特許第6878077号(P6878077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878077
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20210517BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   H01L21/306 R
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 648K
   H01L21/304 643A
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-60050(P2017-60050)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-163978(P2018-163978A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 喬
(72)【発明者】
【氏名】林 昌之
(72)【発明者】
【氏名】奥田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 章宏
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−011033(JP,A)
【文献】 特開2010−123709(JP,A)
【文献】 特開2016−015395(JP,A)
【文献】 特開2012−186221(JP,A)
【文献】 特開2016−189434(JP,A)
【文献】 特開2016−162922(JP,A)
【文献】 特開2015−115455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を加熱する少なくとも一つのヒータと、
前記少なくとも一つのヒータによって加熱された処理液を案内する第1配管と、
前記第1配管に供給される処理液の流量を変更する第1流量調整バルブと、
前記第1配管によって案内された処理液を基板に向けて吐出する第1ノズルと、
前記少なくとも一つのヒータと前記第1流量調整バルブとを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記少なくとも一つのヒータによって加熱された処理液の温度の目標値を表す加熱温度と、前記第1ノズルから吐出されたときの処理液の温度の目標値であり前記加熱温度よりも低い第1設定温度と、を取得する情報取得部と、
前記少なくとも一つのヒータに前記加熱温度で処理液を加熱させる加熱実行部と、
前記加熱温度で前記第1配管に供給された処理液が第1吐出温度で前記第1ノズルから吐出されたときに前記第1配管に供給された処理液の流量に対応する前記第1流量調整バルブの開度を規定する第1開度決定データを記憶した記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記第1開度決定データと前記情報取得部が取得した前記加熱温度および第1設定温度とに基づいて、前記第1吐出温度が前記第1設定温度に一致するまたは近づく第1目標流量に対応する第1目標開度を決定する第1開度決定部と、
前記第1流量調整バルブの開度を前記第1目標開度に設定する第1開度設定部と、
前記第1配管を介して前記第1ノズルに処理液を供給する第1処理液供給部とを含み、
前記第1開度設定部は、前記第1流量調整バルブの開度を、前記第1目標開度よりも大きい第1初期開度に設定し、その後、前記第1初期開度から前記第1目標開度に減少させる、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板処理装置は、処理液を吐出する第2ノズルと、前記第2ノズルに処理液を案内する第2配管と、前記第2配管に供給される処理液の流量を変更する第2流量調整バルブとをさらに備え、
前記制御装置の前記情報取得部は、前記第2ノズルから吐出されたときの処理液の温度の目標値であり前記加熱温度よりも低い第2設定温度をさらに取得し、
前記制御装置の前記記憶装置は、前記加熱温度で前記第2配管に供給された処理液が第2吐出温度で前記第2ノズルから吐出されたときに前記第2配管に供給された処理液の流量に対応する前記第2流量調整バルブの開度を規定する第2開度決定データをさらに記憶しており、
前記制御装置は、
前記記憶装置に記憶された前記第2開度決定データと前記情報取得部が取得した前記加熱温度および第2設定温度とに基づいて、前記第2吐出温度が前記第2設定温度に一致するまたは近づく第2目標流量に対応する第2目標開度を決定する第2開度決定部と、
前記第2流量調整バルブの開度を前記第2目標開度に設定する第2開度設定部と、
前記第2配管を介して処理液を前記第2ノズルに供給する第2処理液供給部とをさらに含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板処理装置は、前記第1ノズルから吐出された処理液で処理される基板を保持する第1基板保持手段と、前記第2ノズルから吐出された処理液で処理される基板を保持する第2基板保持手段とをさらに備える、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板処理装置は、前記第1ノズルおよび第2ノズルから吐出された処理液で処理される基板を水平に保持しながら、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板保持手段をさらに備え、
前記第1ノズルは、前記基板保持手段に保持されている基板上の位置である第1位置に向けて処理液を吐出し、
前記第2ノズルは、前記基板保持手段に保持されている基板上の位置であり、前記第1位置よりも外側の位置である第2位置に向けて処理液を吐出する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板処理装置は、前記第1配管および第2配管の両方に処理液を供給する共通配管をさらに備える、請求項3または4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板処理装置は、前記第1配管および第2配管の両方に処理液を供給する共通配管をさらに備え、
前記基板処理装置は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが露出した基板に処理液としてのリン酸を供給することにより、前記シリコン酸化膜のエッチングを抑えながら前記シリコン窒化膜をエッチングする、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板処理装置は、処理液の温度を検出する温度センサーをさらに備え、
前記第1開度設定部は、前記温度センサーによって検出された処理液の温度が切替温度に達すると、前記第1流量調整バルブの開度を前記第1初期開度から前記第1目標開度に減少させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
処理液を加熱する少なくとも一つのヒータと、前記少なくとも一つのヒータによって加熱された処理液を案内する第1配管と、前記第1配管に供給される処理液の流量を変更する第1流量調整バルブと、前記第1配管によって案内された処理液を基板に向けて吐出する第1ノズルと、前記少なくとも一つのヒータと前記第1流量調整バルブとを制御する制御装置と、を備える基板処理装置によって実行される方法であって、
前記少なくとも一つのヒータによって加熱された処理液の温度の目標値を表す加熱温度と、前記第1ノズルから吐出されたときの処理液の温度の目標値であり前記加熱温度よりも低い第1設定温度と、を取得する情報取得工程と、
前記少なくとも一つのヒータに前記加熱温度で処理液を加熱させる加熱実行工程と、
前記制御装置の記憶装置に記憶されたデータであって、前記加熱温度で前記第1配管に供給された処理液が第1吐出温度で前記第1ノズルから吐出されたときに前記第1配管に供給された処理液の流量に対応する前記第1流量調整バルブの開度を規定する第1開度決定データと、前記情報取得工程で取得した前記加熱温度および第1設定温度とに基づいて、前記第1吐出温度が前記第1設定温度に一致するまたは近づく第1目標流量に対応する第1目標開度を決定する開度決定工程と、
前記第1流量調整バルブの開度を前記第1目標開度に設定する第1開度設定工程と、
前記第1配管を介して前記第1ノズルに処理液を供給する第1処理液供給工程とを含み、
前記第1開度設定工程は、前記第1流量調整バルブの開度を、前記第1目標開度よりも大きい第1初期開度に設定し、その後、前記第1初期開度から前記第1目標開度に減少させる、基板処理方法。
【請求項9】
前記基板処理装置は、処理液を吐出する第2ノズルと、前記第2ノズルに処理液を案内する第2配管と、前記第2配管に供給される処理液の流量を変更する第2流量調整バルブとをさらに備え、
前記情報取得工程は、前記第2ノズルから吐出されたときの処理液の温度の目標値であり前記加熱温度よりも低い第2設定温度をさらに取得する工程であり、
前記制御装置の前記記憶装置は、前記加熱温度で前記第2配管に供給された処理液が第2吐出温度で前記第2ノズルから吐出されたときに前記第2配管に供給された処理液の流量に対応する前記第2流量調整バルブの開度を規定する第2開度決定データをさらに記憶しており、
前記基板処理方法は、
前記記憶装置に記憶された前記第2開度決定データと前記情報取得工程で取得した前記加熱温度および第2設定温度とに基づいて、前記第2吐出温度が前記第2設定温度に一致するまたは近づく第2目標流量に対応する第2目標開度を決定する第2開度決定工程と、
前記第2流量調整バルブの開度を前記第2目標開度に設定する第2開度設定工程と、
前記第2配管を介して前記第2ノズルに処理液を供給する第2処理液供給工程とをさらに含む、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板処理装置は、前記第1ノズルから吐出された処理液で処理される基板を保持する第1基板保持手段と、前記第2ノズルから吐出された処理液で処理される基板を保持する第2基板保持手段とをさらに備える、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記基板処理装置は、前記第1ノズルおよび第2ノズルから吐出された処理液で処理される基板を水平に保持しながら、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板保持手段をさらに備え、
前記基板処理方法は、
前記基板保持手段に保持されている基板上の位置である第1位置に向けて前記第1ノズルに処理液を吐出させる第1吐出工程と、
前記基板保持手段に保持されている基板上の位置であり、前記第1位置よりも外側の位置である第2位置に向けて前記第2ノズルに処理液を吐出させる第2吐出工程とをさらに含む、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記基板処理装置は、前記第1配管および第2配管の両方に処理液を供給する共通配管をさらに備える、請求項9または10に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記基板処理装置は、前記第1配管および第2配管の両方に処理液を供給する共通配管をさらに備え、
前記基板処理方法は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが露出した基板に処理液としてのリン酸を供給することにより、前記シリコン酸化膜のエッチングを抑えながら前記シリコン窒化膜をエッチングする、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記基板処理装置は、処理液の温度を検出する温度センサーをさらに備え、
