(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878701
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】工作物のビーム処理を監視するための装置およびその使用、工作物のビーム処理のための装置およびその使用、工作物のビーム処理を監視するための方法、工作物のビーム処理のための方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20210524BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20210524BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/00 P
【請求項の数】21
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-530512(P2020-530512)
(86)(22)【出願日】2018年12月5日
(65)【公表番号】特表2021-505396(P2021-505396A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(86)【国際出願番号】EP2018083611
(87)【国際公開番号】WO2019110648
(87)【国際公開日】20190613
【審査請求日】2020年7月31日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/081901
(32)【優先日】2017年12月7日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503168692
【氏名又は名称】バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リューディ アンドレアス
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−221538(JP,A)
【文献】
特開2017−173142(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102009050784(DE,A1)
【文献】
特開2016−135492(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02886239(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/38
B23K 26/00
B23K 31/12
B23K 26/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを使用して工作物を処理する工作物のビーム処理を監視するための装置であって、
複数の第1の期間中に前記工作物(11)の処理領域(11a)を照明するための少なくとも1つの照明装置(12)であって、前記複数の第1の期間は、前記処理領域が前記照明装置によって照明されない第2の期間によって互いに分離される、照明装置と、
前記処理領域から発せられる電磁放射線を検出するための検出装置(15)と、
前記第1の期間内に検出された前記電磁放射線と前記第2の期間内に検出された前記電磁放射線とを別個に処理するための処理装置(19)とを備え、
前記検出装置が、前記電磁放射線の複数のフレームを有するビデオストリームをフレームレートで提供することによって前記電磁放射線を検出するように適合されており、各フレームが前記電磁放射線の画像を含んでおり、前記第1の期間および前記第2の期間が前記フレームレートと同期しており、
前記処理装置が、前記第1の期間内に検出された前記電磁放射線の第1のフレームストリーム(21)と、前記第2の期間内に検出された前記電磁放射線の第2のフレームストリーム(22)とを提供するように適合されている、装置。
【請求項2】
前記検出装置が、前記ビデオストリームを提供することによって前記検出された電磁放射線を記録するように適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理装置が、前記検出装置によって提供される前記ビデオストリームを処理することによって、前記第1のフレームストリームおよび前記第2のフレームストリームを提供するように適合されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
フィルタリング装置(18)が、前記検出装置と前記処理領域との間に配置され、前記フィルタリング装置は、前記照明装置によって放射され前記処理領域によって反射される波長範囲内の電磁放射線を選択的に通過させるように適合されているまたは適合可能である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記工作物のビーム処理を監視するための装置が、中心軸を有し、
前記少なくとも1つの照明装置、前記検出装置、および前記フィルタリング装置のうちの少なくとも1つが、前記中心軸と同軸に配置されている、かつ/または、それぞれ軸対称に形成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記検出装置が、フォトダイオードアレイ、感光素子アレイ、および/またはビデオカメラを備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの照明装置が、200〜900nmの波長範囲、好ましくは、300〜850nmの範囲、より好ましくは、380〜820nmの範囲の電磁放射線を放射するように適合され、かつ/または前記処理領域を均一に照明するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記処理領域から発せられ、少なくとも前記第1の期間内および/または前記第2の期間内で検出される前記電磁放射線の少なくとも一部を増幅するための増幅装置を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
工作物のビーム処理のための装置であって、前記工作物のビーム処理のためのレーザビーム源と、請求項1〜8のいずれか1項に記載の工作物のビーム処理を監視するための装置とを備える装置。
