特許第6878429号(P6878429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878429
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/16 20060101AFI20210517BHJP
   A61L 29/12 20060101ALI20210517BHJP
   A61F 6/14 20060101ALI20210517BHJP
   A61M 31/00 20060101ALI20210517BHJP
   A61L 29/04 20060101ALI20210517BHJP
   A61L 29/06 20060101ALI20210517BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A61L29/16
   A61L29/12 100
   A61F6/14
   A61M31/00
   A61L29/04 100
   A61L29/04 110
   A61L29/06
   A61L29/14 300
【請求項の数】21
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-526995(P2018-526995)
(86)(22)【出願日】2016年8月11日
(65)【公表番号】特表2018-529486(P2018-529486A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】DK2016050270
(87)【国際公開番号】WO2017025104
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2019年8月9日
(31)【優先権主張番号】PA201570520
(32)【優先日】2015年8月11日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】518048477
【氏名又は名称】ペーテーテー ホールディング アーペーエス
【氏名又は名称原語表記】PTT HOLDING APS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】トムセン、ピーター テイラード
(72)【発明者】
【氏名】アルム、マーティン
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101733051(CN,A)
【文献】 国際公開第2013/075724(WO,A1)
【文献】 特表2004−528126(JP,A)
【文献】 特表2007−512931(JP,A)
【文献】 特表2005−505321(JP,A)
【文献】 特表2013−530020(JP,A)
【文献】 Advanced Powder Technology,2014年,25,604-608
【文献】 Int. J. Drug Dev. & Res.,2012年,4 (3),41-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 29/00
A61F 6/00
A61M 31/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数の化学化合物を含む化学物質を送達するのに適切な送達デバイスにおいて、前記送達デバイスは、閉じた空洞を備え、前記空洞は、最内部壁の表面によって画定されており、前記内部壁の表面の少なくとも一区分は、送達膜の内部表面を構成し、前記送達膜は外部表面を有し、ホストポリマーとゲストポリマーとを含有する相互侵入型ポリマーネットワーク基板を含んでなり、前記ゲストポリマーは、前記ホストポリマーに相互侵入して、前記ホストポリマー内に実質的に連続した経路を形成し、前記連続した経路は前記送達膜の内部表面から前記送達膜の外部表面まで前記送達膜を貫通して伸び、前記ホストポリマーが、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、ポリウレタン(PU)、ゴム、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、及びシリコーンからなる群から選択された、架橋されたポリマー、又は任意のそれらの組合せである、送達デバイス。
【請求項2】
前記ゲストポリマーが、ヒドロゲル、エアロゲル、キセロゲル又はそれらの任意の組合せから選択されるゲルを含んでなる、請求項に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記ゲストポリマーがポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)からなる、請求項に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記送達膜が前記ホストポリマーの連続したマトリックス及び前記ゲストポリマーの多数の相互に接続した通路を備え、前記ゲストポリマーの相互に接続した通路が膜の全厚さを通して伸びている、請求項1〜のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記送達膜が、前記ホストポリマーの連続したマトリックス及び前記ゲストポリマーの多数の相互に接続した通路を備え、前記送達膜が外部表面を有し、前記ゲストポリマーの多数の通路が、前記内部表面及び前記外部表面のうちの少なくとも一方と一致する、請求項1〜のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記送達膜が、水溶性粒子の形態の1種又は複数の化合物を含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記空洞が、流体、粒子、及び分散されたもしくは液体中に分散された粒子のうちの少なくとも1つの形態にある1種又は複数の化合物で満たされるように及び/又は再び満たされるように適合される、請求項1〜のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項8】
前記空洞が幹細胞又は微生物などの細胞を含む粒子を含んでなり、前記細胞は、前記膜の前記空洞中にカプセル化されており、少なくとも1種の副生物を産生することができ、その副生物は、前記膜を通って、前記ゲストポリマーの経路を経由して移動することができる、請求項1〜のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項9】
前記化学物質が、リポソーム中に捕捉された薬剤を含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項10】
前記化学物質が、リポソーム中に捕捉された薬剤を、金属粒子と一緒に含んでなる、請求項に記載の送達デバイス。
【請求項11】
前記送達デバイスが、その内部表面及び外部表面のうちの少なくとも1つの少なくとも一部にコーティングを備えて、前記コーティングは前記ゲストポリマーと同一の材料からなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項12】
前記送達デバイスが、前記空洞を形成する少なくとも1つのバルーンを備えるバルーンカテーテルである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項13】
前記送達デバイスが、泌尿器カテーテルであり、前記送達膜は前記バルーン又はその一区分であり、前記バルーンは、前記化学化合物を含む膨張液体を使用して膨張されるように適合されている、請求項12に記載の送達デバイス。
【請求項14】
前記カテーテルが、少なくとも1種のバイオマーカーを検出するために適合されている診断プローブを備える、請求項12〜13のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項15】
前記診断プローブが、前記少なくとも1種のバイオマーカーの変化に応じて変化するように構成されており、前記プローブの変化は、光学的に読むことができる、請求項14に記載の送達デバイス。
【請求項16】
前記カテーテルが、前記プローブを読み、読まれたシグナルを、視覚的又は聴覚的に表示するための表示要素に伝送するための読み出し構造を備え、前記読み出し構造は光学的又は電気化学的リーダーを備える、請求項14〜15のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項17】
前記送達デバイスが、リング形の送達デバイスであり、前記空洞が、前記リング形の送達デバイス内のリング形又は半リング形の空洞である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項18】
前記送達デバイスが、膣リングである、請求項17に記載の送達デバイス。
【請求項19】
前記送達デバイスが少なくとも約0.01cmの体積の体積を有するカプセルである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項20】
前記カプセルが球形、縦長、卵形、楕円形又は平坦の形状をなす、請求項19に記載の送達デバイス。
【請求項21】
1種又は複数の化学化合物を含む化学物質を送達するのに適切な送達デバイスにおいて、前記送達デバイスは、前記化学物質を含む閉じた空洞を備え、前記空洞は、最内部壁の表面によって画定され、前記内部壁の表面の少なくとも一区分は、送達膜の内部表面を構成し、前記送達膜は外部表面を有し、ホストポリマーとゲストポリマーとを含む相互侵入型ポリマーネットワーク基板を含み、前記ゲストポリマーは、前記ホストポリマーに相互侵入して、前記ホストポリマー内に連続した経路を形成し、前記化学物質が前記空洞から前記送達膜を通って送達されるために、前記連続した経路は前記送達膜の内部表面から前記送達膜の外部表面まで前記送達膜を貫通して伸びている、送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学物質を送達するのに適切な送達デバイス、例えば、カテーテル、マイクロカプセル、埋め込み可能なカプセルもしくはPリングなどの医用デバイス、又は建造産業で使用するための、例えば、船舶塗料のための防汚剤を含むマイクロカプセルの形態にある送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
化学化合物又は組成物などの化学物質を送達するための多くの方法が、当技術分野において公知である。近年、送達デバイスを、放出するための化学化合物がマトリックスに包埋されているポリマーマトリックスの形態で、特にヒドロゲルの形態で開発することに対して多大な努力がなされてきた。
【0003】
非特許文献1による研究は、5−フルオロウラシルがその重合中にゲル中に捕捉されたヒドロゲルに基づくそのような送達デバイスを記載している。
非特許文献2では、サリチル酸をPHEMAゲル中に装荷する間におけるpH値の影響が試験された。装荷は、サリチル酸を含む液体中に種々のpH値で浸漬することにより実施された。
【0004】
非特許文献3は、異なったタイプのコンタクトレンズにおける異なった化学化合物の取り込み及び放出の研究を開示している。装荷は、化学化合物を含有する液体中に浸すことにより実施された。取り込み及び放出は両方とも比較的急速であることが見出された。
【0005】
