特許第6878237号(P6878237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878237
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】感圧性粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20210517BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20210517BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20210517BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210517BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20210517BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20210517BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/06
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J11/08
   C09J7/20
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-192250(P2017-192250)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-65189(P2019-65189A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年6月10日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】服部 絢子
(72)【発明者】
【氏名】安田 誠也
【審査官】 川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−227843(JP,A)
【文献】 特開平10−017831(JP,A)
【文献】 特開2000−119609(JP,A)
【文献】 特開2003−292913(JP,A)
【文献】 特開2017−132893(JP,A)
【文献】 特開2015−067653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00,133/00
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系感圧性粘着剤層の少なくとも一方の表面に非粘着性マスキング部材を有し、
前記感圧性粘着剤層は、質量平均分子量が50万〜150万の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を含有し、
前記感圧性粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率が5.0×10〜1.0×10Paであり、
前記感圧性粘着剤層表面の、前記非粘着性マスキング部材により被覆されている部分の面積の割合が5〜11%であり、
かつ、前記感圧性粘着剤層の厚みに対する、前記感圧性粘着剤層表面から前記非粘着性マスキング部材までの最低高さの割合が14〜50%である、カーペットに対して使用する感圧性粘着テープ。
【請求項2】
前記感圧性粘着剤層が(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)及び非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)を含有し、前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の含有量が1.0〜60質量部である、請求項1に記載の感圧性粘着テープ。
【請求項3】
前記非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)が、ヒドロキシフェニルホスフェート、レゾルシノールビスフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジ−2,6−キシレニルホスフェートからなる群より選ばれる1種以上である、請求項2に記載の感圧性粘着テープ。
【請求項4】
前記感圧性粘着剤層の厚みが0.1〜2.0mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
【請求項5】
前記感圧性粘着剤層の引張貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下になる温度が205℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
【請求項6】
前記感圧性粘着剤層がさらに微粒子を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
【請求項7】
前記感圧性粘着剤層がさらに粘着付与樹脂を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
【請求項8】
前記感圧性粘着剤層の一方の表面に前記非粘着性マスキング部材を有し、他方の面に基材を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
【請求項9】
前記基材の上にさらに再剥離性粘着層を有する、請求項8に記載の感圧性粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
接着テープや粘着テープは、接着剤よりも施工が簡便であり、また、施工速度に優れることから、モルタル等の建築用材料、電子機器、織物、編物等の繊維材料等の様々な分野において用いられている。特に建築用材料、繊維材料は表面が粗面であることが多いため、これら用途においては基材上に粘着剤層を設けることによって粗面への追従性や粘着力の向上が図られている。建築用材料や、自動車、航空機、鉄道車両等の輸送分野の内装材に使用される粘着テープに対しては、一般に、高い粘着力に加えて、優れた難燃性を有することも求められる。
【0003】
輸送分野の内装材に関して、近年、航空機のカーペット等の部材を航空機躯体に固定する際に両面粘着テープを使用することが検討されている。カーペット等の部材は定期的に交換作業が行われていることから、カーペットの使用時には十分な粘着性を有しているが、カーペットの交換時には容易に剥離でき、剥離の際に航空機躯体等の被着体側に糊残りが発生しない粘着テープが求められている。
【0004】
例えば特許文献1には、手切れ性を有する基材の両面に粘着剤層を有し、両粘着剤層の粘着力の比が所定の範囲にあり、かつ、所定の燃焼性試験の規格を満たす両面粘着テープが開示されている。該両面粘着テープは手切れ性、難燃性、剥離性にバランスよく優れ、航空機カーペット等の航空機部材を固定する用途に好適である。特許文献1に記載の両面粘着テープは、航空機の床材とカーペットとの貼り合わせに好適に用いられ、カーペット側に貼る面の粘着剤の粘着力は非常に高く、かつ床側に貼り付ける面の粘着剤は適度に床面に貼り付き、カーペット交換の際に糊残りせずに剥離できることが好ましい旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−143353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
