(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のモールドボディの一部分は、前記第1のモールドボディの一部分と重なっており、前記第1のモールドボディ及び前記第2のモールドボディはそれぞれ、前記欠損歯牙構造の第1部分を覆い囲む、請求項2に記載のカスタム器具。
【発明を実施するための形態】
【0016】
従来の歯科修復技術は、多くの場合に反復的な工程を含み、医師の技能及び経験に与るところが大きいが、本開示は、カスタムのモールドの利用によって、従来の歯科修復技術を用いて概ね可能なものよりも正確かつ迅速な患者の口腔内での歯科修復物の形成を容易にし得る技術を含む。
【0017】
開示する技術は、口腔内スキャナ又は従来の印象若しくは模型のスキャニングによって患者の3次元歯列を取り込み、スキャンデータを生成することを含む。歯科修復物用のカスタム器具は、患者の3次元(3D)歯列に基づくモールドを含み得る。本開示の技術は、従来の歯科修復技術と比較して時間的及び技能的要件が低い高品質の歯科修復を容易にし得る。
【0018】
図1〜
図4は、患者の口腔内で2つの隣接する歯牙102a、102b(集合的に、「歯牙102」)の歯科修復物を形成するためのカスタム器具10を示す。特に、
図1は、カスタム器具10の構成要素を示し、その一方で、
図2は、カスタム器具10の構成要素、及び患者の口腔の一部分を示す。
図3は、歯科修復を容易にするために患者の口腔内で組み立てられるカスタム器具10の構成要素を示す。
図4は、患者の口腔内でカスタマイズされた嵌め合いを提供する表面が見えている状態の、カスタム器具10の構成要素を示す。カスタム器具10は、2つの隣接する歯牙の歯科修復を容易にするように構成されているが、カスタム器具10は単なる一例であり、カスタム器具10に関して記載される手法は、1本の歯牙(
図14のカスタム器具410など)又は2本を超える歯牙の補修を容易にするカスタム器具に容易に適用できる。
【0019】
カスタム器具10は、一体式モールドボディ構成要素11を含み、一体式モールドボディ構成要素11は、隣接歯間部分16A、16B(集合的に「隣接歯間部分16」)を有する第1のモールドボディ12A及び第2のモールドボディ12B(集合的に「モールドボディ12」)を含む。隣接歯間部分16は、歯牙102の隣接歯間表面に対応する。他のカスタム器具は、1本の歯牙又は2本を超える歯牙の補修を容易にするための、1つのみのモールドボディ又は2つを超えるモールドボディを含んでもよい。加えて、1つより多いモールドボディを有するカスタム器具は、例えば、
図7〜
図9に関して記載するように、複数のモールドボディ構成要素を含んでもよい。
【0020】
モールドボディ12はそれぞれ、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。
図2に示すように、モールドボディ12aは、歯牙102aとのカスタマイズされた嵌め合いを提供し、モールドボディ12bは、歯牙102bとのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。特に、モールドボディ12aの部分14aは、歯牙102aとのカスタマイズされた嵌め合いを提供し、モールドボディ12bの部分14bは、歯牙102bとのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。加えて、モールドボディ12aの隣接歯間部分16aは歯牙102aの隣接歯間表面に対応し、また、歯牙102aとのカスタマイズされた嵌め合いを提供し、モールドボディ12bの隣接歯間部分16bは歯牙102bの隣接歯間表面に対応し、また、歯牙102bとのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。隣接歯間部分16はそれぞれ、カスタム器具210が、隣接歯間部分16a、16bに対応する歯間腔内のその構成要素内にいかなる継目も含まないという点で、一体構造のものである。例えば、隣接歯間部分16はそれぞれ、修復物を受け入れる歯牙102と隣接する歯牙との間の歯間腔内の全体に延びてもよい。
【0021】
モールドボディ構成要素11は、歯牙101とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面15aと、歯牙103とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面15bと、を更に含む。カスタマイズされた表面15a、15bは更に、モールドボディ12を患者の口腔内の所定の位置に固定及び位置合わせし、歯牙102の精密なカスタマイズされた歯科修復を容易にしてもよい。モールドボディ構成要素11は更に、患者の歯肉110と位置合わせしてもよい。
【0022】
任意選択的に、モールドボディ12は更に、カスタマイズされた歯肉面を含め、歯科修復用の隔離マトリックスに相当する特徴を提供するように構成されていてもよい。このように、モールドボディ12は、歯肉下又は隠れた歯間腔内に延びている特徴を含んでもよい。これら延長部のデータは、解剖学的平均値、又はX線、超音波、MRI又は他の手段によって取得した患者の3Dデータに基づき得る。器具は、患者の歯列の様々な実際の幾何学的形状に対して緊密な封鎖が生じる普通より小さいサイズの嵌め合いをできるようにデザインすることのできるエラストマー材料を組み込み得る。用いられる材料はまた、修復されている歯牙構造から水、唾液、血液、歯肉溝滲出液、及び他の流体を離すために親水性が異なってもよい。マイクロ流体チャネル、バキュームラインアタッチメント及びバイトブロックも同様に組み込むことができる。
【0023】
モールドボディ12のカスタマイズされた嵌め合いは、歯科修復材料の最中、血液、歯肉溝滲出液、又は唾液から歯牙102を隔離する機能を更に果たしてもよい。例えば、モールドボディ12の一部分は歯牙101、102、103の表面及び歯肉110と嵌合して血液及び唾液などの体液からモールドキャビティを保護してもよい。加えて、モールドボディ12は、患者の口腔内にモールドボディ構成要素11を挿入時、歯肉110を強制的に後退させる及び/又は歯牙101、102、103を分離する機能を更に果たしてもよい。例えば、モールドボディ12の隣接歯間部分16は、隣接する歯牙を強制的に分離する機能を果たしてもよい。このように、カスタム器具10は患者の口腔の3次元モデルに基づいてもよいが、カスタム器具10の種々の特徴部は、修復処置の最中、歯肉110及び/又は歯牙101、102、103の位置を一時的に変更するように選択してもよい。
【0024】
モールドボディ12を用いた歯科修復材料の成形後、モールドボディ12の隣接歯間部分16は歯間腔内に延びていることから、歯間腔内の歯科修復材料による隆起した継目又はバリの発生は、歯間腔内のモールド構成要素間に継目があるモールドと比べて限定されるはずである。隣接歯間部分16内から材料を除去することは困難な場合があるため、カスタム器具10の構成により、歯間腔内のモールド構成要素間に継目があるモールドと比べて歯科修復物成形技法を簡略化し、向上させてもよい。更に、隣接歯間部分16をモールドボディ構成要素11に組み込むことで、構成要素の精密なアライメントの維持を確保しつつ、迅速かつ容易な配置を可能にする。これにより従来の複数部品マトリックスシステムに比べて歯科修復を簡略化してもよい。
【0025】
カスタム器具10は任意の支持体構成要素19を更に含む。支持体構成要素19は、第1の支持体20a及び第2の支持体20b(集合的に「支持体20」)を含む。第1の支持体20a及び第2の支持体20bは、スナップ嵌合接続により、モールドボディ12と係合可能であるとともに、モールドボディ12に支持を提供する。例えば、支持体20は、モールドキャビティのいかなる部分も提供しなくてよく、その代わり、モールドボディ12を含むモールドボディ構成要素11を所定の位置に固定するのを単に補助してもよい。支持体20は、モールドボディ12の対応するスナップ嵌合要素13と嵌合するスナップ嵌合要素21を含む。
【0026】
