(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878152
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】CO2化学回収装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20210517BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20210517BHJP
B01D 19/04 20060101ALI20210517BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20210517BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20210517BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
B01D53/62ZAB
B01D53/78
B01D19/04 A
B01D53/14 200
B01D53/50 200
B01D53/56
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-108836(P2017-108836)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-202298(P2018-202298A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】横山 公一
(72)【発明者】
【氏名】勝部 利夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英治
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−000380(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/080838(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/048642(WO,A1)
【文献】
特開2002−126439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14
B01D 53/18
B01D 53/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種類以上のアミンを含む炭酸ガス用の吸収液に燃焼排ガスを接触させて炭酸ガスを吸収する吸収塔と、前記吸収塔から排出される排ガスを循環洗浄水で洗浄する水洗搭と、前記水洗搭から排出される排ガス中に同伴するアミン飛散量を抑制する制御装置とを備えてなるCO2化学吸収装置において、
前記水洗搭は、前記吸収塔から排出される排ガスに洗浄水を気液接触させる充填層と、該充填層から流下する洗浄水を回収するコレクタと、該コレクタに回収した洗浄水を前記充填層に散布する洗浄水循環系とをそれぞれ有する二段以上の水洗部と、該水洗搭のガス最下流側の水洗部の循環洗浄水に清浄な洗浄水を補給するとともに、ガス下流側の水洗部の循環洗浄水の一部を当該水洗部のガス上流側の水洗部に順次補給する洗浄水補給系と、少なくともガス最上流側の水洗部のガス入口側に設けられた第1デミスタと、ガス最下流側の水洗部のガス出口側に設けられた第2デミスタと、前記第1デミスタの落下液滴を回収するコレクタと、該コレクタの回収液を前記吸収塔の下部タンクへ供給する送液ポンプを備えてなり、
前記制御装置は、前記第1デミスタの落下液滴を回収するコレクタの回収液の流量を計測し、この計測値に基づいて前記吸収液に添加する消泡剤の添加量を調整することを特徴とするCO2化学吸収装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1デミスタの落下液滴を回収するコレクタに回収した前記回収液の流量は、該コレクタ内の水位を一定に制御したときの前記送液ポンプの吐出流量に基づいて計測することを特徴とする請求項1に記載のCO2化学吸収装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記計測した前記回収液の流量と予め取得した前記回収液中の消泡剤の濃度との関係に基づいて、前記消泡剤の添加量を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載のCO2化学吸収装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記回収液の流量と前記水洗搭から排出される排ガス流量とに基づいて、前記消泡剤の添加量を調整することを特徴とする請求項1に記載のCO2化学吸収装置。
