(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セメントキルン設備におけるセメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路から燃焼ガスの一部を抽気し、該抽気ガスから塩素を除去したうえ脱硫を行う、セメントキルン抽気ガスの処理方法であって、前記塩素を除去した後の該抽気ガスを送気管に導入し、その送気管内を流れる該抽気ガスに向けて脱硫剤を含むスラリーを吹きかけて、前記脱硫剤を含むスラリーを吹きかける角度が以下の関係を満たし、なお且つ、前記脱硫剤を含むスラリーを吹きかける速度vS(m/s)と前記抽気ガスの流速vG(m/s)との比vS/vGが1.0〜4.0であるようにして、該抽気ガスの脱硫を行うことを特徴とするセメントキルン抽気ガスの処理方法。
2β≦α+β≦90°、且つ、αは前記抽気ガスに向流する側に存する。
α:吹き込みノズルと送気管の内壁が成す鋭角(°)
β:前記スラリーの噴霧角(°)
セメントキルン設備におけるセメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路から燃焼ガスの一部を抽気し、該抽気ガスから塩素を除去したうえ脱硫を行う、セメントキルン抽気ガスの処理装置であって、
脱硫剤と水を混合して脱硫剤スラリーを調製するためのスラリー撹拌槽と、
前記脱硫剤スラリーを圧送するためのスラリーポンプと、
前記塩素を除去した後の該抽気ガスを送気するための送気管と、
前記送気管内を流れる該抽気ガスに向けて前記脱硫剤スラリーを吹き込むための吹き込みノズルと、
前記脱硫剤スラリーを吹き込まれた該抽気ガス中に生成した固体硫化物を回収する固気分離装置とを備え、
前記脱硫剤スラリーを吹きかける角度が以下の関係を満たし、なお且つ、前記脱硫剤を含むスラリーを吹きかける速度vS(m/s)と前記抽気ガスの流速vG(m/s)との比vS/vGが1.0〜4.0であるようにして、該抽気ガスの脱硫を行うように構成されていることを特徴とするセメントキルン抽気ガスの処理装置。
2β≦α+β≦90°、且つ、αは前記抽気ガスに向流する側に存する。
α:吹き込みノズルと送気管の内壁が成す鋭角(°)
β:前記スラリーの噴霧角(°)
セメントキルン設備におけるセメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路から燃焼ガスの一部を抽気し、該抽気ガスから塩素を除去したうえ脱硫を行う、セメントキルン抽気ガスの処理装置であって、
前記塩素を除去した後の該抽気ガスを送気するための送気管と、
前記送気管内を流れる該抽気ガスに向けて、脱硫剤と水を同時に吹き込むための吹き込みノズルと、
前記脱硫剤と水を同時に吹き込まれた該抽気ガス中に生成した固体硫化物を回収する固気分離装置とを備え、
前記脱硫剤スラリーを吹きかける角度が以下の関係を満たし、なお且つ、前記脱硫剤を含むスラリーを吹きかける速度vS(m/s)と前記抽気ガスの流速vG(m/s)との比vS/vGが1.0〜4.0であるようにして、該抽気ガスの脱硫を行うように構成されていることを特徴とするセメントキルン抽気ガスの処理装置。
2β≦α+β≦90°、且つ、αは前記抽気ガスに向流する側に存する。
α:吹き込みノズルと送気管の内壁が成す鋭角(°)
β:前記スラリーの噴霧角(°)
【背景技術】
【0002】
従来、セメント製造設備においてプレヒータの閉塞等の問題を引き起こす塩素の処理については、塩素バイパスシステムが採用されている。このシステムは、セメントキルン設備におけるセメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路から燃焼ガスの一部を抽気したうえ、その抽気ガスから塩素を除去して、セメントキルン系内に存在する塩素を系外除去するものである。より具体的には、抽気ガスに含まれる塩素は、冷却による凝縮等によって、抽気ガスに含まれるダスト(以下、「塩素バイパスダスト」と称する。)と一緒になって固相に移行するので、相対的に塩素含有量が低く、セメントキルン系に戻すことが可能なダストの粗粉をサイクロン等の分級機により分離したうえで、塩素含有量が高められた微粉を含むダストを固気分離して回収することにより、抽気ガスから塩素を除くことができ、その塩素の除かれた抽気ガスは、セメントキルン系に戻す、といったシステムである。
