(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
炭素イオンや陽イオン等の粒子線ビームを、患者の病巣組織(がん)に照射して、治療を行う粒子線治療技術が広く知られている。粒子線ビームは、患者の体内を通過する際に運動エネルギーを失って速度を低下させるとともに、速度の二乗にほぼ反比例する抵抗を受けてある一定の速度まで低下すると急激に停止する。そして、粒子線ビームの停止点近傍では、ブラッグピークと呼ばれる高エネルギーが放出される。
【0003】
粒子線治療技術は、このブラッグピークを患者の病巣に合わせることにより、正常な組織の障害を少なくしつつ治療を行うものである。この粒子線治療技術によれば、正常組織にダメージを与えず、病巣組織のみをピンポイントで死滅させることができるため、手術や投薬治療等に比べ、患者への負担が少なく、治療後の社会復帰の早期化も期待できる。
【0004】
病巣細胞に確実に死滅させ正常細胞へのダメージを回避するために、病巣に対し、別々の入射方向から複数回に分けて、粒子線ビームを照射する場合がある。病巣に対し粒子線ビームを入射させる照射ポートの設置仕様により、粒子線治療装置は、回転ガントリ式と固定照射式とに大別される。
【0005】
回転ガントリ式は、回転ガントリの回転軸中心に向かって粒子線ビームが照射できるように、照射ポートとビーム輸送経路が回転ガントリに設置される。そして、この回転ガントリの回転軸中心上に設定した粒子線ビームの照準(アイソセンタ)に病巣が位置決めされるように、患者を横臥させたベッドを移動させ、位置を確認する。そして、この患者の体位やベッドの位置を変化させずに回転ガントリを回転させて粒子線ビームの入射方向を変化させる。
【0006】
固定照射式は、粒子線ビームが建屋に固定されたビーム輸送経路を通過し、治療室に設置された照射ポートを通して照射される。回転ガントリ式と同様に、粒子線ビームの照準(アイソセンタ)に病巣が位置決めされるように、患者を横臥させたベッドを移動させ、位置を確認するが、ビームの入射方向を変化させるために、この患者の体位やベッドの位置を変化させる場合がある。
【0007】
粒子線治療施設は、粒子線ビームを生成する加速器を含めた大規模なものである。このため粒子線治療施設は、治療コストの削減と治療スループットの向上とを目的として、粒子線ビームを生成する加速器一台に対し複数の治療室で構成されることが多い。これら複数の治療室の各々には、回転ガントリ式又は固定照射式といった仕様の異なる照射ポートを設けることができ、目的に合わせて最適な治療室を選択する。一般に、固定照射式の方が初期投資コストを抑えることが可能となる。
【0008】
そして、固定照射式の粒子線治療装置には、水平方向、垂直方向及び斜め45°方向のうち少なくとも一つの方向に粒子線ビームが固定照射されるように、単数又は複数の照射ポートが治療室に設置されることが多い。さらに粒子線治療装置には、病巣が粒子線ビームの経路上に正確に位置決めされていることを確認するため、撮影方向が互いに直交する二組のX線撮影機器が設けられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る粒子線治療装置10が設置された治療室11を表した図である。このように粒子線治療装置10は、治療室11の空間を移動して患者12を位置決めするベッド15と、固定されたビーム輸送経路36(36a,36b)を通して輸送された粒子線ビームを治療室11において出力する照射ポート16(16a,16b)と、水平線に沿ってベッド15を挟むように対向する第1X線源25及び第1X線検出器26からなる水平方向撮影部21と、垂直線に沿ってベッド15を挟むように対向する第2X線源27及び第2X線検出器28からなる垂直方向撮影部22と、治療室11の床側17に設けられ水平方向撮影部21の不使用時に第1X線検出器26を床下に収容させる収容室18と、水平方向撮影部21の不使用時に第1X線検出器26とともに収容室18に収容され水平方向撮影部21の使用時に第1X線検出器26を床上に移動させベッド15と照射ポート16の側との間で支持する支持部材23と、を備えている。
【0017】
図2は、各実施形態に係る粒子線治療装置10が設置された施設30の概略図である。なお図面において、円形加速器32を含む水平面(X−Y)と捩れの位置関係にある治療室11の縦断面を含む垂直面(X−Z)とを同一平面で表している。また施設30には、複数あるもののうち、固定照射式の治療室11が一つのみ記載され、他の治療室の記載は省略されている。
