特許第6878713号(P6878713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6878713樹脂製容器の製造方法および樹脂製容器の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6878713
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法および樹脂製容器の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/64 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   B29C49/64
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-505788(P2021-505788)
(86)(22)【出願日】2020年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2020034562
【審査請求日】2021年2月1日
(31)【優先権主張番号】特願2019-166591(P2019-166591)
(32)【優先日】2019年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2019-166592(P2019-166592)
(32)【優先日】2019年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 修一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正敏
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−076567(JP,A)
【文献】 特開2010−052294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/08
B29C 45/17,49/06,49/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形工程、前記プリフォームの温度を調節する温調工程、および前記プリフォームから樹脂製容器を成形するブロー成形工程を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程の後、前記温調工程および前記ブロー成形工程にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送し、
前記温調工程が、前記プリフォームの温度を調節する第一温調工程、前記第一温調工程と異なる条件で前記プリフォームの温度を調節する第二温調工程、および前記プリフォームの温度を微調節する微調節工程、を備える、
樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
前記第一温調工程における前記プリフォームの温度を調節する条件が、前記第二温調工程における前記プリフォームの温度を調節する条件と比べて、前記プリフォームの温度を下げる能力の高いものである、
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記第一温調工程において、温調コア型および温調キャビティ型で前記プリフォームを挟み込むことで、前記プリフォームの温度を調節し、
前記第二温調工程において、前記プリフォームに気体を吹き付けることで、前記プリフォームの温度を調節する、
請求項1または請求項2に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
前記射出成形工程が、キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記プリフォームを成形する射出工程および前記射出工程で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを冷却する後冷却工程を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記ブロー成形工程が、1回あたりN2(N2は1以上の整数である)個の前記容器をブロー成形する最終ブロー工程を備え、
前記ブロー成形工程において、前記プリフォームおよび前記容器をN2個ずつ間欠的に搬送し、
前記射出成形工程における前記配列方向に沿った複数の前記プリフォームの一端に位置する1のプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置する1のプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとした場合に、N1およびN2はN1>N2の関係にある、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項6】
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形部、前記プリフォームの温度を調節する温調部、および前記プリフォームから樹脂製容器を成形するブロー成形部を有する樹脂製容器の製造装置であって、
前記温調部および前記ブロー成形部にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送する搬送機構を有し、
前記温調部が、前記プリフォームの温度を調節する第一温調部、前記第一温調部と異なる条件で前記プリフォームの温度を調節する第二温調部、および前記プリフォームの温度を微調節する微調節部、を備える、
樹脂製容器の製造装置。
【請求項7】
前記第一温調部における前記プリフォームの温度を調節する条件が、前記第二温調部における前記プリフォームの温度を調節する条件と比べて、前記プリフォームの温度を下げる能力の高いものである、
請求項6に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項8】
前記第一温調部が、前記プリフォームを挟み込むことで前記プリフォームの温度を調節するように構成された温調コア型および温調キャビティ型を備え、
前記第二温調部が、前記プリフォームに気体を吹き付けることで前記プリフォームの温度を調節するブローコア型を備える、
請求項6または請求項7に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項9】
前記射出成形部が、キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記プリフォームを成形する射出部および前記射出部で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを冷却する後冷却部を備える、
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項10】
前記ブロー成形部が、1回あたりN2(N2は1以上の整数である)個の前記容器をブロー成形する最終ブロー部を備え、
前記ブロー成形部において、前記プリフォームおよび前記容器をN2個ずつ間欠的に搬送し、
前記射出成形部における前記配列方向に沿った複数の前記プリフォームの一端に位置する1のプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置する1のプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとした場合に、N1およびN2はN1>N2の関係にある、
