(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係るX線診断装置について、添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置の構成を示す概略図である。
図2は、本実施形態に係るX線診断装置における保持装置の外観構成を示す斜視図である。
【0010】
図1及び
図2は、本実施形態に係るX線診断装置1を示す。なお、X線診断装置1は、
図1及び
図2に示すような消化器系のX線診断装置である場合に限定されるものではなく、循環器系のX線診断装置であってもよい。
【0011】
X線診断装置1は、大きくは、保持装置11及び画像処理装置12を備える。画像処理装置12は、DF(Digital Fluorography)装置とも呼ばれる。保持装置11は、一般的には、手技室(検査・治療室)に設置される一方、画像処理装置12は、手技室に隣接する制御室に設置される。
【0012】
Cアーム構造の保持装置11は、保持装置本体21、ボディフレーム22、天板保持機構23、天板24、Cアーム保持機構25、Cアーム26、X線照射装置27、X線検出装置28、制御回路30、高電圧供給装置31、及び動力回路32を設ける。なお、Cアーム保持装置11は、X線照射装置27が天板24の下方に位置するアンダーチューブタイプである場合を説明するが、X線照射装置27が天板24の上方に位置するオーバーチューブタイプである場合であってもよい。
【0013】
保持装置本体21は、床に対して固定されている。
【0014】
ボディフレーム22は、保持装置本体21に支持される。ボディフレーム22は、天板保持機構23と、Cアーム26を支持するCアーム保持機構25とをそれぞれ支持する。ボディフレーム22は、動力回路32により動作することで、天板保持機構23、天板24、Cアーム保持機構25、及びCアーム26を一体として上下運動(
図2のA方向の運動)させたり、起倒運動(
図2のB方向の運動)させたりすることが可能である。
【0015】
天板保持機構23は、ボディフレーム22に片持ち支持される。天板保持機構23は、動力回路32により動作することで、天板24をボディフレーム22に対して左右動(C−LAT:
図2のC方向の運動)させたり、上下動(C−VERT:
図2のD方向の運動)させたり、ローリング(ROLL)させたりすることが可能である。
【0016】
天板24は、天板保持機構23に支持される。天板24は、患者Pを載置する。
【0017】
Cアーム保持機構25は、ボディフレーム22に支持される。Cアーム保持機構25は、動力回路32により動作することで、Cアーム26をボディフレーム22の長軸方向にスライド動(C−LONG:
図2のE方向の運動)させることが可能である。
【0018】
Cアーム26は、X線照射装置27及びX線検出装置28を、患者Pを中心に対向配置させる。Cアーム26は、動力回路32により動作することで、Cアーム保持機構25との取付け位置を中心に回動(CRA/CAU:
図2のF方向の運動)したり、円弧動(LAO/RAO:
図2のG方向の運動)したりすることが可能である。
【0019】
X線照射装置27は、X線照射手段の一例であり、Cアーム26の一端に設けられる。X線照射装置27は、動力回路32により動作することで、前後動(
図2のH方向の運動)することが可能である。
【0020】
X線照射装置27は、X線管を備える。X線管は、高電圧供給装置31から高電圧電力の供給を受けて、この高電圧電力の条件に応じて被検体、例えば患者Pの所定部位に向かってX線管からX線を照射する。X線照射装置27は、X線管の出射側に、複数枚の鉛羽で構成されるX線照射野絞りや、シリコンゴム等で形成されハレーションを防止するために所定量の照射X線を減衰させる補償フィルタ等を設ける。X線照射装置27は、所定部位を撮影するためのX線や、所定部位を透視するためのX線を照射することができる。
【0021】
X線検出装置28は、Cアーム26の他端であってX線照射装置27の出射側に設けられる。X線検出装置28は、動力回路32により動作することで、前後動(
図2のI方向の運動)することが可能である。
【0022】
X線検出装置28は、FPD(Flat Panel Detector)281及びA/D(Analog to Digital)変換回路282を備える。
【0023】
FPD281は、二次元に配列された複数の検出素子を有するX線検出器である。FPD281の各検出素子間は、走査線と信号線とが直交するように配設される。なお、FPD281の前面に、グリッド(図示しない)が備えられてもよい。グリッドは、FPD281に入射する散乱線を吸収してX線画像のコントラストを改善するために、X線吸収の大きい鉛等によって形成されるグリッド板と透過しやすいアルミニウムや木材等とが交互に配置される。