モールドボディ構成要素11及び支持体構成要素19は両方とも、患者の歯牙及び患者の歯肉110と位置合わせする表面を含んでもよい。例えば、上述のように、モールドボディ12aは、歯牙101及び歯牙102の両方と位置合わせする特徴を含んでもよく、その一方、モールドボディ12bは、歯牙102の両方及び歯牙103と位置合わせする特徴を含んでもよい。同様に、支持体20aは、歯牙101及び歯牙102の両方と位置合わせする特徴を含んでもよく、その一方、支持体20bは、歯牙102の両方及び歯牙103と位置合わせする特徴を含んでもよい。支持体構成要素19は、歯牙101とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面25aと、歯牙103とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面25bと、を更に含む。カスタマイズされた表面25a、25bは更に、モールドボディ12を患者の口腔内の所定の位置に固定及び位置合わせし、歯牙102の精密なカスタマイズされた歯科修復を容易にしてもよい。支持体構成要素19は、患者の歯肉110と更に位置合わせしてもよい。このように、モールドボディ12及び支持体20は、歯牙101、102、103の対応する表面及び患者の歯肉110と嵌合する複数のカスタマイズされた表面を提供してもよい。モールドボディ構成要素11と支持体構成要素19との組み合わせにより、モールドボディ12を歯牙102と正確に位置合わせして歯牙102の歯科修復を容易にするための、患者の口腔内における確実な嵌合を提供する。
【0027】
支持体20はモールドキャビティのいずれの部分も形成しないものとして記載されているが、他の例では、支持体20は、モールドボディ12と組み合わせることで1つ以上のモールドキャビティを形成するように容易に修正してもよい。こうした例では、修正された支持体20もまた、モールドボディとみなされるべきである。
【0028】
カスタム器具10は、咬合側部分17及びプレス22を更に含む。咬合側部分17は、歯牙102の咬合面に対応するカスタマイズされた咬合面18a、18b(集合的に「咬合面18」)を提供する。本明細書で使用する場合、「咬合面」という用語は、臼歯、及び前歯の切端面(例えば、切縁)を含む任意の歯牙の咀嚼面を意味し得る。このように、本明細書で使用する場合、咬合面という用語は、任意の特定の歯牙(単数)又は歯牙(複数)を示すものではない。咬合側部分17は、咬合面18に隣接するモールドキャビティに歯科修復材料を送達するための注入ポート26a、26b(集合的に「ポート26」)を含む。
【0029】
咬合側部分17はポート26を含み、ポート26は、咬合面18に隣接するモールドキャビティへの歯科修復材料の注入を受け入れるように構成されている。咬合面18に隣接するモールドキャビティに歯科修復材料を注入後、プラグ24a、24b(集合的に「プラグ24」)がポート26内にそれぞれ配置されるように、プレス22が配置されてもよい。プラグ24は、修復された歯牙102の咬合面に対応する画定された形状を提供するプラグ先端面27a、27b(集合的に「面27」)を更に含む。一部の例では、プラグ24は、咬合側部分17に対してプレス22を誤って位置合わせすることを防止するために、異なる形状(正方形、円形)を有してもよい。咬合側部分17は更に、充填ポート26を通じて材料が注入される際、及びプラグ24がそれぞれポート26を埋めるようにプレス22が配置される際、空気及び余分な歯科材料をモールドキャビティから排出することを可能にするためのベント穴(図示せず)を更に含んでもよいを含む。
【0030】
カスタム器具10は、歯牙102と組み合わせることでモールドボディ12の2つの異なるモールドキャビティを形成する。モールドボディ12のモールドキャビティは歯牙102の欠損歯牙構造を覆い囲む。モールドボディ構成要素11を歯牙102上に配置することにより、歯科修復材料がモールドキャビティ内に配置され、窩洞104a、104b(集合的に「窩洞104」)の欠損歯牙構造の形態を取ってもよい。特に、モールドボディ12aは、歯牙102aと組み合わせることで、歯牙102aの欠損歯牙構造の第1部分を覆い囲む第1のモールドキャビティを形成するように構成されている。同様に、モールドボディ12bは、歯牙102bと組み合わせることで、歯牙102bの欠損歯牙構造の第1部分を覆い囲む第2のモールドキャビティを形成するように構成されている。
【0031】
歯牙102の補修は、歯牙102と位置合わせするようにモールドボディ12を配置した後、モールドキャビティに歯科修復材料を充填することによって行われる。任意選択的に、歯牙102と位置合わせするようにモールドボディ12を配置する前に、歯牙及び/又はモールドキャビティに充填材料を適用してもよい。こうした例では、モールドボディを着座させるプロセスにより修復材料を所望の形状に形作る。欠損歯牙構造は、隣接歯間歯牙構造、咬合側歯牙構造、頬面側歯牙構造及び/又は舌側歯牙構造のいずれかの組み合わせを含む、歯牙102のいずれかの部分を含んでもよい。モールドボディ12の内部表面はそれぞれ、対応する歯牙102の少なくとも1つの外部表面と対応するモールドキャビティの一部分を含む。少なくとも外部表面は、対応する歯牙102の頬面側面、舌側面、隣接歯間面及び/又は咬合面を含んでもよい。一部の例では、モールドキャビティは、対応する歯牙102の頬面側面、舌側面、隣接歯間面及び/又は咬合面の歯科ベニア修復を容易にしてもよい。
【0032】
一部の例では、モールドボディ12のモールドキャビティは、歯牙102の欠損歯牙構造の全体を覆い囲んでもよい。他の例では、例えば、
図6Bに示すように、モールドキャビティモールドボディ12の充填後、更なる歯科修復工程が行われてもよいように、モールドボディ12のモールドキャビティは歯牙102の欠損歯牙構造の全体より少ない部分を覆い囲んでもよい。
【0033】
咬合側部分17は、歯牙102の修復される咬合面に対応する咬合面18を含む。咬合面18がモールドキャビティの表面の一部分を成す例では、モールドボディ12に加え、咬合側部分17が別のモールドボディとなる。一部の例では、モールドボディ12のモールドキャビティは、咬合側部分17の咬合面18によって及び/又はプラグ24のプラグ先端面27によって更に画定されてもよい。つまり、モールドボディ12と、咬合側部分17と、プレス22とを組み合わせることで、例えば
図3によって示されるように、各歯牙102に対する単一のモールドキャビティを画定してもよい。こうした例では、咬合側部分17は、単一のモールドキャビティを形成するために、モールドボディ構成要素11及び支持体19上において摺動可能であってもよい。
【0034】
他の例では、
図5B、
図6A、及び
図6Bに最も良く示されるように、モールドボディ12を歯牙102のみと組み合わせることで、モールドボディ12と関連付けられたモールドキャビティを形成してもよい。
図6Bに示すように、窩洞104内の歯科修復材料106a、106b(集合的に「歯科修復材料106」)は、欠損歯牙材料の一部分のみを補修する。
【0035】
図5C及び
図6Cに示すように、窩洞104内に歯科修復材料106を充填後、歯科修復材料106を含む部分的に補修された歯牙102上に咬合側部分17及びプレス22を配置し、各歯牙102のための第2のモールドキャビティを形成してもよく、第2のモールドキャビティには、その後、歯科修復材料107a、107b(集合的に「歯科修復材料107」)が充填される。咬合側部分17及びプレス22は、それぞれ咬合面18及びプラグ先端面27の手法モールドキャビティを画定するため、モールドボディに相当する。
【0036】
このように、モールドボディ構成要素11は歯科修復材料106の最初の反復(
図5B及び
図6Bに示されるように)を提供してもよい一方、咬合側部分17及びプレス22は、歯科修復材料107の2番目の反復(
図5C及び
図6Cに示されるように)を提供するためのモールドボディとして機能する。第1のモールドキャビティ内の歯科修復材料と第2のモールドキャビティ内の歯科修復材料とを組み合わせることで、欠損構造全体を提供する。咬合側部分17及びプレス22のモールドキャビティは、歯牙102、咬合側部分17の咬合面18、及びプラグ24のプラグ先端面27によってのみならず、歯科修復材料106によっても画定されてよい。
【0037】
カスタム器具10は、マルチチャネルスキャナなど口腔内3Dスキャンによるスキャンデータから生成され得る患者の歯牙及び口腔のデジタルモデルに基づき形成されてもよく、あるいは、修復工程は、歯牙が整えられる前に得られるスキャンデータを用いることにより短縮されてもよい。1つの特定の例では、カスタム器具10は、既存の歯牙及び修復後の所望の歯牙のデジタルモデルに基づくソリッドモデリングソフトウェアなど、CADソフトウェアを使用してデジタル設計してもよい。異なる例では、スキャンデータはここ12か月以内など近時に取得してもよく、又はそれ以前、例えば、1年以上、5年以上、又は更には、10年以上前に取得してもよい。こうした古いスキャンデータは経時的な歯牙の摩耗を示すものであってもよく、そのような歯牙の摩耗を補修するための修復を容易にしてもよい。経時的な複数のスキャンによるスキャンデータはまた、歯牙の摩耗を検出され、適切な修復を容易にするために使用されてもよい。