前記第1開度設定工程は、前記温度センサーによって検出された処理液の温度が切替温度に達すると、前記第1流量調整バルブの開度を前記第1初期開度から前記第1目標開度に減少させる、請求項8〜13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
処理液を加熱するヒータと、前記加熱された処理液を送液する処理液配管と、基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に向けて前記処理液配管を介して送液された処理液を吐出するノズルと、前記処理液配管を流れる処理液の流量を調節するバルブと、前記処理液配管に流れる処理液の温度を検出する温度センサーと、前記ノズルから吐出される処理液の温度の目標値である設定温度を取得する情報取得手段と、前記温度センサーによって検出された温度と前記情報取得手段によって取得された処理液の前記設定温度とに基づいて前記バルブの開度を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記バルブの開度を、前記ノズルから吐出されたときの処理液の温度である吐出温度が、前記設定温度に一致するまたは近づく目標流量に対応する目標開度よりも大きい初期開度に設定し、その後、前記初期開度から前記目標開度に減少させる、基板処理装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記情報取得手段から取得された前記設定温度と前記温度センサーにより検出された処理液の温度とを比較して、前記温度センサーにより検出された処理液の温度が前記設定温度を上回る場合には前記処理液の流量が減少する方向に前記バルブの開度を制御し、前記温度センサーにより検出された処理液の温度が前記設定温度を下回る場合には前記処理液の流量が増加する方向に前記バルブの開度を制御する請求項15に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理する基板処理装置が用いられる。
特許文献1には、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が開示されている。この基板処理装置は、基板を水平に保持しながら基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されている基板に向けて処理液を吐出するノズルと、ノズルに供給される処理液を加熱する複数のヒータとを備えている。複数のヒータは、循環する処理液を加熱する上流ヒータと、上流ヒータによって加熱された処理液をノズルから吐出される前に加熱する下流ヒータとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−152354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板に供給される処理液は、配管およびノズルを含む複数の部材で形成された流路を通り、ノズルから吐出される。ノズルから吐出された処理液は、ノズルと基板との間の空間を通り、基板に衝突する。
基板に供給される処理液がヒータによって予め加熱される場合、処理液の熱の一部が流路や空気中に放出される。このような熱損失が必ず発生するので、ヒータの温度よりも若干低温の処理液が基板に供給される。
【0005】
処理液の開始直後とそれ以降とでは処理液の熱損失量が異なる。したがって、熱損失を見越してヒータの温度を設定したとしても、ノズルから吐出されたときの処理液の温度が時間の経過に伴って変化してしまう。このような温度の変化を抑えるためにヒータの温度設定を途中で変更することが考えられるものの、ヒータおよび処理液の温度が直ぐに変わるとは限らない。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、ノズルから吐出されたときの処理液の温度をより高い精度で制御することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理液を加熱する少なくとも一つのヒータと、前記少なくとも一つのヒータによって加熱された処理液を案内する第1配管と、前記第1配管に供給される処理液の流量を変更する第1流量調整バルブと、前記第1配管によって案内された処理液を基板に向けて吐出する第1ノズルと、前記少なくとも一つのヒータと前記第1流量調整バルブとを制御する制御装置とを備える、基板処理装置である。
【0008】
前記制御装置は、前記少なくとも一つのヒータによって加熱された処理液の温度の目標値を表す加熱温度と、前記第1ノズルから吐出されたときの処理液の温度の目標値であり前記加熱温度よりも低い第1設定温度と、を取得する情報取得部と、前記少なくとも一つのヒータに前記加熱温度で処理液を加熱させる加熱実行部と、前記加熱温度で前記第1配管に供給された処理液が第1吐出温度で前記第1ノズルから吐出されたときに前記第1配管に供給された処理液の流量に対応する前記第1流量調整バルブの開度を規定する第1開度決定データを記憶した記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記第1開度決定データと前記情報取得部が取得した前記加熱温度および第1設定温度とに基づいて、前記第1吐出温度が前記第1設定温度に一致するまたは近づく第1目標流量に対応する第1目標開度を決定する第1開度決定部と、前記第1流量調整バルブの開度を前記第1目標開度に設定する第1開度設定部と、前記第1配管を介して前記第1ノズルに処理液を供給する第1処理液供給部とを含む。前記第1開度設定部は、前記第1流量調整バルブの開度を、前記第1目標開度よりも大きい第1初期開度に設定し、その後、前記第1初期開度から前記第1目標開度に減少させる
【0009】
この構成によれば、ヒータによって加熱温度で加熱された処理液が第1配管を介して第1ノズルに供給される。第1ノズルから吐出されたときの処理液の温度を表す第1吐出温度は、第1配管に供給される処理液の温度だけでなく、第1配管に供給される処理液の流量に応じて変化する。つまり、処理液の供給流量が減少すると、第1吐出温度が低下し、処理液の供給流量が増加すると、第1吐出温度が上昇する。これは、熱損失量が処理液の供給流量にかかわらず概ね一定であるのに対して、処理液の熱容量は処理液の供給流量に応じて変化するからである。
【0010】
加熱温度が同じであったとしても、処理液の供給流量が異なると吐出温度も異なる。これらの関係を規定する第1開度決定データは、制御装置の記憶装置に記憶されている。処理液の供給流量は、第1吐出温度が第1設定温度に一致するまたは近づくように第1開度決定データに基づいて設定される。つまり、処理液の供給流量を規定する第1流量調整バルブの開度は、第1吐出温度が第1設定温度に一致するまたは近づく第1目標流量に対応する第1目標開度に設定される。この状態で加熱温度の処理液が第1配管に供給される。これにより、第1設定温度またはこれとほぼ同じ温度の処理液が第1ノズルから吐出される。
【0011】
このように、ヒータの温度を適切に管理するだけでなく、第1配管および第1ノズルに供給される処理液の流量、つまり、処理液の熱容量を加熱温度および第1設定温度に応じて適切に設定するので、第1ノズルから吐出されたときの処理液の温度をより高い精度でコントロールすることができる。これにより、意図する温度と基板に供給された処理液の実際の温度との差を減少させることができる。さらに、第1流量調整バルブの開度を変えれば、ヒータの温度を変えずに、基板に供給される処理液の温度を変更することができる。したがって、ヒータの温度を変える場合と比較して短時間で処理液の温度を変更することができる。
さらに、制御装置の第1開度設定部は、第1流量調整バルブの開度を第1目標開度よりも大きい第1初期開度に設定する。この状態で制御装置の第1処理液供給部が第1配管を介して第1ノズルに処理液を供給する。その後、制御装置の第1開度設定部が第1流量調整バルブの開度を第1初期開度から第1目標開度に減少させる。この状態で制御装置の第1処理液供給部が第1配管を介して第1ノズルに処理液を供給する。
第1配管および第1ノズルへの処理液の供給が開始された直後は、第1配管および第1ノズルが冷めているので、熱損失量が相対的に大きい。その一方で、処理液の供給が開始されてからある程度の時間が経つと、第1配管および第1ノズルが温まるので、熱損失量が減少する。したがって、同じ温度の処理液を同じ流量で第1配管および第1ノズルに供給し続けると、第1ノズルから吐出されたときの処理液の温度が時間の経過に伴って変化する。
この構成によれば、第1配管および第1ノズルに供給される処理液の流量を時間の経過に伴って減少させる。言い換えると、処理液の供給開始時は、相対的に大きな流量で処理液を第1配管および第1ノズルに供給する。そして、第1配管および第1ノズルが温まると、相対的に小さな流量で処理液を第1配管および第1ノズルに供給する。これにより、第1ノズルから吐出されたときの処理液の温度の変動量を減少させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記基板処理装置は、処理液を吐出する第2ノズルと、前記第2ノズルに処理液を案内する第2配管と、前記第2配管に供給される処理液の流量を変更する第2流量調整バルブとをさらに備え、前記制御装置の前記情報取得部は、前記第2ノズルから吐出されたときの処理液の温度の目標値であり前記加熱温度よりも低い第2設定温度をさらに取得し、前記制御装置の前記記憶装置は、前記加熱温度で前記第2配管に供給された処理液が第2吐出温度で前記第2ノズルから吐出されたときに前記第2配管に供給された処理液の流量に対応する前記第2流量調整バルブの開度を規定する第2開度決定データをさらに記憶しており、前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記第2開度決定データと前記情報取得部が取得した前記加熱温度および第2設定温度とに基づいて、前記第2吐出温度が前記第2設定温度に一致するまたは近づく第2目標流量に対応する第2目標開度を決定する第2開度決定部と、前記第2流量調整バルブの開度を前記第2目標開度に設定する第2開度設定部と、前記第2配管を介して処理液を前記第2ノズルに供給する第2処理液供給部とをさらに含む、請求項1に記載の基板処理装置である。
【0013】
この構成によれば、第1ノズルと同様に、第2配管および第2ノズルに供給される処理液の流量を規定する第2流量調整バルブの開度が、制御装置の記憶装置に記憶された第2開度決定データに基づいて、第2吐出温度が第2設定温度に一致するまたは近づく第2目標流量に対応する第2目標開度に設定される。この状態で加熱温度の処理液が第2配管に供給される。これにより、第2設定温度またはこれとほぼ同じ温度の処理液が第2ノズルから吐出される。
【0014】
基板に供給されるまでに失われる処理液の熱量は、流路ごとに異なる場合がある。これは、流路の長さや流路を構成する部材が異なる場合があるからである。前述のように第1流量調整バルブおよび第2流量調整バルブの開度を個別に設定すれば、このような場合でも、意図する温度と基板に供給された処理液の実際の温度との差を減少させることができる。これにより、処理された基板の品質をより高い精度でコントロールすることができる。
【0015】
