(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電流検出装置は、各相のバスバに対する集磁コアが必要であるために小型化が困難である。また、集磁コアがあるために部品点数が多くコストを低減することが困難である。
【0006】
一方、コアレス電流センサは、集磁コアを用いていないので小型化が可能であるが、所定相のバスバを流れる電流を検出するときに、他相のバスバを流れる電流の磁束の影響を受ける。この影響は検出誤差の要因となり、高精度な電流検出が困難になる。
【0007】
そこで、本発明では、他相のバスバからの磁束の影響を抑制し、高精度な電流検出を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電流検出装置は、第1の方向に対して平行に配置されるとともに、それぞれ前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する複数のバスバと、前記バスバに流れる電流を検出する磁電変換素子と、前記第1の方向及び前記第2の方向に対して直交する第3の方向において、前記バスバ及び前記磁電変換素子を挟み込むように配置された一対の磁気シールドと、を備えており、前記各バスバは、側面から切り欠いた幅狭部を有し、前記幅狭部は、隣接する前記幅狭部と対向しない位置、かつ、一方の前記磁気シールドに近接する位置に配置され、前記磁電変換素子は、前記幅狭部と
前記幅狭部が近接する側の前記磁気シールドとの間に配置される、ことを特徴とする。
本発明の電流検出装置において、前記各バスバの前記幅狭部は、前記各バスバの一端側のみを切り欠くことにより形成されている、としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、他相のバスバからの磁束の影響を抑制し、高精度な電流検出を行うことができる。特に、集磁コアを用いないコアレスの電流検出装置において、高精度な電流検出を行うことができるとともに、装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、第1の実施形態における電流検出装置6が用いられる回転電機1の概略回路図である。
図1に示すように、回転電機1は、直流電源2と、インバータ3と、モータジェネレータ4とを備えている。インバータ3とモータジェネレータ4とは、バスバBによって電気的に接続されている。
【0012】
インバータ3は、直流を交流に変換する電力変換部5と、バスバBに設けられた電流検出装置6と、電力変換部5を制御する制御装置7とを備えている。電力変換部5は、MOSトランジスタやダイオード等からなる回路によって構成されている。電流検出装置6は、バスバBに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置7に出力する。なお、電流検出装置6の詳しい構成については後述する。
【0013】
制御装置7は、電流検出装置6から入力された電流値に基づいて電力変換部5を制御してモータジェネレータ4の回転駆動を制御する。
【0014】
次に、電流検出装置6について
図2〜5を参照して説明する。
図2は、電流検出装置6の概略構成を示す斜視図である。また、各図においてXYZ座標系を示しており、XYZ座標系を用いて各方向を説明する。X方向(第2の方向)はバスバBの延在方向を示し、Y方向(第1の方向)はバスバBの平行配置の方向を示し、Z方向(第3の方向)は電流検出装置6の上下方向を示している。
【0015】
電流検出装置6は、U相、V相、W相のバスバBU,BV,BWを含むバスバBと、バスバBU,BV,BWの電流をそれぞれ検出する磁電変換素子SU,SV,SWと、磁電変換素子SU,SV,SWへの磁気干渉を抑制する一対の磁気シールド10,11とを備えている。
【0016】
バスバBU,BV,BWは、Y方向において互いに平行に配置されており、X方向に延在している。磁気シールド10,11は、バスバBU,BV,BW及び磁電変換素子SU,SV,SWをZ方向において上下両側から挟み込むように配置されている。なお、バスバBU,BV,BW及び磁電変換素子SU,SV,SWの配置構成等を示すために、磁気シールド10を仮想線で示している。
【0017】
磁気シールド10,11は、例えば、高透磁率の鉄やフェライト等の磁性材料から形成されており、バスバBU,BV,BW及び磁電変換素子SU,SV,SWを覆うことが可能な平板形状である。また、磁気シールド11には、磁電変換素子SU,SV,SWが実装された基板PU,PV,PWがそれぞれ設けられている。
【0018】
磁電変換素子SU,SV,SWは、バスバBU,BV,BWに電流が流れたときに発生する磁束を検出して、これに対応する電流値を算出するものである。磁電変換素子SU,SV,SWとしては、ホール素子、MI素子(磁気インピーダンス素子)、MR素子(磁気抵抗素子)等を使用することができる。
