特許第6878511号(P6878511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社の特許一覧

特許6878511熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機
<>
  • 特許6878511-熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機 図000002
  • 特許6878511-熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機 図000003
  • 特許6878511-熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機 図000004
  • 特許6878511-熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機 図000005
  • 特許6878511-熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機 図000006
  • 特許6878511-熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機 図000007
  • 特許6878511-熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機 図000008
  • 特許6878511-熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878511
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】熱交換器、空気調和装置、室内機および室外機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/18 20110101AFI20210517BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20210517BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20210517BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   F24F1/18
   F25B1/00 321A
   F25B1/00 321B
   F25B39/00 D
   F25B39/00 M
   F28F1/32 A
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-131797(P2019-131797)
(22)【出願日】2019年7月17日
(65)【公開番号】特開2021-17991(P2021-17991A)
(43)【公開日】2021年2月15日
【審査請求日】2019年7月17日
【審判番号】不服2019-17613(P2019-17613/J1)
【審判請求日】2019年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】横関 敦彦
【合議体】
【審判長】 松下 聡
【審判官】 川上 佳
【審判官】 林 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6351494(JP,B2)
【文献】 特開2015−140990(JP,A)
【文献】 特開2017−203620(JP,A)
【文献】 特開平5−346270(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/221401(WO,A1)
【文献】 特開2016−84970(JP,A)
【文献】 特開2015−121351(JP,A)
【文献】 特開2000−314573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B1/00-49/04, F28D1/00-21/00, F24F1/00-140/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の送風方向の上流側から順に第1列、第2列、および第3列の伝熱管の列を有し、各伝熱管の列に複数段の伝熱管を有し、前記伝熱管が接続されてなる複数の冷媒流路に、それぞれ冷媒を通流することで熱交換する熱交換器であって、
前記複数の冷媒流路における第1の冷媒流路、および第2の冷媒流路は、それぞれ、
当該熱交換器が凝縮器として作用する際に、前記第3列の一端部の離れた位置の2つの伝熱管のガス側流入口から冷媒が流入し、前記第3列の前記一端部と他端部とを往復しながら近づいて、前記第3列における隣接する2つの伝熱管から排出され、
該排出された冷媒が、三叉状継手によって合流して、前記第2列の一端部の1つの伝熱管へ流入し、
該第2列の一端部の1つの伝熱管へ流入した冷媒が、前記第2列における前記一端部と他端部とを往復して前記第2列における前記一端部の伝熱管から排出され、
該排出された冷媒が、該第1列の一端部における1つの伝熱管へ流入し、前記第1列の前記一端部と他端部とを往復して前記第1列における前記一端部の伝熱管の液側流出口から排出される流路を有し、
前記第1の冷媒流路の前記ガス側流入口と、前記第2の冷媒流路の前記ガス側流入口の1つとが隣り合い、
前記第1の冷媒流路の第2列の前記一端部側または前記第2の冷媒流路の第2列の前記一端部側のいずれか一方のみに、段を越えて離れた伝熱管を接続するジャンプ配管を有し、
前記第1の冷媒流路の前記液側流出口と、前記第2の冷媒流路の前記液側流出口とが隣り合い、
前記第1の冷媒流路と前記第2の冷媒流路の長さが略同一であり、
前記三叉状継手は、
当該熱交換器が蒸発器として作用する際に、前記第2列の一端部から排出された冷媒が、当該三叉状継手の分岐部分に垂直に衝突する対称な形状である
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記伝熱管の列を3列以上備えることを特徴とする、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1の冷媒流路および前記第2の冷媒流路で構成される流路対を複数備え、