第2設定温度は、第1設定温度と等しい値であってもよいし、第1設定温度とは異なる値であってもよい。第2開度決定データは、第1開度決定データとは異なるデータであってもよいし、第1開度決定データと同じデータであってもよい。第2開度決定部は、第1開度決定部であってもよいし、第1開度決定部とは異なるものであってもよい。第2開度設定部および処理液供給部についても第2開度決定部と同様である。少なくとも一つのヒータは、第1ノズルおよび第2ノズルの両方に供給される1つのヒータであってもよいし、第1ノズルに供給される処理液を加熱する第1ヒータと第2ノズルに供給される処理液を加熱する第2ヒータとを含んでいてもよい。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記第1ノズルから吐出された処理液で処理される基板を保持する第1基板保持手段と、前記第2ノズルから吐出された処理液で処理される基板を保持する第2基板保持手段とをさらに備える、請求項2に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、第1ノズルから吐出された処理液が、第1基板保持手段に保持されている基板に供給され、第2ノズルから吐出された処理液が、第1基板保持手段とは異なる第2基板保持手段に保持されている基板に供給される。このような場合でも、第1流量調整バルブおよび第2流量調整バルブの開度を個別に設定することにより、第1ノズルから吐出されたときの処理液の実際の温度を、第2ノズルから吐出されたときの処理液の実際の温度に一致させるまたは近づけることができる。これにより、第1ノズルから吐出された処理液で処理された基板と第2ノズルから吐出された処理液で処理された基板との品質の差を減少させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記第1ノズルおよび第2ノズルから吐出された処理液で処理される基板を水平に保持しながら、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板保持手段をさらに備え、前記第1ノズルは、前記基板保持手段に保持されている基板上の位置である第1位置に向けて処理液を吐出し、前記第2ノズルは、前記基板保持手段に保持されている基板上の位置であり、前記第1位置よりも外側の位置である第2位置に向けて処理液を吐出する、請求項2に記載の基板処理装置である。
【0018】
この構成によれば、第1ノズルから吐出された処理液と第2ノズルから吐出された処理液とが、同じ基板に供給される。第1ノズルは、基板上の位置である第1位置に向けて処理液を吐出し、第2ノズルは、同じ基板上の位置である第2位置に向けて処理液を吐出する。第2位置は、基板の径方向に関して第1位置よりも外側の位置である。したがって、第2ノズルから吐出された処理液は、第1ノズルから吐出された処理液よりも外側で基板に着液する。
【0019】
基板上での処理液の温度は回転軸線から離れるしたがって低下する傾向にある。第1流量調整バルブおよび第2流量調整バルブの開度を個別に設定すれば、第2ノズルから吐出されたときの処理液の実際の温度を、意図的に、第1ノズルから吐出されたときの処理液の実際の温度よりも高くすることができる。これにより、基板上での処理液の温度のばらつきを低減でき、処理の均一性を高めることができる。もちろん、同じまたはほぼ同じ温度の処理液を第1ノズルおよび第2ノズルから吐出させることもできる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記第1配管および第2配管の両方に処理液を供給する共通配管をさらに備える、請求項3または4に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、共通配管内を流れる処理液が、第1配管および第2配管の両方に供給される。したがって、少なくとも成分が等しい処理液が、第1ノズルおよび第2ノズルの両方から吐出される。第1ノズルおよび第2ノズルから吐出された処理液が別々の基板に供給される場合、複数枚の基板間における処理のばらつきを低減することができる。第1ノズルおよび第2ノズルから吐出された処理液が同じ基板に供給される場合、処理の均一性を高めることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記第1配管および第2配管の両方に処理液を供給する共通配管をさらに備え、前記基板処理装置は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが露出した基板に処理液としてのリン酸を供給することにより、前記シリコン酸化膜のエッチングを抑えながら前記シリコン窒化膜をエッチングする、請求項4に記載の基板処理装置である。
【0022】
この構成によれば、ヒータによって加熱された高温のリン酸(たとえば、その濃度における沸点のリン酸)が、共通配管から第1配管および第2配管の両方に供給され、第1ノズルおよび第2ノズルの両方から吐出される。吐出されたリン酸は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが露出した基板に供給される。これにより、シリコン酸化膜のエッチングを抑えながらシリコン窒化膜をエッチングする選択エッチングが行われる。
【0023】
特に、第2ノズルから吐出されたときのリン酸の実際の温度が、第1ノズルから吐出されたときのリン酸の実際の温度よりも高くなるように、第1流量調整バルブおよび第2流量調整バルブの開度を個別に設定すれば、基板上でのリン酸の温度のばらつきを低減でき、エッチングの均一性をさらに高めることができる。加えて、成分が等しいリン酸が第1ノズルおよび第2ノズルから同じ基板に向けて吐出されるので、選択比(シリコン窒化膜のエッチング量/シリコン酸化膜のエッチング量)の均一性が低下することを抑制または防止することができる。
【0027】
請求項に記載の発明は、前記基板処理装置は、処理液の温度を検出する温度センサーをさらに備え、前記第1開度設定部は、前記温度センサーによって検出された処理液の温度が切替温度に達すると、前記第1流量調整バルブの開度を前記第1初期開度から前記第1目標開度に減少させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板に供給される前の処理液または基板上に位置する処理液の温度が温度センサーによって検出される。温度センサーによって検出された処理液の温度が切替温度に達すると、つまり、第1配管および第1ノズルが温まったことが確認されると、制御装置の第1開度設定部は、第1流量調整バルブの開度を第1初期開度から第1目標開度に減少させる。したがって、第1配管および第1ノズルが温まっているにもかかわらず、相対的に大きな流量で処理液が第1配管および第1ノズルに供給され続けることを防止できる。
【0028】
温度センサーは、基板に供給される前の処理液の温度を検出してもよいし、基板上の処理液の温度を検出してもよいし、第1ノズルを収容するチャンバー内で処理液の温度を検出してもよい。基板に供給される前の処理液の温度を検出する場合、温度センサーは、第1配管内の処理液の温度を検出してもよいし、第1ノズル内の処理液の温度を検出してもよい。
【0029】
請求項に記載の発明は、処理液を加熱する少なくとも一つのヒータと、前記少なくとも一つのヒータによって加熱された処理液を案内する第1配管と、前記第1配管に供給される処理液の流量を変更する第1流量調整バルブと、前記第1配管によって案内された処理液を基板に向けて吐出する第1ノズルと、前記少なくとも一つのヒータと前記第1流量調整バルブとを制御する制御装置と、を備える基板処理装置によって実行される、基板処理方法である。
【0030】
前記基板処理方法は、前記少なくとも一つのヒータによって加熱された処理液の温度の目標値を表す加熱温度と、前記第1ノズルから吐出されたときの処理液の温度の目標値であり前記加熱温度よりも低い第1設定温度と、を取得する情報取得工程と、前記少なくとも一つのヒータに前記加熱温度で処理液を加熱させる加熱実行工程と、前記制御装置の記憶装置に記憶されたデータであって、前記加熱温度で前記第1配管に供給された処理液が第1吐出温度で前記第1ノズルから吐出されたときに前記第1配管に供給された処理液の流量に対応する前記第1流量調整バルブの開度を規定する第1開度決定データと、前記情報取得工程で取得した前記加熱温度および第1設定温度とに基づいて、前記第1吐出温度が前記第1設定温度に一致するまたは近づく第1目標流量に対応する第1目標開度を決定する開度決定工程と、前記第1流量調整バルブの開度を前記第1目標開度に設定する第1開度設定工程と、前記第1配管を介して前記第1ノズルに処理液を供給する第1処理液供給工程とを含む。前記第1開度設定工程は、前記第1流量調整バルブの開度を、前記第1目標開度よりも大きい第1初期開度に設定し、その後、前記第1初期開度から前記第1目標開度に減少させる。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、前記基板処理装置は、処理液を吐出する第2ノズルと、前記第2ノズルに処理液を案内する第2配管と、前記第2配管に供給される処理液の流量を変更する第2流量調整バルブとをさらに備え、前記情報取得工程は、前記第2ノズルから吐出されたときの処理液の温度の目標値であり前記加熱温度よりも低い第2設定温度をさらに取得する工程であり、前記制御装置の前記記憶装置は、前記加熱温度で前記第2配管に供給された処理液が第2吐出温度で前記第2ノズルから吐出されたときに前記第2配管に供給された処理液の流量に対応する前記第2流量調整バルブの開度を規定する第2開度決定データをさらに記憶しており、前記基板処理方法は、前記記憶装置に記憶された前記第2開度決定データと前記情報取得工程で取得した前記加熱温度および第2設定温度とに基づいて、前記第2吐出温度が前記第2設定温度に一致するまたは近づく第2目標流量に対応する第2目標開度を決定する第2開度決定工程と、前記第2流量調整バルブの開度を前記第2目標開度に設定する第2開度設定工程と、前記第2配管を介して前記第2ノズルに処理液を供給する第2処理液供給工程とをさらに含む、請求項8に記載の基板処理方法である。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記第1ノズルから吐出された処理液で処理される基板を保持する第1基板保持手段と、前記第2ノズルから吐出された処理液で処理される基板を保持する第2基板保持手段とをさらに備える、請求項に記載の基板処理方法である。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0033】
請求項11に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記第1ノズルおよび第2ノズルから吐出された処理液で処理される基板を水平に保持しながら、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板保持手段をさらに備え、前記基板処理方法は、前記基板保持手段に保持されている基板上の位置である第1位置に向けて前記第1ノズルに処理液を吐出させる第1吐出工程と、前記基板保持手段に保持されている基板上の位置であり、前記第1位置よりも外側の位置である第2位置に向けて前記第2ノズルに処理液を吐出させる第2吐出工程とをさらに含む、請求項に記載の基板処理方法である。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0034】
請求項12に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記第1配管および第2配管の両方に処理液を供給する共通配管をさらに備える、請求項9または10に記載の基板処理方法である。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