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項11】
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形工程、前記プリフォームの温度を調節する温調工程、および前記プリフォームから樹脂製容器を成形するブロー成形工程を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程の後、前記温調工程および前記ブロー成形工程にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送し、
前記温調工程が、全体として均一の温度に設定された温調手段によって、ブロー成形するのに適した温度まで温調された前記プリフォームの温度低下を抑止する保温温調工程を備える、
樹脂製容器の製造方法。
【請求項12】
前記射出成形工程が、キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記プリフォームを成形する射出工程および前記射出工程で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを冷却する後冷却工程を備える、
請求項11に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項13】
前記温調工程が、前記プリフォームの温度を調節する第一温調工程、前記第一温調工程と異なる条件で前記プリフォームの温度を調節する第二温調工程、および前記プリフォームの温度を微調節する微調節工程、を備える、
請求項11または請求項12に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項14】
前記ブロー成形工程が、1回あたりN2(N2は1以上の整数である)個の前記容器をブロー成形する最終ブロー工程を備え、
前記ブロー成形工程において、前記プリフォームおよび前記容器をN2個ずつ間欠的に搬送し、
前記射出成形工程における前記配列方向に沿った複数の前記プリフォームの一端に位置する1のプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置する1のプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとした場合に、N1およびN2はN1>N2の関係にある、
請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項15】
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形部、前記プリフォームの温度を調節する温調部、および前記プリフォームから樹脂製容器を成形するブロー成形部を有する樹脂製容器の製造装置であって、
前記温調部および前記ブロー成形部にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送する搬送機構を有し、
前記温調部が、全体として均一の温度に設定された温調手段によって、ブロー成形するのに適した温度まで温調された前記プリフォームの温度低下を抑止する保温温調部を備える、
樹脂製容器の製造装置。
【請求項16】
前記射出成形部が、キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記プリフォームを成形する射出部および前記射出部で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを冷却する後冷却部を備える、
請求項15に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項17】
前記温調部が、前記プリフォームの温度を調節する第一温調部、前記第一温調部と異なる条件で前記プリフォームの温度を調節する第二温調部、および前記プリフォームの温度を微調節する微調節部、を備える、
請求項15または請求項16に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項18】
前記ブロー成形部が、1回あたりN2(N2は1以上の整数である)個の前記容器をブロー成形する最終ブロー部を備え、
前記ブロー成形部において、前記プリフォームおよび前記容器をN2個ずつ間欠的に搬送し、
前記射出成形部における前記配列方向に沿った複数の前記プリフォームの一端に位置する1のプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置する1のプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとした場合に、N1およびN2はN1>N2の関係にある、
請求項15から請求項17のいずれか一項に記載の樹脂製容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法および樹脂製容器の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホットパリソン式のブロー成形装置およびこれを用いた樹脂製容器の製造方法が記載されている。特許文献2には、ポリエステル樹脂を射出成形して得られた有底筒状のプリフォームを温度調整後ブロー成形して得られる大型容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開平8−132517号公報
【特許文献2】日本国特開平11−034152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホットパリソン式ブロー成形装置として、複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形し、当該配列方向と交差する方向へプリフォームを搬送して容器をブロー成形する方式を採用すると、射出成形部とブロー成形部とで取数比を変更でき、ブロー成形型のダウンサイジングや搬送中にプリフォームの局所冷却を行える等で、利点がある。一方、当該方式において、射出成形されたプリフォームをブロー成形数(ブローキャビティの数)単位に分割しブロー成形部に間欠搬送する場合、その単位毎にブロー成形部に至るまでの待機時間の長さが変わり、それが原因でプリフォーム間の温度差が生じ易い。
【0005】
本発明は、プリフォーム間で温度差が生じやすい搬送方式を採用しつつも、プリフォーム間での温度状態の差を低減して、安定して品質の良い容器を製造できる、樹脂製容器の製造方法および樹脂製容器の製造装置を提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、プリフォーム間で温度差が生じやすい搬送方式を採用しつつも、プリフォームの均温化を確実なものとし、安定して品質の良い容器を製造できる、樹脂製容器の製造方法および樹脂製容器の製造装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係る樹脂製容器の製造方法は、
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形工程、前記プリフォームの温度を調節する温調工程、および前記プリフォームから樹脂製容器を成形するブロー成形工程を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程の後、前記温調工程および前記ブロー成形工程にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送し、