一の流路対を構成する冷媒流路の前記ガス側流入口と、他の流路対を構成する冷媒流路の前記ガス側流入口の1つとが隣り合うことを特徴とする、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記伝熱管は流路を折り返す曲げ部を有し、前記第1の冷媒流路を構成する伝熱管の数と、前記第2の冷媒流路を構成する伝熱管の数との差が2以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器を備える空気調和装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器を備える室内機。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器を備える室外機。
【請求項8】
前記冷媒を減圧させる膨張弁と、前記冷媒を分岐させるデストリビュータとを含み、
前記熱交換器に含まれる伝熱管の一部が1以上のサブクーラとして構成され、
前記サブクーラは、前記膨張弁と前記デストリビュータとの間に設けられることを特徴とする、請求項7に記載の室外機。
【請求項9】
前記複数の冷媒流路のいずれかの液側流出口と、前記サブクーラとが隣り合うことを特徴とする、請求項8に記載の室外機。
【請求項10】
前記熱交換器は、上部熱交換器および下部熱交換器から構成され、
前記サブクーラは、前記上部熱交換器に設けられていることを特徴とする、請求項8または9に記載の室外機。
【請求項11】
前記上部熱交換器と接続される前記デストリビュータと、前記下部熱交換器と接続される前記デストリビュータとが、各々対向して配置されることを特徴とする、請求項10に記載の室外機。
【請求項12】
前記熱交換器に含まれる最下段の伝熱管の一部が、前記熱交換器が凝縮器として作用する際にはサブクーラとして作用し、前記熱交換器が蒸発器として作用する際にはホットパイプとして作用し、
前記ホットパイプは、前記熱交換器が蒸発器として作用する際の冷媒の進行方向に対して、前記膨張弁の上流側に配置されること特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的な熱交換が可能な熱交換器ならびにその熱交換器を備える空気調和装置、室内機および室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー性の観点から、空気調和(以下、「空気調和」を省略して「空調」と記載する場合がある)におけるAPF(Annual Performance Factor:通年エネルギー効率)の向上が求められている。そこで、効率的な空気調和を行うための熱交換器の開発がなされている。
【0003】
例えば、複数列から構成される熱交換器であって、各列の熱交換器を連通する冷媒パスの数がガスクーラの冷媒の入側から出側に向かうほどに少なくする技術が開示されている(例えば、特許文献1および特許文献2など)。特許文献1や特許文献2などによれば、各熱交換器内を流動する冷媒を熱交換に適した流速に保つことができ、効率的な熱交換を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−304380号公報
【特許文献2】特許第6351494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1および特許文献2をはじめとする従来技術では、熱交換器が凝縮器として作用した場合の液冷媒出口側部分では、隣の流路の流路途中部と接しているために、過冷却した液冷媒と、途中の二相状態の冷媒との間に温度差が生じる。したがって、流路が隣り合う箇所においてはその温度差によって、フィンを通した熱伝導による内部熱交換ロスが生じることとなる。また、特許文献1の熱交換器を蒸発器として使用する場合には、各流路途中に設けられた分岐部分の形状が非対称であるため、冷媒の二相流に偏流が生じ、熱交換の効率が低下することとなる。そのため、熱交換器の高効率化を図る更なる技術が求められていた。
【0006】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、効率的な熱交換が可能な熱交換器ならびにその熱交換器を備える空気調和装置、室内機および室外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、
所定の送風方向の上流側から順に第1列、第2列、および第3列の伝熱管の列を有し、各伝熱管の列に複数段の伝熱管を有し、前記伝熱管が接続されてなる複数の冷媒流路に、それぞれ冷媒を通流することで熱交換する熱交換器であって、
前記複数の冷媒流路における第1の冷媒流路、および第2の冷媒流路は、それぞれ、
当該熱交換器が凝縮器として作用する際に、前記第3列の一端部の離れた位置の2つの伝熱管のガス側流入口から冷媒が流入し、前記第3列の前記一端部と他端部とを往復しながら近づいて、前記第3列における隣接する2つの伝熱管から排出され、
該排出された冷媒が、三叉状継手によって合流して、前記第2列の一端部の1つの伝熱管へ流入し、
該第2列の一端部の1つの伝熱管へ流入した冷媒が、前記第2列における前記一端部と他端部とを往復して前記第2列における前記一端部の伝熱管から排出され、
該排出された冷媒が、該第1列の一端部における1つの伝熱管へ流入し、前記第1列の前記一端部と他端部とを往復して前記第1列における前記一端部の伝熱管の液側流出口から排出される流路を有し、
前記第1の冷媒流路の前記ガス側流入口と、前記第2の冷媒流路の前記ガス側流入口の1つとが隣り合い、
前記第1の冷媒流路の第2列には、離れた伝熱管を接続するジャンプ配管を有し、
前記第1の冷媒流路の前記液側流出口と、前記第2の冷媒流路の前記液側流出口とが隣り合い、
前記第1の冷媒流路と前記第2の冷媒流路の長さが略同一である
ことを特徴とする熱交換器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述したように、本発明によれば、あらゆる条件下で効率的な熱交換が可能な熱交換器ならびにその熱交換器を備える空気調和装置、室内機および室外機が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一般的な熱交換器を示す斜視図。
図2】空気調和装置における冷凍サイクルを説明する図。
図3】本実施形態の室外熱交換器における伝熱管の接続の一例を示す図。
図4】本実施形態における伝熱管の接続状態の例を示す斜視図。
図5】複数の流路対を備える室外熱交換器の構成例を示す図。
図6】サブクーラを備える室外熱交換器(上部熱交換器)の構成例を示す図。