【請求項10】
前記工作物のビーム処理のための装置と前記工作物のビーム処理を監視するための装置が、それぞれ中心軸を有し、互いに同軸に配置されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記検出装置と前記処理領域との間に配置されたダイクロイックミラー(13)を備え、前記ダイクロイックミラーは、前記レーザビーム(16)または前記処理領域から発せられる前記電磁放射線の少なくとも一部を偏向する、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記レーザビームを使用する工作物の切断を監視するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置の使用。
【請求項13】
前記レーザビームを使用する工作物の切断のための、請求項9〜11のいずれか1項に記載の装置の使用。
【請求項14】
前記工作物のビーム処理を、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置を使用して監視するための方法であって、
複数の第1の期間中に前記工作物の処理領域を照明する工程であって、前記複数の第1の期間は、前記処理領域が前記照明装置によって照明されない第2の期間によって互いに分離される、工程と、
前記処理領域から発せられる電磁放射線を検出する工程と、
前記第1の期間内に検出された前記電磁放射線と前記第2の期間内に検出された前記電磁放射線とを別個に処理する工程とを含み、
前記検出する工程が、前記電磁放射線の複数のフレームを有するビデオストリームをフレームレートで提供し、各フレームが、前記電磁放射線の画像を含んでおり、前記第1の期間および前記第2の期間が前記フレームレートと同期しており、
前記別個に処理する工程が、前記第1の期間内に検出された前記電磁放射線の第1のフレームストリーム(21)と、前記第2の期間内に検出された前記電磁放射線の第2のフレームストリーム(22)とを提供する、方法。
【請求項15】
前記検出された電磁放射線が、前記ビデオストリームを提供することによって記録される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のフレームストリームおよび前記第2のフレームストリームが、前記検出する工程によって提供される前記ビデオストリームを処理することによって得られる、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記処理領域から発せられた前記電磁放射線が、検出される前に、前記照明装置によって放射され前記処理領域によって反射される波長範囲内の電磁放射線を選択的に通過させるようにフィルタリングされる、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記処理領域が、200〜900nmの波長範囲、好ましくは、300〜850nmの範囲、より好ましくは、380〜820nmの範囲の電磁放射線を使用して照明され、かつ/または均一に照明される、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記処理領域から発せられ、少なくとも前記第1の期間内および/または前記第2の期間内で検出される前記電磁放射線の少なくとも一部が増幅される、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記レーザビームまたは前記処理領域から発せられる前記電磁放射線の少なくとも一部が、ダイクロイックミラーによって偏向される、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置を使用した、前記工作物のビーム処理のための方法であって、請求項14〜20のいずれか1項に記載の前記方法の前記工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物のビーム処理を監視するための装置およびその使用、工作物のビーム処理のための装置およびその使用、工作物のビーム処理を監視するための方法、ならびに工作物のビーム処理のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビーム切断などの工作物のビーム処理に対して主に要求されることは、例えば、粗い切断縁、バリ、スラグ形成を回避するために、処理後の工作物の品質を改善することである。加えて、自律処理マシンおよび自律処理プロセスは人件費の節約に有益である。したがって、工作物のビーム処理の制御および調整を可能にする装置および方法が必要とされる。
【0003】
ドイツ特許第102009050784(B4)号には、空間分解検出器および照明源の適用下で機械加工ビームを提供することによって機械加工プロセスを画像に基づいて調整するための方法が開示されている。照明が様々に変化した画像同士を組み合わせて評価する。不都合な点としては、全ての画像が併せて評価されるため、結果の生成が遅くなることがある。さらに、この種の評価には、画像分析を実行するための複雑なアルゴリズムが必要となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、工作物のビーム処理、具体的には、レーザビーム切断の監視を改善するための装置および方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、自律ビーム処理および高品質な処理後の工作物を実現することができる、工作物のビーム処理の監視を改善するための装置および方法を提供することであり得る。
【0005】
これらの目的は、請求項1に記載の工作物のビーム処理を監視するための装置、請求項10に記載の工作物のビーム処理のための装置、請求項13に記載の使用、請求項14に記載の使用、請求項15に記載の工作物のビーム処理を監視するための方法、および請求項23に記載の工作物をビーム処理するための方法によって達成される。
【0006】