前記温調工程が、前記プリフォームの温度を調節する第一温調工程、前記第一温調工程と異なる条件で前記プリフォームの温度を調節する第二温調工程、および前記プリフォームの温度を微調節する微調節工程、を備える、
樹脂製容器の製造方法である。
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係る樹脂製容器の製造装置は、
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形部、前記プリフォームの温度を調節する温調部、および前記プリフォームから樹脂製容器を成形するブロー成形部を有する樹脂製容器の製造装置であって、
前記温調部および前記ブロー成形部にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送する搬送機構を有し、
前記温調部が、前記プリフォームの温度を調節する第一温調部、前記第一温調部と異なる条件で前記プリフォームの温度を調節する第二温調部、および前記プリフォームの温度を微調節する微調節部、を備える、
樹脂製容器の製造装置である。
【0009】
上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係る樹脂製容器の製造方法は、
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形工程、前記プリフォームの温度を調節する温調工程、および前記プリフォームから樹脂製容器を成形するブロー成形工程を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程の後、前記温調工程および前記ブロー成形工程にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送し、
前記温調工程が、温調された前記プリフォームの温度低下を抑止する保温温調工程を備える、
樹脂製容器の製造方法である。
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係る樹脂製容器の製造装置は、
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形部、前記プリフォームの温度を調節する温調部、および前記プリフォームから樹脂製容器を成形するブロー成形部を有する樹脂製容器の製造装置であって、
前記温調部および前記ブロー成形部にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送する搬送機構を有し、
前記温調部が、温調された前記プリフォームの温度低下を抑止する保温温調部を備える、
樹脂製容器の製造装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プリフォーム間で温度差が生じやすい搬送方式を採用しつつも、プリフォーム間での温度状態の差を低減して、安定して品質の良い容器を製造できる、樹脂製容器の製造方法および樹脂製容器の製造装置を提供できる。
【0012】
また本発明によれば、プリフォーム間で温度差が生じやすい搬送方式を採用しつつも、プリフォームの均温化を確実なものとし、安定して品質の良い容器を製造できる、樹脂製容器の製造方法および樹脂製容器の製造装置をも提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る樹脂製容器の製造装置を示す平面概略図である。
図2】実施形態に係る樹脂製容器の製造装置を示す側面概略図である。
図3】実施形態に係る転換機構を示す図である。
図4】実施形態に係る転換機構の動作を示す図である。
図5】実施形態に係る容器の製造工程のフローチャートである。
図6】実施形態の変形例に係る樹脂製容器の製造装置を示す平面概略図である。
図7】実施形態の変形例に係る樹脂製容器の製造装置を示す側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
図1は、本実施形態に係る樹脂製容器の製造装置1を示す平面概略図である。図2は、本実施形態に係る樹脂製容器の製造装置1を示す側面概略図である。製造装置1は、複数のプリフォーム10を所定の配列方向Cに沿って射出成形する射出成形部100、プリフォーム10の温度を調節する温調部200、プリフォーム10から樹脂製容器20を成形するブロー成形部300、および成形された容器20を取り出す取出部400を備える、いわゆる4ステーション型の成形装置である。製造装置1により製造される容器20は、例えば5ガロンボトルなどの大型のボトルとすることができる。1ステップ式で分割ブロー方式を採用した構造になっている。
【0016】
本例では、製造装置1において、射出成形部100と、温調部200と、ブロー成形部300と、取出部400とは、直線的に配置されている。製造装置1は、温調部200およびブロー成形部300にわたってプリフォーム10および容器20を配列方向Cと交差する搬送方向Aに沿って搬送する搬送機構600,650を有する(図1では省略)。製造装置1は、射出成形部100および温調部200の間に、配列方向Cに並んだ複数のプリフォーム10を搬送方向Aに沿う向きに並ぶように方向転換させる転換機構500を有する転換部150を備える。
【0017】
射出成形部100は、複数のプリフォーム10が配列方向Cに沿って並ぶように、複数のプリフォーム10を射出成形する。射出成形部100は、少なくとも1つの第一の射出型110と、少なくとも2つの第二の射出型120と、を備えている。第一の射出型110は、プリフォーム10の胴部および底部の外形を規定する複数(例えば4つ)の凹部114を備える射出キャビティ型112を有している。第一の射出型110は、プリフォーム10の原料となる樹脂材料(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルやポリカーボネート(PC)、等)を射出する射出装置102と連結されており、射出装置102の射出方向Bに直交する配列方向Cに、複数(例えば4つ)の凹部114が直線的に整列している。配列方向Cは搬送方向Aにも交差(直交)する。また、射出装置102は第一の射出型110の配列方向Cにおける中央部分に連結されている。射出成形部100の第一の射出型110および第二の射出型120には冷媒が流される。冷媒の温度は、例えば5〜20℃に設定される。
【0018】
2つの第二の射出型120は、それぞれ配列方向Cに沿って配列された4つの射出コア型122および射出ネック型(ネック型)124を有している。射出コア型122はプリフォーム10のネック部、胴部および底部の内形を規定し、射出ネック型124はネック部の外形を規定する。2つの第二の射出型120は、回転盤である第一の回転部材130に連結されて第一の中心軸X1を中心とする円周上に位置し、第一の中心軸X1に対して間欠的に回転可能に構成されている。詳細には、2つの第二の射出型120は、第一の中心軸X1に対して互いに180°回転した位置に配置されている。第一の回転部材130は射出成形の1サイクルにつき180°間欠的に回転して、2つの第二の射出型120の互いの位置を入れ替えるように構成されている。
【0019】