両面粘着テープを用いて航空機のカーペットを航空機躯体に固定する際には、位置ずれが生じた場合に対処できるように、固定作業時にカーペットの位置調整が容易に行えることが好ましい。しかしながら、カーペットと、両面粘着テープのカーペット側の面の粘着剤との接着が強すぎる場合、カーペットの位置調整が困難になり作業性が低下する。特許文献1に記載の両面粘着テープは航空機のカーペットを固定する性能は有しているが、カーペットの位置調整の容易性については検討されていない。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであって、例えば航空機のカーペット等の被着体を航空機躯体に固定する際に好適に用いられ、固定作業時には被着体の位置調整を容易に行うことができ、固定後は被着体に対し良好な粘着力を発現する感圧性粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アクリル系感圧性粘着剤層の少なくとも一方の表面に非粘着性マスキング部材を備えた所定の構成を有する感圧性粘着テープとすることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成させた。
[1]アクリル系感圧性粘着剤層の少なくとも一方の表面に非粘着性マスキング部材を有し、前記感圧性粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率が5.0×10〜1.0×10Paであり、前記感圧性粘着剤層表面の、前記非粘着性マスキング部材により被覆されている部分の面積の割合が5〜11%であり、かつ、前記感圧性粘着剤層の厚みに対する、前記感圧性粘着剤層表面から前記非粘着性マスキング部材までの最低高さの割合が14〜50%である、感圧性粘着テープ。
[2]前記感圧性粘着剤層が(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)及び非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)を含有し、前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の含有量が1.0〜60質量部である、上記[1]に記載の感圧性粘着テープ。
[3]前記非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)が、ヒドロキシフェニルホスフェート、レゾルシノールビスフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジ−2,6−キシレニルホスフェートからなる群より選ばれる1種以上である、上記[2]に記載の感圧性粘着テープ。
[4]前記感圧性粘着剤層の厚みが0.1〜2.0mmである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
[5]前記感圧性粘着剤層の引張貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下になる温度が205℃以下である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
[6]前記感圧性粘着剤層がさらに微粒子を含有する、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
[7]前記感圧性粘着剤層がさらに粘着付与樹脂を含有する、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
[8]前記感圧性粘着剤層の一方の表面に前記非粘着性マスキング部材を有し、他方の面に基材を有する、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の感圧性粘着テープ。
[9]前記基材の上にさらに再剥離性粘着層を有する、上記[8]に記載の感圧性粘着テープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば航空機のカーペットを航空機躯体に固定する際に好適に用いられ、固定作業時にはカーペットの位置調整を容易に行うことができ、固定後はカーペットに対し良好な粘着力を発現する感圧性粘着テープを提供することができる。
本発明の感圧性粘着テープが感圧性粘着剤層の一方の表面に所定の要件を満たすように非粘着性マスキング部材を備え、他方の面に再剥離性粘着層を有する両面粘着テープであると、さらに、航空機のカーペット交換の際には航空機躯体への糊残りが少なく、再剥離性に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の感圧性粘着テープの一実施形態を示す断面模式図である。
図2】本発明の感圧性粘着テープを被着体に加圧接着する場合の一実施形態を示す断面模式図である。
図3】2軸の合成樹脂フィラメントテープからなる非粘着マスキング部材を説明するための説明図である。
図4】3軸の合成樹脂フィラメントテープからなる非粘着マスキング部材を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[感圧性粘着テープ]
本発明の感圧性粘着テープ(以下、単に「粘着テープ」ともいう。)は、アクリル系感圧性粘着剤層(以下、単に「感圧性粘着剤層」ともいう。)の少なくとも一方の表面に非粘着性マスキング部材を有し、該感圧性粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率が5.0×10〜1.0×10Paである。そして、該感圧性粘着剤層表面の、非粘着性マスキング部材により被覆されている部分の面積の割合が5〜11%であり、かつ、該感圧性粘着剤層の厚みに対する、該感圧性粘着剤層表面から該非粘着性マスキング部材までの最低高さの割合が14〜50%となるものである。
本発明の感圧性粘着テープは上記構成であることにより、例えば航空機のカーペットを航空機躯体に固定する際に用いた場合に、固定作業時にはカーペットの位置調整を容易に行うことができ(以下、「位置調整機能」ともいう。)、固定後はカーペットに対し良好な粘着力を発現する。
【0012】
本発明の粘着テープの構成を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の粘着テープの一実施形態を示す断面模式図である。図1における感圧性粘着テープ10は、感圧性粘着剤層11の一方の表面11aに非粘着性マスキング部材12を有する構成である。図1において、非粘着性マスキング部材12は感圧性粘着剤層表面11aから突出するように積層され、かつ、非粘着性マスキング部材12は感圧性粘着剤層11との接触部分において感圧性粘着剤層表面11aを部分的に被覆している。
【0013】
本発明の感圧性粘着テープ10は、少なくとも、感圧性粘着テープ10の非粘着性マスキング部材12を有する側の面を被着体に接着して使用することができ、例えば以下に示す方法で行われるとよい。
まず、感圧性粘着テープ10を被着体に対して仮接着させるとよい。具体的には、感圧性粘着テープ10の非粘着性マスキング部材12を有する面を被着体20に貼り合わせ、感圧性粘着剤層11の表面11aが部分的に被着体20に接触するように感圧性粘着テープ10に比較的弱い圧力を付すとよい。このとき、感圧性粘着テープ10は、非粘着性マスキング部材12を有することで、一旦被着体に接着させられても、容易に剥離され、位置調整を自由に行うことが可能である。例えば、後述するカーペットの固定作業では、カーペットを床に置くことにより仮接着を行うことになる。
貼付位置が決められた後に、本接着を行うとよい。本接着は、長期間にわたって感圧性粘着テープ10を被着体20に接着させるために、強固に被着体に接着させることである。具体的には、感圧性粘着テープ10に、押圧などにより比較的強い圧力を加え、図2に示すように、非粘着性マスキング部材12が感圧性粘着剤層11内部に入り込んだ構造とすればよい。これにより、感圧性粘着剤層11は、被着体20に対する接触面積が大きく、かつ被着体20に押さえ付けられるように接着し、感圧性粘着テープ10が被着体20に強固に接着されることになる。例えば、後述するカーペットの固定作業では、床に置いたカーペットを上から押さえつけることで本接着を行うことになる。
以上のような機構により、感圧性粘着テープ10では、被着体の貼付位置の最終的な決定に至るまでの位置調整を容易に行うことができ、位置調整が終了した後には、加圧することにより被着体を強固に接着させることができる。
【0014】