【0003】
この塩素バイパスシステムから排出されるガス(以下、「塩素バイパス排ガス」と称する。)には、高濃度のSO
2が含まれるため、塩素除去後の排ガスをそのまま系外へ放出することができず、プレヒータ等のセメントキルン系に戻す必要があった。しかし、塩素バイパス排ガスをプレヒータ等に戻すことは、セメントキルン系内での硫黄分の濃縮を促進させる結果となり、セメントキルンやプレヒータでの硫黄由来のコーチングトラブルが生じて、ひいてはセメントの安定製造が困難になるという問題があった。
【0004】
このような問題に対処するため、塩素バイパス排ガスを脱硫する技術が開発され、例えば、特許文献1には、回収された塩素バイパスダストからなるスラリーと塩素バイパス排ガスを接触させて脱硫を行う脱硫塔を備える塩素バイパス排ガスの処理設備が開示されている。また、特許文献2には、塩素バイパスシステムの後段に乾式脱硫装置を備える塩素バイパス排ガスの処理方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の塩素バイパス排ガスの処理方法(湿式法)は、大型の専用設備に加えて処理で生じる廃水やスラッジの処理を必要とした。また、特許文献2に記載の塩素バイパス排ガスの処理方法(乾式法)においても、湿式法同様に大型の専用設備を必要とした。一般的に、設置場所に新規設備を増設するための余裕が少ない既存の塩素バイパス設備では、それら排ガス脱硫設備の設置が困難である。
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、セメントキルン設備の塩素バイパスシステムから排出される塩素バイパス排ガスを、既存のセメントキルン設備に付設し易い簡易な設備で、高効率に脱硫することを可能にする、セメントキルン抽気ガスの処理方法及びその処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、第1に、セメントキルン設備におけるセメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路から燃焼ガスの一部を抽気し、該抽気ガスから塩素を除去したうえ脱硫を行う、セメントキルン抽気ガスの処理方法であって、前記塩素を除去した後の該抽気ガスを送気管に導入し、その送気管内を流れる該抽気ガスに向けて脱硫剤を含むスラリーを吹きかけて、該抽気ガスの脱硫を行うことを特徴とするセメントキルン抽気ガスの処理方法を提供するものである。
【0009】
本発明による上記処理方法によれば、一般的な送気管内を流れる抽気ガスに向けて脱硫剤を含むスラリーを吹きかけて、その抽気ガスの脱硫を行うので、既存のセメントキルン設備に付設し易い簡易な設備で、高効率に、セメントキルン設備の塩素バイパスシステムから排出される塩素バイパス排ガスの脱硫を行うことができる。
【0010】
本発明による上記処理方法においては、前記脱硫剤を含むスラリーを吹きかける角度が以下の関係を満たし、なお且つ、前記脱硫剤を含むスラリーを吹きかける速度v
S(m/s)と前記抽気ガスの流速v
G(m/s)との比v
S/v
Gが1.0〜4.0であることが好ましい。これによれば、より高効率に、塩素バイパス排ガスの脱硫を行うことができる。
2β≦α+β≦90°、且つ、αは前記抽気ガスに向流する側に存する。
α:吹き込みノズルと送気管の内壁が成す鋭角(°)
β:前記スラリーの噴霧角(°)
【0011】
一方、本発明は、第2に、セメントキルン設備におけるセメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路から燃焼ガスの一部を抽気し、該抽気ガスから塩素を除去したうえ脱硫を行う、セメントキルン抽気ガスの処理装置であって、脱硫剤と水を混合して脱硫剤スラリーを調製するためのスラリー撹拌槽と、前記脱硫剤スラリーを圧送するためのスラリーポンプと、前記塩素を除去した後の該抽気ガスを送気するための送気管と、前記送気管内を流れる該抽気ガスに向けて前記脱硫剤スラリーを吹き込むための吹き込みノズルと、前記脱硫剤スラリーを吹き込まれた該抽気ガス中に生成した固体硫化物を回収する固気分離装置とを備えることを特徴とするセメントキルン抽気ガスの処理装置を提供するものである。