好都合な実施形態によれば、工作物のビーム処理、特にレーザビーム処理を監視するための装置が提供され、この装置は、複数の第1の期間中に工作物の処理領域を照明するための少なくとも1つの照明装置であって、複数の第1の期間は、処理領域が照明装置によって照明されない第2の期間によって互いに分離される、照明装置と、処理領域から発せられる電磁放射線を検出するための検出装置と、第1の期間内に検出された電磁放射線と第2の期間内に検出された電磁放射線とを別個に処理するための処理装置とを含み、検出装置が、複数のフレームを有するビデオストリームをフレームレートで提供することによって電磁放射線を検出するように適合されており、フレームが電磁放射線の画像を含んでおり、第1の期間および第2の期間がフレームレートと同期している。
【0007】
上記の実施形態の装置を使用してビーム処理を監視することにより、ビーム処理プロセスのオンラインおよび/またはリアルタイムの観察、自律制御および/またはフィードバック制御が可能になる。それによって、時間および人件費を節約するために、自律ビーム処理マシンおよび自律処理プロセスを実現することができる。加えて、第1および第2の期間内に検出された電磁放射線を別個に処理することにより、処理領域を表す別々のタイプの検出結果を得ることができる。例えば、一方で、第1の期間内では、照明された処理領域を処理中に検出することができ、これは、第1のタイプの検出結果を呈する。他方で、第2の期間内では、処理中に工作物自体によって放出された電磁放射線(例えば、処理領域において生成された、加熱されたかつ/または溶融された材料のグロー光)のみを反映した第2のタイプの検出結果を、照明を加えることなく観察することができる。したがって、同じタイプの複数の検出結果を組み合わせて評価することができ、長時間のビーム処理にわたって処理領域の連続的または断続的な観察が可能になる。
【0008】
第1および第2の期間はフレームレートと同期しているので、第2の期間内に取得されたフレームから第1の期間内に取得されたフレームを簡単に分離することが可能である。また、第1の期間内に検出されたフレームからなる組み合わせは、照明された処理領域のみを示すが、第2の期間内に検出されたフレームからなる別の組み合わせは、処理中に工作物自体によって放出された電磁放射線だけを表す複数のフレームをもたらす。このように、同じ照明シナリオのフレーム同士を組み合わせて評価することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、検出装置は、ビデオストリームを提供することによって検出された電磁放射線を記録するように適合させることができる。それによって、記録されたビデオストリーム、すなわち検出され記録された電磁放射線を示すビデオストリーム、および/またはそこに含まれるフレームの任意の組み合わせを使用して、処理プロセスに関する情報を格納し、それらを比較することができる。
【0010】
他の実施形態によれば、処理装置は、第1の期間内に検出された電磁放射線の画像を含む第1のフレームストリームと、第2の期間内に検出された電磁放射線の画像を含む第2のフレームストリームとを提供するように適合され得る。それによって、2つの、別個にかつ/または別様に処理されたフレームストリームが得られ、各フレームストリームが、検出された電磁放射線および処理領域を示す。この実施形態を使用する処理では、第1および第2のストリームを並行して分析することができるので、後続の監視データの分析に必要な時間が削減される。
【0011】
処理装置は、検出装置によって提供されるビデオストリームを処理することによって第1および第2のフレームストリームを提供するように適合され得る。例えば、処理装置は、ビデオストリームから第1の期間内に検出されたフレームの一部または全部を選択し、それらを組み合わせて1つのフレームストリームにすることができる。同じことが、第2の期間内に検出されたフレームにも当てはまる。また、同じタイプの期間内に検出されたフレーム同士は、直接またはさらなる処理の後に組み合わせることができる。さらに、処理装置は、検出装置によって提供される記録されたビデオストリームを処理することによって第1および第2のフレームストリームを提供するように適合され得る。
【0012】
さらなる実施形態によれば、フィルタリング装置は、検出装置と処理領域との間に配置されることができ、フィルタリング装置は、照明装置によって放射され処理領域によって反射される波長範囲内の電磁放射線を選択的に通過させるように適合されているまたは適合可能である。これにより、処理領域によって反射され検出装置に到達する電磁放射線が、処理中に工作物自体によって放出された電磁放射線よりも高強度となるようにフィルタリングできるため、照明装置によって照明された処理領域を優先的にまたは選択的に検出することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、工作物のビーム処理を監視するための装置が、中心軸を有し、少なくとも1つの照明装置、検出装置、およびフィルタリング装置のうちの少なくとも1つが、中心軸と同軸に配置され、かつ/または、軸対称に形成され得る。それによって、ビーム処理を監視するための装置の1つまたは複数の構成要素の軸対称または同軸対称を実現することができる。これにより、監視するための装置と軸対称なビーム処理装置(例えば、レーザビーム源を含む)との組み合わせまたは一体配置がさらに可能になる。加えて、同軸上に配置された照明装置の場合には、処理領域を均一に照明することができる。
【0014】
また、検出装置は、フォトダイオードアレイ、感光素子アレイ、および/またはビデオカメラを含み得る。さらに、検出装置は、画像の少なくとも一部について選択可能なかつ/または変化する照射時間を設けるように適合させることができる。
【0015】
実施形態によれば、少なくとも1つの照明装置は、200〜900nmの波長範囲、好ましくは、300〜850nmの範囲、より好ましくは、380〜820nmの範囲の電磁放射線を放射するように適合させることができる。加えてまたは代替的に、少なくとも1つの照明装置は、処理領域を均一に照明するように構成することができる。
【0016】
ビーム処理を監視するための装置は、処理領域から発せられ、少なくとも第1の期間内および/または第2の期間内で検出される電磁放射線の少なくとも一部を増幅するための増幅装置を含み得る。例えば、検出装置は、検出された電磁放射線の電子増幅をもたらす増幅装置を含み得る。他の例によれば、この増幅は選択的であってもよい。
【0017】
さらなる実施形態は、工作物のビーム処理、特にレーザビーム処理のための装置であって、工作物のビーム処理のためのビーム源と、前述の実施形態のいずれかによるビーム処理を監視するための装置とを含む装置に関する。