第二の射出型120の一方は第一の射出型110が配置された位置(射出位置P1)に配置され、第二の射出型120の他方は射出位置P1の第一の中心軸X1に対する反対側の180°回転した位置(後冷却位置P2)に配置されている。後冷却位置P2は、射出位置P1で射出成形されたプリフォーム10が射出コア型122および射出ネック型124で保持されて冷却される位置である。後冷却位置P2には、プリフォーム10を収容可能で昇降可能な冷却ポッド140が設けられている。冷却ポッド140はプリフォーム10を収容するキャビティ142を備え、キャビティ142の周囲に水などの冷媒用の流路が設けられており、プリフォーム10を外部から冷却することができる部材である。冷却ポッド140は、例えば5〜60℃、好ましくは、5〜20℃の温度に設定される。
【0020】
換言すると、射出成形部100は、射出位置P1の部分である射出部と、後冷却位置P2の部分である後冷却部と、を備えている。射出部はキャビティ内に溶融樹脂を射出してプリフォーム10を成形する。後冷却部は、射出部で成形されてキャビティから解放されたプリフォーム10を冷却する。
【0021】
続いて、図3を参照して転換部150の転換機構500を説明する。図3は転換機構500の概要を示す斜視図である。転換機構500は、プリフォーム10を保持可能に構成された保持部材510a,510b(例えば、ハンド部材やチャック部材)、保持部材510a,510bを移動可能に構成された移動機構である第二の回転部材520、および保持部材510a,510bを移動させている間に、保持部材510a,510bをそれぞれ方向転換可能に構成された2つの保持部材転換機構530(例えば電動モータ)を備える。なお、転換機構500の後述する送出位置P4に、プリフォーム10が収容可能な、一対の割型から構成される第2の冷却ポッド140bを設けても構わない。第2の冷却ポッド140bは例えば5〜60℃に設定され、第1の冷却ポッド140より高温に設定されるのが望ましい。
【0022】
保持部材510a,510bは、プリフォーム10のネック部12を掴んで保持する保持部512(例えば、爪、ハンド)を備えている。保持部材510a,510bは、プリフォームを上下移動可能に、すなわち昇降可能に構成されている。また、保持部512は、保持部材510a(510b)に対して水平方向にスライド移動可能に構成されている。保持部材510a(510b)は、第二の回転部材520に対して昇降移動可能に構成されている。
【0023】
第二の回転部材520は、第二の中心軸X2を中心として回転機構540(例えば電動モータ)により回転するように構成されている。別の言い方では、第二の回転部材520は、射出成形部100において射出成形された複数のプリフォーム10を受け取る受取位置P3から、温調部200へプリフォーム10を送り出す送出位置P4に、保持部材510a,510bを移動可能に構成されている。保持部材510a,510bは、第二の回転部材520上の第二の中心軸X2に対して互いに180°回転した位置で、第二の回転部材520に支持されている。2つの保持部材転換機構530は、保持部材510a,510bにそれぞれ対応するように、第二の回転部材520に設けられている。なお、後冷却位置P2と受取位置P3とは、製造装置1の鉛直方向(上下方向)で重なるように配置されている。また、第2の冷却ポッドが設けられる場合、第2の後冷却位置と後述する送出位置P4とが、製造装置1の鉛直方向(上下方向)で重なるように配置させてもよい。
【0024】
保持部材転換機構530は、保持部材510a,510bを移動させている間に、保持部材510a,510bを自転させて配列方向Cに並んだ複数のプリフォーム10を搬送方向Aに沿う向きに並ぶように方向転換可能に構成されている。すなわち、保持部材510a,510bは、保持部材転換機構530により、第三の中心軸X3を中心に90°間欠的に回転(自転)することが可能なように構成されている。
【0025】
ここで、図4を参照して、転換機構500の動作を詳細に説明する。図4は、転換機構500の動作を示す図である。なお、図3及び図4の転換機構500は必ずしも一致しないが、上記に説明した構成に関しては共通しており、動作に関しては便宜上図4を参照して説明する。図4の(a)は転換機構500の初期状態、図4の(b)は転換機構500の1次状態、図4の(c)は転換機構500の2次状態、図4の(d)は転換機構500の3次状態を示す。
【0026】
図4の(a)に示す初期状態において、保持部材510aは受取位置P3に配置され、射出成形部100における配列方向Cに沿う向きに複数の保持部512が並ぶように配置される。また、初期状態において、保持部材510bは送出位置P4に配置され、搬送方向Aに沿う向きに複数の保持部512が並ぶように配置される。
【0027】
次に、転換機構500が図4の(b)に示す1次状態、そして図4の(c)に示す2次状態に遷移する。初期状態から1次状態、さらに2次状態へ遷移する際に、第二の回転部材520が時計回りに回転して、保持部材510aと、保持部材510bと、が位置交換されていく。また、初期状態から1次状態、さらに2次状態へ遷移する際に、保持部材510aは反時計回りに自転し、保持部材510bは時計回りに自転する。そして、図4の(d)に示す3次状態まで遷移したところで、第二の回転部材520は180°回転して停止する。また、3次状態まで遷移したところで、保持部材510aと、保持部材510bと、はそれぞれ逆方向に90°回転して停止する。3次状態において、保持部材510aは送出位置P4に配置され、搬送方向Aに沿う向きに複数の保持部512が並ぶように配置される。また、3次状態において、保持部材510bは受取位置P3に配置され、射出成形部100における配列方向Cに沿う向きに複数の保持部512が並ぶように配置される。第2の冷却ポッドが設けられる場合は、送出位置P4で第2の冷却ポッド140bがプリフォーム10を収容・保持する。
【0028】
続いて、3次状態から、2次状態、1次状態へと上述の動作と逆の動作により、保持部材510aと、保持部材510bと、が位置交換されていく。すなわち、第二の回転部材520が反時計回りに回転して、保持部材510aは時計回りに自転し、保持部材510bは反時計回りに自転する。これにより、転換機構500は初期状態へと戻る。上記の動作を繰り返して、保持部材510aと、保持部材510bと、を位置交換し、プリフォーム10を射出成形部100から温調部200へと転送する。なお、第二の回転部材520は、180°回転する毎に時計回りと反時計回りとを切り替えて回転する態様であるが、回転方向は時計回り又は反時計回りで固定して、180°の間欠回転をする態様としてもよい。
【0029】
ここで、射出成形部100における配列方向Cに沿った複数のプリフォーム10の一端に位置する1のプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置する1のプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとする。上記の転換機構500では、保持部材510a,510bが受取位置P3から送出位置P4に移動される際に、共に反時計回りに自転して保持部512の並び方向を配列方向Cから搬送方向Aへ方向転換させる。保持部材510a,510bが受取位置P3から送出位置P4に移動される際のそれぞれが回転移動する方向は異なるが、自転する方向が共通している。すなわち、転換機構500は、第1番目のプリフォーム(又は第N1番目のプリフォーム)が常時先頭になるように、配列方向Cに並んだ複数のプリフォーム10を搬送方向Aに沿う向きに並ぶように方向転換可能に構成されている。
【0030】
ここで、図1および図2に戻り、製造装置1を説明する。射出成形部100および温調部200の間において、転換機構500によってプリフォーム10が保持されている際に、プリフォームは大気下で放冷される。別の言い方をすると、製造装置1は射出成形部100および温調部200の間に放冷部700を備えている。前述の転換部150は、放冷部700に設けられている。なお、本明細書における「放冷」とは、室温まで冷却することを指す用語ではなく、大気中での自然冷却を意味する用語である。