【請求項5】
さらに、前記吸収塔でCO2を吸収した吸収液を加熱して炭酸ガスを分離して排出する再生塔と、該再生塔で再生した吸収液を前記吸収塔に戻す戻し配管を備え、
前記制御装置は、前記再生塔から前記吸収塔に戻される吸収液に前記消泡剤を添加することを特徴とする請求項1に記載のCO2化学吸収装置。
【請求項6】
さらに、前記ガス最下流側のデミスタの落下液滴を回収するガス最下流側のコレクタを備え、
前記制御装置は、前記ガス最下流側のコレクタにより回収される回収液の流量に応じて、前記ガス最下流側の水洗部の充填層に循環する洗浄水に添加する消泡剤の添加量を調整することを特徴とする請求項1に記載のCO2化学吸収装置。
【請求項7】
前記消泡剤は、シリコーンオイルを成分とするエマルジョン型、親水性オイル型、又は自己乳化型の消泡剤であることを特徴とする請求項1に記載のCO2化学吸収装置。
【請求項8】
一種類以上のアミンを含む炭酸ガス用の吸収液に燃焼排ガスを接触させて炭酸ガスを吸収する吸収塔と、前記吸収塔から排出される排ガスを循環洗浄水で洗浄する水洗搭とを備え、
前記水洗搭は、前記吸収塔から排出される排ガスに洗浄水を気液接触させる充填層と、該充填層から流下する洗浄水を回収するコレクタと、該コレクタに回収した洗浄水を前記充填層に散布する洗浄水循環系とをそれぞれ有する二段以上の水洗部を備え、
前記水洗搭のガス最下流側の水洗部の循環洗浄水に清浄な洗浄水を補給するとともに、前記ガス最下流側の水洗部の循環洗浄水の一部を当該水洗部のガス上流側の水洗部の循環洗浄水へ補給する洗浄水補給系と、少なくともガス最上流側の水洗部のガス入口側に設けられた第1デミスタとガス最下流側の水洗部のガス出口側に設けられた第2デミスタと、前記第1デミスタの落下液滴を回収するコレクタと、該コレクタの回収液を前記吸収塔の下部タンクへ供給する送液ポンプを有してなるCO2化学吸収装置の制御方法であって、
少なくとも前記第1デミスタの落下液滴を回収するコレクタに回収した回収液の流量を計測し、この計測値に基づいて前記吸収液に添加する消泡剤の添加量を調整することを特徴とするCO2化学吸収装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラなどの燃焼排ガス中の二酸化炭素(以下、CO2という。)を回収するCO2化学回収装置に係り、特にCO2吸収液に含まれるアミンの飛散量を抑制するのに好適なCO2化学回収装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等において、石炭などの化石燃料の燃焼に伴ってCO2が発生する。発生したCO2は、大気中のCO2濃度を上昇させ、それに伴う気温の上昇により、各種の環境問題が生じると言われている。火力発電所等から排出される酸素(O2)や硫黄酸化物(SOx)を含んだ燃焼排ガスからCO2を回収する方法は、最も実用化に近い方法としてアルカノールアミン溶液による吸収方法が挙げられ、1990年代から盛んに検討されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来のCO2化学回収装置は、一般的に、燃焼排ガス中に含まれる酸性排ガス(SOx、NOx、HCl等)を除去する脱硝装置及び湿式脱硫装置が前段に設置されている。これは、CO2吸収液中のアミンが酸性排ガスと反応して、アミンが熱安定性塩となり不活性化するのを防止するためである。ところで、湿式脱硫装置は、例えば水酸化アルカリ溶液や石灰石のスラリのようなアルカリ性の吸収液を用い、その吸収液にSOxを吸収して回収している。このような湿式脱硫装置の後段に設置したCO2化学吸収装置では、アミンを含む吸収液と燃焼排ガスとの気液接触を促進する充填層を通過する際に、泡が形成されやすくなる。その泡が壊れる際、CO2化学回収装置から排出される排ガスにアルカノールアミン蒸気が同伴してアミンが大気に飛散するという問題がある。このようなアミンの飛散を抑制するため、CO2化学吸収装置のアミンを含む吸収液にシリコーンオイルを消泡剤として加えることが提案されている(例えば、特許文献2)。シリコーンオイルをアミンを含む吸収液に加えることにより、吸収液の発泡を抑制してアミンの飛散を抑制することができる。
【0004】
ところで、CO2化学吸収装置の吸収塔において、長期間連続運転を行うと、アミンの熱安定性塩の生成や種々の要因で吸収液の発泡性が高まり、吸収塔や再生塔の充填層でのフラッディングを引き起こす場合があることが知られている(例えば、特許文献3)。フラッディングが発生した場合、上述したように、吸収液中に適切な濃度の消泡剤を添加し、発泡を抑えることにより対応できる。また、フラッディングが発生していない状態でも、微小な発泡現象は吸収塔内で発生しており、吸収液に一定濃度の消泡剤(シリコーンオイル)を添加することで対応できる(特許文献2)。
【0005】
