化処理した有機性汚泥を消化処理して、消化汚泥およびバイオガスを得る消化処理工程と、を有する。
【0118】
また、本実施形態の汚泥処理方法は、脱水装置4で、消化処理工程で生じた消化汚泥を脱水して脱水汚泥および脱離液を得る脱水工程と、基質槽9から第2生体触媒培養槽8に培地を供給する培地供給工程と、を有していてもよい。
以下、それぞれの工程のうち、第3の実施形態と同じものについては、省略または簡略する。
【0119】
まず、可溶化処理槽2に供給する生体触媒の適正量について説明する。
図10に、1mgVSSあたりの生体触媒(細胞表面にヌクレアーゼを提示した宿主微生物)の添加量を調整して可溶化処理した後、この有機性汚泥を消化処理した際のバイオガス発生量と、生体触媒の添加量との関係を示す。図10から、生体触媒の添加量が、少なすぎても多すぎても、バイオガス発生量が少なくなることが分かる。
【0120】
生体触媒の添加量が少ない場合は、有機性汚泥の可溶化処理が十分に行われず、消化処理が効率的に行われない。そのため、消化処理した際のバイオガス発生量が少なくなると考えられる。
また、生体触媒の添加量が多い場合は、可溶化処理槽2に過剰に供給された生体触媒が、有機性汚泥の可溶化に使われずに残存して、消化槽3に送られる。消化槽3に送られた生体触媒が、消化槽3内の嫌気性微生物の細胞壁に作用して消化処理を阻害するため、バイオガス発生量が少なくなると考えられる。
【0121】
図10から、生体触媒添加量が、1mgVSSあたりのcell数(細胞数)で、1.0×10〜3.0×10であると、バイオガス発生量が増加することが分かる。そのため、本実施形態では、可溶化処理槽2に供給する生体触媒の添加量(供給量)が、1mgVSSあたりのcell数(細胞数)で、1.0×10〜3.0×10となるように、ヌクレアーゼ含有水の供給量を制御する。なお、生体触媒の供給量は、3.0×10〜2.0×10の範囲であるとより好ましい。
【0122】
次に、制御手段34が、可溶化処理槽2に供給する生体触媒(細胞表面にヌクレアーゼを提示した宿主微生物)の供給量が、上述した生体触媒の供給量となるように、送水手段22を制御する方法について、各工程ごとに説明する。
【0123】
供給量算出工程は、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出する工程である。具体的には、制御装置35の図示略の演算部が、有機性汚泥送泥ライン51を介して、可溶化処理槽2に送られる有機性汚泥の汚泥濃度(SS濃度)および流量と、第2生体触媒培養槽8内の吸光度とに基づいて、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出する工程である。
【0124】
制御装置35の図示略の演算部は、下記式(1)、(3)および(4)を用いて、ヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出する。
【0125】
VSS=a×Qs×Cs/1000…(1)
ただし、SVSS:1時間あたりに可溶化処理槽2に流入するVSS量(kg/h)、a:1gSSあたりのVSS量(−)、Qs:1時間あたりに可溶化処理槽2に流入する有機性汚泥量(L/h)、Cs:SS濃度(g/L)である。
【0126】
Xn=b×OD600…(3)
ただし、Xn:生体触媒の供給量(細胞数)、OD600:波長600nmにおける吸光度(−)、b:吸光度・細胞数変換係数である。
【0127】
Qn=Xop×SVSS/Xn…(4)
ただし、Qn:ヌクレアーゼ含有水適正供給量(ml/h)、Xop:1mgVSSあたりの生体触媒適正供給量(細胞数/mgVSS)である。
【0128】
まず、制御装置35の図示略の演算部は、上記式(1)を用いて、SVSSを算出する。
【0129】
上記式(1)中の、aは、定常状態で大きく変化することがない。そのため、可溶化処理槽2に送られる1gSSあたりのVSS量は、週に一回程度の頻度で測定するとよい。測定したaは、固定値として制御装置35の図示略の演算部に入力する。
【0130】
また、上記式(1)中の、Qs、Csはそれぞれ、濃度計36および流量計37によって測定される。濃度計36および流量計37によって、それぞれ測定されたQsおよびCsは、制御装置35の演算部に送られる。
【0131】
制御装置35の演算部は、予め入力されたa、濃度計36から送られたCsおよび流量計37から送られたQsおよび上記式(1)を用いて、SVSSを算出する。
【0132】
また、制御装置35の図示略の演算部は、上記式(3)を用いて、Xn(生体触媒の添加量(細胞数))を算出する。
【0133】
上記式(3)中の、b(吸光度・細胞数変換係数)は、不変であるため、事前に計測して、演算部に入力する。上記式(3)中のOD600は、吸光光度計38によって測定される。吸光光度計38は、計測した第2生体触媒培養槽8内の吸光度を、制御装置35に送る。吸光光度計38から送られた吸光度と、上記bとによって、第2生体触媒培養槽8内の生体触媒濃度が得られる。
【0134】
制御装置35は、事前に入力されたbおよび吸光光度計38から送られたOD600と、上記式(3)を用いて、Xnを算出する。
【0135】
また、制御装置35の図示略の演算部は、上記式(4)を用いて、Qn(ヌクレアーゼ含有水適正供給量(ml/h))を算出する。
【0136】