【0031】
搬送機構600,650は、それぞれ別個に設けられている。搬送機構600は、転換機構500の送出位置P4に配置されたプリフォーム10を受け取り、温調部200へ搬送するように構成されている。搬送機構650は、搬送機構600によって温調部200へ搬送されたプリフォーム10を受け取り、温調部200、ブロー成形部300および取出部400にかけて、プリフォーム10および容器20を搬送方向Aに沿って搬送するように構成されている。搬送機構600,650としては、例えば平行移動チャック(ハンド)を採用し得る。転換機構500と搬送機構600との間での、および搬送機構600と搬送機構650との間でのプリフォームの受渡は、本技術の属する分野において知られた手段によって実施でき、詳細な説明を省略する。搬送機構600,650による搬送は間欠的に実施される。また途中でプリフォーム10および容器20の間隔(ピッチ)を変更可能に構成されている。例えば、搬送機構600は射出成形部100の間隔(ピッチ)P1を温調部200の間隔P2に(P1<P2)、搬送機構650は温調部200の間隔P2をブロー成形部300の間隔P3に(P2<P3)、各々変換可能に構成される。また、搬送機構650は、搬送経路の途中で一度の間欠搬送で搬送するプリフォーム10および容器20の個数を変換するように構成されている。具体的には、搬送機構650は、後述する保温温調部230および微調節部240までは2個ずつプリフォームを間欠搬送し、それ以降は1個ずつプリフォームおよび容器を間欠搬送するように、構成されている。
【0032】
温調部200は、プリフォーム10の温度を調節する第一温調部210、第一温調部210と異なる条件でプリフォーム10の温度を調節する第二温調部220、温調されたプリフォーム10の温度低下を抑止する保温温調部230およびプリフォーム10の温度を微調節する微調節部240を備える。
【0033】
第一温調部210におけるプリフォーム10の温度を調節する条件は、第二温調部220におけるプリフォーム10の温度を調節する条件と比べて、プリフォーム10の温度を下げる能力の高いものである。ここで「温度の下げる能力の高いもの」とは、比較対象よりもプリフォーム10を急冷却することができるものを意味する。より具体的には、単位時間当たりに降下させるプリフォームの温度幅が大きいことを意味する。例えばプリフォーム10がポリエチレンテレフタレートから成形される場合、第一温調部210では、プリフォーム10の平均温度が135〜160℃の状態から平均温度が120〜130℃の状態へ、プリフォーム10の温調を行い、第二温調部220では、プリフォーム10の平均温度が120〜130℃の状態から平均温度が110〜120℃の状態へ、プリフォーム10の温調を行う態様としても良い。
【0034】
第一温調部210および第二温調部220としては、温調キャビティ型および温調コア型(温調ロッド型)でプリフォームを挟み込む方式、エアをプリフォームに吹き当てる方式、各種赤外線ヒーター式、RED式、電磁波加熱式等の温調手段を採用し得る。好ましい態様としては、第一温調部210が、プリフォーム10を挟み込むことでプリフォーム10の温度を調節するように構成された温調コア型および温調キャビティ型を備え、第二温調部220は、プリフォーム10に気体を吹き付けることでプリフォーム10の温度を調節する温調ブローコア型、および任意でプリフォーム10を収容する温調キャビティ型を備える態様が挙げられる。また当該好ましい態様においては、第二温調部220においてブロー成形部300へ搬送する前にプリフォーム10を若干膨らませる予備ブローを実施しても良い。
【0035】
また別の好ましい態様としては、第一温調部210において、温調キャビティ側に収容されたプリフォーム10の内側に温調ブローコア型により気体を供給して吹き付けて、吹き付けた気体を連続的にプリフォームの外部に排出することで、対流によりプリフォーム10の温度を内側から調節する方式を採用してもよい。また別の好ましい態様としては、第二温調部220において、温調キャビティ側に収容されたプリフォーム10の内側に温調ブローコア型より気体を供給して吹き付けて、吹き付け時において気体をプリフォーム10の外部に排出せずにプリフォーム10を予備ブローする方式を採用してもよい。
【0036】
なお、上述の第一温調部210および第二温調部220では、さらに、プリフォーム10の外側を温調キャビティ型に接触させ、熱伝導によりプリフォーム10の温度を外側から調節させても構わない。また、プリフォーム10を収容する温調キャビティの空間(キャビティ)は、第一温調部210より第二温調部210の方が大きく設定されてもよい。第一温調部210および第二温調部220は、それぞれ2つのプリフォームの温調が可能なように構成されている。第一温調部210や第二温調部220の温調キャビティ型や温調コア型には温調媒体(冷却媒体)が流される。この時の冷却媒体の温度は、例えば40℃〜100℃、好ましくは50〜70℃に設定される。
【0037】
保温温調部230は、ブロー成形するのに適した温度近くまで温調したプリフォーム10の温度が低下することを防ぐように、全体として均一の温度でブロー適温に近い温度に設定されている。保温温調部230としては、各種赤外線ヒーター式、RED式、電磁波加熱式等の温調手段を採用し得る。保温温調部230は1つのプリフォームの温調(具体的にはプリフォームの温度低下の抑止)が可能なように構成されている。
【0038】
微調節部240は、プリフォーム10の温度をブロー成形するのに適した温度まで微調節する。ここで、「微調節」とは、プリフォーム10の全体にわたってブロー成形するのに適した温度に細かな温調をすることを意味する。具体的には、容器の形状に応じてプリフォームの温度を部位毎に意図的に異ならせることや、プリフォーム10の部位毎の温度ムラを細かく調節することを意味する。微調節部240は、局所的にプリフォーム10を温調する局所温調部としてもよい。微調節部240は、赤外線ヒーター式、RED式、電磁波加熱式、空冷等の温調手段を採用し得る。微調節部240は、ブロー成形部300の直前に配置されている。微調節部240は、1つのプリフォームの温調が可能なように加熱または冷却可能に構成されている。また、プリフォーム10の胴部上方(ネック部直下)を局所的に加熱しつつ胴部中央から胴部下方も冷却できるよう、加熱処理と冷却処理を同時に実施可能に構成されていてもよい。
【0039】
続いて、ブロー成形部300を説明する。本例では、ブロー成形部300は、一次ブロー部310および最終ブロー部320を備え、2段階に分けて容器20をブロー成形するように構成されている。一次ブロー部310は、例えば延伸ロッド、ブローコア型、ブローキャビティ型で構成される一次ブロー型を備える。一次ブロー部310は、例えば延伸ロッドでプリフォーム10を延伸しつつエアを導入して、中間成形品15を成形可能に構成されている。最終ブロー部320は、例えば、ブローコア型、ブローキャビティ型で構成される最終ブロー型を備え、必要に応じて延伸ロッドが設けられる。最終ブロー部320は、例えばエアで中間成形品15を延伸して、容器20を成形可能に構成されている。なお、一次ブロー部310のブローキャビティ型は中間成形品15を熱処理するために、最終ブロー部320のブローキャビティ型の温度(例えば60〜90℃)よりも高温(例えば110〜140℃)に設定してもよい。
【0040】