非特許文献4は、ヒドロゲル中のヒドロコルチゾン及びアセタゾラミドの装荷/放出特性を記載している。装荷は、薬剤を含有する液体中に浸漬することにより実施された。ゆっくりした薬剤放出が得られることが可能であることが見出された。
【0006】
特許文献1は、ポリマーのマトリックス及びマトリックス内に分布した薬剤を含む薬剤送達デバイスを開示している。デバイスは、薬剤に対する溶媒特に有機溶媒を本質的に含まない。マトリックスは、多数の異なったポリマー材料の相互侵入型ポリマーネットワーク(IPN)であってもよい。
【0007】
薬剤送達デバイスは、ガス、超臨界流体、高圧液体、又は高密度のガス様流体の形態にある薬剤担体を使用して、マトリックスに薬剤を装荷することにより製造される。好適な薬剤担体は、液体及び/又は超臨界状態にあるCOを含む。特定の方法は記載されていない。
【0008】
特許文献2は、二重層のバルーン構造のカテーテルを拡張させる薬剤送達バルーンを記載している。カテーテルを拡張させる薬剤送達バルーンは、加圧する孔のない内部バルーン本体及び薬剤透過性の微小孔のある透過性膜の外部バルーン本体を含む。同様なバルーンカテーテルは、特許文献3にも記載されており、その場合、膨張するバルーンは、送達ポートがあるか又は本質的に透過性の織物の送達バルーンにより取り巻かれており、その結果膨張するバルーンと送達バルーンの間の隙間中に導入された薬剤が、織物又は送達ポートにより提供された物理的孔を経由して直接送達される。
【0009】
特許文献4は、PDMS、TEOS、オクタン酸第一スズ及びトルエンの混合物をPVA溶液中に分散させて硬化し、第1のPDMSネットワークの微小球を形成する方法によって、PDMS/PHEMAのIPNの中空マイクロカプセルを調製する方法を記載している。その後、第1のPDMSネットワーク球は、トルエン、架橋剤及びHEMAの混合物中に数時間浸されて架橋される。この球が、薬剤送達のために使用され得ると考えられる。
【0010】
特許文献5は、治療的に有効な物質の膣腔への制御放出のための浸透活性な膣内送達システムを記載している。浸透活性な膣送達システムは、1種又は複数の治療的に有効な物質の組成物を含む少なくとも1つの区画と、水及び水性生物学的流体と相互作用することが可能な浸透圧組成物を含む少なくとも1つの区画とを含む本体を有し、それにより、外側の流体に対して濃度勾配をもたらすか又は膨潤もしくは拡大して浸透圧をもたらして、1種又は複数の治療的に有効な物質の組成物を含む区画から本体の外部表面へと伸びる連絡路を経由して有効な物質を放出する圧力を提供する。
【0011】
特許文献6は、薄いフィルムの複合膜中に、親水性支持層及びポリアミドの拒絶層を有する前方への浸透膜を記載している。好適な支持層材料は、アラミドポリマー及びPVDFを含む。織られた又は不織のメッシュが、支持層中に組み込まれて膜の取り扱い特性を改善することができる。平坦なシート及び中空繊維の構成が可能である。防汚技法が提供されている。ポリアミド層は、親水性支持層上に界面重合により形成され得る。用途としては、前方浸透及び圧力による浸透の阻止、例えば、工業製品及び/又は廃棄物濃縮、水和バッグ、エネルギー/圧力発生、及び化学物質の送達の制御(例えば、薬学的用途のための)などを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際出願公開第2005/055972号
【特許文献2】中国出願公開第103623497号
【特許文献3】米国特許第5569184号
【特許文献4】中国出願公開第101733051号
【特許文献5】米国出願公開第2014309598号
【特許文献6】米国出願公開第2012080378号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ガルシアら(Garcia et al.)、「ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート−co−アクリルアミド)ヒドロゲル中における5−フルオロウラシルの捕捉;インビトロ薬剤送達の研究(5−Fluorouracil trapping in poly(2−hydroxyethylmethacrylate−co−acrylamide)hydrogels;in vitro drug delivery studies)」,European Polymer Journal 36(2000)111−122
【非特許文献2】フェレイラら(Ferreira et al.)、「異なったpH値における薬剤送達システムとしてのポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ゲルの評価(Evaluation of poly(2−hydroxyethyl methacrylate)gels as drug delivery systems at different pH values)」,International Journal of Pharmaceuticals 194(2000)169−180
【非特許文献3】カールガードら(Karlgard et al.)「ケイ素を含有するp−HEMAヒドロゲルコンタクトレンズ材料によるインビトロにおける眼用医薬剤の取り込み及び放出研究」(In vitro uptake and release studies of ocular pharmaceutical agents by silicon−containing and p−HEMA hydrogel contact lens materials),International Journal of Pharmaceuticals 257 (2003) 141−151
【非特許文献4】サントスら(Santos et al.)、「ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート−co−メタクリル化された−β−シクロデキストリン)ヒドロゲル:合成、細胞適合性、機械的特性及び薬剤装荷/放出特性(Poly(hydroxyethyl methacrylate−co−methacrylated−β−cyclodextrin) hydrogels: Synthesis, cytocompatability, mechanical properties and drug loading/release properties)」、ScienceDirect,Acta Biomaterialia 4 (2008) 745−755
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、比較的長期間にわたる制御放出に適用することができる、安全でありしかも非常に正確に化学物質を投与することができる化学物質の送達に適した新しいタイプの送達デバイスを提供することである。
【0015】
一実施形態において、本発明の目的は、化学物質を、比較的長期間にわたって、柔軟な様式で及び/又は所望の放出プロファイルで、例えば、0次の速度の放出プロファイルなどで送達するのに適用され得る送達デバイスを提供することである。
【0016】
一実施形態において、本発明の目的は、エタノールを除いて実際上全ての有機溶媒である望ましくない有機溶媒を含む送達デバイスを使用せずに、化学物質を送達するのに適用され得る送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの図面は模式的であり、明確にするために簡単にされていることもある。全体を通して、同じ参照番号が同一の又は対応する部分について使用されている。
これらの及び他の目的は、特許請求の範囲で画定されるように、さらに本明細書で下に記載されるように、本発明により解決された。
【0018】
本発明及びその実施形態は、当業者には以下の記載から明らかと予想される多くの追加の利点を有することが見出された。
本発明の送達デバイスは、化学物質の送達が望まれる多くのタイプの用途に対して適することが見出された。送達デバイスは、送達デバイスが、所望の放出プロファイル又は例えば、一定の放出、持続性の放出、ゼロ次の放出及び/又は徐放のプロファイルを有するように設計されることが可能な薬剤及び他の化学物質を送達するための新しい概念を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1のIPN試料及びブラインドの先行技術試料のバルーンを通して数日にわたり移動する質量(mg)を示すグラフ。
図2】バルーンカテーテルの形態にある本発明の送達デバイスの実施形態を示す図。
図3】本発明のバルーンカテーテルを使用する実施形態を示す模式図。
図4】子宮を含むヒト女性生殖系及び子宮頸部を取り囲むように取り付けられた本発明のPリングの実施形態の模式的図面。
図5図4の図面に対応するヒト女性生殖系の模式的側面図。
図6】化学物質を含む本発明の実施形態のカプセルを例示する図
図7a】シリコーンホストポリマーのクライオSEM画像。
図7b図7aのシリコーンホストポリマーの対応する例示の図。
図8a】多数のビーズを備える構造の相互侵入型ゲストポリマーとシリコーンホストポリマーのクライオSEM画像。
図8b図8aのシリコーンホストポリマー/ゲストポリマーIPNの対応する例示の図。
図9a】水で膨潤した図8a及び8bのシリコーンホスト/ゲストポリマーIPNのSEM画像。
図9b図9aの水で膨潤したシリコーンホストポリマー/ゲストポリマーIPNの対応する例示の図。
図10】並べられた図7b、8b、9bの例示を含む図。
図11】残留物の抽出にかけられる前のシリコーンホストポリマーのSEM画像。
図12図9aの乾燥シリコーンホスト/ゲストポリマーIPNのSEM画像。
図13】リポソームを含む化学物質を含む本発明の実施形態のカプセルを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
送達デバイスは、閉じた空洞を備える。空洞は、最内部壁の表面によって画定され、内部壁の表面の少なくとも一区分は、送達膜の内部表面を構成する。送達膜は、ホストポリマーとゲストポリマーとを含む相互侵入型ポリマーネットワーク(IPN)基板を含み、ゲストポリマーは、ホストポリマーに相互侵入して、ホストポリマー内に実質的に連続した経路を形成する。
【0021】
用語「閉じた空洞」は、本明細書では、送達デバイスが、所定量の水などの液体を、液体を漏らさずに空洞内に保持するように構成されていることを意味する。送達デバイスは、閉じることができる開口部を含んでもよく、又は化学物質を空洞中に満たすための浸透に適合されていてもよい。このことは下でさらに詳細に記載する。
【0022】
送達膜の内部表面を構成する内部壁の表面の一区分は、内部壁の表面の任意の部分、例えば、内部壁の表面の全体又は内部壁の表面のより小さい部分だけ、例えば、内部壁の表面の約1%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上などであってもよい。相互侵入型ポリマーネットワークは、当技術分野において周知であり、相互侵入型ポリマーネットワークについてのさらなる情報、及びどのようにしてそのようなネットワークが提供され得るかは、例えば、US2015038613、WO2005/055972及び/又はWO2013/075724に記載されている。
【0023】
単数形で使用される任意の用語は、特に断りのない限り用語の複数形も含むと解釈されるべきである。
用語「実質的に」は、本明細書では、通常の製品の変動及び許容誤差が含まれることを意味すると受け取られるべきである。
【0024】