【0012】
本発明による上記処理装置によれば、一般的な送気管内を流れる抽気ガスに向けて脱硫剤スラリーを吹き込むための吹き込みノズルを設ける構成としたので、既存のセメントキルン設備に簡易に付設することができ、これにより高効率に、セメントキルン設備の塩素バイパスシステムから排出される塩素バイパス排ガスの脱硫を行うことができる。
【0013】
他方、本発明は、第3に、セメントキルン設備におけるセメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路から燃焼ガスの一部を抽気し、該抽気ガスから塩素を除去したうえ脱硫を行う、セメントキルン抽気ガスの処理装置であって、前記塩素を除去した後の該抽気ガスを送気するための送気管と、前記送気管内を流れる該抽気ガスに向けて、脱硫剤と水を同時に吹き込むための吹き込みノズルと、前記脱硫剤と水を同時に吹き込まれた該抽気ガス中に生成した固体硫化物を回収する固気分離装置とを備えることを特徴とするセメントキルン抽気ガスの処理装置を提供するものである。
【0014】
本発明による上記処理装置によれば、一般的な送気管内を流れる抽気ガスに向けて脱硫剤と水を同時に吹き込むための吹き込みノズルを設ける構成としたので、既存のセメントキルン設備に簡易に付設することができ、これにより高効率に、セメントキルン設備の塩素バイパスシステムから排出される塩素バイパス排ガスの脱硫を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送気管内を流れる抽気ガスに向けて脱硫剤を含むスラリーを吹きかけて、その抽気ガスの脱硫を行う構成としたので、既存のセメントキルン設備に付設し易い簡易な設備で、セメントキルン設備の塩素バイパスシステムから排出される塩素バイパス排ガスを、高効率に脱硫することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る脱硫方法を塩素バイパス排ガスに適用した塩素バイパス排ガス脱硫システムの一例を示す。この塩素バイパス排ガス脱硫システム1は、従来の塩素バイパスシステム、すなわち、セメントキルン11の窯尻11aからプレヒータ20の最下段サイクロン20aに至るまでのキルン排ガス流路30から、燃焼ガスの一部を冷却ファン13からの冷風CAで冷却しながら抽気する抽気プローブ12と、抽気プローブ12で抽気した抽気ガスG1に含まれる塩素バイパスダストの粗粉D1を分離する分級機14と、分級機14から排出された抽気ガスG2に含まれる塩素バイパスダストの微粉D2を回収する固気分離装置15と、固気分離装置15から排出された抽気ガスG3を排気するための排気ファン16等で構成される従来の塩素バイパスシステムに、さらに、抽気ガスG3の脱硫のために、塩素を除去した後の抽気ガスG3を送気するための送気管8と、脱硫剤タンク2から供給される脱硫剤DSと、水タンク3から供給される水Wを混合して脱硫剤スラリーSを調製するためのスラリー撹拌槽4と、脱硫剤スラリーSを圧送するためのスラリーポンプ5と、スラリーポンプ5で圧送される脱硫剤スラリーSを、送気管8内を流れる抽気ガスG3に向けて吹き込むための吹き込みノズル6と、脱硫剤スラリーSを吹き込まれた抽気ガスG3中に生成した固体硫化物(石こう、亜硫酸カルシウム等)D3を回収する固気分離装置7とを備えている。
【0019】
この塩素バイパス排ガス脱硫システム1においては、キルン排ガス流路30から抽気プローブ12を介して冷風CAで冷却しながら抽気した抽気ガスG1に含まれる塩素は、冷却により抽気ガスに含まれる塩素バイパスダストの表面等に凝縮して、固相となって塩素バイパスダストと一緒に運ばれる。分級機14では、相対的に塩素含有量が低く、セメントキルン系に戻すことが可能な、塩素バイパスダストの粗粉D1が分離され、その後に、固気離装置15では、分級機14から排出された抽気ガスG2から、相対的に塩素含有量が高い、塩素バイパスダストの微粉D2を回収することにより、抽気ガスから塩素を取除く。
【0020】