続いて、製造装置1による容器20の製造方法を説明する。図5は容器20の製造工程のフローチャートである。図5に示すように、容器20は、複数のプリフォーム10を配列方向Cに沿って射出成形する射出成形工程S1、配列方向Cに並んだ複数のプリフォーム10を搬送方向Aに沿う向きに並ぶように方向転換させる転換工程S1.5、プリフォーム10の温度を調節する温調工程S2、およびプリフォーム10から容器20を成形するブロー成形工程S3により製造され、取出工程S4にて製造装置1から回収される。以降は、図2も参照して容器20の製造方法を説明する。
【0041】
射出成形工程S1は、射出工程S1−1および後冷却工程S1−2を含む。射出工程S1−1において、射出キャビティ型112、射出コア型122および射出ネック型124を型締めして形成された射出キャビティに、射出装置102によって溶融樹脂を射出してプリフォーム10を成形する。射出してから所定時間が経過した後に、プリフォーム10を射出キャビティ型112から離型(解放)し、第一の回転部材130を180°回転させて、射出コア型122および射出ネック型124により保持されたプリフォーム10を射出位置P1から後冷却位置P2に移動させる。
【0042】
続いて、後冷却工程S1−2において、後冷却位置P2に移動された射出コア型122および射出ネック型124により保持されたプリフォーム10を所定時間冷却する。プリフォーム10の冷却は、水等の冷媒が内部に流れている射出コア型122および射出ネック型124によって内部から行われる。また、後冷却位置P2にプリフォーム10が移動された後に、冷却ポッド140を上昇させてプリフォームを冷却ポッド140に収容する。冷却ポッド140により、プリフォーム10の冷却が外部からも行われる。このとき、後冷却工程S1−2の冷却効率を高めるため、プリフォーム10の胴部を射出コア型122と冷却ポッド140で挟み込んで強く密着(押圧変形)させても良い。なお、プリフォーム10を射出位置P1から後冷却位置P2に移動させる際も、プリフォーム10は射出コア型122a(122b)を介して内部から冷却されるため、この移動時間も初期の後冷却工程S1−2の一部として看做すことができる。
【0043】
また、後冷却位置P2で射出コア型122および射出ネック型124により保持されたプリフォーム10を冷却する後冷却工程S1−2が行われている間に、射出位置P1に配置されるもう一つの射出コア型122および射出ネック型124によって、次の射出工程S1−1を行う。すなわち、次の射出工程S1−1および後冷却工程S1−2を並行して実施される。所定時間の後に、プリフォーム10は射出コア型122および射出ネック型124から離型され、冷却ポッド140に収容された状態となる。続いて、転換機構500がプリフォーム10を受け取ることが可能な高さまで、冷却ポッド140を下降させる。その後、再度第一の回転部材130を回転させて次の射出工程S1−1および後冷却工程S1−2を行う。この工程を繰り返すことで連続的に射出成形工程S1を実施する。
【0044】
続く転換工程S1.5において、冷却ポッド140に収容されて配列方向Cに並んだプリフォーム10を、受取位置P3に配置された転換機構500の保持部材510a(510b)によって保持する。その後、冷却ポッド140をさらに下降させてプリフォーム10を第二の回転部材520により回転可能な状態にする。そして、第二の回転部材520を回転することにより、プリフォーム10を受取位置P3から送出位置P4に移動させる。また、この間に保持部材510a(510b)を自転させて搬送方向Aの延びる方向に合わせてプリフォーム10を配列させる。そして、保持部材510a(510b)を上昇させて、搬送機構600によりプリフォーム10を保持して、保持部材510a(510b)からプリフォーム10を開放する。次いで、搬送機構600によりプリフォーム10を2つずつ間欠的に温調部200へ送り出し、温調部200でプリフォーム10を搬送機構600から搬送機構650へ受け渡す。また、転換工程S1.5の間、プリフォーム10を大気下で放冷する。これにより、温調部200に転送するまでの間でプリフォーム10の温度の均一化処理がなされる(放冷工程)。また、必要に応じ、送出位置P4でプリフォーム10の第2の後冷却工程を実施する。これにより、放冷時に生じ易い結晶性樹脂材料(PET)から成形されたプリフォーム10の徐冷による白化(結晶化)を抑止できる。
【0045】
また、搬送機構600によりプリフォーム10を送り出している間に、次の射出成形工程S1により成形されたプリフォーム10を保持部材510b(510a)によって保持する。送出位置P4でのプリフォーム10の搬送方向Aへの送り出しが完了した後に、第二の回転部材520を回転することにより、次の射出成形工程S1により成形されたプリフォーム10を受取位置P3から送出位置P4に移動する。この工程を繰り返すことにより連続的に転換工程S1.5を実施する。
【0046】
温調部200にプリフォーム10を搬送した後に、プリフォーム10を搬送機構650により温調部200内で搬送して、温調工程S2を実施する。温調工程S2では、第一温調部210、第二温調部220、保温温調部230および微調節部240にプリフォーム10を順次搬送し、プリフォーム10の温度を次のブロー成形工程S3に適した温度に調節する。すなわち、温調工程S2は、第一温調工程S2−1、第二温調工程S2−2、保温温調工程S2−3bおよび微調節工程S2−3aを備える。なお、保温温調工程S2−3bおよび微調節工程S2−3aは必要に応じて設けられ、省略してもよい。ただし、保温温調工程S2−3bを設けることで精度よく均温化を図ることができ、微調節工程S2−3aを設けることで容器の形状の制御を容易にできる。
【0047】
第一温調工程S2−1では、第一温調部210の温調コア型および温調キャビティ型によりプリフォーム10を挟み込んで温調する。第二温調工程S2−2では、第二温調部220の温調ブローコア型により適宜温調キャビティ型に収容されたプリフォーム10に気体を吹き付けることで、プリフォーム10を温調する。
【0048】
ただし別の例として、第一温調工程S2−1では、第一温調部210において、温調キャビティ側に収容されたプリフォーム10の内側に温調ブローコア型により気体を供給して吹き付けて、吹き付けた気体を連続的にプリフォームの外部に排出することで、対流によりプリフォーム10の温度を内側から調節してもよい。また別の例として、第二温調工程S2−2では、第二温調部220において、温調キャビティ側に収容されたプリフォーム10の内側に温調ブローコア型より気体を供給して吹き付けて、吹き付け時において気体をプリフォーム10の外部に排出せずにプリフォーム10を予備ブローしてもよい。
【0049】
なお、上述の第一温調工程S2−1および第二温調工程S2−2では、さらに、プリフォーム10の外側を温調キャビティ型に接触させ、熱伝導によりプリフォーム10の温度を外側から調節させても構わない。また、プリフォーム10を収容する温調キャビティの空間(キャビティ)は、第一温調工程S2−1におけるものよりも、第二温調工程S2−2におけるものの方が大きく設定されてもよい。
【0050】
保温温調工程S2−3bでは、保温温調部230で第一温調工程S2−1および第二温調工程S2−2で温調されたプリフォーム10の温度を維持する。微調節工程S2−3aでは、微調節部240でプリフォーム10の温度をブロー成形するのに適した温度まで微調節する。なお、本実施形態では、保温温調部230および微調節部240までは2個ずつプリフォーム10が間欠搬送され、それ以降は1個ずつプリフォーム10および容器20が間欠搬送される。すなわち、保温温調部230および微調節部240に搬送された2個のプリフォーム10のうちの一つは保温温調工程S2−3bを経ずに、微調節工程S2−3aへと移行する。