【0038】
カスタム器具10は、歯牙102(例として、隣接する第一及び第二大臼歯を意味してもよい)及び隣在歯牙101、103の一部分に被せて嵌めるようにデザインされた。続いて、歯牙101、102、103の歯牙構造、並びに充填ポート26及び任意選択的なベント用ポートをモールドブロックからデジタル的に減じてもよい。あるいは、ソフトウェア上で歯牙構造の反転像を反転させて、モールドブロックを画定してもよい。充填ポート26は、歯牙のうち整える過程で最終的に取り除かれる領域に対応する咬合側区分の領域に、例えば歯牙102のモールドキャビティに隣接して配置されてもよい。充填ポート26は、充填時の歯科修復材料の注入を可能にするため、市販の歯科修復材料コンピュールの先端を受け入れるような大きさにしてもよい。ベントポートは充填ポートより直径を小さくしてもよく、適切なベント、窩洞の完全な充填を確実とするように及び/又は充填プロセスの進行の視覚的表示を提供するように戦略的に配置してもよい。
【0039】
デジタルモデル内において、モールドブロック構成は、3つのセクション(モールドボディ構成要素11、支持体構成要素19、及び咬合側部分17)にセグメント化され、幾何学的干渉のない、来たるべき歯牙への器具構成要素の組み付けを容易にしてもよい。あるいは、例えば
図7〜
図9に関して記載するように、モールドボディ構成要素11、支持体構成要素19、及び咬合側部分17のそれぞれが2つ以上の構成要素に分割されるように歯牙102に対するモールドの一部分が分離され得るように、更なる区分が設けられてもよい。デジタルモデル内において、モールドボディ構成要素11、支持体構成要素19、咬合側部分17及び/又はプレス22に加えてハンドル特徴部29が含まれ、器具10を使用する歯科修復の最中の、止血鉗子又はピンセットによるこの部分の把持を容易にしてもよい。
【0040】
デジタルモデル内において、咬合側部分17は、舌側及び頬面側(頬側)に、モールドボディ構成要素11及び支持体構成要素19の精密なアライメントを提供するためのタブ又はスライダを含んでもよい。加えて、プラグ先端面27a、27bが歯牙102の修復物の所望の咬合面にあってもよい、又はそれよりわずかに咬合側にあってもよいように、プレス22は、歯牙102の咬合側区分と嵌合することはもとより、充填ポート26に栓をするようにデザインされてもよい。
【0041】
CADソフトウェア上の構成要素は、3次元ポイントメッシュファイル又は他のフォーマットに変換して、3Dプリンタ、CNCフライス、CAD/CAMフライスプロセス又は別の方法による作製を容易にしてもよい。組み付けを容易にするため、方向決めマーク(例えば、各器具構成要素の遠心側端部にある着色マーク)が器具構成要素に加えられてもよい。作製には、任意に、硬化(例えばUVオーブンで)、例えばアルコール溶液による洗浄、及び/又は種々の構成要素の組み付け、歯牙修復物を形成するモールド表面の研磨、修復用歯科材料を注入する最中に修復範囲の視認性を高めるための透明アクリルなどによるコーティングなど、他の工程を含んでもよい。加えて、修復用歯科材料と接触することが予想される器具構成要素の表面は、任意に、離型剤層(例えば薄い石油ゼリー層)で被覆することができる。
【0042】
図5A〜
図5Cは、カスタム器具10を使用して、患者の口腔内で歯牙102の歯科修復物を形成する工程を示す。同様に、
図6A〜
図6Cは、カスタム器具10を使用して歯牙102の歯科修復物を形成するステップの断面図である。
【0043】
図5Aは、歯牙101、102及び103、並びに歯肉110を含む患者の口腔の一部分を示す。歯牙102aは、歯牙102aの歯冠に窩洞104aを含み、歯牙102bは歯牙102bの歯冠に窩洞104bを含む。図示されるように、窩洞104は、器具10を用いた歯科修復が容易となるよう損傷した歯質を除去するため、病的な又はそうでなければ望ましくない歯牙構造の除去、例えば、ドリル切削又は他の整える工程によって、歯科修復のために以前に整えられたう蝕であった可能性がある。一部の例において、う蝕物質の形状はカスタム器具10のデザインの助けとなり得るため、歯牙102からう蝕物質を除去する前に患者の口腔の3D画像を撮影してもよい。
【0044】
カスタム器具10を使用した歯牙102の例示的な修復方法を、以下のとおり記載する。
図5B及び
図6Aに示すように、モールドボディ12を含むモールドボディ構成要素11は、隣接歯間部分16が歯牙102と歯牙103との間に延びるように、歯牙102上の所定の位置に配置されている。支持構成要素19もまた、歯牙102上の所定の位置に配置され、モールドボディ構成要素11にスナップ嵌合される。組み立て後のモールドボディ構成要素11と支持構成要素19は、患者の口腔内において、カスタマイズされた、確実な配置を提供する。種々の例では、カスタム器具10の構成に応じて、モールドボディ構成要素11は歯牙102の舌側又は頬面側に配置されてもよく、支持構成要素19は歯牙102の反対側にある。
【0045】
図6Bに最も良く示されるように、歯科修復材料106は、歯牙102とモールドボディ12とによって形成されたモールドキャビティ内に配置される。歯牙の整えられた部分は歯科修復材料の推奨最大硬化深さを超える深さで整えられてもよいこと、又は歯科医が修復物の内側部分を外側部分とは異なるような色調とすることを望むことから、歯科修復材料の基層を整えられた部分の深部に任意選択的に積層し、例えば、XL 3000硬化ライトで歯科修復材料を光硬化させることができる。モールドボディ構成要素11及び咬合側部分17、並びに任意選択的に、支持構成要素19及びプレス22を含む、モールドキャビティを形成する器具10の構成要素は、光硬化を容易にするために透明であってもよい。こうした例では、歯科修復材料106は歯科修復材料の1つより多い層に相当する。
【0046】
いずれにしても、歯牙102とモールドボディ12とによって形成されたモールドキャビティ内における歯科修復材料106の形成後、モールドボディ構成要素11及び支持構成要素19は患者の口腔から取り出される。その後、
図5C及び
図6Cによって示されるように、別のモールドボディ、咬合側部分17が歯牙102及び歯科修復材料106上に配置され、各歯牙102のための第2のモールドキャビティを形成する。第2のモールドキャビティは第1のモールドキャビティに重なり、歯科修復材料106、咬合側部分17の咬合面18、プラグ24のプラグ先端面27、及び歯牙102の未補修部分の表面により境界が設けられる。咬合側部分17の表面は、歯牙101、102、103の表面、及び歯科修復材料106の表面に対応してもよい。このように、咬合側部分17の表面は、モールドボディ12のモールドキャビティの表面によって画定される歯科修復材料106の部分と直接位置合わせするように構成されてもよい。
【0047】
その後、
図6Cに示されるように、歯科修復材料107がポート26を通じてモールドキャビティに追加される。後の修復の仕上げの際にバリ又は隆起した継目を容易に除去できるように、歯科修復材料106と歯科修復材料107との間のモールド線は歯間腔の外側にあってもよい。咬合側部分17が透明な例では咬合側部分17を通して、又は他の例では咬合側部分17の充填ポート26及び/若しくは任意のベントポートを通して充填プロセスを視覚的に監視しながら、コンピュール先端により充填ポート26を通じて歯科修復材料を注入することによって、最後の歯科修復材料築盛分を所望の解剖学的構造へと形成してもよい。充填後、取り外し可能プレス22を咬合側部分17に嵌め合わせた。咬合側部分17及び取り外し可能プレス22を所定位置に置いたまま、歯牙102両方の最後の歯科修復材料築盛分を器具10を介して光硬化させてもよい。
【0048】
硬化後、咬合側部分17が患者の口腔から取り出され、咬合側部分17の咬合面18によって提供される歯牙102の咬合面上に適切に形成された接触部、及びモールドボディ12の隣接歯間部分16によって提供される適切に画定された隣接歯間表面を含む、形作られた修復物を提供してもよい。咬合側部分17の除去後、はみ出した(余分な)修復用歯科材料を例えば歯科用スケーラで除去してもよい。モールドボディ12の隣接歯間部分16は歯間腔内に延びることから、歯間腔内の歯科修復材料による隆起した継目又はバリの発生は、歯間腔内のモールド構成要素間に継目があるモールドと比べて限定されるはずである。隣接歯間部分16内から材料を除去することは困難な場合があるため、カスタム器具10の構成により、歯間腔内のモールド構成要素間に継目があるモールドと比べて歯科修復物成形技法を簡略化し、向上させてもよい。