本発明の粘着テープは、両面粘着テープであることが好ましい。その場合は例えば、基材レス両面粘着テープとなるものが挙げられる。基材レス両面粘着テープは、感圧性粘着剤層11を支持する基材がなく、感圧性粘着剤層11の両表面11a、11bが被着体に接着される接着面となり、表面11aに非粘着性マスキング部材12を有する構成が挙げられる。感圧性粘着剤層11の表面11bは、さらに非粘着性マスキング部材や再剥離性粘着層(非図示)等を有していてもよい。
また本発明の粘着テープが両面粘着テープである場合は、図1に示すように、感圧性粘着剤層11の一方の表面11aに非粘着性マスキング部材12を有し、他方の面11bに基材13を有する構成であり、基材13の上にさらに再剥離性粘着層14を有する構成であることがより好ましい。例えば航空機のカーペットを航空機躯体に固定する際に上記構成の両面粘着テープを用いる場合は、両面粘着テープの感圧性粘着剤層11側の面をカーペットに接着させ、再剥離性粘着層14側の面を航空機躯体に接着させる。これにより、カーペットの固定作業時の位置調整機能及び固定後の粘着力を発現することができるとともに、カーペット交換の際には航空機躯体への糊残りが少なく、再剥離性が良好になる。
感圧性粘着テープ10の感圧性粘着剤層面又は再剥離性粘着層面には、粘着テープを使用する前の表面保護のために剥離シート(非図示)を積層しておいてもよい。
【0015】
本発明の粘着テープは、前記感圧性粘着剤層表面の、非粘着性マスキング部材により被覆されている部分の面積の割合(以下「被覆率」ともいう。)が5〜11%である。被覆率が5%未満の場合には、粘着テープの感圧性粘着剤層表面に非粘着性マスキング部材を積層していたとしても、粘着テープの感圧性粘着剤層側の面が被着体に強く貼り付き、位置調整が困難となる。一方、被覆率が11%を超えると、被着体の位置調整は容易であるが、加圧接着後の粘着力が低下する。
上記観点から、感圧性粘着剤層表面の被覆率は、好ましくは6〜10%、より好ましくは7〜8%である。
なお「非粘着性マスキング部材により被覆されている部分の面積」とは、非粘着性マスキング部材を構成する材料により有効に被覆されている面積を意味する。例えば後述するように、非粘着性マスキング部材としてメッシュやネット等の開口部を有する部材を用いる場合は、感圧性粘着剤層表面に積層されている非粘着性マスキング部材の面積のうち、その開口部の面積は「非粘着性マスキング部材により被覆されている部分の面積」に含まれない。
【0016】
また本発明の粘着テープは、感圧性粘着剤層の厚みに対する、感圧性粘着剤層表面から非粘着性マスキング部材までの最低高さの割合(感圧性粘着剤層表面から非粘着性マスキング部材までの最低高さ/感圧性粘着剤層の厚み)が14〜50%である。当該割合が14%未満であると、粘着テープの感圧性粘着剤層表面に非粘着性マスキング部材を積層していたとしても、感圧性粘着剤層側の面が被着体に強く貼り付き、位置調整が困難となる。一方、当該割合が50%を超えると加圧接着後の粘着力が低下する。当該割合は、好ましくは14.6%以上であり、また、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
本明細書において「感圧性粘着剤層の厚み」とは、感圧性粘着剤層の非粘着性マスキング部材が積層されていない部分の厚みを意味し、図1においてはxで示される厚みである。また、「感圧性粘着剤層表面から非粘着性マスキング部材までの最低高さ」とは、図1において感圧性粘着剤層表面11aから突出した非粘着性マスキング部材12の最も低い部分の厚みを意味する。より具体的には、後述する非粘着性マスキング部材の項において説明する。
感圧性粘着剤層の厚みは、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0017】
(アクリル系感圧性粘着剤層)
本発明の粘着テープにおける感圧性粘着剤層は、アクリル系粘着剤組成物から形成された感圧性粘着剤層であり、少なくともアクリル系重合体を含有するものである。
感圧性粘着剤層は、良好な粘着力を得る観点から、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を含有することが好ましい。さらに難燃性の観点から、感圧性粘着剤層は(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)及び非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)を含有することがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)及び非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)については後述する。
【0018】
感圧性粘着剤層は23℃における引張貯蔵弾性率が5.0×10〜1.0×10Paである。23℃の引張貯蔵弾性率がこの範囲外となると、十分な粘着力を発現することが難しくなる。粘着性をより良好にする観点から、感圧性粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率は、好ましくは1×105〜6×107Pa、より好ましくは3×105〜5×107Pa、さらに好ましくは3.5×105〜8×105Paである。
感圧性粘着剤層の引張貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて、引張モードで、測定周波数10Hz、設定昇温速度:10℃/minの条件で測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0019】
また、感圧性粘着剤層の引張貯蔵弾性率は、温度を上昇させていくと低下していくものであるが、温度を上昇させたときに、該引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度が205℃以下であることが好ましい。感圧性粘着剤層の引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度が205℃以下となることで、難燃性が良好となるものである。その原理は定かではないが、以下のように推定される。
感圧性粘着剤層は、加熱されたときの流動性が増し、その状態からさらに加熱されると一部が滴下するような状態となる。しかし、その滴下する温度が低くなると、その滴下物が先に燃焼し、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)が配合されることも相俟って感圧性粘着剤層全体が燃焼されることが防止され、それにより、感圧性粘着剤層の難燃性が向上すると推定される。そして、感圧性粘着剤層は、引張貯蔵弾性率が1.0×104Pa以下では、軟化ないし流動化した状態となるが、この引張貯蔵弾性率が1.0×104Pa以下となる温度が低いと上記した滴下する温度も低くなり、感圧性粘着剤層の難燃性が向上すると推定される。
また、引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度は、難燃性をより高めるために、200℃以下が好ましい。一方で、引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度は、その下限値が特に限定されないが、実用的には、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましい。
引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度は、後述するように例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量を調整することで上記範囲内にすることが可能である。
【0020】
感圧性粘着剤層の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.25mm以上、よりさらに好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下、よりさらに好ましくは1.0mm以下である。感圧性粘着剤層の厚みが0.1mm以上であれば十分な粘着力を確保でき、2.0mm以下であれば、感圧性粘着剤層の位置調整機能が良好であり、被着面に対する追従性も良好である。