【0024】
A/D変換回路282は、FPD281から出力される時系列的なアナログ信号(ビデオ信号)の投影データをデジタル信号に変換し、画像処理装置12に出力する。
【0025】
なお、X線検出装置28は、I.I.(Image Intensifier)−TV系であってもよい。I.I.−TV系では、患者Pを透過したX線及び直接入射されるX線を可視光に変換し、さらに、光−電子−光変換の過程で輝度の倍増を行なって感度のよい投影データを形成させ、CCD(Charge Coupled Device)撮像素子を用いて光学的な投影データを電気信号に変換する。
【0026】
制御回路30は、図示しない処理回路及び記憶回路を含む。制御回路30は、画像処理装置12からの指示に従って、高電圧供給装置31及び動力回路32等の動作を制御する。制御回路30は、画像処理装置12による指示の下、高電圧供給装置31及び動力回路32等を動かすための条件付けを行う回路である。
【0027】
高電圧供給装置31は、制御回路30の制御に従って、X線照射装置27のX線管に高電圧の電力を供給する。高電圧供給装置31は、パルス透視におけるX線条件、即ち、透視条件に従ってX線管を制御する。ここで、透視条件は、パルス透視における各パルスの管電圧、管電流、及び照射時間等を含む。また、高電圧供給装置31は、撮影におけるX線条件、即ち、撮影条件に従ってX線管を制御する。撮影条件は、撮影における管電圧、管電流、及びX線のパルスの照射時間等を含む。
【0028】
動力回路32は、制御回路30の制御に従って、X線照射装置27、X線検出装置28、Cアーム26、保持装置本体21、ボディフレーム22、天板保持機構23及びCアーム保持機構25をそれぞれ駆動させる。
【0029】
画像処理装置12は、コンピュータをベースとして構成されており、X線診断装置1全体の動作制御や、架台装置2によって取得されたX線画像(X線画像データ)に関する画像処理等を行なう装置である。画像処理装置12は、処理回路41、記憶回路42、画像生成回路43、画像処理回路44、入力回路45、及びディスプレイ46を備える。
【0030】
処理回路41は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)の他、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び、プログラマブル論理デバイス等の処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の回路が挙げられる。処理回路41は、記憶回路42に記憶された、又は、処理回路41内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで後述する機能を実現する。
【0031】
また、処理回路41は、単一の処理回路によって構成されてもよいし、独立した複数の処理回路の組み合わせによって構成されていてもよい。後者の場合、記憶回路42が、複数の処理回路にそれぞれ対応する複数の記憶回路を有しても良いし、記憶回路42が、複数の処理回路に対応する1個の記憶回路を有しても良い。
【0032】
記憶回路42は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、及び光ディスク等を備える。記憶回路22は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアを備えてもよい。記憶回路42は、処理回路41において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、X線画像を記憶する。また、OSに、操作者Dに対するディスプレイ46への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力回路45によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。
【0033】
画像生成回路43は、処理回路41の制御によって、保持装置11のA/D変換回路282から出力された投影データに対して対数変換処理(LOG処理)を行なって必要に応じて加算処理して、X線画像を生成する。
【0034】