【0049】
図7〜
図9は、歯牙102の歯科修復物を形成するための別のカスタム器具210を示す。カスタム器具210は、モールドボディ構成要素211A、211B(集合的に「モールドボディ構成要素211」)がモールドボディ構成要素11の代わりに用いられること以外は、カスタム器具10に実質的に類似している。カスタム器具210の要素にカスタム器具10と同じ数字の参照番号が使用される場合、これら要素は互いに実質的に類似している。簡略化のため、カスタム器具210に関しては、こうした要素については限定的に記載する、又は詳細には記載しない。
【0050】
モールドボディ構成要素211Aは、第1のモールドボディ12Aと、歯牙101とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する、カスタマイズされた表面15aと、ディボット213と、を含む。同様に、モールドボディ構成要素211Bは、第2のモールドボディ12Bと、歯牙103とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するカスタマイズされた表面15bと、モールドボディ構成要素211Aのディボット213と位置合わせし、患者の口腔内におけるモールドボディ構成要素211の嵌合を容易にするように構成された突起221と、を含む。モールドボディ構成要素211は、その嵌合を容易にし、患者の口腔内における適切な位置決めモールドボディ12を提供するための更なる要素を含んでもよい。
【0051】
カスタム器具10に関して記載したように、モールドボディ12の隣接歯間部分16は歯牙102の隣接歯間表面に対応する。他のカスタム器具は、1本の歯牙又は2本を超える歯牙の補修を容易にするための、1つのみのモールドボディ又は2つを超えるモールドボディを含んでもよい。加えて、1つより多いモールドボディを有するカスタム器具は、例えば、
図7〜
図9に関して記載するように、複数のモールドボディ構成要素を含んでもよい。
【0052】
モールドボディ12はそれぞれ、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。
図2に示すように、モールドボディ12aは、歯牙102aとのカスタマイズされた嵌め合いを提供し、モールドボディ12bは、歯牙102bとのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。特に、モールドボディ12aの部分14aは、歯牙102aとのカスタマイズされた嵌め合いを提供し、モールドボディ12bの部分14bは、歯牙102bとのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。加えて、モールドボディ12aの隣接歯間部分16aは歯牙102aの隣接歯間表面に対応し、また、歯牙102aとのカスタマイズされた嵌め合いを提供し、モールドボディ12bの隣接歯間部分16bは、歯牙102bの隣接歯間表面に対応し、また、歯牙102bとのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。隣接歯間部分16はそれぞれ、カスタム器具210が、隣接歯間部分16a、16bに対応する歯間腔内のその構成要素内にいかなる継目も含まないという点で、一体構造のものである。例えば、隣接歯間部分16はそれぞれ、修復物を受け入れる歯牙102と隣接する歯牙との間の歯間腔内の全体に延びてもよい。
【0053】
モールドボディ構成要素211は、歯牙101とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面15aと、歯牙103とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面15bと、を更に含む。カスタマイズされた表面15a、15bは更に、モールドボディ12を患者の口腔内の所定の位置に固定及び位置合わせし、歯牙102の精密なカスタマイズされた歯科修復を容易にしてもよい。モールドボディ構成要素211は、患者の歯肉110と更に位置合わせしてもよい。
【0054】
このように、カスタム器具210はカスタム器具10と機能的に類似している。しかしながら、隣接歯間部分16を含むモールドボディ12の分離により、特にカスタム器具が2本を超える歯牙に対するモールドキャビティを含む例において、患者の口腔内におけるより簡単な位置決めを容易にしてもよい。例えば、一部の例では、歯間腔内における隣接歯間部分16の位置決めは困難であることが判明している場合がある。モールドボディ構成要素211内のモールドボディ12を分離することにより、医師は、隣接歯間部分16を有する各モールドボディ12を、患者の歯間腔内に嵌合するよう独立的に操作してもよい。したがって、一部の患者の口腔幾何学的形状においては、カスタム器具210のモールドボディ構成要素211は、カスタム器具10のモールドボディ構成要素11に比べ、患者の口腔に配置し、そこから取り除くことがより容易であってもよい。更に、一連の自己位置合わせモールドボディにより全歯列弓が修復できるまで、次のモールドボディを互いに位置合わせするというこの概念を更なる反復へと拡げてもよい。
【0055】
図10は、患者の口腔内で歯科修復物を形成するための例示的技術を示すフローチャートである。まず、医師が、モールドボディ12、咬合側部分17、任意選択的に支持体構成要素19などのモールドを、患者の歯牙の一部分上に配置する(302)。歯牙は、欠損歯牙構造を含む、又はう蝕除去プロセスにおいて通常行われるように、欠損歯牙構造の作成のために整えられている、のいずれかである。モールドは、歯牙と組み合わせることで、歯牙の欠損歯牙構造を覆い囲むモールドキャビティを形成する。次に、医師がモールドキャビティ内に歯科修復材料を注入する(304)。医師はモールドキャビティ内で歯科修復材料を硬化させて歯牙を再形成し、これには、化学線を照射して歯科修復材料を硬化させることが含まれてもよい(306)。医師が患者の歯牙からモールドを取り外すと、患者の歯牙上に、モールドキャビティによって画定された形状の歯科修復物が残る(308)。任意選択的に、医師は咬合側部分17などの更なるモールドボディによりプロセスを繰り返し、欠損歯牙材料を反復的に補修してもよい。
【0056】
図11は、診療所344と製造施設348が、患者342用のカスタム器具10の製造プロセス全体を通じて情報を伝達する、例示的なコンピュータ環境340を示すブロック図である。まず、診療所344の歯科医が任意の適切な画像化技術を使用して患者342の歯科構造の1つ以上の画像を生成し、デジタル歯科構造データ346(例えば、患者342の歯構造、及び任意選択的に、歯肉110などの口腔組織のデジタル表現)を生成する。例えば、医師は、デジタル走査され得るX線画像を生成してもよい。あるいは、医師は、患者の歯構造のデジタル画像を、例えば、従来のコンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)、レーザ走査、口腔内走査、歯科印象のCTスキャン、印象から注入された歯科用模型の走査、超音波計測、磁気共鳴イメージング(magnetic resonance imaging、MRI)、又は3Dデータ取得の任意の他の適切な方法を使用して取り込んでもよい。他の実施形態では、デジタル画像は、Brontes Technologies,Inc.(Lexington、MA)によって開発され、参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第2007/084727号(Boerjesら)に記載されているアクティブ波面サンプリング(active wavefront sampling)を用いる口腔内スキャナなどの手持式口腔内スキャナを使用して提供してもよい。また、他の口腔内スキャナ又は口腔内接触プローブを使用することもできる。別の選択肢として、患者の歯の陰印象を走査することによってデジタル構造データ346を提供してもよい。更に別の選択肢として、患者の歯の陽の物理的モデルを画像化することにより、又は患者の歯のモデルに対し接触プローブを使用することにより、デジタル構造データ346を提供してもよい。スキャニングのために使用される模型は、例えば、アルギネート又はポリビニルシロキサン(PVS)などのような適切な印象材から患者の歯列の印象をキャスティングし、キャスティング材料(例えば、歯科石膏又はエポキシ樹脂など)を印象の中へ注ぎ、キャスティング材料を硬化させることによって作製され得る。上記のものを含む任意の好適な走査技法を用いてモデルを走査してもよい。他の可能な走査方法は、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0031791号(Cinaderら)に記載されている。