【0021】
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)>
感圧性粘着剤層は、良好な粘着力を得る観点から、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、例えば、下記重合性モノマー(a)を含むアクリル系粘着剤組成物を重合することにより得ることができ、下記重合性モノマー(a)の重合体である。
【0022】
〔重合性モノマー(a)〕
重合性モノマー(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、「アクリル酸アルキルエステル、又はメタクリル酸アルキルエステル」を意味する。他の類似の用語も同様である。
〔(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー〕
本発明における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、前記脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数が、好ましくは2〜14、より好ましくは4〜10である脂肪族アルコールに由来するアルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が前記範囲内であると、感圧性粘着剤層のガラス転移温度(Tg)が高くなり過ぎず、粘着力が良好になる。また、23℃における引張貯蔵弾性率、及び引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0023】
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
重合性モノマー(a)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは88質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、23℃における引張貯蔵弾性率、及び引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度を上記範囲内に調整しやすくなる。また、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させることも可能である。
【0025】
〔極性基含有モノマー〕
本発明においては、感圧性粘着剤層のTg、23℃における引張貯蔵弾性率、及び引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度等を調整する観点、及び感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、重合性モノマー(a)として極性基含有モノマーを用いてもよい。極性基含有モノマーは、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと併用することが好ましい。
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー;
(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマーが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。
これらの極性基含有モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
重合性モノマー(a)が極性基含有モノマーを含有する場合、重合性モノマー(a)中のその含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。極性基含有モノマーの含有量を上記範囲内に調整することで、23℃における引張貯蔵弾性率及び引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度を上記範囲内としやすくなる。また、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させやすくなる。
【0027】
〔その他のモノマー〕
重合性モノマー(a)としては、アクリル系粘着剤組成物の粘度を調整するなどの観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー及び極性基含有モノマー以外のその他のモノマーを用いてもよい。
その他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、及びp−メチルスチレン等のスチレン系モノマーが挙げられる。
【0028】
重合性モノマー(a)がその他のモノマーを含有する場合、その含有量は、アクリル系粘着剤組成物の粘度を調整する観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、よりさらに好ましくは2質量%以下である。
【0029】
〔質量平均分子量〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、その質量平均分子量が50万〜150万であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量をこのような範囲内とすることで、23℃における引張貯蔵弾性率、及び引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度を上記範囲内に調整しやすくなる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量は、上記観点からより好ましくは60万以上、さらに好ましくは70万以上、よりさらに好ましくは80万以上であり、より好ましくは140万以下、さらに好ましくは130万以下、よりさらに好ましくは110万以下、最も好ましくは100万以下である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値を指す。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量とは、後述する架橋剤によって架橋されている場合には、架橋されていない(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量を意味し、その測定法は例えば後述する実施例のとおりに行うとよい。
より詳細には、重合性モノマー(a)のみを感圧性粘着剤層を形成する際と同様の条件(同じ光重合開始剤の種類及び量、及び同じ硬化条件)で重合させて得たポリマーについて測定した質量平均分子量を意味する。したがって、アクリル系粘着剤組成物が架橋剤を含む場合でも、架橋剤を含有させずに重合性モノマー(a)を重合させたものについて質量平均分子量を測定したものである。
【0030】
〔架橋剤〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点、及び感圧性粘着剤層のゲル分率を調製する観点から、感圧性粘着剤層中で架橋剤により架橋されていることが好ましい。
架橋剤としては、ビニル基を2つ以上有するものが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。このような架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の主鎖中に組み込まれ、その主鎖同士を架橋してネットワークを形成する。
具体的な架橋剤としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び液状水素化1,2−ポリブタジエンジアクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、分子量が400以上の架橋剤が好ましく、具体的には、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び液状水素化1,2−ポリブタジエンジアクリレートなどが好ましく、液状水素化1,2−ポリブタジエンジアクリレートがより好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)が架橋剤により架橋されている場合、重合性モノマー(a)100質量部に対する架橋剤の量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。架橋剤の量をこれら範囲内に調整することで、感圧性粘着剤の粘着力を向上させ、かつ適切なゲル分率を有する感圧性粘着剤を得やすくなる。