【0018】
実施形態によれば、ビーム処理のための装置とビーム処理を監視するための装置とが、それぞれ中心軸を有し、互いに同軸に配置され得る。これにより両装置の省スペース構成が可能になる。
【0019】
他の実施形態では、工作物のビーム処理のための装置は、検出装置と処理領域との間に配置されたダイクロイックミラーを含むことができ、このダイクロイックミラーは、処理ビームまたは処理領域から発せられる電磁放射線の少なくとも一部を偏向する。これにより、例えば、ダイクロイックミラーでの処理ビームの偏向によって、ビーム源がビーム処理のための装置の中心軸に対して同軸に配置されない、ビーム処理のための装置の構成が可能になる。加えて、これらの実施形態により、処理ビームから生じる電磁放射線の検出を回避することができる。
【0020】
別の実施形態によれば、レーザビーム切断を監視するための、上記の実施形態のいずれかによる工作物のビーム処理を監視するための装置の使用が提供される。また、一実施形態は、レーザビーム切断のための、上記の実施形態のいずれかによるビーム処理のための装置の使用に関する。それによって、例えば、粗い切断縁、バリ、スラグ形成を回避するために、切断後の工作物の品質を改善することができる。
【0021】
さらなる実施形態は、工作物のビーム処理、特にレーザビーム処理を、特に上記実施形態のいずれかによる工作物のビーム処理を監視するための装置を使用して監視するための方法を提供し、この方法は、複数の第1の期間中に工作物の処理領域を照明する工程であって、複数の第1の期間は、処理領域が照明装置によって照明されない第2の期間によって互いに分離される、工程と、処理領域から発せられる電磁放射線を検出する工程と、第1の期間内に検出された電磁放射線と第2の期間内に検出された電磁放射線とを別個に処理する工程とを含み、検出する工程が、複数のフレームを有するビデオストリームをフレームレートで提供し、フレームが電磁放射線の画像を含んでおり、第1の期間および第2の期間がフレームレートと同期している。
【0022】
上記の実施形態による方法の変更例では、検出された電磁放射線は、ビデオストリームを提供することによって記録することができる。それによって、記録されたビデオストリームおよび/またはそこに含まれるフレームの任意の組み合わせを使用して、処理プロセスに関する情報を格納し、それらを比較することができる。
【0023】
第1および第2の期間は、第1および第2の期間がそれぞれ1つまたは複数のフレームの持続時間に対応するように、フレームレートと同期させることができる。例えば、1つのフレームを検出するための持続時間は、1/フレームレート未満であり得る。
【0024】
工作物のビーム処理を監視するための方法のさらなる実施形態によれば、別個に処理する工程が、第1の期間内に検出された電磁放射線の第1のフレームストリームと、第2の期間内に検出された電磁放射線の第2のフレームストリームとを提供し得る。また、第1および第2のフレームストリームは、検出する工程によって提供されるビデオストリームを処理することによって得ることができる。
【0025】
工作物のビーム処理を監視するための方法のいくつかの実施形態において、処理領域から発せられた電磁放射線は、検出される前に、照明装置によって放射され処理領域によって反射される波長範囲内の電磁放射線を選択的に通過させるようにフィルタリングされることができる。
【0026】
また、工作物のビーム処理を監視するための方法の実施形態によれば、処理領域は、200〜900nmの波長範囲、好ましくは、300〜850nmの範囲、より好ましくは、380〜820nmの範囲の電磁放射線を使用して照明されることができ、かつ/または均一に照明されることができる。
【0027】
工作物のビーム処理を監視するための方法のいくつかの実施形態によれば、処理領域から発せられ、少なくとも第1の期間内および/または第2の期間内で検出される電磁放射線の少なくとも一部は増幅されることができる。
【0028】
さらなる実施形態による工作物のビーム処理を監視するための方法において、処理ビームまたは処理領域から発せられる電磁放射線の少なくとも一部は、ダイクロイックミラーによって偏向されることができる。
【0029】
別の実施形態は、上述の実施形態のいずれかによる工作物のビーム処理を監視するための装置または工作物のビーム処理のための装置を特に使用した、工作物のビーム処理、特にレーザビーム処理のための方法を提供し、この実施形態は、上述の実施形態のいずれかによる工作物のビーム処理を監視する方法の工程を含む。
【0030】
工作物のビーム処理を監視するための方法および工作物のビーム処理のための方法の上記の実施形態は、対応する装置について上述したのと同じ利点および効果を可能にする。
【0031】
上述の実施形態のうちのいくつかは、以下の図面を参照した典型的な実施形態の以下の説明においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明によるビーム処理のための装置の例を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の例によって生成されたビデオストリームを概略的に示す図である。
【
図3a】照明なしで
図1の例によって検出された処理領域のビデオフレームを示す図である。
【
図3b】照明なしで
図1の例によって検出された処理領域のビデオフレームを示す図である。
【
図4a】照明ありで
図1の例によって検出された処理領域のビデオフレームを示す図である。
【
図4b】照明ありで
図1の例によって検出された処理領域のビデオフレームを示す図である。
【
図5】本発明によるビーム処理を監視するための装置の別の例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の図面の説明では、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。大体において、個々の実施形態に関する差異のみを説明する。
【0034】
本明細書において説明される実施形態では、「複数のフレームを提供すること」または「フレームを提供する」という用語は、それぞれ「複数のフレームを検出すること」または「フレームを検出する」と同義語として置き換えることができる。また、実施形態の説明で使用される期間「内」という用語は、期間「中」という用語を包含し得る。これらの用語の変更例は、同様に解釈することができる。いくつかの実施形態では、ビーム処理のための装置をビーム処理装置と呼ぶことがあり、ビーム処理のための方法をビーム処理方法と呼ぶことがある。