図7】サブクーラを備える室外熱交換器(下部熱交換器)の構成例を示す図。
図8】本実施形態における室外熱交換器の構成部品の配置例を示す室外機の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、各実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜その説明を省略するものとする。
【0011】
図1は、一般的な熱交換器100を示す斜視図である。図1(A)は、複数の伝熱管101と、複数のフィン102から構成される熱交換部100’を示し、図1(B)は、熱交換部100’の伝熱管101が継手103で接続されて構成された熱交換器100を示している。
【0012】
図1(A)に示すように、熱交換器100の熱交換部100’は、x軸方向に冷媒を通過する伝熱管101を複数備えている。図1(A)には、z軸方向に等間隔で8段配置された伝熱管101の列が、y軸方向に3列並んだ構成である熱交換部100’の例を示している。以下の説明では、各伝熱管101の列を、y軸方向の手前側から奥側に向かって、「第1列目」、「第2列目」、「第3列目」として参照する。第2列目の伝熱管101は、第1列目や第3列目の伝熱管101に対して、z軸方向に伝熱管101の配置間隔の半ピッチ分ずれた、いわゆる「千鳥配列」としている。これによって、熱交換部100’を通過する空気の流れを蛇行させることができ、前列で熱交換による温度変化が少ない吸込み空気が次列の伝熱管周りに誘導されることによって、熱交換の効率化を図ることができる。
【0013】
また、フィン102は、等間隔でx軸方向に並べられており、伝熱管101と接触している。これによって、フィン102の間を通過する空気と、伝熱管101内を流れる冷媒とが熱交換することができる。
【0014】
熱交換器100は、図1(B)に示すように、図1(A)に示した熱交換部100’の伝熱管101が継手103で接続されることで構成される。また、熱交換器100は、x軸方向の奥側においても各伝熱管101が継手103で接続されている。なお、第1列目の最下段の伝熱管101は、液冷媒配管に接続され、第3列目の最上段の伝熱管101は、ガス冷媒配管に接続される。これによって、冷媒の流路が形成され、冷媒は、x軸方向に往復しながら熱交換器100の各伝熱管101を通過することができる。
【0015】
継手103は、伝熱管101と接続する接続管であって、冷媒が流れる方向を変えることができる。継手103は、用途によって種々の形状のものを選択することができ、例えば、U字形状、エルボ形状、三叉形状などを用いることができる。
【0016】
なお、以下では、便宜的に伝熱管101の両端部を区別し、熱交換器100の構造を説明するために、x軸方向に向かって手前側を、熱交換器100の「前面」と、x軸方向に向かって奥側を、熱交換器100の「背面」として、それぞれ参照する。すなわち、図1(A)、(B)において、伝熱管101の端部や継手103が見えている面を、「前面」として説明する。
【0017】
冷媒の流れる方向は、熱交換器100が蒸発器として作用するか、凝縮器として作用するかによって反転する。熱交換器100が蒸発器として作用する場合には、液体の冷媒が、液冷媒配管に接続された第1列目の最下段の伝熱管101から流入し、各伝熱管101を通って熱交換され、第3列目の最上段の伝熱管101からガス冷媒配管へと流出する。熱交換器100が凝縮器として作用する場合には、気体の冷媒が、ガス冷媒配管に接続された第3列目の最上段の伝熱管101から流入し、各伝熱管101を通って熱交換され、第1列目の最下段の伝熱管101から液冷媒配管へと流出する。
【0018】
なお、以下では、図1に示した一般的な熱交換器100の構造を基に、本発明について説明をするが、特に実施形態を限定するものではない。したがって、熱交換器100に含まれる伝熱管101の数や、配置、段数、列数などは、図1に示したものに限らず、任意であってよい。
【0019】
次に、冷凍サイクルについて説明する。図2は、空気調和装置1における冷凍サイクルを説明する図である。空気調和装置1は、室外機2と室内機3とを含んで構成される。図2に示す空気調和装置1にあっては、建物の外には室外機2が設置され、空調を行う室内には室内機3が設置される。室外機2と室内機3とは、冷媒が流れる冷媒配管4を介して接続されている。冷媒配管4には、気体状の冷媒(ガス冷媒)が流れるガス冷媒配管4Gと、液体状の冷媒(液冷媒)が流れる液冷媒配管4Lとがある。
【0020】
室外機2は、四方弁20、タンク(アキュムレータ)27、圧縮機21、ガスヘッダ22、送風ファン23、室外熱交換器200、液側分配管28、デストリビュータ24、膨張弁25、液阻止弁26、ガス阻止弁29を備える。圧縮機21は、低温・低圧状態にある気体の冷媒を圧縮し、高温・高圧状態の気体に変化させる。ガスヘッダ22は、1つの流路のガス冷媒を複数の流路に分配し、または、複数の流路のガス冷媒を1つの流路にまとめる。なお、ガスヘッダ22の分岐数は、図2に示す数に限らず、任意の数とすることができる。
【0021】
室外熱交換器200は、冷媒と室外の空気との間で熱交換を行う。なお、室外熱交換器200は、空気調和装置1の冷房運転時において、凝縮器として作用する。また、室外熱交換器200は、後述する本発明の一実施形態においては、その一部をサブクーラ201,202として用いることができる。
【0022】
送風ファン23は、外気が室外熱交換器200を通過するように送風する。液側分配管28およびデストリビュータ24は、1つの流路の液冷媒を複数の流路に分配し、または、複数の流路の液冷媒を1つの流路にまとめる。なお、液側分配管28およびデストリビュータ24の分岐数は、図2に示す数に限らず、任意の数とすることができる。膨張弁25は、冷房時には全開状態に制御されており、そのまま通過するが、暖房時には冷媒を減圧させて、蒸発圧力および、蒸発器の出口状態を制御する。液阻止弁26は、ガス阻止弁29と共に、施工時における配管や室内機部分の気密確認の際や、真空引きの際には閉鎖した状態で使用し、施工作業完了後には全開状態に操作されて、運転する際には冷媒はそのまま通過する。
【0023】
室内機3は、膨張弁31、デストリビュータ32、液側分配管35、室内熱交換器300、ガスヘッダ33、送風ファン34を備える。なお、膨張弁31、デストリビュータ32、ガスヘッダ33、送風ファン34については、室外機2で説明したものと同様であるため、説明は省略する。室内熱交換器300は、冷媒と室内の空気との間で熱交換を行う。なお、室内熱交換器300は、空気調和装置1の冷房運転時において、蒸発器として作用する。