一実施形態において、送達膜は、送達膜の内部表面と反対側に外部表面を有する。外部表面と内部表面との間の距離が送達膜の厚さを画定する。有利には、ホストポリマー内におけるゲストポリマーの実質的に連続した経路が、送達膜の内部表面から外部表面まで伸びている。それにより、化学物質は、相互侵入型の経路を経由して送達膜を通って移動することができる。当業者は、ホストポリマー中のゲストポリマーの量を調節することにより、及び経路のフォーメーションを設計することにより送達膜の放出プロファイルを設計することができる。例えば、液体の、高密度の又は超臨界のCOによって抽出され得る過剰の残留物を用いてホストポリマーを調製することにより、当業者は、ホストポリマーの所望の相互侵入型ポリマーネットワーク構造を得ることができる。一実施形態において、送達膜は、その内部表面及び/又は外部表面に、ゲストポリマーの材料と実質的に同一の材料のコーティングを含むことができる。それにより化学物質の放出が増大され得る。
【0025】
一実施形態において、ホストポリマーは、それを溶解せずに膨潤させる有機溶媒により、抽出され得る過剰の残留物と共に調製される。その後で、残存する望ましくない有機溶媒は、例えば、通常許容される溶媒であるエタノールを使用して抽出され得る。
【0026】
送達膜は、原理的に、所望の放出プロファイルに応じて任意の厚さを有することができる。原理的に、化学物質は、送達膜のゲストポリマー経路を通って最短の道筋により移動すると予想されるが、送達膜の厚さを変化させることにより、放出プロファイルは、例えば、空洞中の化学物質が、膜の外部表面における物質の放出のための膜中に及び膜を通って移動することに起因して減少するときに、膜は、所定量の化学物質を未だ維持して、それにより、特に膜が比較的厚い場合に、放出プロファイルが、長い期間にわたり比較的一定であることができるように成形されることが可能である。したがって、膜が厚ければ厚いほど、より長い実質的に一定の放出プロファイルが得られることが可能である。一実施形態では、化学物質も、ホストポリマーの表面を通って又は経由して移動する。別の実施形態では、ホストポリマーを通る化学物質の移動は実質的にない。一実施形態では、化学物質が2種以上の異なった成分を含む場合、これらの成分の1つが主としてゲストポリマーを通って移動し、別の成分は主としてホストポリマーを通って移動する。
【0027】
放出されるべき物質に応じて、物質は、通常、ゲスト及び/又はホストマトリックス中においてある程度の溶解性も有し、ゲストポリマー/ホストポリマーと放出されるべき選択された物質との間の分子内力も、放出プロファイルを成形するのに適用され得る。一実施形態では、ホストポリマー及び/又はゲストポリマーは、放出されるべき物質に関して、装荷流体が、US2014303263に記載されているように、好適には水である場合に、25℃で少なくとも約0J/m2の接着仕事(Whc)を有するように選択される。
【0028】
有利には、送達膜の少なくとも一区分は、1μmから1cm、好適には10μmから1mmの厚さを有する。送達膜が薄過ぎると、機械的靱性が小さくなり過ぎる可能性があり、それに対して、膜が厚ければ厚いほど、化学物質が送達膜を通って移動するのにより長い時間を要すると予想される。有利には、送達膜は、反発性であり、空洞が化学化合物(単数又は複数)で満たされたときに引き伸ばされることが可能であり、この実施形態では、厚さは、送達膜が引き伸ばされるにつれて低下すると予想されるため、引き伸ばされていない状態では、前に言及された範囲の大きい方の端になるように選択されることもある。
【0029】
送達膜は、一様であることも又は一様でないこともできる。一実施形態において、送達膜は、実質的に一様な厚さを有する。一般的に、一様な厚さの送達膜は設計及び製造するためにより簡単である。
【0030】
ホストポリマーは、原理的に、化学物質例えば水性化学物質により溶解されないで、送達デバイスの意図される使用のために十分な機械的靱性を有する任意の種類のポリマーであることができる。一般的に、ホストポリマーの目的は、送達膜の十分な機械的靱性を確保することである。
【0031】
一般的に、膜の強度は、主に又は完全にホストポリマーによって提供されることが望ましい。したがって一実施形態では、ホストポリマーは、膜と実質的に同一の引き裂き強度を有する。
【0032】
一実施形態において、ホストポリマーは、架橋されたポリマー、例えば、架橋されたエラストマー、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、ポリウレタン(PU)、ゴム例えばラテックスゴム、シリコーン又は任意のそれらの組合せなどである。
【0033】
一実施形態において、ホストポリマーは物理的に架橋されており、ホストポリマーは好適には物理的に架橋されたTPEである。物理的に架橋されたTPEは、可逆的である物理的に架橋された安定化ドメインを含み、例えば、加熱又はイオン交換により再形成され得る。安定化ドメインは非結晶性であっても又は結晶性であってもよい。
【0034】
一実施形態において、ホストポリマーは、化学的に架橋されており、ホストポリマーは、好適には共有結合で架橋されている。
一実施形態において、ホストポリマーは、イオン結合により架橋されている。
【0035】
一実施形態において、ゴムは、天然ゴム又は合成ゴム、例えば、イソプレンの加硫されたポリマーなどであり、ゴムは、好適にはシリコーンゴム又は架橋されたポリウレタンである。
【0036】
一実施形態において、ホストポリマーはエラストマーである。適切なエラストマーは、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ゴム例えばラテックスゴム、シリコーン及び/又は任意のそれらの組合せを含む。エラストマーのホストポリマーは、送達膜がエラストマーの特性を有すべき場合、例えば送達膜がカテーテルのバルーンであるか又はバルーンの一部である場合の実施形態では特に好適である。
【0037】
好適な実施形態では、ホストポリマーは熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む。
適切なTPUは、例えば、Carbothane(商標)、Isoplast(登録商標)、Pellethane(登録商標)、Tecoflex(商標)、Tecophillic(商標)及びTecothane(商標)という商品名でルブリゾール社(Lubrizol)により市販されているTPUを含む。
【0038】
TPUは、硬質及び軟質のセグメントで組み立てられる線状のセグメント化されたブロックコポリマーである。硬質セグメントは、芳香族又は脂肪族のいずれかであることが可能である。芳香族TPUは、MDIなどのイソシアネートに基づいているが、一方脂肪族TPUはH12MDIのようなイソシアネートに基づいている。これらのイソシアネートが短鎖ジオールで組み合わされたときに、それらは硬質ブロックになる。通常、それは芳香族であるが、太陽光露出における色彩及び透明性の保持を優先する場合には、脂肪族硬質セグメントがしばしば使用される。
【0039】
TPU及びTPUを含む化合物は、非常に適切である。それは加工が比較的簡単であり、大量のゲストポリマーを含有することができる。さらにTPUは高度に弾性であり、高い反発力を有する。TPUは軟質セグメントを含み、それは、有利にはポリエーテル又はポリエステルタイプであることができる。TPUは好適にはポリエーテルに基づいている。
【0040】
一実施形態において、ホストポリマーは、骨格がSi及びO原子からなるか又はSi原子からなるホストポリマーを、少なくとも10質量%、例えば少なくとも20質量%、例えば少なくとも40質量%、例えば少なくとも60質量%含み、ホストポリマーは、好適には、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、フルオロシリコーンゴム、シリコーンエステル、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリクロロシラン、ポリアルコキシシラン、ポリアミノシラン、ポリシラン、ポリジアルキルシロキサン、少なくとも1つのフェニル置換基を含有するポリシロキサン、ビニル官能化されたシリコーン、部分的に又は完全にフッ素化されたシリコーン又は2種以上の上記シリコーンの混合物を含む。
【0041】
好適な実施形態では、ホストポリマーはシリコーンを含む。
ホストポリマーの構造は、放出プロファイルに対して、特に所望の放出プロファイルを得ることに大きい影響を有し得ることが見出された。一実施形態では、ホストポリマーは、多数のストランド内経路を備えるストランド形のフィラメントのネットワーク構造を有する。多数のストランド内経路を備えるストランド形のフィラメントのネットワーク構造を有するそのようなホストポリマー構造は、例えば、架橋前に過剰の残留物を含み、架橋後にそのような残留物の少なくとも一部を、例えば、超臨界流体抽出又は近超臨界(near supercritical)流体抽出により、例えば抽出流体としてCOを使用して除去してホストポリマーを調製することにより得ることもできる。一実施形態では、ホストポリマーからの残留物の抽出は、高密度のCOガス抽出を使用して実施される。
【0042】
一実施形態において、ホストポリマーは、ホストポリマーを溶解せずに膨潤させる有機溶媒により抽出され得る過剰の残留物と共に調製される。その後、残存する望ましくない有機溶媒は、例えば、通常許容される溶媒であるエタノールを使用して抽出され得る。有機溶媒は、ホストポリマーを膨潤させるその能力に応じて選択されてもよく、膨潤させるために許される時間が、ホストポリマーからの残留物の除去を調整するために使用されることも可能である。
【0043】
一実施形態において、ホストポリマーは、実質的に平坦なストランド形のフィラメントのネットワーク構造を有する。「実質的に平坦なストランド形のフィラメント」というフレーズは、本明細書では、ストランドが、断面(ストランドの長さの寸法に垂直)の最短の寸法よりはるかに大きい、例えば、少なくとも100%大きい、例えば約200%から1000%大きい断面の最大の寸法を有することを意味する。最大の断面の寸法は、最短の断面の寸法に対して実質的に垂直であってもよい。
【0044】
一実施形態において、ストランド内経路は、送達膜の全体積の少なくとも約30%、例えば送達膜の全体積の少なくとも約40%、例えば少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%などを有する。ストランド内経路の体積は、例えば、ホストポリマーを凍結して構造を例えば走査電子顕微鏡(SEM)などの顕微鏡で観察することにより視覚的に決定され得る。一実施形態では、ストランド内経路の体積は、例えば、残留物の抽出前及び残留物の抽出後にホストポリマーの重量を決定することによって重量により決定され得る。
【0045】
ストランド内経路の体積は、放出プロファイルを設計するために使用され得る。ストランド内経路の体積が大きければ大きいほど、より多くの量の薬剤が送達膜を通過することができると考えられる。
【0046】
一実施形態において、ホストポリマー及び/又はゲストポリマーは導電性である。
一実施形態において、ホストポリマーとゲストポリマーとは、少なくとも1つの波長に対して、例えば400nmから2μmの範囲内の少なくとも1つの波長に対して、例えば可視範囲内に対して一致した屈折率を有する。
【0047】
一実施形態において、ホストポリマーは、ゲストポリマーより高い屈折率を有する。
一実施形態において、ホストポリマーとゲストポリマーとは、実質的に同一の屈折率を有する。
【0048】