【0051】
温調工程S2の微調節工程S2−3aの後に、プリフォーム10を搬送機構650によりブロー成形部300に搬送して、ブロー成形工程S3を実施する。ブロー成形工程S3では、一次ブロー部310でプリフォーム10を中間成形品15へと賦形し(一次ブロー工程)、最終ブロー部320で中間成形品15を容器20へと賦形する(最終ブロー工程)。ブロー成形工程S3の後に、容器20を搬送機構650により取出部400に搬送して、容器20を取出す。これらの工程を経て、容器20を得ることができる。また、微調節工程S2−3aを除き、射出成形工程S1、転換工程S1.5および温調工程S2に亘って、プリフォーム10の平均温度は漸次下がっていくように調整される。つまり、特許文献2に示されるように温調工程S2でプリフォームの再加熱を行わずに、射出成形工程S1でプリフォーム10が得た保有熱のみを利用して、ブロー成形工程S3が行われる。
【0052】
続いて、上記実施形態の変形例を図6および図7を参照して説明する。なお、当該変形例は、温調部200、搬送機構650およびブロー成形部300の構成が異なる以外は、上述した実施形態と同様であるため、重複する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0053】
変形例に係る製造装置1001は、プリフォーム10および容器20を温調部1200からブロー成形部1300にかけて、2個ずつ間欠搬送するように構成された搬送機構1650を備えている。製造装置1001は、第一温調部210および第二温調部220を備え、保温温調部を備えない代わりに微調節部240を2つ備える、温調部1200を備える。製造装置1001は、一次ブロー部を備えない代わりに延伸ロッド、ブローコア型、ブローキャビティ型を備えた最終ブロー部320を2つ備え、一度に2個の容器20をブロー成形可能に構成されたブロー成形部1300を備える。このように、製造装置1001は、ブロー成形工程S3において容器20を同時に2個製造することができるものである。変形例に係るブロー成形部1300の最終ブロー部320が備えるブローキャビティ型の温度は、常温(例えば10〜20℃)としてもよい。
【0054】
上記変形例のように、本開示においてブロー成形の成形個数に応じて構成を変更することが可能である。また、本開示の製造装置1,1001では、一回に射出成形されるプリフォームの個数(N1)よりも一回にブロー成形される容器の個数(N2)が少ない。例えば各成形個数を、容器:プリフォーム=1:4、2:4または2:6としてもよい(製造する容器の仕様に応じ、N1とN2の比率を可変しても良い)。本開示の製造装置1,1001では、ブロー成形部300,1300が、1回あたりN2(N2は1以上の整数である)個の容器20をブロー成形する最終ブロー部320を備え、ブロー成形部300,1300において、プリフォーム10および容器20をN2個ずつ間欠的に搬送し、射出成形部100における配列方向Cに沿った複数のプリフォーム10の一端に位置する1のプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置する1のプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとした場合に、N1およびN2はN1>N2の関係にある。ブロー成形工程において容器を成形する際の取り数が少ないため、ブロー成形型の数が少なくなり、製造装置の省スペース化を実現できる。
【0055】
ところで、ハイサイクル化を図り、律速段階となる射出成形工程の冷却時間を短縮化してプリフォームを高温離型し、下流の温調工程でそのプリフォームの追加冷却を行う技術が開発されている(日本国特許第6505344号)。当該技術は、間欠回転搬送式又は間欠リニア搬送式のホットパリソン式ブロー成形装置に適用されている。ここで、間欠リニア搬送式は間欠回転搬送式と異なり、射出成形部とブロー成形部の取数比を変更でき、ブロー成形型のダウンサイジングや間欠搬送中にプリフォームの局所冷却を行える等で、利点がある。しかし、射出成形されたプリフォームは通常、ブロー成形数(ブローキャビティの数)単位に分割されてブロー成形部に間欠搬送される為、その単位毎にブロー成形部に至るまでの待機時間の長さが変わり、それが原因でプリフォーム間の温度差が生じ易いという欠点もある。また、容器の種類に応じて、射出成形数:ブロー成形数の比を、例えば2:1、3:1、4:1と、適宜変更したい場合が存在する。4:1の比では、最初と最後でブローされるプリフォーム間の温度差は一層顕著になる。
【0056】
本発明の製造方法(製造装置)は、ホットパリソン式のブロー成形方法(製造装置)であり、射出成形されたプリフォームN1をブロー成形数N2(ブローキャビティの数)単位に分割しブロー成形工程に間欠搬送する構成であり、その単位毎にプリフォーム間の温度差が生じ易い。以下では製造方法の構成に基づいて作用・機能を説明するが、製造方法の構成に対応する製造装置の構成においても同様の作用・機能が発揮される。上記の樹脂製容器の製造方法では、第一温調工程S2−1、第二温調工程S2−2および微調節工程S2−3aを少なくとも備え、さらに保温温調工程S2−3bを必要に応じて備える、多段階の温調工程S2が実施される。多段階の温調工程S2を経てプリフォーム10をブロー成形工程S3へ搬送することにより、プリフォーム10間での温度状態の差を低減して容器20をブロー成形することができ、安定して品質の良い容器を製造できる。
【0057】
また、温調工程S2およびブロー成形工程S3にわたってプリフォーム10および容器20を配列方向Cと交差する搬送方向Aに沿って搬送することで、搬送機構を単純化して搬送にかかる時間を短縮しつつプリフォーム10の温調をすることができる。さらに、上記の射出成形工程S1において、温調工程S2およびブロー成形工程S3における搬送方向Aに交差する配列方向Cに沿ってプリフォーム10を射出成形している。これにより、射出成形工程S1において使用するキャビティ型の長手方向の中央部分に射出装置102の射出口を配置して、射出装置102自体をキャビティ型の短手方向(搬送方向に沿う方向)に配置することができ、樹脂製容器20を製造するのに必要な占有スペースを小さくすることができる。
【0058】
また、第一温調工程S2−1、第二温調工程S2−2および微調節工程S2−3aを備える温調工程S2に加えて、射出成形工程S1および温調工程S2の間に放冷工程を備えることで、さらに多段階でプリフォーム10の温度を調節することができ、プリフォーム10間での温度状態の差をさらに低減して容器20をブロー成形することができ、より安定して品質の良い容器20を製造できる。また、射出成形工程S1および温調工程S2の間でプリフォーム10を大気下で放冷することで、射出成形工程S1の冷却時間を短くすることができ、射出成形工程S1を短時間で繰り返すことができ、単位時間当たりの容器20の生産量をより大きくできる。
【0059】
また、射出成形工程S1が終わって間もない段階ではプリフォーム10の温度は比較的高温であり、ブロー成形の適温から乖離している。一方、ブロー成形工程S3に近づくにつれて、プリフォーム10の温度をブロー適温に合わせていくことが求められる。第一温調工程S2−1において第二温調工程S2−2よりもプリフォーム10の温度を下げる能力の高い条件を採用することで、射出成形工程S1が終わって間もない段階でプリフォーム10の温度を短時間で下げることができ、第二温調工程S2−2でプリフォーム10の温度をブロー適温に合わせていくことができる。これにより、さらに安定して品質の良い容器20を製造できる。