スラリー撹拌槽4には、脱硫剤DSを入れた脱硫剤タンク2と水を入れた水タンク3とがそれぞれ連設し、スラリー撹拌槽4に脱硫剤DSと水Wとを供給するようにしている。また、スラリー攪拌装置として攪拌翼4aが付設されており、その内部で、脱硫剤DS及び水Wを混合して脱硫剤スラリーSを生成する処理、並びに、その混合によって生成された脱硫剤スラリーSの攪拌する処理が行われるようにしている。攪拌翼4aとしては、例えば、一般的な、スクリュー型のもの等を用いればよい。
【0021】
脱硫剤DSとしては、消石灰(Ca(OH)
2)や生石灰(CaO)等を用いればよく、脱硫剤スラリーSの製造における発熱現象の観点からは、消石灰が好ましい。一方、生石灰を用いた場合でも、水Wと混合されて脱硫剤スラリーSを形成した場合、脱硫剤スラリーS中の生石灰は、直ちに消石灰となる。
【0022】
ここで、固気分離装置15で回収される塩素バイパスダストの微粉D2には、生石灰が含まれるため、この塩素バイパスダストの微粉D2を脱硫剤DSとして利用してもよい。
【0023】
脱硫剤スラリーSと抽気ガスG3が接触した場合、脱硫剤スラリーS中の消石灰が、抽気ガスG3中の硫黄酸化物(SO
2)と反応して、直ちに石こう(CaSO
4・2H
2O)及び/又は亜硫酸カルシウム(CaSO
3・0.5H
2O)等の固体硫化物が生成するので、これを固気分離により回収することによって、抽気ガスG3中の硫黄酸化物を除去し、脱硫することができる。
【0024】
脱硫剤スラリーSに含まれる消石灰は、粒径が小さいほど上記の反応速度が上がり、脱硫効果に優れるものとなるが、脱硫剤スラリーSの製造等でのハンドリングの観点からは、過剰な小径化は好ましくない。また、消石灰及び生石灰共に水と混合した場合に溶解して小径化することから、用いる脱硫剤DSの粒径は、吹き込みノズル6の噴霧孔径以下の大きさであれば使用することができる。
【0025】
水Wとしては、上水道水や工業用水が使用できる。
【0026】
脱硫剤DSと水Wの混合割合は、質量比で、脱硫剤DS/水Wが1.0〜0.01であることが好ましく、0.5〜0.01であることがより好ましく、0.1〜0.05であることがさらにより好ましい。この範囲内であれば、脱硫剤スラリーSの流動性及びポンプ圧送性が、吹き込みノズル6からの吐出に適しつつ、抽気ガスG3からの上記固体硫化物の生成反応を確実に生じさせることができる。
【0027】
スラリーポンプ5としては、スラリー用渦巻きポンプ、ピストンポンプ、及び、モーノポンプ等の通常のスラリー液用輸送装置を用いればよい。
【0028】
吹き込みノズル6には、スラリーポンプ5によって、スラリー撹拌槽4から排出された脱硫剤スラリーSが圧送される。
【0029】
吹き込みノズル6は、送気管8内の抽気ガスG3のガス流に対して、上流側に傾けた状態で送気管8に固定する。以下、この吹き込みノズル6の送気管8への固定の位置関係について、
図2により説明する。
【0030】
図2は、本発明における吹き込みノズル6と送気管8の固定の位置関係を示すもので、αは、吹き込みノズル6と送気管8の内壁が成す鋭角(°)であり、βは、吹き込みノズル6から噴霧される脱硫剤スラリーSの噴霧角(°)である。
【0031】
ここで、塩素バイパスシステムからの一般的な排ガスは、温度が100℃〜250℃、SO
2濃度が500ppm〜10000ppm、排ガス流量が2.5m
3N/s〜25m
3N/sである。この実施形態においては、そのような排ガスが、抽気ガスG3に相当している。また、塩素バイパスシステムからの排気経路の一般的な排気管の内径は、600mm〜1300mmである。この実施形態においては、そのような排気経路の排気管が、送気管8に相当している。
【0032】
送気管8内で脱硫剤スラリーSを噴霧すると、脱硫剤スラリーSに含有されていた消石灰は、抽気ガスG3の硫黄酸化物と直ちに反応して、固体硫化物(石こう、亜硫酸カルシウム等)D3が生成し、また、脱硫剤スラリーSに含有されていた水Wは、100℃以上の温度を有する抽気ガスG3の熱によって直ちに水蒸気となる。そして、生成した固体硫化物(石こう、亜硫酸カルシウム等)D3は、抽気ガスG3と生成した水蒸気が合流してなる排ガスG4と共に、固気分離装置7へ運ばれる。