請求項13に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記第1配管および第2配管の両方に処理液を供給する共通配管をさらに備え、前記基板処理方法は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが露出した基板に処理液としてのリン酸を供給することにより、前記シリコン酸化膜のエッチングを抑えながら前記シリコン窒化膜をエッチングする、請求項10に記載の基板処理方法である。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0035】
請求項14に記載の発明は、前記基板処理装置は、処理液の温度を検出する温度センサーをさらに備え、前記第1開度設定工程は、前記温度センサーによって検出された処理液の温度が切替温度に達すると、前記第1流量調整バルブの開度を前記第1初期開度から前記第1目標開度に減少させる、請求項8〜13のいずれか一項に記載の基板処理方法である。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0036】
請求項15に記載の発明は、処理液を加熱するヒータと、前記加熱された処理液を送液する処理液配管と、基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に向けて前記処理液配管を介して送液された処理液を吐出するノズルと、前記処理液配管を流れる処理液の流量を調節するバルブと、前記処理液配管に流れる処理液の温度を検出する温度センサーと、前記ノズルから吐出される処理液の温度の目標値である設定温度を取得する情報取得手段と、前記温度センサーによって検出された温度と前記情報取得手段によって取得された処理液の設定温度とに基づいて前記バルブの開度を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記バルブの開度を、前記ノズルから吐出されたときの処理液の温度である吐出温度が、前記設定温度に一致するまたは近づく目標流量に対応する目標開度よりも大きい初期開度に設定し、その後、前記初期開度から前記目標開度に減少させる、基板処理装置である。この構成によれば、簡易な構成により、ノズルから吐出する処理液の温度を目標温度に近づけることができる。
【0037】
請求項16に記載の発明は、前記制御手段は、前記情報取得手段から取得された前記設定温度と前記温度センサーにより検出された処理液の温度とを比較して、前記温度センサーにより検出された処理液の温度が前記設定温度を上回る場合には前記処理液の流量が減少する方向に前記バルブの開度を制御し、前記温度センサーにより検出された処理液の温度が前記設定温度を下回る場合には前記処理液の流量が増加する方向に前記バルブの開度を制御する請求項15に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の効果と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
図2】処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る薬液供給システムを示す模式図である。
図4】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図5】基板処理装置によって実行される基板の処理の一例について説明するための工程図である。
図6】制御装置の機能ブロックを示すブロック図である。
図7】制御装置に記憶された開度決定データの一例を示す図である。
図8】薬液の加熱を開始してから加熱された薬液を基板に供給するまでの流れの一例を示す工程図である。
図9】薬液ノズルに供給される薬液の流量および温度の時間的変化の一例を示すグラフである。
図10】薬液ノズルに供給される薬液の流量および温度の時間的変化の他の例を示すグラフである。
図11】本発明の第2実施形態に係る第1薬液ノズルおよび第2薬液ノズルを水平に見た模式図である。
図12】第1薬液ノズルおよび第2薬液ノズルの模式的な平面図である。
図13図11に示す矢印XIIIの方向に第1薬液ノズルおよび第2薬液ノズルを見た模式図である。
図14】本発明の第2実施形態に係る薬液供給システムを示す模式図である。
図15】第1薬液ノズルおよび第2薬液ノズルに供給される薬液の流量の時間的変化の一例を示すグラフである。
図16】第1薬液ノズルおよび第2薬液ノズルに供給される薬液の温度の時間的変化の一例を示すグラフである。
図17】本発明の第3実施形態に係る制御装置の機能ブロックを示すブロック図である。
図18】制御装置に記憶された開度決定データの一例を示す図である。
図19】レシピの取得から加熱された薬液の供給を停止するまでの処理の流れの一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容する複数のキャリアCを保持する複数のロードポートLPと、複数のロードポートLPから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。
【0040】
基板処理装置1は、さらに、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットを含む。搬送ロボットは、インデクサロボットIRと、センターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRは、基板Wを支持するハンドを含む。
【0041】
基板処理装置1は、後述する開閉バルブ25などの流体機器を収容する複数(4つ)の流体ボックス4を含む。処理ユニット2および流体ボックス4は、基板処理装置1の外壁1aの中に配置されており、基板処理装置1の外壁1aで覆われている。後述する薬液タンク31等を収容する複数(4つ)の薬液キャビネット5は、基板処理装置1の外壁1aの外に配置されている。薬液キャビネット5は、基板処理装置1の側方に配置されていてもよいし、基板処理装置1が設置されるクリーンルームの下(地下)に配置されていてもよい。
【0042】
複数の処理ユニット2は、平面視においてセンターロボットCRを取り囲むように配置された4つの塔を形成している。各塔は、上下に積層された3つの処理ユニット2を含む。4つの薬液キャビネット5は、それぞれ、4つの塔に対応している。4つの流体ボックス4は、それぞれ、4つの薬液キャビネット5に対応している。薬液キャビネット5内の薬液は、対応する流体ボックス4を介して、同一の塔に含まれる3つの処理ユニット2に供給される。
【0043】
図2は、処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー6と、チャンバー6内で基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック10と、基板Wから排出された処理液を受け止める筒状のカップ14と含む。
チャンバー6は、基板Wが通過する搬入搬出口が設けられた箱型の隔壁8と、搬入搬出口を開閉するシャッター9と、フィルター35によってろ過された空気であるクリーンエアーのダウンフローをチャンバー6内に形成するFFU7(ファン・フィルタ・ユニット)とを含む。チャンバー6内の気温は、FFU7によって送られたクリーンエアーで一定に維持されている。センターロボットCRは、搬入搬出口を通じてチャンバー6に基板Wを搬入し、搬入搬出口を通じてチャンバー6から基板Wを搬出する。
【0044】
スピンチャック10は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン11と、複数のチャックピン11を回転させることにより回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンモータ13とを含む。スピンチャック10は、複数のチャックピン11を基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0045】
カップ14は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びる筒状の傾斜部14aと、傾斜部14aの下端部(外端部)から下方に延びる円筒状の案内部14bと、上向きに開いた環状の溝を形成する液受部14cとを含む。傾斜部14aは、基板Wおよびスピンベース12よりも大きい内径を有する円環状の上端を含む。傾斜部14aの上端は、カップ14の上端に相当する。カップ14の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース12を取り囲んでいる。
【0046】
処理ユニット2は、スピンチャック10が基板Wを保持する保持位置よりもカップ14の上端が上方に位置する上位置(図2に示す位置)と、カップ14の上端が保持位置よりも下方に位置する下位置との間で、カップ14を鉛直に昇降させるカップ昇降ユニット15を含む。処理液が基板Wに供給されるとき、カップ14は上位置に配置される。基板Wから外方に飛散した処理液は、傾斜部14aによって受け止められた後、案内部14bによって液受部14c内に集められる。
【0047】
処理ユニット2は、スピンチャック10に保持されている基板Wの上面に向けて薬液を下方に吐出する薬液ノズル21を含む。薬液ノズル21は、開閉バルブ25が介装された薬液配管22に接続されている。処理ユニット2は、薬液ノズル21から吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と薬液ノズル21が平面視で基板Wから離れた退避位置との間で薬液ノズル21を水平に移動させるノズル移動ユニット27を含む。ノズル移動ユニット27は、たとえば、カップ14のまわりで鉛直に延びるノズル回動軸線A2まわりに薬液ノズル21を水平に移動させる旋回ユニットである。
【0048】
開閉バルブ25が開かれると、薬液が、薬液配管22から薬液ノズル21に供給され、薬液ノズル21から吐出される。薬液は、たとえば、エッチング液の一例であるリン酸である。薬液は、リン酸以外の液体であってもよい。たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液が、薬液ノズル21に供給されてもよい。
【0049】
処理ユニット2は、スピンチャック10に保持されている基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出するリンス液ノズル16を含む。リンス液ノズル16は、リンス液バルブ18が介装されたリンス液配管17に接続されている。処理ユニット2は、リンス液ノズル16から吐出されたリンス液が基板Wに供給される処理位置とリンス液ノズル16が平面視で基板Wから離れた退避位置との間でリンス液ノズル16を水平に移動させるノズル移動ユニットを備えていてもよい。
【0050】
リンス液バルブ18が開かれると、リンス液が、リンス液配管17からリンス液ノズル16に供給され、リンス液ノズル16から吐出される。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0051】
図3は、本発明の第1実施形態に係る薬液供給システムを示す模式図である。図3では、流体ボックス4を一点鎖線で示しており、薬液キャビネット5を二点鎖線で示している。一点鎖線で囲まれた領域に配置された部材は流体ボックス4内に配置されており、二点鎖線で囲まれた領域に配置された部材は薬液キャビネット5内に配置されている。
基板処理装置1は、複数の処理ユニット2によって形成された複数の塔にそれぞれ対応する複数の薬液供給システムを含む。薬液供給システムは、同じ塔に含まれる全ての処理ユニット2に薬液を供給する。図3は、1つの薬液供給システムと、この薬液供給システムに対応する3つの処理ユニット2とを示している。