画像処理回路44は、処理回路41の制御によって、画像生成回路43によって生成されたX線画像に対して画像処理を施す。画像処理としては、データに対する拡大/階調/空間フィルタ処理や、時系列に蓄積されたデータの最小値/最大値トレース処理、及びノイズを除去するための加算処理等が挙げられる。なお、画像処理回路44による画像処理後のデータは、記憶回路42に記憶される。
【0035】
入力回路45は、操作者Dによって操作が可能な入力デバイスからの信号を入力する回路であり、ここでは、入力デバイス自体も入力回路45に含まれるものとする。入力デバイスは、スイッチ、ポインティングデバイス(例えばマウス)、キーボード、及び各種ボタン等を含む。操作者Dにより入力デバイスが操作されると、入力回路45はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路41に出力する。なお、画像処理装置12は、入力デバイスがディスプレイ46と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。
【0036】
図3及び
図4は、X線診断装置1における入力デバイスの例を示す図である。
【0037】
図3は、
図1に示す入力デバイス45の一例であるハンディタイプの入力デバイス45Aを示す。入力デバイス45Aは、第1の入力手段(例えば、透視スイッチ)SW1、第2の入力手段(例えば、撮影準備スイッチ)SW2、第3の入力手段(例えば、撮影スイッチ)SW3、及び把持部Hを備える。なお、第1の入力手段、第2の入力手段、及び第3の入力手段は、スイッチに限定されるものではない。
【0038】
入力デバイス45Aは、透視スイッチSW1が押下(ON)されてからでないと撮影準備スイッチSW2が押下(ON)できず、撮影準備スイッチSW2が押下(ON)されてからでないと撮影スイッチSW3を押下(ON)できない多段スイッチの構造を備える。
【0039】
入力デバイス45Aの透視スイッチSW1は、一般的なパルス透視(以下、「単純パルス透視」という。)を行わせる操作を受け付ける。撮影準備スイッチSW2は、単純パルス透視に係るX線条件を、撮影に係るX線条件に遷移させる操作を受け付ける。撮影スイッチSW3は、撮影を行わせる操作を受け付ける。
【0040】
操作者によって入力デバイス45Aの透視スイッチSW1が押下され、処理回路41に透視指示がなされると、一般的なパルス透視(以下、「単純パルス透視」という。)が開始される。操作者によって透視スイッチSW1が押下されている状態、つまり、単純パルス透視中に入力デバイス45Aの撮影準備スイッチSW2が押下され、処理回路41に撮影準備指示がなされると、単純パルス透視が終了されると共に、管電流が撮影における管電流まで遷移するパルス透視(以下、「遷移パルス透視」という。)が開始される。操作者によって撮影準備スイッチSW2が押下されている遷移パルス透視中に入力デバイス45Aの撮影スイッチSW3が押下され、処理回路41に撮影指示がなされると、遷移パルス透視が終了されると共に、撮影が開始される。
【0041】
図4は、
図1に示す入力デバイス45の一例であるハンディタイプの入力デバイス45Bを示す。入力デバイス45Bは、撮影準備スイッチSW2、撮影スイッチSW3、及び把持部Hを備える。入力デバイス45Bは、撮影準備スイッチSW2が押下(ON)されてからでないと撮影スイッチSW3をONできない多段スイッチの構造を備える。
図4では、
図3に示す透視スイッチSW1の機能は、別のデバイスがもつものとする。
【0042】
単純パルス透視中に入力デバイス45Bの撮影準備スイッチSW2が押下され、処理回路41に撮影準備指示がなされると、単純パルス透視が終了されると共に、遷移パルス透視が開始される。操作者によって撮影準備スイッチSW2が押下されている遷移パルス透視中に入力デバイス45Bの撮影スイッチSW3が押下され、処理回路41に撮影指示がなされると、遷移パルス透視が終了されると共に、撮影が開始される。
【0043】
図5〜
図7は、X線診断装置1におけるスイッチにより決定される検査シーケンスを説明するための図である。
【0044】
図5は、従来技術における検査シーケンスを示す図である。
【0045】
図5に示すように、従来技術では、操作者によって、パルス透視を終了させたいタイミングで撮影準備スイッチがONにされることになる。従来技術では、撮影準備スイッチのONは、パルス透視の終了を意味するからである。このように、従来技術では、撮影準備スイッチのONのタイミングから、撮影のための管電流を得るための撮影準備に所要時間TCが必要となる。即ち、撮影準備スイッチのONから撮影可能のタイミングt´までの撮影準備のための時間TCでは、撮影に必要な管電流が得られないため、撮影準備スイッチをONにすることはできない。
【0046】