【0033】
ここで、脱硫剤スラリーSの噴霧方向が、抽気ガスG3の下流側、すなわち固気分離装置7側の場合、脱硫剤スラリーSの噴霧と抽気ガスG3が並流してしまい、脱硫剤スラリーSと抽気ガスG3の混合が充分に生じずに、脱硫効果が低下してしまう場合がある。
【0034】
そのため、送気管8への吹き込みノズル6の固定位置は、送気管8の垂直部(ライジングダクト)において、吹き込みノズル6は下向きに、すなわち、送気管8内を上向きに流れてくる抽気ガスG3に向流させる。このような固定の位置関係にすることで、脱硫剤スラリーSと抽気ガスG3が充分に混合することができ、ひいては上記固体硫化物の生成反応と水蒸気生成とをより効率的に生じさせることができる。
【0035】
送気管8内における脱硫剤スラリーSの噴霧量は、脱硫剤スラリーSに含有されるCaOと、抽気ガスG3に含有されるSO
2のモル比CaO/SO
2が、1.5〜4.0であることが好ましく、3.0〜4.0であることがより好ましい。この範囲であれば、抽気ガスG3に含有される硫黄酸化物の80%以上を固体硫化物(石こう、亜硫酸カルシウム等)D3に変化させることができる。
【0036】
また、送気管8内における脱硫剤スラリーSの噴霧量V
S(リットル/s)は、抽気ガスG3の排ガス流量V
G(m
3N/s)に対して、V
S/V
Gが0.002〜0.02リットル/m
3Nであることが好ましく、0.004〜0.01リットル/m
3Nであることがより好ましい。この範囲であれば、噴霧した脱硫剤スラリーS中の水Wの全量を水蒸気に変化させることができる。
【0037】
さらに、噴霧される脱硫剤スラリーSが送気管8の内壁に付着すると、送気管8内にカルシウム化合物のコーチングを形成して、抽気ガスG3の流れの阻害につながる。したがって、送気管8内で噴霧される脱硫剤スラリーSは、送気管8の内壁に到達しないように吹き込みノズル6と送気管8の固定の位置関係、吹き込みノズル6の噴霧角及び抽気ガスG3の運転条件等の適正化を行うことが好ましい。
【0038】
具体的には、吹き込みノズル6と送気管8の固定の位置関係は、以下の関係を有していることが好ましい。
2β≦α+β≦90°、且つ、αは抽気ガスG3に向流する側(下方側)に存する。
α:吹き込みノズル6と送気管8の内壁が成す鋭角(°)
β:脱硫剤スラリーSの噴霧角(°)
【0039】
すなわち、脱硫剤スラリーSは、吹き込みノズル6と鋭角を形成する送気管8の内壁面に平行な方向から、かかる内壁面に垂直な方向までの範囲であって、抽気ガスG3に対して向流する方向に噴霧するようにすることが好ましい。
【0040】
なお、吹き込みノズル6の先端部は送気管8の内部に入り込んでいるので、送気管8の内壁面に平行な方向に脱硫剤スラリーSを噴霧しても、送気管8の内壁面に付着することはない。
【0041】
また、吹き込みノズル6から送気管8内への脱硫剤スラリーSの噴霧速度v
S(m/s)と、送気管8内を流れる抽気ガスG3の流速v
G(m/s)との関係は、v
S/v
G比が1.0〜4.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。この範囲であれば、脱硫剤スラリーSと抽気ガスG3が充分に混合するので、上記固体硫化物の生成反応と水蒸気生成とをより効率的に生じさせることができる。
【0042】
送気管8内に噴霧される脱硫剤スラリーSの粒径R
S(μm)は、小さいほど上記の反応効率に優れ、90μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。一方、脱硫剤スラリーSの粒径R
S(μm)が、90μmを超えると、例えば、上記の吹き込みノズル6と送気管8の固定の位置関係がα+β=90°の場合など、あるいはその位置関係に近い場合などにおいては、送気管8の対面の内壁に脱硫剤スラリーSが到達するおそれがある。なお、脱硫剤スラリーSの粒径R
S(μm)は、吹き込みノズル6の孔径を指し、ノズルチップを変更することで容易に調整できる。
【0043】