【0052】
薬液供給システムは、基板Wに供給される薬液を貯留する薬液タンク31と、薬液タンク31内の薬液を循環させる環状の循環路を形成する循環配管32とを含む。薬液供給システムは、さらに、薬液タンク31内の薬液を循環配管32に送るポンプ34と、パーティクルなどの異物を薬液から除去するフィルター35と、薬液を加熱することにより薬液タンク31内の薬液の温度を調整するヒータ33とを含む。ポンプ34、フィルター35、およびヒータ33は、循環配管32に介装されている。
【0053】
ポンプ34は、常時、薬液タンク31内の薬液を循環配管32内に送る。薬液供給システムは、ポンプ34に代えて、薬液タンク31内の気圧を上昇させることにより薬液タンク31内の薬液を循環配管32に押し出す加圧装置を備えていてもよい。ポンプ34および加圧装置は、いずれも、薬液タンク31内の薬液を循環配管32に送る送液装置の一例である。
【0054】
循環配管32の上流端および下流端は、薬液タンク31に接続されている。薬液は、薬液タンク31から循環配管32の上流端に送られ、循環配管32の下流端から薬液タンク31に戻る。これにより、薬液タンク31内の薬液が循環路を循環する。薬液が循環路を循環している間に、薬液に含まれる異物がフィルター35によって除去され、薬液がヒータ33によって加熱される。これにより、薬液タンク31内の薬液は、室温よりも高い一定の温度に維持される。
【0055】
同じ塔に含まれる3つの処理ユニット2にそれぞれ対応する3つの薬液配管22は、同じ循環配管32に接続されている。したがって、同じ塔に含まれる3つの処理ユニット2には、同じ薬液タンク31内の薬液が供給される。流量計23、流量調整バルブ24、開閉バルブ25、および温度センサー26は、それぞれの薬液配管22に介装されている。
薬液配管22を介して薬液ノズル21に供給される薬液の流量は、流量調整バルブ24によって変更される。薬液ノズル21に対する薬液の供給および供給停止の切替は、開閉バルブ25によって行われる。開閉バルブ25が開かれると、流量調整バルブ24の開度に対応する流量で薬液が薬液ノズル21に供給される。薬液配管22を介して薬液ノズル21に供給される薬液の流量は、流量計23によって検出される。薬液配管22内の薬液の温度は、温度センサー26によって検出される。流量計23および温度センサー26の検出値は、制御装置3に入力される。
【0056】
図4は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
制御装置3は、コンピュータ本体41と、コンピュータ本体41に接続された周辺装置44とを含む。コンピュータ本体41は、各種の命令を実行するCPU42(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶する主記憶装置43とを含む。周辺装置44は、プログラムP等の情報を記憶する補助記憶装置45と、リムーバブルメディアMから情報を読み取る読取装置46と、ホストコンピュータHC等の他の装置と通信する通信装置47とを含む。
【0057】
制御装置3は、入力装置48および表示装置49に接続されている。入力装置48は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置49の画面に表示される。入力装置48は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置48および表示装置49を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。
【0058】
CPU42は、補助記憶装置45に記憶されたプログラムPを実行する。補助記憶装置45内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、読取装置46を通じてリムーバブルメディアMから補助記憶装置45に送られたものであってもよいし、ホストコンピュータHCなどの外部装置から通信装置47を通じて補助記憶装置45に送られたものであってもよい。
【0059】
補助記憶装置45およびリムーバブルメディアMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。補助記憶装置45は、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアMは、たとえば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。
【0060】
補助記憶装置45は、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。後述する設定温度は、レシピに含まれている。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータHCによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。以下の各工程は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0061】
図5は、基板処理装置1によって実行される基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。
基板Wの処理の具体例は、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜とが露出した基板W(シリコンウエハ)の表面(デバイス形成面)にリン酸を供給して、シリコン窒化膜を選択的にエッチングする選択エッチングである。この場合、薬液の一例であるリン酸(厳密には、リン酸水溶液)は、ヒータ33(図3参照)によってその濃度における沸点に維持される。基板Wの処理は、リン酸以外のエッチング液を用いた選択エッチングであってもよいし、洗浄などの選択エッチング以外の処理であってもよい。
【0062】
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときには、チャンバー6内に基板Wを搬入する搬入工程が行われる(図5のステップS1)。
具体的には、薬液ノズル21が基板Wの上方から退避しており、カップ14が下位置に位置している状態で、センターロボットCR(図1参照)が、基板Wをハンドで支持しながら、ハンドをチャンバー6内に進入させる。その後、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンド上の基板Wをスピンチャック10の上に置く。スピンモータ13は、基板Wがチャックピン11によって把持された後、基板Wの回転を開始させる。センターロボットCRは、基板Wがスピンチャック10の上に置かれた後、ハンドをチャンバー6の内部から退避させる。
【0063】
次に、薬液の一例であるリン酸を基板Wに供給する薬液供給工程が行われる(図5のステップS2)。
具体的には、ノズル移動ユニット27が、薬液ノズル21を処理位置に移動させ、ガード昇降ユニットが、カップ14を上位置まで上昇させる。その後、開閉バルブ25が開かれ、薬液ノズル21がリン酸の吐出を開始する。薬液ノズル21がリン酸を吐出しているとき、ノズル移動ユニット27は、薬液ノズル21から吐出されたリン酸が基板Wの上面中央部に着液する中央処理位置と、薬液ノズル21から吐出されたリン酸が基板Wの上面外周部に着液する外周処理位置と、の間で薬液ノズル21を移動させてもよいし、リン酸の着液位置が基板Wの上面中央部に位置するように薬液ノズル21を静止させてもよい。
【0064】
薬液ノズル21から吐出されたリン酸は、基板Wの上面に着液した後、回転している基板Wの上面に沿って外方に流れる。これにより、基板Wの上面全域を覆うリン酸の液膜が形成され、基板Wの上面全域にリン酸が供給される。特に、ノズル移動ユニット27が薬液ノズル21を中央処理位置と外周処理位置との間で移動させる場合は、基板Wの上面全域がリン酸の着液位置で走査されるので、リン酸が基板Wの上面全域に均一に供給される。これにより、基板Wの上面が均一に処理される。開閉バルブ25が開かれてから所定時間が経過すると、開閉バルブ25が閉じられる。その後、ノズル移動ユニット27が薬液ノズル21を退避位置に移動させる。
【0065】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給するリンス液供給工程が行われる(図5のステップS3)。
具体的には、リンス液バルブ18が開かれ、リンス液ノズル16が純水の吐出を開始する。基板Wの上面に着液した純水は、回転している基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のリン酸は、リンス液ノズル16から吐出された純水によって洗い流される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液バルブ18が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ18が閉じられ、純水の吐出が停止される。
【0066】
次に、基板Wの回転によって基板Wを乾燥させる乾燥工程が行われる(図5のステップS4)。
具体的には、スピンモータ13が基板Wを回転方向に加速させ、薬液供給工程およびリンス液供給工程での基板Wの回転速度よりも大きい高回転速度(たとえば数千rpm)で基板Wを回転させる。これにより、液体が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ13が回転を停止する。これにより、基板Wの回転が停止される。
【0067】
次に、基板Wをチャンバー6から搬出する搬出工程が行われる(図5のステップS5)。
具体的には、ガード昇降ユニットが、カップ14を下位置まで下降させる。その後、センターロボットCR(図1参照)が、ハンドをチャンバー6内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン11が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック10上の基板Wをハンドで支持する。その後、センターロボットCRは、基板Wをハンドで支持しながら、ハンドをチャンバー6の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー6から搬出される。
【0068】
図6は、制御装置3の機能ブロックを示すブロック図である。図7は、制御装置3に記憶された開度決定データの一例を示す図である。図6に示す情報取得部51、加熱実行部52、開度決定部53、開度設定部54、および処理液供給部55は、制御装置3にインストールされたプログラムPをCPU42が実行することにより実現される機能ブロックである。
【0069】
制御装置3は、基板処理装置1に入力された情報を取得する情報取得部51を含む。情報取得部51に取得される情報は、ホストコンピュータHCなどの外部装置から基板処理装置1に入力されたものであってもよいし、操作者が入力装置48を介して基板処理装置1に入力したものであってもよい。後述する加熱温度および設定温度は、情報取得部51に取得される情報に含まれる。
【0070】
制御装置3は、ヒータ33に加熱温度で薬液を加熱させる加熱実行部52を含む。加熱温度は、ヒータ33によって加熱された薬液の温度の目標値である。加熱温度は、たとえば、ホストコンピュータHCがレシピを指定する前に基板処理装置1に入力される。加熱実行部52は、たとえば、処理すべき基板Wを収容したキャリアCが基板処理装置1に搬送される前からヒータ33に加熱温度で薬液を加熱させている。したがって、キャリアCが基板処理装置1に搬送されると、直ぐに基板Wの搬送および処理を開始できる。