図6は、X線診断装置1における第1の検査シーケンスを示す図である。
図7は、X線診断装置1における第2の検査シーケンスを示す図である。
【0047】
図6に示すように、本実施形態では、操作者によって、パルス透視を終了させたいタイミングより前のタイミングで撮影準備スイッチがONにされればよい。本実施形態では、撮影準備スイッチのONは、パルス透視を継続したままで、単純パルス透視から遷移パルス透視への切り替えを意味するからである。このように、本実施形態では、撮影準備スイッチのONにより大まかな撮影開始タイミングで開始された所要時間TD(例えば、TD=TC)の遷移パルス透視を継続しながら、撮影可能のタイミングt以降における撮影スイッチによるシビアな撮影開始タイミングを待つことができる。よって、パルス透視の終了後に待ち時間無く任意のタイミングで撮影準備スイッチをONとし、そのタイミングから撮影を実行することができる。
【0048】
ここで、遷移パルス透視に係る透視条件の設定方法を、消化器系のX線診断装置1を用いた食道検査を行う場合を例にとって説明する。単純パルス透視によって生成された透視画像に基づく輝度調整機能により透視画像の輝度が安定した、つまり、ばらつきが一定範囲内の単純パルス透視に係る透視条件を、管電圧80[kV]、管電流32[mA]、照射時間4[ms]とする。この透視条件に基づいて、透視条件から撮影条件を算出する撮影条件設定機能によって算出される撮影条件を、管電圧85[kV]、管電流200[mA]、照射時間100[ms]とする。撮影条件設定機能は、食道検査等の検査手技に応じて異なるパラメータにより撮影条件を算出する方法である。
【0049】
遷移パルス透視において、単純パルス透視に係る管電流32[mA]を、目標である撮影時の管電流200[mA]に増加させる場合、管電流は、200[mA]/32[mA]=6.25倍となる。その分、遷移パルス透視における各パルスのパルス幅を短くして複数のパルスを同等の線量(mAs値)とする。即ち、遷移パルス透視の所要時間TD内のパルス数がn(n=1,2,…)個である場合、第nのパルス(最終のパルス)が、4[ms]/6.25=0.64[ms]となるように、管電流の増加に反比例させるように照射時間が求められる。
【0050】
遷移パルス透視の所要時間TD内のパルス数がn個の場合、単純パルス透視に係る管電流と撮影に係る管電流との差からnを除することで、遷移パルス透視の各パルスに管電流に上積みされる管電流が求められる。
図6では、n=4であり、単純パルス透視に係る管電流が32[mA]であり、撮影に係る管電流が200[mA]であるので、上積みされる管電流として42[mA]が求められる。つまり、遷移パルス透視に係る第1のパルスが示す管電流が32+42=74[mA]となり、同第2のパルスが示す管電流が74+42=116[mA]となり、同第3のパルスが示す管電流が116+42=158[mA]となり、同第4のパルスが示す管電流が158+42=200[mA]となる。
【0051】
上述のような計算方法により、遷移パルス透視におけるn個のパルスが示す管電流を、単純パルス透視の管電流から撮影の管電流まで直線的に徐々に増加させることができる。なお、遷移パルス透視におけるn個のパルスが示す管電流は、直線的に徐々に増加される場合に限定されるものではない。例えば、遷移パルス透視におけるn個のパルスが示す管電流は、例えば、階段状に増加されてもよい。
【0052】
一方で、遷移パルス透視のn個のパルスを同等のmAs値(128)とするために、遷移パルス透視に係る第1のパルスの照射時間(パルスの幅)が128/74=1.73となり、同第2のパルスの照射時間が128/116=1.10となり、同第3のパルスの照射時間が128/158=0.81となり、同第4のパルスの照射時間が128/200=0.64となる。つまり、遷移パルス透視における4個のパルスが示す照射時間は、徐々に減少される。
【0053】
なお、上述したように、遷移パルス透視における理論的なmAs値は、mAs値が一定であれば透視画像の輝度が一定であるものと仮定して、遷移パルス透視に先立って計算される。しかし、遷移パルス透視中の輝度調整機能により遷移パルス透視に係る複数の透視画像の輝度が略一定になるように、計算値から照射時間が微調整されることが好適である。なお、遷移パルス透視における管電圧はパルスごとに印加する必要がある。
【0054】
図7に示す第2の検査シーケンスは、
図6に示す第1の検査シーケンスの変形例を示す。
図6は、撮影準備スイッチのONのタイミングから撮影を実行する場合の検査シーケンスを示す。一方で、