【0018】
粒子線ビームは、図示略のイオン源で発生したイオン(重粒子あるいは陽子イオン)を直線加速器31で加速し、さらに円形加速器32に入射して設定エネルギーまでに高めることにより生成される。
円形加速器32は、シンクロトロン等であって、イオン発生源(図示略)で発生させたC
6+等の荷電粒子を光速の70〜80%程度まで加速して生成した粒子線ビームを、出射デフレクタ33からビーム輸送経路35(主ライン)に出射させる。
【0019】
このビーム輸送経路35(主ライン)から分岐する複数のビーム輸送経路36(分岐ライン;図示は一本のみ)により粒子線ビームは、治療室11に輸送される。さらに図示のビーム輸送経路36はさらに二つに分岐し、一方のビーム輸送経路36aは照射方向が水平方向に固定された粒子線ビームを出力する照射ポート16a(
図1)に接続される。そして、他方のビーム輸送経路36bは照射方向が45°方向に固定された粒子線ビームを出力する照射ポート16b(
図1)に接続される。
【0020】
これら粒子線ビームを輸送するビーム輸送経路35及びビーム輸送経路36(36a,36b)には、ビームの収束・発散を制御する四極電磁石37、ビーム軌道を曲げる偏向電磁石38、及びビーム軌道のズレを補正するステアリング電磁石等が順次配列され、ビームは真空ダクト内を輸送される。
【0021】
図1に戻って説明を続ける。
ビーム輸送経路36(36a,36b)は、治療室11にその外側から接続し、その内部空間側には照射ポート16(16a,16b)が形成されている。なお図示において、この照射ポート16(16a,16b)は、複数のビーム輸送経路36(36a,36b)の各々に対応して複数が設けられている。なお照射ポート16は、図示される形態に限定されることはなく、一つのものが、治療室11の壁面を移動して、複数のビーム輸送経路36(36a,36b)から粒子線ビームを出力するように構成される場合もある。
【0022】
また、図示される照射ポート16(16a,16b)は、粒子線ビームの照射方向が水平線に対して0°と45°に固定されたものを例示しているが、これに限定されることはなく0°から90°の範囲の任意角度で固定されたものを採用することができる。
また、図示されるビーム輸送経路36(36a,36b)は、二系統であるが、一系統の場合や三系統以上の場合もある。
【0023】
ここで、照射ポート16からの照射方法として、拡大ビーム法(ワブラー照射法)と3次元スキャニング法とがある。
拡大ビーム法は、粒子線ビームの線径を病巣サイズ以上に拡大し、病巣形状に合致するように照射領域をコリメータで制限する方法である。
3次元スキャニング法は、病巣領域を塗り潰すように、細く絞ったビームを、スキャニング電磁石により高速スキャンし入射させる方法である。
【0024】
拡大ビーム法が採用される場合、照射ポート16の内部及びその近傍のビーム輸送経路36(36a,36b)には、ビームの線径を拡大するワブラー電磁石(図示略)、ビーム断面の形状を設定するコリメータ、及び侵入深さ設定するレンジシフタ(図示略)等が設けられる。なお拡大ビーム法は、厳密には3次元的に病巣形状に合致させることができないため、病巣周りの正常細胞への影響を小さくすることの限界が指摘されている。
【0025】
3次元スキャニング法が採用される場合、照射ポート16の内部及びその近傍のビーム輸送経路36(36a,36b)には、粒子線ビームを進行方向に対して互いに直交する二方向に偏向走査する二組の走査電磁石(図示略)、及び侵入深さを設定するレンジシフタ(図示略)等、が配置される。
【0026】
3次元スキャニング法では、拡大ビーム法で必須のコリメータが不要となるために、照射ポート16を小型化することができる。また、必要な機器が少ないために患者と真空ダクト終端部との距離を近づけることができ、これにより空気中における粒子線ビームの輸送距離を短くすることができ散乱を抑制することができる。
ここでは、3次元スキャニング法を採用するものとして説明を進める。
【0027】
X線撮影装置は、水平方向撮影部21と垂直方向撮影部22の2セットで構成されている。水平方向撮影部21のX線検出器26(第1X線検出器26)は、その使用時において、照射ポート16aとベッド15との間に位置するように配置される。この第1X線検出器26は、治療室11の床側17から、支持部材23を介して支持されている。そして、後述するように、水平方向撮影部21の不使用時に、第1X線検出器26は、この床側17に設けられた収容室18に支持部材23とともに収容される。