【0019】
次に、バスバBU,BV,BWの構成について詳しく説明する。バスバBU,BV,BWは、X方向に細長い平板形状の金属板により形成されている。バスバBU,BV,BWは、その幅広の側面が互いに対向するようにY方向に対して平行に配置されている。
【0020】
バスバBU,BV,BWは、幅広部BUL,BVL,BWLと、幅広部BUL,BVL,BWLを幅方向から切り欠いて形成された幅狭部BUS,BVS,BWSとを有している。幅狭部BUS,BVS,BWSの断面積は、幅広部BUL,BVL,BWLの断面積よりも小さい。また、幅広部BUL,BVL,BWLの断面積は互いに同一であり、幅狭部BUS,BVS,BWSの断面積も互いに同一である。
【0021】
幅広部BUL,BVL,BWLと幅狭部BUS,BVS,BWSとは、千鳥状に配置されている。すなわち、幅狭部BUSは隣接する幅狭部BVSと対向しないように、幅狭部BVSは隣接する幅狭部BWSと対向しないようにそれぞれ配置されている。換言すると、幅狭部BUS,BVS,BWSは、Z方向から見ると略V字状に配置されている。また、幅狭部BUS,BVS,BWSは、バスバBU,BV,BWに流れる電流を検出するための部分であり、幅狭部BUS,BVS,BWS以外は、幅広部BUL,BVL,BWLとなっている(
図2のバスバBV参照)。
【0022】
図4は、
図3のb−b断面図を示している。
図4において、符号WLCは、幅広部BWLの中心線を示している。また、符号WSCは、幅狭部BWSの中心線を示している。幅狭部BWSの中心線WSCは、幅広部BWLの中心線WLCに対して、距離DWだけ磁気シールド11側に近接している。すなわち、幅狭部BWSは、幅広部BWLに対して磁気シールド11側にオフセットして配置されている。この点について、
図3を参照すると、幅狭部BWSは、磁気シールド10,11の間において、磁気シールド10との間隔が距離H1となり、磁気シールド11との間隔が距離H2(距離H1>距離H2)となって、磁気シールド11に近接して配置される。
【0023】
幅狭部BWSと磁気シールド11との間には、磁電変換素子SWが配置されている。磁電変換素子SWは、
図3に示すように、幅狭部BWSに対向して感磁方向がY方向を向くように配置されている。
【0024】
また、バスバBUはバスバBWと同様の構成であり、幅狭部BUSが幅広部BULに対して、磁気シールド11側にオフセットして配置されており、幅狭部BUSに対向する部分に磁電変換素子SUが配置されている。
【0025】
図2、5に示すように、バスバBVの幅狭部BVSはバスバBWの幅狭部BWSとは配置位置が異なっているが、バスバBWの幅狭部BWSと同様に、幅狭部BVSが幅広部BVLに対して磁気シールド11側にオフセットして配置されており、幅狭部BVSに対向する部分に磁電変換素子SVが配置されている。なお、
図4、5においては、図面の煩雑化を避けるため他のバスバの図示を省略している。
【0026】
次に、自相バスバの磁束を検出する際の他相バスバからの磁束の影響について説明する。ここでは、バスバBW(自相)の磁束を検出する際のバスバBV(他相)からの磁束の影響について説明するが、他のバスバBU、BVの関係についても同様である。
【0027】
図4、5において、バスバBV,BWを流れる電流の中心をそれぞれ電流IV,IWとして模式化して示す。
図4に示すように、電流IWは、幅狭部BWSでは中心線WSCを通り、幅広部BWLでは中心線WLCを通る。このように、電流IWも、磁気シールド11側にオフセットされた状態で流れることになる。
【0028】
そして、幅狭部BWSを流れる電流IWを磁電変換素子SWによって検出する。幅狭部BWSは断面積が小さいので、電流IWが集中して流れる。このため、幅狭部BWSでは大きな磁束が発生する。磁電変換素子SWはこの磁束を検出して電流値に変換する。このとき、磁電変換素子SWは、
図3において矢印で示すY方向成分の磁束を検出する。
【0029】
一方、
図5に示すように、電流IVは、幅広部BVLでは中心線VLCを通り、幅狭部BVSでは中心線VSCを通る。つまり、電流IVは、中心線VLCから中心線VSCに沿うように流れる。このように、電流IVも、磁気シールド11側にオフセットされた状態で流れることになる。
【0030】
図6に、磁電変換素子SWからみたときの電流IW,IVを重ねた状態を示す。
図6に示すように、磁電変換素子SWに対して、電流IVが流れる位置は、電流IWが流れる位置よりも距離D1だけ離れているので、電流IVによる磁束の影響を受けにくくなる。この結果、電流IVの磁束の影響を抑制することができる。
【0031】
この理由について、