ホストポリマーが、例えば約1.33から約1.5の屈折率を有することもあり、ゲストポリマーが、例えば約1.1から約1.5の屈折率を有することもある。ゲストポリマーは、化学物質がゲストポリマー経路中で移動するために適切であるように選択される。化学物質がアルコール可溶である場合、ゲストポリマーは、有利には、高いアルコール膨潤特性を有すべきである。ゲストポリマーは、例えば、アルコゲル又は乾燥したアルコゲルであってもよい。
【0049】
有利には化学物質は水性媒体に可溶であり、ゲストポリマーが高い水膨潤特性を有する。
一実施形態において、ゲストポリマーは、ヒドロゲル、エアロゲル、キセロゲル又は任意のそれらの組合せから選択されるゲルを含む。
【0050】
乾燥ゲルが使用される場合、乾燥ゲルは、使用者により送達デバイスを使用する前に再湿潤化されるか、又は使用中に化学物質が溶解される液体からの液体により及び/又は粘膜液体(体液)により再湿潤化されるかのいずれかである。
【0051】
一実施形態において、ゲストポリマーは、好適には、アクリレートモノマー又はビニルポリマー、より好適にはn−ビニルピロリドン(nVP)、スチレン;酸素、フェニル、アミノ及び窒素を含有するアクリル系及びメタクリル系誘導体、例えばアクリル系エステル、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのエステル、アルキル及びヒドロキシアルキルアクリレート及びメタクリレート;官能化されたメタクリレート、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリセロールモノメタクリレート(GMMA)、ヘプタフルオロブチルアクリレート(HFBA)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及び[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]−ジメチル−(3−スルホプロピル)−水酸化アンモニウム(ベタイン)など;アルキル置換されたアクリレート及びメタクリレート、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、ドデシルメタクリレート(DMA)など;ペグ化(メタ)アクリレート、例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(PEGMEMA)及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(PEGMEA)など;置換されたβ−及びγ−ラクトン、乳酸モノマー;カルボヒドリド及びフッ素化されたモノマー;ウレタン;モノ−及びジ−官能性アルコール;カルボン酸;アミン;イソシアネート;エポキシド;アルキル基(単数又は複数)を担持する芳香族;スルホン化された芳香族、芳香族樹脂;イミダゾール;イミダゾール誘導体;双性イオン性モノマー;ピラゾール;第四級アンモニウムモノマー及び任意のそれらの組合せから重合されたホモポリマーを含む。
【0052】
適切なホモポリマーの例は、Nipam(N−イソプロピルアクリルアミド)及びペクチンも含む。
一実施形態において、ゲストポリマーは、好適にはシラン、例えばテトラエチルオルトシリケート又はテトラエトキシシラン(TEOS)、アクリレートモノマー又はビニルポリマー、より好適にはn−ビニルピロリドン(nVP)、スチレン;酸素、フェニル、アミノ及び窒素を含有するアクリル系及びメタクリル系誘導体、例えばアクリル系エステル、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのエステル、アルキル及びヒドロキシアルキルアクリレート及びメタクリレート;官能化されたメタクリレート、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリセロールモノメタクリレート(GMMA)、ヘプタフルオロブチルアクリレート(HFBA)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及び[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]−ジメチル−(3−スルホプロピル)−水酸化アンモニウム(ベタイン)など;アルキル置換されたアクリレート及びメタクリレート、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、ドデシルメタクリレート(DMA)など;ペグ化された(メタ)アクリレート、例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(PEGMEMA)及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(PEGMEA)など;置換されたβ−及びγ−ラクトン、乳酸モノマー;カルボヒドリド及びフッ素化されたモノマー;ウレタン;モノ−及びジ−官能性アルコール;カルボン酸;アミン;イソシアネート;エポキシド;アルキル基(単数又は複数)を担持する芳香族;スルホン化された芳香族:芳香族樹脂;イミダゾール;イミダゾール誘導体;双性イオン性モノマー;ピラゾール;第四級アンモニウムモノマー及び任意のそれらの組合せを含むモノマーから重合されたコポリマーを含む。
【0053】
コポリマーは、2種以上のモノマー種の共重合により得られるポリマーを意味する。
一実施形態において、コポリマーのゲストポリマーは、2種のモノマー種を有する2元共重合体である。
【0054】
一実施形態において、コポリマーのゲストポリマーは、3種のモノマー種から得られるターポリマーである。
一実施形態において、コポリマーのゲストポリマーは、4種のモノマー種から得られる4元共重合体である。
【0055】
一実施形態において、ゲストポリマーは、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)を含み、好適には、ゲストポリマーはポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)とPEGMEAのコポリマーを含む。
【0056】
一実施形態において、ゲストポリマーは、その乾燥質量の約10〜10000質量%、例えばその乾燥質量の約10〜5000質量%、例えばその乾燥質量の約10〜500質量%、例えばその乾燥質量の約100〜500質量%などの25℃における最大水膨潤を有する。
【0057】
一実施形態において、ゲストポリマーは、ホストポリマーの25℃におけるその乾燥質量に対する最大水膨潤より高い25℃における最大水膨潤を有する。
一実施形態において、ゲストポリマーは、ホストポリマーの25℃における最大水膨潤以下のその乾燥質量に対する25℃における最大水膨潤を有する。
【0058】
一実施形態において、送達膜は、その乾燥質量の約5〜5000質量%、例えばその乾燥質量の約10〜1000質量%、例えばその乾燥質量の約10〜500質量%、例えばその乾燥質量の約10〜40質量%などの25℃における最大水膨潤を有する。
【0059】
提供されるべき送達デバイス及び適用されるべき化学物質により満たされることが望まれる特定の要件及び所望の放出プロファイルに応じて、当業者は、上の教示に基づいて多くの試験を実施することにより、最適の膨潤度及び適切なホスト及びゲストポリマーを見出すことができる。
【0060】
ホストポリマー内に実質的に連続した経路を形成する多数のビーズを備える構造を有するゲストポリマーを提供することは、非常に有益であることが見出された。その超臨界の、近超臨界の又は高密度のガス状態にある溶媒を使用して、ゲストモノマーをホストポリマー中に装荷することにより生ずるゲストポリマーは、それが沈殿するときに、ホストポリマーの構造内にビーズ様のユニットを形成すると予想される。
【0061】
沈殿は、重合中か(ポリマーが重合溶液に可溶でない場合)又は溶媒が除去されるときのいずれかで起こる。有利には、使用される超臨界、近超臨界又は高密度のガス溶媒は、CO又は例えば5モル%までのエタノールのCOとエタノールとの組合せを含む。ビーズの形状は、重合されたモノマーがあるサイズに達するとき、及び/又は重合されたモノマーが圧力低下にかけられるとき、超臨界、近超臨界又は高密度のガスの圧力が開放されるとき、及び使用された超臨界、近超臨界又は高密度のガス溶媒が瞬間的に蒸発して重合されたゲストポリマーを巣穴状のポリマー構造内に残すときに提供されると考えられる。
【0062】
一実施形態において、多数のビーズが横並びのフォーメーションで配列されてホストポリマー内に実質的に連続した経路を形成する。ゲストポリマーの量が十分である場合、溶媒をその超臨界、近超臨界又は高密度のガス状態で使用して、ゲストがホストポリマー中に装荷されるときに、ゲストポリマーのビーズは、横並びのフォーメーションを形成できることが見出された。
【0063】
一実施形態において、ホストポリマーは、多数のストランド内経路を備えるストランド形のフィラメントのネットワーク構造を有し、ゲストポリマーの多数のビーズがストランド形のフィラメントに沿って配列されてホストポリマー内に実質的に連続した経路を形成する。このストランド内経路構造は上で記載された通りでよい。シリコーンがホストポリマーとして使用され、残存する油が、例えば、溶媒を超臨界の、近超臨界の又は高密度のガス状態で使用して除去される場合、ゲストポリマーは、ストランド形のフィラメントに沿って配列されることが可能で、ゲストポリマーの多数のビーズは、ストランド形のフィラメントに付着してホストポリマー内に実質的に連続した経路を形成できることが見出された。
【0064】
一実施形態において、ホストポリマーは、多数のストランド内経路を備えるストランド形のフィラメントのネットワーク構造を有し、ゲストポリマーは、ホストポリマーを、選択されたモノマー及び任意選択の重合開始剤の溶液中に浸すことにより提供され、その場合、使用される溶媒は、ホストポリマーを膨潤させて、それによりモノマー及び重合開始剤をストランド形のフィラメントのネットワークにより提供されるホストポリマーのネットワークマトリックス中に導入する能力を有する有機溶媒を含む。選択された浸し時間の後、溶媒は蒸発するに任され、モノマーの重合は、例えば照射により(例えばUV又はIRを使用して)又は例えばオーブン中で例えば70〜90℃に加熱することにより開始される。重合後残存する望ましくない有機溶媒は、例えば通常許容される溶媒であるエタノールを使用して抽出され得る。重合されたゲストポリマーは、その後ホストポリマーのストランド形のフィラメント上に表面コーティングとして配置されると予想される。
【0065】
一実施形態において、送達膜は、ホストポリマーの連続したマトリックス及びゲストポリマーの多数の相互に接続した通路を備え、ここでゲストポリマーの相互に接続した通路は、好適には、膜の全厚さを通して伸びており、それにより送達膜を通る化学物質のために適切な移動通路を提供する。
【0066】
一実施形態において、送達膜は、ホストポリマーの連続したマトリックス及びゲストポリマーの多数の相互に接続した通路を備え、送達膜は外部表面を有し、ゲストポリマーの多数の通路は、内部表面及び/又は外部表面と一致する。それにより送達膜を通る化学物質のために適切な移動通路が提供される。
【0067】
放出の遅れ(遅延相)を減少させるために、送達膜は、空洞に適用されるべき化学物質と等しくても又は異なってもよい1種又は複数の組み込まれた化学化合物を含むことができる。
【0068】
一実施形態において、送達膜は、水溶性粒子の形態で組み込まれた1種又は複数の化学化合物、例えば薬剤、緩衝剤、界面活性剤、芳香剤、染料、香味料、抗酸化剤、栄養素、ホルモン、触媒など及び/又は任意のそれらの組合せを含む。化学化合物は、WO2013/075724に記載された方法により送達膜中に有利に装荷され得る。