【0024】
冷媒配管4は、室内機3と室外機2との間で冷媒の受け渡しを行う配管である。室外機2のガス阻止弁29と、室内機3のガスヘッダ33とは、ガス冷媒配管4Gで接続される。また、室外機2の液阻止弁26と、室内機3の膨張弁31とは、液冷媒配管4Lで接続される。なお、図2において冷媒配管4G,4Lに沿って示される矢線は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合における冷媒の移動方向を示している。冷媒の移動方向は、四方弁20によって反転させることができ、これによって、冷房運転と暖房運転とを切り替えることができる。
【0025】
以下に、空気調和装置1の冷凍サイクルについて、冷房運転する場合を例に説明する。なお、暖房運転は、四方弁20の切り替えにより冷媒の流れが逆転し、室内熱交換器と室外熱交換器の作用が逆転するものであるが、それ以外の動作は類似しているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0026】
圧縮機21は、低温・低圧状態にあるガス冷媒を圧縮して、高温・高圧状態にして吐出する。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四方弁20を通過し、ガスヘッダ22を介して複数の流路に分岐され、室外熱交換器200に流入する。室外熱交換器200に流入したガス冷媒は、送風ファン23より供給される外気と熱交換して凝縮し、液冷媒となる。液冷媒は、液側分配管28を通って、デストリビュータ24によって1つの流路に合流した後、膨張弁25、液阻止弁26を経由して、冷媒配管4Lを通って搬送され、室内機10に流入する。
【0027】
液冷媒は、室内機3の膨張弁31おいて減圧され、低温・低圧の気液二相冷媒となる。その後、冷媒は、デストリビュータ32および液側分配管35によって複数の流路に分配されて室内熱交換器300に流入し、送風ファン34から供給される室内の空気と熱交換される。冷媒は室内熱交換器300において熱交換されると、蒸発してガス冷媒となるともに、送風ファン13が供給する空気は冷媒の蒸発潜熱により冷却され、冷風として室内に送風される。
【0028】
熱交換されたガス冷媒は、ガスヘッダ33によって流路が合流された後、ガス冷媒配管4Gを通って搬送され、室外機2のガス阻止弁29を通して、タンク(アキュムレータ)27にて一時的に生じうる過剰な液戻りを調整した上で、圧縮機21に流入する。これらの工程を繰り返すことで、冷凍サイクルが構成され、空気調和装置1は冷房運転を行い、室内を所望の温度にすることができる。
【0029】
以下では、空気調和装置1が冷房運転をする場合を例に、本実施形態の冷媒の移動などを説明するものとする。また、以下の説明では、熱交換器100の一例として、室外熱交換器200を挙げて説明するが、実施形態を限定するものではなく、室内熱交換器300であってもよい。図3は、本実施形態の室外熱交換器200における伝熱管101の接続の一例を示す図である。図3は、室外熱交換器200の前面を投影した平面図であり、空気調和装置1が冷房運転した場合の室外熱交換器200における冷媒の移動を示している。すなわち、図3に示す室外熱交換器200は、凝縮器として作用する。
【0030】
図3に示す室外熱交換器200は、一例として、8段の伝熱管101の列が3列で構成されている。以下の説明においては、便宜的に、第n列を「Cn」、上からm段目を「Rm」として示し、第n列の上からm番目の位置にある伝熱管101を(Cn,Rm)として示すものとする。
【0031】
また、図3に示す室外熱交換器200の各伝熱管101は、継手103によって接続されている。図3において継手103は、伝熱管101を結ぶ実線および破線で表されている。実線は、室外熱交換器200の前面で伝熱管101と接続される継手103を示しており、破線は、室外熱交換器200の背面で伝熱管101と接続される継手103を示している。なお、各流路は、背面側における折り返し部が、継手103の代わりに、曲げ加工された伝熱管101によって構成されてもよい。これによって、背面側において、伝熱管101と継手103とのロウ付けを不要とすることができる。例えば、伝熱管101を背面側において曲げ部を有するように構成することで、前面側のみに継手103のロウ付け部を集中させることができ、製造時の作業工数を低減することが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態の説明における伝熱管101に対して使用する「隣り合う」なる用語は、1の伝熱管101の周囲にある伝熱管101を指すものとする。すなわち、図3において隣り合っている伝熱管101とは、同一の列の上下で隣り合っている伝熱管101のみならず、隣の列において、上下に半ピッチずれた位置にある伝熱管101をも含むものとする。例えば、(C2,R4)に隣り合う伝熱管101は、同一列の(C2,R3)、(C2,R5)以外に、C2と隣り合う列にある(C1,R3)、(C1,R4)、(C3,R3)、(C3,R4)も含まれる。
【0033】
本実施形態の室外熱交換器200は、図3に示すように、冷媒の流路が2つある。まず、第1の流路を通過する冷媒について説明する。ガスヘッダ22で分配されたガス冷媒は、(C3,R1)と(C3,R4)から流入し、x軸方向に往復しながら伝熱管101間を移動する。そして、相互に隣り合う(C3,R2)と、(C3,R3)と、(C2,R3)とが三叉状継手103Tで接続されていることから、冷媒は、(C2,R3)において1つの流路として合流する。
【0034】
(C2,R3)で合流した冷媒は、各伝熱管101を通りながら降下した後、(C2,R6)から(C2,R2)へ流れる。(C2,R6)と(C2,R2)とは、U字形状であってz軸方向が長手となっているジャンプ配管103Jによって接続することができる。このように、ジャンプ配管103Jを用いることで、同一列の離れた位置にある伝熱管101同士を接続することができる。
【0035】
その後、冷媒は、(C2,R1)、(C1,R1)へと移動し、(C1,R2)から液側分配管28に接続されてデストリビュータ24に流れる。なお、冷媒は、第1の流路を流れる過程において、熱交換部100’を通過する空気と熱交換されることで、過熱ガス状態から凝縮しながら、次第に気液二相状態の乾き度が小さくなっていき、最終的に液冷媒となって流出する。
【0036】