上記式(4)中のXop(1mgVSSあたりの生体触媒適正供給量)は、実験値から求める。上述したように本実施形態では、1mgVSSあたりの生体触媒の適正供給量は、細胞数で、1.0×10〜3.0×10である。そのため、1.0×10〜3.0×10の値を、固定値Xopとして、制御装置35の演算部に入力する。なお、Xopは、3.0×10〜2.0×10の範囲とすることがより好ましい。
【0137】
制御装置35の演算部は、算出したSVSS、実験値に基づいて入力されたXopおよび算出したXnと、上記式(4)とを用いて、Qnを算出する。演算部は、算出したQnを、制御装置35の図示略の制御部に送る。
【0138】
ヌクレアーゼ供給工程は、第2生体触媒培養槽8から可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の供給量が、演算部が算出した適正添加量Qnとなるように、可溶化処理槽2にヌクレアーゼ含有水を供給する工程である。
【0139】
制御装置35の図示略の制御部は、演算部から送られたQnの値になるように、送水手段22のポンプP2を制御して、第2生体触媒培養槽8から可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼ含有水の供給量を制御する。なお、ヌクレアーゼ含有水の供給量の調整は、ポンプP2のモーターの回転数を調整するとよい。
【0140】
なお、上述した本実施形態では、制御手段34の制御装置35は、一定時間ごとに、ヌクレアーゼ含有水の供給量を調整するとよい。すなわち、制御装置35の演算部が、一定時間ごとにヌクレアーゼ含有水の適正供給量を算出し、制御装置35の制御部が、一定時間ごとに演算部が算出した適正供給量に基づいて、ポンプP1のモーターの回転数を調整するとよい。その間隔は、例えば、1時間程度とするとよい。
【0141】
なお、上述した本実施形態では、制御手段34の制御装置35は、生体触媒送水ライン23の途中に設けられた開閉弁を調整することにより、ヌクレアーゼ含有水の供給量を調整してもよい。
【0142】
以上の構成によれば、有機性汚泥とヌクレアーゼ含有水とを撹拌混合する可溶化処理を行い、有機性汚泥を可溶化し、可溶化した有機性汚泥を消化処理するため、多大なエネルギーの投入や付帯設備の導入等をすることなく、有機性汚泥の消化処理効率を向上できる。そのため、有機性汚泥の消化処理におけるメタンガス変換効率を向上することができ、また、消化汚泥の生成量を低減できる。
【0143】
また、有機性汚泥とヌクレアーゼとを撹拌混合して、有機性汚泥を低分子化させるため、消化処理において、有機性汚泥の消化処理が効率的に行われる。これにより、消化汚泥の生成量が少なくなり、最終処分する汚泥量を少なくすることができる。すると、汚泥の最終処分に要する焼却等のコストを削減することが可能となる。
【0144】
また、ヌクレアーゼ含有水を使用して有機性汚泥を低分子化しているため、従来の低分子化技術(オゾン、超音波破砕、水熱処理等)に比べて、大掛かりな装置等が不要となる。これにより、大掛かりな装置等の導入に要するコストや運転コストを削減できる。
【0145】
また、ヌクレアーゼ分泌機能を有する宿主微生物(生体触媒)を用いた場合と比べて、宿主微生物とヌクレアーゼ含有水とを固液分離する必要がないため、第2生体触媒培養槽8の運転管理を簡略化できる。さらに、ヌクレアーゼを高濃度に集積することができるため、第2生体触媒培養槽8の容積を小さくすることができる。これにより、大きな設置スペースの確保や設備導入コストを削減することができる。
【0146】
また、制御手段34によって、第2生体触媒培養槽8から可溶化処理槽2に、適正量のヌクレアーゼ(生体触媒)を供給することができる。これにより、ヌクレアーゼの供給量が少なく、有機性汚泥の可溶化処理が不十分となることによる、消化処理効率の低減を防ぐことができる。また、ヌクレアーゼの供給量が多く、可溶化処理槽2で有機性汚泥の可溶化に使用されずに消化槽3に送られたヌクレアーゼが、消化槽3内の嫌気性微生物の細胞壁に作用して消化処理を阻害することを抑制できる。そのため、消化槽3内の消化処理効率の低減を防ぐことができる。
【0147】
また、吸光光度計38を用いることによって、第2生体触媒培養槽8内のヌクレアーゼ含有水中のヌクレアーゼ濃度(生体触媒濃度)を容易に測定できるため、可溶化処理槽2に供給するヌクレアーゼの供給量を容易に管理することができる。吸光光度計38は、市販のものでもよいため、特別な測定器を用意せずに、ヌクレアーゼ供給量を管理できる。
【0148】
以上に述べた少なくとも一つの実施形態によれば、有機性汚泥およびヌクレアーゼ含有水を撹拌混合する可溶化処理を行うことによって、多大なエネルギーの投入や付帯設備の導入をすることなく、有機性汚泥の消化処理効率を向上できる。そのため、有機性汚泥の消化処理工程におけるメタンガス変換効率を向上することができ、また、消化槽における有機性汚泥の滞留時間を短縮することができる。ヌクレアーゼを使用して、有機性汚泥を低分子化しているため、従来の低分子化技術(オゾン、超音波破砕、水熱処理等)に比べて、多大なエネルギーの投入や付帯設備の導入が不要となる。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0150】
1…ヌクレアーゼ含有水貯留槽、2…可溶化処理槽、3…消化槽、5…第1生体触媒培養槽5、8…第2生体触媒培養槽、20,22…送水手段、30,34…制御手段。
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