図7は、撮影準備スイッチのONのタイミング後であって、パルス透視のパルス周期に合ったタイミングから撮影を実行する場合の検査シーケンスを示す。
【0055】
図1及び
図2の説明に戻って、ディスプレイ46は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、及び有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示デバイスである。
【0056】
画像処理装置12の処理回路41は、プログラムを実行することで、パルス透視実行手段(例えば、パルス透視実行機能)41a、撮影準備手段(例えば、撮影準備機能)41b、及び撮影実行手段(例えば、撮影実行機能)41cとして機能する。なお、機能41a〜41cの全部又は一部は、画像処理装置12にハードウェアとして備えられるものであっても良い。
【0057】
パルス透視実行機能41aは、単純パルス透視を行わせる操作を受け付ける入力回路45、例えば、
図3に図示する透視スイッチSW1からの透視指示に基づいて、単純パルス透視における透視条件に従って単純パルス透視を実行する機能を含む。
【0058】
また、パルス透視実行機能41aは、単純パルス透視によって生成された透視画像に基づく輝度調整機能により次のフレームにおける透視画像の透視条件を設定する機能を含む。このように、パルス透視でも安定した透視画像を生成することができる。
【0059】
撮影準備機能41bは、撮影の準備、即ち、遷移パルス透視を行わせる操作を受け付ける入力回路45、例えば、
図3及び
図4に図示する撮影準備スイッチSW2からの撮影準備指示に基づいて、撮影条件設定機能により、最適な撮影条件を設定する機能を含む。また、撮影準備機能41bは、遷移パルス透視による透視画像の輝度が略一定となるように遷移パルス透視における管電流及び照射時間(パルス波の形状)を設定する機能と、設定した管電流及び照射時間に従って遷移パルス透視を実行する機能である。
【0060】
撮影実行機能41cは、撮影を行わせる操作を受け付ける入力回路45、例えば、
図3及び
図4に図示する撮影スイッチSW3からの撮影指示に基づいて、撮影準備機能41bによって設定された撮影条件に従って撮影を実行する機能である。
【0061】
なお、機能41a〜41cについての詳細は、
図8及び
図9を用いて後述する。
【0062】
図8及び
図9は、X線診断装置1の動作をフローチャートとして示す図である。
【0063】
まず、
図1及び
図8を用いて説明する。患者Pが天板24に載置された後、保持装置11を構成するボディフレーム
22等の装置が位置合わせされる。パルス透視実行機能41aは、単純パルス透視に係る管電流等の透視条件を設定する(ステップST1)。透視指示、即ち、入力回路45の操作(例えば、
図3に示す透視スイッチSW1のON)を受け付けると(ステップST2)、パルス透視実行機能41aは、制御回路30を介して高電圧供給装置31を制御して、ステップST1によって設定された透視条件に従った単純パルス透視を開始する(ステップST3)。
【0064】
パルス透視実行機能41aは、ステップST3によって開始された単純パルス透視により透視画像を生成し、透視画像をディスプレイ46に表示する(ステップST4)。パルス透視実行機能41aは、ステップST4によって生成された透視画像に基づく輝度調整機能により、次のフレームにおける透視条件を再設定する(ステップST5)。
【0065】
パルス透視実行機能41aは、撮影準備指示、即ち、入力回路45の操作(例えば、
図3に示す撮影準備スイッチSW2のON)を受け付けたか否かを判断する(ステップST6)。ステップST6の判断にてNO、即ち、撮影準備スイッチSW2のONを受け付けていないと判断される場合、パルス透視実行機能41aは、ステップST3によって開始された単純パルス透視を継続する(ステップST4)。このように、ステップST4〜ST6を繰り返すことで、複数の透視画像を動画像としてディスプレイ46に表示することができる(ステップST4)。
【0066】
一方で、ステップST6の判断にてYES、即ち、撮影準備スイッチSW2のONを受け付けたと判断される場合、撮影準備機能41bは、制御回路30を介して高電圧供給装置31を制御して、単純パルス透視を終了させ(ステップST7)、撮影条件を設定する(ステップST8)。撮影準備機能41bは、撮影条件設定機能により、最適な撮影条件を設定する。
【0067】
また、撮影準備機能41bは、ステップST8によって設定された撮影条件に基づいて、管電流が撮影における管電流まで増加するような遷移パルス透視に係る透視条件を算出する(ステップST9)。例えば、撮影準備機能41bは、