【0069】
有利には、送達デバイスは、エタノール以外の有機溶媒を含まない。このことは、例えば、WO2013/075724に記載されたようにしてゲストポリマーをホストポリマー中に装荷する方法を使用することにより得られることが可能である。
【0070】
一実施形態において、送達膜は、1種又は複数の抗菌性のコーティングを含む。そのような抗菌性のコーティングは、通常、選択された微生物の成長をある時間、例えば2〜3日、例えば3〜5日防止又は減少させる。一実施形態では、送達膜が、物質がゲストポリマーの通路を経由して膜を通って移動する1日以上、例えば2〜5日の遅延相を有する場合、送達膜が、1種又は複数の抗菌性のコーティングを、その最内部壁表面と反対側にその外側に備えることが特に望ましい。
【0071】
化学物質の空洞中への効果的な装荷を提供するために、送達デバイスは、有利には、実質的に、例えば化学物質が、送達デバイス中に形成された管腔を経由して及び/又は膜に侵入する注射針を使用することにより、空洞中に装荷され得るようなサイズを有すべきである。有利には、膜は、注射針を除去した後、そのような浸透孔を閉じるために十分な弾性を有する。
【0072】
有利には、送達膜の内部表面は、少なくとも約0.01cm、例えば少なくとも約0.1cm、例えば少なくとも約1cm、例えば少なくとも約2cm、例えば少なくとも約5cm、例えば少なくとも約10cmなどの内部の表面積を有する。それにより、それは、多分上記のように注射針を使用して化学物質を装荷することができる。送達デバイスが完全に送達膜によって提供される場合には、送達膜は、より大きい内部の表面積、例えば少なくとも約2cm、例えば少なくとも約5cm、例えば少なくとも約10cmを有する必要がある。
【0073】
一実施形態において、前記送達膜の空洞及び内部表面は、薬剤を前記空洞中に、装荷管腔及び/又は注射針を経由して装荷するために十分に大きい。
有利には、空洞は、少なくとも1mlの流体を前記空洞中に装荷するために十分に大きい。
【0074】
一実施形態において、空洞は、少なくとも部分的に潰れた空洞である。
一実施形態において、最内部壁の表面を含む壁は膨張可能であり、換言すれば、送達膜は、例えば、膨張可能なバルーン又はバルーンカテーテルの膨張可能なバルーンの一区分として、膨張可能であるか又は伸縮性である。
【0075】
一実施形態において、空洞はガスを含み、好適には最内部壁の表面を含む壁は、圧力開放バルブなどのガスの逃げ道のバルブを備え、それにより、例えば化学物質が空洞中に装荷されるときに、ガスの量を調節する。
【0076】
有利には、空洞は、流体及び/又は粒子の形態にある1種又は複数の化学物質、例えば、細胞、触媒、薬剤、緩衝剤、界面活性剤、芳香剤、染料、香味料又は任意のそれらの組合せで満たされ、又は再び満たされるように適合されており、空洞は、好適には、1種又は複数の化学物質で、バルブを備える導入口、例えば膨張管腔(例えばフォーリー(Foley)カテーテルの)などを経由して注入することにより、及び/又は送達膜を通して直接注入することにより満たされるように適合されている。
【0077】
送達膜がエラストマーのホストポリマーを含む一実施形態では、化学物質は、送達膜を経由して空洞中に有利に注射されることが可能であり、注射針を除去した後、送達膜の弾性特性が、注射針によって作られた浸透孔が直ちに収縮して完全に閉じる/修復することを確実にする。
【0078】
化学物質は、有利には、1種又は複数の化学化合物の、好適には、水又は例えば緩衝液及び他の適切な添加剤を含む水溶液に可溶な形態にある。
一実施形態において、空洞は、化学物質(単数又は複数)を、流体及び/又は粒子の形態の1種又は複数の化学化合物の形態で、例えば、細胞、触媒、薬剤、緩衝剤、界面活性剤、芳香剤、染料、香味料又は任意のそれらの組合せを含む。
【0079】
一実施形態において、化学物質は、有効な薬学的成分(API)などの薬剤を含む。好適には、薬剤は、抗真菌剤、抗痙攣薬、鎮痛剤、抗パーキンソン症候群薬、抗炎症剤、カルシウムアンタゴニスト、麻酔剤、抗微生物剤、抗マラリア薬、抗寄生虫薬、抗高血圧薬、抗ヒスタミン剤、解熱剤、α−アドレナリン作用性のアゴニスト、α−遮断薬、殺生物剤、殺菌剤、気管拡張剤、ベータ−アドレナリン作用性の遮断薬、避妊薬、心臓血管薬、カルシウムチャネル阻害剤、抑制剤、診断薬、利尿剤、電解質、酵素、睡眠剤、ホルモン、低血糖薬、高血糖薬、筋収縮剤、筋弛緩剤、新生物薬、糖タンパク質、核タンパク質、リポタンパク質、眼科用薬剤、精神賦活薬、鎮静剤、ステロイド交感神経興奮剤、副交感神経作用剤、精神安定薬、尿路薬剤、ワクチン、膣薬剤、ビタミン、コラーゲン、ヒアルロン酸、非ステロイド性抗炎症薬、アンジオテンシン変換酵素、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類、ニコチン、副腎ホルモン、痛み止め、モルヒネ、抗癌剤ならびにそれらの組合せ及び混合物から選択される。
【0080】
一実施形態において、化学物質は、アルツハイマー病の症状を治療するための薬剤、例えば、T3D−959、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン又はそれらの組合せなどを含む。T3D−959は、ペルオキシソーム増殖因子に活性化された核受容体デルタ/ガンマ、akaΡΡΑRδ/γの二重アゴニストである。
【0081】
一実施形態において、化学物質は、血液凝固カスケードの成分、例えば第VIII因子など;避妊薬、例えばレボノルゲストレル又はエチニルエストラジオールなど;抗ウイルス薬剤(抗レトロウイルス)、例えば、抗HIV薬剤(ダピビリン、テノホビル)又は抗C型肝炎剤(リバビリン)などから選択される薬剤を含む。
【0082】
一実施形態において、化学物質は、ヒトの栄養のための化合物、例えば、ビタミン、タンパク質及び/又はミネラルなど、又は上記の1種又は複数を含む成分を含む。
一実施形態において、化学物質は、微生物の栄養のための化合物、例えば、FeSO・7HO、ZnSO、KCl、MgSO、7HO、NaNO、グルコース、NaCl、KHPO、NHPO、CaC1・2HO、FeC1・6HO、NaHPO、NaHPO、NaHCO、(NHSOなど又は挙げられた任意のものを含む混合物を含む。
【0083】
一実施形態において、化学物質は、芳香化合物、香味料化合物及び/又は着色化合物、例えば顔料及び/又は染料を含む。化学物質中に着色化合物を適用することにより、化学物質の移動の前端が、それが送達膜を通して移動するにつれて可視になり得る。
【0084】
一実施形態において、化学物質は、有効な化学化合物及び着色化合物を含み、そこで、着色化合物はその着色が、有効な化学化合物の濃度に応じて選択されて、それにより残存する有効な化学化合物の量が、膜の外側又は内側から観察され得る。
【0085】
一実施形態において、化学物質は着色化合物を含み、そこで、着色化合物は、それが診断のための指示薬として適用され得るように選択される。
さらなる適切な化学化合物の薬剤の例は、抗癌剤、例えば、アナストロゾール、ベンダムスチンhcl、ブレオマイシン硫酸塩、カペシタビン、シスプラチン、ドキソルビシンhcl、ドセタキセル三水和物又はゲムシタビンhcl、レトロゾールなど;ステロイドホルモン薬剤、例えば、デキサメタゾン、エストラジオール、フルオシノロンアセトニド、ゲストデン、ヒドロコルチゾン、ミフェプリストン、モメタゾンフロエート、プロゲステロン又はプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニドなど;向知性薬及び栄養剤、例えば、アニラセタム、アセチルL−カルニチン、アデメチオニン、ジサルフェート、トシレート(SAMe)、アデメチオニン1,4ブタンジスルホネート、分岐鎖アミノ酸、(BCAA)、CDPコリン、クレアチン一水和物、DHA EPA EGCG、L−テアニン、1.3−ジメチルアミルアミンhcl(DMAA)、オキシラセタム、フェニブト、プラミラセタム又はスルブチミアンなど;心臓血管系薬剤、例えば、アムロジピンベシレート、アラゲブリウム塩化物、アトルバスタチンカルシウム、カンデサルタン、カンデサルタン、シレキセチル、ロサルタンカリウム、フェントラミンメシレート、ロスバスタチンカルシウム又はテルミサルタンなど;抗鬱剤、例えば、チアネプチン酸、チアネプチンナトリウム又はセルトラリンHClなど;抗菌及び抗炎症薬、例えば、アミカシン硫酸塩、クロルヘキシジン、コリスチン、シクロスポリンA、ダプトマイシン、ガチフロキサシン、ゲンタマイシン硫酸塩、ロキソプロフェンナトリウム、マルボフロキサシン、ニトロフラゾン、ニトロフラントインポリミキシンB硫酸塩、ラパマイシン、リファンピシン、リファキシミン、スルファメチゾール、タクロリムス、トリクロサン又はトブラマイシン(硫酸塩)など;抗真菌薬、例えばミコナゾールなど;プロスタグランジン薬剤、例えば、アルプロスタジル(PGE1)、ビマトプロスト、ディノプロスト、トロメタモール(F2アルファ)、DL−クロプロステノールナトリウム、ラタノプロスト又はミソプロストロールなど;化粧用のペプチド薬、例えば、アルギレリン酢酸塩、アセチルオクタペプチド−3、アセチルテトラペプチド−5、銅ペプチド/Cu−GHK/AHK、ジペプチド−2/Pal−テトラペプチド−3、ヘキサペプチド−9、ヘキサペプチド−10、L−カルノシン、マトリキシル酢酸塩、ミリストイル、ペンタペプチド−16、ミリストイルペンタペプチド−17、N−アセチルカルノシン、オクタペプチド2(TM−8−NH)、パルミトイルトリペプチド−1(Pal−GHK)又はパルミトイルトリペプチド−5など;泌尿器系薬剤、例えば、フィナステリド、デュタステリド、ヒドロクロロチアジド、ミラベグロン、オクスブチニン、スピロノラクトン又はタムスロシンなど;他の薬剤、例えば、アプレピタント、ベンセラジドhcl、シチコリンナトリウム、ダクラタスビル、デキストロメトルファンHBr、ドネペジルHCl、エンテカビル、フィンゴリモドHcl、フラボキセートHCL、フォルモテロールフマル酸塩、インドシアニン緑色、イプラトロピウム臭化物、ケタンセリン酒石酸塩、レジパビル、ロルカセリン塩酸塩、ラクトビオン酸、レボチロキシンナトリウム、モノキシジル、オベチコール酸、フェノールフタレイン、ピオグリタゾンHCl、ピモベンダン、ピルフェニドン、プレガバリン、ソホスブビル、タダラフィル、タモキシフェンクエン酸塩、テノホビル、ジソプロキシルフマル酸塩、臭化チオトロピウム、トラネキサム酸、ウリプリスタル酢酸塩又はキシロメタゾリンhclなどを含む。
【0086】
比較的高い放出を有するために、化学物質の化学化合物のモル質量は高過ぎないことが望ましい。一実施形態では、化学化合物は、約300,000g/molまで、例えば約90,000g/molまで、例えば約50,000g/molまで、例えば約10,000g/molまで、例えば約5000g/molまでのモル質量を有する。
【0087】
一実施形態において、化学化合物は、幹細胞(単数又は複数)、触媒(単数又は複数)、ナノ粒子(単数又は複数)又はそれらの組合せから選択される粒子を含む。
一実施形態において、空洞は、例えば、幹細胞又は微生物などの細胞を含む粒子を含む。細胞は、送達膜を含む空洞中にカプセル化されており、好適には、少なくとも1種の副生物を生ずることができる。副生物は、送達膜が濡れた条件にあるときに、すなわち、ゲストポリマーが湿潤条件にあるときに、送達膜を通って、好適には、ゲストポリマーの経路を経由して移動することができる。
【0088】