【0032】
〔(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の製造方法〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の製造方法に特に制限はないが、例えば、重合性モノマー(a)、必要に応じて光重合開始剤及び架橋剤を含むアクリル系粘着剤組成物に対して光を照射して重合することにより製造することができる。
<光重合開始剤>
本発明において用いることができる光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシー2−プロピル)ケトン[商品名:ダロキュアー2959、メルク社製]等のケトン系;α−ヒドロキシ−α、α−ジメチル−アセトフェノン[商品名:ダロキュア1173、メルク社製]、メトキシアセトフェン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェン[商品名:イルガキュア651、BASF社製]、及び2−ヒドロキシー2−シクロヘキシルアセトフェノン[商品名:イルガキュア184、BASF製]等のアセトフェノン系;ベンジルジメチルケタール等のケタール系;その他、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0033】
重合性モノマー(a)100質量部に対する光重合開始剤の量は、後述する残存モノマーの量を低減する観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、特に好ましくは0.4質量部以上であり、そして、感圧性粘着剤層中に光重合開始剤が多く残留することを防ぐ観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0034】
<非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)>
感圧性粘着剤層は、難燃性を向上させることを目的として、さらに非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)を含有することが好ましい。
非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジ−2,6−キシレニルホスフェート及びこれらを各種置換基で置換した化合物等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジ−2,6−キシレニルホスフェートから選ばれる1種以上が好ましく、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェートから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0035】
感圧性粘着剤層における非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対し、好ましくは1.0〜60質量部である。当該含有量が1.0質量部以上であれば感圧性粘着剤層に十分な難燃性を付与することができ、60質量部以下であると、感圧性粘着剤層の粘着力低下を抑制できる。
感圧性粘着剤層に十分な難燃性を付与する観点から、上記含有量は、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、さらに好ましくは2.5質量部以上である。また、感圧性粘着剤層の粘着力が低下することを抑制する観点から、好ましくは55.0質量部以下、より好ましくは50.0質量部以下、さらに好ましくは45.0質量部以下、よりさらに好ましくは40.0質量部以下である。
なお、前述の重合性モノマー(a)は反応性が良好であることから、本発明においては、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部」と「重合性モノマー(a)100質量部」とを同量としてみなすことができる。したがって、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対する非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)の量」は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を製造する際の重合性モノマー(a)の仕込み量に基づいて算出することができる。
【0036】
<その他の成分>
本発明における感圧性粘着剤層、及び、これを形成するためのアクリル系粘着剤組成物は、例えば、下記の成分を含有してもよい。
〔微粒子〕
感圧性粘着剤層は、粘着力及び凝集力を向上させる観点から、さらに微粒子を含有することが好ましい。
微粒子の体積中位粒径(D50)は、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、よりさらに好ましくは20μm以上、よりさらに好ましくは25μm以上である。また、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下、さらに好ましくは120μm以下、よりさらに好ましくは110μm以下、よりさらに好ましくは100μm以下である。
なお、本明細書において「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0037】
前記微粒子としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、及びフライアッシュバルーン等の無機質中空粒子、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、及びフェノール樹脂等からなる有機質中空粒子、ガラスビーズ、シリカビーズ、及び合成雲母等の無機質微粒子、ポリアクリル酸エチル、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の有機質微粒子が挙げられる。
【0038】
感圧性粘着剤層が微粒子を含有する場合において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部(すなわち、アクリル系粘着剤組成物中の重合性モノマー(a)100質量部)に対する微粒子の含有量は、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上である。また、感圧性粘着剤層の凝集力の低下を抑制する観点から、当該含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0039】
〔粘着付与樹脂〕
感圧性粘着剤層は、粘着力を向上させる観点から、さらに粘着付与樹脂を含有してもよい。
粘着付与樹脂としては、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、石油樹脂、及び水添石油樹脂等の重合阻害性の低い粘着付与樹脂が好ましい。これらの中でも、粘着付与樹脂が二重結合を多く有していると重合反応を阻害することから、水添石油樹脂が好ましい。
粘着付与樹脂の軟化点は、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上である。
【0040】