しかし、消泡剤を加えても、吸収液を長時間使用すると、吸収液の発泡性が高まる場合がある。その原因としては、燃焼灰への吸着や、酸化や分解等による吸収液の変質、又は吸収液をリクレーミングして吸収材を回収する場合等により、吸収液中の消泡剤濃度が低下することによると推測されるが、明確ではない。例えば、排ガス中のミスト状アミン濃度が上昇する程度に発泡していても、充填層における吸収液の流れがフラッディングまで至らない場合がある。この場合の発泡状態は、フラッディングのように吸収塔の出入口や充填層間の差圧の変化から検知することは不可能である(例えば、特許文献4)。ただし、ガス状及びミスト状のアミン濃度の和(以下、全アミン濃度という。)を分析し、一定以上の濃度上昇があった場合、消泡剤を添加して発泡性を低減する対策は可能である。しかし、ガス中の全アミン濃度の変動を連続的に把握することは困難だった。
【0006】
一方、発泡を抑制する方法の他に、吸収塔のガス後流側に二段以上の水洗部を備えた水洗搭を設けることが採用されている(例えば、特許文献5〜7等)。これによれば、ガス最下流側の水洗部に循環する洗浄水中のアミン濃度を低減することにより、水洗塔出口における排ガス中のアミン濃度を低減することができる、この方法では、アミンを水溶液として回収して、再利用できる優れた方法であり、排ガス中のアミン蒸気の飛散抑制については顕著な効果が確認されている。しかし、特許文献5〜7に記載された方法では、吸収塔から排出されるミスト状アミン吸収液の水洗塔における回収効果が明確でない。また、フラッディングには至らない水洗塔の洗浄水自体の発泡によるミスト発生についても、吸収液の場合と同様、連続的に検知可能な方法が確立されていない。そのため、排ガス中のアミン濃度を低減する対策としては、例えば、水洗塔各段の出口にデミスタを設置して、ミスト濃度をできる限り低減する方法しかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3529855
【特許文献2】WO2011/080838
【特許文献3】特開2000-265185
【特許文献4】特開2016−000380
【特許文献5】特許5185970
【特許文献6】特表2013―517126
【特許文献7】特許5703106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、アミン飛散量を一層抑制するのに好適なCO2化学回収装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一つの態様は、一種類以上のアミンを含む炭酸ガス用の吸収液に燃焼排ガスを接触させて
炭酸ガスを吸収する吸収塔と、前記吸収塔から排出される排ガスを循環洗浄水で洗浄する水洗搭と、前記水洗搭から排出される排ガス中に同伴するアミン飛散量を抑制する制御装置とを備えてなるCO2化学吸収装置において、前記水洗搭は、前記吸収塔から排出される排ガスに洗浄水を気液接触させる充填層と、該充填層から流下する洗浄水を回収するコレクタと、該コレクタに回収した洗浄水を前記充填層に散布する洗浄水循環系とをそれぞれ有する二段以上の水洗部と、前記水洗搭のガス最下流側の水洗部の循環洗浄水に清浄な洗浄水を補給するとともに、ガス下流側の水洗部の循環洗浄水の一部を当該水洗部のガス上流側の水洗部に順次補給する洗浄水補給系と、少なくと
もガス最上流側の水洗部のガス入口側に設けられた第1デミスタ
と、ガス最下流側の水洗部のガス出口側に設けられた第2デミスタと、前記第1デミスタの落下液滴を回収するコレク
タの回収液を前記吸収塔の下部タンクへ供給する送液ポンプを備えてなり、前記制御装置は、
前記第1デミスタの落下液滴を回収するコレクタの回収液の流量を計測し、この計測値に基づいて前記吸収液に添加する消泡剤の添加量を調整することを特徴とする。
【0010】
本発明の発明者等は、吸収塔から排出される排ガスに含まれるアミンを含む吸収液のミスト量を連続的に計測し、経時的なミスト発生量の変化を把握できれば、長時間使用後の吸収液の性状変化が分かる。そこで、吸収液の性状変化に対応して消泡剤(例えば、シリコーンオイル)を吸収液に添加し、吸収液の発泡を抑制することにより、吸収塔から排出される排ガスに同伴するミスト状の吸収液であるミスト状アミン水溶液の量を抑制できることに着目して、本発明をするに至った。
【0011】
すなわち、吸収塔や水洗搭のガス下流側の水洗塔内における吸収液中のアミン濃度は、排ガス中のアミン蒸気と平衡状態であると仮定すれば、周知のように、排ガス中のミスト状アミンの濃度はヘンリーの法則に従い、基本的には周辺の排ガス中のアミン蒸気濃度に平衡である。したがって、水洗塔の洗浄水や吸収液も同様に、吸収塔や水洗塔内のアミン蒸気濃度と平衡のアミン水溶液であることは明らかである。そこで、水洗搭のガス最上流側に設けられた第1デミスタの落下液滴をコレクタに回収して、回収した吸収液を送液ポンプにより吸収塔の下部タンクへ戻すに際し、制御装置により回収した吸収液の流量を計測する。そして、回収した吸収液の流量の計測値に基づいて、吸収液に添加する消泡剤の添加量を調整することを特徴とする。これにより、本発明によれば、CO2化学吸収装置から排出される排ガスに同伴して飛散するアミン飛散量を一層ないし確実に抑制することができる。