次に、第2の流路を通過する冷媒について説明する。ガスヘッダ22で分配されたガス冷媒は、第1の流路のガス冷媒の流入口である(C3,R4)に隣り合う(C3,R5)と、(C3,R8)から流入し、x軸方向に往復しながら伝熱管101間を移動する。そして、相互に隣り合う(C3,R6)と、(C3,R7)と、(C2,R7)とが三叉状継手103Tで接続されていることから、冷媒は、(C2,R7)において1つの流路として合流する。
【0037】
(C2,R7)で合流した冷媒は、(C2,R8)と(C1,R8)とを接続する継手103を通って、第1列目に移動する。その後、冷媒は、(C1,R8)から各伝熱管101を通りながら上昇して、(C1,R3)へと至る。そして冷媒は、第1の流路の液冷媒の流出口である(C1,R2)に隣り合う(C1,R3)から、液側分配管28と接続されてデストリビュータ24に流れる。なお、第1の流路と同様に、冷媒は、第2の流路を流れる過程において、熱交換部100’を通過する空気と熱交換されることで凝縮し、気体から液体に相変化する。
【0038】
本実施形態の各流路は、冷媒のガス流入口同士および流出口同士が隣り合っている構造となっている。すなわち、図3に示すように、第1の流路のガス冷媒流入口の1つである(C3,R4)と第2の流路のガス冷媒流入口の1つである(C3,R5)とが隣り合い、第1の流路の液冷媒流出口である(C1,R2)と第2の流路の液冷媒流出口である(C1,R3)とが隣り合っている。このような構造とすることで、ガス流入口近傍および流出口近傍における各流路間の冷媒の温度差を小さくすることができるので、フィン102を介した熱伝導による内部熱交換ロスを低減することができる。
【0039】
図3に示すような構造とすることで、少なくとも、上下に近接する伝熱管の片方は、ガス入口または液出口であることから、略同等の冷媒温度であり、フィン102を通した熱伝導ロスを最小化する効果がある。つまり、凝縮器での放熱過程のうち、ガス側および液側においては顕熱変化のため、放熱が進む過程で冷媒の温度変化が生じることから、他の流路における流入、流出口と隣接させることで、流路間の無駄な熱交換を防ぐことに繋がる。
【0040】
図3に示す第1の流路および第2の流路は、冷媒が通過する伝熱管101の数(以下、「パス数」として参照する)がいずれも12本ずつで、同一である。特に、三叉状継手103Tの上流側(ガス冷媒流入口から合流部まで)のパス数は、第1の流路および第2の流路ともに2本ずつであり、また、三叉状継手103Tの下流側(合流部から液冷媒流出口まで)のパス数は、8本ずつである。このように、第1の流路の長さと、第2の流路の長さとを略同一とすることで、各伝熱管101における熱交換量を均等化でき、冷媒分配を均一化することができるので、効率的な熱交換を行うことができる。なお、ここでいう「流路の長さが略同一」とは、各流路のパス往復数が同一であるもののみならず、パス往復数の差が1であるものをも含むものとする。
【0041】
また、図3に示す本実施形態では、第1の流路の第2列において、(C2,R2)が、三叉状継手103Tと接続される伝熱管101を挟んで2段以上離れた位置にある伝熱管101(C2,R6)と接続されている。すなわち、同一の列において、三叉状継手103Tと接続される伝熱管101を跨ぐようにして接続される伝熱管101を設けた構造となっている。これによって、第1の流路は、流路長を稼ぐことができる。このようにジャンプ部分を有する構造とすることにより、各流路の冷媒のガス流入口同士および流出口同士を隣り合うようにしつつ、それぞれの流路のパス数を同じとすることができる。
【0042】
ところで、一般的な熱交換器100を凝縮器として作用させる場合には、冷媒は、流路を進行するのに伴い、凝縮が進み、乾き度の低下とともに平均密度が増加する。冷媒の密度が増加すると、冷媒の流速が低下することとなり、伝熱管101内の熱伝達率が低下する。したがって、凝縮器としての性能が低下し、ひいては熱交換の効率低下につながる。
【0043】
一方で、図3に示すように、複数の流入口から流入したガス冷媒を三叉状継手103Tによって合流させることで、凝縮による冷媒の流速低下を抑制することができ、熱交換の効率を向上させることができる。
【0044】
図3において、三叉状継手103Tは、第3列において上下に隣り合っている2の伝熱管101と、第2列において、これらと隣り合う1の伝熱管101とを接続している。すなわち、三叉状継手103Tは、y軸に平行な線に対して線対称な形状とすることができる。このような対称形状の三叉状継手103Tを用いることで、熱交換器100を蒸発器として作用させる場合(冷媒の流れる方向が図3に示すものと逆方向で、冷媒が三叉状継手103Tによって分岐される場合)に、垂直に衝突させる構造によって、気液二相流の偏流を防止することができる。したがって、本実施形態の熱交換器100によれば、蒸発器としての性能を向上することも可能である。
【0045】
また、図3に示すように、熱交換器100を通過する空気は、第1列から第3列へと向かう方向に流れる。一方で、熱交換器100が凝縮器として作用した場合に、冷媒は、第3列から第1列へと向かう方向に流れる。したがって、熱交換器100は、凝縮器として作用する際に、空気の流入方向と冷媒流路方向とが略対向する、いわゆる対向流的な冷媒流路が構成される。このような対向流を構成する配置とすることによって、空気の入口温度と冷媒の出口温度との差が小さくなり、効率的な熱交換を行うことができる。
【0046】
また、図3に示した室外熱交換器200は、8段からなる伝熱管101の列を3列備える構成であるため、伝熱管101の数は24本であった。したがって、第1の流路のパス数と、第2の流路のパス数とを同じとすることができた。しかしながら、これは実施形態を限定するものではなく、第1の流路のパス数と、第2の流路のパス数との差を所定の数以下とする構成であってもよい。例えば、許容されるパス数の差は、熱交換器100を構成する伝熱管101の数に対する比率などから求めることとしてもよい。なお、上述したように背面側における流路の折り返し部分を継手103ではなく、伝熱管101の曲げ部で構成させた場合には、許容されるパス数の差としての所定の数は、偶数となり、最低の差は2パスとなる。
【0047】
なお、室外熱交換器200に含まれる列数が、図3に示したもの以外の数であっても、同様の構成とすることで、上記の効果を奏することができる。すなわち、列数が3以上であれば、三叉状継手103Tおよびジャンプ配管103Jを用いることで、各流路の冷媒の流入口同士および流出口同士が隣り合い、かつ、それぞれの流路のパス数を同じとすることができる。