感圧性粘着剤層が粘着付与樹脂を含有する場合において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部(すなわち、アクリル系粘着剤組成物中の重合性モノマー(a)100質量部)に対する粘着付与樹脂の含有量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上、よりさらに好ましくは9質量部以上である。また、当該含有量は好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、よりさらに好ましくは25質量部以下である。粘着付与樹脂の量が上記範囲内であると、感圧性粘着剤層の粘着力が向上すると共に、柔軟性も向上する。
【0041】
本発明における感圧性粘着剤層、及びこれを形成するためのアクリル系粘着剤組成物は、前述のその他の成分の他に、添加剤として、例えば、可塑剤、軟化剤、顔料、及び染料等を含有してもよい。
【0042】
<感圧性粘着剤層の形成方法>
感圧性粘着剤層の形成方法は特に制限はないが、重合性モノマー(a)、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)、及び必要に応じて光重合開始剤や架橋剤、粘着付与樹脂等を含むアクリル系粘着剤組成物に光照射することにより、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を製造しつつ、感圧性粘着剤層を形成することが好ましい。
具体的には、まず、1種以上の重合性モノマー(a)、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)、及び光重合開始剤や架橋剤、粘着付与樹脂等をガラス容器等の反応容器に投入し、アクリル系粘着剤組成物を得る。
次いで、アクリル系粘着剤組成物中の溶存酸素を除去するために、一般に窒素ガス等の不活性ガスを供給して酸素をパージする。そして、該粘着剤組成物を剥離紙等の剥離シート、又は、後述する基材に塗布した後、光を照射し重合することにより感圧性粘着剤層を形成することができる。
前記粘着剤組成物の塗布もしくは含浸から光を照射する工程までは、不活性ガス雰囲気下、又はフィルム等により酸素が遮断された状態で行うことが好ましい。
【0043】
アクリル系粘着剤組成物に光を照射する際に用いることができるランプとしては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。これらの中でも、ケミカルランプが好ましい。アクリル系粘着剤組成物に対して光を照射する際の光照射強度は、光重合開始剤によって異なるが、0.1〜100mW/cm程度が好ましい。
【0044】
(非粘着性マスキング部材)
非粘着性マスキング部材12を構成する材料は非粘着性であれば特に限定されず、例えば、綿などの天然繊維、オレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどから構成された合成繊維、同オレフィン系樹脂などの合成樹脂、金属などの任意の材料を用いることができる。かかる材料の非粘着性マスキング部材12から、綿糸や合成樹脂繊維を編み込んだもの、ポリエチレン、ポリプロピレンもしくはポリエチレンテレフタレートなどからなるメッシュやネット、ポリエステル繊維を用いて構成された不織布、真鍮やステンレスなどの金属からなる金属メッシュなどの多孔性構造体を形成することができる。
なお、非粘着性マスキング部材として各種材料からなるメッシュを用いる場合、加圧接着時に感圧性粘着剤層を被着体表面に十分に突出させて接着面積を確保する観点から、メッシュの目の粗いものが好ましい。
【0045】
図1に示すように、感圧性粘着テープ10において、非粘着性マスキング部材12は感圧性粘着剤層表面11aから突出している。また非粘着性マスキング部材12が前記被覆率及び最低高さを満たすように表面11aを部分的に被覆して感圧性粘着剤層11の粘着力を抑制する限り、適宜の形状を採ることができる。例えば、非粘着性マスキング部材12の形状は格子状であってもよく、円形やその他の形状の開口が分散形成されたネットや多孔性シートの形状であってもよい。
【0046】
例えば図3に示すように、非粘着性マスキング部材12は、例えば2つの方向に延びる合成樹脂製のフィラメントテープ12a,12bであってもよい。この場合、第1方向(図3において上下方向)に延びる複数のフィラメントテープ12aと、第1方向と略垂直な第2方向(図3において左右方向)に延びる複数のフィラメントテープ12bは、矩形の開口21を区画形成し、フィラメントテープ12a,12bは複数の開口21が分散形成された、多孔性構造体であるネット22を構成する。Pはフィラメントテープ12bが一つのみの箇所であり、フィラメントテープのうちの感圧性粘着剤層11からの最低高さとなる。つまり、この実施形態では、最低高さは感圧性粘着剤層表面11aからフィラメントテープ12bの上端までの長さである。Pはフィラメントテープ12bの上にフィラメントテープ12aが重なった箇所であり、フィラメントテープのうちの感圧性粘着剤層表面11aからの最高高さとなる。つまり、この実施形態では、最高高さは感圧性粘着剤層表面11aからフィラメントテープ12aの上端までの長さである。
【0047】
あるいは、例えば図4に示すように、非粘着性マスキング部材12は、3つの方向に延びる合成樹脂製のフィラメントテープ12a,12c,12dであってもよい。この場合、第1方向(図4で上下方向)に延びる複数のフィラメントテープ12aと、テープ12aに対し角度αをなして斜めに延びる複数のフィラメントテープ12cと、テープ12aに対しテープ12cとはテープ12aの長手方向軸とは反対側に角度β(本形態ではα=β)をなして斜めに延びる複数のフィラメントテープ12dとを考える。これらが、フィラメントテープ12c及びフィラメントテープ12dの間で矩形(α=βではひし形)の開口23a、フィラメントテープ12a,フィラメントテープ12c及びフィラメントテープ12dの間で三角形の開口23bを区画形成する。そして、フィラメントテープ12a,12c及び12dは複数の開口23a,23bが分散形成された、多孔性構造体であるネット24を構成する。α,βの角度は、0°よりも大きく90°未満であればよく、通常10〜80°、より好ましくは30〜60°である。
はフィラメントテープ12dが一つのみの箇所であり、フィラメントテープのうちの感圧性粘着剤層表面11aからの最低高さとなる。Pはフィラメントテープ12dの上にフィラメントテープ12cが重なった箇所であり、Pはフィラメントテープ12cの上にさらにフィラメントテープ12aが重なった箇所であり、フィラメントテープのうちの感圧性粘着剤層表面11aからの最高高さとなる。図3の実施形態と同様、フィラメントの高さは、感圧性粘着剤層表面11aからフィラメントテープの上端までの長さを測定したものである。
【0048】
非粘着性マスキング部材12が形成する開口、すなわち感圧性粘着剤層表面11aが被着体に露出される部分の形状は正方形や多角形に限らず、円形などの他の任意の形状とすることもできる。
【0049】
非粘着性マスキング部材12は、被着体の位置調整の際には感圧性粘着剤層表面11aより突出していることが求められるが、加圧接着時には、感圧性粘着剤層表面11aと同一面に沈みこみ、もはや位置調整機能を果たさないものである。
【0050】
本発明の粘着テープにおける、感圧性粘着剤層表面11aからの非粘着性マスキング部材12の最低高さ、すなわち、非粘着性マスキング部材12の高さが最も低い部分の、非粘着性マスキング部材12の下にある感圧性粘着剤層表面11aから非粘着性マスキング部材12の上端(図4でP3)までの高さは、特に限定されないが、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは30〜300μm、さらに好ましくは100〜300μm、よりさらに好ましくは250〜300μmである。この最低高さが300μm以下であると、感圧性粘着剤層表面11aへの被着体表面の接着が容易になる。
【0051】
(基材)
本発明の粘着テープは、感圧性粘着剤層の一方の表面に非粘着性マスキング部材を有し、他方の面に基材を有する構成であってもよい。