一実施形態において、送達膜は、流体及び/又は粒子の形態にある1種又は複数の化学化合物、例えば、細胞、触媒、薬剤、緩衝剤、界面活性剤、芳香剤、染料、香味料など又は任意のそれらの任意の組合せを含む。
【0089】
有利には、ゲストポリマーは、エアロゲル又はヒドロゲルのキセロゲル、好適にはヒドロゲルを凍結乾燥することにより得られたか、又は超臨界もしくは亜超臨界(sub−supercritical)条件下でCOなどの担体ガスを使用してヒドロゲルのゲストポリマーを含む送達膜を凍結乾燥することにより得られたキセロゲルである。
【0090】
有利には、化学物質は、膜に対して、それがゼロ次の速度で膜を通して拡散するように選択される。
一実施形態において、化学物質は、極性の液体中に、好適には水性液体中に分散されたリポソーム中に捕捉された薬剤を含む。リポソームは、放出されるべき薬剤を、それぞれのリポソーム内に捕捉された溶液又は分散液中に含む。加熱すると、リポソームの脂質二重層が破裂して、薬剤はリポソームから放出されると予想される。リポソームから放出された後、薬剤は、送達膜を通過して送達デバイスから所望の放出プロファイルで放出されると予想される。
【0091】
リポソームのサイズは、非常に小さい(0.025μm)小胞から大きい(2.5μm)小胞へと変化し得る。その上、リポソームは、一重層又は二重層の膜を有することができる。それらの二重層のサイズ及び数を基準にして、リポソームは、2つのカテゴリーのうちの1つに分類され得る:(1)多層小胞(MLV)及び(2)単層小胞。単層小胞はさらに2つのカテゴリーに分類され得る:(1)大きい単層小胞(LUV)及び(2)小さい単層小胞(SUV)[16]。単層のリポソームでは、小胞は、溶液又は分散液中に薬剤を封入している単一のリン脂質二重層球を有する。多層リポソームでは、小胞は、タマネギ構造を有し、数個の単層小胞が、他の小胞の内側にそれより小さいサイズで生ずることができ、溶液/分散液中の薬剤の層により分離された同心的リン脂質球の多層構造を作る。
【0092】
一実施形態において、化学物質は、リポソーム中に捕捉された薬剤を含み、リポソームの脂質二重層の破裂は、照射により適用された加熱、光又は従来の加熱によってもたらされる。
【0093】
一実施形態において、化学物質は、リポソーム中に捕捉された薬剤を、金属粒子、好適には金粒子と一緒に含み、照射により−例えば、レーザー光又はIR光によりリポソームの脂質二重層の破裂がもたらされて、金属粒子はそれにより粒子を加熱して、加熱された金属粒子に近いリポソームはその脂質二重層を破裂させて、その結果捕捉された薬剤はリポソームから放出されると予想される。
【0094】
一実施形態において、化学物質は、リポソーム中に捕捉された薬剤を、金属粒子、好適には金粒子と一緒に、及び発光ユニットと一緒に含み、その発光ユニットは触発されると発光して金属粒子を加熱することができる。発光ユニットを触発してそれにより粒子を加熱することにより、リポソームの脂質二重層の破裂がもたらされて、加熱された金属粒子に近いリポソームはその脂質二重層を破裂させて、その結果捕捉された薬剤がリポソームから放出されると予想される。
【0095】
発光ユニットは、例えば、しばしばQドットと称される量子ドットであってもよい。量子ドットの例は、US7498177に記載されており、ライフテクノロジーズ、ヨーロッパBV(Life Technologies Europe BV)から入手できる量子ドットは、150種を超える異なる製品構成を含み、放出波長は広い波長範囲にわたり、例えば、それぞれの放出波長が:525、545、565、585、605、625、655ならびにIR705及び800nmの量子ドットを含む。量子ドットは、送達デバイスの外側から、例えばレーザー光又はIR光により照射することにより励起され得る。
【0096】
一実施形態において、発光ユニットは発光ダイオードであり、例えば、ジェ−ウウン、ジョンらによる「プログラム可能なインビボにおける薬理学及び光遺伝学のための無線光流体システム」 セル 162巻、662〜674頁、2015年、7月30日、エルゼビア社(「Wireless Optofluidic Systems for Programmable In Vivo Pharmacology and Optogenetic」 by Jae−Woong Jeong et al. Cell 162, 662−674, July 30, 2015 Elsevier Inc.)に記載されているマイクロ発光ダイオード(μ−ILEDアレイ)である。DOI:
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.06.058
ここで記載されているように、マイクロ発光ダイオードは、無線で触発されることが可能で、プログラムされることさえ可能である。
【0097】
一実施形態において、化学物質は、リポソーム中に捕捉された薬剤を上記のマイクロ発光ダイオードと一緒に、即ち、金属粒子なしで含み、マイクロ発光ダイオードは無線接続により触発され、又はプログラムさえされる。
【0098】
一実施形態において、送達デバイスは、その内部表面又は外部表面の少なくとも一部にコーティングを備える。一実施形態では、送達デバイスの別の部分又は複数の部分もコーティングを含む。一実施形態では、コーティングは、接着剤、例えば、シリコーン接着剤、感圧接着剤、PU接着剤又はTPUの皮膚接着剤、例えば、マテリアルサイエンス社(Material Science)により市販されているベイメディクス(Baymedix)などから選択される。一実施形態では、コーティングは、バイオポリマー、例えば、ヒアルロン酸(HA)、キトサン、リグニン、アルギン酸塩、ペクチンなど又はそれらの組合せである。一実施形態では、コーティングは、例えば、皮膚又は粘膜に対する摩擦を減少させるための親水性コーティング、例えばヒドロゲルコーティングである。好適には、送達膜の内部表面及び/又は外部表面の少なくとも一部はコーティングを含む。
【0099】
一実施形態において、コーティングは、貴金属コーティング(すなわちバクチガード(bactiguard)コーティング)又は他の薬剤を送達するコーティング、ニトロフラゾン、抗菌性銀、その他である。
【0100】
一実施形態において、コーティングは、挿入による摩擦を減少させる疎水性コーティング(例えばシリコーンオイル)である。
一実施形態において、送達デバイスは、その内部表面又は外部表面の少なくとも一部にコーティングを備え、その場合、コーティングは、ゲストポリマーと実質的に同一の材料で作製される。
【0101】
一実施形態において、送達デバイスは、空洞を形成する少なくとも1つのバルーンを備えるバルーンカテーテルであり、有利には、送達膜は、バルーンカテーテルの一部又はバルーン全体である。
【0102】
一実施形態において、送達デバイスは、US6602243に記載されたバルーンカテーテルであるが、バルーンの壁の少なくとも一区分が本明細書で記載された送達膜であるという相違はある。
【0103】
有利には、送達デバイスは、フォーリーカテーテルなどの泌尿器カテーテルであり、送達膜は、バルーン又はその一区分であり、バルーンは、化学物質の化学化合物(単数又は複数)を含む膨張液体を使用して膨張されるように適合されている。化学化合物(単数又は複数)を含む膨張液体が、膨張する液体として使用された後、化学化合物(単数又は複数)が送達膜を通して移動すると予想される。
【0104】
泌尿器カテーテルを使用する患者は、非常にしばしば細菌に感染して、それはしばしば患者にとって非常に不愉快であり、又は苦痛でさえあり得て、それは患者の知覚される生活の質を損ない得る。本発明の送達デバイスのカテーテル及び膨張液体中の化学化合物として細菌に対する薬剤を使用することにより、感染は回避されることが可能であり、又はカテーテルの使用中に治療されることが可能である。
【0105】
一実施形態において、バルーンは、従順なバルーンであり、それは流体をバルーン中に満たすと、例えばバルーン内の圧力を増大させると連続的に拡大する。
一実施形態において、バルーンは、非従順バルーンであり、それは、流体をバルーン中に満たすと、例えばバルーン内の圧力が増大して特定のサイズ又はサイズ範囲に達するまで拡大する。そのようなタイプのバルーンは、例えばWO2010/042869に記載されている。一実施形態では、本発明の送達デバイスは、WO2010/042869に記載されたカテーテルであるが、バルーン壁の少なくとも一区分が本明細書で記載された送達膜であるという相違はある。
【0106】
一実施形態において、バルーンは折りたたまれたバルーンであり、それは流体をバルーンに満たすと広がる。
一実施形態において、カテーテルは診断プローブを備え、そのようなプローブは、蛍光マーカーなどのマーカーを備える。プローブは、好適には、少なくとも1種のバイオマーカー、例えば、これらに限定されないが、pH値、温度、湿度レベル又は感染レベル及び例えば多重化技法によるそれらの組合せなどを検出するために適合されている。
【0107】
一実施形態において、診断プローブは、少なくとも1種のバイオマーカーの変化に応じて変化するように構成されている。プローブの変化は好適には光学的に読むことができる。変化は、例えば、色の変化であってもよい。適切なプローブは、インターネット:https://www.lifetechnologies.com/dk/en/home/references/molecular−probes−the−handbook.htmlで無料で利用できる「分子プローブ(登録商標)ハンドブック−蛍光性プローブ及び標識技術の手引き(The Molecular Probes(登録商標) Handbook− A Guide to Fluorescent Probes and Labelling Technologies)」に見出され得る。
【0108】
一実施形態において、プローブは、カテーテルの遠方先端などのカテーテルの遠方端部に組み込まれているか又は取り付けられていて、その結果それは使用中に患者の膀胱中に置かれると予想される。感染が発生していれば、感染は、プローブにより検出され得る。例えばプローブは、光学的又は電気的に、例えば電気化学的リーダーを使用して読み出しすることが可能である。電気化学的読み出しのために、カテーテルは、1本又は複数の組み込まれた電線又は電気ストリップを備えることができ、その結果プローブの電位が読み出し可能である。これはインピーダンスの読み出しの形態であってもよい。
【0109】
一実施形態において、例えば、プローブが蛍光性マーカー及び/又は酵素のマーカーを備える場合には、プローブは、膜の外側又は内側で例えば視覚的又は光学的に観察されることが可能である。
【0110】
一実施形態において、カテーテルは、プローブを読み、読まれたシグナルを視覚的又は聴覚的に表示するための表示要素に伝送するための読み出し構造を備え、読み出し構造は光学的又は電気化学的リーダーを備える。
【0111】
読み出し構造は、例えば、蛍光に基づくシグナルの光学的読み出し、又は電気化学的読み出しに基づいており、有利には、感染レベルを報告して微生物のタイプを示すと予想される。微生物のタイプに応じて、1種又は複数の薬剤が、感染の局所治療のためにバルーンのための膨張液体に導入され得る。
【0112】
一実施形態において、カテーテルは、光学的読み出し構造を備える。カテーテルは排液管及び遠方先端を備える。排液管は、尿を排出するためのチャネルを備える。チャネルは、先端まで伸びて、先端は、プローブを備えるか又は担持する。チャネルは、例えば尿又は水などの液体で満たされたときに、導波管として機能するように構成されている。プローブは、チャネルに供給された光ビームの少なくとも一部がプローブに達するように有利に置かれて、その結果、反射又は散乱された光が光学的リーダーにより検出され得る。それによりチャネルは、検出のための光ビームの通路を形成する。