【0057】
歯の露出面を走査してデジタル画像を提供することに加え、歯列の隠れた特徴部、例えば、患者の歯根、及び患者の顎骨を画像化することが可能である。いくつかの実施形態では、デジタル歯牙構造データは、これら特徴部のいくつかの3D画像を用意し、続いて、それらをともに「縫い合わせる」ことによって形成される。これらの異なる画像は、同じ画像化技術を使用して提供される必要はない。例えば、CTスキャンで提供される歯根のデジタル画像が、口内可視光線スキャナで提供される歯冠のデジタル画像と一体化されてもよい。2D歯科画像の3D歯科画像とのスケーリング及びレジストレーションについては、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第6,845,175号(Kopelmanら)及び同じく参照により本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0029068号(Baduraら)に記載されている。参照により本明細書中に組み込まれる発行済みの米国特許第7,027,642号(Imgrundら)及び同じく参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第7,234,937号(Sachdevaら)は、種々の3D源から提供されたデジタル画像を一体化する技術の使用について記載している。したがって、用語「画像化」は、これが本明細書において使用される際、視覚的に明らかな構造の、通常の写真画像化に限定されず、視界から隠れた歯科構造の画像化をも含む。歯科構造としては、歯列弓の1つ又は複数の歯の歯冠及び/若しくは歯根、歯肉、歯周靭帯、歯槽骨、皮質骨、インプラント、人工歯冠、ブリッジ、ベニア、義歯、歯科装具、又は治療前、治療中若しくは治療後に歯列の一部とみなされ得る任意の構造物の任意の一部分が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0058】
デジタル歯牙構造データ346を生成するために、コンピュータは、画像化システムからの未加工データを、使用可能なデジタルモデルに変換しなければならない。例えば、コンピュータが受け取る歯の形状を示す未加工データにおいて、未加工データは、多くの場合、3D空間内の点群にすぎない。通常、この点群を表面に構成し、1つ又は複数の歯、歯肉組織及び他の周囲口腔構造を含む患者の歯列の3Dオブジェクトモデルを作成する。このデータが歯科診断及び治療において有用となるために、コンピュータは歯列表面を「セグメント化」し、個々の歯牙を表す1つ又は複数の個別の移動可能な3D歯牙オブジェクトモデルを生成してもよい。コンピュータはこれら歯牙モデルを歯肉から別個のオブジェクトへと更に分離してもよい。セグメント化によって、使用者は、歯群の配列を一群の個々のオブジェクトとして特性評価し、操作することが可能となる。
【0059】
デジタル歯科構造データ346の生成後、診療所344はデジタル歯科構造データ346をデータベースの患者記録内に保存してもよい。診療所344は、例えば、複数の患者記録を有するローカルデータベースを更新してもよい。あるいは、診療所344はネットワーク350を通じて中央データベース(任意選択的に製造施設348内の)を遠隔的に更新してもよい。デジタル歯科構造データ346を保存後、診療所344はデジタル歯科構造データ346を製造施設348に電子的に伝達する。あるいは、製造施設348はデジタル歯科構造データ346を中央データベースから取り出してもよい。
【0060】
診療所344は、また、医師の診断と患者342の治療計画とに関する全般的な情報を伝える治療データ347を製造施設348に転送してもよい。いくつかの例では、治療データ347はより具体的であってもよい。例えば、デジタル歯科構造データ346は患者342の歯科構造のデジタル表現であってもよく、診療所344の医師は、デジタル歯科構造データ346を製造施設348に転送する前に、デジタル表現を精査し、患者342の個々の歯牙に関するベニア、歯冠、又は充填物の場所を含む所望の補修を示してもよい。医師及び製造施設はまた、適切な治療計画を得るために反復プロセスに従事してもよい。こうした連係は、例えば、3M Oral Careにより提供されるTreatment Management Portalによるデジタル通信によって容易にしてもよい。製造施設348はオフサイトに位置していても、診療所344に位置していてもよい。
【0061】
例えば、臨床的環境において、治療計画及びデジタル設計を、ローカルにインストールされたソフトウェアを使用することで臨床医又は助手が完全に実施できるように、それぞれの診療所344は製造施設348のための独自の設備を含んでもよい。製造は3Dプリンタの使用によって(又は付加製造の他の方法によって)診療所内でも行ってよい。他の例では、遠隔製造施設が患者の3次元スキャンデータを処理し、患者の口腔の3次元スキャンデータに基づき、歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具のデザインのためのデジタルモデルを生成してもよい。遠隔製造施設は、その後、歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具のデザインのデジタルモデルを診療所344に戻してもよい。
【0062】
3Dプリンタは、カスタム器具の複雑な特徴又は患者342の歯科構造の物理的表現の製造を付加印刷によって可能にする。3Dプリンタは、患者342の本来の歯科構造及び患者342の所望の歯科構造の反復デジタル設計を使用し、患者342の所望の歯科構造を作成するようにカスタマイズされた複数のカスタム器具及び/又はカスタム器具パターンを作成してもよい。製造には、未硬化樹脂を除去し、支持構造を除去する、又は種々の部品を組み立てる後処理を含んでもよく、後処理は、また、臨床的環境において必要な場合があるとともに、また、行われ得る。あるいは、製造はCAD/CAMフライスなどの除去製造によって実施され得る。
【0063】
製造施設348では、患者342の歯牙を修復するために、患者342のデジタル歯科構造データ346を用いてカスタム器具10を組み立てる。その後、製造施設348はカスタム器具10を診療所344に送る。
【0064】
図12は、本開示の一例による、診療所344で実施されるプロセス360を示すフローチャートである。まず、医師が診療所344において、患者342から患者の個人情報及び他の情報を収集し、患者記録を作成する(362)。記載されているように、患者記録は診療所344内に配置されていてもよく、任意選択的に、製造施設348内のデータベースとデータを共有するように構成されていてもよい。あるいは、患者記録は、診療所344にネットワーク350を通じてリモートアクセス可能な製造施設348のデータベース内に、又は製造施設348と診療所344との両方によりリモートアクセス可能なデータベース内に配置されていてもよい。
【0065】
次に、任意の適切な技術を用いて患者342の歯科構造のデジタルデータ346を生成し(364)、これにより、仮想歯科構造を作成してもよい。デジタルデータ346は歯科構造の2次元(2D)画像及び/又は3次元(3D)表示からなってもよい。
【0066】
一例では、歯科構造の3D表示は、Imaging Sciences International,LLC(1910 N Penn Road、Hatfield、PA)から入手可能なi−CAT 3D歯科画像化デバイスなどのコーンビームコンピュータ断層撮影(cone beam computerized tomography、CBCT)スキャナを用いて生成される。診療所344は、CBCTスキャナにより生成した3Dデータ346(放射線画像の形態の)を、診療所344内、又はその代わりに、製造施設348内に配置されたデータベース内に保存する。コンピューティングシステムはCBCTスキャナからのデジタルデータ346(このデータは複数のスライスの形態であってもよい)を処理し、3Dモデリング環境内で操作され得る歯牙構造のデジタル表現を計算する。