基材には特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート等を用いた樹脂クロス、連続気泡構造を有する発泡体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ウレタン等の樹脂材料を用いた透湿性フィルム、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、和紙、合成紙、これらのラミネート品等が挙げられる。中でも、リワーク時に基材の破れを生じにくくする観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)及びポリエチレンテレフタレートクロス(PETクロス)が好ましい。
【0052】
透湿性フィルムは、例えば、KTF(三菱樹脂(株)製)、エスポアール(三井化学(株)製)、ポーラム((株)トクヤマ製)、タピレンMPF(大化工業(株)製)、セルポア(積水フィルム(株)製)、マイクロポーラスフィルム(スリーエムジャパン(株)製)、PORO(フタムラ化学(株)製)、ハイポア(旭化成イーマテリアルズ(株)製)等の市販品として入手可能である。また、機械的にクレーズ処理したものは、例えば、モノトラン((株)ナック販売製)等の市販品として入手可能である。
また、基材は、上記各材料の一方の面を離型処理した剥離シートであってもよく、その場合、感圧性粘着剤層を離型処理面上に設けることが好ましい。
【0053】
基材の感圧性粘着剤層が設けられた面とは反対側の面には、離型層、帯電防止層等が設けられてもよい。また、基材と感圧性粘着剤層との密着性を向上させるために、基材に対して必要に応じてコロナ処理等の表面処理を施してもよい。
基材の厚みは、20μm以上が好ましく、より好ましくは30〜100μmである。基材の厚みを20μm以上とすることでリワーク時に破れ等が生じにくくなる。
【0054】
(再剥離性粘着層)
本発明の粘着テープは両面粘着テープであることが好ましく、図1に示すように、感圧性粘着剤層11の一方の表面に非粘着性マスキング部材12を有し、他方の面に基材13を有し、基材13の上にさらに再剥離性粘着層14を有する構成であることがより好ましい。例えば航空機のカーペットを航空機躯体に固定する際に上記構成の両面粘着テープを用いる場合、図1に示す両面粘着テープの感圧性粘着剤層11側の面をカーペットに接着させ、再剥離性粘着層14側の面を航空機躯体に接着させる。これにより、カーペットの固定作業時の位置調整機能及び固定後の粘着力を発現することができるとともに、カーペット交換の際には航空機躯体への糊残りが少なく、再剥離性が良好になる。
【0055】
上記両面粘着テープにおいて、再剥離性粘着層14側の面の粘着力は、感圧性粘着剤層11側の面の粘着力よりも低いことが好ましい。具体的には、再剥離性粘着層14側の面の粘着力をF1、感圧性粘着剤層11側の面の粘着力をF2とした場合、F2/F1が好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.8以上である。F2/F1の上限は通常50以下であり、好ましくは20以下である。なお「感圧性粘着剤層側の面の粘着力」とは、感圧性粘着剤層表面に非粘着性マスキング部材が積層された状態で測定される粘着力を意味する。
再剥離性粘着層を構成する粘着剤の種類は特に限定されず、例えば、ポリウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤を用いることができる。粘着力と再剥離性を両立する観点からは、アクリル系粘着剤を用いることが望ましい。
再剥離性粘着層の厚みは、航空機躯体等の被着体への粘着力と再剥離性を両立する観点から、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜100μmである。
【0056】
<感圧性粘着テープの製造方法>
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されない。図1に示す構成の両面粘着テープは、例えば以下の方法により製造できる。
まず、前記アクリル系粘着剤組成物を基材13上に塗布した後、前述の条件にて光を照射し重合することにより、基材13上に感圧性粘着剤層11を形成する。次いで、感圧性粘着剤層の表面11aに非粘着性マスキング部材12を、被覆率が所定の範囲となるように積層する。一方、基材13の感圧性粘着剤層11が形成されていない面に再剥離性粘着層14を積層して、両面粘着テープを得ることができる。感圧性粘着剤層11及び再剥離性粘着層14を保護するため、これらの上面に、さらに剥離シートを積層してもよい。
あるいは、離型処理が行われた剥離シートの離型処理面上に感圧性粘着剤層11を形成し、この上に非粘着性マスキング部材12を積層することもできる。次いで、感圧性粘着剤層11から剥離シートを剥離し、その剥離面に、基材13及び再剥離性粘着層14を順に積層して両面粘着テープを製造してもよい。
【0057】
<用途>
本発明の粘着テープは、各種の被着体に対して使用することができる。特に本発明の粘着テープは、航空機のカーペットを航空機躯体に固定する際に好適に用いられ、固定作業時にはカーペットの位置調整を容易に行うことができ、固定後はカーペットに対し良好な粘着力を発現する。また本発明の粘着テープが感圧性粘着剤層の一方の表面に所定の要件を満たすように非粘着性マスキング部材を備え、他方の面に再剥離性粘着層を有する両面粘着テープの構成であると、さらに、航空機のカーペット交換の際には航空機躯体への糊残りが少なく、再剥離性に優れるという効果を奏する点で好ましい。その他、本発明の粘着テープは自動車、鉄道車両等の躯体に対し内装材を固定する用途にも好適である。
【0058】
上記カーペットとしては、航空機内で使用される公知一般のカーペットが挙げられ、例えば、ナイロン繊維やオレフィン繊維を用いたカーペットが挙げられる。
上記航空機躯体の材質としては、アルミニウム合金やチタン合金等の金属合金;ガラス繊維、炭素繊維等の強化繊維と、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のマトリックス樹脂との複合材;等が挙げられる。本発明の粘着テープは、上記カーペットを航空機の床材に固定するために用いることがより好ましい。
【実施例】
【0059】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0060】
<評価>
〔質量平均分子量〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出した。
なお、質量平均分子量は、重合性モノマー(a)のみを各実施例、比較例と同じ条件(同じ光重合開始剤の種類及び量、及び同じ硬化条件)で硬化させて得た(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)に対して測定した質量平均分子量である。
〔引張貯蔵弾性率〕
23℃における感圧性粘着剤層の引張貯蔵弾性率は、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA−200/L2」を用いて以下の測定条件により測定した。また、引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度は、以下の設定昇温速度により温度を昇温させていき、引張貯蔵弾性率が1.0×104Paとなる温度を測定した。
(測定条件)
標線間長さ:3cm
サンプル幅:0.6cm
サンプル厚さ:0.2cm
変形モード:引張
静/動応力比:1.5
設定歪:0.10%
設定昇温速度:10℃/min
測定周波数:10Hz
【0061】
〔感圧性粘着剤層の厚み〕
感圧性粘着剤層の厚みは、ダイヤルゲージ(株式会社ミツトヨ製)により測定した。
【0062】
〔非粘着性マスキング部材により被覆されている部分の面積の割合(被覆率)〕
本実施例においては、100−(非粘着マスキング部材の開口率(%))の値を被覆率とした。
【0063】
〔位置調整機能〕
各例で得られた感圧性粘着テープの経糸を長手方向に取り、幅25mm×長さ300mmに切断した。
感圧性粘着テープの、非粘着性マスキング部材が積層されている感圧性粘着剤層面の被着体Aとしてナイロン繊維布帛(300mm×300mm)を準備した。また、感圧性粘着テープの、非粘着性マスキング部材が積層されていない側の面の被着体BとしてSUS No.304(400mm×400mm)を準備した。