固気分離装置7としては、遠心力式、ろ過式、静電気式等の一般的な集塵装置を用いることができるが、操作性等からバグフィルタ(ろ過式)が好ましい。なお、固気分離装置7内には、処理に用いられた脱硫剤スラリーSに由来するカルシウム成分が、バグフィルタに付着する等して存在しており、排ガスG4中に残留する硫黄酸化物の一部は、この固気分離装置7内に存在するカルシウム成分と反応して、固体硫化物(石こう、亜硫酸カルシウム等)D3を生成する場合もある。
【0044】
固気分離装置7で固体硫化物D3として回収された石こう、亜硫酸カルシウム等は、副産物としての利用も可能である。
【0045】
次に、上記に説明した塩素バイパス排ガス脱硫システム1の動作について、
図1を参照しながら説明する。
【0046】
脱硫剤タンク2から供給される脱硫剤DSと、水タンク3から供給される水Wとを混合して、スラリー撹拌槽4で脱硫剤スラリーSを調製する。
【0047】
スラリー撹拌槽4で調製した脱硫剤スラリーSを、スラリーポンプ5で吹き込みノズル6に圧送する。
【0048】
吹き込みノズル6からは、上記脱硫剤スラリーSを、抽気ガスG3の排気経路である送気管8内に噴霧する。
【0049】
固気分離装置7では、脱硫剤スラリーSと抽気ガスG3の接触によって生成された、排ガスG4に含まれる固体硫化物(石こう、亜硫酸カルシウム等)D3を、回収すると共に、その固体硫化物が除かれた排ガスG4を大気解放するかセメントキルン系に戻す。
【0050】
一方、本発明の別の態様としては、吹き込みノズル6に二流体用ノズルを使用してもよい。すなわち、脱硫剤DSと水Wとを別々に二流体用ノズルからなる吹き込みノズル6に圧送して、ノズル6の異なる吹き出し口から脱硫剤DSと水Wとを同時に送気管8内を流れる抽気ガスG3に向けて吹き込むようにしてもよい。この二流体用ノズルを使用する場合には、上記のスラリー撹拌槽4とスラリーポンプ5の代わりに、脱硫剤DSの空気圧送設備と、水Wの送液ポンプを設置すればよい。この態様のように二流体用ノズルを使用する場合には、そのノズル6から脱硫剤DSと水Wとが吐出された直後には、それらが混ざり合って上述した脱硫剤スラリーSと実質的に同様な性状のものとなって抽気ガスG3に接触する。よって、これにより、抽気ガスの脱硫を成すことができる。また、この場合の、脱硫剤DSと水Wの混合物に関するノズル6からの噴霧角等の各種噴霧の条件は、前記の脱硫剤スラリーSの噴霧の条件と同じであればよい。
【0051】
次に、上記動作の効果について説明する。
【0052】
具体的には、表1に示す抽気ガスG3、脱硫剤スラリーS、及び送気管8を使用して、吹き込みノズル6の固定角度(α+β)(°)、脱硫剤スラリーSの噴霧速度V
S(m/s)、及び脱硫剤スラリーSの粒径R
S(μm)を変化させた場合の、固気分離後の排ガス中(
図1の排ガスG4)の硫黄酸化物濃度と、脱硫剤スラリーSの送気管8内壁への付着状況を確認した。なお、脱硫剤スラリーSの送気管8内壁への付着状況の評価には、目視による官能評価を用い、○(付着なし)、△(微量の付着の形跡あり)、×(付着あり)の3段階評価とした。
【0056】
表2に示すように、脱硫剤スラリーSの噴霧角度(α+β)が、2β≦α+β≦90°の関係を満足している水準1〜3では、脱硫剤スラリーSの送気管内壁への付着は認められず、また、脱硫性能の低下も認められなかった。一方、脱硫剤スラリーSの噴霧角度(α+β)が、上記関係を満足しない水準4では、脱硫剤スラリーSの送気管内壁への付着と脱硫性能の低下が認められた。
また、脱硫剤スラリーSの噴霧速度と抽気ガスG3の流速の速度比(スラリー/排ガス)の値が1.5の水準6では、その値が1.0である水準1と同様の結果が得られたが、速度比(スラリー/排ガス)の値が4.0の水準5では、脱硫剤スラリーSの送気管内壁への付着傾向が若干みられた。一方、速度比(スラリー/排ガス)の値が1.0未満の水準7及び水準8では、脱硫性能の低下傾向がみられた。
さらに、脱硫剤スラリーSの粒径が75μmである水準9では、その粒径が50μmである水準1と同様の結果が得られた。
【0057】
以上のように、脱硫剤を含むスラリーを、送気管内を流れる抽気ガスに向けて吹きかけることにより、その抽気ガスの脱硫を行うことができ、さらには、その脱硫剤を含むスラリーを、特定の角度及び特定の速度で吹きかけることで、より高効率に、その抽気ガスの脱硫を行うことができることが明らかとなった。