【0048】
図4は、本実施形態における伝熱管101の接続状態の例を示す斜視図である。図4は、図3に示した室外熱交換器200の前面側を立体的に示したものである。図4に示すように、三叉状継手103Tにおいて、液冷媒側(C2側)の流路と、ガス冷媒側(C3側)の流路とが垂直に交差するように構成されることが好ましい。これによって、熱交換器100を蒸発器として作用させた際に、各流路の冷媒が三叉状継手103T部において垂直に衝突することで2つの流路に均等に気液二相流を分配させることができ、蒸発器での冷媒分配を良好にする効果がある。
【0049】
ところで図3では、一例として、液側でカウントした場合の冷媒の流路の数が2である、1つの流路対を含む熱交換器100を示したが、特に実施形態を限定するものではない。例えば、流路の数は、使用される冷媒の種類や熱交換器の寸法諸元、あるいは運転環境に応じて適宜選択して設計することができる。また、各流路のパス数は、熱交換器100を構成する伝熱管101の本数、列数、段数や熱交換器100の横幅などに応じて、その接続を選択することで、任意に設計することができる。したがって、熱交換器100は、図3に示すような流路対を複数備える構成であってもよい。図5は、複数の流路対を備える室外熱交換器200の構成例を示す図である。
【0050】
図5に示す室外熱交換器200は、第1〜第6の流路を備えて構成されており、図3に示したような流路対が3対含まれている。室外熱交換器200を図5のような構成とすることで、第1の流路の上側のガス冷媒流入口(C3,R1)と、第6の流路の下側のガス冷媒流入口(C3,R24)以外のガス冷媒流入口は、他の流路のガス冷媒流入口と隣り合わせることができる。これによって、各流路のパス数を同じにしつつ、フィン102を介した熱伝導による内部熱交換ロスを低減することができるため、熱交換の効率をさらに向上することができる。
【0051】
なお、上述した本実施形態を説明する図では、各列の伝熱管101と接触するフィン102は、列方向に連続したものとして構成された例を示しているが、これは実施形態を限定するものではない。例えば、C1、C2、C3などの列ごとに(y軸方向に)フィン102が分割された構成であってもよい。このような構成の場合には、フィン102を通じた熱伝導が列間には生じないため、熱伝導による内部熱交換ロスをさらに低減することができる。
【0052】
また、図5のように同一の流路対を複数有する構成とすることにより、図2に示したデストリビュータ24と室外熱交換器200との間の液側分配管28による分配調整をほぼ等分配になるように、設定することができる。これによって、熱交換器100が蒸発器および凝縮器として作用する場合の双方において、冷媒循環量や作動圧がさまざまに変化した場合においても、ほぼ均等に冷媒を分配することが可能となり、常に高効率な運転を行うことができる。
【0053】
ここで、液側分配管による分配調整とは、流路ごとの分配管の内径とその長さに差を設けることによる流路抵抗による調整のことであり、特に熱交換器100が蒸発器として作用する条件に合わせて最適化された場合では、凝縮器として作用する場合に高密度の液冷媒として流動するため液分配管内での流速が低下し、その調整手段としての抵抗が小さくなる。したがって、従来のように各流路のパス数が異なっている場合には、流路ごとに抵抗を変化させる必要があり、このような場合には、凝縮器として運転される場合など、運転条件によっては冷媒分配が悪化しやすい条件が発生する。そのため、流路ごとの長さを均等化できる本実施例の熱交換器では、あらゆる運転条件下でも良好な冷媒分配を実現することにつながり、高効率な熱交換が得られる。
【0054】
また、図5のような構成とすることで、熱交換器100が大型化して、流路対が増加しても、様々な運転条件下において流路対毎の冷媒分配が均等にできることから、効率的な熱交換を行うことができるため、大容量の空気調和装置1にも用いることができる。特に、大容量の空気調和装置1における室外熱交換器200にあっては、冷房運転時と暖房運転時との性能を両立して向上するために、その一部をサブクーラとして構成することとしてもよい。以下、サブクーラを備える室外熱交換器について、図6および図7を以て説明する。
【0055】
図6および図7は、サブクーラ201,202を備える室外熱交換器200の構成例を示す図である。図6は、上部熱交換器200aを、図7は、下部熱交換器200bをそれぞれ示しており、図6の上部熱交換器200aの下に図7の下部熱交換器200bを配置することで、1つの室外熱交換器200を構成する。また、図6および図7における矢線は、室外熱交換器200が凝縮器として作用する際の冷媒の移動方向を示すものである。なお、図6および図7で示される熱交換器も、上述した図3などの熱交換器と同様の構成である。すなわち、図6および図7に示す熱交換器も、ジャンプ配管103Jによって、各流路の冷媒のガス流入口同士および流出口同士を隣り合うようにしつつ、それぞれの流路のパス数が略同一となる構成であり、かつ、対向流的な冷媒流路が構成されている。
【0056】
なお、熱交換器200は、上部熱交換器200aと下部熱交換器200bとの間で、フィン102が分割された構成であってもよい。ここで、上部熱交換器200aと下部熱交換器200bを分割するにより、製造装置の制約上、上限の高さ以上の寸法の熱交換器200を必要とする場合においても、熱交換器を提供することができる。また、図6および図7において点線で示す領域に含まれる伝熱管101は、サブクーラ201,202として機能する。
【0057】
熱交換器200は、一例として、図6に示すように、膨張弁25と上部デストリビュータ24aとの間に、上部熱交換器200aの一部の伝熱管101を通過するように流路が構成されることで、サブクーラ201aが設けられている。また、図6に示すように、膨張弁25と下部デストリビュータ24bとの間に、上部熱交換器200aの一部の伝熱管101を通過するように流路が構成されることで、サブクーラ201bが設けられている。さらに、図7に示すように、膨張弁25と液阻止弁26との間に、下部熱交換器200bの一部の伝熱管101を通過するように流路が構成されることで、サブクーラ202が設けられている。なお、図6および図7に示されるデストリビュータ24は、それぞれ9つの流路を合流または分岐させるものであるが、特に実施形態を限定するものではなく、これ以外の数の流路を合流等させるものであってもよいが、凝縮器として作用する場合および、蒸発器として作用する場合の双方の性能が最適になるように流路数が選択される。つまり、伝熱管内の流速によって熱伝達率および圧力損失が変化するため、凝縮器及び蒸発器の双方に最適な性能が得られる流路数に設定される。なお、サブクーラ201、サブクーラ202の流路数およびパス数においても最適な値が存在するが特に、サブクーラ201の流路数及びパス数は、熱交換器200が蒸発器として作用する際に、サブクーラ201内での圧力損失が大きくなると、その一部が放熱器として作用してしまうことから、そのような無駄な放熱が生じないようにその内部の圧力損失を考慮して設定されている。