【0035】
上述のように、一実施形態によれば、工作物のビーム処理、特にレーザビーム処理を監視するための装置が提供され、この装置は、複数の第1の期間中に工作物の処理領域を照明するための少なくとも1つの照明装置であって、複数の第1の期間は、処理領域が照明装置によって照明されない第2の期間によって互いに分離される、照明装置と、処理領域から発せられる電磁放射線を検出するための検出装置(または代替的に「検出装置(detection device)」と呼ぶ)と、第1の期間内に検出された電磁放射線と第2の期間内に検出された電磁放射線とを別個に処理するための処理装置とを含み、検出装置が、複数のフレームを有するビデオストリームをフレームレートで提供することによって電磁放射線を検出するように適合されており、フレームが電磁放射線の画像を含んでおり、第1の期間および第2の期間がフレームレートと同期している。
【0036】
いくつかの実施形態では、処理装置は、照明装置および検出装置の同期のためだけではなく、実施形態のフィルタリング装置および/または増幅装置など、ビーム処理を監視するための装置の任意選択の他の装置の同期のために、さらに適応し得る。処理装置は、照明装置、検出装置、ビーム処理を監視するための装置の任意の構成要素に接続され得、かつ/または、データ導電線を介して、ビーム処理装置、特に本明細書に記載の実施形態のビーム処理装置に接続され得る。それによって、ビーム処理プロセスの自律制御および/またはフィードバック制御を促進することができる。例えば、処理装置は、検出装置の電子増幅をフレームレートと同期させるように適応し得る。また、処理装置は、検出装置の照射時間をフレームレートと同期させるように適応し得る。
【0037】
実施形態によれば、複数の第1および第2の期間は、ビーム処理の期間に対応し得る。また、第2の期間は、第1の期間同士の間に配置または提供され得る。さらに、複数の第1および第2の期間は、予め決定され得る。例えば、それらの期間を処理装置によって計算することができ、照明装置をそれに相当するように制御することができる。処理領域は、ビーム処理領域としても理解され得る。
【0038】
電磁放射線は、第1および/または第2の期間の一部内で検出され得る。しかしながら、電磁放射線は、第1および第2の持続時間全体内でだけでなく、第1および第2の期間の持続時間全体を通してずっと検出されることもある。また、電磁放射線は、第1および/または第2の期間のそれぞれの間を通してずっと検出されることもある。これらの実施形態は、ビーム処理プロセスの連続監視を促進するものである。
【0039】
少なくとも1つの照明装置は、200〜900nmの波長範囲、好ましくは、300〜850nmの範囲、より好ましくは、380〜820nmの範囲の電磁放射線を放射するように適合させることができる。例えば、照明装置は、上述の波長範囲内の光を発することができるダイオードアレイなどの光源でもよい。加えてまたは代替的に、少なくとも1つの照明装置は、処理領域を均一に照明するように構成することができる。これは、例えば、照明装置の環状構造によって、または複数の照明装置の環状配置によって達成することができる。
【0040】
上述のように、検出装置は、電磁放射線の複数のフレームをフレームレートで提供することによって電磁放射線を検出するように適合させることができる。照明装置によって生成された第1および第2の期間は、第1および第2の期間がそれぞれ1つまたは複数のフレームの持続時間に対応するように、フレームレートと同期させることができる。例えば、照明の第1の期間は、それぞれ1つのフレームの持続時間に対応してよいが、第2の期間は、それぞれ2つのフレームの持続時間に対応してもよく、逆もまた同様である。また、複数のフレームのうちの一部または全部のフレームが、同じ持続時間を有してもよい。
【0041】
さらに、検出装置は、フォトダイオードアレイ、感光素子アレイ、および/またはビデオカメラを含み得る。また、検出装置は空間分解能を有し得る。したがって、検出装置は、ビデオフレームに含まれた空間分解画像を提供することができる。さらに、検出装置は、画像の少なくとも一部を撮像かつ/または記録するための選択可能なかつ/または変化する照射時間を設けるように適合させることができる。
【0042】
処理装置は、第1の期間内に検出された電磁放射線の画像を含む第1のフレームストリームと、第2の期間内に検出された電磁放射線の画像を含む第2のフレームストリームとを提供するように適合され得る。それによって、個別にかつ/または別様に処理された2つのフレームストリームを得ることができる。このように、第1の期間のフレーム同士だけを組み合わせることにより、照明中の処理領域を連続的に表示することができる。また、第2の期間のフレーム同士だけを組み合わせることにより、処理中に工作物自体が放出する検出された電磁放射線を照明なしで連続的に表示することができる。さらに、第1および第2のフレームストリームは、それぞれ検出された電磁放射線または処理領域のリアルタイムでの監視を可能にする。それによって、ビーム処理装置およびビーム処理プロセスの自律制御および/またはフィードバック制御がさらに促進される。
【0043】
処理装置は、検出装置によって提供されるビデオストリームを処理することによって、第1および第2のフレームストリームを提供するように適合され得る。例えば、処理装置は、複数のフレームから第1の期間内に検出されたフレームの一部または全部を選択し、それらを組み合わせて第1のフレームストリームにすることができる。同じことが、第2の期間内に検出されたフレームにも当てはまり、第2のフレームストリームになる。また、同じタイプの期間内に検出されたフレーム同士を、検出直後にまたはさらなる処理の後に組み合わせることができる。
【0044】
さらなる実施形態によれば、フィルタリング装置を、検出装置と処理領域との間に配置することができ、フィルタリング装置は、照明装置によって放射され処理領域によって反射される波長範囲内の電磁放射線を選択的に通過させるように適合されているまたは適合可能である。
【0045】
例えば、フィルタリング装置は、バンドパスフィルタとすることができる。いくつかの例では、フィルタリング装置は、照明装置によって放射される波長の範囲に設定されるように、例えば、処理装置を使用して調整可能とすることができる。