【0012】
ここで、吸収液に添加する消泡剤の添加量は、CO2化学吸収装置の吸収塔から排出される排ガス中のミスト流量と吸収液中の消泡剤の濃度との関係データを、予め小型の試験装置又は実装置の試運転時等で求めておき、その関係データと回収液の流量の計測値に基づいて消泡剤の添加量を調整する。
【0013】
なお、回収液の流量を連続的に把握する方法として、コレクタ内の水位を一定にするように制御装置により送液ポンプの吐出流量を制御し、コリオリ式、超音波式、電磁式、渦式等の液体流量計と、振動式の液体密度計を組合わせたものにより回収液の流量を実測する。あるいは、予め送液ポンプの回転数と吐出量の関係を求めておき、制御装置により送液ポンプの回転数を計測して吐出流量を算出する方法を適用してもよい。
【0014】
また、前記吸収塔でCO2を吸収した吸収液(リッチ吸収液)を加熱して炭酸ガスを分離して排出する再生塔と、この再生塔で再生した吸収液(リーン吸収液)を前記吸収塔に戻す戻し配管を備えている場合、前記制御装置は、再生塔から吸収塔に再循環される吸収液(リーン吸収液)に消泡剤を添加することが好ましい。リーン吸収液に消泡剤を添加すると、リッチ吸収液に添加した場合に比べて、回収液流量の変化に対して応答性良く発泡を抑制することが可能になる。
【0015】
上記の本発明の態様に加え、さらに、前記ガス最下流側の第2デミスタの落下液滴を回収するガス最下流側のコレクタを備え、前記制御装置は、前記第2デミスタのコレクタにより回収される回収液の流量に応じて、前記ガス最下流側の水洗部の充填層に循環する洗浄水に消泡剤(例えば、設定濃度の消泡剤)を添加し、その添加量を調整することが好ましい。
【0016】
また、本発明のCO2化学回収装置の制御方法は、上記の本発明の態様において、少なくとも前記コレクタに回収した回収液の流量を計測し、この計測値に基づいて前記吸収液に添加する消泡剤の添加量を調整することを特徴とする。
【0017】
前記消泡剤として、シリコーンオイルを成分とするエマルジョン型、親水性オイル型、又は自己乳化型の消泡剤が適用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アミン飛散量を一層抑制するのに好適なCO2化学回収装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のCO2化学吸収装置の実施形態1の系統構成図である。
【
図3】本発明のCO2化学吸収装置の実施形態2の系統構成図である。
【
図5】比較例のCO2化学吸収装置の系統構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1に、本発明の一実施形態のCO2化学吸収装置の系統図を示す。本実施形態では、CO2吸収液(以下、単に吸収液という。)として、アルカノールアミン等の少なくとも一種類以上のアミンの水溶液を吸収液として用いる。一般に、燃焼排ガスには、酸性ガス(SOx、NOx、HCl等)が含まれており、そのままCO2の吸収塔に導入すると、吸収液中のアミンが酸性ガスと反応して熱安定性塩となり不活性化する。そこで、従来と同様に、本実施形態のCO2化学吸収装置の前段に、
図1に示すように、湿式FGD(
Flue-
gas
desulfurization)装置30が設けられている。なお、図示していないが、脱硫装置も設けられている。湿式FGD装置30には、図示していない石炭燃焼ボイラから排出される燃焼排ガス(以下、単に排ガスという。)1が送風機22により供給される。湿式FGD装置30では、脱硫液31をポンプ34により循環して排ガス1中の主としてSOxを除去し、ミストを除去するデミスタ29を通して排ガス32を吸収塔7の下部に供給する。
【0022】
本実施形態1のCO2化学吸収装置は、一種類以上のアミンを含む吸収液に燃焼排ガス32を接触させて吸収する吸収塔7と、吸収塔7で炭酸ガスを吸収した吸収液(リッチ吸収液)9を加熱してCO2を分離して排出する再生塔8と、吸収塔7から排出される排ガスを循環洗浄水で洗浄する水洗搭40と、再生塔8から排出されるCO2を循環洗浄水で洗浄する水洗搭と、吸収塔7でCO2を吸収した吸収液(リッチ吸収液)9を再生塔8に供給する供給配管と、再生塔8でCO2が分離された吸収液(リーン吸収液)10を吸収塔7に戻す戻し配管と、供給配管を流れる吸収液を戻し配管を流れる吸収液で加熱する熱交換器3と、再生塔8内の吸収液10を抜き出して系外の水蒸気で間接加熱して生成される吸収液蒸気を、吸収液の加熱源として再生塔8に戻すリボイラ21と、排ガス水洗搭から排出される排ガス中のアミン濃度を抑制する制御装置100を備えて構成される。