【0058】
ここで、熱交換器200が凝縮器として作用する場合における、図6および図7で構成される熱交換器200の冷媒の流れについて説明する。
【0059】
流路1〜9を通過する冷媒は、図6に示すように、ガス冷媒として、第3列目にある流路1〜9のガス側流入口から上部熱交換器200aに流入し、熱交換しながら進行して、第1列目の液側流出口から液冷媒として流出する。その後、冷媒は、上部デストリビュータ24aに入り、各流路が合流する。さらにその後、2つの流路に分岐して、上部熱交換器200aの第1列目に設けられたサブクーラ201aを経由した後、膨張弁25に入る。
【0060】
一方で、流路10〜18を通過する冷媒は、図7に示すように、ガス冷媒として、第3列目にある流路10〜18のガス側流入口から下部熱交換器200bに流入し、熱交換しながら進行して、第1列目の液側流出口から液冷媒として流出する。その後、冷媒は、図6の下部デストリビュータ24bに入り、各流路が合流する。さらにその後、2つの流路に分岐して、上部熱交換器200aの第1列目に設けられたサブクーラ201b経由した後、膨張弁25に入る。
【0061】
サブクーラ201aを出た冷媒と、サブクーラ201bを出た冷媒は、膨張弁25の手前で流路が合流する。その後、膨張弁25を通過した冷媒は、図7のサブクーラ202を通過した後、液阻止弁26を通り、室内機3に接続される液冷媒配管4Lに至る。
【0062】
なお、図6および図7に示すように、内部熱交換ロスを低減する観点から、サブクーラを第1列目に設けて、熱交換器200が凝縮器として作用する場合における各流路の液冷媒流出口と、サブクーラとを隣り合わせることが好ましい。特に、熱交換器200が凝縮器として作用する場合における各流路の液冷媒流出口と、サブクーラの冷媒流入口とを隣り合わせることで、各流路を流れる冷媒の温度差が小さくなり、内部熱交換ロスをより低減することができる。図6に示す例では、流路7および流路8の液冷媒流出口と、サブクーラ201aの冷媒流入口とが隣り合っている。また、流路9の液冷媒流出口と、サブクーラ201bの冷媒流入口の1つとが隣り合っている。さらに、図7に示す例では、流路18の液冷媒流出口と、サブクーラ202の液冷媒流入口の1つとが隣り合っている。このような構成とすることで、図3などで説明したように、フィン102を介した熱伝導による内部熱交換ロスをより低減することができる。
【0063】
また、図7に示すように、下部熱交換器200bの下段にサブクーラ202を設けることで、暖房運転時においてホットパイプとして機能させることができ、室外熱交換器200下部の凍結を防止することができる。ホットパイプとは、暖房運転時に相対的に高い温度にて冷媒が流れる部位であり、サブクーラ202をホットパイプとして機能させることで、外気温度が比較的低い条件下で、蒸発器に霜が付着するような場合においても、ホットパイプの部位が氷点下以上の温度に保たれることにより、霜の付着を防止することができる。さらに、下部熱交換器200bの最下部が接しているドレンパン部分に氷が堆積しないようにすることで、熱交換器100の伝熱管101の損傷や送風ファンの破損を防止することができる。
【0064】
また、サブクーラ202をホットパイプとして作動させるために、膨張弁25よりも暖房運転時における冷媒の進行方向の上流側にサブクーラ202を配置することで、室内機3から流れてくる室内温度に近い、比較的高い温度の液冷媒を流通させて、上述の凍結防止を実現することができる。
【0065】
なお、サブクーラ202がホットパイプとして作用するのは、室外熱交換器20が蒸発器として作用する場合、すなわち、暖房運転時である。したがって、室外熱交換器20が凝縮器として作用する場合、すなわち、冷房運転時には、サブクーラ202は、他のサブクーラ201と同様に、通常のサブクーラとして作用する。
【0066】
一方で、サブクーラ202は暖房運転時にホットパイプで作動した際には、外気よりも高い温度によって作動するため、冷媒の熱が外気に放熱されてしまい、暖房能力の一部が損なわれる。したがって、図6に示されるように気流の流入方向に対して、最上流の列に配置されることが望ましい。その理由としては、2列目、3列目に配置される伝熱管101は、暖房時に蒸発器として作用することから、上述したようなホットパイプにおける外気への放熱量の多くを回収することができるためである。したがって、上記のような構成とすることで、暖房時の凍結防止を図りつつ、性能低下を最小限に抑えることが可能となる。気流の流入方向に対して最上流の列に配置されることは、サブクーラ202が液冷媒の過冷却に用いられる冷房運転時に場合においても有効である。その理由は、送風されている部位のうち、空気温度が最も低い室外空気と直接熱交換できるためであり、凝縮器として最大の効率を実現できるからである。同様にサブクーラ201が冷房運転時の液の過冷却に使用される場合にも図6に示されるように気流の流入方向に対して最上流に配置されることも性能向上に有効であり、暖房運転時はサブクーラ201が膨張弁25の下流に配置されているため、基本的には吸込み空気温度以下にて使用されて放熱器(ホットパイプ)としては作用しないが、サイクルの変動によって一時的に放熱器となった場合においても、サブクーラ202の動作と同様に、2列目、3列目の蒸発器にてその放熱した熱量が回収されることによって、暖房能力の低下を抑える効果がある。
【0067】
一方で、冷房時には室外熱交換器200は凝縮器として作用するが、その出口は密度の高い液冷媒の状態に変化しており、これにより、冷媒の流速が伝熱管101内にて低下することで、管内の熱伝達率が低下する傾向にある。しかしながら、上記のサブクーラ201、202では、冷媒が合流して流路が集約されており、これにより積極的に冷媒流速を増加させることができる。冷媒流速を増加させることで、伝熱管101内の熱伝達率を向上させる効果がある。これにより室外熱交換器200が凝縮器として作用する際の性能を大きく向上させることができる。特に、サブクーラ202では上記のように暖房時の放熱によるデメリットが生じるため、その面積をできる限り小さくさせることが有効である。