【0071】
制御装置3は、複数組の開度決定部53および開度設定部54と、処理液供給部55とを含む。制御装置3は、複数の開度決定データを補助記憶装置45に記憶している。複数の開度決定データは、それぞれ、複数の処理ユニット2に対応している。同様に、複数組の開度決定部53および開度設定部54は、それぞれ、複数の処理ユニット2に対応している。つまり、専用の開度決定データ、開度決定部53、および開度設定部54が処理ユニット2ごとに設けられている。
【0072】
開度決定データは、加熱温度、吐出温度、および供給流量の関係を規定するデータである。加熱温度は、ヒータ33によって加熱された薬液の温度の目標値である。吐出温度は、薬液ノズル21から吐出されたときの薬液の実際の温度である。供給流量は、加熱温度で薬液配管22に供給された薬液が吐出温度で薬液ノズル21から吐出されたときに薬液配管22に供給された薬液の実際の流量である。流量調整バルブ24の開度は、薬液配管22に供給される薬液の流量と正比例の関係にある。したがって、開度決定データは、加熱温度、吐出温度、および開度の関係を規定するデータであるともいえる。
【0073】
薬液ノズル21から吐出されたときの薬液の温度の目標値である設定温度は、情報取得部51に取得される。流量調整バルブ24の開度の目標値、つまり、薬液配管22に供給される薬液の流量の目標値は、開度決定データと加熱温度と設定温度とに基づいて決定される。流量調整バルブ24の開度の目標値を目標開度と定義する。開度決定データは、加熱温度、吐出温度、および目標開度の複数の組み合わせを規定するマトリックスであってもよいし、加熱温度および吐出温度から目標開度を計算する計算式であってもよい。
【0074】
図7は、開度決定データがマトリックスである例を示している。図7において、Thxは、加熱温度を示しており、Tdyは、吐出温度を示しており、θxyは、目標開度を示している(xおよびyは、正の整数を表す)。左端の列には複数の加熱温度が含まれる。上端の列には複数の吐出温度が含まれる。加熱温度および吐出温度が一つずつ特定されると、これらに対応する1つの目標開度が特定される。情報取得部51が取得した加熱温度が左端の列に含まれていない場合、最も近い値を左端の列から選択すればよい。同様に、情報取得部51が取得した吐出温度が上端の列に含まれていない場合、最も近い値を上端の列から選択すればよい。
【0075】
開度決定部53は、開度決定データと情報取得部51が取得した加熱温度および設定温度とに基づいて、吐出温度が設定温度に一致するまたは近づく目標流量に対応する目標開度を決定する。目標流量は、薬液配管22に供給される薬液の流量の目標値である。開度設定部54は、流量調整バルブ24の開度を目標開度に設定する。処理液供給部55は、開閉バルブ25を開閉することにより、この状態で薬液ノズル21に薬液を供給する。流量調整バルブ24の具体的な動作については後述する。
【0076】
図8は、薬液の加熱を開始してから加熱された薬液を基板Wに供給するまでの流れの一例を示す工程図である。
基板Wに供給されるべき薬液の加熱を開始するときは、ヒータ33によって加熱された薬液の温度の目標値を表す加熱温度が制御装置3の情報取得部51に取得される(図8のステップS11)。その後、制御装置3の加熱実行部52がヒータ33に加熱温度で薬液を加熱させる(図8のステップS12)。これにより、薬液の加熱が開始され、薬液タンク31内の薬液の温度が上昇する。薬液の加熱が開始されてからある程度の時間が経つと、薬液タンク31内の薬液が加熱温度またはこれとほぼ同じ温度で安定する。
【0077】
基板処理装置1で処理すべき基板Wは、キャリアCに収容された状態でロードポートLPに搬送される(図8のステップS13)。キャリアCがロードポートLPに搬送されると、キャリアC内の基板Wに適用すべきレシピを指定する信号がホストコンピュータHCから制御装置3に入力される(図8のステップS14)。これにより、薬液ノズル21から吐出されたときの薬液の温度の目標値であり加熱温度よりも低い設定温度が制御装置3の情報取得部51に取得される(図8のステップS15)。
【0078】
制御装置3の開度決定部53は、制御装置3に記憶された開度決定データと情報取得部51が取得した加熱温度および設定温度とに基づいて、吐出温度が設定温度に一致するまたは近づく目標流量に対応する目標開度を決定する(図8のステップS16)。その後、開度設定部54は、流量調整バルブ24の開度を目標開度に設定する(図8のステップS17)。処理液供給部55は、この状態で薬液配管22を介して薬液ノズル21に薬液を供給する(図8のステップS18)。薬液ノズル21への薬液の供給は、流量調整バルブ24の開度が目標開度に設定された後に開始されてもよいし、その前に開始されてもよい。図9および図10は、後者を示している。
【0079】
図9は、薬液ノズル21に供給される薬液の流量および温度の時間的変化の一例を示すグラフである。図10は、薬液ノズル21に供給される薬液の流量および温度の時間的変化の他の例を示すグラフである。
薬液ノズル21からの薬液の吐出を開始するとき、制御装置3は、レシピで指定されている指定流量に対応する開度まで流量調整バルブ24の開度を増加させる。指定流量に対応する流量調整バルブ24の開度は、目標開度よりも大きい初期開度の一例である。流量調整バルブ24の開度が指定流量に対応する大きさに設定された後、制御装置3は、開閉バルブ25を開き、薬液ノズル21に薬液の吐出を開始させる。
【0080】
薬液の吐出が開始された後は、レシピで指定されている指定流量で薬液が薬液ノズル21から吐出されるように、流量計23の検出値に基づいて流量調整バルブ24の開度を変更する流量フィードバック制御を行う。具体的には、制御装置3は、流量計23の検出値に基づいて流量調整バルブ24の開度を増加および減少させる
図9に示すように、薬液ノズル21から吐出される薬液の流量、つまり、吐出流量は、開閉バルブ25が開かれてから急激に増加し、指定流量付近に達する。その後は、流量フィードバック制御によって吐出流量が指定流量またはこの付近で安定する。その一方で、薬液ノズル21から吐出されたときの薬液の温度、つまり、吐出温度は、流量の増加から少し遅れて急激に増加し始める。
【0081】
制御装置3は、温度センサー26の検出値に基づいて計算される検出温度を監視している。検出温度が切替温度に達すると、制御装置3は、設定温度を含む設定温度範囲内に検出温度が収まるように、温度センサー26の検出値に基づいて流量調整バルブ24の開度を変更する温度フィードバック制御を行う。設定温度は、たとえば、設定温度範囲の中央値である。設定温度範囲内の値であれば、設定温度は設定温度範囲の中央値でなくてもよい。
【0082】
温度フィードバック制御が開始されると、制御装置3は、薬液ノズル21に供給される薬液の流量の目標値を表す設定流量を指定流量から目標流量に減少させる。具体的には、制御装置3は、開度決定データと加熱温度と設定温度とに基づいて、吐出温度が設定温度に一致するまたは近づく目標流量に対応する目標開度を事前に決定する。温度フィードバック制御が開始されると、制御装置3は、流量調整バルブ24の開度を減少させて目標開度に近づける。その後、制御装置3は、温度センサー26の検出値に基づいて流量調整バルブ24の開度を増減させる。
【0083】
図9は、検出温度が切替温度に達すると吐出流量を急激に減少させ、その後、吐出流量を増加および減少させる例を示している。検出温度は、温度フィードバック制御が開始された後、設定温度範囲内に収まる。温度フィードバック制御の実行中において、検出温度は、設定温度範囲内で増加および減少しているものの、その変動量は時間の経過に伴って減少している。温度フィードバック制御が開始されてからある程度の時間が経過すると、検出温度は、設定温度範囲の中央値またはこの付近で安定する。これにより、設定温度に等しいまたは概ね等しい温度の薬液が薬液ノズル21から吐出される。
【0084】
図9に示す例では、温度フィードバック制御を実行する場合について説明したが、図10に示すように、制御装置3は温度フィードバック制御を実行しなくてもよい。図10に示す例では、図9に示す例と同様に、最初は設定流量が指定流量に設定され、流量調整バルブ24の開度が指定流量に対応する値に設定される。その後、制御装置3は、流量調整バルブ24の開度を目標開度に変更する。流量調整バルブ24の開度を目標開度に変更するタイミングは、検出温度が切替温度に達したときであってもよいし、開閉バルブ25を開いてから所定時間が経過したときであってもよい。後者の場合、タイマーが制御装置3に備えられている。この場合、温度センサー26は必要でない。
【0085】
薬液タンク31から薬液ノズル21までの流路の長さが複数の薬液ノズル21で異なる場合がある。この場合、基板Wに供給されるまでに失われる薬液の熱量は、流路ごとに異なる。開度決定データは薬液ノズル21ごとに設けられており、流量調整バルブ24の開度の設定は薬液ノズル21ごとに行われる。つまり、吐出温度を設定温度に一致させるまたは近づける制御は、薬液ノズル21ごとに実行される。これにより、複数の薬液ノズル21における吐出温度のばらつきを軽減でき、別々の処理ユニット2で処理された複数枚の基板W間での処理品質の差を低減できる。
【0086】
以上のように第1実施形態では、ヒータ33によって加熱温度で加熱された薬液が薬液配管22を介して薬液ノズル21に供給される。薬液ノズル21から吐出されたときの薬液の温度を表す吐出温度は、薬液配管22に供給される薬液の温度だけでなく、薬液配管22に供給される薬液の流量に応じて変化する。つまり、薬液の供給流量が減少すると、吐出温度が低下し、薬液の供給流量が増加すると、吐出温度が上昇する。これは、熱損失量が薬液の供給流量にかかわらず概ね一定であるのに対して、薬液の熱容量は薬液の供給流量に応じて変化するからである。
【0087】
加熱温度が同じであったとしても、薬液の供給流量が異なると吐出温度も異なる。これらの関係を規定する開度決定データは、制御装置3に記憶されている。薬液の供給流量は、吐出温度が設定温度に一致するまたは近づくように開度決定データに基づいて設定される。つまり、薬液の供給流量を規定する流量調整バルブ24の開度は、吐出温度が設定温度に一致するまたは近づく目標流量に対応する目標開度に設定される。この状態で加熱温度の薬液が薬液配管22に供給される。これにより、設定温度またはこれとほぼ同じ温度の薬液が薬液ノズル21から吐出される。
【0088】
このように、ヒータ33の温度を適切に管理するだけでなく、薬液配管22および薬液ノズル21に供給される薬液の流量、つまり、薬液の熱容量を加熱温度および設定温度に応じて適切に設定するので、薬液ノズル21から吐出されたときの薬液の温度をより高い精度でコントロールすることができる。これにより、意図する温度と基板Wに供給された薬液の実際の温度との差を減少させることができる。さらに、流量調整バルブ24の開度を変えれば、ヒータ33の温度を変えずに、基板Wに供給される薬液の温度を変更することができる。したがって、ヒータ33の温度を変える場合と比較して短時間で薬液の温度を変更することができる。
【0089】
第1実施形態では、共通配管の一例である循環配管32内を流れる薬液が、複数の薬液配管22に供給される。したがって、少なくとも成分が等しい薬液が、複数の薬液ノズル21から吐出される。複数の薬液ノズル21から吐出された薬液は、別々の基板Wに供給される。したがって、少なくとも成分が等しい薬液を別々の基板Wに供給でき、複数枚の基板W間における処理のばらつきを低減することができる。
【0090】