【0060】
また、第一温調部210および第二温調部220の好ましい態様によれば、第一温調工程S2−1において温調コア型および温調キャビティ型でプリフォーム10を挟み込む方法でプリフォーム10の温度を短時間で下げることができ、第二温調工程S2−2においてプリフォーム10に気体を吹き付ける方法でプリフォーム10の温度をブロー適温に合わせていくことができる。これにより、さらに安定して品質の良い容器20を製造できる。
【0061】
また、温調工程S2においてプリフォーム10を予備ブローする態様では、ブロー成形工程S3の前に中間成形体を形成し、ブロー成形工程S3において中間成形体から容器20をブロー成形することができる。これにより、特に大型の容器20のブロー成形に用いる高重量のプリフォーム10において、プリフォーム10を良好に温調することができ、さらに安定して品質の良い容器20を製造できる。
【0062】
また、微調節工程S2−3aが局所温調工程であると、容器を目的とする形状にブロー成形しやすくなる。また、ハンドルを備える大型の容器等の特殊な形状の容器をブロー成形しやすくなる。
【0063】
また、射出成形工程S1および温調工程S2の間に、配列方向Cに並んだプリフォーム10を搬送方向Aに沿う向きに並ぶように方向転換する転換工程S1.5を有することで、プリフォーム10を温調工程S2およびブロー成形工程S3に円滑に移行させることができる。これにより、単位時間当たりの容器20の生産量をより向上させつつ、短いサイクル時間の下でも容器20の品質を維持または向上させることができる。また、転換工程S1.5において放冷工程を実施すれば、プリフォーム10の方向転換の間に放冷も実施でき、より効率良く容器を製造できる。
【0064】
また、射出成形工程S1が、射出工程S1−1および後冷却工程S1−2を備えることで、射出工程S1−1で冷却が完全に完了していない状態でプリフォーム10をキャビティから解放して、後冷却工程S1−2にてプリフォーム10の冷却を続けることができる。そして、後冷却工程S1−2でプリフォーム10の冷却を続けている間に、次のプリフォーム10の射出工程S1−1を実施することができ、射出成形工程S1を短時間で繰り返すことができ、単位時間当たりの容器20の生産量をより大きくできる。すなわち、ハイサイクルな容器製造を実現できる。また、ハイサイクルであっても、温調工程S2が第一温調工程S2−1、第二温調工程S2−2および微調節工程S2−3aを備えることで、多段階でプリフォーム10を温調できるため、プリフォーム10間での温度状態の差を低減して容器20をブロー成形することができ、安定して品質の良い容器20を製造できる。
【0065】
上記の樹脂製容器の製造方法では、温調工程S2がプリフォーム10の温度低下を抑止する保温温調工程S2−3bを備えている。これにより、ブロー適温に温調されたプリフォーム10がブロー成形の前の待機時間で温度低下することを抑止でき、プリフォーム10の均温化を確実なものとし、安定して品質の良い容器20を製造できる。
【0066】
また、射出成形工程S1を短時間で繰り返し、単位時間当たりの容器20の生産量をより大きくしたハイサイクルな方式であっても、保温温調工程S2−3bを備えることでプリフォーム10の均温化を確実なものとし、安定して品質の良い容器を製造できる。
【0067】
また、上記の樹脂製容器の製造方法では、第一温調工程S2−1、第二温調工程S2−2、保温温調工程S2−3bおよび微調節工程S2−3aを備える多段階の温調工程S2が実施される。多段階の温調工程S2を経てプリフォーム10をブロー成形工程S3へ搬送することにより、プリフォーム10間での温度状態の差を低減して容器20をブロー成形することができ、さらに安定して品質の良い容器20を製造できる。
【0068】
また、射出成形工程S1および温調工程S2の間でプリフォーム10を大気下で放冷することで、射出成形工程S1の冷却時間を短くすることができ、射出成形工程S1を短時間で繰り返すことができ、単位時間当たりの樹脂製容器20の生産量をより大きくできる。また、温調工程S2が第一温調工程S2−1、第二温調工程S2−2、保温温調工程S2−3bおよび微調節工程S2−3aを備える場合には、射出成形工程S1および温調工程S2の間に放冷工程を備えることで、さらに多段階でプリフォーム10の温度を調節することができ、プリフォーム間での温度状態の差をさらに低減して容器20をブロー成形することができ、より安定して品質の良い容器20を製造できる。
【0069】
なお、本開示において直線的に搬送されるとは、厳密に一本の直線で結べる場合のみを指すわけではなく、多少の異なる角度でそれぞれ傾いた複数の搬送経路によって搬送される場合においても、転換機構500による向き合せの効果を得ることができる。また、本開示において、転換機構500によって温調部200およびブロー成形部300の概ね直線状に延びる搬送経路に対して、例えば30°〜150°傾いた向きに複数配列されたプリフォームの向きを合せることによっても、本開示の効果を得ることができる。また、直交するとは厳密な90°の角度のみを指すわけではなく例えば90°±5°程度であるものも含む。
【0070】
第一温調部210、第二温調部220、保温温調部230および微調節部240の温度条件は、それぞれ搬送されるプリフォーム毎に微調整しても良い。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0072】
なお、本願は、2019年9月12日付で出願された日本国特許出願(特願2019−166591)および2019年9月12日付で出願された日本国特許出願(特願2019−166592)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0073】
1,1001:製造装置、10:プリフォーム、20:容器、100:射出成形部、110:第一の射出型、112:射出キャビティ型、120:第二の射出型、122:射出コア型、124:射出ネック型、140:冷却ポッド、200,1200:温調部、210:第一温調部、220:第二温調部、230:保温温調部、240:微調節部、300,1300:ブロー成形部、310:一次ブロー部、320:最終ブロー部、400:取出部、500:転換機構、510a,510b:保持部材、X1:第一の中心軸、X2:第二の中心軸、A:搬送方向、C:配列方向、P1:射出位置、P2:後冷却位置、P3:受取位置、P4:送出位置、S1:射出成形工程、S1.5:転換工程、S2:温調工程、S3:ブロー成形工程
【要約】
複数のプリフォーム(10)を所定の配列方向(C)に沿って射出成形する射出成形工程(S1)、プリフォーム(10)の温度を調節する温調工程(S2)、およびプリフォーム(10)から樹脂製容器(20)を成形するブロー成形工程(S3)を有する樹脂製容器の製造方法である。射出成形工程(S1)の後、温調工程(S2)およびブロー成形工程(S3)にわたってプリフォーム(10)および容器(20)を配列方向(C)と交差する搬送方向(A)に沿って搬送する。温調工程(S2)が、プリフォーム(10)の温度を調節する第一温調工程(S2−1)、第一温調工程(S2−1)と異なる条件でプリフォーム(10)の温度を調節する第二温調工程(S2−2)、およびプリフォーム(10)の温度を微調節する微調節工程(S2−3a)、を備える。
図1
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図7