【0067】
2D放射線画像が使用される(365)場合、医師は3Dデジタルデータを更に生成(366)してもよい。3Dデータ346は、例えば、患者342の歯牙構造の物理的印象又は模型を形成し、その後、それをデジタル走査することによって生成してもよい。例えば、患者342の歯牙の物理的印象又は模型は、Laser Design,Inc.(Minneapolis、MN)から入手可能なOM−3Rスキャナなどの可視光スキャナを用いて走査してもよい。その代わりとして、医師は、咬合科の3Dデータ346を、患者342の歯牙の口腔内走査又は既存の3D歯牙データを使用することで生成してもよい。一例では、「REGISTERING PHYSICAL AND VIRTUAL TOOTH STRUCTURES WITH PEDESTALS」という名称で、2013年7月23日に発行済みの米国特許第8,491,306号に記載されている、模型又は印象からデジタル走査を形成する方法を使用してもよい。米国特許第8,491,306号はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。同じ又は異なる例において、「DENTAL DIGITAL SETUPS」という名称で、2013年12月5日に公開された米国特許出願公開第2013/0325431号に記載されているような仮想歯牙面及び仮想歯牙座標系を画定するための技術を使用してもよい。米国特許出願公開第2013/0325431号はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。いずれの場合においても、デジタルデータは3Dモデリング環境内にデジタルで位置合わせされ、歯根及び咬合面を含み得る歯構造の複合的なデジタル表現を形成する。
【0068】
一例では、歯牙の咬合面の2D放射線画像及び3Dデジタルデータは、放射線画像及び3Dデジタルスキャンの両方を生成する前に、まず、レジストレーションマーカ(例えば、位置合わせマーカ又は既知の幾何学的形状寸法を有するペデスタル)を患者342の歯牙構造に取り付けることによって位置合わせされる。その後、2D放射線画像及び3Dデジタルデータ内のレジストレーションマーカのデジタル表現は、米国特許第8,491,306号に記載されている位置合わせ技術を用いて、3Dモデリング環境内で位置合わせしてもよい。
【0069】
別の例では、歯牙構造の3Dデジタルデータは歯牙構造の2つの3Dデジタル表現を組み合わせることによって生成される。例えば、第1の3Dデジタル表現は、CBCTスキャナ(例えば、i−CAT3D歯科画像化デバイス)から取得した歯根の比較的低解像度の画像であってもよく、第2の3Dデジタル表現は、患者の歯牙の模型の印象又は可視光(例えば、レーザ)走査の産業用CTスキャンから取得した歯冠の比較的高解像の画像であってもよい。3Dデジタル表現は、3D表示をコンピュータ環境内で操作することを可能にするソフトウェアプログラム(例えば、3D Systems,Inc.(333 Three D Sustems Circle、Rock Hill、SC)から入手可能なGeomagic Studioソフトウェアを用いて位置合わせしてもよく、又はその代わりに、米国特許第8,491,306号に記載されている位置合わせ技術を使用してもよい。
【0070】
次に、3Dモデリングソフトウェアを実行するコンピュータシステムが、患者の歯牙の咬合面、及び任意選択的に歯根構造を含む歯牙構造の合成されたデジタル表現をレンダリングする。モデリングソフトウェアは、医師が3D空間内の歯牙のデジタル表現を患者の歯牙のデジタル表現に対し操作することを可能にするユーザインターフェースを提供してもよい。医師は、コンピュータシステムとの対話によって、例えば、患者342の歯牙の修復領域を選択することによって治療情報を生成する(367)。
【0071】
医師が3D環境内において診断及び治療計画に関する全般的な情報の伝達を完了したときに、コンピュータシステムは患者記録に関連付けられたデータベースを更新し、医師が指定した診断及び治療計画に関する全般的な情報を伝える治療データ347を記録する(368)。その後、治療データ347は、製造施設348がカスタム器具10などの1つ以上のカスタム器具を組み立てるために、製造施設348に中継される(370)。
【0072】
歯科診療所にいる歯科医に関して記載したが、
図12に関して記載した工程の1つ以上は、製造施設348にいるユーザなど遠隔ユーザによって実施されてもよい。例えば、歯科医は放射線画像データと患者の印象又は模型とを製造施設348に送信するのみであってもよく、製造施設348で、ユーザがコンピュータシステムと対話し、3Dモデリング環境内において治療計画を策定する。任意選択的に、3Dモデリング環境内における治療計画のデジタル表現は、その後、診療所344の歯科医に送信されてもよく、歯科医は治療計画を精査し、自身の承認を返送するか所望の変更を示すかのいずれかであってもよい。更なるオプションは、製造施設が器具のデジタル設計を作成し、このデジタル設計がその後診療所に戻され、診療所内のシステム(例えば、3Dプリンタ又はフライス)で製造されることである。
【0073】
図13は、ネットワーク350を介して製造施設348に接続されたクライアントコンピューティングデバイス380の一例を示すブロック図である。図示される例では、クライアントコンピューティングデバイス380は、モデリングソフトウェア382の動作環境を提供する。モデリングソフトウェア382は、患者342の歯牙群の3D表示をモデリングし、かつ描画するためのモデリング環境を提供する。図示される例では、モデリングソフトウェア382は、ユーザインターフェース384と、モールドキャビティモジュール386と、レンダリングエンジン388と、を含む。
【0074】
ユーザインターフェース384は、患者342の歯牙の3D表示を視覚的に表示するグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供する。加えて、ユーザインターフェース384は、診療所344(
図11)の医師389からの、例えば、キーボード及びポインティングデバイスを介した入カを受信し、例えば、補修する部分を選択するために、及び/又はカスタム器具10により提供される患者342の歯牙の外部補修済み表面を画定するモールドキャビティの表面を調整するために、モデル内の患者342の歯牙を操作するためのインターフェースを提供する。
【0075】
モデリングソフトウェア382はネットワークインターフェース381を通じて製造施設348にアクセス可能であってもよい。モデリングソフトウェア382はデータベース390と対話して、治療データ392、患者342の歯構造に関する3Dデータ394、及び患者データ396などの様々なデータにアクセスする。データベース390は、データ格納ファイル、ルックアップテーブル、又は1つ又は複数のデータベースサーバで実行されるデータベース管理システム(DBMS)を含む、様々な形態で提示されてもよい。データベース管理システムは、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)、階層型データベース管理システム(HDBMS)、多次元データベース管理システム(MDBMS)、オブジェクト指向データベース管理システム(ODBMS若しくはOODBMS)、又はオブジェクトリレーショナルデータベース管理システム(ORDBMS)であってもよい。データは、例えば、マイクロソフト社(Microsoft Corporation)製のSQLサーバなど、単一のリレーショナルデータベース内に格納されてもよい。データベース390は、クライアントコンピュータデバイス380のローカルとして示されているが、クライアントコンピューティングデバイスからリモートに位置し、公共ネットワーク又は私設ネットワーク、例えばネットワーク350を介してクライアントコンピューティングデバイスに結合してもよい。
【0076】
治療データ392は、医師389によって選択されて、3Dモデリング環境内に配置される、患者342の歯牙の診断及び又は修復情報を表す。
【0077】
患者データ396は、医師389に関連する1人以上の患者の一群、例えば、患者342を表す。例えば、患者データ396は、各患者に関する氏名、出生日、及び歯科疾病歴のような一般的な情報を特定する。