【0023】
吸収塔7には、複数の充填層11が設けられ、アルカノールアミン等の少なくとも一種類以上のアミンの水溶液を含む吸収液(リーン吸収液)10が、充填層11の上部の散布ノズルから散布される。散布ノズルから散布された吸収液10は充填層11の表面を伝って流下し、排ガス中のCO2を吸収して吸収塔7の底部タンク25に吸収液(リッチ吸収液)として貯留される。つまり、吸収塔7の充填層11の下部に供給される排ガス32は、充填層11を上昇する過程で吸収液10と気液接触し、排ガス中のCO2が吸収液に吸収される。CO2が吸収除去された排ガスは、吸収塔7の頂部に一体的に設けられた水洗搭40にて洗浄された後、洗浄処理排ガス27として排出される。
【0024】
一方、CO2を吸収して吸収塔7の底部タンク25に流下した吸収液(リッチ吸収液)9は、熱交換器3を介して再生塔8に供給される。再生塔8に供給された吸収液9は、再生塔8の充填層11の上部に散布され、充填層11を流下する過程で上昇する加熱蒸気と気液接触して加熱される。この加熱で吸収液中のCO2は分離されて再生塔8を上昇し、頂部の水洗部においてポンプ20から散布される洗浄水19により洗浄される。洗浄されたCO2は、熱交換器15によって冷却されて凝縮し、洗浄水タンクに回収される。なお、再生塔8における加熱蒸気は、リボイラ21で生成される吸収液蒸気が用いられる。リボイラ21は、再生塔8の充填層11の下に設けられたコレクタから吸収液を抜き出し、系外の水蒸気で間接加熱して吸収液蒸気を生成して再生塔8の下部タンク26に戻すようになっている。再生塔8の下部タンク26に流下した吸収液(リーン吸収液)10は、熱交換器3、ポンプ14a、熱交換器5を備えた戻し管路を介して、吸収塔7の吸収液供給口17に戻される。
【0025】
吸収塔7の上部には、CO2が除去された排ガスを循環洗浄水で洗浄する水洗搭40が一体に設けられている。なお、水洗搭40は、吸収塔7から排出される排ガスを導入して水洗する構成であれば、別体に設けてもよい。水洗搭40は、吸収塔7から排出される排ガスに洗浄水を気液接触させる充填層42a,42bと、それらの充填層42から流下する洗浄水を回収するコレクタ41b、41cと、コレクタ41b、41cに回収した洗浄水をそれぞれ充填層42a、42bに散布する洗浄水循環系とをそれぞれ有する二段の水洗部から構成されている。また、水洗搭40のガス最上流の水洗部のガス入口側には、デミスタ44aが設けられている。デミスタ44aのガス上流側には、デミスタ44aから滴下する吸収液を回収するコレクタ41aが設けられている。コレクタ41aの回収液は、送液ポンプ46dによって吸収塔7の底部タンク25へ戻される。また、ガス最下流側の水洗部のガス出口側には、デミスタ44bが設けられている。なお、水洗搭40の水洗部は、二段に限られるものではなく、必要に応じて三段以上設けてもよい。また、各段のガス出口側にデミスタを設けてもよい。
【0026】
図1において、下段の水洗部のコレクタ41bに流下する洗浄水は、循環液タンク45aに蓄えられ、ポンプ46aと熱交換器(冷却器)48を介して散布ノズル43aから充填層42aに循環して散布される。同様に、上段の水洗部のコレクタ41cに流下する洗浄水は、循環液タンク45bに蓄えられ、ポンプ46bを介して散布ノズル43bから充填層42bに循環して散布される。水洗搭40のガス最下流側の水洗部の循環液タンク45bには、洗浄水槽50からポンプ46cを介して清浄な洗浄水を補給する洗浄水補給系が設けられている。また、循環液タンク45bの循環洗浄水の一部は、ガス上流側の水洗部の循環液タンク45aに洗浄水として補給されるようになっている。さらに、循環液タンク45aの一部の循環洗浄水は、吸収塔7の底部タンク25へ移送される。このように、水洗搭40は排ガス中に含まれるアミン蒸気やミスト等を循環洗浄水に取り込んで、水洗搭40から排出される排ガス27に同伴するアミン飛散量を抑制するようになっている。
【0027】
次に、本実施形態の特徴である制御装置100に備えられたアミンミスト飛散量制御部101について、