第1実施形態では、制御装置3の開度設定部54が、流量調整バルブ24の開度を目標開度よりも大きい初期開度に設定する。具体的には、制御装置3の開度設定部54が、流量調整バルブ24の開度をレシピで指定されている指定流量に対応する開度に設定する。この状態で制御装置3の処理液供給部55が薬液配管22を介して薬液ノズル21に薬液を供給する。その後、制御装置3の開度設定部54が流量調整バルブ24の開度を初期開度から目標開度に減少させる。この状態で制御装置3の処理液供給部55が薬液配管22を介して薬液ノズル21に薬液を供給する。
【0091】
薬液配管22および薬液ノズル21への薬液の供給が開始された直後は、薬液配管22および薬液ノズル21が冷めているので、熱損失量が相対的に大きい。その一方で、薬液の供給が開始されてからある程度の時間が経つと、薬液配管22および薬液ノズル21が温まるので、熱損失量が減少する。したがって、同じ温度の薬液を同じ流量で薬液配管22および薬液ノズル21に供給し続けると、薬液ノズル21から吐出されたときの薬液の温度が時間の経過に伴って変化する。
【0092】
第1実施形態では、薬液配管22および薬液ノズル21に供給される薬液の流量を時間の経過に伴って減少させる。言い換えると、薬液の供給開始時は、相対的に大きな流量で薬液を薬液配管22および薬液ノズル21に供給する。そして、薬液配管22および薬液ノズル21が温まると、相対的に小さな流量で薬液を薬液配管22および薬液ノズル21に供給する。これにより、薬液ノズル21から吐出されたときの薬液の温度の変動量を減少させることができる。
【0093】
第1実施形態では、基板Wに供給される前の薬液の温度が温度センサー26によって検出される。温度センサー26によって検出された薬液の温度が切替温度に達すると、つまり、薬液配管22および薬液ノズル21が温まったことが確認されると、制御装置3の開度設定部54は、流量調整バルブ24の開度を目標開度に減少させる。したがって、薬液配管22および薬液ノズル21が温まっているにもかかわらず、相対的に大きな流量で薬液が薬液配管22および薬液ノズル21に供給され続けることを防止できる。
【0094】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態が第1実施形態に対して主として異なる点は、同種の処理液を同じ基板Wに向けて吐出する複数のノズルが同じ処理ユニット2に設けられていることである。
以下の図11図16において、前述の図1図10に示された構成と同等の構成については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0095】
図11は、本発明の第2実施形態に係る第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62を水平に見た模式図である。図12は、第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62の模式的な平面図である。図13は、図11に示す矢印XIIIの方向に第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62を見た模式図である。図11図13は、第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62が処理位置に配置されている状態を示している。
【0096】
図11に示すように、処理ユニット2は、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する第1吐出口61aが設けられた第1薬液ノズル61と、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する複数の第2吐出口62aが設けられた第2薬液ノズル62とを含む。第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62は、ノズルホルダー60に保持されている。ノズル移動ユニットは、ノズルホルダー60を移動させることにより、第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62を処理位置と退避位置との間で移動させる。
【0097】
第1薬液ノズル61は、ノズルホルダー60から離れる方向に水平に延びる水平部61dと、水平部61dから下方に延びる垂下部61cと、垂下部61cから下方に延びており、垂下部61cよりも細い吐出部61bとを含む。第2薬液ノズル62は、ノズルホルダー60から離れる方向に水平に延びる上水平部62dと、上水平部62dから下方に延びる垂下部62cと、垂下部62cからノズル回動軸線A2の方に水平に延びる下水平部62bとを含む。
【0098】
第1薬液ノズル61の水平部61dと第2薬液ノズル62の上水平部62dとは、互いに平行であり、水平な長手方向D3に延びている。第1薬液ノズル61は、第2薬液ノズル62よりも長手方向D3に短い。図12に示すように、第2薬液ノズル62が処理位置に配置されているとき、第2薬液ノズル62の垂下部62cは、平面視で基板Wの中央部に重なり、第2薬液ノズル62の下水平部62bの外端部は、平面視で基板Wの外周部に重なる。
【0099】
第2薬液ノズル62の上水平部62dは、第2薬液ノズル62の下水平部62bの上方に配置されており、平面視で下水平部62bに重なる。図11に示すように、下水平部62bは、上水平部62dから下方に延びるブラケット63を介して上水平部62dに支持されている。複数の第2吐出口62aは、第2薬液ノズル62の下水平部62bに設けられている。複数の第2吐出口62aは、長手方向D3に一致する下水平部62bの軸方向に配列されている。第2薬液ノズル62が処理位置に配置されているとき、最も内側の第2吐出口62aは、第1薬液ノズル61の吐出部61bに設けられた第1吐出口61aよりも内側、つまり、回転軸線A1側に位置し、最も外側の第2吐出口62aは、第1吐出口61aよりも外側に位置する。
【0100】
第1薬液ノズル61が処理位置に配置されているとき、第1薬液ノズル61は、基板Wの上面中央部に向けて薬液を吐出する。第2薬液ノズル62が処理位置に配置されているとき、第2薬液ノズル62は、中央部を除く基板Wの上面上の複数の着液位置に向けて薬液を吐出する。複数の着液位置は、回転軸線A1からの距離が互いに異なる。回転軸線A1からの距離が互いに異なるのであれば、複数の着液位置は、基板Wの周方向(基板Wの回転方向)にずれていてもよい。
【0101】
図11および図13に示すように、第1吐出口61aは、第1吐出口61aから基板Wの上面中央部に向かう第1吐出方向D1に薬液を吐出する。第2吐出口62aは、第2吐出口62aから基板Wの上面に向かう第2吐出方向D2に薬液を吐出する。第1吐出方向D1は、基板Wの上面に対して基板Wの径方向に傾いた斜め方向である。第2吐出方向D2は、基板Wの上面に対して基板Wの周方向に傾いた斜め方向である。第1吐出方向D1および第2吐出方向D2の少なくとも一方は、基板Wの上面に対して垂直な鉛直方向であってもよい。
【0102】
スピンチャック10が基板Wを回転させているとき、第1薬液ノズル61の第1吐出口61aから吐出された薬液は、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの上面に沿って外方に流れる。第2薬液ノズル62の複数の第2吐出口62aから吐出された薬液は、基板Wの上面上の複数の着液位置に着液し、基板Wの上面に沿って外方に流れる。これにより、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が形成され、基板Wの上面の各部に薬液が均一に供給される。
【0103】
図14は、本発明の第2実施形態に係る薬液供給システムを示す模式図である。
第1薬液ノズル61は、第1薬液配管64に接続されており、第2薬液ノズル62は、第2薬液配管68に接続されている。第1薬液配管64および第2薬液配管68は、循環配管32に接続されている。したがって、同じ薬液タンク31内の薬液が第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62に供給される。第1流量計65、第1電動バルブ66、および第1温度センサー67は、第1薬液配管64に介装されている。同様に、第2流量計69、第2電動バルブ70、および第2温度センサー71は、第2薬液配管68に介装されている。
【0104】
第1電動バルブ66および第2電動バルブ70は、いずれも、液体の供給および供給停止の切替と液体の供給流量の変更とを行う電動バルブである。電動バルブは、流路を形成するバルブボディと、流路内に配置された弁体と、弁体を移動させる電動アクチュエータとを含む。弁体は、弁体と弁座との接触によって電動バルブが閉じられる全閉位置と、電動バルブの開度が最も大きい全開位置との間で移動可能である。制御装置3は、電動アクチュエータを制御することにより、全閉位置から全開位置までの範囲内の任意の位置に弁体を位置させる。
【0105】
処理ユニット2は、第1電動バルブ66の代わりに、開閉バルブ25と流量調整バルブ24とを備えていてもよい。同様に、処理ユニット2は、第2電動バルブ70の代わりに、開閉バルブ25と流量調整バルブ24とを備えていてもよい。開閉バルブ25は、完全に閉じるバルブであり、流量調整バルブ24は、完全に閉じないバルブである。開閉バルブ25の弁体は、弁体が弁座に接触する全閉位置と、弁体が弁座から離れた全開位置と、の間で移動可能である。流量調整バルブ24の弁体は、弁体が弁座から離れた低流量位置と、弁体が弁座から離れた高流量開位置と、の間で移動可能である。弁体が低流量位置に配置されているときの流量調整バルブ24の開度は、弁体が高流量位置に配置されているときの流量調整バルブ24の開度よりも小さい。
【0106】
第1温度センサー67は、第1流量計65および第1電動バルブ66の下流に配置されている。すなわち、第1温度センサー67は、第1流量計65および第1電動バルブ66に対して第1薬液ノズル61側に配置されている。同様に、第2温度センサー71は、第2流量計69および第2電動バルブ70に対して第2薬液ノズル62側に配置されている。第1温度センサー67および第2温度センサー71は、チャンバー6の中に配置されている。図11および図12は、第1温度センサー67および第2温度センサー71がノズルホルダー60の上に配置されている例を示している。
【0107】
第1温度センサー67による温度の検出位置が第1薬液ノズル61に近いので、第1温度センサー67の検出値に基づいて計算される第1検出温度を第1薬液ノズル61から吐出されたときの薬液の実際の温度に近づけることができる。同様に、第2温度センサー71による温度の検出位置が第2薬液ノズル62に近いので、第2温度センサー71の検出値に基づいて計算される第2検出温度を第2薬液ノズル62から吐出されたときの薬液の実際の温度に近づけることができる。これにより、第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62から吐出されたときの薬液の実際の温度をより高い精度で監視できる。
【0108】
図15は、第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62に供給される薬液の流量の時間的変化の一例を示すグラフである。図16は、第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62に供給される薬液の温度の時間的変化の一例を示すグラフである。