【0028】
そして、水平方向撮影部21のX線源25(第1X線源25)は、水平線に沿ってベッド15を挟むよう第1X線検出器26に対向する位置に配置される。この第1X線源25は、治療室11の天井面17から、懸架装置を介して支持されている。水平方向撮影部21の不使用時には、第1X線源25は、懸架装置によって天井面16に近づくように鉛直上方へ駆動される。
【0029】
このように水平方向撮影部21の配置構成をとることは、治療室11の内部空間の利用効率の向上に寄与する。水平方向撮影部21の不使用時に、水平方向撮影部21によってアイソセンタやベッド15近傍へのアクセスを阻害することがない。さらに、照射ポート16aとベッド15との間に、第1X線源25より厚みの小さい第1X線検出器26を配置し、対向する側に第1X線源25を配置することで、患者12と照射ポート16aとの距離を短くすることができ、空気中における粒子線ビームの輸送距離を短くしてその散乱の抑制を図る3次元スキャニング法の利点が最大限に引き出される。
【0030】
なお、垂直方向撮影部22のX線源27(第2X線源27)は、治療室11の床側17に設置されている。そして、垂直方向撮影部22のX線検出器28(第2X線検出器28)は、垂直線に沿ってベッド15を挟むよう第2X線源27に対向する位置に配置される。この第2X線検出器28は、治療室11の天井面19に対し、支持部材29を介して固定されている。
【0031】
X線撮影装置が、水平方向撮影部21と垂直方向撮影部22から構成されることにより、一般に、治療室11の天井面19に体正面を向けてベッド15に横臥する患者12の二方向の透視画像をサジタル像及びコロナル像として得られることとなり、治療室11の座標空間におけるベッド15の位置決めの妥当性判断が人為的にも容易になる。
【0032】
なお、第1X線検出器26及び第2X線検出器28は、例えばフラット・パネル・ディテクタ(FPD;Flat Panel Detector)やイメージインテンシファイアである。また第1X線検出器26及び第2X線検出器28は、これらに限定されることはなく、X線源25,27を出発して患者12を透過したX線のエネルギーを検出してこれを画素の輝度情報に変換し、患者12の透視画像を形成するものであれば適宜採用することができる。
【0033】
粒子線治療は、粒子線ビームを患者の病巣に照射して破壊する治療技術であるため、病巣の位置に粒子線ビームを正確に照射しないと、正常組織まで破壊してしまう虞がある。
そこで粒子線治療では、粒子線ビームを患者12に照射するのに先立って、この治療室11とは別の場所でCT撮影を行って患者体内のボクセルデータを取得し、病巣位置を3次元的に把握する。そしてこの患者体内のボクセルデータに基づき、正常組織への照射が少なくなるよう、粒子線ビームの照射方向や照射強度を決定する治療計画が実施される。
【0034】
この治療計画で患者12は、治療室11のベッド15に固定され粒子線ビームの照射を受ける姿勢と同じ姿勢をとり、X線CT(Computed Tomography)等により、病巣を含む体内の立体像(ボクセルデータ)を撮像する。
そして、このボクセルデータで特定した病巣の領域に基づいて、粒子線ビームの照射位置、照射角度、照射範囲、放射線量、回数などの条件が決定される。
【0035】
さらに、X線源25,27の位置に対応する仮想視点から、X線検出器26,28の位置及び姿勢に対応する仮想平面上に、このボクセルデータを射影した再構成画像(DRR:Digitally Reconstructed Radiograph)を生成する。
なおこの再構成画像(DRR)を生成するのに必要な仮想視点の位置と仮想平面の位置及び姿勢は、それぞれX線源25,27及びX線検出器26,28の設計情報に基づいている。ここで設計情報とは、水平方向撮影部21及び垂直方向撮影部22を構成するX線源25,27及びX線検出器26,28の治療室11の空間座標系における機械的な位置や角度等を示す設計情報である。
【0036】
そして、ボクセルデータ上に設定された病巣の位置が、治療室11の空間座標系に設定された粒子線ビームの照準に一致するように、患者12を横臥させるベッド15の治療室11の空間座標系における位置情報が決定される。