位置調整機能の評価方法として、
[1]水平面に置いた被着体Bに300mm×300mm四方の下書きを描き、同300mm×300mm内に、幅25mmに切断した感圧性粘着テープ5本を均等な間隔にて配列し、感圧性粘着テープの非粘着性マスキング部材が積層されていない側の面を被着体Bに貼り合わせた。
[2]上記[1]にて貼り合わせた感圧性粘着テープの剥離シートを剥がし、非粘着性マスキング部材が積層されている感圧性粘着剤層面を露出させた。
[3]被着体Aを[2]で露出した感圧性粘着剤層面上に静かに置いた。
[4]評価の判別として、[3]の被着体Aの対角を両手で持ち、垂直方向に引き上げた場合に容易に剥がすことができればA、被着体への貼り付きはあるが、力を加えて剥がすことができればB、貼り付きが強く剥がすことができない場合はCとした。
【0064】
〔粘着力〕
各例で得られた感圧性粘着テープの、非粘着性マスキング部材が積層されている感圧性粘着剤層面に、前記被着体Aを圧着して本接着を行い、粘着状態を確認した。粘着力は以下の基準で評価した。
A:非常に強固に接着し、高い粘着力を有していた。
B:強固に接着し、十分な粘着力を有していた。
C:粘着力が不十分であった。
【0065】
〔難燃性〕
各例の感圧性粘着テープにおいて非粘着性マスキング部材を積層する前の積層体を5cm×10cmにカットし、剥離シートを剥がしたものを試験片とした。この試験片を金属枠に取り付け18リットル缶内に吊るし、パワートーチ8cmの炎を試験片の下端に12秒間接炎し、自己消火するものをA、パワートーチ8cmの炎では自己消火しないが、着火ライター4cmの炎を12秒接炎する場合に自己消炎するものをBとした。また、いずれの条件でも自己消炎しないものをCとする。なお、自己消炎とは、サンプルの末端まで燃焼する前に消火することを意味する。
【0066】
<実施例1>
以下の手順により、図1に示す構成の感圧性両面粘着テープを製造した。
表1に記載の配合にしたがって、重合性モノマー、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤、架橋剤、微粒子及び光重合開始剤を混合することによりアクリル系粘着剤組成物を調製した。このアクリル系粘着剤組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。
離型処理した50μmのPETフィルムの離型処理面上にスペーサーを設置し、前記粘着剤組成物を前記PETフィルム上に塗布し、このPETフィルムを折り曲げて離型処理面が粘着剤組成物に接するように被覆した。
この状態で被覆側のPETフィルムにおける紫外線照射強度が5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、10分間紫外線を照射することにより、感圧性粘着剤層を得た。感圧性粘着剤層の厚さは1mmであった。
感圧性粘着剤層の上に、非粘着性マスキング部材として、図4の3軸交差形状を有するポリエチレン製ネット(モノフィラメント(MF)直径280μm、経糸ピッチ15mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率92.5%)を積層した。さらにこの上に、感圧性粘着剤層の表面保護のための剥離シートを積層して、感圧性両面粘着テープを得た。
【0067】
<実施例2〜6、比較例1〜4>
感圧性粘着剤層が表1に記載の厚みとなるように変更し、かつ表1に記載の非粘着性マスキング部材を使用したこと以外は、実施例1と同様にして感圧性両面粘着テープを作製し、各種評価を行った。
【0068】
なお、各例で使用した材料は以下のとおりである。
<アクリル系粘着剤組成物>
重合性モノマー(a1):2−エチルヘキシルアクリレート、三井化学(株)製
重合性モノマー(a2):アクリル酸、三井化学(株)製
難燃剤(B):ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、大八化学工業(株)製「CR−741」
架橋剤:液状水素化1,2−ポリブタジエンジアクリレート、日本曹達(株)製「TEAI−1000」
微粒子:ガラスバルーン(D50:55μm)、3Mジャパン(株)製「グラスバブルズK−25」
光重合開始剤:2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、BASFジャパン(株)製「イルガキュア651」
【0069】
<非粘着性マスキング部材>
M1:図4の3軸交差形状を有するポリエチレン製ネット(モノフィラメント(MF)直径280μm、経糸ピッチ15mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率92.5%)
M2:ポリエチレン製ネット(モノフィラメント直径280μm、経糸ピッチ20mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率95%)
M3:ポリエチレン製ネット(モノフィラメント直径280μm、経糸ピッチ10mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率90%)
M4:ポリエチレン製ネット(モノフィラメント直径330μm、経糸ピッチ10mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率90%)
M5:ポリエチレン製ネット(経糸:フラットヤーン厚み44μm、幅0.8mm、経糸ピッチ10mm、斜め糸:フラットヤーン厚み44μm、幅0.8mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率89%)
M6:ポリエチレン製ネット(経糸:フラットヤーン厚み66μm、幅0.8mm、経糸ピッチ10mm、斜め糸:フラットヤーン厚み66μm、幅0.8mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率89%)
M7:ポリエチレン製ネット(経糸:モノフィラメント直径280μm、経糸ピッチ10mm、斜め糸:フラットヤーン厚み66μm、幅0.8mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率84%)
M8:ポリエチレン製ネット(モノフィラメント直径330μm、経糸ピッチ8mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率87%)
M9:ポリエチレン製ネット(経糸:フラットヤーン厚み33μm、幅0.8mm、経糸ピッチ10mm、斜め糸:フラットヤーン厚み33μm、幅0.8mm、斜め糸ピッチ25mm、開口率89%)
表中のMFはモノフィラメント、FYはフラットヤーンの略記号とし、数字は直径μmを意味する。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例の結果から明らかなように、本発明の感圧性粘着テープは、被着体の位置調整機能を備えており、かつ、被着体に対し良好な粘着力を発現した。それに対して、比較例の感圧性粘着テープでは、被着体の位置調整機能と粘着力とを両立できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、例えば航空機のカーペットを航空機躯体に固定する際に好適に用いられ、固定作業時にはカーペットの位置調整を容易に行うことができ、固定後はカーペットに対し良好な粘着力を発現する感圧性粘着テープを提供することができる。
本発明の感圧性粘着テープが感圧性粘着剤層の一方の表面に所定の要件を満たすように非粘着性マスキング部材を備え、他方の面に再剥離性粘着層を有する両面粘着テープであると、さらに、航空機のカーペット交換の際には航空機躯体への糊残りが少なく、再剥離性に優れるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0073】
10 感圧性粘着テープ
11 感圧性粘着剤層
11a 感圧性粘着剤層表面
12 非粘着性マスキング部材
12a〜12d フィラメントテープ
13 基材
14 再剥離性粘着層
20 被着体
21、23a、23b 開口
22、24 ネット
図1
図2
図3
図4