【0078】
レンダリングエンジン388は、3Dデータ394にアクセスしてレンダリングし、ユーザインターフェース384により医師389に提示される3D図を生成する。より具体的には、3Dデータ394は、3D環境内で各歯牙(任意選択的に歯根を含む)及び顎骨を表す3Dオブジェクトを定義する情報を含む。レンダリングエンジン388は各オブジェクトを加工し、3D環境内で医師389の視点に基づき、3D三角メッシュをレンダリングする。ユーザインターフェース384は、レンダリングされた3D三角メッシュを医師389に対して表示し、医師389が3D環境内で視点を変更し、オブジェクトを調節することを可能にする。
【0079】
2012年6月5日に発行済みの「PLANAR GUIDES TO VISUALLY AID DENTAL APPLIANCE PLACEMENT WITHIN A THREE−DIMENSIONAL(3D)ENVIRONMENT」という名称の米国特許第8,194,067号、及び2010年6月8日に発行済みの「USER INTERFACE HAVING CROSS SECTION CONTROL TOOL FOR DIGITAL DENTALS」という名称の米国特許第7,731,495号は、本明細書中に記載される技術とともに使用され得るユーザインターフェースを有するコンピュータシステム及び3Dモデリングソフトウェアの他の例について記載している。このそれぞれはその全体が参照により組み込まれる。
【0080】
クライアントコンピューティングデバイス380は、モデリングソフトウェア382を保存し、かつ実行するために、プロセッサ383とメモリ385とを含む。メモリ385は、任意の揮発性又は不揮発性ストレージ要素を意味してもよい。例としては、シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、電気的消去可能読み出し専用メモリ(EEPROM)及びフラッシュメモリなどのランダムアクセスメモリ(RAM)を含む。例としては、また、ハードディスク、磁気テープ、磁気又は光データストレージ媒体、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、Blu−rayディスク、及びホログラフィックデータストレージ媒体などの不揮発性ストレージを含んでもよい。
【0081】
プロセッサ383は、汎用マイクロプロセッサ、特別設計のプロセッサ、特定用途用集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ディスクリート論理回路のコレクション、又は本明細書中に記載される技術を実行することができる任意の種類の処理デバイスなどの1つ又は複数のプロセッサを意味する。一例では、メモリ385は、プロセッサ383によって実行されて、本明細書中に記載される技術を実行するプログラム命令(例えば、ソフトウェア命令)を格納してもよい。他の例では、技術はプロセッサ383の特別にプログラムされた回路によって実行してもよい。これら又は他の手法では、プロセッサ383は、本明細書中に記載される技術を実行するように構成されていてもよい。
【0082】
クライアントコンピューティングデバイス380は、患者の3D歯牙構造のデジタル表現と、任意選択的に、治療データ392及び/又は患者データ396とを製造施設348のコンピュータ370にネットワーク350を通じて送信するように構成されている。コンピュータ370は、ユーザインターフェース372を含む。ユーザインターフェース372は、歯のデジタルモデルの3D表示を視覚的に表示するGUIを提供する。加えて、ユーザインターフェース372は、患者の3D歯牙構造のデジタル表現内の患者の歯牙を操作するための、例えば、キーボード及びポインティングデバイスによる入カをユーザから受け取るためのインターフェースを提供する。
【0083】
コンピュータ370は、寸法及び形状カスタム器具を決定するように更に構成されていてもよく、カスタム器具の寸法及び形状は、1つ以上のモールドボディ及びモールドキャビティを提供するように構成されている患者の1本以上の歯牙を補修する。コンピュータ370は、カスタム器具の製造のために、カスタム器具の寸法及び形状を自動製造システム374に提供してもよい。
【0084】
クライアントコンピューティングデバイス380及びコンピュータ370は例示的なコンピュータシステムの単なる概念的な表現である。いくつかの例では、クライアントコンピューティングデバイス380及び/又はコンピュータ370に関して記載した機能を1つのコンピューティングデバイスに組み合わせてもよく、コンピュータシステム内の複数のコンピューティングデバイス間で分散させてもよい。例えば、本明細書中に記載されるカスタム器具のデジタル設計にクラウドコンピューティングを用いてもよい。一例では、歯牙構造のデジタル表現が診療所の1つのコンピュータで受信される一方で、カスタム器具の形状及び寸法はコンピュータ370などの異なるコンピュータを用いて決定される。加えて、コンピュータ370などのその異なるコンピュータは形状及び寸法の決定のために同一データをすべて受信する必要がない場合がある。形状及び寸法は、少なくとも一部、症例の完全な3D表示を受け取ることなく歴史的症例又は例示的症例の仮想モデルの分析を通じて得た知識に基づき決定してもよい。このような例では、クライアントコンピューティングデバイス380とコンピュータ370との間で送信される、又はそうでなければカスタム器具をデザインするために利用されるデータは、患者の完全なデジタル歯科モデルを示す全データセットよりも大幅に小さくてもよい。
【0085】
図14は、患者の口腔内で1本の歯牙102の歯科修復物を形成するためのカスタム器具410を示す。カスタム器具410はカスタム器具10の代替物であり、代わりとして、2つの隣接する歯牙の歯科修復を容易にするように構成されている。カスタム器具410の種々の要素はカスタム器具10のものと実質的に類似しているため、簡略化のために、カスタム器具410に関しては、こうした要素については限定的に記載する、又は詳細には記載しない。
【0086】
カスタム器具410は一体式モールドボディ構成要素411を含む。一体式モールドボディ構成要素411は、隣接歯間部分416を有する単一モールドボディ412を含む。モールドボディ412は、歯牙102とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。加えて、モールドボディ412の隣接歯間部分416は歯牙102の隣接歯間表面に対応し、また、歯牙102とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。隣接歯間部分416は、カスタム器具410が、隣接歯間部分416に対応する歯間腔内のその構成要素内にいかなる継目も含まないという点で、一体構造のものである。例えば、隣接歯間部分416は、歯牙102と隣接する歯牙103との間の歯間腔内の全体に延びてもよい。
【0087】
モールドボディ412を用いた歯科修復材料の成形後、モールドボディ412の隣接歯間部分416は歯間腔内に延びていることから、歯間腔内の歯科修復材料による隆起した継目又はバリの発生は、歯間腔内のモールド構成要素間に継目があるモールドと比べて限定されるはずである。隣接歯間部分416内から材料を除去することは困難な場合があるため、カスタム器具410の構成により、歯間腔内のモールド構成要素間に継目があるモールドと比べて歯科修復物成形技法を簡略化し、向上させてもよい。更に、モールドボディ構成要素411に隣接歯間部分16を組み込むことで、構成要素の精密なアライメントの維持を確保しつつ、迅速かつ容易な配置を可能にする。これにより従来の複数部品マトリックスシステムに比べて歯科修復を簡略化してもよい。
【0088】
カスタム器具410は任意の支持体構成要素419を更に含む。支持体構成要素419は支持体420を含む。支持体420は、スナップ嵌合接続により、モールドボディ412と係合可能であるとともに、モールドボディ412に支持を提供する。例えば、支持体420は、モールドキャビティのいかなる部分も提供しなくてよく、その代わり、モールドボディ412を含むモールドボディ構成要素411を所定の位置に固定するのを単に補助してもよい。支持体420は、モールドボディ412の対応するスナップ嵌合要素413と嵌合するスナップ嵌合要素421を含む。支持体420はモールドキャビティのいずれの部分も形成しないものとして記載されているが、他の例では、支持体420は、モールドボディ412と組み合わせることで1つ以上のモールドキャビティを形成するように容易に修正してもよい。こうした例では、修正された支持体420もまた、モールドボディとみなされるべきである。