図2に示したブロック構成図を参照して説明する。図示のように、アミンミスト飛散量制御部101は、デミスタ44aから滴下する吸収液を回収するコレクタ41aに回収吸収液の液面を検知する液面コントローラLC1が設けられている。液面コントローラLC1は、コレクタ41aの検知した液面を設定レベルに保持するように、送液ポンプ46dの回転数を制御し、設定レベルを越えた吸収液を吸収塔7の底部タンク25へ排出する。送液ポンプ46dから排出される吸収液の流量は、送液ポンプ46dの回転数に基づいてアミンミスト飛散量制御部101により計測される。アミンミスト飛散量制御部101は、吸収液流量の計測値に基づいて、予め定められた制御データに従って吸収液に添加する消泡剤の添加量を求める。そして、ポンプ14bを駆動するとともに、流量制御弁FC1を制御して、求めた消泡剤の添加量を吸収塔7の吸収液供給口17に供給されるリーン吸収液10に添加する。これによって、吸収塔7におけるCO2の吸収過程で、吸収液の変質等の何らかの原因で発生する泡が抑制され、排ガスに同伴してデミスタ44aに至るミスト状アミンが低減され、後流側の複数段の水洗部の作用と相まって、水洗搭40から排出される排ガス中のアミン飛散量を目標値に抑制できる。なお、流量制御弁FC1は、ポンプ14bから吐出される消泡剤の流量を検出し、検出流量がアミンミスト飛散量制御部101から出力される指令添加量に一致するように制御するようになっている。しかし、これに限られるものではなく、アミンミスト飛散量制御部101から出力される指令添加量に一致するように、ポンプ14bの回転数を制御するようにしてもよい。
【0028】
次に、本実施形態のアミン飛散量を抑制する作用について、さらに詳しく説明する。吸収液を循環している吸収塔内の排ガス中のミストは、アミン吸収液とほぼ等濃度のアミン溶液からなり、一方、水洗塔内のミストと洗浄水中のアミン濃度も同様の関係であることが容易に推測される。本発明の発明者らによれば、次に述べる知見を得ることができた。
【0029】
(1)水洗塔のガス最上流側の充填層42aのガス上流(又は、下流でもよい。)にミストを液として回収するデミスタ44aとコレクタ41aを設け、そのコレクタ41aで回収した回収液の流量を計測する。
なお、従来、デミスタは慣性衝突でミストを液滴化し回収する装置であるため、硫酸ミストのようなフューム状のミストの影響は評価できないと考えられてきたが、吸収塔7を経由してきた排ガス中の硫酸ミストはアミン蒸気及び水蒸気を吸収し、アミン水溶液のミストとして、粗粒化することが知られている(例えば、特許文献2)。そこで、本発明者等は吸収塔7から排出されるミストは、吸収液の分裂で生じるデミスタで回収可能なものが大半であると推測して実験した。その結果、デミスタの回収液の流量を計測することにより、排ガス中のミストの流量を把握できることを確認した。排ガス中のアミン水溶液のミストの流量が把握できれば、吸収液中の消泡剤の濃度を調整することにより、例えばアミン水溶液のミストを低減でき、最終的にアミン飛散量を抑制できることになる。
そこで、排ガス中のミスト流量と吸収液中の消泡剤の濃度との関係データを、予め実施条件を模擬した小型装置で収集しておく。そして、運転中の排ガス中のミスト流量の計測値を低減するのに有効な吸収液中の消泡剤の濃度を関係データに基づいて求める。求めた消泡剤の濃度を設定値として、吸収液に添加する消泡剤の量を調整すれば、最終的にアミン飛散量を抑制できる。なお、上記の関係データは、実装置の試運転時に実測して決定するようにしてもよい。
【0030】
(2)上記(1)に代えて、例えば燃焼器のDSS運転などによって、運転時のガス流量が変動する場合の対応について検討した。この場合は、デミスタ44aにおけるガス流量を実測し、又は他の部位の測定値から推定する。そして、回収液流量/ガス流量の比からミスト濃度を算出する。算出したミスト濃度と吸収液中の消泡剤の濃度との関係データに基づいて、消泡剤の添加量を制御してもよい。ただし、大きくガス流速が変わる場合は、必要なガス流速での吸収液の循環液量L/ガス流量Gの比を変数とし、(1)の場合と同様に、小型装置又は試運転時に排ガス中のミスト流量と吸収液中の消泡剤の濃度の関係データを収集しておき、その関係データに基づいて、添加する消泡剤に設定量を求めるのが望ましい。
【0031】
(3)また、回収液流量を連続的に把握する方法は、前述したように、コレクタ内の液面を一定にするように制御した送液ポンプの吐出流量を、コリオリ式、超音波式、電磁式、渦式等の液体流量計と振動式の液体密度計を組合わせたものにより実測する方法を用いる。あるいは、送液ポンプの回転数と吐出量の関係を予め実測しておき、送液ポンプの回転数から吐出流量を算出する方法を用いてもよい。
【0032】
(4)また、吸収液中の消泡剤の濃度変化を抑制するには、リクレーミングの頻度は低い方が望ましい。よって、予め排ガス中のSO2濃度を低減するため、アルカリ性のスラリ又は水溶液を脱硫剤とする湿式FGD装置30で処理するとよい。その際、脱硫後の排ガス中の水ミスト濃度を低減するため、湿式FGD装置30の出口側にデミスタ29を設けてもよい。
【0033】
(実施形態2)
図3に、本発明の他の実施形態のCO2化学吸収装置の系統図を示す。本実施形態が
図1の実施形態1と相違する点は、水洗搭40からのミスト状洗浄水の飛散を抑制することにある。つまり、CO2化学吸収装置の水洗搭40からのミスト状洗浄水の飛散抑制は、実施形態1の吸収塔7からのアミンの飛散抑制と同様の手法が有効である。
【0034】
本実施形態は、