図6に示す遷移パルス透視の4個のパルスが示す4個の管電流をその値が徐々に増加するように算出すると共に、4個のパルスが示す4個の照射時間をmAs値が一定となるように算出する。撮影準備機能41bは、ステップST9によって設定された透視条件に従って遷移パルス透視を開始する(ステップST10)。
【0068】
図1及び
図9の説明に移って、撮影準備機能41bは、ステップST10によって開始された遷移パルス透視により透視画像を生成し、透視画像をディスプレイ46に表示する(ステップST11)。なお、撮影準備機能41bは、輝度調整機能により透視画像の輝度が略一定になるように、遷移パルス透視における照射時間の計算値からの微調整を行うことが好適である。
【0069】
撮影準備機能41bは、管電流が目標(後の撮影における管電流値)まで達したか否かを判断する(ステップST12)。ステップST12の判断にてNO、即ち、管電流が目標まで達していないと判断される場合、撮影準備機能41bは、ステップST10によって開始された遷移パルス透視を継続する(ステップST11)。管電流が目標まで達していないと判断される場合とは、遷移パルス透視の時間であることを意味する。このように、ステップST11〜ST12を繰り返すことで、複数の透視画像を動画像としてディスプレイ46に表示することができる(ステップST11)。
【0070】
一方で、ステップST12の判断にてYES、即ち、管電流が目標まで達したと判断される場合、撮影準備機能41bは、
図6及び
図7に示すタイミングtにおいて撮影の準備が完了した旨の報知を行い(ステップST13)、撮影指示があるまで待機する。管電流が目標まで達したと判断される場合とは、遷移パルス透視における管電流が目標である撮影の管電流まで達したことを意味する。
【0071】
撮影実行機能41cは、撮影指示、即ち、入力回路45の操作(例えば、
図3に示す撮影準備スイッチSW3のON)を受け付けると(ステップST14)、制御回路30を介して高電圧供給装置31を制御して、遷移パルス透視を終了させ(ステップST15)、ステップST8によって設定された撮影条件に従って撮影を実行する(ステップST16)。
【0072】
撮影実行機能41cは、ステップST16によって実行された撮影により撮影画像を生成し、撮影画像をディスプレイ46に表示する(ステップST17)。撮影実行機能41cは、検査を終了するか否かを判断する(ステップST18)。ステップST18の判断にてNO、即ち、検査を終了しないと判断される場合、パルス透視実行機能41aは、制御回路30を介して高電圧供給装置31を制御して、単純パルス透視を開始する(ステップST3)。
【0073】
一方で、ステップST18の判断にてYES、即ち、検査を終了すると判断される場合、処理回路41は動作を終了する。
【0074】
X線診断装置1によれば、単純パルス透視を遷移パルス透視に切り替える撮影準備スイッチSW2(
図3及び
図4に図示)を設けることで、パルス透視に引き続き短時間で撮影を実行可能とすることで、検査の操作性を向上できる。
【0075】
(変形例)
図6及び
図7では、撮影可能タイミングtの後に撮影スイッチがONにされる例を示すがその場合に限定されるものではない。撮影可能タイミングtの前に撮影スイッチがONにされてもよい。
【0076】
図10は、X線診断装置1における第3の検査シーケンスを示す図である。
【0077】
図10は、遷移パルス透視の間に撮影スイッチがONにされた場合の検査シーケンスを示す。撮影スイッチがONにされたタイミングでは遷移パルス透視の管電流は116[mA]までしか増加していないので、撮影の管電流は116[mA]となる。一方で、
図6及び
図7の撮影で生成される撮影画像と同等のmAs値となるように、自動露出制御(AEC:Automatic Exposure Control)により、必要な照射時間を制御する。
【0078】
X線診断装置1の変形例によれば、単純パルス透視を遷移パルス透視に切り替える撮影準備スイッチSW2(
図3及び
図4に図示)を設けることで、パルス透視に引き続き短時間で撮影を実行可能とすることで、検査の操作性を向上できる。また、X線診断装置1の変形例によれば、操作者からの早期の撮影指示により、目標の管電流が得られないタイミングであっても、一定の輝度をもつ撮影画像を生成することができる。
【0079】
以上述べた少なくともひとつの実施形態に係るX線診断装置によれば、パルス透視に引き続き短時間で撮影を実行可能とすることで、検査の操作性を向上できる。
【0080】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。