【0113】
一実施形態において、カテーテルは、光学的読み出し構造を備える。カテーテルは、膨張管及び遠方先端を備える。膨張管は、バルーンを膨張するためのチャネルを備える。チャネルは、先端まで伸びて、先端はプローブを備えるか又は担持する。チャネルは、例えば緩衝液又は水などの液体で満たされたときに、導波管として機能するように構成されている。プローブは、チャネルに供給された光ビームの少なくとも一部がプローブに達するように有利に置かれて、その結果、反射又は散乱された光が光学的リーダーにより検出され得る。それによりチャネルは、検出のための光ビームの通路を形成する。
【0114】
一実施形態において、膨張チャネルは、光を導いてバルーンを金粒子又は他の加熱機構を経由して加熱して薬剤の放出を増大させる。バルーンを加熱するための導光は、フィードバックループ中のセンサーとカップリングされてもよい。
【0115】
一実施形態において、カテーテルは、光学的読み出し構造を備え、その場合、カテーテルは排液管及び/又は注気管及び遠方先端を備える。排液管は、尿を排出するためのチャネルを備え、膨張はバルーンを膨張するためのチャネルを備える。チャネルのうちの少なくとも1本は遠方先端まで伸びて、プローブは管の外部表面に固定されて、管はプローブに対して透明な窓を有する。少なくとも1本のチャネルは、例えば尿又は水などの液体で満たされたときに、プローブからの散乱された光を読むために、導波管として機能するように構成されている。一実施形態では、プローブはバルーンに取り付けられて、膨張管腔は光学的導波管として適用される。
【0116】
一実施形態において、送達デバイスは、リング形の送達デバイスであり、空洞は、リング形の送達デバイス内でリング形又は半リング形である。リング形の送達デバイスは、原理的に任意のタイプの薬剤を送達するために使用され得る。
【0117】
一実施形態において、送達デバイスは、好適には、雌の哺乳類、例えばヒト又は哺乳類など、例えば、ヒト又は動物、例えばウマ、イヌもしくはネコなどの子宮頸部を取り巻くように置かれるように適合された膣リングである。
【0118】
一実施形態において、送達デバイスは、避妊薬送達デバイスであり、例えば妊娠を防止するための薬剤を、場合により1種又は複数の他の薬剤との組合せで、例えばHIV及び/又は妊娠を防止するための薬剤との組合せの形態などで含有する膣リング(Pリング)である。
【0119】
一実施形態において、送達デバイスは、哺乳類、例えば、ヒト又はネコなどのための避妊薬送達デバイスである。
ネコのためのそのような避妊薬送達デバイスは、例えば、ネコの卵巣摘出又は不妊の置き換えに使用され得る、したがって避妊薬送達デバイスは、ネコに対してはるかにやさしく、手術による卵巣摘出又は不妊としばしば関連する合併症が回避され得る。
【0120】
一実施形態において、送達デバイスは、その空洞中に、アルツハイマー病の症状を治療するための薬剤、例えば、T3D−959、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミンなど又は任意のそれらの組合せを含有する。
【0121】
一実施形態において、送達デバイスは、その空洞中に、アボモルフィン、ホルモン代替薬、プログラストレル、シプロテロン及びそれらの組合せから選択される薬剤(単数又は複数)を含む物質を含有する。
【0122】
一実施形態において、送達デバイスは、避妊薬デバイスであり、例えばリングとして成形されており、空洞はデバイス内でリング又は半リングとして形成されている。有利には、送達デバイスは、中空リングとして成形された避妊薬デバイスである。一実施形態において、中空リングは、化学物質が、例えば上で記載されたように注射針を使用して注入され得る空洞を形成する送達膜から完全になる。一実施形態では、中空リング全体が送達膜及び化学物質により形成され、その場合、送達膜は、化学物質を、乾燥で又は液体で、例えば溶解されたかもしくは部分的に溶解された形態で含む空洞を形成する。
【0123】
一実施形態において、送達デバイスは、HIV又は他の感染及び/又は妊娠を防止するための薬剤の組合せを含有するPリング(膣リング)である。有利には、Pリングは、拡大可能ではなくて、使用中その形状を保持する。一実施形態では、Pリングの空洞は、Pリングの形態の送達デバイスにより送達されるべき物質のための貯蔵器を形成するヒドロゲルを含む。
【0124】
一実施形態において、送達デバイスは、カプセル、例えば、空洞を画定する送達膜を備えるカプセルなどであり、その場合、化学物質は、空洞中に注入されているか又は注入されることになっている。一実施形態では、送達デバイスは、少なくとも約0.01cmの体積、例えば少なくとも約0.1cmの体積などを有するカプセルである。
【0125】
有利には、カプセルは、少なくとも約0.05cmの体積、例えば少なくとも約0.1cmの体積、例えば少なくとも約0.5cmの体積、例えば少なくとも約1cmの体積、例えば少なくとも約2cmの体積、例えば少なくとも約5cmの体積を有する。それによりカプセルは、注射針を使用して化学物質を装荷され得る。
【0126】
一実施形態において、カプセルは球として成形される。あるいはカプセルは、他の形状、例えば楕円又は卵形などを有してもよい。
一実施形態において、カプセルは、縦長、卵形、楕円及び/又は平坦である。用語「平坦」は、カプセルが、2つの反対側の実質的に平らな外部表面が実質的に平行な平面の形状を有することを意味する。
【0127】
有利には、カプセルは、少なくとも約5mm、例えば少なくとも約1cm、例えば少なくとも約2cmの最小の直径を有する。
一実施形態において、カプセルは、上記のように極性の液体中に分散されたリポソーム中に捕捉された薬剤を含む。そのようなカプセルは、制御された薬剤を放出するために哺乳類中に例えば埋め込まれることが可能である。極性の液体中に分散されたリポソーム中に捕捉された薬剤は、予め選択された間隔で又は必要なときに置き換えられ得る。薬剤は、例えば、患者が放出を触発することができる痛み止めであることもある。
【0128】
一実施形態において、薬剤はリバスチグミンであり(商品名エクセロン(Exelon)で販売されている)、それは、アルツハイマータイプの軽度から中程度の認知症及びパーキンソン病に起因する認知症の症状を治療するための副交感神経作用剤又はコリン作動剤である。薬剤は、経口的に又は経皮パッチを介して投与され得る。後者の形態は、典型的には吐き気及び嘔吐を含む副作用の発生率を減少させる。薬剤は、尿を通して排除され、薬剤と薬剤との相互作用は比較的少ないように思われる。
【0129】
一実施形態において、カプセルは、廃水処理又は燃料電池における使用に対して適合される。
本発明は、1種又は複数の化学化合物を含む化学物質を送達するのに適切な送達デバイスにも関し、送達デバイスは、化学物質を含む閉じた空洞を備え、空洞は、最内部壁の表面によって画定され、内部壁の表面の少なくとも一区分は送達膜の内部表面を構成し、送達膜は、ホストポリマーとゲストポリマーとを含む相互侵入型ポリマーネットワーク基板を含み、ゲストポリマーは、ホストポリマーに相互侵入して、ホストポリマーはホストポリマー内に実質的に連続した経路を形成する。
【0130】
好適には、送達デバイスは、上で記載された通りであり、その中で化学物質が閉じた空洞中に含有される。
用語「含む(comprises)/含む(comprising)」は、本明細書で使用される場合、開かれた用語と解釈されるべきであり、すなわち、特定して述べられた特徴(単数又は複数)、例えば、要素(単数又は複数)、ユニット(単数又は複数)、整数(単数又は複数)、工程(単数又は複数)、成分(単数又は複数)及びそれらの組合せ(単数又は複数)の存在を明示すると受け取られるべきであるが、1つ又は複数の他の述べられた特徴の存在又は追加を除外しない。
【0131】
範囲及び好適な範囲を含む本発明の全ての特徴は、そのような特徴を組み合わせない特定の理由がない限り、本発明の範囲内の種々のやり方で組み合わされることが可能である。
【0132】
本発明は、好適な実施形態と関連付けて、さらに図面を参照して、下により詳細に説明される。
(実施例1)
フォーリーカテーテル中におけるメチレンブルーの拡散
目的:実験は、泌尿器フォーリーカテーテルの留置バルーンを通るメチレンブルーの拡散率を定性的及び定量的に測定するために、及び本発明及び先行技術カテーテルの実施形態によるカテーテルについて拡散係数Dを計算するために設計された。
【0133】
材料及び方法:2本のカテーテルがバクチガード(Bactiguard)から得られた。カテーテルの1本はバルーンを取り外して、シリコーンをホストポリマーとして及びヒドロゲルをゲストポリマーとするIPNで置き換えることにより処理され、ヒドロゲルの含有率は24%であった(IPNカテーテルと呼ばれる)。他方のカテーテルは処理されなかった(先行技術カテーテルと呼ばれる)。IPNカテーテル及び先行技術カテーテルは、グリコール水溶液で膨張させられてどのような洩れも検査された。それらを濯いで清浄化した後、それらは、各々10mlの10mg/mLメチレンブルー水溶液で満たされて、各カテーテルは、部分的に(図2における先端(16)、排液のための孔(26)、バルーン(18)及びシャフトの2/3(12)を含む)1Lの蒸留水中に200rpm、周囲温度で攪拌しながら沈められた。体積は実験中一定に保たれた。1Lの周囲の水中のメチレンブルー濃度は、テルモサイエンティフィク(Thermo Scientific)のエボリューション(Evolution)220UV−vis分光光度計を664nmで適用することにより周期的に測定された。
【0134】
結果:実験は、メチレンブルーがIPNカテーテル上のバルーン材料を通して移動し、周囲の液体を青く変えたことを示した。実験の期間(24日)にわたって、先行技術カテーテルの周囲の液体ではメチレンブルーを検出することが可能でなかった。このことは、メチレンブルーは先行技術のバルーンを通して拡散することができないが、IPN処理(本発明)が拡散を可能にすることを強く示す。
【0135】
図1は、IPNカテーテル及びブラインドの先行技術カテーテル(ブラインド試料)のバルーンを通って拡散する経日的質量(mg)の図である。
ブラインド試料は、溶媒中への拡散を示さなかったが、それに対してIPNカテーテルは、メチレンブルーが溶媒中で検出され得る前に3日の遅延相を有した。
【0136】
IPNカテーテル及びブラインド試料中におけるメチレンブルーの拡散係数Dは、方程式(1)により見積もられ得る。
【0137】
【数1】
式中、Qは、経過時間tに面積Aを通過したメチレンブルー(浸透する成分)の合計量である。Xはバルーンの厚さであり、Δcは、バルーンの外部表面と内部表面の間の濃度における差である。
【0138】
Qは、遅延相が終わった後、すなわち、図1における3日目から14日目までのIPNについての線形回帰を決定することにより得られ得る。線形回帰は方程式(2)により与えられる。
【0139】
m=0.061・t−0.1236 (2)
Qは、線形回帰の傾き、すなわち1日当たり0.061mgである。
バルーンが膨張されたときに、バルーンの厚さXを測定することは可能でない。しかしながら、バルーンが膨張されたときにバルーン材料の体積が変化しないと仮定することにより、Xは見積もられ得る。膨張条件で、バルーンの形状は、球形のシェルによって近似されてもよく、非膨張(解放)条件でバルーンの形状は、中空円筒で近似されてもよい。バルーン材料の体積は、解放条件から計算されることが可能であり、次に膨張条件にあるバルーンの厚さを計算するために使用されることが可能である。