図3に示すように、水洗塔40のガス最下流側の水洗部のガス出口に設けたデミスタ44bのガス上流側に、デミスタ44bに衝突して滴下する洗浄水を回収するコレクタ41dを設けている。コレクタ41dに回収された洗浄水は、ポンプ46eでガス最下流側の水洗部の循環液タンク45bに戻すようにしている。さらに、清浄な洗浄水と消泡剤とを混合する液混合槽51を設け、設定濃度の消泡剤が混合された洗浄水を、洗浄水槽50に供給する。そして、コレクタ41dに回収された洗浄水の流量を測定し、その測定値の変動に応じて液混合槽51から洗浄水槽50に添加する消泡剤の添加量を調整して、洗浄水槽50の洗浄水の消泡剤の濃度を調整するようにしている。
【0035】
このように、本実施形態2によれば、水洗搭40からのミスト状洗浄水の飛散が増えれば、設定濃度の消泡剤が混合された洗浄水が洗浄水槽50に添加されるので、ガス最下流側の水洗部の充填層42bからのミスト状洗浄水の飛散を抑えることができる。
【0036】
つまり、ミスト状洗浄水は、排ガス中のアミン蒸気濃度に比例したアミンを含んでいるがアミン濃度が低いので、通常は、水洗部でフラッディングを起こすことは無い。したがって、従来も、水洗塔の充填層間の差圧が一定値を超えてフラッディングの恐れのある場合に洗浄水にシリコーンオイルなどの消泡剤を添加する方法(特許文献4)で対応している。しかし、発明者等は、洗浄水に消泡剤としてのシリコーンオイルを、常時、添加したほうが後流へのミスト飛散量が低下することを知見した。特に、洗浄水中のアミン濃度を制御するために加える清浄な洗浄水中に、常に一定濃度の消泡剤を加えることが好ましいことを知見した。
【0037】
次に、本実施形態2の特徴である制御装置100に備えられた洗浄水ミスト飛散量制御部102について、
図4に示したブロック構成図を参照して説明する。図示のように、洗浄水ミスト飛散量制御部102は、デミスタ44bから滴下する洗浄水をコレクタ41dに回収し、この洗浄水の液面を検知する液面コントローラLC2が設けられている。液面コントローラLC2は、コレクタ41dの液面を設定レベルに保持するように、ポンプ46eの回転数を制御し、設定レベルを越えた回収洗浄水を循環液タンク45bに戻す。コレクタ41dから循環液タンク45bに戻された回収洗浄水の流量はポンプ46eの回転数に基づいて、洗浄水ミスト飛散量制御部102にて計測される。洗浄水ミスト飛散量制御部102は、回収洗浄水量の計測値に基づいて、予め定められた制御データに従って洗浄水に添加する消泡剤の添加量を求める。そして、まず排ガス16に同伴するアミン飛散量を低減するため、コレクタ41aにおける回収液流量を最低にできるように,消泡剤36の供給条件を調整する。その後、前述のようなコレクタ41dでの回収洗浄水の流量に基づき、液混合槽51で一定濃度に混合された消泡剤を含む洗浄水を、流量制御弁FC2を制御して洗浄水槽50に供給する。水洗搭40における洗浄水の消泡剤濃度が調整される。これによって、水洗搭40における排ガスの洗浄過程で、何らかの原因で発生する泡も抑制され、排ガスに同伴してデミスタ44bに至る洗浄水ミストが低減される。その結果、排ガス27中のアミン濃度の更なる低減が可能である。
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1の実施形態1のCO2化学吸収装置を用い、前段の湿式FGD装置30により排ガス32中のSO2濃度を1ppmv未満まで脱硫した石炭燃焼の排ガス(CO2濃度:12容量%、wet)32を試験に用いた。排ガス32は、吸収塔7に供給され、リーン吸収液10と充填層11内で接触し、リッチ吸収液となって底部タンク25に回収される。底部タンク25のリッチ吸収液9は熱交換器3で加熱された後、再生塔8に送給される。再生塔8に送給されたリッチ吸収液9はリボイラ21からの加熱蒸気でさらに加熱され、CO2を分離・放出後、リーン吸収液10として再生されて底部タンク26に回収される。
【0039】
一方、CO2除去後の排ガス16は吸収塔7内のガス側後流部に設置された水洗塔40に供給される。その際、デミスタ44a及びコレクタ41aにより排ガス16に同伴するミスト状吸収液が回収される。回収された吸収液は、コレクタ41a内の回収液高さが一定になるように、送液ポンプ46dで底部タンク25に戻される。本実施例1では、送液ポンプ46dの回転数と吐出量の関係に基づいて、回収された吸収液の液量の変化を連続的に計測した。
【0040】
なお、本装置の運転条件は、脱硫後の排ガス32の流量は14400(Nm
3/hr、wet)、温度は40℃、水洗塔40のガス最後流側の洗浄水温度45℃、リーン吸収液10の循環流量が27m
3/hrの条件で、充填時のMEA(モノエタノールアミン、CAS No.141−43−5)濃度が300kg-アミン/tの吸収液を消泡剤を入れていない状態で使用した。
【0041】