【0068】
また、冷房時の性能向上には上記のように液域での冷媒流速を増加させるサブクーラが有効であり、その伝熱面積をある程度確保することが有効であるが、暖房時の放熱ロスを招くサブクーラ202のような構成では、伝熱面積を大きくしすぎると、暖房時の効率が低下する。しがたって、冷房時と暖房時の性能の両立と、暖房時の熱交換器下部の凍結防止という、相反する要求に対して、有効な対応策としては、サブクーラ202に対して、サブクーラ201を追加で設置することが有効である。つまり、サブクーラ201は暖房時にホットパイプとして作用しない、冷凍サイクル構成である、膨張弁25からデストリビュータ24の間に配置されているため、暖房時には低圧、低温で作用するものである。これらの構成を有することで、冷房、暖房共に性能と信頼性を高次元で両立させることが可能となる。
【0069】
さらに、室外熱交換器200において、図6に示すように、サブクーラ201aと、サブクーラ201bとを上部熱交換器200aに設けることで、配管経路を集約でき、配管スペースの確保や、製造時の作業性を向上することができる。また、図6に示すように、上部熱交換器200aと下部熱交換器200bとに分けた場合に、上部デストリビュータ24aと下部デストリビュータ24bの膨張弁25に接続される側が対向するように配置することで、これらの配管により占有されるスペースを小さくすることが出来、結果として他の部品や熱交換器の設置スペースをさらに広くすることができる。
【0070】
そして、このようにデストリビュータ24を配置することにより、熱交換器100が蒸発器として作用した際には、サブクーラ201,202からデストリビュータ24までの接続配管を短くでき、特に、サブクーラの2経路が合流する部分では、気液二相流が攪拌されて、均一に混合されるため、デストリビュータ24に流入する冷媒の偏りが少なくなって、蒸発器の冷媒分配を改善することができる。
【0071】
次にサブクーラ201,202の具体的な配置の例について説明する。図8は、本実施形態における室外熱交換器200の構成部品の配置例を示す室外機2の外観図である。図8(A)は、本実施形態の室外機2の斜視図であり、図8(B)は、本実施形態の室外機2の底面図である。なお、室外熱交換器200の配置がわかりやすいように、上面部、サイド部の板金部品を取り除いた状態にて室外機2の構造を示している。
【0072】
図8(A)は、上部熱交換器200aの下に下部熱交換器200bが配置された熱交換器200の例を示している。図8(A)に示されるように、サブクーラ201を上部熱交換器200aに配置することで、アキュムレータまたはレシーバなどのタンク27などの構造物を避けて、膨張弁25、デストリビュータ24、液側分配管28およびそれらをつなぐ冷媒配管4を配置することができる。特に、図8(B)の破線で示す領域のように、デストリビュータ24や液側分配管28などのスペースを集約して省スペース化を図ることにより、熱交換器を大型化でき、熱交換効率を向上できる。したがって、室外機2のコンパクト性を維持したままに室外熱交換器200のサイズを最大限に拡大することができる。
【0073】
さらに、室外熱交換器200の下部に配置されるサブクーラ202に加えて、デストリビュータ24と膨張弁25の間に配置されるサブクーラ201を追加で設置する場合には、その流入、流出配管のスペースが更に複雑になり、設置スペースを多く必要とする。したがって、これをサブクーラ202と同様に、熱交換器の下部に設置した際には、残される空間は極僅かとなってしまう。そこで、本実施例のように、熱交換器を2分割した場合の上部熱交換器に配置することにより、熱交換器端面下部の空間を広く残すことが可能となる。これによって、図8に示されるように室外機2から室内機3に接続される冷媒配管4が室外機2の内部を通して、後側に設置される場合においても、接続配管を通すことが可能になる。
【0074】
また、本熱交換器に使用される冷媒は、R32、R134a、R1234yfなどの単一冷媒やR410A、R404Aなどの擬似共沸冷媒などが使われた場合に、上記の熱ロス低減や冷媒分配の改善等の効果が発揮できることはもちろんであるが、R448A、R449A、R463A,R466A、R407C,R407H、R454B、R454C、R455Aなどの非共沸混合冷媒であったり、R744などの超臨界域で放熱を行うものであったりした場合には、凝縮器またはガスクーラ等の放熱に使用した際に、放熱過程の後半においても温度低下が比較的大きく生じて、流路途中の冷媒温度と液側出口温度との温度差が大きくなることから、本熱交換器を適用した際の熱ロス低減効果は更に大きくなり有効である。また、上記のような非共沸冷媒を使用した場合においては、熱交換器を蒸発器として使用した際に、蒸発過程での冷媒温度変化による熱交換量や着霜量の不均一が生じやすく、性能や信頼性に悪影響が生じやすい傾向があるが、これまで説明してきたように、各冷媒流路の流路長さを略同一にすることが出来る本熱交換器の構成では、蒸発器での各流路への冷媒流量を略同一に出来ることから、圧力損失が略均等のまま冷媒分配が略均等にすることができるため、上記の熱交換量や着霜量の不均一性が大きく改善される。
【0075】
以上、説明した本発明の実施形態によれば、効率的な熱交換が可能な熱交換器ならびにその熱交換器を備える空気調和装置、室内機および室外機を提供することができる。
【0076】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
1…空気調和装置、
2…室外機、
3…室内機、
4…冷媒配管、
4G…ガス冷媒配管、
4L…液冷媒配管、
20…四方弁、
21…圧縮機、
22…ガスヘッダ、
23…送風ファン、
24…デストリビュータ、
25…膨張弁、
26…液阻止弁、
27…タンク(アキュムレータ)、
28…液側分配管、
29…ガス阻止弁、
31…膨張弁、
32…デストリビュータ、
33…ガスヘッダ、
34…送風ファン、
35…液側分配管、
100…熱交換器、
100’…熱交換部、
101…伝熱管、
102…フィン、
103…継手、
103T…三叉状継手、
103J…ジャンプ配管、
200…室外熱交換器、
201…サブクーラ、
202…サブクーラ、
300…室内熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8