【0140】
中空円筒の体積Vhcは、方程式(3)により与えられる。
【0141】
【数2】
式中、h(2.50cm)は円筒の高さであり、r(0.365cm)及びr(0.315cm)はそれぞれ外部及び内部の半径である。これは、バルーン材料の全体積Vhc=0.2670cmを生ずる。
【0142】
hc=2.50cm・π・((0.365cm)−(0.315cm))=0.2670cm (4)
シャフトとバルーンの間の空洞は膨張液体で満たされているので、バルーン材料は、球形シェルの形状をとると予想される。しかしながら、バルーン材料の体積は、それでもVss=Vhc=0.2670cmと予想される。球形シェルの体積Vssは、方程式(5)により与えられる。
【0143】
【数3】
膨張した状態におけるバルーン材料の厚さXは、方程式(6)により与えられる。
【0144】
X=r−r (6)
は、1.25cmと計算され得る。内部の半径rは、方程式(5)でrを抜き出すことにより計算され得る。これは方程式(7)により与えられる。
【0145】
【数4】
ここで、Xは、方程式6から計算され得る。これは方程式(8)により与えられる。
【0146】
X=1.25cm−1.2362cm=0.0138cm (8)
ここで、本発明者らは、方程式(1)における分子中のパラメーターのための値を有し、本発明者らは、分母のための値を見出す必要がある。
【0147】
Δcは、バルーン材料の外部表面と内部表面の間の濃度差である。メチレンブルーの初期濃度は10mg/mlであり、シャフトとバルーン材料の間の空洞は、10mlで満たされているので、空洞中には100mgのメチレンブルーがある。図1で見られるように、約1mgのメチレンブルーが20日の期間にわたってバルーン材料を通して移動されている。これは1%にすぎない。それ故、内部表面における濃度は、実験の間中を通して10mg/mlであると仮定しても差し支えない。カテーテルの外側で一定の混合があるので、濃度は、均一に分布していると仮定されることが可能である。再び、1L=1000mlの水中に1mgのメチレンブルーは、0.001mg/ml≒0mg/mlである。それ故Δcは実験の間中約10mg/mlである。
【0148】
Aは、膨張条件におけるバルーン材料の表面積である。半径r=1.25cmで球の面積は方程式(9)により与えられる。
A=4・π・r=4・π・(1.25cm)=19.63cm (9)
ここで、本発明者らは、方程式(1)を挿入することにより、バルーン材料を通るメチレンブルーの拡散係数を見積もることができる。これは方程式(10)により与えられる。
【0149】
【数5】
先行技術のカテーテルの周囲の液体で少しのメチレンブルーも実験中を通して検出することが可能でなかったので、拡散係数はD=0cm/sである。
【0150】
結論:メチレンブルーは、空洞からIPNカテーテル上のバルーン材料を通って溶媒中に拡散されるが、先行技術カテーテルでは拡散は観察されなかった。IPNカテーテルの送達膜について拡散係数は、4.95・10−11cm/sであると計算された。
【0151】
図2に示されたバルーンカテーテルは、フォーリータイプのものであり、近接端部14及び遠方端部16を有するカテーテル本体12を備える。カテーテルは、バルーン18、膨張管腔20、排液管腔22、及びアダプター24も含む。
【0152】
バルーン18は、患者に挿入するためにしぼまされている。バルーン18は遠方端部16近くに配置されている。膨張管腔20は、カテーテル本体12内で近接端部14からバルーン18まで伸びて、バルーン18を膨張させたりしぼませたりするために、バルーン18と流体が通じている。
【0153】
カテーテルの排液管腔22は、近接端部14から遠方端部16に伸びている。遠方端部16は、排液管腔22と流体が通じる開口部26を含み、患者の膀胱からの尿の排液を容易にする。
【0154】
示された実施形態で、バルーン18は送達膜であり、それは、例えば、上で論じられたように、送達膜を通して送達されるための化学物質を含む流体で膨張されることが可能である。
【0155】
図3は、本発明のバルーンカテーテルを使用する別の実施形態の模式図である。
図3に示されたバルーンカテーテルは、近接端部及びプローブ4の付いた遠方端部を有するカテーテル本体12を備える。カテーテルは、送達膜を構成するバルーン壁を通して送達されるべき化学物質を含む流体で拡大されたバルーン8も含む。カテーテルは、さらに膨張管腔2、排液管腔1も備える。本体の切り出された一区分は、膨張管腔2及び排液管腔1が本体に沿って伸びることを例示する。
【0156】
図3に例示されたように、バルーンカテーテルは、患者によって使用される。
プローブ4は、有利には、上で記載されたように、例えば、光学的バイオマーカーが付いたプローブである。
【0157】
膨張管腔は、例えば、液体で満たされたときに導波管として機能するように構成されている。読み出しのために、レーザー3が、ビームを膨張管腔を経由して伝送するように配置されている。プローブ4は、チャネル(膨張管腔)2に供給される光ビームの少なくとも一部がプローブ4に達するような位置に置かれ、その結果、反射又は散乱された光は光学的リーダー9により検出されることが可能である。読み出されたスペクトルは、スペクトル9aで例示されるように得られることが可能である。それにより、チャネルは検出のための光ビームの通路を形成する。
【0158】
図4に示されたヒト女性生殖系は、子宮31、輸卵管32、卵巣33及び子宮頸部34を備える。子宮頸部の下部34aは、膣35中に通じて、Pリング36aは子宮頸部の下部34aを取り巻く膣に取り付けられている。参考図36bに取り付け前のPリングを例示した。
【0159】
図5は、図4の図面に対応するヒト女性生殖系の模式的側面図である。Pリングは非常に柔軟であり、手によって容易に曲げられることが例示されている。
図6に示されたカプセルは、送達膜を構成し、流体41中に化学物質41aを含む空洞を形成するカプセル壁40を備える。示された実施形態では、カプセルの一区分が例示の目的で切り出されている。代替の実施形態では、カプセル壁40によりカプセル化された空洞全体が乾燥形態の化学物質で満たされている。
【0160】
図13のカプセルは、送達膜を構成し化学物質を含む空洞を形成するカプセル壁80を備える。化学物質は、リポソーム82中に捕捉された薬剤81を、金ナノ粒子83及び1種又は複数の発光ユニット84、例えば量子ドット(単数又は複数)又はマイクロ発光ダイオード(単数又は複数)などと一緒に含む。
【0161】
リポソームのうちの1つが拡大図で例示されており、ここでリポソーム82は、極性端部86が内向き及び外向きの脂質二重層85を含むことが見られる。
薬剤81、81aは、好適にはリバスチグミンである。
【0162】
発光ユニット84は、有利には、例えば上で記載されたように、外部衝撃により触発され得る。発光ユニット84が発光すると、光は金粒子83によって吸収されて、金粒子83の温度が上昇すると予想される。リポソームがある温度に達すると、それらは破裂したリポソーム81aで示されるように破裂して、薬剤がリポソームから放出されると予想される。放出された薬剤は、今や送達膜80の膜を越えて薬剤のための標的地点に、例えば脳中に埋め込まれていれば、露出された脳組織に自由に移動することができる。リバスチグミンは、脳組織に所望の放出プロファイルで放出され得る。リポソームの量が減少されたか又はもはや残されていないときには、カプセル88内に物質は、注射針を使用して回収されて、新鮮な物質で置き換えられることが可能である。
【0163】
図7aに示されたシリコーンのホストポリマーは、液体窒素(T=約−196℃)で冷却されて、クライオSEM像をとる直前に窒素から取り出されたPDMSシリコーンポリマーである。PDMSの形態/構造は、シリコーンのガラス転移温度(Tg=−125℃)未満の温度を有する液体窒素中に試料を入れることにより凍結されている。ホストポリマーは、ストランド形のフィラメント51aのネットワーク構造を有し、多数のストランド内経路52aを備えることが見られる。ストランド形のフィラメントは実質的に平坦である。
【0164】
図7bには、同じホストポリマーが、ストランド形のフィラメント51bのネットワーク及びストランド内経路52bについて例示されている。
図8aは、ホストポリマー内に実質的に連続した経路を形成する多数のビーズ63aを備える構造の、やはり液体窒素(T≒−196℃)中の相互侵入型でゲストポリマーを含む同じシリコーンホストポリマーを示す。ゲストポリマーは、COを高密度のガス状態で溶媒として使用して、ホストポリマー中に装荷された。ゲストポリマーの多数のビーズ63aがストランド形のフィラメント61aに沿って配列されて、実質的に連続した経路をホストポリマー内に形成していることが見られる。ストランド内経路62aは、部分的に満たされているだけであることが見られる。これは、非常に柔軟で軟質の最終IPM送達膜を作製することに効果を有すると考えられる。
【0165】
ゲストポリマーは、ホストポリマーに対して親和性を有することが見られる。
図8bは、図8aのシリコーンホストポリマーを相互侵入型ゲストポリマーと共に例示し、ゲストポリマーのビーズ63bがストランド形のフィラメント61bに沿って配列されて実質的に連続した経路をホストポリマー内に形成していること、及びストランド内経路62bが部分的に満たされているだけであることがより明確に見られる。
【0166】
図9aには、室温で水により膨潤した図8a及び図8bのシリコーンホスト/ゲストポリマーIPN。ストランド形のフィラメント71aは、膨潤したビーズ73aで殆ど完全に覆われており、それによりサイズが増大している。SEM像では、ストランド内経路72aが僅かに見られるだけである。図9bにおける対応する例示では、ゲストポリマービーズ73bが膨潤していることが見られる。例示の目的で、膨潤したゲストポリマービーズが、図9aの現実のクライオSEM像よりも小さく膨潤した状態で例示されている。しかしながら、膨潤したゲストポリマービーズは、ストランド形のフィラメント71bの間のストランド内経路72bの場所をより多く占めていることが見られる。
【0167】
図10では、図7b、図8b及び図9bの例示が並べて示されており、ホスト単独が、いかにシリコーンホスト/ゲストポリマーIPNと異なるか、及びシリコーンホスト/ゲストポリマーIPNが水で膨潤した場合のさらなる変化が見られる。
【0168】
図11は、室温におけるPDMSシリコーンポリマーのSEM写真を示す。ストランド形のフィラメントのネットワーク及びストランド内経路は可視でなく、それは温度がシリコーンのガラス転移温度(Tg=−125℃)よりはるかに高いからである。
【0169】
図12には、図9aの乾燥シリコーンホスト/ゲストポリマーIPNの室温におけるSEM像が示されており、表面が多数のビーズ様の構造を含む構造のように見えることがわかる。ゲストポリマー(ヒドロゲル)は、Tgが100℃であり、室温で固体である。それ故ヒドロゲルは、固体ビーズとして形状をとる。ホストポリマー(シリコーン)は、Tgが−125℃であり、それ故、室温で液体として挙動して、固体ヒドロゲルビーズを包埋する。
【0170】
実施形態が詳細に記載され且つ示されたが、本発明はこれらに限定されず、他の方法でも以下の特許請求の範囲で画定される対象の事柄の範囲内に包含され得る。特に、他の実施形態が利用されることは可能であり、構造的及び機能的改変が本発明の範囲から逸脱することなく為され得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13