【0037】
後日、治療室11に入室させた患者12をベッド15に固定し、治療計画で決定した位置情報に従ってベッド15を治療室11の空間座標に移動させ、粒子線ビームの照準に患者の病巣を合わせる。そして、水平方向撮影部21及び垂直方向撮影部22で患者12を撮影しX線透視像を得る。
【0038】
この治療室11の空間座標系で患者12を撮影した水平方向及び垂直方向のX線透視像と治療計画の段階でボクセルデータから仮想的に再構成したDRR画像との一致がとれれば、患者12の病巣の位置が、粒子線ビームの照準に一致していることの確認がとれたことになる。この確認は、自動化の方法などが多数提案されているものの、最終的には人の目視により照合および確認がなされる。なおX線透視像とDRR画像との一致がとれない場合は、ベッド15の移動調整が行われる。
【0039】
また粒子線治療において、患者12に対する粒子線ビームの照射は、照射ポート16(16a,16b)を変更したりベッド15上の姿勢を変えたりして、数回から数十回を複数の日にかけて実施する場合がある。このために、水平方向撮影部21及び垂直方向撮影部22により患者12を撮影し、その病巣の位置とビーム照準との一致確認をする作業は、粒子線ビームを患者に照射する都度実施することになる。
【0040】
図3(A)は第1実施形態に係る粒子線治療装置に適用される水平方向撮影部のX線検出器の斜視図である。
図3(B)はX線検出器が収容室に収容された状態を示す縦断面図である。
図3(C)はX線検出器が使用時の状態を示す縦断面図である。
【0041】
第1実施形態に係る粒子線治療装置において、床側17に設けられた収容室18aには、X線検出器26を支持するとともに上下方向に直線変位させる第1支持部材23aが設けられている。第1支持部材23aは例えば油圧シリンダで構成され、油圧供給によりロッドが伸び、ストッパで停止するまでおよそ1.5mの所定のストローク動作を行う。そして、油圧を開放すると内臓スプリングによりロッドが戻る。
【0042】
X線検出器26の上端に設けられたカバー部材24aは、このX線検出器26が収容室18aに収容された状態において、この収容室の開口20aを床面17に対してフラットに塞ぐ。カバー部材24aの少なくとも上面は、床面17と同一の素材とする。さらに、収容室18aには、X線検出器や支持部材を点検、修理するためのメンテナンス空間を備える。メンテナンス空間には、開口20aとは別の入室経路を設け、保守部品並びに治工具の保管棚14を設ける。
【0043】
図3(B)に示すように、X線透視像を撮影するとき以外は、X線検出器26は、収容室18aに収納されている。そして
図3(A)(C)に示すように、X線透視像を撮影するときは、第1支持部材23aを上昇させる。第1支持部材23aの動作は、X線源の撮影準備信号または撮影許可信号を受けて上昇する動作信号を、X線源の撮影中断信号または撮影完了信号を受けて収納する動作信号を、それぞれ発信する制御装置により行う。
【0044】
これにより、医療スタッフは、患者12を位置決め時にベッド15の近傍にアクセスすることが容易となり、つまずきなどのリスクも低減する。さらに、カバー上面と床材の素材が同一のため、一体感が生まれ圧迫感や違和感を軽減できる。また、X線検出器26の収容室18は、治療室11の床側17に構成されるので、このX線検出器26を退避させるためのスペースを余分に設ける必要がない。よって、最小限の施設面積で構成できる。さらに第1実施形態では、収容室の開口20aを小さくすることが可能である。
【0045】
(第2実施形態)
次に
図4を参照して本発明における第2実施形態について説明する。第2実施形態において、水平方向撮影部のX線検出器を除いた全体構成は、第1実施形態と同じであるため、重複する説明を省略する。
図4(A)は第2実施形態に係る粒子線治療装置に適用される水平方向撮影部のX線検出器の斜視図である。
図4(B)はX線検出器が収容室に収容された状態を示す縦断面図である。
図4(C)はX線検出器が使用時の状態を示す縦断面図である。
【0046】
第2実施形態に係る粒子線治療装置において、床側17に設けられた収容室18bには、X線検出器26を支持するとともにその検出面に沿う方向に回転変位させる第2支持部材23bが設けられ、基端には回転部材13が接続されている。例えば、第2支持部材23bは金属製パイプ、回転部材13は金属製シャフト、減速機、電動モータ、エンコーダから構成され、電動モータをエンコーダに基づき制御し所定の位置まで回転動作する。