【0046】
また、ビーム処理を監視するための装置は、処理領域から発せられ、少なくとも第1の期間内および/または第2の期間内で検出される電磁放射線の少なくとも一部を増幅するための増幅装置を含み得る。増幅装置は、検出装置の構成要素であってもよい。
【0047】
フィルタリング装置および/または増幅装置を包含する、ビーム処理を監視するための装置の実施形態は、特に第1の期間中に、照明装置によって照明された処理領域を優先的に検出することを可能にする。
【0048】
いくつかの実施形態では、照明装置と検出装置とは、例えば、上述のように、同期させることができる。しかし、照明装置および検出装置だけでなく、増幅装置および/またはフィルタリング装置も同期され得る。具体的には、増幅装置および/またはフィルタリング装置は、第1の期間中にのみ電磁放射線を積極的に増幅および/またはフィルタリングするように制御され得る。例えば、いくつかの例では、第1および第2の期間の照明変化、ならびに検出された電磁放射線の増幅および/またはフィルタリングを、検出装置のフレームレートと同期させることができる。したがって、工作物が照明装置によって照明される期間を表す第1の期間中、およびいくつかの実施形態における電磁放射線の第1のフレームストリーム内で、ビーム処理により工作物自体が放出する電磁放射線が検出されるのを効果的に回避することが可能である。
【0049】
また、照明された処理領域を示すフレームは、照明されていない処理領域のフレームよりも明るくなり得る。これらの場合、照明されていない処理領域を示すフレームが、照明された処理領域を示すフレームよりも強く増幅されるように、増幅および/または同期を選択することができる。
【0050】
さらなる例によれば、第1の期間中、照明は、処理中に工作物自体によって放出される熱放射線などの電磁放射線よりも明るくなるように設定および/または同期させることができる。これにより、第1の期間中に照明装置によって照明される処理領域の優先的な検出が可能になる。一方、第2の期間中は、すなわち、照明を加えることなく処理領域を観察する間は、工作物自体によって放出された電磁放射線の検出が可能である。
【0051】
実施形態によれば、工作物のビーム処理を監視するための装置は、中心軸を有し得、少なくとも1つの照明装置、検出装置、およびフィルタリング装置のうちの少なくとも1つが、中心軸と同軸に配置され得、かつ/または軸対称に形成され得る。したがって、いくつかの実施形態では、ビーム処理を監視するための装置および/またはビーム処理のための装置の1つまたは複数の構成要素の軸対称または同軸対称を実現することができる。いくつかの例では、中心軸は、ビーム方向に平行に配置されてもよく、特に、ビームは、中心軸と同軸で工作物に向かって放射され得る。
【0052】
上記のように、さらなる実施形態は、工作物のビーム処理、特にレーザビーム処理のための装置であって、工作物のビーム処理のためのビーム源と、前述の実施形態のいずれかによるビーム処理を監視するための装置とを含む装置に関する。本発明の実施形態の工作物のビーム処理のためのビーム源は、高エネルギービーム(例えば、レーザビーム)または電子ビームもしくは陽子ビームなどの粒子ビームを生成することができる。レーザビーム源の一例は、500W以上、好ましくは4000W以上、より好ましくは8000W以上のレーザビーム出力を提供できるファイバレーザである。
【0053】
ビーム処理のための装置のいくつかの例としては、ビームを提供するビーム処理ヘッドを挙げることができ、ビーム処理を監視するための装置は、このビーム処理ヘッドの一体的構成要素である。さらに、照明装置は、ビーム処理ヘッドの内部または外側に配置することができる。
【0054】
また、ビーム処理のための装置は、ビーム処理を監視するための装置の処理装置に接続されるかまたはそれを含む、処理制御装置を含み得る。処理制御装置は、データ導電線を介して、ビーム処理のための装置の構成要素およびビーム源に接続され得る。この構成により、ビーム処理装置だけでなくビーム処理プロセスのオンラインおよび/またはリアルタイムの観察、自動制御および/またはフィードバック制御が可能になる。それによって、自律ビーム処理マシンおよび自律ビーム処理プロセスを実現することができる。
【0055】
さらなる実施形態によれば、ビーム処理のための装置とビーム処理を監視するための装置は、それぞれ中心軸を有し、互いに同軸に配置され得る。これは、ビーム処理のための装置内にビーム処理を監視するための装置を配置することにより、ビーム処理のための装置のコンパクトな構成を可能にする。また、工作物のビーム処理のための装置は、検出装置と処理領域との間に配置されたダイクロイックミラーをさらに含むことができ、このダイクロイックミラーは、処理ビームまたは処理領域から発せられる電磁放射線の少なくとも一部を、例えば、検出装置に向かって偏向する。例えば、ダイクロイックミラーは、処理ビームを偏向して処理領域に送り、処理領域から反射または放出される電磁放射線を選択的に通過させることができる。したがって、レーザビーム処理の場合、レーザビームは、伝送ファイバを介して、ビーム処理のための装置の側面からその装置内に送られ、ダイクロイックミラーでの偏向によって処理領域に方向付けられる。あるいは、レーザビームは、伝送ファイバを介して、ビーム処理のための装置の中心に、例えば、その中心軸に沿って送られてもよく、一方で、検出装置はその側面に配置される。この例では、処理ビームがダイクロイックミラーを通過する一方、処理領域から発せられる電磁放射線はダイクロイックミラーにおいて検出装置に向かって偏向されることができる。
【0056】
別の実施形態は、工作物のビーム処理、特にレーザビーム処理を、特に上記実施形態のいずれかによるビーム処理を監視するための装置またはビーム処理のための装置を使用して監視するための方法を提供し、この方法は、複数の第1の期間中に工作物の処理領域を照明する工程であって、複数の第1の期間は、処理領域が照明装置によって照明されない第2の期間によって互いに分離される、工程と、処理領域から発せられる電磁放射線を検出する工程と、第1の期間内に検出された電磁放射線と第2の期間内に検出された電磁放射線とを別個に処理する工程とを含み、検出する工程が、電磁放射線の複数のフレームを有するビデオストリームをフレームレートで提供し、各フレームが電磁放射線の画像を含んでおり、第1の期間および第2の期間がフレームレートと同期している。本明細書で説明するこの実施形態の方法およびその変更例は、対応する装置について上述したのと同じ利点をもたらす。同じことが、ビーム処理のための方法に関する実施形態にも当てはまる。