【0089】
モールドボディ構成要素411は、歯牙101とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面415aと、歯牙103とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面415bと、を含む。カスタマイズされた表面415a、415bは更に、モールドボディ412を患者の口腔内の所定の位置に固定及び位置合わせし、歯牙102の精密なカスタマイズされた歯科修復を容易にしてもよい。モールドボディ構成要素411は、患者の歯肉110と更に位置合わせしてもよい。モールドボディ構成要素411と同様に、支持体構成要素419は、患者の歯牙及び患者の歯肉110と位置合わせする表面を含んでもよい。加えて、カスタマイズされた表面415a、415bの1つ以上は、隣接する歯牙101、103の修復済み表面と位置合わせするように構成されていてもよい。例えば、歯牙101は、歯牙102の修復前、しかし、歯牙101、102、103を含むスキャンデータの収集後に修復されてもよい。こうした例では、カスタマイズされた表面415aは歯牙101の修復済み表面に合致するようにデザインされ、歯牙101の修復後の歯牙102の反復修復を容易にしてもよい。更に、歯牙103が歯牙102の後に修復され得るように、次のモールドボディを互いに位置合わせするというこの概念を更なる反復へと拡げてもよい。こうした反復修復は、スキャンデータに従い隣接する歯牙の表面と位置合わせするようにデザインされている、又は修復済み歯牙の表面と位置合わせするようにデザインされている、のいずれかである一連の自己位置合わせモールドボディにより全歯列弓が修復できるまで拡げてもよい。更に、反復修復を歯列弓に沿った順序で完了する必要はなく、その代わりに、最も大きな補修を要する歯牙を最初に修復するなど、既定の異なる順序に従いデザインしてもよい。反復補修は、その後、カスタマイズされた表面415a、415bなど、カスタマイズされた表面のデザインによって既定の順序で実施されるべきである。こうした反復補修手法は、カスタム器具10、カスタム器具210、カスタム器具410、又は他のカスタム器具のいずれかの組み合わせ若しくはバリエーションを含んでもよい。
【0090】
任意選択的に、モールドボディ412及び/又は支持本体構成要素419は更に、カスタマイズされた歯肉面を含め、歯科修復用の隔離マトリックスに相当する特徴を提供するように構成されていてもよい。このように、モールドボディ412は、歯肉下又は隠れた歯間腔内に延びている特徴部を含んでもよい。モールドボディ412のカスタマイズされた嵌め合いは、歯科修復材料の最中、血液、歯肉溝滲出液、又は唾液から歯牙102を隔離する機能を更に果たしてもよい。
【0091】
このように、モールドボディ412及び支持体420は、歯牙101、102、103の対応する表面及び患者の歯肉110と嵌合する複数のカスタマイズされた表面を提供してもよい。モールドボディ構成要素411と支持体構成要素419との組み合わせにより、モールドボディ412を歯牙102と正確に位置合わせして歯牙102の歯科修復を容易にするための、患者の口腔内における確実な嵌合を提供する。
【0092】
カスタム器具410は、咬合側部分417及びプレス422を更に含む。咬合側部分417は、歯牙102の咬合面に対応するカスタマイズされた咬合面418を提供する。咬合側部分417は、咬合面418に隣接するモールドキャビティに修復用歯科材料を供給するための注入ポート426を含む。
【0093】
咬合面418に隣接するモールドキャビティに歯科修復材料を注入後、プラグがポート426内にそれぞれ配置されるように、プレス422が配置されてもよい。咬合側部分417は、充填ポート426を通じて材料が注入される際、及びプラグ424がポート26を塞ぐようにプレス422が配置される際、空気及び余分な歯科材料をモールドキャビティから排出することを可能にするためのベント穴(図示せず)を更に含んでもよいを更に含む。
【0094】
カスタム器具410は歯牙102と組み合わせることでモールドボディ412の単一のモールドキャビティを形成し、単一のモールドキャビティは歯牙102の欠損歯牙構造全体を覆い囲む。モールドボディ構成要素411を歯牙102上に配置することにより、歯科修復材料がモールドキャビティ内に配置され、窩洞104の欠損歯牙構造の形態を取ってもよい。歯牙102の補修は、歯牙102と位置合わせするようにモールドボディ412を配置した後、モールドキャビティに歯科修復材料を充填することによって行われる。任意選択的に、歯牙102と位置合わせするようにモールドボディ412を配置する前に歯牙及び/又はモールドキャビティに充填材料を適用してもよい。こうした例では、モールドボディを着座させるプロセスにより修復材料を所望の形状に形作る。欠損歯牙構造は、隣接歯間歯牙構造、咬合側歯牙構造、頬面側歯牙構造及び/又は舌側歯牙構造のいずれかの組み合わせを含む、歯牙102のいずれの部分を含んでもよい。モールドボディ412の内部表面はそれぞれ、対応する歯牙102の少なくとも1つの外部表面と対応するモールドキャビティの一部分を含む。少なくとも外部表面は、対応する歯牙102の頬面側面、舌側面、隣接歯間面及び/又は咬合面を含んでもよい。一部の例では、モールドキャビティは、対応する歯牙102の頬面側面、舌側面、隣接歯間面及び/又は咬合面の歯科ベニア修復を容易にしてもよい。
【0095】
一部の例では、モールドボディ412のモールドキャビティは、歯牙102の欠損歯牙構造の全体を覆い囲んでもよい。他の例では、例えば、
図6Bに示すように、モールドキャビティモールドボディ412の充填後、更なる歯科修復工程が行われてもよいように、モールドボディ412のモールドキャビティは、歯牙102の欠損歯牙構造の全体より少ない部分を覆い囲んでもよい。
【0096】
様々な実施例を説明してきた。記載される例に対し、本開示の趣旨の範囲内で変更を加えてもよい。例えば、カスタム器具は、歯牙の初期幾何学的形状から、又はデジタル的に最適化された歯牙の幾何学的形状から外れて作製することができる(例えば、穴の充填によりデータ内の間隙を閉じる、歯牙ライブラリからデータを引き出してスケーリングする、仮想咬合器で試験する)。器具は既存の構造に正確に適合することができる、又は組織を選択的に移動させる若しくは位置決めするよう最適化することができる。カスタム器具は、う蝕の程度が未知である場合など、歯牙構造が除去される場所の事前情報なく形成することができる。カスタム器具は、医師が器具の適用前に歯牙構造を除去することが必要な、デジタル的に最適化された歯牙構造を生成するように形成されてもよい。器具は印刷するか、又はミリング加工することができる。器具は、あらゆる種類の3次元印刷材料(強度、可撓性、透明性、色調)で作ることができる。器具には、離型、表面仕上げ、及び光透過性を最適化するための様々な薬剤をコーティングすることができる。器具は、種々の修復材料(シェード、充填高さ、物理的特性)の充填高さを指示又は定義する特徴を含むことができる。器具の物理的特性(弾性、粗度、透明度等)は、封止性能、寸法忠実度、修復材料に付与される質感、材料の硬化の程度等のために器具全体にわたって異なり得る。器具/モールド区分は、互いに、又は標準的な構成要素(例えばマトリックスバンド)と連結することができる。器具は口腔内又は口腔外で使用することができる。修復材料は、適用によって材料を形作るように、器具のポートを通じて注入され、器具の適用前に歯牙構造及び/又は器具に適用され得る。器具は、修復材料から取り外すため、又はアンダーカットの幾何学的形状を可能にし/パーティングラインを減らすため、分解性(例えば溶剤/熱)であってもよい。器具は、圧潰性(収縮する、易破砕性等)であってもよい。患者特異的器具及び関連製品及び分量(例えば、患者の必要性に応じて及び/又は医師の選好で選択された接着剤、充填、及び研磨材料)のキットを作成することができる。歯牙上の複数の歯科修復物層の幾何学的形状を制御するため直接充填法で順次使用される一連の器具。カスタム器具の作製を容易にするため、歯科修復来診前に診断来診時点で歯科スキャンを撮ってもよい。器具はその場で製造してもよく、又は作製のためデジタルスキャンデータを遠隔地に送ってもよい。
【0097】
これらの及び他の実施例は、以下の特許請求の範囲内である。