【0047】
そして、収容室の開口20bに設けられたカバー部材24bは、このX線検出器26が収容室18bに収容された状態において、この収容室の開口20bを床面17に対してフラットに塞ぐ。カバー部材24bは、第2支持部材23bが回転変位するのに連動して干渉しないよう開口動作する。
【0048】
図4(B)に示すように、X線透視像を撮影するとき以外は、X線検出器26は、収容室18bに収納されている。そして
図4(A)(C)に示すように、X線透視像を撮影するときは、第2支持部材23bの基端が接続する回転部材13が回転運動することで、X線検出器26が撮影位置に設定される。第2実施形態では、収容室18bの鉛直方向の深さを小さくすることが可能である。
【0049】
(第3実施形態)
次に
図5を参照して本発明における第3実施形態について説明する。第3実施形態において、水平方向撮影部のX線検出器を除いた全体構成は、第1実施形態と同じであるため、重複する説明を省略する。
図5(A)は第3実施形態に係る粒子線治療装置に適用される水平方向撮影部のX線検出器の斜視図である。
図5(B)はX線検出器が収容室に収容された状態を示す縦断面図である。
図5(C)X線検出器が使用時の状態を示す縦断面図である。
【0050】
第3実施形態に係る粒子線治療装置において、床側17に設けられた収容室18cには、X線検出器26を支持するとともにその検出面に垂直な方向に回転変位させる第3支持部材23cが設けられ、基端には回転部材13が接続されている。例えば、第3支持部材23cはFRP、回転部材13はシャフト及びバネから構成される。収容室18cに設けたラッチ(図示せず)を床側17に設けたペダル(図示せず)を踏んで外すとバネ力で所定の位置まで回転動作し、設けられたストッパに当たってその位置で停止する。収納時はスタッフが押し戻し、再びラッチをかける。
【0051】
第3実施形態に係る粒子線治療装置において、床側17に設けられた収容室18cに第1X線検出器26収容された状態において、この収容室の開口20cを床側17の表面に対してフラットに塞ぐカバー部材24cが設けられている。
【0052】
図5(B)に示すように、X線透視像を撮影するとき以外は、X線検出器26は、収容室18cに収納されている。そして
図5(A)(C)に示すように、X線透視像を撮影するときは、第3支持部材23cの基端が接続する部材13が回転運動することで、X線検出器26が撮影位置に設定される。第3実施形態では、収容室18cの鉛直方向の深さをさらに小さくすることが可能である。さらに、ストッパの当たり面広さを最も容易に確保できるので、X線検出器26の再現精度の高い位置決めを保証することができる。
【0053】
(第4実施形態)
次に
図6及び
図7を参照して本発明における第4実施形態について説明する。
図6は本発明の第4実施形態に係る粒子線治療装置を表した図である。なお、
図6において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第4実施形態に係る粒子線治療装置には、治療室11の床側17以外に設けられ水平方向撮影部21の不使用時に第1X線検出器26を水平に変位させたのち上方に変位させ水平方向撮影部21の使用時に第1X線検出器26をベッド15と照射ポート16の側との間に位置させる第4支持部材23d(
図7)が備えられている。
【0054】
図7は第4実施形態に係る粒子線治療装置に適用される水平方向撮影部のX線検出器の使用時と収容時との位置を示す図である。
X線撮影を行う位置にある第1X線検出器26(I)は、照射ポート16aに対向する位置に配置される。そして、X線撮影を行った後は、アクセスする医療スタッフの処理を妨げないように、照射ポート16bを避けるように、水平移動した第1X線検出器26(II)は、さらに上方に移動して第1X線検出器26(III)の退避が完了する。
【0055】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の粒子線治療装置によれば、最小限の設置面積で、X線撮影を行わないときにX線検出器を収容室に退避させることにより、治療室の有効スペースが無駄に占有されることを防止し、医療スタッフの作業性を向上させることが可能となる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。