【0057】
例
図1は、ビーム処理のための装置の例を概略的に示す。この例では、ビーム処理のための装置は、ビーム処理ヘッド10を含み、ビーム処理を監視するための装置は、ビーム処理ヘッド10内に一体的に配置されている。コリメートレンズまたは集束レンズなどの図示されていないさらなる構成要素を設けることが可能である。
【0058】
本例では、ビーム処理ヘッド10は、中心軸(図示せず)を含む管状ハウジング10aを有する。ビーム処理ヘッドの一端において、ハウジング10aはテーパ状になっており、レーザビーム出口を形成している開口先端部10bを有する。先端部10bは、溶融した金属を除去するために、高圧ガスビームをレーザビームと同軸で工作物に向かって方向付けるためのノズルで形成される。
【0059】
図1は、ステンレス鋼からなる工作物11の近くに配置されたビーム処理ヘッド10を示している。
図1に示される構成において、先端部10bは、工作物11に向かって方向付けられており、それによって、処理領域11aを画定している。
【0060】
ビーム処理ヘッド10内かつ先端部10bの近くに、2つの光源12が照明装置として設けられている。本例では、2つの光源12は、約808nmの波長のパルス光を放射するLEDを含む。
【0061】
ハウジング10aの一方の側壁において、ビーム処理ヘッド10は、レーザビームを伝送するための伝送ファイバ17に結合されている。
図1では、伝送ファイバは、ビーム処理ヘッド10の左側に示されている。
【0062】
ビーム処理ヘッドはさらに、ダイクロイックミラー13、検出装置としてのビデオカメラ15、およびフィルタリング装置としてのフィルタ18を含む。ダイクロイックミラー13は、光源12とフィルタ18との間に設けられ、45°未満で1060〜1080nmの光を反射し(>99.9%)、400〜900nmの光を透過する(>50%)。ダイクロイックミラー13は、ハウジング10a内の中心に配置され、ビーム処理ヘッドの中心軸に対して傾斜しており、伝送ファイバ17に面している。伝送ファイバは、一般的な100μmステップインデックスファイバである。フィルタ18は、ダイクロイックミラー13とビデオカメラ15との間に配置され、約808±10nmの光を選択的に通過させるためのバンドパスフィルタである。ビデオカメラ15は、空間分解ビデオ画像のストリームを提供するように構成される。ビデオカメラ15はモノクロであり、この例では、空間解像度500×500ピクセル、および輝度解像度8ビットに設定されている。ビデオカメラ15は、ビデオストリームを評価するための処理装置19に接続されている。
【0063】
光源12、ビデオカメラ15、およびフィルタ18は、ビーム処理ヘッド10の中心軸に対して同軸に配置される。
【0064】
任意選択で、ビーム処理ヘッドは、ビーム処理ヘッド10内を移動するレーザビームまたは光線を成形するために、先端部10bとダイクロイックミラー13との間、またフィルタ18とビデオカメラ15との間に、追加の光学装置(図示せず)を含んでもよい。
【0065】
ビーム処理ヘッド10の動作中、約1070nmのレーザビーム16が、伝送ファイバ17を介して、ビーム処理ヘッド内にその側面から供給される。レーザビーム16は、ダイクロイックミラー13で偏向され、ビーム処理ヘッド10の中心軸と実質的に平行に、先端部10aを通って処理領域11aに向かって送られる。レーザビーム16はダイクロイックミラー13を通過することはできないので、このレーザビームの検出は回避される。処理領域11a内では、工作物11の材料が、レーザビーム16によって加熱および溶融され、グロー光および熱放射線を放出する。
【0066】
処理領域11aは、約808nmかつ122Hz、90μsパルスの波長の光を使用するパルス光源12によって断続的に照明される。それによって、工作物11の処理領域11aは、複数の第1の期間中、均一に照明される。これらの第1の期間は、処理領域が照明源12によって照明されない第2の期間によって互いに分離される。
【0067】
第1の期間中、すなわち照明源12による照明の間、照明光14は、処理領域11aに向かって方向付けられ、反射され、先端部10bを通ってビーム処理ヘッド内に戻る。照明光14は、ダイクロイックミラー13およびフィルタ18を通過し、最終的にビデオカメラ15に到達する。
【0068】
レーザビーム処理により、加熱された材料および溶融物が、グロー光および熱放射線を放射し、熱放射線は先端部10bを通じてビーム処理ヘッド内に放射される。結果として生じる電磁放射線は、約808nmの波長を含む広範囲の波長を包含する。よって、フィルタ18は、約808nmの波長の電磁放射線を通過させるので、第1の期間中にパルス光源12によって照明された工作物領域からの照明光だけでなく、光源12による照明を加えることなく第2の期間中に工作物自体によって放出された放射線の一部もまた、フィルタ18を通過してビデオカメラ15に到達する。
【0069】
ビデオカメラ15は、同じ持続時間の複数のビデオフレームをフレームレートで提供することによって電磁放射線を検出する。パルス光源12によってもたらされる第1および第2の期間は、第1および第2の期間がそれぞれ1つのビデオフレームの持続時間に対応するように、フレームレートと同期される。したがって、ビデオカメラ15は、
図2に示すようにビデオフレーム1〜8からなるストリーム20を生成し、これは、照明された処理領域11aと照明されていない処理領域11aを交互に示している。よって、ビデオフレームは1つ置きで同じタイプの期間に対応している。
【0070】
図2は、ビデオカメラ15に接続された処理装置19がビデオフレーム1〜8をどのように処理するかを示している。処理装置19は、ビデオカメラ15によって生成されたビデオフレームストリーム20から、第1の期間内に検出されたビデオフレーム1、3、5、7を選択する。処理装置19は、ビデオフレーム1、3、5、7を組み合わせて、第1のビデオフレームストリーム21とし、これは照明された処理領域11aのビデオフィルムを表す。第2の期間内に検出されたビデオフレーム2、4、6、8は、同様に選択され、組み合わされて、第2のビデオフレームストリーム22になり、これは照明されない処理領域11aのビデオフィルムを反映している。