制御装置3の補助記憶装置45は、複数のレシピと複数の開度決定データとを記憶している(図4参照)。複数の開度決定データには、第1薬液ノズル61に対応する第1開度決定データと、第2薬液ノズル62に対応する第2開度決定データとが含まれる。レシピには、第1薬液ノズル61から吐出される薬液の流量の目標値を表す第1指定流量と、第2薬液ノズル62から吐出される薬液の流量の目標値を表す第2指定流量とが含まれる。さらに、第1薬液ノズル61から吐出される薬液の温度の目標値を表す第1設定温度と、第2薬液ノズル62から吐出される薬液の温度の目標値を表す第2設定温度とが、レシピに含まれる。
【0109】
第1指定流量は、第1目標開度よりも大きい第1初期開度の一例であり、第2指定流量は、第2目標開度よりも大きい第2初期開度の一例である。第1指定流量および第2指定流量は、互いに等しい値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。第1設定温度および第2設定温度についても同様である。図15は、第1指定流量が第2指定流量よりも少ない例を示している。図16は、第1設定温度が第2設定温度よりも低い例を示している。
【0110】
第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62への薬液の供給を開始するときは、制御装置3が、第1流量調整バルブ24の開度を第1指定流量に対応する開度まで増加させる。同様に、制御装置3は、第2流量調整バルブ24の開度を第2指定流量に対応する開度まで増加させる。第2実施形態では、第1流量調整バルブ24および第2流量調整バルブ24が開閉バルブ25を兼ねるので、第1流量調整バルブ24および第2流量調整バルブ24が開かれると、第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62からの薬液の吐出が開始される。図15は、第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62が薬液の吐出を同時に開始する例を示している。しかしながら、第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62は、互いに異なる時期に薬液の吐出が開始されてもよい。
【0111】
図16に示すように、第1流量調整バルブ24および第2流量調整バルブ24が開かれると、第1検出温度および第2検出温度が急激に増加する。第1検出温度が第1切替温度に達すると、制御装置3は、温度フィードバック制御を開始し、第1流量調整バルブ24の開度を第1目標開度に近づける。同様に、第2検出温度が第2切替温度に達すると、制御装置3は、温度フィードバック制御を開始し、第2流量調整バルブ24の開度を第2目標開度に近づける。第1目標開度は、第1開度決定データと加熱温度と第1設定温度とに基づいて決定された値である。第2目標開度は、第2開度決定データと加熱温度と第2設定温度とに基づいて決定された値である。第1目標温度は、第2目標温度よりも低い。
【0112】
温度フィードバック制御が開始されると、制御装置3は、第1温度センサー67の検出値に基づいて第1流量調整バルブ24の開度を増減させる。同様に、制御装置3は、第2温度センサー71の検出値に基づいて第2流量調整バルブ24の開度を増減させる。温度フィードバック制御が開始されてからある程度の時間が経つと、第1検出温度が第1設定温度を含む第1設定温度範囲内に収まり、第2検出温度が第2設定温度を含む第2設定温度範囲内に収まる。これにより、第1設定温度および第2設定温度に等しいまたは概ね等しい温度の薬液が第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62から吐出される。
【0113】
以上のように第2実施形態では、第1薬液ノズル61から吐出された薬液と第2薬液ノズル62から吐出された薬液とが、同じ基板Wに供給される。第1薬液ノズル61は、基板Wの上面中央部に向けて薬液を吐出し、第2薬液ノズル62は、基板Wの上面上の複数の着液位置に向けて薬液を吐出する。複数の着液位置は、基板Wの径方向に関して基板Wの上面中央部よりも外側の位置である。したがって、第2薬液ノズル62から吐出された薬液は、第1薬液ノズル61から吐出された薬液よりも外側で基板Wに着液する。
【0114】
基板W上での薬液の温度は回転軸線A1から離れるしたがって低下する傾向にある。第1流量調整バルブ24および第2流量調整バルブ24の開度を個別に設定すれば、第2薬液ノズル62から吐出されたときの薬液の実際の温度を、意図的に、第1薬液ノズル61から吐出されたときの薬液の実際の温度よりも高くすることができる。これにより、基板W上での薬液の温度のばらつきを低減でき、処理の均一性を高めることができる。もちろん、同じまたはほぼ同じ温度の薬液を第1薬液ノズル61および第2薬液ノズル62から吐出させることもできる。
【0115】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態が第1および第2実施形態に対して主として異なる点は、第3実施形態では温度センサー26が出力する薬液配管22中の薬液の検出温度と、情報取得部が取得する設定温度とに基づいて、流量調整バルブ24の設定開度が動的に変更されることである。
【0116】
図17は、本発明の第3実施形態に係る制御装置103の機能ブロック図である。図18は、制御装置103に記憶された開度決定データdの一例を示す図である。図17に示す情報取得部151、開度決定部153、および開度設定部154は、制御装置3にインストールされたプログラムPをCPU42が実行することにより実現される機能ブロックである。開度決定部153および開度設定部154は薬液ノズル21毎に設けられている。
【0117】
基板処理レシピには薬液ノズル21から吐出する薬液の設定温度および薬液吐出時間が規定されている。情報取得部151は前記レシピから薬液の設定温度を取得する。温度センサー26は各処理ユニット2の薬液配管21を流れる薬液の温度を検知し情報取得部151に出力する。情報取得部151は、薬液の検出温度、設定温度および開度設定データdを取得して、開度決定部153に出力する。開度決定部153は、情報取得部151から出力される情報に基づいて設定開度を決定する。開度設定部153は開度決定部153が決定した設定開度となるように各流量調整バルブ24を制御する。
【0118】
図18は、第3実施形態における開度決定データdの一例を示すテーブルであり、このテーブルには3段階の開度設定データが記憶されている。最小開度p1は流量調整バルブ24の最小開度に対応し、最大開度p3は流量調整バルブ24の最大開度に対応する。中間開度p2は最小開度p1に設定した時に流量調整バルブ24を流れる流量と最大開度p3に設定した時に流量調整バルブ24を流れる流量の中間流量を流すことのできる流量調整バルブ24の開度である。開度決定データdはレシピおよび流量調整バルブ24毎に異なっていてもよい。
【0119】
図19は第3実施形態における流量調整バルブ24の調整を示す工程図である。図19の工程を開始する時点で薬液は加熱されつつ循環配管32(図2参照)を循環しており、薬液の温度は設定温度で安定しているものとする。また、処理ユニット2のスピンベース12上に基板Wが保持されているものとする。
まず、処理ユニット2で実行されるレシピが指定される(ステップS114)。次に、情報取得部151は指定されたレシピから薬液の設定温度と薬液の吐出時間とを取得する。また、情報取得部151は指定されたレシピに対応する開度決定データdを取得する(ステップS115)。情報取得部151はステップS115で取得された開度決定データdを参照して中間開度p2を取得する(ステップS116)。開度設定部154は中間開度p2となるように流量調整バルブ24を調整する(ステップS117)。処理液供給部55は、この状態で薬液配管22を介して薬液ノズル21に薬液を供給する(ステップS118)。これにより、薬液ノズル21から基板Wに向けて薬液が中間流量で吐出される。薬液の吐出開始後、情報取得部151は温度センサー26から取得される薬液の検出温度を取得する(ステップS119)。
【0120】
次に、開度決定部153は、ステップS119で取得された検出温度と、設定温度との大小関係に基づいて新しい開度を決定する(ステップS120)。
すなわち、検出温度が設定温度を上回る場合は、薬液の流量を減少させるために、現在の設定開度よりも僅かに小さく、かつ、最小開度p1を下回らない開度を、最新開度として決定する。検出温度が設定温度を下回る場合は、薬液の流量を増加させるために、現在の設定開度よりも僅かに大さく、かつ、最大開度p3を上回らない開度を、最新開度として決定する。検出温度が設定温度と同一である場合は、現在の設定開度を最新開度として維持する。
【0121】
その後、開度決定部154はステップS125で決定された設定開度になるように流量調整バルブ24を制御する(ステップS121)。
その後、開度決定部154はレシピに規定された薬液吐出時間が経過したか判断する(ステップS122)。
規定された薬液吐出時間が経過したと開度決定部154が判断すると、ステップS123に移行し、処理液供給部55は薬液ノズル21への薬液の供給を停止する。一方、薬液吐出時間が経過していないと開度決定部154が判断すると、ステップS119に戻り、上記ステップS119乃至S122の処理サイクルを再開する。
【0122】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
たとえば、前述の実施形態では、流量の設定によって薬液の温度を制御する場合について説明したが、薬液以外の液体の温度を流量の設定によって制御してもよい。
【0123】
薬液タンク31とヒータ33とが薬液ノズル21ごとに設けられていてもよい。
薬液ノズル21への薬液の供給を開始するときに、流量調整バルブ24の開度をレシピで指定されている指定流量に対応する開度(初期開度)まで増加させ、その後、目標開度まで減少させる場合について説明したが、目標開度よりも大きければ、初期開度は、指定流量に対応する開度とは異なる開度であってもよい。
【0124】
第1薬液ノズル61に設けられた第1吐出口61aの数は、2つ以上であってもよい。これとは反対に、第2薬液ノズル62に設けられた第2吐出口62aの数は、1つであってもよい。
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
【0125】
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。前述の全ての工程の2つ以上が組み合わされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 :基板処理装置
3 :制御装置
10 :スピンチャック(基板保持手段、第1基板保持手段、第2基板保持手段)
21 :薬液ノズル(第1ノズル、第2ノズル)
22 :薬液配管(第1配管、第2配管)
24 :流量調整バルブ(第1流量調整バルブ、第2流量調整バルブ)
25 :開閉バルブ
26 :温度センサー
31 :薬液タンク
32 :循環配管(共通配管)
33 :ヒータ
45 :補助記憶装置
51 :情報取得部
52 :加熱実行部
53 :開度決定部(第1開度決定部、第2開度決定部)
54 :開度設定部(第1開度設定部、第2開度設定部)
55 :処理液供給部(第1処理液供給部、第2処理液供給部)
61 :第1薬液ノズル(第1ノズル)
61a :第1吐出口
61b :吐出部
62 :第2薬液ノズル(第2ノズル)
62a :第2吐出口
64 :第1薬液配管(第1配管)
66 :第1電動バルブ(第1流量調整バルブ)
67 :第1温度センサー(温度センサー)
68 :第2薬液配管(第2配管)
70 :第2電動バルブ(第1流量調整バルブ)
71 :第2温度センサー(温度センサー)
A1 :回転軸線
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