試験開始前に空気を排ガス32として送風し、予め、シリコンオイルを成分とする消泡剤(信越シリコーン製KS−604)を全消泡剤添加量(g)/全吸収液量(m
3)で表される一定の消泡剤濃度(mg/L)加えた後、コレクタ41aからの回収液流量が一定値に収斂した際の値を比較した。その結果、消泡剤濃度100mg/L以上で最低値に収斂することが判明したので、この条件に調整後、100hr連続試験を行った。
【0042】
その際、コレクタ41aからの回収液流量が10%以上増加した場合、消泡剤濃度10mg/L上昇分の消泡剤36を添加し、上記の収斂した最低値まで回収液流量を低減するように操作した。この際、消泡剤36はイオン交換水で原液を10倍に希釈して使用した。100hr連続試験時における洗浄処理後の排ガス27中の全アミン濃度(ミスト分はガス換算)は0.3ppmv(初期及び100hr後)であった。なお、水洗塔40において、洗浄水はイオン交換水を用いた。
【0043】
(比較例1)
比較のため、
図5に示す従来技術に基づくCO2化学吸収装置を用いて、実施例1と同じ条件で試験を行った。
図5の比較例1の装置は、
図1の装置から排ガス16に同伴するミスト状吸収液を回収するためのコレクタ41aと、送液ポンプ46d及び関連配管を除いた以外は実施例1と同じである。実施例1と同様に消泡剤を加えていないMEA水溶液を用いて、予め、空気を排ガス32として送風し、充填層11の差圧計37の指示値が最低値に収斂するように消泡剤を添加した。その結果、吸収液中の消泡剤濃度が10mg/L以上で差圧計37の指示値が最低値に収斂した。
【0044】
次いで、差圧計37の値が10%以上増加した場合、消泡剤濃度1mg/Lが上昇する分の消泡剤36を添加する操作した。この際、消泡剤36はイオン交換水で原液を10倍に希釈して使用した。実施例1と同様に100hr連続運転したが、差圧計37の指示値はほぼ一定であったため、それ以上消泡剤は添加しなかった。100hr連続試験時の排ガス27中の全アミン濃度(ミスト分はガス換算)は初期値が0.7ppmvで、100hr後の値は1.0ppmvであった。
【0045】
以上の結果から、実施例1のように、本発明に基づきミスト状吸収液の回収液流量を最小化する条件で運転する方が、比較例1のような吸収塔7の充填層11の差圧を最少化する方法よりも、洗浄処理後の排ガス27中の全アミン濃度を低減できる。
【0046】
(実施例2)
図3の実施形態2のCO2化学吸収装置を用い、実施例1と同様の試験をした。実施形態2は、実施形態1の装置の水洗塔40ガス最下流側に設けたデミスタ44bで捕集されたミストをコレクタ41dで回収する。実施例1のミスト状吸収液の場合と同様、コレクタ41dの液高さを一定にするように、回収した洗浄水をポンプ41dで洗浄水の循環液タンク45bに送るようにした。
【0047】
ここで、まず予め、空気を排ガス32として送風し、水洗塔40のデミスタ44bにおける回収液流量と洗浄水槽50の洗浄水中の消泡剤濃度の関係を検討した。その結果、消泡剤濃度が10mg/L以上で回収液流量が最少値に収斂することを確認した。そこで、洗浄水中の消泡剤濃度を10mg/Lとなるように調整した。その際、実施例1のイオン交換水の代わりに、消泡剤とイオン交換水を予め液混合槽51で撹拌したものを洗浄水槽50の洗浄水として使用した。
【0048】
なお、吸収液中には、実施例1と同様に、消泡剤濃度100mg/L分の消泡剤を加え、コレクタ41a又はコレクタ41dのミスト回収液流量が最小値から10%増加した場合、コレクタ41aの場合は消泡剤36の供給量を10mg/L分,コレクタ41dの場合は洗浄水中1mg/L分の濃度が増加するよう消泡剤を添加し、回収液流量が維持できるよう制御した。この状態で、100hr連続試験し、排ガス27中の全アミン濃度(ミスト分はガス換算)は0.2ppmv(初期及び100hr後)であった。この結果から、吸収塔7からのミスト状吸収液の飛散量と同様に、水洗塔40のミスト状洗浄水の飛散量も、デミスタ44bの回収液流量で計測し、これに対応した適切な量の消泡剤を洗浄水に添加することにより、排ガス27中のアミン濃度の更なる低減が可能である。
【0049】
以上、本発明を一実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨の範囲で変形又は変更された形態で実施することが可能であることは、当業者にあっては明白なことであり、そのような変形又は変更された形態が本願の特許請求の範囲に属することは明らかである。
【符号の説明】
【0050】
1 排ガス
7 吸収塔
8 再生塔
9 吸収液(リッチ吸収液)
10 吸収液(リーン吸収液)
11 充填層
14a、14b ポンプ
17 吸収液供給口
27、32 排ガス
36 消泡剤
40 水洗搭
41a〜41d コレクタ
42a〜42c 充填層
44a,44b デミスタ
45a,45b 循環液タンク
46a〜46e ポンプ
50 洗浄水槽
51 液混合槽