【0071】
したがって、第1のストリーム21は、照明された処理領域11aを表すが、第2のストリーム22は、光源12による照明が加えられない処理領域11aを反映している。6mmのステンレス鋼の溶断を示す
図3a、
図3bおよび
図4a、
図4bを参照して以下に説明するように、第1のストリーム21および第2のストリーム22は、処理領域に関する異なる情報をもたらす。
【0072】
図3aは、第2の期間中に、すなわち、照明を加えることなく、検出された処理領域の1つのビデオフレームを表す。可視化のために
図3bにおいてより詳細に示されるように、
図3aのビデオフレームは、外周31および面積32を有する放射ゾーン30を反映している。放射ゾーン30内の2つの直線矢印は、放射ゾーン30の長さ33および幅34に対応している。
図3aおよび
図3bは、最大放射強度である不規則な形状の領域36によって囲まれた放射コア範囲35を示す。
【0073】
その結果、
図3aのビデオフレームは、とりわけ、放射コア範囲、放射ゾーンの大きさおよび周囲長、レーザビームの伝搬方向の少なくとも右側および/または左側に対する放射ゾーンの真円度ならびに対称性、強度分布、コントラスト、放射ゾーンの長さおよび幅(カーフ幅)、および溶融フィルムの波形の観察を可能にする。
【0074】
図4aは、第1の期間中に、すなわち、照明を加えた状態で、検出された処理領域の1つのビデオフレームを示す。より分かりやすく可視化するために、
図4bは、
図4aが呈する詳細の一部を反映している。
図4a、
図4bは、切断カーフ40およびその幅、特徴的な切断前面傾斜を有する切断前面41、ノズル開口部42のサイズ、および切断範囲を囲む工作物の構造43を示す。
図4aにおいて追加された破線の円によって示される拡大詳細は、切断縁の粗さおよび構造44の検出性を示す。
【0075】
結果として、
図4aのビデオフレームは、とりわけ、切断カーフ40の幅、切断カーフ40の対称性、切断前面41およびその傾斜角度(すなわち切断前面の角度)、切断縁の表面粗さ(例えば、波形の構造)、ならびに工作物11の構造43の観察を可能にする。
【0076】
したがって、上述のようにカメラ15によって取得されたビデオフレーム同士を組み合わせて第1および第2のビデオストリーム21、22をもたらすことにより、処理領域に関する異なる情報の連続的な観察および監視が可能になる。
【0077】
本例では、ビーム処理ヘッド10は、ビーム処理のための装置の一部であり、この装置は、処理装置19に接続された処理制御装置(図示せず)を含む。処理制御装置は、データ導電線を介して、ビーム処理のための装置の構成要素およびレーザ源に接続される。処理装置19によって生成されたビデオストリーム21、22により、本例は、ビーム処理のための装置およびビーム処理プロセスのオンラインおよび/またはリアルタイムの観察、自動制御および/またはフィードバック制御を可能にする。それによって、高い切断品質を促進させることができるだけでなく、自律ビーム処理装置および自律ビーム処理プロセスを実現することができる。
【0078】
さらなる例
上記の例によれば、ビデオフレームは1つ置きで同じタイプの期間に対応している。したがって、第1および第2の期間は、第1および第2の期間がそれぞれ1つのビデオフレームの持続時間に対応するように、フレームレートと同期される。しかしながら、他の例では、第1および第2の期間は、第1および/または第2の期間がそれぞれ2つ以上のビデオフレームの持続時間に対応するように、フレームレートと同期させることができる。
【0079】
さらに他の例では、上記の例のビデオカメラ15は、増幅装置を含み得る。増幅装置は、工作物領域から発せられる、フィルタリング後の電磁放射線の増幅を変化させるように設定することができる。第1の期間中、すなわち、光源12による照明中、増幅を適切に選択することにより、処理中に工作物自体によって放出される熱放射線などの電磁放射線を抑制または除去することができる。したがって、照明された処理領域を確実に観察および監視することができる。一方、第2の期間中、すなわち、照明を加えることなく処理領域を観察する間、増幅は、処理領域自体によって放出される電磁放射線の検出および監視が可能になるように設定することができる。したがって、照明されない処理領域も確実に観察および監視することができる。
【0080】
図1〜
図4を参照した上記の例では、ビーム処理のための装置は、ビーム処理ヘッド10を含み、ビーム処理を監視するための装置は、このビーム処理ヘッド10の一体的構成要素である。あるいは、
図5に示されるように、ビーム処理を監視するための装置は、ビーム処理ヘッドから分離した装置100として構成することもできる。例えば、光源12およびビデオカメラ15(および、場合によっては
図1に見られるフィルタ18も)は、ハウジング内で組み合わせることができ、このハウジングは、ビーム処理中、処理領域を観察および監視するために、ビームを提供するビーム処理ヘッドの側方に配置されてもよい。この構成は、ビーム処理ヘッドおよびビーム処理装置全体だけでなくビーム処理プロセスのオンラインおよび/またはリアルタイムの観察、自動制御、および/またはフィードバック制御もまた可能にする。
【0081】
上記は本発明の例および実施形態に関するが、本発明の他のおよびさらなる実施形態が考案されてもよい。特に、上記の例および実施形態の相互に非排他的な特徴は、相互に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0082】
1〜8 ビデオフレーム
10 ビーム処理ヘッド
10a ハウジング
10b 先端部/ノズル
11 工作物
11a 処理領域
12 光源
13 ダイクロイックミラー
14 検出対象光/検出対象電磁放射線
15 ビデオカメラ/検出装置
16 レーザビーム/処理ビーム
17 伝送ファイバ
18 フィルタ
19 処理装置
20〜22 ビデオストリーム
30 放射ゾーン
31 放射ゾーンの外周
32 放射ゾーンの面積
33 放射ゾーンの長さ
34 放射ゾーンの幅
35 放射コア範囲
36 最大放射強度領域
40 切断カーフの切断縁
41 切断前面
42 ノズル開口部/先端部開口のサイズおよび特徴
43 切断範囲を囲む工作物の構造
44 切断縁の粗さおよび構造
100 ビーム処理ヘッド