図7、8を参照して説明する。
図7は
図2のa−a断面におけるY方向の磁束分布のシミュレーション結果を示し、
図8は
図3のb−b断面におけるY方向の磁束分布のシミュレーション結果を示している。
図7、8において、符号GLは磁束が小さい領域を示し、符号GHは磁束が大きい領域を示している。
【0032】
図7において、バスバBVの上部の領域GH1の磁束が最も大きく、次にバスバBVの下部の領域GH2の磁束が大きい。また、磁気シールド10,11の近傍の領域では磁束が小さく、領域GH1,GH2から離れた領域GL1,GL2,GL3,GL4の磁束も小さい。特に、領域GL3,GL4の磁束が最も小さい。
【0033】
図8において、バスバBWの幅狭部BWSの上方であって、磁気シールド10の後方の領域GH3の磁束が大きい。また、磁気シールド10,11の近傍の領域では磁束が小さく、領域GH3から離れた領域GL5,GL6,GL7の磁束も小さい。特に、領域GL6の磁束が最も小さい。なお、
図7、8において、磁電変換素子SWを一点鎖線で示す。
【0034】
図6に示す磁電変換素子SWと電流IW,IVとの関係、
図7、8に示すシミュレーション結果からわかるように、磁電変換素子SWの位置は、電流IVが流れる位置から離れており、電流IVによって発生する磁束の影響を受けにくくなっている。すなわち、磁電変換素子SWは、
図7においては領域GL4に位置しており、
図8においては領域GL6に位置している。このように、磁電変換素子SWは、バスバBVを流れる電流IVによる磁束の影響が小さい位置に配置されている。
【0035】
このため、上述したように、バスバBWの幅狭部BWSを磁気シールド11に近接するとともに、隣接するバスバBUの幅狭部BUSと互い違いに配置して、磁電変換素子SWを幅狭部BWSの近傍に配置することによって、バスバBWの磁束を良好に検出することができ、また、隣接するバスバBUの磁束の影響を抑制することができる。この結果、高精度な電流検出を行うことができる
【0036】
また、一対の磁気シールド10,11によりバスバBをZ方向の両側から挟み込むように配置しているので、バスバBU,BV,BWを個別に囲む必要がなく、磁気シールドの部品点数を削減することができ、また、その大きさも小型化することができる。この結果、電流検出装置6を小型化することができ、部品点数の削減によりコストも低減することができる。よって、高精度な電流検出と、小型化及び低コスト化とを両立することができる。
【0037】
次に、第2の実施形態について
図9、10を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態とは磁気シールド12,13の構成が異なり、その他の構成については第1の実施形態と同様なので、磁気シールド12,13の構成について説明し、その他の構成についての説明は省略する。
【0038】
図10に示すように、磁気シールド12は、バスバBU,BV,BWの幅広部BUL,BVL,BWLに対応する部分がそれぞれ切り欠かれたスリット12U,12V,12Wを有している。磁気シールド13も同様に、スリット13U,13V,13Wを有している(
図9参照)。
【0039】
このため、バスバBU,BV,BWの幅広部BUL,BVL,BWLを干渉することなく、磁気シールド12,13の間隔を狭めることができる。この結果、電流検出装置6のZ方向の大きさを小さくすることができる。第1の実施形態の電流検出装置6による効果に加え、電流検出装置6をさらに小型化することができる。
【0040】
次に、第3の実施形態について
図11、12を参照して説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態とはバスバBU,BV,BWの形状が異なり、その他の構成については第1の実施形態と同様なので、バスバBU,BV,BWの形状について説明し、その他の構成についての説明は省略する。
【0041】
図11、12に示すように、バスバBU,BV,BWの幅狭部BUS,BVS,BWSは、幅広部BUL,BVL,BWLの一側端側を切り欠くことによって形成されている。このため、バスバBU,BV,BWの幅狭部BUS,BVS,BWSを形成する際に、第1の実施形態のバスバBU,BV,BWと比べて、バスバBU,BV,BWの切り欠き加工工数を低減することができる。
【0042】
すなわち、第1の実施形態のバスバBU,BV,BWでは、幅広部BUL,BVL,BWLの両側から幅広部BUL,BVL,BWLを切り欠くことによって幅狭部BUS,BVS,BWSを形成していたが、第3の実施形態の幅狭部BUS,BVS,BWSは、幅広部BUL,BVL,BWLの片側のみを切り欠くことによって幅狭部BUS,BVS,BWSを形成することができるので、加工工数を低減することが可能になる。